再熱割れ感受性の判定方法
【課題】溶接された領域を含む少なくとも一つの材料のサンプルの再熱割れ感受性を判定するシステム及び方法を提供する。
【解決手段】サンプルの長さを測定するステップと、サンプルに第1の応力を印加して、サンプルの所定の伸びを実現するステップと、伸びを達成したサンプルに所定の熱処理を施すステップと、サンプルが少なくとも2つの異なる断片に破断するまでサンプルに第2の応力を印加するステップと、破断したサンプルの再熱割れ感受性を判定するステップとを含む。
【解決手段】サンプルの長さを測定するステップと、サンプルに第1の応力を印加して、サンプルの所定の伸びを実現するステップと、伸びを達成したサンプルに所定の熱処理を施すステップと、サンプルが少なくとも2つの異なる断片に破断するまでサンプルに第2の応力を印加するステップと、破断したサンプルの再熱割れ感受性を判定するステップとを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、材料の再熱割れ感受性を判定するシステム及び方法に関し、特に、材料の再熱割れ感受性を判定する機構及び技術に関する。
【背景技術】
【0002】
精製及び石油化学工業では、様々な適用分野において、硫黄を除去するため、又は他の所望の化学反応を実現するために、反応装置内で高温及び高圧を利用する必要がある。従って、反応装置の壁面は、反応装置内の化学物質の有害な特性のみならず、変動する条件、即ち温度、圧力などにも耐性のあるものでなければならない。反応装置の壁の建造には、様々な合金を含むステンレス鋼のような特殊な材料が用いられる。
【0003】
従来、反応装置容器には、既知の低合金クロムモリブデン2.25Cr−1Mo鋼が広く利用されている。反応装置は、一般に、450℃未満の温度で、10MPaを超える水素分圧を利用して稼働される。高い使用温度/圧力における需要が高まるにつれ、反応装置が大型化していることにより、組立、輸送、及び反応装置の使用時の高温水素侵食に関連する問題が生じている。
【0004】
少なくともこのような残された課題を解決するため、バナジウムで修飾された新規のクロムモリブデン鋼が開発されており、ヌオーヴォ・ピニォーネ(Nuovo Pignone)(ゼネラル・エレクトリックのイタリア、フィレンツェ所在の事業体)は、高温及び高水素ガス圧に耐える、石油化学工業用の最初の2.25Cr1Mo0.25V反応装置を製造した。この反応装置は、壁の厚さが250mmを超え、最大6mの直径、最大60mの長さ、及び最大2000トンの重さを有する。図1に、このような反応装置10を示す。この反応装置は、高温高圧の水素雰囲気内で動作することができる。例えば、脱硫反応を効果的に実行するために、使用温度及び使用圧力を大きくすると、厚さが増すと共に、反応装置の寸法が全体的に大きくなる。従って、ジョイント領域20において、反応装置10の大型部品12及び14を溶接しなければならない。
【0005】
反応装置の壁面の材料(2.25Cr1Mo0.25V)が利用されるのは、この材料が、水素脆性、高温水素侵食、及び上塗層剥離に対する適切な特性と、低温での優れた靭性と、焼き戻し脆性に対する向上した耐性とを示すためである。
【0006】
反応装置のサイズが大きいため、反応装置の壁面を構成する多くの部品は、図1に示すように合わせて溶接されなければならない。溶接プロセスは、この種のプロセス中に生成される熱により、ジョイント領域内に残留応力を発生させ、この応力は、厚肉の壁面によって増大される。
【0007】
図2に、溶接領域20において接合された部品12及び14を含む、溶接された領域30の詳細図を示す。部品12及び14のこの領域は、その特性に溶接プロセス中に生成された熱による影響が存在するため、熱影響部(HAZ)と称され、領域22及び24として示されている。従って、熱影響部は、その微細構造及び特性が溶接によって変化した基礎材料の領域22及び24である。この変化は、溶接部を取り巻く領域において、溶接プロセス及びその後の再冷却による熱によって生じる。特性が変化する範囲及び程度は、主として基礎材料、溶接の溶加材、並びに溶接プロセス中の入熱の量及び密度によって異なる。溶接プロセス中に誘導される応力を緩和するために、米国石油協会(API)、米国材料試験協会(ASTM)、及び米国機械学会(ASME)によって指定されるように、応力除去処理が適用されることもある。
【0008】
溶接中に反応装置の壁の内部に形成される残留応力(i)と、応力除去熱処理(ii)とを組み合わせると、再熱割れ現象が生じることになる。再熱割れ現象は、主として前述の熱処理の適用中に、例えば、図2の領域20に発生する。再熱割れは、温度の上昇中に、境界領域に存在する粒子が、境界領域から離れて位置する粒子よりも低い、又は若干弱い延性特性を提示する場合に発生する(クリープ破壊による損傷メカニズム)。
【0009】
再熱割れの深刻度を測定する様々な試験が存在する。このような試験の一つに、所定の構造の延性についての定性的指標を得るためのグリーブル試験がある。この試験は、最も高温割れし易い領域は母材のHAZ区域であり、この区域では、結晶粒界において閉じ込められた混入物が液状又は強度の低い固体薄膜を形成する一方で、粒子が堅く強固になるという概念に基づいている。このような弱い薄膜が、固化の後で広い温度範囲に亘って存在する場合は、溶接された材料が、HAZ区域内に高温割れを示すことも判明している。溶接されたHAZ区域が高温割れを生じ易い範囲を特定するために、脆性範囲の高い温度として、ゼロ強度温度の概念が取り入れられ、その温度の測定に適当なアタッチメントが設計されている。そして、脆性範囲の低い温度、いわゆるゼロ延性温度は、熱間引張サンプルの領域に5%の低下が生じる温度として採用されている。
【0010】
グリーブル試験の処理手順は、様々な溶接法に典型的な歪み速度(入熱)を用いて、熱間引張試験を行う対象である多数のサンプルを必要とする。従って、溶接された合金の高温割れ感受性を調査するために、より簡単な試験である、バレストレイン試験が提案されて利用されている。このバレストレイン試験は、試験プレートの長軸上に溶接ビードが形成している最中に、その試験プレートを曲げることを含む。元々のバレストレイン試験には、いくつかの限界があり、例えば、中立の曲げ軸の位置は、曲げ処理中のサンプルの高温部と低温部の間の強度と歪みの区分に応じて変化するため、外側の曲げ表面における歪みの実際の量を制御することは困難である。
【0011】
ただし、前述した試験及び他の試験から得られるのは、定性的な結果のみであって、損傷原因についての選択的反応は得られないという問題、即ち、これらの試験では、製造中に適用される実際の熱処理を再現(時間、温度、及び応力について再現)できないという問題がある。
【0012】
かつて、これらの定性的試験でも製造工程の品質を保証することができたが、昨今、欧州において、2.25Cr1Mo0.25V反応装置に関して、再熱割れ問題が浮上しつつあり、もはや既存の試験では不十分となりつつある。このため、定性的のみならず定量的にも再熱割れの程度を判定できる試験方法を用いて、実際の構成要素の製造工程に役立てることが望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、前述のような課題を克服する、材料が再熱割れを呈する感受性を判定する試験を可能にするシステム及び方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の例示的実施形態において、溶接された領域を含む少なくとも一つの材料のサンプルの再熱割れ感受性を判定する方法を開示する。この方法は、サンプルの長さを測定するステップと、このサンプルに第1の応力を印加して、サンプルの所定の伸びを実現するステップと、伸びを達成したサンプルに所定の熱処理を施すステップと、更に、サンプルが少なくとも2つの異なる断片に破断するまで、サンプルに第2の応力を印加して、破断したサンプルの再熱割れ感受性を判定するステップとを含む。
【0015】
他の例示的実施形態において、溶接された領域を含む少なくとも一つの材料のサンプルの再熱割れ感受性を判定するシステムを開示する。このシステムは、インターフェースを含み、このインターフェースは、サンプルの長さを測定する長さ測定装置から第1データを受け取るステップと、このサンプルに第1の応力を印加して、サンプルの所定の伸びを実現し、更に、サンプル内の応力を特定するように構成される応力印加測定装置から第2データを受け取るステップと、伸びを達成したサンプルに所定の熱処理を施すように構成される熱印加装置から第3データを受け取るステップと、及びサンプルが少なくとも2つの異なる断片に破断するまで、サンプルに第2の応力を印加するように構成される応力印加測定装置から第4データを受け取るステップとを実行するよう構成される。また、システムは、インターフェースに接続された演算処理装置を含み、演算処理装置は、長さ測定装置と、応力印加測定装置と、熱印加装置とを制御するように構成されると共に、長さ測定装置と、応力印加測定装置と、熱印加装置とから受け取った情報に基づいて、破断したサンプルの再熱割れ感受性を判定するように構成される。
【0016】
また他の例示的実施形態において、コンピュータが実行可能な命令を格納するコンピュータ可読媒体を開示する。この命令は、演算処理装置によって実行された場合に、演算処理装置に、溶接された領域を含む少なくとも一つの材料のサンプルの再熱割れ感受性を判定させる。命令は、サンプルの長さを測定するステップと、サンプルに第1の応力を印加して、サンプルの所定の伸びを実現するステップと、伸びを達成したサンプルに所定の熱処理を施すステップと、サンプルが少なくとも2つの異なる断片に破断するまで、サンプルに第2の応力を印加するステップと、破断したサンプルの再熱割れ感受性を判定するステップとを含む。
【0017】
本開示の一部を構成する添付図面において、以下の詳細な説明と共に本発明の1つ又は複数の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】反応装置の模式図である。
【図2】図1の反応装置の2つの溶接された部品の模式図である。
【図3】本発明の例示的一実施形態に係る、溶接された領域を示す図である。
【図4】本発明の例示的一実施形態に係る、溶接された領域のサンプルの模式図である。
【図5】本発明の例示的一実施形態に係る、サンプルの再熱割れ感受性を判定する方法のステップを示すフローチャートである。
【図6】本発明の例示的一実施形態に係る、サンプルに適用される各種熱処理を説明する図である。
【図7】本発明の例示的一実施形態に係る、サンプルに適用される各種熱処理を説明する図である。
【図8】本発明の例示的一実施形態に係る、サンプルに適用される各種熱処理を説明する図である。
【図9】本発明の例示的一実施形態に係る、破断したサンプル及び分析されるサンプルのセクションの模式図である。
【図10】サンプルに生じ得る種々の破断を示す図である。
【図11】サンプルに生じ得る種々の破断を示す図である。
【図12】サンプルに生じ得る種々の破断を示す図である。
【図13】本発明の種々の例示的実施形態に係る、サンプルの試験結果を示す図である。
【図14】本発明の種々の例示的実施形態に係る、サンプルの試験結果を示す図である。
【図15】本発明の種々の例示的実施形態に係る、サンプルの試験結果を示す図である。
【図16】本発明の種々の例示的実施形態に係る、サンプルの試験結果を示す図である。
【図17】試験サンプル及び実際の反応装置について、破断面及びその微細構造を比較して示す図である。
【図18】本発明の例示的実施形態に係る、熱処理及び粗い微細構造に対する、サンプルの損傷の依存度を示すグラフである。
【図19】本発明の例示的実施形態に係る、熱処理及び粗い微細構造に対する、サンプルの損傷の依存度を示すグラフである。
【図20】本発明の例示的一実施形態に係る、コンシューマブルに対する、サンプルの損傷の依存度を示すグラフである。
【図21】本発明の例示的一実施形態に係る破断面の模式図である。
【図22】本発明の例示的一実施形態に係る、材料の再熱割れ感受性を判定するステップを示すフローチャートである。
【図23】本発明の例示的一実施形態に係る、演算処理システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
これより、添付図面を参照しながら、本発明の例示的実施形態を説明する。全図面を通して、同様の構成要素には同様の参照符号が付与されている。なお、本発明の企図は、本明細書に開示の詳細な説明に限定されるものではない。また、本発明の例示的実施形態の企図は、添付の特許請求の範囲に基づいて解釈されるべきである。以下の実施形態を、説明の便宜上、化学反応装置の用語と構造とを用いて説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、この種の反応装置だけではなく、その他の化学反応装置又はその他の溶接部品にも適用可能である。
【0020】
本明細書を通して、「一実施形態」又は「例示的実施形態」という表現は、実施形態に関連して説明する特定の機能、構造又は特徴において、本発明の教示内容が少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。このため、本明細書に散見される「一実施形態において」又は「例示的実施形態において」という表現が示す実施形態は、必ずしも同一のものではない。また、特定の機能、構造又は特徴を、1つ以上の実施形態において適宜、組み合わせてもよい。
【0021】
再熱割れ損傷は、例えば水素化分解反応装置などの様々な反応装置で、溶接されたジョイントに検出されている。これらの反応装置は、厚い溶接部を有する重厚な壁面を特徴とする。これらのジョイントは、基礎材料2.25Cr1Mo0.25Vを用いて、例えば、サブマージアーク溶接(SAW)法によって製造される。再熱割れの疵は、600〜800℃の温度範囲での反応装置の熱処理中に形成し始める。
【0022】
現時点では、このリスクの軽減に有効又は効果的な既知の方法が存在しない。下記の例示的実施形態は、割れ核形成についての定性的データが得られる試験手順を開示し、これにより、リードタイムに影響することなく、実際の構成要素の生産を支援するものである。従って、開示の試験方法の例示的実施形態により、溶接されたジョイントについて、再熱割れ現象に対する感受性という観点での実際の挙動をシミュレートすることができる。この試験は、溶接されたジョイントから直接取得したサンプルに対して、破壊的手法を利用して実行され、前述のサンプルは、反応装置の実際の部品が経験する状況に可能な限り近いシミュレーションを行うために、実際の反応装置における場合のように熱処理及び応力が加えられた後で取得される。
【0023】
詳細は後で詳しく説明するが、この試験に基づいて、再熱割れを生じ難い溶接材料を選択し、溶接パラメータ(例えば、入熱、電流タイプ、二線又は単線、線径など)を最適化し、基礎材料として、例えば2.25Cr1Mo0.25Vを利用する熱処理パラメータを最適化することができる。従って、反応装置が組み立てられた後の非破壊試験で再熱割れの疵を識別することは困難であることが多いため、一つ以上の例示的実施形態の利点として、例えば、再熱割れ損傷に起因する高価で困難な修理を行わずに済むようにするための反応装置を製造することで、製品の品質を高めることができることが含まれる。
【0024】
本発明の例示的実施形態による試験は「オンライン式」であり、これにより、材料の供給即ち溶接パラメータ及び入熱に変化が生じる毎に試験を実施できるため、生産工程に支障をきたすことなく実行できる。また、これらの試験により、反応装置の生産を開始する前に、材料の再熱割れ感受性を検証して、反応装置に、損傷した構成要素を製造することを防ぐことができる。
【0025】
例示的一実施形態において、検査対象であるサンプル26は、図3に示すように、実際の溶接ジョイント20から選択される。このサンプル26は、その全体を溶接ジョイント20から採取される。図4に、このようなサンプル26の一例を示す。図4に示すサンプル26は、直角プリズム形状であってよい。このサンプルの平坦面を利用して、所望の伸びと温度とをサンプルに与えるための歪みゲージ若しくは熱電対、又はその両方を支持することができる。これらの要素を、コンピュータインターフェースに接続し、コンピュータシステムにより制御してもよい。代替的に、この要素を、オペレータ制御してもよい。また、温度及び応力を含むデータベースを得てサンプルに適用できるよう、これらの要素からの出力をコンピュータシステム又はオペレータのいずれかが収集できるようにしてもよい。ただし、他の態様も適用可能である。例示的一実施形態によれば、図4に示すサンプル26の平坦面28は、材料の粒子配向と平行であってよい。
【0026】
次に、サンプル(プローブ)の再熱割れ感受性を判定する手順について、例示的一実施形態を用いて説明する。図5に示すように、ステップ50において、サンプル26のサイズが測定される。サンプル26のサイズを、例えば、マイクロメータ又はコンピュータシステムにより制御可能な光電子デバイスを用いて測定することができる。サンプルは、例えば、当該サンプルを保持する保持具(図示せず)に取り付けられてもよい。当業者に既知の様々な機械的手段を利用して、保持具にサンプルを固定することで、油圧式装置によって応力が印加される際、保持具に対してサンプルが移動しないように構成することができる。機械的手段が保持具内にサンプルを拘束した後で、サンプルのサイズを再測定することができる。例示的一実施形態において、ステップ50の第1又は第2の測定サブステップの一方を省略してもよい。
【0027】
ステップ52において、油圧式装置でサンプル26に予圧がかけられる。与圧は、熱処理による応力緩和が発生する前に印加される負荷であり、その与圧の値は、サンプルの降伏強度の値、又は溶接された実際の構成要素において測定された残留応力の値に近いかそれよりも低くてよい。降伏強度の値は、基礎材料及び溶接材料の組み合わせ毎に固有である。つまり、残留応力は、溶接プロセス/パラメータと、適用される熱処理とに左右されるため、前述の降伏強度の値は、サンプルに含まれる溶接された材料によって異なる。例示する一実施形態によれば、サンプル26に印加される予圧は、このタイプのサンプルで0.3〜0.4mmの伸びが達成される程度のものである。サンプルの長さは、50〜500mmの範囲であってよい。この伸び率は、例示することを意図したものであり、例示する実施形態を限定するものではない。実際には、この伸び率は、サンプルの長さに基づいて計算される。
【0028】
予圧の印加後に、保持具から力印加装置を除去して、サンプルの長さを再測定し、所望の伸び値が得られているかどうかを確認する。サンプル26の所望の伸びは、サンプルの長さの0.2%から0.3%であってよい。所望の伸び値が得られなかった場合は、その所望の伸びが達成されるまでステップ52及び54を繰り返すことができる。所望の伸びが達成されたら、保持具からサンプルを取り出し、そのサンプルを、熱発生装置、例えば、炉内に挿入して、下記で説明するように加熱することができる。
【0029】
サンプルには、次に説明するように、3つの異なる熱処理特性を適用できる。ただし、他の熱処理を適用してもよく、前述の3つの熱処理は、例示する実施形態を限定するものでも、網羅的なものでもない。熱処理のうちの一つは、ステップ56においてサンプルに適用される。図6〜図8に、これら3つの熱処理を示す。図6に、臨界温度に段差1が存在する緩慢な傾斜を有する熱処理を示し、図7に、中間の傾斜を示し、図8に、行き過ぎ量が存在する二重傾斜を示す。基準温度は、好ましくは、675℃で、傾斜は5〜20℃/hの間の勾配、引き伸ばし分は5〜10時間にわたり、臨界温度は650℃である。ただし、これらの値は一例であり、全ての基礎材料に適用できるものではないことは、当業者に明らかである。これらの特定の値は、この例示的実施形態において、2.25Cr1Mo0.25Vの基礎材料に適用されたものである。
【0030】
ステップ56において、サンプル26の長さが再び測定され、その後、ステップ58において、サンプルが破断するまで、他の力がサンプルに印加される。サンプルは、この第2の力の印加中に、へき開、粒内延性破壊、粒界純脆弱性破壊、粒界延性破壊、又は他のメカニズムによるいくつかの方式のうちの一つで破断することになる。この破断の発生には、延性を伴うことも、伴わないこともある。これらの特性は、破断したサンプル26について、図5のステップ60で分析される。例示的実施形態によれば、各サンプルについて3つの異なる金属組織セクションが考察される。図9に示すように、セクションS1及びS3は長手方向セクションで、セクションS2は横方向セクションである。ただし、他の例示的実施形態では、少なくとも2つのセクション、即ちS1及びS2を利用する。例示的一実施形態によれば、これら3つのセクションは、サンプル26の同一部位30において考察される。これらのセクションS1〜S3の微視的組織表面に種々の試験を実行して、例えば、S1及びS3における再熱割れ損傷個所を確認したり、S2における結晶粒組織のタイプを確認したりする。図9に示すサンプル26のセクション40を、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を利用して、脆性表面と延性表面とを比較するなど、破断面の分析に利用することができる。
【0031】
粒界破壊は、材料の結晶粒界に沿った破壊である。材料が複数の格子構造を有する場合に、一つの格子の終わりで他の格子が始まっていると、破壊は方向を変えて新しい粒子に追従する。このため、凹凸のあるエッジを有する、極めてギザギザに見える破壊になる。粒界破壊は、材料の結晶粒界に沿って生じる割れと同様であるとも言える。粒子には、真っ直ぐなエッジ及び艶のある表面が見られる。
【0032】
粒内破壊は、個々の格子内の粒子を無視して、粒状材料の格子のエッジに沿った破壊である。このため、変化する粒子に沿ったものと比べると、尖ったエッジが少ない、かなり滑らかに見える破壊になる。粒内破壊は、木製のジグソーパズルのピースに類似したものであると言える。木目はあるが、各ピースの木目は異なる方向に並んでいる。逆に、粒界破壊は、木目とは関係なく、パズルのピースのエッジに沿ったものになる。
【0033】
これら異なるタイプの破壊は、SEM分析によって特定可能である。このSEM分析は、オペレータによって実行されることも、前述したコンピュータシステムによって自動的に実行されることもある。図10〜図12に、発生し得る種々の破壊を示す。図10に、延性を有さない100%粒界割れ損傷が存在する破断面を示す。図11に、延性を有さない粒界割れ損傷の領域(A)、延性を有する粒界割れ損傷の領域(B)、及び延性を有する粒内破壊の領域(C)が混在する破断面を示す。図12に、延性を有する100%粒内破壊が存在する破断面を示す。
【0034】
室温では、通常、破断面が粒内延性のみを示すため、粒界破断の存在は、熱処理中の高温においてある種の損傷が発生したことを示す指標であり、これにより、損傷が確認される。図13〜図16に、例示的実施形態に係る、サンプル26の試験結果を示す。図13に、破断面(横方向セクション)内の粒界割れを示す。図14に、酸化被膜に覆われた粒界割れを示す。図15に、脆性粒界の外観を有する破断面を示す。図16に、光学顕微鏡によって解析された微視的組織の長手方向セクションを示す。このセクションに、破断面の下の複数の平行な粒界割れ、及び結晶粒界における割れの伝播が検出されている。
【0035】
実行した試験の結果は、反応装置内で観測される実際の再熱割れと同様であった。サンプル内の3つの異なる微細構造の存在は、サンプルの分析で、(a)微細な等軸結晶粒組織(粒子は小さく、配向はランダムである)、(b)粗い等軸結晶粒組織(粒子はより粗くなっているが、配向は依然としてランダムである)、及び(c)円柱状結晶粒組織(粒子はより粗くなり、配向に指向性がある)として識別された。試験の信頼性を保証するためには、45%の量の粗い結晶粒組織が存在しなければならない。図17に、試験サンプルと実際の反応装置の割れについて、破断面とその微細構造を比較して示す。サンプルと反応装置の割れのこの一致は、例示的実施形態に従って、準備段階の中でサンプルに印加された応力及び熱処理は適切であることを示すものであり、前述の方法は、実際の構成要素の再熱割れ損傷を再現できることを実証している。
【0036】
例示的実施形態によれば、サンプルに対する熱処理の影響を定量的に評価するために、熱処理深刻度指数(SI)を用い、SIを熱処理ごとに計算する。クリープ破損、クリープ歪みの蓄積、又は他の技術に基づいて、深刻度指数を計算することができる。
【0037】
例示的一実施形態によれば、第1の深刻度指数は、破損したサンプルについて、熱処理の温度曲線を近似させる様々な温度プロファイルに基づいて計算される。具体的には、熱処理の実際の温度を階段状の温度曲線に近似させ、その階段状の温度曲線の段ごとに計算された階段状深刻度指数の合計として深刻度指数を算出する。
【0038】
他の例示的実施形態によれば、熱処理の温度曲線を近似させる同一の温度プロファイルに基づいて、第2の深刻度指数を計算することができる。ここで、破損したサンプルの損傷パラメータは、熱処理の実際の温度を階段状温度曲線に近似させ、その階段状温度曲線の各段の階段状深刻度指数の合計として第2の深刻度指数を計算することによって評価される。
【0039】
例示的一実施形態によれば、サンプルの損傷量を、脆性領域に対応付け、画像解析ソフトウェアによって測定することができる。深刻度指数SI(クリープ破損の基づいたもの)とサンプルの粗い微細構造の関数が、図18に示すように、損傷量に対して描画される。この図から、損傷は、熱処理の深刻度指数及び粗い粒子サイズの割合と共に増加することがわかる。サンプルの損傷は、図19に示すように、深刻度指数SI(クリープ歪みの蓄積に基づいたもの)及び入熱(溶接プロセス中に生成される熱エネルギ)に対しても描画される。この図から、損傷は、入熱の値と共に増加することがわかる。ただし、上記パラメータに対する損傷率の依存度は、溶接プロセス中に用いられる溶加材(コンシューマブル)に応じて変動する可能性がある。これに関して、図20に、種々の供給元からの複数のコンシューマブルが異なる損傷率を呈する様子を示す。
【0040】
図18〜図20に集約された結果に基づいて、本発明者らは、サンプルの微細構造(粗い粒子サイズの観点での微細構造)が、サンプルに顕現する損傷量に影響するという結論に達した。従って、円柱状結晶粒組織の量が低下することにより、適切なコンシューマブルで、高い割合の粗い粒状組織が再熱割れ損傷を助長しない場合であっても、材料が再熱割れに耐える確率が向上する。また、コンシューマブルの影響は、他の要因を抑制することが観察されている。この点において、例示的実施形態によれば、溶接パラメータ及び熱処理は、溶接コンシューマブルの影響と比較すると二次的な影響を与えるものである。ただし、前述のパラメータがフラックスごとに異なる可能性があるとしても、これらの溶接パラメータ及び熱処理は、再熱割れを緩和し得る。
【0041】
他の例示的実施形態によれば、検討したサンプルの再熱割れ感受性は、分析されたセクション内で特定された脆性表面の領域の評価に基づいている。例えば、図21に示すように、破断面は、再熱割れ損傷とは関連のない急速破壊の第1領域Dと、再熱割れ現象によって形成される割れ損傷(粒界延性破面経路)の第2領域Eとを示す可能性がある。第2領域Eは、純脆性割れ損傷の領域Fを含む場合があり、この領域は、この例では第2領域のほぼ15%であり得る。結晶粒界における延性破面経路は、領域F内に検出されていない。このような材料は、次の条件のうちの少なくとも一つが満たされる、即ち、前述した特定のサンプルで、領域Fが領域Eの0%より大きいか、又は、領域Eが破断面全体(領域D及びE)の約10%より大きい場合に、再熱割れし易いと考えることができる。ただし、これらのパーセンテージは、他の材料では異なり得る。
【0042】
従って、検討したサンプルの再熱割れ感受性は、推定された損傷、若しくは図21を参照しながら説明した領域E及びFの範囲、又はその両方に基づいて、ステップ60(図5を参照)において予測される。損傷が所定の閾値を下回る場合、そのサンプルが再熱割れし難いと考え、そのサンプルに使用した材料を大量生産に供することができる。ただし、サンプル内の損傷が所定の閾値を上回る場合、そのサンプルに使用した材料は、反応装置の大量生産に適していないとみなされる。所定の閾値は、材料(コンシューマブル)に依存する。上記の例示的実施形態の一つにおいて説明した反応装置、即ち、2.25Cr1Mo0.25Vについての所定の閾値は、領域Fについては0%、領域Eについては最大で破断面全体の10%である。
【0043】
図22に示す例示的実施形態によれば、溶接された領域を含む少なくとも一つの材料のサンプルの再熱割れ感受性を判定する方法が存在する。この方法は、サンプルの長さを測定するステップ2200と、このサンプルに第1の応力を印加して、サンプルの所定の伸びを実現するステップ2210と、伸びを達成したサンプルに所定の熱処理を施すステップ2220と、サンプルが少なくとも2つの異なる断片に破断するまで、サンプルに第2の応力を印加するステップ2230と、破断したサンプルの再熱割れ感受性を判定するステップ2240とを含む。
【0044】
この方法は、インターフェースを有するコンピュータシステムを含むシステムにおいて実施可能であり、インターフェースは、例えば、応力印加測定装置、熱電対、長さ測定装置、SEM顕微鏡などからデータを受け取るように構成される。このような装置、又はコンピュータシステムを構成するコンピュータ命令の技術的効果は、サンプルが再熱割れを呈する感受性を判定することである。
【0045】
例示的一実施形態によれば、演算処理システムを利用して、サンプルの長さを測定し、予圧及び荷重を印加し、熱処理を施し、領域E及びFの範囲を特定するという、種々の例示的実施形態において説明した測定及び計算を自動的に実行することができる。従って、限定するためではなく、例示することを目的として、図23に、例示的実施形態に係る動作を実行できる代表的な演算処理システムの一例を示す。ただし、本例示的実施形態の原理は、標準の演算処理システムに等しく適用できることを理解されたい。ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はこれらの組み合わせを利用して、本明細書に記載した種々のステップ及び動作を実行することができる。
【0046】
例示的実施形態で説明した作業を実行することに適した一例の演算処理構成2300に、サーバ2301を含めてもよい。このようなサーバ2301は、ランダムアクセスメモリ(RAM)2304及び読み取り専用メモリ(ROM)2306に接続された中央演算処理装置(CPU)2302を含んでよい。ROM2306は、プログラム可能ROM(PROM)、プログラム消去可能ROM(EPROM)など、プログラムを格納する他のタイプの記憶媒体であってもよい。演算処理装置2302から、入出力(I/O)回路2308及びブッシング2310を介して、他の内部及び外部の構成要素と通信して、制御信号などがもたらされる。演算処理装置2302は、この分野で既知のように、ソフトウェア及びファームウェアの少なくともいずれかの命令に指示されて、種々の機能を実行する。
【0047】
サーバ2301は、一つ以上のデータ記憶装置を含んでもよく、データ記憶装置には、ハードディスク及びフロッピィディスクドライブ2312、CD−ROMドライブ2314、及び情報の読み取り及び保存の少なくともいずれかを行えるDVDのような他のハードウェアなどがある。一実施形態において、前述したステップを実行するソフトウェアは、CD−ROM2316、ディスケット2318、又は可搬式に情報を格納できる他の形式の媒体に保存及び分散されてよい。これらの記憶媒体は、CD−ROMドライブ2314、ディスクドライブ2312などのデバイスに挿入されると、これらのデバイスにより読み取られる。サーバ2301は、ディスプレイ2320に接続されてもよく、ディスプレイ2320は、LCDディスプレイ、プラズマディスプレイ、ブラウン管(CRT)など、任意のタイプの既知の表示装置又は表示画面であってよい。マウス、キーボード、マイク、タッチパッド、タッチスクリーン、音声認識システムなど、一つ以上のユーザインターフェース機構を含むユーザ入力インターフェース2322が設けられる。
【0048】
サーバ2301は、地上通信線端末及び無線端末の少なくともいずれか、並びに関連のウォッチャ(watcher)アプリケーションなどの他の演算処理装置にネットワークを介して接続することができる。サーバは、インターネット2328などのグローバルエリアネットワーク(GAN)におけるような大規模ネットワーク構成の一部であってよく、これにより、最終的には、様々な地上通信線及び移動クライアントデバイスの少なくともいずれかに接続することができる。
【0049】
開示の例示的実施形態により、サンプルの再熱割れ感受性を識別するサーバ、方法、及びコンピュータプログラム製品が得られる。この説明は本発明を限定するためのものではないことは理解されよう。逆に、例示的実施形態は、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の本質及び特許可能な範囲に含まれる代替物、修正物、及び等価物を網羅することを意図したものである。また、例示的実施形態の詳細な説明において、多くの具体的詳細は、特許請求の範囲に記載の発明の包括的理解を助けるためのものである。ただし、当業者に明らかなように、様々な実施形態がこのような具体的詳細の有無にかかわらず可能である。
【0050】
また、当業者には同様に理解されるであろうが、例示的実施形態を、サーバにおいて、方法として実施することも、コンピュータプログラム製品において実施することもできる。従って、例示的実施形態は、完全なハードウェア実施形態であっても、又はハードウェアとソフトウェアの態様を組み合わせた実施形態であってもよい。更に、例示的実施形態は、コンピュータ可読記憶媒体に格納されたコンピュータプログラム製品であってもよく、コンピュータ可読記憶媒体は、当該媒体に埋め込まれたコンピュータ可読命令を有する。ハードディスク、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、光記憶装置、又はフロッピィディスクや磁気テープなどの磁気記憶装置を含め、様々な適切なコンピュータ可読記憶媒体を利用することができる。コンピュータ可読媒体の他の例としては、フラッシュ形メモリや他の既知のメモリがあるが、これに限定されない。
【0051】
例示的実施形態の特徴及び要素は、実施形態において特定の組み合わせで説明したが、各特徴又は要素は、実施形態の他の特徴及び要素を用いずに単独で利用されても、又は本明細書で開示した他の特徴及び要素と共に、若しくは共に用いずに、様々な組み合わせで利用することができる。本願で提示した方法又はフローチャートは、汎用コンピュータ又は演算処理装置によって実行されるようにコンピュータ可読記憶媒体に有形に埋め込まれたコンピュータプログラム、ソフトウェア、ファームウェアに実装することができる。
【0052】
以上、最良の態様を含めた様々な例示を用いて本発明を説明してきた。当業者は、これにより、本発明に係る装置又はシステムを作製すること、並びにこれに関連する方法を実施することができる。添付の特許請求の範囲において本発明の特許可能な範囲を記載するが、これには当業者に想起可能なその他の実施形態も含まれる。かかるその他の実施形態は、特許請求の範囲の文言と相違ない構成要素を有する限り、或いは、特許請求の範囲の文言と本質的に相違ない同等の構成要素を有する限り、本発明の例示的実施形態とみなされる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、材料の再熱割れ感受性を判定するシステム及び方法に関し、特に、材料の再熱割れ感受性を判定する機構及び技術に関する。
【背景技術】
【0002】
精製及び石油化学工業では、様々な適用分野において、硫黄を除去するため、又は他の所望の化学反応を実現するために、反応装置内で高温及び高圧を利用する必要がある。従って、反応装置の壁面は、反応装置内の化学物質の有害な特性のみならず、変動する条件、即ち温度、圧力などにも耐性のあるものでなければならない。反応装置の壁の建造には、様々な合金を含むステンレス鋼のような特殊な材料が用いられる。
【0003】
従来、反応装置容器には、既知の低合金クロムモリブデン2.25Cr−1Mo鋼が広く利用されている。反応装置は、一般に、450℃未満の温度で、10MPaを超える水素分圧を利用して稼働される。高い使用温度/圧力における需要が高まるにつれ、反応装置が大型化していることにより、組立、輸送、及び反応装置の使用時の高温水素侵食に関連する問題が生じている。
【0004】
少なくともこのような残された課題を解決するため、バナジウムで修飾された新規のクロムモリブデン鋼が開発されており、ヌオーヴォ・ピニォーネ(Nuovo Pignone)(ゼネラル・エレクトリックのイタリア、フィレンツェ所在の事業体)は、高温及び高水素ガス圧に耐える、石油化学工業用の最初の2.25Cr1Mo0.25V反応装置を製造した。この反応装置は、壁の厚さが250mmを超え、最大6mの直径、最大60mの長さ、及び最大2000トンの重さを有する。図1に、このような反応装置10を示す。この反応装置は、高温高圧の水素雰囲気内で動作することができる。例えば、脱硫反応を効果的に実行するために、使用温度及び使用圧力を大きくすると、厚さが増すと共に、反応装置の寸法が全体的に大きくなる。従って、ジョイント領域20において、反応装置10の大型部品12及び14を溶接しなければならない。
【0005】
反応装置の壁面の材料(2.25Cr1Mo0.25V)が利用されるのは、この材料が、水素脆性、高温水素侵食、及び上塗層剥離に対する適切な特性と、低温での優れた靭性と、焼き戻し脆性に対する向上した耐性とを示すためである。
【0006】
反応装置のサイズが大きいため、反応装置の壁面を構成する多くの部品は、図1に示すように合わせて溶接されなければならない。溶接プロセスは、この種のプロセス中に生成される熱により、ジョイント領域内に残留応力を発生させ、この応力は、厚肉の壁面によって増大される。
【0007】
図2に、溶接領域20において接合された部品12及び14を含む、溶接された領域30の詳細図を示す。部品12及び14のこの領域は、その特性に溶接プロセス中に生成された熱による影響が存在するため、熱影響部(HAZ)と称され、領域22及び24として示されている。従って、熱影響部は、その微細構造及び特性が溶接によって変化した基礎材料の領域22及び24である。この変化は、溶接部を取り巻く領域において、溶接プロセス及びその後の再冷却による熱によって生じる。特性が変化する範囲及び程度は、主として基礎材料、溶接の溶加材、並びに溶接プロセス中の入熱の量及び密度によって異なる。溶接プロセス中に誘導される応力を緩和するために、米国石油協会(API)、米国材料試験協会(ASTM)、及び米国機械学会(ASME)によって指定されるように、応力除去処理が適用されることもある。
【0008】
溶接中に反応装置の壁の内部に形成される残留応力(i)と、応力除去熱処理(ii)とを組み合わせると、再熱割れ現象が生じることになる。再熱割れ現象は、主として前述の熱処理の適用中に、例えば、図2の領域20に発生する。再熱割れは、温度の上昇中に、境界領域に存在する粒子が、境界領域から離れて位置する粒子よりも低い、又は若干弱い延性特性を提示する場合に発生する(クリープ破壊による損傷メカニズム)。
【0009】
再熱割れの深刻度を測定する様々な試験が存在する。このような試験の一つに、所定の構造の延性についての定性的指標を得るためのグリーブル試験がある。この試験は、最も高温割れし易い領域は母材のHAZ区域であり、この区域では、結晶粒界において閉じ込められた混入物が液状又は強度の低い固体薄膜を形成する一方で、粒子が堅く強固になるという概念に基づいている。このような弱い薄膜が、固化の後で広い温度範囲に亘って存在する場合は、溶接された材料が、HAZ区域内に高温割れを示すことも判明している。溶接されたHAZ区域が高温割れを生じ易い範囲を特定するために、脆性範囲の高い温度として、ゼロ強度温度の概念が取り入れられ、その温度の測定に適当なアタッチメントが設計されている。そして、脆性範囲の低い温度、いわゆるゼロ延性温度は、熱間引張サンプルの領域に5%の低下が生じる温度として採用されている。
【0010】
グリーブル試験の処理手順は、様々な溶接法に典型的な歪み速度(入熱)を用いて、熱間引張試験を行う対象である多数のサンプルを必要とする。従って、溶接された合金の高温割れ感受性を調査するために、より簡単な試験である、バレストレイン試験が提案されて利用されている。このバレストレイン試験は、試験プレートの長軸上に溶接ビードが形成している最中に、その試験プレートを曲げることを含む。元々のバレストレイン試験には、いくつかの限界があり、例えば、中立の曲げ軸の位置は、曲げ処理中のサンプルの高温部と低温部の間の強度と歪みの区分に応じて変化するため、外側の曲げ表面における歪みの実際の量を制御することは困難である。
【0011】
ただし、前述した試験及び他の試験から得られるのは、定性的な結果のみであって、損傷原因についての選択的反応は得られないという問題、即ち、これらの試験では、製造中に適用される実際の熱処理を再現(時間、温度、及び応力について再現)できないという問題がある。
【0012】
かつて、これらの定性的試験でも製造工程の品質を保証することができたが、昨今、欧州において、2.25Cr1Mo0.25V反応装置に関して、再熱割れ問題が浮上しつつあり、もはや既存の試験では不十分となりつつある。このため、定性的のみならず定量的にも再熱割れの程度を判定できる試験方法を用いて、実際の構成要素の製造工程に役立てることが望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、前述のような課題を克服する、材料が再熱割れを呈する感受性を判定する試験を可能にするシステム及び方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の例示的実施形態において、溶接された領域を含む少なくとも一つの材料のサンプルの再熱割れ感受性を判定する方法を開示する。この方法は、サンプルの長さを測定するステップと、このサンプルに第1の応力を印加して、サンプルの所定の伸びを実現するステップと、伸びを達成したサンプルに所定の熱処理を施すステップと、更に、サンプルが少なくとも2つの異なる断片に破断するまで、サンプルに第2の応力を印加して、破断したサンプルの再熱割れ感受性を判定するステップとを含む。
【0015】
他の例示的実施形態において、溶接された領域を含む少なくとも一つの材料のサンプルの再熱割れ感受性を判定するシステムを開示する。このシステムは、インターフェースを含み、このインターフェースは、サンプルの長さを測定する長さ測定装置から第1データを受け取るステップと、このサンプルに第1の応力を印加して、サンプルの所定の伸びを実現し、更に、サンプル内の応力を特定するように構成される応力印加測定装置から第2データを受け取るステップと、伸びを達成したサンプルに所定の熱処理を施すように構成される熱印加装置から第3データを受け取るステップと、及びサンプルが少なくとも2つの異なる断片に破断するまで、サンプルに第2の応力を印加するように構成される応力印加測定装置から第4データを受け取るステップとを実行するよう構成される。また、システムは、インターフェースに接続された演算処理装置を含み、演算処理装置は、長さ測定装置と、応力印加測定装置と、熱印加装置とを制御するように構成されると共に、長さ測定装置と、応力印加測定装置と、熱印加装置とから受け取った情報に基づいて、破断したサンプルの再熱割れ感受性を判定するように構成される。
【0016】
また他の例示的実施形態において、コンピュータが実行可能な命令を格納するコンピュータ可読媒体を開示する。この命令は、演算処理装置によって実行された場合に、演算処理装置に、溶接された領域を含む少なくとも一つの材料のサンプルの再熱割れ感受性を判定させる。命令は、サンプルの長さを測定するステップと、サンプルに第1の応力を印加して、サンプルの所定の伸びを実現するステップと、伸びを達成したサンプルに所定の熱処理を施すステップと、サンプルが少なくとも2つの異なる断片に破断するまで、サンプルに第2の応力を印加するステップと、破断したサンプルの再熱割れ感受性を判定するステップとを含む。
【0017】
本開示の一部を構成する添付図面において、以下の詳細な説明と共に本発明の1つ又は複数の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】反応装置の模式図である。
【図2】図1の反応装置の2つの溶接された部品の模式図である。
【図3】本発明の例示的一実施形態に係る、溶接された領域を示す図である。
【図4】本発明の例示的一実施形態に係る、溶接された領域のサンプルの模式図である。
【図5】本発明の例示的一実施形態に係る、サンプルの再熱割れ感受性を判定する方法のステップを示すフローチャートである。
【図6】本発明の例示的一実施形態に係る、サンプルに適用される各種熱処理を説明する図である。
【図7】本発明の例示的一実施形態に係る、サンプルに適用される各種熱処理を説明する図である。
【図8】本発明の例示的一実施形態に係る、サンプルに適用される各種熱処理を説明する図である。
【図9】本発明の例示的一実施形態に係る、破断したサンプル及び分析されるサンプルのセクションの模式図である。
【図10】サンプルに生じ得る種々の破断を示す図である。
【図11】サンプルに生じ得る種々の破断を示す図である。
【図12】サンプルに生じ得る種々の破断を示す図である。
【図13】本発明の種々の例示的実施形態に係る、サンプルの試験結果を示す図である。
【図14】本発明の種々の例示的実施形態に係る、サンプルの試験結果を示す図である。
【図15】本発明の種々の例示的実施形態に係る、サンプルの試験結果を示す図である。
【図16】本発明の種々の例示的実施形態に係る、サンプルの試験結果を示す図である。
【図17】試験サンプル及び実際の反応装置について、破断面及びその微細構造を比較して示す図である。
【図18】本発明の例示的実施形態に係る、熱処理及び粗い微細構造に対する、サンプルの損傷の依存度を示すグラフである。
【図19】本発明の例示的実施形態に係る、熱処理及び粗い微細構造に対する、サンプルの損傷の依存度を示すグラフである。
【図20】本発明の例示的一実施形態に係る、コンシューマブルに対する、サンプルの損傷の依存度を示すグラフである。
【図21】本発明の例示的一実施形態に係る破断面の模式図である。
【図22】本発明の例示的一実施形態に係る、材料の再熱割れ感受性を判定するステップを示すフローチャートである。
【図23】本発明の例示的一実施形態に係る、演算処理システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
これより、添付図面を参照しながら、本発明の例示的実施形態を説明する。全図面を通して、同様の構成要素には同様の参照符号が付与されている。なお、本発明の企図は、本明細書に開示の詳細な説明に限定されるものではない。また、本発明の例示的実施形態の企図は、添付の特許請求の範囲に基づいて解釈されるべきである。以下の実施形態を、説明の便宜上、化学反応装置の用語と構造とを用いて説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、この種の反応装置だけではなく、その他の化学反応装置又はその他の溶接部品にも適用可能である。
【0020】
本明細書を通して、「一実施形態」又は「例示的実施形態」という表現は、実施形態に関連して説明する特定の機能、構造又は特徴において、本発明の教示内容が少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。このため、本明細書に散見される「一実施形態において」又は「例示的実施形態において」という表現が示す実施形態は、必ずしも同一のものではない。また、特定の機能、構造又は特徴を、1つ以上の実施形態において適宜、組み合わせてもよい。
【0021】
再熱割れ損傷は、例えば水素化分解反応装置などの様々な反応装置で、溶接されたジョイントに検出されている。これらの反応装置は、厚い溶接部を有する重厚な壁面を特徴とする。これらのジョイントは、基礎材料2.25Cr1Mo0.25Vを用いて、例えば、サブマージアーク溶接(SAW)法によって製造される。再熱割れの疵は、600〜800℃の温度範囲での反応装置の熱処理中に形成し始める。
【0022】
現時点では、このリスクの軽減に有効又は効果的な既知の方法が存在しない。下記の例示的実施形態は、割れ核形成についての定性的データが得られる試験手順を開示し、これにより、リードタイムに影響することなく、実際の構成要素の生産を支援するものである。従って、開示の試験方法の例示的実施形態により、溶接されたジョイントについて、再熱割れ現象に対する感受性という観点での実際の挙動をシミュレートすることができる。この試験は、溶接されたジョイントから直接取得したサンプルに対して、破壊的手法を利用して実行され、前述のサンプルは、反応装置の実際の部品が経験する状況に可能な限り近いシミュレーションを行うために、実際の反応装置における場合のように熱処理及び応力が加えられた後で取得される。
【0023】
詳細は後で詳しく説明するが、この試験に基づいて、再熱割れを生じ難い溶接材料を選択し、溶接パラメータ(例えば、入熱、電流タイプ、二線又は単線、線径など)を最適化し、基礎材料として、例えば2.25Cr1Mo0.25Vを利用する熱処理パラメータを最適化することができる。従って、反応装置が組み立てられた後の非破壊試験で再熱割れの疵を識別することは困難であることが多いため、一つ以上の例示的実施形態の利点として、例えば、再熱割れ損傷に起因する高価で困難な修理を行わずに済むようにするための反応装置を製造することで、製品の品質を高めることができることが含まれる。
【0024】
本発明の例示的実施形態による試験は「オンライン式」であり、これにより、材料の供給即ち溶接パラメータ及び入熱に変化が生じる毎に試験を実施できるため、生産工程に支障をきたすことなく実行できる。また、これらの試験により、反応装置の生産を開始する前に、材料の再熱割れ感受性を検証して、反応装置に、損傷した構成要素を製造することを防ぐことができる。
【0025】
例示的一実施形態において、検査対象であるサンプル26は、図3に示すように、実際の溶接ジョイント20から選択される。このサンプル26は、その全体を溶接ジョイント20から採取される。図4に、このようなサンプル26の一例を示す。図4に示すサンプル26は、直角プリズム形状であってよい。このサンプルの平坦面を利用して、所望の伸びと温度とをサンプルに与えるための歪みゲージ若しくは熱電対、又はその両方を支持することができる。これらの要素を、コンピュータインターフェースに接続し、コンピュータシステムにより制御してもよい。代替的に、この要素を、オペレータ制御してもよい。また、温度及び応力を含むデータベースを得てサンプルに適用できるよう、これらの要素からの出力をコンピュータシステム又はオペレータのいずれかが収集できるようにしてもよい。ただし、他の態様も適用可能である。例示的一実施形態によれば、図4に示すサンプル26の平坦面28は、材料の粒子配向と平行であってよい。
【0026】
次に、サンプル(プローブ)の再熱割れ感受性を判定する手順について、例示的一実施形態を用いて説明する。図5に示すように、ステップ50において、サンプル26のサイズが測定される。サンプル26のサイズを、例えば、マイクロメータ又はコンピュータシステムにより制御可能な光電子デバイスを用いて測定することができる。サンプルは、例えば、当該サンプルを保持する保持具(図示せず)に取り付けられてもよい。当業者に既知の様々な機械的手段を利用して、保持具にサンプルを固定することで、油圧式装置によって応力が印加される際、保持具に対してサンプルが移動しないように構成することができる。機械的手段が保持具内にサンプルを拘束した後で、サンプルのサイズを再測定することができる。例示的一実施形態において、ステップ50の第1又は第2の測定サブステップの一方を省略してもよい。
【0027】
ステップ52において、油圧式装置でサンプル26に予圧がかけられる。与圧は、熱処理による応力緩和が発生する前に印加される負荷であり、その与圧の値は、サンプルの降伏強度の値、又は溶接された実際の構成要素において測定された残留応力の値に近いかそれよりも低くてよい。降伏強度の値は、基礎材料及び溶接材料の組み合わせ毎に固有である。つまり、残留応力は、溶接プロセス/パラメータと、適用される熱処理とに左右されるため、前述の降伏強度の値は、サンプルに含まれる溶接された材料によって異なる。例示する一実施形態によれば、サンプル26に印加される予圧は、このタイプのサンプルで0.3〜0.4mmの伸びが達成される程度のものである。サンプルの長さは、50〜500mmの範囲であってよい。この伸び率は、例示することを意図したものであり、例示する実施形態を限定するものではない。実際には、この伸び率は、サンプルの長さに基づいて計算される。
【0028】
予圧の印加後に、保持具から力印加装置を除去して、サンプルの長さを再測定し、所望の伸び値が得られているかどうかを確認する。サンプル26の所望の伸びは、サンプルの長さの0.2%から0.3%であってよい。所望の伸び値が得られなかった場合は、その所望の伸びが達成されるまでステップ52及び54を繰り返すことができる。所望の伸びが達成されたら、保持具からサンプルを取り出し、そのサンプルを、熱発生装置、例えば、炉内に挿入して、下記で説明するように加熱することができる。
【0029】
サンプルには、次に説明するように、3つの異なる熱処理特性を適用できる。ただし、他の熱処理を適用してもよく、前述の3つの熱処理は、例示する実施形態を限定するものでも、網羅的なものでもない。熱処理のうちの一つは、ステップ56においてサンプルに適用される。図6〜図8に、これら3つの熱処理を示す。図6に、臨界温度に段差1が存在する緩慢な傾斜を有する熱処理を示し、図7に、中間の傾斜を示し、図8に、行き過ぎ量が存在する二重傾斜を示す。基準温度は、好ましくは、675℃で、傾斜は5〜20℃/hの間の勾配、引き伸ばし分は5〜10時間にわたり、臨界温度は650℃である。ただし、これらの値は一例であり、全ての基礎材料に適用できるものではないことは、当業者に明らかである。これらの特定の値は、この例示的実施形態において、2.25Cr1Mo0.25Vの基礎材料に適用されたものである。
【0030】
ステップ56において、サンプル26の長さが再び測定され、その後、ステップ58において、サンプルが破断するまで、他の力がサンプルに印加される。サンプルは、この第2の力の印加中に、へき開、粒内延性破壊、粒界純脆弱性破壊、粒界延性破壊、又は他のメカニズムによるいくつかの方式のうちの一つで破断することになる。この破断の発生には、延性を伴うことも、伴わないこともある。これらの特性は、破断したサンプル26について、図5のステップ60で分析される。例示的実施形態によれば、各サンプルについて3つの異なる金属組織セクションが考察される。図9に示すように、セクションS1及びS3は長手方向セクションで、セクションS2は横方向セクションである。ただし、他の例示的実施形態では、少なくとも2つのセクション、即ちS1及びS2を利用する。例示的一実施形態によれば、これら3つのセクションは、サンプル26の同一部位30において考察される。これらのセクションS1〜S3の微視的組織表面に種々の試験を実行して、例えば、S1及びS3における再熱割れ損傷個所を確認したり、S2における結晶粒組織のタイプを確認したりする。図9に示すサンプル26のセクション40を、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を利用して、脆性表面と延性表面とを比較するなど、破断面の分析に利用することができる。
【0031】
粒界破壊は、材料の結晶粒界に沿った破壊である。材料が複数の格子構造を有する場合に、一つの格子の終わりで他の格子が始まっていると、破壊は方向を変えて新しい粒子に追従する。このため、凹凸のあるエッジを有する、極めてギザギザに見える破壊になる。粒界破壊は、材料の結晶粒界に沿って生じる割れと同様であるとも言える。粒子には、真っ直ぐなエッジ及び艶のある表面が見られる。
【0032】
粒内破壊は、個々の格子内の粒子を無視して、粒状材料の格子のエッジに沿った破壊である。このため、変化する粒子に沿ったものと比べると、尖ったエッジが少ない、かなり滑らかに見える破壊になる。粒内破壊は、木製のジグソーパズルのピースに類似したものであると言える。木目はあるが、各ピースの木目は異なる方向に並んでいる。逆に、粒界破壊は、木目とは関係なく、パズルのピースのエッジに沿ったものになる。
【0033】
これら異なるタイプの破壊は、SEM分析によって特定可能である。このSEM分析は、オペレータによって実行されることも、前述したコンピュータシステムによって自動的に実行されることもある。図10〜図12に、発生し得る種々の破壊を示す。図10に、延性を有さない100%粒界割れ損傷が存在する破断面を示す。図11に、延性を有さない粒界割れ損傷の領域(A)、延性を有する粒界割れ損傷の領域(B)、及び延性を有する粒内破壊の領域(C)が混在する破断面を示す。図12に、延性を有する100%粒内破壊が存在する破断面を示す。
【0034】
室温では、通常、破断面が粒内延性のみを示すため、粒界破断の存在は、熱処理中の高温においてある種の損傷が発生したことを示す指標であり、これにより、損傷が確認される。図13〜図16に、例示的実施形態に係る、サンプル26の試験結果を示す。図13に、破断面(横方向セクション)内の粒界割れを示す。図14に、酸化被膜に覆われた粒界割れを示す。図15に、脆性粒界の外観を有する破断面を示す。図16に、光学顕微鏡によって解析された微視的組織の長手方向セクションを示す。このセクションに、破断面の下の複数の平行な粒界割れ、及び結晶粒界における割れの伝播が検出されている。
【0035】
実行した試験の結果は、反応装置内で観測される実際の再熱割れと同様であった。サンプル内の3つの異なる微細構造の存在は、サンプルの分析で、(a)微細な等軸結晶粒組織(粒子は小さく、配向はランダムである)、(b)粗い等軸結晶粒組織(粒子はより粗くなっているが、配向は依然としてランダムである)、及び(c)円柱状結晶粒組織(粒子はより粗くなり、配向に指向性がある)として識別された。試験の信頼性を保証するためには、45%の量の粗い結晶粒組織が存在しなければならない。図17に、試験サンプルと実際の反応装置の割れについて、破断面とその微細構造を比較して示す。サンプルと反応装置の割れのこの一致は、例示的実施形態に従って、準備段階の中でサンプルに印加された応力及び熱処理は適切であることを示すものであり、前述の方法は、実際の構成要素の再熱割れ損傷を再現できることを実証している。
【0036】
例示的実施形態によれば、サンプルに対する熱処理の影響を定量的に評価するために、熱処理深刻度指数(SI)を用い、SIを熱処理ごとに計算する。クリープ破損、クリープ歪みの蓄積、又は他の技術に基づいて、深刻度指数を計算することができる。
【0037】
例示的一実施形態によれば、第1の深刻度指数は、破損したサンプルについて、熱処理の温度曲線を近似させる様々な温度プロファイルに基づいて計算される。具体的には、熱処理の実際の温度を階段状の温度曲線に近似させ、その階段状の温度曲線の段ごとに計算された階段状深刻度指数の合計として深刻度指数を算出する。
【0038】
他の例示的実施形態によれば、熱処理の温度曲線を近似させる同一の温度プロファイルに基づいて、第2の深刻度指数を計算することができる。ここで、破損したサンプルの損傷パラメータは、熱処理の実際の温度を階段状温度曲線に近似させ、その階段状温度曲線の各段の階段状深刻度指数の合計として第2の深刻度指数を計算することによって評価される。
【0039】
例示的一実施形態によれば、サンプルの損傷量を、脆性領域に対応付け、画像解析ソフトウェアによって測定することができる。深刻度指数SI(クリープ破損の基づいたもの)とサンプルの粗い微細構造の関数が、図18に示すように、損傷量に対して描画される。この図から、損傷は、熱処理の深刻度指数及び粗い粒子サイズの割合と共に増加することがわかる。サンプルの損傷は、図19に示すように、深刻度指数SI(クリープ歪みの蓄積に基づいたもの)及び入熱(溶接プロセス中に生成される熱エネルギ)に対しても描画される。この図から、損傷は、入熱の値と共に増加することがわかる。ただし、上記パラメータに対する損傷率の依存度は、溶接プロセス中に用いられる溶加材(コンシューマブル)に応じて変動する可能性がある。これに関して、図20に、種々の供給元からの複数のコンシューマブルが異なる損傷率を呈する様子を示す。
【0040】
図18〜図20に集約された結果に基づいて、本発明者らは、サンプルの微細構造(粗い粒子サイズの観点での微細構造)が、サンプルに顕現する損傷量に影響するという結論に達した。従って、円柱状結晶粒組織の量が低下することにより、適切なコンシューマブルで、高い割合の粗い粒状組織が再熱割れ損傷を助長しない場合であっても、材料が再熱割れに耐える確率が向上する。また、コンシューマブルの影響は、他の要因を抑制することが観察されている。この点において、例示的実施形態によれば、溶接パラメータ及び熱処理は、溶接コンシューマブルの影響と比較すると二次的な影響を与えるものである。ただし、前述のパラメータがフラックスごとに異なる可能性があるとしても、これらの溶接パラメータ及び熱処理は、再熱割れを緩和し得る。
【0041】
他の例示的実施形態によれば、検討したサンプルの再熱割れ感受性は、分析されたセクション内で特定された脆性表面の領域の評価に基づいている。例えば、図21に示すように、破断面は、再熱割れ損傷とは関連のない急速破壊の第1領域Dと、再熱割れ現象によって形成される割れ損傷(粒界延性破面経路)の第2領域Eとを示す可能性がある。第2領域Eは、純脆性割れ損傷の領域Fを含む場合があり、この領域は、この例では第2領域のほぼ15%であり得る。結晶粒界における延性破面経路は、領域F内に検出されていない。このような材料は、次の条件のうちの少なくとも一つが満たされる、即ち、前述した特定のサンプルで、領域Fが領域Eの0%より大きいか、又は、領域Eが破断面全体(領域D及びE)の約10%より大きい場合に、再熱割れし易いと考えることができる。ただし、これらのパーセンテージは、他の材料では異なり得る。
【0042】
従って、検討したサンプルの再熱割れ感受性は、推定された損傷、若しくは図21を参照しながら説明した領域E及びFの範囲、又はその両方に基づいて、ステップ60(図5を参照)において予測される。損傷が所定の閾値を下回る場合、そのサンプルが再熱割れし難いと考え、そのサンプルに使用した材料を大量生産に供することができる。ただし、サンプル内の損傷が所定の閾値を上回る場合、そのサンプルに使用した材料は、反応装置の大量生産に適していないとみなされる。所定の閾値は、材料(コンシューマブル)に依存する。上記の例示的実施形態の一つにおいて説明した反応装置、即ち、2.25Cr1Mo0.25Vについての所定の閾値は、領域Fについては0%、領域Eについては最大で破断面全体の10%である。
【0043】
図22に示す例示的実施形態によれば、溶接された領域を含む少なくとも一つの材料のサンプルの再熱割れ感受性を判定する方法が存在する。この方法は、サンプルの長さを測定するステップ2200と、このサンプルに第1の応力を印加して、サンプルの所定の伸びを実現するステップ2210と、伸びを達成したサンプルに所定の熱処理を施すステップ2220と、サンプルが少なくとも2つの異なる断片に破断するまで、サンプルに第2の応力を印加するステップ2230と、破断したサンプルの再熱割れ感受性を判定するステップ2240とを含む。
【0044】
この方法は、インターフェースを有するコンピュータシステムを含むシステムにおいて実施可能であり、インターフェースは、例えば、応力印加測定装置、熱電対、長さ測定装置、SEM顕微鏡などからデータを受け取るように構成される。このような装置、又はコンピュータシステムを構成するコンピュータ命令の技術的効果は、サンプルが再熱割れを呈する感受性を判定することである。
【0045】
例示的一実施形態によれば、演算処理システムを利用して、サンプルの長さを測定し、予圧及び荷重を印加し、熱処理を施し、領域E及びFの範囲を特定するという、種々の例示的実施形態において説明した測定及び計算を自動的に実行することができる。従って、限定するためではなく、例示することを目的として、図23に、例示的実施形態に係る動作を実行できる代表的な演算処理システムの一例を示す。ただし、本例示的実施形態の原理は、標準の演算処理システムに等しく適用できることを理解されたい。ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はこれらの組み合わせを利用して、本明細書に記載した種々のステップ及び動作を実行することができる。
【0046】
例示的実施形態で説明した作業を実行することに適した一例の演算処理構成2300に、サーバ2301を含めてもよい。このようなサーバ2301は、ランダムアクセスメモリ(RAM)2304及び読み取り専用メモリ(ROM)2306に接続された中央演算処理装置(CPU)2302を含んでよい。ROM2306は、プログラム可能ROM(PROM)、プログラム消去可能ROM(EPROM)など、プログラムを格納する他のタイプの記憶媒体であってもよい。演算処理装置2302から、入出力(I/O)回路2308及びブッシング2310を介して、他の内部及び外部の構成要素と通信して、制御信号などがもたらされる。演算処理装置2302は、この分野で既知のように、ソフトウェア及びファームウェアの少なくともいずれかの命令に指示されて、種々の機能を実行する。
【0047】
サーバ2301は、一つ以上のデータ記憶装置を含んでもよく、データ記憶装置には、ハードディスク及びフロッピィディスクドライブ2312、CD−ROMドライブ2314、及び情報の読み取り及び保存の少なくともいずれかを行えるDVDのような他のハードウェアなどがある。一実施形態において、前述したステップを実行するソフトウェアは、CD−ROM2316、ディスケット2318、又は可搬式に情報を格納できる他の形式の媒体に保存及び分散されてよい。これらの記憶媒体は、CD−ROMドライブ2314、ディスクドライブ2312などのデバイスに挿入されると、これらのデバイスにより読み取られる。サーバ2301は、ディスプレイ2320に接続されてもよく、ディスプレイ2320は、LCDディスプレイ、プラズマディスプレイ、ブラウン管(CRT)など、任意のタイプの既知の表示装置又は表示画面であってよい。マウス、キーボード、マイク、タッチパッド、タッチスクリーン、音声認識システムなど、一つ以上のユーザインターフェース機構を含むユーザ入力インターフェース2322が設けられる。
【0048】
サーバ2301は、地上通信線端末及び無線端末の少なくともいずれか、並びに関連のウォッチャ(watcher)アプリケーションなどの他の演算処理装置にネットワークを介して接続することができる。サーバは、インターネット2328などのグローバルエリアネットワーク(GAN)におけるような大規模ネットワーク構成の一部であってよく、これにより、最終的には、様々な地上通信線及び移動クライアントデバイスの少なくともいずれかに接続することができる。
【0049】
開示の例示的実施形態により、サンプルの再熱割れ感受性を識別するサーバ、方法、及びコンピュータプログラム製品が得られる。この説明は本発明を限定するためのものではないことは理解されよう。逆に、例示的実施形態は、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の本質及び特許可能な範囲に含まれる代替物、修正物、及び等価物を網羅することを意図したものである。また、例示的実施形態の詳細な説明において、多くの具体的詳細は、特許請求の範囲に記載の発明の包括的理解を助けるためのものである。ただし、当業者に明らかなように、様々な実施形態がこのような具体的詳細の有無にかかわらず可能である。
【0050】
また、当業者には同様に理解されるであろうが、例示的実施形態を、サーバにおいて、方法として実施することも、コンピュータプログラム製品において実施することもできる。従って、例示的実施形態は、完全なハードウェア実施形態であっても、又はハードウェアとソフトウェアの態様を組み合わせた実施形態であってもよい。更に、例示的実施形態は、コンピュータ可読記憶媒体に格納されたコンピュータプログラム製品であってもよく、コンピュータ可読記憶媒体は、当該媒体に埋め込まれたコンピュータ可読命令を有する。ハードディスク、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、光記憶装置、又はフロッピィディスクや磁気テープなどの磁気記憶装置を含め、様々な適切なコンピュータ可読記憶媒体を利用することができる。コンピュータ可読媒体の他の例としては、フラッシュ形メモリや他の既知のメモリがあるが、これに限定されない。
【0051】
例示的実施形態の特徴及び要素は、実施形態において特定の組み合わせで説明したが、各特徴又は要素は、実施形態の他の特徴及び要素を用いずに単独で利用されても、又は本明細書で開示した他の特徴及び要素と共に、若しくは共に用いずに、様々な組み合わせで利用することができる。本願で提示した方法又はフローチャートは、汎用コンピュータ又は演算処理装置によって実行されるようにコンピュータ可読記憶媒体に有形に埋め込まれたコンピュータプログラム、ソフトウェア、ファームウェアに実装することができる。
【0052】
以上、最良の態様を含めた様々な例示を用いて本発明を説明してきた。当業者は、これにより、本発明に係る装置又はシステムを作製すること、並びにこれに関連する方法を実施することができる。添付の特許請求の範囲において本発明の特許可能な範囲を記載するが、これには当業者に想起可能なその他の実施形態も含まれる。かかるその他の実施形態は、特許請求の範囲の文言と相違ない構成要素を有する限り、或いは、特許請求の範囲の文言と本質的に相違ない同等の構成要素を有する限り、本発明の例示的実施形態とみなされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接された領域(20)を含む少なくとも一つの材料のサンプル(26)の再熱割れ感受性を判定する方法であって、
前記サンプル(26)の長さを測定するステップと、
前記サンプル(26)に第1の応力を印加して、前記サンプル(26)の所定の伸びを実現するステップと、
前記伸びを達成したサンプル(26)に所定の熱処理を施すステップ(56)と、
前記サンプル(26)が少なくとも2つの異なる断片(30,40)に破断するまで、前記サンプル(26)に第2の応力を印加するステップと、
前記破断したサンプル(26)の再熱割れ感受性を判定するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記判定するステップは、
前記熱処理の温度プロファイルに基づいて、前記破断したサンプル(30,40)のクリープ破損深刻度指数を計算し、
計算されたクリープ破損深刻度指数に基づいて、前記サンプル(26)の損傷パラメータを評価することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記計算するステップは、
前記熱処理の実際の温度を、階段状温度曲線に近似させ、
前記階段状温度曲線の各段の深刻度指数の合計として、前記クリープ破損深刻度指数を算出することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記判定するステップは、
前記熱処理の温度プロファイルに基づいて、前記破断したサンプル(30,40)のクリープ歪みの蓄積深刻度指数を計算し、
計算されたクリープ歪みの蓄積深刻度指数に基づいて、前記サンプル(26)の損傷パラメータを評価することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記計算するステップは、
前記熱処理の実際の温度を階段状温度曲線に近似させ、
前記階段状温度曲線の各段の深刻度指数の合計として、前記クリープ歪みの蓄積深刻度指数を算出することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記熱処理は、
温度を上昇させる第1領域、一定温度の第2領域、温度を上昇させる第3領域、一定温度の第4領域、及び温度を低下させる第5領域を含む第1の熱処理と、
温度を上昇させる第1領域、一定温度の第2領域、及び温度を低下させる第3領域を含む第2の熱処理と、
第1の勾配で温度を上昇させる第1領域、第2の勾配で温度を上昇させる第2領域、第3の勾配で温度を低下させる第3領域、一定温度の第4領域、及び第4の勾配で温度を低下させる第5領域を含む第3の熱処理とのうちの一つを含む、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
溶接された材料(20)のみを含むように前記サンプル(26)を切断することを更に含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプルの材料の粒子配向と平行に、前記サンプル(26)の表面を切断することを更に含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記サンプルの平面に、歪みゲージ及び熱電対の少なくともいずれかを適用して、前記サンプルの歪み及び温度の少なくともいずれかを監視することを更に含む、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記判定するステップは、
走査型電子顕微鏡を用いて、前記破断したサンプル(26)の少なくとも一つの破断面を分析して、割れ損傷の第1領域(E)及び急速破壊の第2領域(D)を識別し、その識別において、前記割れ損傷の第1領域(E)は、粒界純脆性割れ損傷の第3領域(F)を含むものを識別し、
次の条件:前記第3領域(F)は、前記第1領域(E)の約0%を上回っていること、及び前記割れ損傷の第1領域(E)は、前記破断したサンプル(26)の破断面の全面積の約10%を上回っていることのうちの少なくとも一方が満たされ、前記破断したサンプル(26)は2.25Cr1Mo0.25Vの化学組成を有するときに、前記サンプルを再熱割れし易いと分類することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記判定するステップは、
少なくとも横方向の微視的組織セクションを分析して、粗い粒子サイズの組織の割合を特定し、
前記断面内の粗い結晶粒組織が、前記横方向セクション面積の約45%以上であるときに、試験を有効であると認定することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記判定するステップは、
前記サンプルの少なくとも2つのセクションに請求項1のステップを適用することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
溶接された領域(20)を含む少なくとも一つの材料のサンプル(26)の再熱割れ感受性を判定するシステムであって、
前記サンプル(26)の長さを測定する長さ測定装置から第1データを受け取り、
前記サンプルに第1の応力を印加して、前記サンプル(26)の所定の伸びを実現するステップと、前記サンプル(26)内の応力を判定するステップとを行うように構成される応力印加測定装置から第2データを受け取り、
前記伸びを達成したサンプルに所定の熱処理を施すように構成される熱印加装置から第3データを受け取り、且つ、
前記サンプル(26)が少なくとも2つの異なる断片(30,40)に破断するまで、前記サンプル(26)に第2の応力を印加するように構成される前記応力印加測定装置から第4データを受け取るように構成されるインターフェース(2308)と、
前記インターフェース(2308)に接続されて、前記長さ測定装置、前記応力印加測定装置、及び前記熱印加装置を制御するように構成されると共に、前記長さ測定装置、前記応力印加測定装置、及び前記熱印加装置から受け取った情報に基づいて、前記破断したサンプル(30,40)の再熱割れ感受性を判定するように構成される演算処理装置(2302)とを含むシステム。
【請求項14】
前記演算処理装置は、
前記熱処理の温度プロファイルに基づいて、前記破断したサンプルについてのクリープ破損深刻度指数を計算し、
前記計算されたクリープ破損深刻度指数に基づいて、前記サンプルの損傷パラメータを評価するように構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記演算処理装置は、更に、
前記熱処理の実際の温度を階段状温度曲線に近似させ、
前記階段状温度曲線の各段の深刻度指数の合計として、前記クリープ破損深刻度指数を算出するように構成される、請求項14に記載のシステム。
【請求項1】
溶接された領域(20)を含む少なくとも一つの材料のサンプル(26)の再熱割れ感受性を判定する方法であって、
前記サンプル(26)の長さを測定するステップと、
前記サンプル(26)に第1の応力を印加して、前記サンプル(26)の所定の伸びを実現するステップと、
前記伸びを達成したサンプル(26)に所定の熱処理を施すステップ(56)と、
前記サンプル(26)が少なくとも2つの異なる断片(30,40)に破断するまで、前記サンプル(26)に第2の応力を印加するステップと、
前記破断したサンプル(26)の再熱割れ感受性を判定するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記判定するステップは、
前記熱処理の温度プロファイルに基づいて、前記破断したサンプル(30,40)のクリープ破損深刻度指数を計算し、
計算されたクリープ破損深刻度指数に基づいて、前記サンプル(26)の損傷パラメータを評価することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記計算するステップは、
前記熱処理の実際の温度を、階段状温度曲線に近似させ、
前記階段状温度曲線の各段の深刻度指数の合計として、前記クリープ破損深刻度指数を算出することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記判定するステップは、
前記熱処理の温度プロファイルに基づいて、前記破断したサンプル(30,40)のクリープ歪みの蓄積深刻度指数を計算し、
計算されたクリープ歪みの蓄積深刻度指数に基づいて、前記サンプル(26)の損傷パラメータを評価することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記計算するステップは、
前記熱処理の実際の温度を階段状温度曲線に近似させ、
前記階段状温度曲線の各段の深刻度指数の合計として、前記クリープ歪みの蓄積深刻度指数を算出することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記熱処理は、
温度を上昇させる第1領域、一定温度の第2領域、温度を上昇させる第3領域、一定温度の第4領域、及び温度を低下させる第5領域を含む第1の熱処理と、
温度を上昇させる第1領域、一定温度の第2領域、及び温度を低下させる第3領域を含む第2の熱処理と、
第1の勾配で温度を上昇させる第1領域、第2の勾配で温度を上昇させる第2領域、第3の勾配で温度を低下させる第3領域、一定温度の第4領域、及び第4の勾配で温度を低下させる第5領域を含む第3の熱処理とのうちの一つを含む、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
溶接された材料(20)のみを含むように前記サンプル(26)を切断することを更に含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプルの材料の粒子配向と平行に、前記サンプル(26)の表面を切断することを更に含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記サンプルの平面に、歪みゲージ及び熱電対の少なくともいずれかを適用して、前記サンプルの歪み及び温度の少なくともいずれかを監視することを更に含む、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記判定するステップは、
走査型電子顕微鏡を用いて、前記破断したサンプル(26)の少なくとも一つの破断面を分析して、割れ損傷の第1領域(E)及び急速破壊の第2領域(D)を識別し、その識別において、前記割れ損傷の第1領域(E)は、粒界純脆性割れ損傷の第3領域(F)を含むものを識別し、
次の条件:前記第3領域(F)は、前記第1領域(E)の約0%を上回っていること、及び前記割れ損傷の第1領域(E)は、前記破断したサンプル(26)の破断面の全面積の約10%を上回っていることのうちの少なくとも一方が満たされ、前記破断したサンプル(26)は2.25Cr1Mo0.25Vの化学組成を有するときに、前記サンプルを再熱割れし易いと分類することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記判定するステップは、
少なくとも横方向の微視的組織セクションを分析して、粗い粒子サイズの組織の割合を特定し、
前記断面内の粗い結晶粒組織が、前記横方向セクション面積の約45%以上であるときに、試験を有効であると認定することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記判定するステップは、
前記サンプルの少なくとも2つのセクションに請求項1のステップを適用することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
溶接された領域(20)を含む少なくとも一つの材料のサンプル(26)の再熱割れ感受性を判定するシステムであって、
前記サンプル(26)の長さを測定する長さ測定装置から第1データを受け取り、
前記サンプルに第1の応力を印加して、前記サンプル(26)の所定の伸びを実現するステップと、前記サンプル(26)内の応力を判定するステップとを行うように構成される応力印加測定装置から第2データを受け取り、
前記伸びを達成したサンプルに所定の熱処理を施すように構成される熱印加装置から第3データを受け取り、且つ、
前記サンプル(26)が少なくとも2つの異なる断片(30,40)に破断するまで、前記サンプル(26)に第2の応力を印加するように構成される前記応力印加測定装置から第4データを受け取るように構成されるインターフェース(2308)と、
前記インターフェース(2308)に接続されて、前記長さ測定装置、前記応力印加測定装置、及び前記熱印加装置を制御するように構成されると共に、前記長さ測定装置、前記応力印加測定装置、及び前記熱印加装置から受け取った情報に基づいて、前記破断したサンプル(30,40)の再熱割れ感受性を判定するように構成される演算処理装置(2302)とを含むシステム。
【請求項14】
前記演算処理装置は、
前記熱処理の温度プロファイルに基づいて、前記破断したサンプルについてのクリープ破損深刻度指数を計算し、
前記計算されたクリープ破損深刻度指数に基づいて、前記サンプルの損傷パラメータを評価するように構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記演算処理装置は、更に、
前記熱処理の実際の温度を階段状温度曲線に近似させ、
前記階段状温度曲線の各段の深刻度指数の合計として、前記クリープ破損深刻度指数を算出するように構成される、請求項14に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2010−110820(P2010−110820A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−209874(P2009−209874)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(500445479)ヌオーヴォ ピニォーネ ホールディング ソシエタ ペル アチオニ (34)
【氏名又は名称原語表記】Nuovo Pignone Holding S.p.A.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209874(P2009−209874)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(500445479)ヌオーヴォ ピニォーネ ホールディング ソシエタ ペル アチオニ (34)
【氏名又は名称原語表記】Nuovo Pignone Holding S.p.A.
【Fターム(参考)】
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