説明

再封可能な開口を有するカバー

本発明は、容器(1)、好ましくはウェルプレート(W)の容器(W1)を密封するカバー(4)を開示する。カバーは、再封可能な開口を形成するように構成される、少なくとも上層(2)及び下層(3)から成る。好ましくは、層(2、3)はそれぞれ、フラップ、ダンパ、バッフル、又はバタフライ弁として構成される再封可能な開口を含み、これらの再封可能な開口は互いに重ねて配置される。本発明の好ましい実施形態では、上層(2)と下層(3)との間に第3の可動層(9)が配置される。中間層(9)を移動させることによって、カバー(4)の開口を閉じることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器を密封するカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
化学分析に用いられる液体の容量は多くの場合、非常に少なく、数マイクロリットルの範囲である。このような液体の蒸発を防ぐために、液体を入れる容器をキャップ又は同様の手段で覆う必要がある。キャップは気密性があることが好ましい。
【0003】
一例では、分析すべき液体をそれぞれが収容する複数の容器を有するウェルプレートが、カバー、好ましくは箔で覆われて気密にされる。カバーは、容器に液体が充填された後で、ウェルプレートに接着又は溶接され得る。カバー又は箔はそれぞれ、例えばアルミニウムを含む。このようなウェルプレートの容器内の液体を分析する場合、ピペット又はガラスキャピラリでカバーを穿孔して液体を取り出す。
【0004】
しかしながら、この穿孔手法は、ガラスキャピラリに損傷を与え、液体を汚染することさえあり得る。孔が残ることにより、容器内の液体自体が蒸発し始める。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[発明の開示]
改良された容器用密封手段を提供することが、本発明の目的である。この目的は、独立請求項によって解決される。本発明の他の実施の形態は、さらなる従属請求項の主題となっている。
【0006】
化学分析のために、分析すべき物質は多くの場合、溶媒中に溶解されてから容器に充填される。場合によっては、液体自体が分析すべき物質である。しかしながら、溶媒又は液体がさらなる処理前に充填される容器の容量は、数ミリリットルからサブマイクロリットルの範囲の少量でしかない。したがって、液体の蒸発をできる限り少なく保つ必要がある。外気に直接つながらないようにすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
密封の改良は、下層と呼ばれる第1の層と、第1の層の上に配置される上層と呼ばれる第2の層とを備える、容器又は入れ物(vessel)を密封するカバーによって達成される。第1の層及び第2の層は、再封可能な開口を形成するように構成される。再封可能な開口は、液体の蒸発を防止し、さらに、必要な場合はピペット又はガラスキャピラリが容易にアクセスできるようにする。再封可能な開口を用いることで、ピペットの損傷も液体の汚染も防止される。液体が取り出されてガラスキャピラリ又はピペットが容器から取り外されるとすぐに、開口は再び閉じられる。互いに重なった少なくとも2つの層を用いることによって、より優れた気密性能が得られる。好ましくは、液体を密封するカバーは箔として形成され、上層及び下層は2つの異なる箔層である。
【0008】
本発明の第1の実施の形態では、これら層のうち少なくとも一方がフラップを備える。本発明の第2の実施の形態では、これら2つの層のうち少なくとも一方がバタフライ弁を備える。バタフライ弁だけでなくバッフルも、開口を気密密封することができるため、液体の蒸発を防止することができる。
【0009】
本発明のさらなる実施の形態では、上記第1の層及び上記第2の層のうち少なくとも一方が、シャッタ、バッフル、又はダンパを備える。好ましくは、上層及び下層それぞれが、バッフル、バタフライ弁、ダンパ、シャッタ、又はフラップ、又は再封可能な開口をカバーに形成することを可能にする任意の他の手段及び構造を備える。別の実施の形態では、上箔層及び下箔層は、フラップ、シャッタ、又はバタフライ弁を備える。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態では、上層又は下層のうち少なくとも一方が、層にU字形の切れ目を設けて構成されることで、バッフル、バタフライ弁、クラッパ、シャッタ、又はフラップを形成する。第1の層及び第2の層のうち少なくとも一方にU字形の切れ目を用いてフラップ又はバタフライ弁を形成することによって、製造費が減り、上層又は下層に用いる材料をバタフライ弁のバッフルにも用いることができる。
【0011】
バッフル、バタフライ弁、シャッタ、ダンパ、又はフラップはそれぞれ、曲げ軸を有する。シャッタ、フラップ、ダンパ、バッフル、又はバタフライ弁は、この軸に沿って曲がる。本発明の一実施の形態では、曲げ軸は、バッフル、バタフライ弁、シャッタ、又はフラップと残りの層材料とのつなぎ目に沿って主に平行になっている。このような場合、曲げ軸は、曲げ折り目又はスナップオフ折り目としてそれぞれ形成される。各層にU字形の切れ目がある場合、曲げ軸はU字形の切れ目の平行な2辺の端部間に形成される。
【0012】
さらなる実施の形態では、第1の層の上記バッフル又はバタフライ弁、シャッタ、フラップ又はクラッパのスナップオフ折り目又は曲げ軸は、第2の層のバッフル、バタフライ弁、シャッタ、フラップ、又はクラッパの曲げ軸又はスナップオフ折り目の上に重なるようには配置されない。このような配置によって、再封可能な開口の封止挙動が改善される。さらに、2つの層による空気に対する密封効果が高まる。
【0013】
本発明のさらなる実施の形態では、第1の層及び第2の層のうち少なくとも一方が十字形の切れ目を含む。十字形の切れ目は、4つの部分を有する再封可能な弁を形成している。再封可能な弁の各部分は、回転軸を有する。さらなる実施の形態では、第1の層及び第2の層が十字形の切れ目を含み、第2の箔層の十字形の切れ目は第1の層の十字形の切れ目に対して約45°ずらして配置される。本発明の別の実施の形態では、上層は、ダイヤフラム状の再封可能な開口を含む。
【0014】
上層及び下層の異なる構造が、再封可能な開口自体を形成している。しかしながら、少量の空気がこれらの構造を形成する切れ目を通って流れる可能性がある。第2の層の上に少なくとも上層を配置することで、両方の切れ目を通って空気が流れる可能性が大幅に減る。このような配置は、再封可能な開口の下に配置された容器内の液体を蒸発させない気密性があると考えられる。上層及び下層の異なる開口は、いかなる組み合わせで配置されてもよい。
【0015】
本発明の一実施の形態では、上層及び下層は、再封可能な開口の周りの領域が重合によって互いに接着される。本発明の別の実施の形態では、上層が第2の層の上に少なくとも部分的に重ねられることによって、強力且つ気密な接続を形成する。好ましくは、本発明のこの実施の形態では、上層及び下層は箔層である。
【0016】
本発明のさらなる実施の形態では、カバーは、上層と下層との間に配置される可動な第3の層を備える。可動な第3の層は、第1の層及び第2の層の開口を閉じるために用いられる。本発明の実施の形態では、可動な第3の層は、第1の層と第2の層との間の可動箔層として形成される。この実施の形態では、上層と下層との間に配置される第3の層は、摺動弁を形成するように構成される。上層と下層との間で摺動弁として構成される第3の層又は第3の箔層を用いることによって、例えばピペットを挿入するときに開口を開き、液体の蒸発を防止するためにカバーの開口を閉じることが容易にできる。このような実施の形態は、カバーに接触せずに液体に直接アクセスすることを可能にすることによって、カバーの表面上の材料を突いて孔をあけることで生じる液体の汚染が防止される。
【0017】
本発明の一実施の形態では、カバーは、開口を閉じる第3の層を移動させる手段を備える。このような手段は、アンカー、フック等として形成され得る。本発明の別の実施の形態では、カバーは、少なくとも第3の可動層と下層との間の再封可能な開口の領域に配置されるシール材料を備える。シールは、第3の可動層と下層との間の空気連通を防止する。シールは、例えば、テフロン(登録商標)、シリコン、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、又は任意の他のポリイミドを含み、開口の領域の周りのリングとして構成されることが好ましい。シールには他の材料も用いることができる。
【0018】
本発明のさらに別の実施の形態では、再封可能な開口は、リング形又は楕円形である。さらなる実施の形態では、再封可能な開口は、ほぼ矩形の再封可能な開口として形成される。
【0019】
少なくとも1つの層は、ポリアミド材料、ポリイミド材料、又はポリエステル材料を含む。これは、高分子液晶化合物を含む任意の他の高分子化合物を含むこともできる。さらなる実施の形態では、上層は導電性被覆層を含む。例えば、上層はアルミニウムを含み得る。カバー自体は、400μm未満の厚さを有し得る。好ましくは、カバーの各層は、約40〜100μmの厚さを有する。本発明の実施の形態では、カバーの再封可能な開口は、60mm2未満の面積を有する。より詳細には、カバーの開口の直径は、液体の一部を採取するために容器に挿入されるときのピペット又はガラスキャピラリの直径とほぼ同じサイズであり得る。
【0020】
本発明のさらなる実施の形態では、カバーは複数の再封可能な開口を含む。このようなカバーは、ウェルプレート、マイクロウェルプレート、又はマイクロプレートを密封するために用いられる。ウェルプレートは、複数の液体容器を備える。本発明によるカバーをウェルプレートの上に配置することで、容器内の液体への容易なアクセスを可能にしたまま、その容器を気密に密封することができる。カバーは、液体の取り出し中に損傷を受けない。第1の層、第2の層、及び第3の層の異なる形態の再封可能な開口を、互いに独立して組み合わせてもよい。これらは、互いに重ねて配置され接続される箔層として用いることができる。第1の層と第2の層との間、又は第1の層又は第2の層の上に、再封可能な開口を有するさらなる層を配置することによって、容器内の液体の蒸発をさらに防ぐことができる。
【0021】
本発明の他の目的及び実施の形態の付随的な利点の多くは、添付図面とともに以下の好ましい実施の形態のより詳細な説明を参照することによって、さらに容易に評価され、より深く理解されるであろう。図は全て、説明のためだけに示す簡略概略図であり、本発明又は保護範囲を限定するものではない。実体的又は機能的に同等又は同様の特徴は、同じ参照符号で示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[発明の実施形態の詳細な説明]
ここで図1及び図2を参照すると、これらは、本発明の第1の実施形態によるカバー4の上面図及びそのI−II平面に沿った側面図を示す。カバーは箔4として形成される。箔は、液体用の容器1を覆い、この容器に接続される。容器1は、ここでは図示されていないウェルプレートの一部である。容器1は、図1ではリングとして示されているその上面に半径Rを有する円錐として形成される。容器1の半径Rは、箔3の再封可能な開口のいずれの寸法よりも大きい。カバー4又は箔を開くと、容器1内に入っている液体にアクセスすることができる。
【0023】
箔4は、上箔層2を備える。上箔層2は、下箔層3の第2の再封可能な開口34の真上に配置される再封可能な開口24を備える。再封可能な開口24及び34はいずれもフラップとしての構造である。
【0024】
開口24は、箔層2の2つの平行な切れ目21と、両方の切れ目21に対してほぼ垂直なわずかにU字形の切れ目とによって形成される。さらに、上箔層2の再封可能な開口24は、曲げ軸25を有する。開口24を形成する箔層材料は、押し下げられるか又は引き上げられるときに線25に沿って曲がる。破線で示される曲げ軸25もまた、押し下げられるときに張力を生じるようにわずかにU字形である。曲がる折り目軸25は、3辺が切り込まれれば自動的に形成される。しかしながら、この実施形態では、好ましい曲げ軸を形成するために上箔層が線25に沿ってわずかに裂かれる。上箔層2の領域24を押し下げて外した後、張力によって開口が自動的に再封される。箔層の切れ目は、レーザ誘導カットプロセス(laser induced cutting process)によって形成されるため、箔層の領域24と周囲の箔層との間の隙間が非常に小さくなる。しかしながら、レーザ誘導カットの代わりに、マイクロスタンピング又は他の代替法のような異なる方法を用いてもよい。これらの方法によって形成される切れ目は非常に小さいため、これらの隙間を通して大量の空気を流すことがない。
【0025】
上層2は、下層3の上に接合される。下層3もまた、再封可能な開口34を備えるが、これは上層2の再封可能な開口24よりも大きな面積を有する。再封可能な開口34は、2つの平行な切れ目31と、さらなるわずかにU字形の切れ目33とによって形成される。切れ目31は、上箔層2の再封可能な開口24又はフラップ24を形成する切れ目21とほぼ平行である。
【0026】
再封可能な開口34の第4の辺35は、破線で示される曲げ軸又は曲がる折り目軸35を形成している。切れ目31及び33は非常に小さい。さらに、再封可能な開口24を有する上層2は、下層3の上に直接接合される。領域24は、領域34に直接接続されるため、両方の箔層の再封可能な開口間にできる容量5Aは非常に小さいか、又は全くないことさえある。上層2の切れ目21、22及び下層3の切れ目31、33は、異なる領域に形成される。これらの切れ目の1つを通って流れる空気があるとすれば、この空気は2つの再封可能な開口間の非常に小さな領域5Aに沿って移動してから、他方の箔層の切れ目の1つを通らなければならない。このような空気流が生じる可能性は非常に低い。したがって、再封可能な開口を有する下層3の上に再封可能な開口を有する上層2を配置することで、外部から容器1内への空気流は大幅に減り、さらには防止される。容器1内の液体の蒸発は防止される。
【0027】
容器1にアクセスするには、箔の再封可能な開口を開かなければならない。これは、領域24及び34を押して箔層2及び3の各フラップを開くことによって行うことができる。可動箔層24及び34を押し下げることで、ピペット又はガラスキャピラリによって加えられる圧力が減る。ピペットの損傷が防止される。曲げ軸25及び35が対辺に配置されることにより、箔層の領域24及び34は異なる方向に開く。箔層2のフラップ24は時計方向に開くが、下層3の再封可能な開口34は反時計方向に開く。この構造が密封効果をさらに高める。
【0028】
次に図3A及び図3Bを参照する。図3Aは、本発明の別の実施形態の平面図を示す。上層2は、箔層であり、2つの切れ目21及び22を備える。切れ目21及び22は、90°ずらして配置され、上層2に十字形の切れ目を形成している。切れ目21及び22はその曲げ折り目25とともに、上層2のフラップ又はバタフライ弁として4つの仮想三角形構造を形成している。上層2は上層被覆2Aも備える。上層被覆2Aは、金属製、例えばアルミニウム製である。これは、バタフライ弁の領域を覆う。金属被覆2Aは、容器から液体を抜き取るためのピペット又はガラスキャピラリのより良好な位置決めを可能にする。ピペットの位置決めは、参照により本明細書に援用される出願EP04 000 688.4に記載されている。
【0029】
上層2は、積層6によって下層3に接続される。下層3も同様に箔層として形成され、十字形の切れ目、したがって同様にバタフライ弁としての構造を形成する、2つの切れ目31及び33を備える。切れ目31及び33の交点は、上箔層2の切れ目21及び22の交点の下に配置される。さらに、箔層2及び3両方の十字形の切れ目は、約45°ずらして配置される。
【0030】
次に図4A及び図4Bを参照する。上層2及び下層2は、重合によって互いに接続されてカバーを形成する。作製プロセス中、上層2及び下層3は完全に重合されない。各層の処理後、各層の再封可能な開口が形成される。次に、上層2が下層3の上に配置される。配置後、残りの重合処理のためのプロセスが行われる。重合プロセスは、上層2及び下層3の再封可能な開口の領域を接続させずに、上層を下層に接続する。
【0031】
上層2は、この例では5つの曲線状の切れ目を有するダイヤフラム状の切れ目41を備える。各切れ目は、中心点42から始まって半径方向に広がりながら螺旋状に曲がる。これによって得られる構造は、下層3の再封可能な開口の面積よりもわずかに大きな面積を覆う。下層3は、放物線状に形成された切れ目を有する再封可能な開口34を備える。中心点42は、下層3の放物線状の再封可能な開口34の焦点の上に配置される。当然ながら、これは開口34の上のいかなる場所に配置されてもよい。
【0032】
次に図5A及び図5Bを参照する。図5Aのカバーは、3つの箔層2、3、及び8を備える。上箔層2は、積層プロセスによって中間箔層8に重ねられる。箔層8は、下箔層3に重ねられる。積層6及び6Aは、箔層2、3、及び8よりも小さい。
【0033】
図5Aの実施形態による箔の上箔層2は、3つの切れ目を含むことによって星形を形成する。中心点41は、中間箔層8の再封可能な開口84の上に配置される。第3の箔層8の開口84は、下箔層3の再封可能な開口34を形成する切れ目31の真上に配置される曲がる折り目軸85を有するフラップとして形成される。再封可能な開口84の曲げ軸85及び開口34の曲がる折り目軸35は、破線で示されている。これらは90°ずれている。再封可能な開口34の面積は、再封可能な開口85の面積よりもわずかに大きく、再封可能な開口85の面積はまた、上箔層2の再封可能な開口の面積よりも小さい。
【0034】
本発明の箔の再封可能な開口の下に配置された容器からピペット又はガラスキャピラリによって液体を取り出す場合、箔層2、8、及び3の再封可能な開口にピペットを押し通すだけでよい。ピペットを取り外した後、層3、8、2の開口が再び閉じることにより、容器内の残りの液体の蒸発が防止される。
【0035】
次に図6A及び図6Bを参照する。図6A及び図6Bは、本発明の別の好ましい実施形態を示す。カバーは上層2を備える。上層2は円形の孔27を備える。この孔の直径は、液体を取り出すのに用いられるピペット又はガラスキャピラリの最大直径とほぼ同じである。カバーはさらに、同様に円形の孔37を有する下層3を備える。孔37は、上層2の孔27の真下に配置される。上層2と下層3との間には箔層9が配置される。この第3の層9は、可動であり、I−II平面の方向に沿って引っ張ることができる。第3の箔層9は孔94を備える。アンカー92を用いて箔層9を引っ張ることによって、孔94を下層3の開口37の真上に配置することができる。これにより、中間箔層9は、下箔層3の開口37の下に配置された任意の容器を開く摺動弁を提供する。
【0036】
箔層9が上層2と下層3との間で可動であるため、層9と下層3との間の小さな容積中に少量の空気が流れ込む可能性がある。容器からの液体の蒸発を防止するために、シール7が設けられる。シール7は、テフロン(登録商標)又はシリコンを含み、開口37の周りにリングを形成するようになっていることが好ましい。シール7は気密性があり、下層3の表面に接続される。これらは、表面に微細構造を備えることにより、さらに良好な密封挙動を得ることもできる。シール7は、上層2と下層3との間に配置された箔層9を押し引きする間に箔層9と下層3との間の小さな領域にある空気が容器に流れ込むのを防止する。
【0037】
次に図7A及び図7Bを参照する。図7は、本発明の別の実施形態を示す。本発明のこの実施形態のカバーは、上層2、下層3、及び上層と下層との間に配置される箔層9を備える。上層2は楕円形の開口27を備える。箔層9は、箔層9を押し引きするために層9を外部システムに接続するフック92を備える。箔層9はさらに円形の開口94を備える。箔層9を移動させることによって、開口94が上層2の開口27の下に配置される。下層3は再封可能な開口34を備える。この再封可能な開口は、上層2の開口27の下に配置される曲がる折り目軸35を有するフラップ又はシャッタとして形成される。さらに、上層2と中間層9との間及び中間層2と下層3との間に、シール7が設けられる。これにより、上層2と中間層9との間又は下層3と中間層9との間のそれぞれの容積中に容器内の液体が蒸発するのが防止される。蒸発の予防は、下層3の再封可能な開口34及び可動箔層9によって改善される。
【0038】
さらなる改良は、可動中間層9に再封可能な開口を設けることである。本発明のカバーの再封可能な開口の下に配置された容器にアクセスするためには、中間可動層9の再封可能な開口が上層2の開口27の下に配置されるまで層9を移動させる。ピペット、又は本発明のカバーの再封可能な開口を開く同様の手段を用いて、層9及び3の開口を押し下げる。液体の処理後、ピペットを取り外すと容器が再び閉じる。
【0039】
次に図8を参照する。図8は、箔層の再封可能な開口の種々の実施形態を示す。破線は、再封可能な開口の曲げ軸を示す。実線は、箔層材料の切れ目である。切れ目35はバタフライ弁を形成しているが、他の全ての例は、シャッタ、バッフル、又は単純なフラップを形成している。再封可能な開口を構成するのに用いられる箔層材料は、箔層材料の押し引きによって開口を開いた後での再封を確実にするように、それぞれ剛性又は硬質である。
【0040】
本発明の範囲による再封可能な開口を有するカバーを形成するために、異なる再封可能な開口を有する異なる層を配置することができる。異なる層は、同じ材料、例えばポリアミド又はポリエステル、又は任意の他の有機材料でできていてもよい。ポリイミド材料も用いることができる。層は、被覆層、例えば合金層又は付加的なシール層を備えることもできる。例えば、再封可能な開口を形成する切れ目を再封するために、上層及び下層の上の被覆層としてシリコンを用いることが有用であり得る。各層の再封可能な開口の面積は、異なるサイズであってもよい。例えば、上層の再封可能な開口の面積は、下層の面積よりも小さくてもよい。しかしながら、この面積は、下にある容器から液体を取り出すのに用いられるピペット又はガラスキャピラリ手段の最大直径と同じ大きさでなければならない。本発明によるカバーの再封可能な開口の直径が、密封すべき容器の最大直径よりも小さくても有用である。
【0041】
次に図9を参照する。図9は、複数の容器を有するウェルプレート用の、異なる箔層を有する本発明のカバーの概略分解図を示す。このようなカバーの底面図を図10で見ることができる。図9の本発明によるカバーは、上箔層2を備える。上箔層2は可動箔層9の上に配置される。層9はアンカー92及び孔95を備える。アンカーは、図9に示すz軸に沿って層9を押し引きするために用いられる。さらに、層2及び可動層9は、互いの間の滑り摩擦を減らすように構成される。滑り摩擦は、層2と層9との間の直接接触面積が大きい場合に大きくなる。この作用は、可動層9と層2との間の空間に水分子が定着する場合にさらに大きくなる。直接接触面積を減らすために、層9及び2の両方の表面がナノ構造化される。これは、両方の層のエッチングによって行うことができる。両方の層の表面が顕微鏡スケールの粗さになることで、直接接触面積が小さくなる。さらに、層2の表面は、この層を可動層9とは異なる層構造にすることによって縮小される。例えば、さらなる孔が挿入される。
【0042】
さらに、可動箔層9と第3の箔層3Aとの間にシール10が配置される。最後に、再封可能な開口35を有する第4の箔層3Bが箔層3Aの開口の下に配置される。箔層3Aの再封可能な開口35は、図4でも見ることができるようにダイヤフラム状に構成される。
【0043】
この実施形態によるカバー又は箔を用いて、液体用の複数の容器を有するウェルプレートを密封することができる。容器に液体を充填する前に、カバー又は箔がウェルプレートに接着又は溶接されることによって、容器が密封され液体の蒸発が防止される。さらに、カバーがプレートの異なる容器間でプレートに溶接され得ることによって、容器間の液体交換が防止される。容器の1つへの液体の充填及び容器の1つからの液体の取り出しのために、可動箔9は、その開口95が上層2の開口25の下及び層3Aの開口35Aの上に配置されるまで押し引きされる。しかしながら、下層3Bの再封可能な開口35が、必要とされない容器内の液体の蒸発を依然として防止する。
【0044】
次に図11を参照する。図11は、複数の容器W1を有するウェルプレートWを密封するのに用いられる本発明の一実施形態による箔の平面図を示す。
【0045】
箔は、複数のバタフライ弁を有する箔層である。本発明の箔の再封可能な開口は、ウェルプレートWの容器W1の上に配置される。次に、箔はウェルプレートWに接続される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施形態の概略平面図を示す図である。
【図2】図1のI−II平面の概略図を示す図である。
【図3A】本発明の一実施形態の平面図を示す図である。
【図3B】本発明の一実施形態のI−II平面の側面図を示す図である。
【図4A】本発明の一実施形態の平面図を示す図である。
【図4B】本発明の一実施形態のI−II平面の側面図を示す図である。
【図5A】本発明の一実施形態の平面図を示す図である。
【図5B】本発明の一実施形態のI−II平面の側面図を示す図である。
【図6A】本発明の一実施形態の平面図を示す図である。
【図6B】本発明の一実施形態のI−II平面の側面図を示す図である。
【図7A】本発明の一実施形態の平面図を示す図である。
【図7B】本発明の一実施形態のI−II平面の側面図を示す図である。
【図8】種々の再封可能な開口をその曲げ軸とともに示す図である。
【図9】本発明のさらなる実施形態の概略「分解」図を示す図である。
【図10】ウェルプレート用の密封カバーの平面図を示す図である。
【図11A】複数の容器を備えるウェルプレートを密封するのに用いられる3層密封カバーの別の平面図を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器(1)を密封するカバー(4)であって、
少なくとも1つの下層(3)及び該下層(3)の上に配置される少なくとも1つの上層(2)を備え、
前記下層(2)及び前記第2の層(3)はそれぞれ、該カバー(4)の再封可能な開口を形成する構造を備え、前記層を介した前記容器へのアクセスを可能にする、容器を密封するカバー。
【請求項2】
前記下層(3)及び前記上層(2)のうち少なくとも一方は、再封可能な開口(24、34)、フラップ(24)、及びバタフライ弁(24)のうち少なくとも1つを備える、請求項1に記載の容器を密封するカバー。
【請求項3】
前記フラップ又は前記バタフライ弁は、前記層(2、3)のU字形の切れ目(22、31)によって形成される、請求項2に記載の容器を密封するカバー。
【請求項4】
前記少なくとも1つの下層(3)の前記フラップ又は前記バタフライ弁の曲がる折り目軸(25)が、前記少なくとも1つの上層(2)の前記フラップ又は前記バタフライ弁の曲がる折り目軸(35)の上に配置されない、請求項3に記載の容器を密封するカバー。
【請求項5】
前記少なくとも1つの下層(3)及び前記少なくとも1つの上層(2)のうち少なくとも一方は、十字形の切れ目を含むことにより、バタフライ弁を形成する、請求項1又は先行の請求項のいずれか1項に記載の容器を密封するカバー。
【請求項6】
前記少なくとも1つの上層(2)の前記十字形の切れ目は、前記少なくとも1つの下層(3)の前記十字形の切れ目に対して約45°ずらして配置される、請求項5に記載の容器を密封するカバー。
【請求項7】
少なくとも前記上層(2)はダイヤフラム状の再封可能な開口を含む、請求項1又は先行の請求項のいずれか1項に記載の容器を密封するカバー。
【請求項8】
前記下層(3)及び前記上層(2)は重合によって互いに接着される、請求項1又は先行の請求項のいずれか1項に記載の容器を密封するカバー。
【請求項9】
前記下層(3)は前記上層(2)の上に少なくとも部分的に重ねられる、請求項1又は先行の請求項のいずれか1項に記載の容器を密封するカバー。
【請求項10】
前記少なくとも1つの下層(3)と前記少なくとも1つの上層(2)との間に配置されて、前記下層(3)及び前記上層(2)の開口を閉じる、可動な第3の層(9)をさらに備える、請求項1又は先行の請求項のいずれか1項に記載の容器を密封するカバー。
【請求項11】
前記第3の層(9)は摺動弁を形成するように構成される、請求項10又は先行の請求項のいずれか1項に記載の容器を密封するカバー。
【請求項12】
前記第3の層(9)は、前記カバー(4)の前記開口を閉じるために前記第3の層(9)を移動させる手段(92)を備える、請求項10又は先行の請求項のいずれか1項に記載の容器を密封するカバー。
【請求項13】
前記第3の可動層(9)と前記少なくとも1つの下層(3)との間の前記再封可能な開口の領域に配置されるシール(7)を備える、請求項10又は先行の請求項のいずれか1項に記載の容器を密封するカバー。
【請求項14】
前記シール(7)は、以下の材料:テフロン(登録商標)又はそのコポリマーの1つ、シリコーン、PTFEのうち少なくとも1つを含む、請求項1又は先行の請求項のいずれか1項に記載の容器を密封するカバー。
【請求項15】
前記再封可能な開口は、リング形、楕円形、又はほぼ矩形である、請求項1又は先行の請求項のいずれか1項に記載の容器を密封するカバー。
【請求項16】
少なくとも1つの層(2、3、9)が、ポリイミド又はポリイミド又はポリエステル又は液晶ポリマーを含む、請求項1又は先行の請求項のいずれか1項に記載の容器を密封するカバー。
【請求項17】
前記上層(2)は導電性被覆層(2A)を含む、請求項1又は先行の請求項のいずれか1項に記載の容器を密封するカバー。
【請求項18】
前記上層(2)は金属被覆層(2A)を含む、請求項1又は先行の請求項のいずれか1項に記載の容器を密封するカバー。
【請求項19】
前記カバー(4)の厚さは400μm未満である、請求項1又は先行の請求項のいずれか1項に記載の容器を密封するカバー。
【請求項20】
前記カバー(4)の前記再封可能な開口は60mm2未満の面積を有する、請求項1又は先行の請求項のいずれか1項に記載の容器を密封するカバー。
【請求項21】
前記カバーは、ウェルプレート(W)を密封する複数の再封可能な開口を含み、前記ウェルプレート(W)は液体用の複数の容器(W1)を備える、請求項1又は先行の請求項のいずれか1項に記載の容器を密封するカバー。
【請求項22】
前記ウェルプレート(W)に接着される、請求項21に記載の容器を密封するカバー。
【請求項23】
前記ウェルプレート(W)に溶接される、請求項21又は先行の請求項のいずれか1項に記載の容器を密封するカバー。
【請求項24】
前記カバーの前記下層(3)は、前記ウェルプレート(W)の容器(W1)の周りの前記ウェルプレート(W)材料に気密接続される、請求項21又は先行の請求項のいずれか1項に記載の容器を密封するカバー。
【請求項25】
液体用の複数の容器を有するウェルプレートから液体を取り出す、又は該ウェルプレートに液体を充填する方法であって、
前記ウェルプレートに該ウェルプレートの上に配置されるカバーを設けるステップであって、該カバーは、前記容器を密封する複数の再封可能な開口を含む、設けるステップと、
前記ウェルプレートの少なくとも1つの容器の前記再封可能な開口を開くステップと、
前記開いた容器から前記液体を取り出す、又は前記開いた容器に前記液体を充填するステップと、
充填の取り出し後に、前記開いた開口を閉じるステップと
を含む、液体用の複数の容器を有するウェルプレートから液体を取り出す、又は該ウェルプレートに液体を充填する方法。
【請求項26】
容器を密封するカバーであって、
前記容器を密封するように互いに重ねて配置され、該カバーの再封可能な開口を形成するように構成される、少なくとも2つの層を備え、
各層は、重なると該層を介した前記容器へのアクセスを可能にする構造を備える、容器を密封するカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−532868(P2007−532868A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506667(P2007−506667)
【出願日】平成16年4月7日(2004.4.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/050476
【国際公開番号】WO2005/097323
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【Fターム(参考)】