説明

再形成した鉱質化軟骨組織

【課題】従来よりも優れた、鉱質化した軟骨組織の成分を強化した生物材料、鉱質化生物材料、該生物材料の製造法および該生物材料の使用法等を提供する。
【解決手段】関節軟骨の深部関節軟骨および隣接する石灰化軟骨域を模倣したイン・ビトロ培養系。ならびにイン・ビボで動物に見いだされる関節軟骨の深部および表面石灰化軟骨域と実質的に同様な生化学的組成および生理学的構成を有することにより特徴付けられる鉱質化生物材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱質化した(mineralized)軟骨組織の成分を強化した生物材料、鉱質化生物材料、該生物材料の製造法および該生物材料の使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
関節軟骨は、関節骨の末端に見られる特別な組織である。それは、圧縮力に抵抗する荷重の分散および関節機能の一部である滑らかな動き(gliding)に寄与する。関節軟骨は、石灰化軟骨域で、その下にある軟骨下(subchondral)の骨と連結している。石灰化軟骨域は、関節を横切る力の分散に関与する。石灰化域は、二次骨形成の後に形成され、成熟の間に成長板(growth plate)のような働きをする(非特許文献1参照)。その厚さは、一部、Muller-Cerblら(非特許文献2参照)が示したように重量支持の関数となる。この研究で、彼らは、石灰化軟骨を含む軟骨のパーセンテージが、一定であり、個体間で、軟骨厚さの3〜8.8%の間で変動することを示した(非特許文献3参照)。
【0003】
石灰化軟骨の組成および石灰化軟骨域の中および直上での軟骨細胞の代謝はほとんど知られていない。イン・ビボ(in vivo)で、この領域の細胞は、アルカリ性ホスファターゼ活性を有する。主要なコラーゲンは、II型であるが、X型コラーゲンも存在する。石灰化域の軟骨は、成熟関節軟骨深部域に見られるプロテオグリカンの約半分を含有する。研究者らは、また、オステオネクチンおよび石灰化域のみに見られる特異的な蛋白質の存在について報告している。石灰化域に存在する鉱物は、種間によって変動するが、ヒドロキシアパタイトのカルシウム−対−ホスフェート比が特徴的に1.67であることが示されている(非特許文献1参照)。石灰化の過程は、非常に複雑であることが判明しており、異なる相互作用するマトリックス分子および、多くの細胞的、ホルモン的および物理化学的プロセスが関与する複雑な多成分系を介する細胞レベルの念入りな調節が包含される(非特許文献4参照)。
【0004】
実験的研究は、石灰化軟骨が、関節疾患、骨関節炎(osteoarthritis)の病因に役割を演じていることを示唆している。境目のマーク(tide mark;石灰化軟骨と非石灰化軟骨との間の界面)の重複を有する石灰化軟骨のリモデリングは、骨関節炎の特徴である(非特許文献5参照)。骨関節接合部における変化が骨関節炎の発生に関与しうることが仮定されている。すなわち、ありうることである。この概念を支持するために、Thompsonら(非特許文献6参照)は、急性関節横断(transarticular)損傷のイヌモデルを使用し、石灰化軟骨および軟骨下の骨が損傷されると、イヌに長時間にわたって軟骨の退化が発生することを観察した。これは、MRI研究が、関節を損傷した個体の72%までもが軟骨損傷のない軟骨下骨折を有することを示していることから、ヒトにおける骨関節炎の病因にも関連しうる(非特許文献7参照)。
【0005】
骨関節炎軟骨において代謝の変化が確認され、この疾患に深部および/または石灰化軟骨が関与していることを示唆している。マトリックス小胞およびマトリックス小胞関連酵素の増加が骨関節炎軟骨において起こる(非特許文献8、9、10参照)。また、骨関節炎軟骨から単離された軟骨細胞は、X型コラーゲンの合成の増加を示す(非特許文献11参照)。
【0006】
石灰化軟骨域の研究は、イン・ビトロ培養系が不足していることにより、一部、妨げられてきた。多くのタイプのイン・ビトロ鉱質化軟骨細胞培養系が記載されているが、これらの培養は、イン・ビボにおける機能が骨形成の細胞である、成長板軟骨細胞(非特許文献12、13、14参照)、胎児軟骨細胞、または胎児成長板軟骨細胞のいずれかを使用する(非特許文献15、16、17、18参照)。これらの細胞で形成される組織は、関節軟骨を骨形成の鋳型として供するので、当該軟骨の鉱質化の研究には、それほど適したものではない。骨端の板軟骨における細胞は、それらが石灰化に至るまでの発達につれて、一連の細胞学的変化を経過する。また、それらは、小胞チャンネルによって透過する少量のマトリックスで囲まれている(非特許文献19参照)。反対に、成人軟骨の石灰化域は、鉱質化を受け、疾患進行が潜まない限り、通常は小胞侵入を受けないガラス質軟骨のように見える。したがって、これらの鉱質化培養から得られた知見を石灰化関節軟骨に外挿することは適当ではない。
【0007】
本発明者らの米国特許第5,326,357号(特許文献1)は、実質的な細胞外マトリックスと、イン・ビボで動物軟骨に見いだされると同様な区域とを有する軟骨組織の連続層によって特徴付けられる再形成軟骨組織、および該再形成軟骨組織の製造法を記載している。
【特許文献1】米国特許第5,326,357号
【非特許文献1】Oegema Jr. and TR Thompson RC, Articular Cartilage and Osteoarthritis ed., Kuettner K. et al., pp. 319-331, 1992
【非特許文献2】J. Anat., 154:103, 1987
【非特許文献3】Quarto et al., J. Cell. Biol., 110:1379, 1990
【非特許文献4】Poole et al., Anat. Rec. 224:167, 1989
【非特許文献5】Hough A.J., et al., Arthritis and Allied Conditions, ed McCarty D.J., pp. 1571, 1989
【非特許文献6】J. Bone Surg., 73A:990, 1991
【非特許文献7】Vellet et al., Radiology, 178:271, 1991
【非特許文献8】Ali, S.Y. et al., Fed. Proc., 32:1494-1498, 1971
【非特許文献9】Lorenteon, R. et al., Acta. Orthop. Scand., 52:684, 1981
【非特許文献10】Einhorn TA et al., J. Orthop. Research, 3:160, 1985
【非特許文献11】Walker et al., J. Orthop. Research, 13:4, 1995
【非特許文献12】Okihana H., et al., Histochemical J. 25:166, 1993
【非特許文献13】Nakagawa, et al., Calcif. Tissue Int., 53:127, 1993
【非特許文献14】Kato Y., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:9552, 1998
【非特許文献15】Glaser JH., et al., Journal of Biological Chemistry, 256:12607, 1981
【非特許文献16】Gerstenfeld LC et al., Journal of Cell Biology, 112:501, 1993
【非特許文献17】Hascell VC et al., Journal of Biological Chemistry, 251:3511, 1976
【非特許文献18】Bruckner P et al., Journal of Cell Biology, 109:2537, 1989
【非特許文献19】Poole et al., Anat. Rec., 224:167, 1989
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、従来よりも優れた、鉱質化した軟骨組織の成分を強化した生物材料、鉱質化生物材料、該生物材料の製造法および該生物材料の使用法等を提供することであった。具体的には、軟骨の鉱質化に関連する成分を含む、イン・ビトロで再形成された軟骨性組織の連続層を含む生物材料を提供することを課題とした。さらに、イン・ビボで動物に見いだされる関節軟骨の深部および表面石灰化軟骨域と実質的に同様な生化学的組成および生理学的構成を有することにより特徴付けられる鉱質化生物材料を提供することも課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、関節軟骨の深部関節軟骨および隣接する石灰化軟骨域を模倣したイン・ビトロ培養系を作り出した。培養された鉱質化軟骨性組織は、カルシウムアパタイト鉱物、マトリックス小胞、X型コラーゲンを含み、アルカリ性ホスファターゼ活性を有している。多分散プロテオグリカンが、この鉱質化軟骨組織の軟骨細胞によって合成される。このプロテオグリカンは、培養中の再形成非鉱質化軟骨中の関節軟骨細胞により合成されるプロテオグリカンよりもより大きい流体力学的大きさを有している。
【0010】
広くは、本発明は、軟骨の鉱質化に関連する成分を含む、イン・ビトロで再形成された軟骨性組織の連続層を含む生物材料に関する。本発明は、また、広くは、イン・ビボで動物に見いだされる関節軟骨の深部および表面石灰化軟骨域と実質的に同様な生化学的組成および生理学的構成を有することにより特徴付けられる鉱質化生物材料を意図している。
【0011】
関節軟骨組織の中間および表面域からの軟骨細胞は、本発明の生物材料の先端で培養でき、本発明の鉱質化生物材料と、該鉱質化生物材料に隣接し、接触する中間および表面非鉱質化層を含む再形成鉱質化軟骨性組織を生成する。表面および中間非鉱質化層は、イン・ビボで動物に見いだされる関節軟骨の、各々、中間および表面域と同様な、生化学的組織と、生理学的構成を有する。したがって、再形成鉱質化軟骨組織は、実質的に、イン・ビボでの関節軟骨組織と同様である。
【0012】
本発明はまた、軟骨組織の深部域から軟骨細胞を単離し、基材上に該軟骨細胞の層を形成し、適当な条件下、増殖培地で該軟骨細胞を培養し、マトリックスを蓄積させ、軟骨の鉱質化に関連する成分に富んだ軟骨性組織を形成させることを特徴とする本発明の生物材料の製造法にも関する。
【0013】
この製造法は、さらに、軟骨細胞または軟骨性組織を鉱質化剤の存在下で培養し、イン・ビボで動物に見いだされる関節軟骨の深部および隣接石灰化軟骨と実質的に同様な、生化学的組織と、生理学的構成によって特徴付けられる鉱質化生物材料の連続層を形成する工程からなってもよい。
【0014】
別法として、本発明の製造法は、所望により、関節軟骨性組織の中間および表面域から単離した軟骨細胞を、鉱質化剤の存在下に、該軟骨性組織の先端で培養し、深部鉱質化層ならびに中間および表面非鉱質化層を有する再形成鉱質化軟骨組織を生成させる工程からなってもよい。
【0015】
本発明は、さらに、(a)関節軟骨組織の深部域から軟骨細胞を単離し、基材上に当該軟骨細胞の層を形成させ、(b)(i)適当な条件下、当該軟骨細胞を増殖培地で培養して、マトリックスを蓄積させ、軟骨性組織を形成させ、当該軟骨性組織を鉱質化剤の存在下で培養するか、(ii)軟骨細胞を鉱質化剤の存在下で培養することにより得られる、イン・ビボで動物に見いだされる関節軟骨の深部および隣接石灰化軟骨域と実質的に同様な、生化学的組成と、生理学的構成を有する鉱質化軟骨性組成の連続層を含む鉱質化生物材料に関する。
【0016】
生物材料または再形成鉱質化軟骨性組織における軟骨細胞は、遺伝的欠陥を矯正または補償する生物学的に活性な蛋白質をコードする外因性遺伝子を含む組換ベクターで形質転換することができる。したがって、本発明はまた、鉱質化生物材料または再形成鉱質化軟骨性組織中の軟骨細胞が、遺伝的欠陥を矯正または補償する生物学的に活性な蛋白質をコードする外因性遺伝子を含む組換ベクターで形質転換されている鉱質化生物材料または再形成鉱質化軟骨性組織も意図する。
【0017】
さらに、本発明はまた、本発明の生物材料、鉱質化生物材料または再形成鉱質化軟骨性組織を、石灰化に影響する疑いのある物質の存在下で培養し、培養物中に生じた組織の生化学的組成および/または生理学的構成と、該物質の不存在下で培養した該生物材料、鉱質化生物材料または再形成鉱質化軟骨性組織の生化学的組成および/また生理学的構成とを測定することを特徴とする関節軟骨組織の石灰化に影響する物質をテストするシステムにも関する。該物質は、培養物に添加することができ、また、生物材料または再形成鉱質化軟骨性組織中の軟骨細胞を、当該物質を発現するように遺伝子操作してもよい、すなわち、軟骨細胞を該物質の外来性源としてもよい。
【0018】
本発明はさらにまた、本発明の生物材料および再形成鉱質化軟骨組織を、関節疾患の治療に有効な医薬製剤の効能をテストするための方法、本発明の生物材料および再形成鉱質化軟骨性組織を、損傷または欠損軟骨の置換または修繕するインプラントとして使用する方法にも関する。本発明はまた、本発明の生物材料を遺伝子治療において使用する方法も意図している。
【0019】
本発明はまた、患者の関節に本発明の生物材料または再形成鉱質化軟骨性組織を移植することを特徴とする患者の関節における損傷または欠損軟骨の置換または修繕する方法も意図する。本発明の生物材料または再形成鉱質化軟骨性組織を骨折部位に挿入する患者の骨折の治癒を促進する方法も意図する。
【0020】
本発明のこれら、および他の態様は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照して明らかにする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来よりも優れた、鉱質化した軟骨組織の成分を強化した生物材料、鉱質化生物材料、該生物材料の製造法および該生物材料の使用法等提供される。詳細には、本発明によれば、軟骨の鉱質化に関連する成分を含む、イン・ビトロで再形成された軟骨性組織の連続層を含む生物材料が得られる。また、本発明によれば、イン・ビボで動物に見いだされる関節軟骨の深部および表面石灰化軟骨域と実質的に同様な生化学的組成および生理学的構成を有することにより特徴付けられる鉱質化生物材料が得られる。本発明の生物材料により、骨や関節の損傷および疾病をうまく治療することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
上記したごとく、本発明は、軟骨鉱質化に関連する成分を含有するイン・ビトロで再形成された軟骨性組織の連続層を含む生物材料に関する。特に、これは、マトリックス小胞、X型、I型およびII型コラーゲンを含み、アルカリ性ホスファターゼ活性を有する軟骨細胞に富んでいる。該生物材料中の細胞は、大硫酸化プロテオグリカンを合成し、これらは非鉱質化関節軟骨培養物によって合成されるプロテオグリカンよりも大きな流動力学的大きさを有する。
【0023】
本発明はまた、イン・ビボで動物に見いだされる関節軟骨の深部および隣接石灰化軟骨域と実質的に同様な、生化学的組成と、生理学的構成を有する鉱質化生物材料にも関する。この鉱質化生物材料は、軟骨細胞に隣接していると同時に、細胞から離れた領域マトリックス内にも存在する複数の鉱物デポジットを有することにより特徴付けられる。該鉱物デポジットは、マトリックス小胞と関係して形成する。電子回折は、鉱物デポジット結晶がカルシウムヒドロキシアパタイトから構成されることを示している。アルカリ性ホスファターゼ活性が、鉱質化の間に検出される。
【0024】
本発明はまた、関節軟骨組織の深部域から軟骨細胞を単離し、基材上に軟骨細胞の層を形成し、適当な条件下で、培地中で、該軟骨細胞を培養し、マトリックスを蓄積させ、軟骨鉱質化に関連する成分で強化された軟骨性組織を形成させることを特徴とする本発明の生物材料の製造法にも関する。軟骨細胞または軟骨性組織は、さらに、鉱質化剤の存在下で培養し、イン・ビボで動物に見いだされる関節軟骨の深部および隣接部と実質的に同様な、生化学的組成と、生理学的構成を有する鉱質化軟骨性組織の連続層を形成させることができる。
【0025】
本発明方法に用いる軟骨細胞を、動物、好ましくはヒト、ウシ、ヒツジ、ウサギ、最も好ましくはヒト由来の関節軟骨から単離してもよい。成人または胎児組織から軟骨細胞を単離してもよい。本発明の1の具体例において、軟骨細胞を子ウシの中手−手根関節から単離する。
【0026】
好ましくは、関節軟骨深部にある軟骨細胞を単離する。関節軟骨組織の下部5〜25%、好ましくは下部15%を単離することにより、かかる軟骨細胞を得てもよい。
【0027】
本発明の好ましい具体例において、軟骨全体から得た同数の細胞において検出されるよりも少なくとも約4倍のアルカリ性ホスファターゼ活性を有する細胞を用いて本発明方法における培養系を行う。例えば、少なくとも2μM PNP/時/μg DNA、最も好ましくは少なくとも14μM PNP/時/μg DNAのアルカリ性ホスファターゼを有する細胞を用いて本発明方法における培養を行ってもよい。
【0028】
Kandel et al,Biochem,Biophys.Acta.1035:130,1990に記載のような連続的酵素消化法により軟骨細胞を単離してもよい。例えば、軟骨を0.5%プロテアーゼで処理し、次いで、0.04%細菌コラゲナーゼで処理してもよい。
【0029】
本発明方法によれば、軟骨細胞層が基材表面に形成される適当な基材は、骨、加工生物材料および多孔性組織培養インサート、例えばフィルターインサートを包含する。基材を付着因子でコーティングしてもよい。付着因子は当該分野において知られており、例えば、Streuli and Bissell, J.Cell.Biol.110:1405,1990およびBuck and Horwitz,Ann.Rev.Cell Biol.3:179,1987参照。付着因子の例は、タイプIコラーゲン、タイプIIコラーゲン、タイプIVコラーゲン、コラーゲンセグメントの合成ペプチド、好ましくはコラーゲンのαI鎖に存在する15個のアミノ酸配列766GTPGPQGIAGQRGVV780(Bhatnager and Qian,38th Annual Meeting of the Orthopedic Research Society 17:106,1992)、フィブロネクチン、ゼラチン、ラミニン、ポリリジン、ビトロネクチン、サイトタクチン、エキノネクチン、エンタクチン、テナスチン、スロンボスポンジン、ウボモルリン、ビグリカン、コンドロイチン硫酸、デコリン、デルマタン硫酸、ヘパリン、およびヒアルロン酸を包含する。本発明方法に用いても良い好ましい付着因子はコラーゲンであり、最も好ましくはタイプIIコラーゲンである。基材をコーティングする場合には、それを風乾し、滅菌してもよい。
【0030】
本発明の好ましい具体例において、基材はMillicell CM(Millipore Corp.,Bedford,MA.USA)(孔サイズ0.4ミクロンであり、付着因子で、好ましくはタイプIIコラーゲン0.5mg/ml 0.012N HCl(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO,USA)でコーティングしたもの)として知られる組織培養インサートである。
【0031】
約1x10ないし8x10個/cmの細胞密度として軟骨細胞を基材上に撒く。コーティングされたまたはされていない基材上に撒いた軟骨細胞を適当な培養条件で増殖させる。適当な培地の例は当該分野において知られており、例えば、Hamの F12および/またはDulbecco改変Eagle培地(DMEM)である。好ましくは、培養4〜5日後にDMEMを用いる。培地は血清、例えば約2ないし20%の濃度範囲のウシ胎児血清を含有していおてもよく、さらに増殖因子を含んでいてもよく、アスコルビン酸を含んでいてもよい。基材の上または下に培地を適用する。COを補足した加湿雰囲気下、37℃で細胞を培養してもよい。架橋コラーゲンに対するリジルオキシダーゼのコファクター、例えば硫酸銅を用いてより多くのコラーゲンを保持し、より厚い軟骨を提供してもよい。
【0032】
本発明の好ましい具体例において、5%ウシ胎児血清補足HamのF12培地で5日間単離軟骨細胞を培養し、次いで、培地を20%ウシ胎児血清、25mM Hepesバッファーおよびアスコルビン酸(最終濃度100μg/ml)を含有するDMEMと交換する。
【0033】
軟骨鉱化に関連した成分を豊富化した軟骨細胞または軟骨組織、すなわち生物学的材料を、鉱化を誘導しうる1種またはそれ以上の鉱化剤で処理してもよい。適当な鉱化剤は、β−グリセロホスフェート、ATP、およびホスホエタノールアミンを包含する。所望量の鉱化が得られるように、本発明方法に用いる適当な鉱化剤濃度を選択する。例えば、本発明方法に使用できるβ−グリセロホスフェート量は約2.5ないし10mMの最終濃度である。一般的には、最初に軟骨細胞を撒いてから2日後、好ましくは14日後に鉱化剤を適用する。一般的には、鉱化剤は培養期間全体にわたって存在して最大の鉱化を達成する。さらに6週間細胞を培養して、本明細書記載の鉱化した生物学的材料を得る。細胞を6週間未満(または6週間以上)培養して、移植または遺伝子治療のごときいくつかの用途に適しうる製品を得てもよい。
【0034】
特別な培養条件を用いて鉱化生物学的材料の鉱化量を選択してもよい。例えば、軟骨深部由来の細胞数が少ない培養を行った場合、より少ない鉱物質沈着が起こり、例えば、同じ全細胞数を維持しつつ深部培養に戻す表面細胞を増加させると鉱物質沈着は減少する。鉱物質形成は培地へのアスコルビン酸導入によっても促進される。
【0035】
培養において、最初期の石灰化が軟骨細胞周囲に見られ、これらの細胞のいくつかは培養6週間後でさえも組織学的に生存しているように見える。培養の最初の1週間においてたまに生じる単一細胞の周囲で最小量の鉱化が起こりうる。超微細構造は、マトリックス小胞に関連して結晶性沈着物が生じることを示す。石灰化軟骨中にマトリックス小胞が存在するので、このことは、これらの培養物がイン・ビボで起こる石灰化プロセスを模倣していることを示唆する。石灰化組織の生化学的組成は、関節軟骨組織の石灰化ゾーンと実質的に同じである。細胞は培養開始段階において検出可能なアルカリ性ホスファターゼ活性を有し、アルカリ性ホスファターゼ量は鉱化時間とともに増加する。
【0036】
関節軟骨の中部および表面ゾーンからの軟骨細胞を、本発明生物学的材料の先端で培養して、イン・ビボにおける完全な厚さに類似した再構成された軟骨をイン・ビトロで得てもよい。本発明の1の具体例において、関節軟骨の深部から軟骨細胞を単離し、上記のごとくプレートに撒いて培養する。軟骨細胞は細胞外マトリックスを蓄積し、軟骨組織を形成する。次いで、関節軟骨の中部および表面ゾーンから軟骨細胞を単離し、深部ゾーンからの細胞により形成された軟骨組織上に撒く(例えば、最適濃度は3x10個/cmである)。しかしながら0.2x10個/cm程度の細胞濃度を用いてもよい。上記鉱化剤の存在下、適当な培養条件下で培養物を増殖させる。例えば、20%ウシ胎児血清含有Ham F12培地で増殖させ、次いで、約5日後に10mMのβ−グリセロホスフェート、100μg/mlのアスコルビン酸、および25mMのHepesバッファーを補足した、20%ウシ胎児血清含有DMEM培地と交換する。次いで、培養物を6週間またはそれ以上維持する。これにより、イン・ビボにおける軟骨組織に類似した深い鉱化層ならびに中部および表面の非鉱化層を有する再構成された鉱化軟骨組織が得られる。
【0037】
本発明の生物学的材料、鉱化生物学的座料、および再構成された鉱化軟骨組織を、軟骨構造、機能および発達、ならびに石灰化プロセスを研究するためのイン・ビトロでのモデル系として用いることができる。
【0038】
本発明具体例によれば、生物学的材料、鉱化生物学的材料、および再構成された鉱化軟骨組織を用いて、石灰化に影響する化合物を試験してもよい。軟骨組織の石灰化に影響する物質についての本発明試験系は、本発明の生物学的材料、鉱化生物学的材料または再構成された鉱化軟骨組織を石灰化に影響する可能性のある物質の存在下で培養し、次いで、培養で得られた生物学的組成および/または生理学的組織を、該物質の不存在化下で培養された生物学的材料、鉱化生物学的材料、または再構成された鉱化軟骨組織の生化学的組成および/または生理学的組織と比較して調べることを特徴とする。
【0039】
物質を培養物に添加してもよく、あるいは生物学的材料または再構成された鉱化軟骨組織中の軟骨細胞を遺伝子操作して物質を発現するように、すなわち、軟骨細胞が内在性の物質の源として役立つようにしてもよい。ウイルスまたはレトロウイルス遺伝子を移行させて特定の物質を生成させることにより軟骨細胞を遺伝子操作してもよい。培養の所望期間中、物質を培地中に放出するように、遺伝子操作された細胞を構築し維持する。
【0040】
本発明の系を用いて石灰化の異なる段階に対する物質の影響を分析してもよい。組織の生化学的組成および/または生理学的組織ならびに種々の時間(例えば2、4、6および8週間)において培養物中で起こった鉱化を評価することにより、石灰化の極めて初期、中期、および後期の段階における細胞に対する影響を評価してもよい。
【0041】
培養物中に生じた組織の生化学的組成および/または生理学的組織を、本明細書記載の方法を用いて評価してもよい。
【0042】
本発明の好ましい具体例において、本発明の生物学的材料および再構成された鉱化軟骨組織を、関節の疾病(例えば、骨関節炎、炎症性関節症、敗血性関節炎、および結晶性関節症)の治療に有用な医薬調合品の試験に使用してもよい。
【0043】
本発明の生物学的材料および再構成された鉱化軟骨組織を患者の関節中に移植して、損傷を受けた、あるいは欠損した軟骨と置換し、あるいはそれらを修復してもよい。生物学的材料および再構成された鉱化軟骨組織を軟骨発育不全の研究および治療に使用することができる。さらに、通常には軟骨は血管浸潤に対して耐性であるので、生物学的材料を用いて血管形成因子を試験することもできる。
【0044】
本発明の生物学的材料および再構成された鉱化軟骨組織を用い、骨折部位中に挿入して骨折の治癒を促進することも考えられる。
【0045】
また本発明は、本発明の生物学的材料および再構成された鉱化軟骨組織を遺伝子治療に用いることを企図する。それゆえ、感染細胞の遺伝子型および表現型を変化させるように選択された、生物学的に活性のある蛋白をコードしている外来遺伝子を含む組み換えベクターを、本発明の生物学的材料および再構成された鉱化軟骨組織中の軟骨細胞中に導入してもよいと考えられる。遺伝学的欠損を修正または補填する生物学的に活性のある蛋白をコードしている外来遺伝子を、生物学的材料および再構成された鉱化軟骨組織中に導入してもよい。例えば、TIMP(金属プロテアーゼの組織阻害剤)を軟骨細胞中に導入して、細胞がこの蛋白を分泌し、骨関節炎およびリューマチ性関節炎のごとき疾病において局在化した軟骨細胞により合成される金属プロテアーゼを阻害することができる。また、遺伝子を挿入して鉄を代謝させることもでき、そのことは地中海貧血の治療において有用であろう。組み換えベクター中に含まれる選択遺伝子によりコードされる選択可能マーカーの発現レベルを測定することにより、外来遺伝子の発現を定量してもよい。
【0046】
下記材料および方法を、実施例において説明する研究に使用した。
【0047】
軟骨細胞培養: 子ウシの中手−手根関節から関節軟骨を露出させ、軟骨の大部分を取り、捨てた。残った深部関節および石灰化軟骨を軟骨下の骨から切除し、集めた。連続的酵素消化を用いてこの組織から軟骨細胞を単離し、米国特許第5326357号およびBoyle,J.et al;Osteoarthtitis and Cartilage 3:117-125,1995(参照によりそれらを本明細書に記載されているものとみなす)に記載のごとく、タイプIIコラーゲンでコーティングしたフィルターインサート(MilliporeR CM)上に5x10個/cmの密度で撒いた。5%ウシ胎児血清および25mM Hepesを含有するHamのF12培地に細胞を撒いた。5日後、培地を、20%ウシ胎児血清、25mM Hepesおよびアスコルビン酸(最終濃度100μg/ml)を含有するDulbecco改変Eagle培地(DMEM)に交換した。2〜3日ごとに培地を交換し、新鮮なアスコルビン酸をそのつど添加した。2週間後、β−グリセロホスフェート(最終濃度10mM)を培地に添加した。選択した実験においては、β−グリセロホスフェート濃度を0から10mMまで変化させた。
【0048】
米国特許第5326357号(参照により本明細書に記載されているものとみなす)記載のごとく全軟骨から単離した細胞を用いて対照培養物を作成した。
20%ウシ胎児血清、25mM Hepesおよびアスコルビン酸を含有するHamのF12培地中でこれらの細胞を維持したが、β−グリセロホスフェートを与えなかった。軟骨細胞培養物の組織学的評価: プレートに撒いてから8週目までの種々の時点において培養物を集め、10%緩衝化ホルマリン中で固定し、パラフィン浸漬した。切片(5ミクロン)を切り、ヘマトキシリンまたはエオシンで染色して細胞充実性を評価し、トルイジンブルーで染色して硫酸化プロテオグリカンの存在を示し、あるいはフォン・コッサ染色して鉱化を示した。
【0049】
アルカリ性ホスファターゼ活性: 種々の時点において培養物をフィルターからバッファーA(0.1% Triton X、0.2M Tris HCl,pH7.4,45.7mM NaCl)中に取り、氷上で15秒間超音波処理した。4℃で20分、700gの遠心分離により溶液を清澄化し、使用するまで−20℃で保存した。37℃の0.07M バルビトンナトリウム,pH9.3(BDH Inc., Toronto, Canada)中で抽出物の一部をp−ニトロフェノールホスフェートの0.06M溶液と1時間混合することによりアルカリ性ホスファターゼ活性を調べた。50μlの1.5N NaOHを添加することにより反応を停止した。アッセイを96ウェルプレート中で行い、405nmにおいて分光学的測定により分析した(Titertek Multiscan)(Kato,Y.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.85:9522-9556,1988)。p-ニトロフェノールを用いて標準曲線を得た。結果をDNA含量に対して正規化した。すべての実験を3系で行い、少なくとも3回繰り返した。
【0050】
培養物のDNA含量: 種々の時点で培養物を得て、パパイン消化し、Hoechst 33258色素(Polysciences Inc. Warrington PA)を用いることおよびすでに記載(Boyle et al.,Osteoarthritis and Cartilage,3:117-125,1995)されたように蛍光測定法によりDNA含量を測定した。
【0051】
電子顕微鏡: 4週間目で培養物を得て、0.1Mカコジル酸ナトリウムバッファー中2%グルタルアルデヒドで固定し、1%四酸化オスミニウムで後固定し、エタノール濃度を段階的に増加させ、次いで、プロピレンオキシドにより脱水し、次いで、Spurrエポキシ樹脂に浸漬した。薄切片を切り、クエン酸鉛および酢酸ウラニルで染色し、Philips 430透過型電子兼顕微鏡を用いて超微細構造を調べた。鉱物質組成を調べるために、選択部位の電子回折を行って得られたパターンを既知標準と比較することにより結晶を試験した。
【0052】
マトリックス中のコラーゲンの分析: これらの組織におけるコラーゲン合成を試験するために、軟骨細胞を[14C]プロリン(4μCi)とともに24時間インキュベーションした。4℃においてコラーゲンをペプシン(0.5M酢酸中100μg/ml)[Worthington Biochemical Corp.,Frechold,NJ]で48時間抽出した。4xLaemmliバッファーを添加することにより消化を停止した。8% SDS−ポリアクリルアミドゲルで抽出物を分離し、ウェスタンブロットおよびオートラジオグラフィー用にニトロセルロース膜得に移した。タイプIコラーゲンと反応する抗体(Southern Biotechnology Assoc.,AL,USA)、タイプIIコラーゲンと反応する抗体(Southern Biotechnology Assoc.,AL,USA)またはタイプXコラーゲンと反応する抗体(Gibson, G.Trans.Orthop.Res, 20:28, 1995)のいずれかとともにブロットを一晩インキュベーションした。アルカリ性ホスファターゼと抱合した、アフィニティー精製されたヤギ・抗−ウサギIgG抗体を用いて反応性を調べた。ニトロブルーテトラゾリウムおよび5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート(NBT/BCIP)(GIBCO BRL, Burlington, Ont, Canada)を基質として添加して発色反応を行った。次いで、ブロットをX−oMat ARフィルムに1週間曝露した。
【0053】
新たに合成されたプロテオグリカンの分析: 鉱化培養物中のプロテオグリカン生合成を分析するために、培養物を[35S]硫酸塩(1μCi/ウェル)とともに24時間インキュベーションし、次いで、培養物を集めた。0.1Mの6−アミノヘキサン酸、50mMのベンゾアミジンHCl、10mMのEDTAおよび5mMのN−エチルマレイミドを含有する50mM酢酸ナトリウム,pH5.8中の4MのグアニジンHClでプロテオグリカンを4℃で24時間抽出した。4℃で5分間遠心分離することにより未消化鉱物質を除去した。解離条件下、4℃においてセファロースCL−2Bカラムクロマトグラフィー(1x100cm)によりプロテオグリカンモノマーのサイズを調べた。6ml/時の流速を用いた。その分配係数KAVに関して溶離プロフィールを分析した[KAV=(Ve−Vo)/(Vt−Vo)](式中、Vt=全体積、Vo=ボイド体積、Ve=溶離体積)。[35S]SOを用いてVtを決定し、デキストラン硫酸を用いてボイド体積を決定した。
【0054】
下記の非限定的な実施例は本発明の説明である。
【実施例1】
【0055】
鉱化軟骨細胞培養物の特徴づけ
深部からの軟骨細胞の豊富化の決定: 関節軟骨の石灰化ゾーンにおいて、あるいはその上方でアリカリ性ホスファターゼ活性が検出されるので、この酵素をマーカーとして用いて、深部軟骨からの細胞を含むこれらの培養物の豊富化を評価した。少なくとも2μM PNP/時/10個のアルカリ性ホスファターゼ活性を有する細胞であって、全軟骨から得た同数の細胞において検出されるアルカリ性ホスファターゼ活性(データ示さず)と比較した場合にアルカリ性ホスファターゼ活性が少なくとも4倍増加している細胞を用いて培養を行った。これ未満のアルカリ性ホスファターゼ活性を有する細胞は、同じように鉱化せず、あるいは迅速には鉱化しなった。平均すると、軟骨の深部層から単離された細胞のアルカリ性ホスファターゼ活性は4.1±0.82μM PNP/時/μg DNA(平均値±標準偏差)であった。対照的に、切除された軟骨の上半分から単離された細胞(これを用いて培養を行わなかった)のアルカリ性ホスファターゼ活性は0.3±0.05μM PNP/時/μg DNA(平均値±標準偏差)であり、アルカリ性ホスファターゼ含有軟骨細胞での培養物の豊富化が確認された。
【0056】
軟骨細胞培養物の組織学的外観: 図1は、2週目(図1A)および8週目(図1B)に集めたホルマリンおよびパラフィン浸漬した軟骨細胞の組織学的外観を示す。細胞が増殖したフィルター(F)が存在し、2週目において軟骨組織は石灰化を示していなかった(フォン・コッサ染色、倍率400倍)。
【0057】
培養の最初の2週間における軟骨細胞は細胞外マトリックスを蓄積し、トルイジンブルー染色により組織学的に示される硫酸化プロテオグリカンを含む軟骨組織の連続した層を形成した(図1A)。組織の下半分の細胞は肥大しているように見え、組織学的に大きな裂孔が周囲にあった。組織が形成されると、β−グリセロホスフェートの添加により鉱化が誘導された。位相差顕微鏡によれば、多くの培養物においてβ−グリセロホスフェートの添加1日以内に急速に石灰化が起こったことが可視化された。培養物の組織学的切片は、軟骨組織の下半分の単一細胞の周囲に鉱化がおこり、鉱化の程度は時間とともに増し、連続した鉱化層を形成した(図1B)。DMEMのかわりにHam培地に培養物を維持し、β−グリセロホスフェート濃度を2.5mM未満とした場合には、進行的な鉱化は組織学的には観察されなかった(データ示さず)。2.5ないし10mMの間の濃度のβ−グリセロホスフェートは鉱化を誘導し得たが、その速度は遅かった。関節軟骨の軟骨全層または上部3分の2から得た軟骨細胞を用いて得られた培養物は鉱化組織の連続した層を形成しなかった。
【0058】
培養物中のアルカリ性ホスファターゼ活性の決定: アルカリ性ホスファターゼはアパタイト結晶形成に関与しているので(Whyte,M.P.Alkaline phosphatase:physiological role explored in hypophosphatasia. In Peck WA (ed.). Bone and Mineral Research, 6th Ed. Elsevier Science Publishers, Amsterdam, 1989:175-218およびYoon,K,; Golub,E.E.; Rodan,G.A. Alkaline phosphatase cDNA transfected cells promote calcium and phosphate deposition. In Glimcher MJ, Lian JB (eds.) Proceedings of the Third International Conference on the Chemistry and Biology of Mineralized Tissues. Gordon and Breach Science Publishers, New York, 1989:643-652)、しかもある培養条件下では軟骨細胞はこの酵素活性を失うので(Xu,Y.et al/.J.Rheum.21(5):912-919,1994)、培養物中の細胞をアルカリ性ホスファターゼ活性の存在についてアッセイした。
【0059】
図2は、深部軟骨からの細胞により得られた培養物の培養2週目のアルカリ性ホスファターゼ活性を示すグラフであり、鉱化直前(0日目)よびマトリックス鉱化中のものである。3回繰り返し行った1の典型的な実験の平均値±標準偏差として結果を示す。各時点で実験を3系で行った。
【0060】
図2に示すように、培養物は培養期間中アルカリ性ホスファターゼ活性を発現し続けた。酵素活性は時間とともに増加した。増加するアルカリ性ホスファターゼ活性の重要性は不明であるが、他の鉱化培養物においても示されている(Iwamoto,M.et al.,Dev.Biol.136:500-507,1989、Wu,L.N.Y.et al., J.Biol.Chem., 264(35):21346-21355,1989)。
【0061】
鉱物質の超微細構造の特徴づけ: 電子顕微鏡により鉱化培養物を試験して、初期の結晶形成部位として関与しているマトリックス小胞(Wuthier,R.E Mechanism of matrix vesicle mediated mineralization of cartilage. ISI Atlas Sci.Biochem.1:231-241,1988)がこれらの培養物のマトリックス中に存在するかどうかを調べた。超微細構造的には、軟骨細胞は、コラーゲンおよびプロテオグリカンを含有するマトリックスに囲まれていた(図3A)。マトリックス小胞はマトリックス中に存在し、結晶はマトリックス小胞に隣接して見られた(図3B)。結晶沈着物は軟骨細胞に隣接して見られ、同時に細胞から離れた局所的なマトリックス中にも見られた。しかしながら、これらの局所的沈着物が切片平面中にない細胞に近接することは実際には可能である。選択部分の電子回折により結晶を分析し、それらがヒドロキシアパタイトを含むことが示された(図3C)。
【0062】
細胞外マトリックスの組成: 軟骨の細胞外マトリックスは、大きなプロテオグリカン(アグレカン)および特別なタイプのコラーゲンのごとき特徴的な高分子を含むので(Lovell,T.P.and Eyre, D.R.Trans.Orthop.Res.Soc.13:511,1988;Oegema,T.R.Jr.,Thompson,R.C.Jr.The zone of calcified cartilage. Its role in osteoarthritis. In Kucttner,K.ed. Articular Cartilage and Osteoarthritis. New York: Paven Press,1922:319-331;およびOegema,T.R.Jr., Thompson,R.C. Cartilage-Bone Interface (Tidemark). In Brandt,K. ed. Cartilage Changes in Osteoarthritis. Indiana School of Medicine publication. Basel:Ciba-Geigy,1990:43-52)、培養物のマトリックスの組成を調べた。マトリックス中のコラーゲンのタイプを評価するために、マトルックスをペプシンで消化した。ペプシン抽出物をSDS−PAGEおよびオートラジオグラフィーまたはウェスタンブロット分析のいずれかに供した。
【0063】
図4Aは、軟骨組織形成後(14日目)、および組織が鉱化した時(28日目)の、軟骨細胞により合成されペプシン抽出された[14C]プロリン標識コラーゲンのオートラジオグラムを示す。図4Aは、軟骨細胞培養物のマトリックス中のタイプII、タイプX、およびタイプIコラーゲンを示すバンドを示す。鉱化軟骨において検出されたタイプXIコラーゲンを示唆するバンド(Lovell,T.P.and Eyre, D.R.Trans.Orthop.Res.Soc.13:511,1988)もオートラジオグラムに示された。
【0064】
コラーゲンの存在をウェスタンブロット分析により確認した。詳細には、図4Bは、鉱化培養物(28日目)から抽出されたコラーゲン(E)についての、タイプIIコラーゲン(II)、タイプIコラーゲン(I)、またはタイプXコラーゲン(X)と反応する抗体を用いたウェスタンブロット分析を示す。適当な精製コラーゲンタイプを各ブロットの標準(S)として用いた。軟骨細胞により合成されたコラーゲンのタイプはマトリックス鉱化中には変化しなかった。
【0065】
マトリックス中のプロテオグリカンを調べるために、[35S]SO標識プロテオグリカンを6週目の鉱化培養物からグアニジニウム抽出した。図4Cは、42日目の鉱化培養物から抽出された、新たに合成されたプロテオグリカンの溶離プロフィールを示す。解離条件下のセファロース2Bカラムクロマトグラフィーにより[35S]SO標識プロテオグリカンモノマーのサイズを決定した。図4Cは、5回繰り返し行った実験から得た典型的なプロフィールである。解離条件下でのカラムクロマトグラフィーによる分析により、プロテオグリカンは大きな流体力学的サイズ(KAV=0.26±0.03)を有し、多分散系であった(図4C)。これらのプロテオグリカンは、イン・ビトロで形成される非鉱化軟骨組織において軟骨細胞により合成されるものよりも大きかった。
【0066】
ここに説明した研究は、関節軟骨培養系を説明するものであり、その中で軟骨組織がイン・ビトロで形成され、それは鉱化を誘導されうる。これらの培養を行うために使用した軟骨細胞は、関節軟骨の深部ゾーン(下部15%)から得たものであり、全軟骨からのものではないという点で、すでに記載されている非鉱化性関節軟骨細胞培養のものとは異なる。2つの理由から、細胞単離のためにこの領域を選択した。1つには、この領域が、鉱化に化よする酵素であるアルカリ性ホスファターゼ活性を有する細胞を含むためであり(Yoon,K.;Golub,E.E.;Rodan,G.A.Alkaline phosphatase cDNA transfected cells promote calcium and phosphate deposition. In Glimcher MJ, Lian JB (eds.) Proceedings of the Third International Conference on the Chemistry and Biology of Mineralized Tissues. Gordon and Breach Science Publishers, New York, 1989:643-652)、2つ目には、軟骨のこの領域はイン・ビボで鉱化を受け、細胞が、適当な条件下で鉱化に好ましいマトリックス組成を合成する能力を有することが示されているためである。
【0067】
結果は、鉱化中の軟骨細胞培養物は、現在まで試験されてきたものと同様、石灰化軟骨と同じいくつかの成分(Gannon,J.M.,et al., J.Orthop.Res.9:485-494,1991; Oegema,T.R.Jr.,Thompson,R.C.Jr.The zone of calcified cartilage. Its role in osteoarthritis. In Kucttner,K.ed. Articular Cartilage and Osteoarthritis. New York: Paven Press, 1922:319-331;およびOegma,T.R.Jr., Thompson,R.C. Cartilage-Bone Interface (Tidemark). In Brandt,K. ed. Cartilage Changes in Osteoarthritis. Indiana School of Medicine publication. Basel:Ciba-Geigy,1990:43-52;およびWardale,J.R.and Duance, V.C., J.Cell.Sci.105:957-984;1993)を含んでおり、特に、それらは、マトリックス小胞、タイプXコラーゲンおよびアルカリ性ホスファターゼ活性のように軟骨鉱化に関与していると考えられる(Poole,R.A.et al. Anat.Rec.224:167-179,1989)。これらの鉱化中の培養物において形成された結晶はヒドロキシアパタイトであり、石灰化軟骨に存在する結晶タイプであった。さらにそのうえ、イン・ビボにおける石灰化軟骨と同様に、超微細構造試験により、結晶沈着物がマトリックス小胞に関連して形成したことが示された。鉱化に関与することが示された成分がこれらの培養物中に存在したが、マトリックスの進行的鉱化にはβ−グリセロホスフェートが必要であった。ホスフェート供与体として作用するβ−グリセロホスフェート存在下で起こる石灰化は人工的であるかもしれないことが示唆されているが(Bruckner,P.,et al.,J.Cell.Biol.109:2537-2545, 1989)、このことは、これらの培養物における状況とはなり得ないであろう。鉱化量は培養物中の深部ゾーン由来の細胞数に影響されうることがわかった。同じ撒種密度で培養を行うが、表面ゾーンから単離した軟骨細胞数を増加させながら深部細胞を希釈した場合、このことにより、培養物の組織学的切片の光学野顕微鏡試験により決定される鉱物質沈着物のサイズは減少した(データ示さず)。さらにそのうえ、β−グリセロホスフェートが必要であるが、鉱化を誘導するには低濃度(2.5mM)のβ−グリセロホスフェートで十分であった。
【0068】
これらの培養物中の軟骨細胞は、タイプIIコラーゲンおよび大きな硫酸化プロテオグリカンを合成する表現型を維持し、その表現型は分化した軟骨細胞に特徴的なものである。しかしながら、タイプIコラーゲンも存在した。このコラーゲンタイプは、正常な硝子質(非鉱化)軟骨において通常検出されず、ある培養条件下ではその合成は軟骨細胞の脱分化を示唆するものと考えられる。免疫蛍光研究により、タイプIコラーゲンが関節軟骨の石灰化ゾーンに存在することが示されているので(Wardale,J.R.and Duance,V.C.;J.Cell.Sci.105:975-984,1993)、これらの培養物におけるその軟骨細胞による合成は、細胞表現型の影響を反映しそうである。鉱化中の培養物において軟骨細胞により合成されるプロテオグリカンは、フィルターインサート上で増殖した非鉱化性関節軟骨細胞(軟骨全域から得た細胞)(Boyle,J.,et al.,Osteoarthritis and Cartilage 3:117-125,1955)により合成されるプロテオグリカンよりも大きな流体力学的サイズを有していた。表面から深部に至る関節軟骨の異なる層から抽出されたプロテオグリカンのサイズを試験する研究により、解離条件下でのプロテオグリカンの流体力学的サイズは、すべてのゾーンにおいて類似であるが同じでないことが示されている(Korver, G.H.V.et al/.Matrix 10:394-401,1990;Mitrovic,D.R.and Darmon, N, Osteoarthritis and Cartilage 2:119-131,1994)。ヒト・関節軟骨の深部ゾーンにおける軟骨細胞により合成されるプロテオグリカンの流体力学的サイズは0.18ないし0.22の範囲のKdを有していた(Mitrovic,D.R.and Darmon,N,Osteoarthritis and Cartilage 2:119-131,1994)。鉱化中の軟骨の他のタイプの細胞、例えば骨端板軟骨および胚の付属器芽細胞も、大きなプロテオグリカンを合成することが示されている(Hascall,V.C.et al.J.Biol.Chem., 251:3511-3519, 1976; Plaas, A.H.K.and Sandy,J.D.,Matrix 13:135-147,1993;およびSilbermann, M., et al.,Bone 8:117-126,1987)。骨端軟骨細胞については、合成されるプロテオグリカンの流体力学的サイズは、増殖プレート中の細胞の位置によって変化した(Plaas,A.H.K.and Sandy,J.D.Matrix 13:135-147,1993)。軟骨細胞に分化する胚の間葉細胞はアグレカン以外のプロテオグリカンを合成する(Plaas,A.H.K.and Sandy,J.D.Matrix 13:135-147,1993;およびConrad,H.E.,JBiol.Chem.,260:16064-16067,1985)。ベルシカン(PG−M)は同定されているプロテオグリカンの1つであり、その特徴づけにより、それがアグレカンよりも大きなコア蛋白を有することが示されている(Plaas, A.H.K.and Sandy,J.D.Matrix 13:135-147,1993)。ベルシカンも、骨関節炎の関節軟骨において検出されている(Nishida,Y.et al.,Osteoarthritis and Cartilage 2:43-49,1994)。
【0069】
結論として、鉱化中の関節軟骨細胞培養物は、イン・ビボにおいてその表現型を維持し、関節軟骨の深部ゾーン由来の細胞の代謝および軟骨組織の鉱化を調べるためのモデルとして有用なはずである。
【実施例2】
【0070】
関節軟骨の中部および表面ゾーンからの軟骨細胞を、上記の鉱化軟骨組織の先端で培養した。20%ウシ胎児血清を含有する上記HamのF12培地で軟骨細胞培養物を増殖させ、約5日後、培地を、10mM β−グリセロホスフェート、100μg/mlのアスコルビン酸、および25mM Hepesバッファーを補足した、20%ウシ胎児血清を含有するDMEM培地と交換した。次いで、培養物を6週間またはそれ未満、維持した。これにより、イン・ビボにおける関節軟骨組織と実質的に同様な深い鉱化層ならびに中部および表面非鉱化層を有する再構成された鉱化軟骨組織が得られた。詳細には、図5は、深部細胞により形成された軟骨組織上で培養された表面および中部ゾーンの軟骨細胞を示す49日目の顕微鏡写真である。軟骨組織が存在し、鉱物質沈着物が深部細胞によって形成された組織にのみ存在することを示す(フォン・コッサ染色)。
【0071】
図6は、ホルマリン固定され、パラフィン浸漬された軟骨細胞培養物の組織学的外観を示す顕微鏡写真である。培養物をATP存在下で8日間インキュベーションしたところ、鉱化(△)が組織下部ゾーンに見られる。フィルターインサートは軟骨組織(F)の下に依然として存在している。
【0072】
好ましい具体例において本発明の原理を例示説明したが、当業者は、かかる原理から逸脱することなく、配列および詳細において本発明を修飾することができると理解すべきである。我々は、下記請求の範囲に含まれるすべての修飾を権利請求する。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、骨の再生に使用される材料および組成物の製造分野、骨の再生の研究分野等において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1Aは、2週間目に採取した、ホルマリン固定、パラフィン包埋した軟骨細胞培養物の組織外観を示す顕微鏡写真である。図1Bは、β−グリセロホスフェート(10mM)の存在下に培養し、8週間後に採取したホルマリン固定、パラフィン包埋した軟骨細胞培養物の組織外観を示す顕微鏡写真である。
【図2】図2は、マトリックス鉱質化の直前および間の深部軟骨細胞培養物のアルカリ性ホスファターゼ活性を示すグラフである。
【図3】図3Aは、細胞外マトリックス(<)における軟骨細胞(C)および鉱物デポジットを示す軟骨性組織の電子顕微鏡写真である(クエン酸鉛および酢酸ウラシル、倍率20,000倍)。図3Bは、鉱物デポジットおよびマトリックス小胞の顕微鏡写真である(倍率11,000倍)。図3Cは、結晶の電子回折パターンであり、これは、ヒドロキシアパタイトの特徴である。
【図4】図4Aは、軟骨性組織の形成(14日)および組織の鉱質化(28日)後、軟骨細胞によって合成されたペプシン抽出[14C]プロリン標識コラーゲンのオートラジオグラムである。図4Bは、II型コラーゲン(II)、I型コラーゲン(I)またはX型コラーゲン(X)と反応性の抗体を用いて鉱質化培養物(28日)から抽出したコラーゲンの分析を示す免疫ブロットである。図4Cは、培養物中に形成された6週齢の鉱質化軟骨性組織(●−●)および7週齢の鉱質化軟骨性組織(○−○)から抽出された新たに合成されたプロテオグリカンのプロテオグリカン溶出プロフィールである。
【図5】図5は、深部細胞により形成された組織で培養された表面および中間域の軟骨細胞を示す49週齢のホルマリン固定された、パラフィン包埋培養物の顕微鏡写真である。
【図6】図6は、ATPの存在下で増殖した22週齢の、ホルマリン固定された、パラフィン包埋軟骨細胞の組織的外観を示す顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2μM PNP/時/μg DNAのアルカリ性ホスファターゼ活性を有し、I、IIおよびX型コラーゲン、大きな流動力学的サイズを有する硫酸化プロテオグリカン、マトリックス小胞、ならびにカルシウムヒドロキシアパタイト結晶沈着物を含むマトリックスにて囲まれている軟骨細胞により特徴づけられる連続した鉱質化層からなる単離され精製された鉱質化生物材料。
【請求項2】
少なくとも2μM PNP/時/μg DNAのアルカリ性ホスファターゼ活性を有し、I、IIおよびX型コラーゲン、大きな流動力学的サイズを有する硫酸化プロテオグリカン、マトリックス小胞、ならびにカルシウムヒドロキシアパタイト結晶沈着物を含むマトリックスにて囲まれている軟骨細胞により特徴づけられる連続した鉱質化層を必須としてなる単離され精製された鉱質化生物材料。
【請求項3】
軟骨細胞が、遺伝学的欠陥を矯正または補償する生物学的に活性のある蛋白をコードする外因性遺伝子を含む組換えベクターで形質転換されたものである、請求項1に記載の単離され精製された鉱質化生物材料。
【請求項4】
下記工程を含む、請求項1に記載された単離され精製された鉱質化生物材料の製造方法:
(a)動物関節軟骨組織の深部域(下部15%)から軟骨細胞を単離し、ここに該軟骨細胞は少なくとも2μM PNP/時/μg DNAのアルカリ性ホスファターゼ活性を有するものであり;
(b)基材上に軟骨細胞の層を形成し、ここに該基材は骨、加工生物材料、または多孔性組織培養インサートであり;
(c)軟骨細胞が細胞外マトリックスに蓄積し、軟骨鉱質化に関連する成分を含む軟骨性組織を形成するのに適した条件下の増殖培地にて軟骨細胞を培養し;ついで
(d)β−グリセロリン酸、ATPおよびホスホエタノールアミンからなる群より選択される鉱質化剤の存在下で該軟骨性組織を培養して鉱質化軟骨組織の連続した層を得る、ここに該鉱質化軟骨組織の連続した層は、少なくとも2μM PNP/時/μg DNAのアルカリ性ホスファターゼ活性を有し、I、IIおよびX型コラーゲン、大きな流動力学的サイズを有する硫酸化プロテオグリカン、マトリックス小胞、ならびにカルシウムヒドロキシアパタイト結晶沈着物を含むマトリックスによって囲まれている軟骨細胞により特徴づけられるものである。
【請求項5】
軟骨細胞が逐次酵素消化法により単離されたものである、請求項4または5に記載の方法。
【請求項6】
軟骨細胞が、約1x10ないし8x10個/cmの細胞密度で基材上に撒かれる請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
遺伝学的欠陥を矯正または補償する生物学的に活性のある蛋白をコードする外因性遺伝子を含む組換えベクターにて鉱質化生物材料中の軟骨細胞を形質転換することをさらに含む、請求項4〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか1項に記載の単離され精製された鉱質化生物材料の製造方法であって、下記工程をさらに含む方法:
軟骨性組織上の動物関節軟骨組織の中間および表面域から単離された軟骨細胞を鉱質化剤の存在下にて培養して鉱質化生物材料を含む材料を得ること、ここに該材料は、少なくとも2μM PNP/時/μg DNAのアルカリ性ホスファターゼ活性を有し、I、IIおよびX型コラーゲン、大きな流動力学的サイズを有する硫酸化プロテオグリカン、マトリックス小胞、ならびにカルシウムヒドロキシアパタイト結晶沈着物を含むマトリックスによって囲まれている軟骨細胞により特徴づけられる連続した鉱質化層を含むものある。
【請求項9】
石灰化に影響する疑いのある物質の存在下において請求項1に記載の単離され精製された鉱質化生物材料を同時培養し、ついで、同時培養にて生じた鉱質化生物材料の生化学的組成および/または生理学的構成を、該物質の不存在下において得られた鉱質化生物材料の生化学的組成および/または生理学的構成と比較し決定することを特徴とする、関節軟骨組織の石灰化に影響する物質の試験方法。
【請求項10】
該物質が同時培養の際に添加されるか、あるいは単離され精製された鉱質化生物材料中の軟骨細胞が該物質を発現するように遺伝子操作されている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
該物質が関節の疾病の治療に有用である可能性のある医薬調合物である、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−271977(P2008−271977A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124532(P2008−124532)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【分割の表示】特願2006−9839(P2006−9839)の分割
【原出願日】平成8年11月5日(1996.11.5)
【出願人】(398045153)マウント・サイナイ・ホスピタル (2)
【氏名又は名称原語表記】MOUNT SINAI HOSPITAL 
【Fターム(参考)】