説明

再燃性前立腺癌の検出方法

【課題】再燃性前立腺癌を特異的に検出する方法を提供する。
【解決手段】
前立腺癌細胞で発現しうる特定の遺伝子の発現量を測定することを含む、再燃性前立腺癌の検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再燃性前立腺癌の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌は、男性ホルモンであるアンドロゲンに依存して増殖するため、アンドロゲンの分泌や働きを抑制するホルモン療法が有効な治療法として用いられている。しかし、このホルモン療法によっても少なからず癌細胞が生き残る。生き残った癌細胞は、その後増殖を繰返し、ホルモン療法に耐性をもったホルモン抵抗性前立腺癌を引き起こす。ホルモン抵抗性前立腺癌は、ホルモン療法により一度抑制された前立腺癌の増殖が再び活発化したものであり、再燃性前立腺癌とも呼ばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、再燃性前立腺癌特異的なマーカーを開発することができれば、当該マーカーを検出することにより再燃性前立腺癌を特異的に検出することができ、これにより再燃性前立腺癌に適した治療、すなわち非ホルモン療法をスムーズに実施できるため、患者の負担軽減及び医療経済の観点から有益であると考えた。
本発明は、再燃性前立腺癌に特異的なマーカーを見い出し、このマーカーを用いて再燃性前立腺癌を特異的に検出する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、これまで発現量が少ないが故に発現量の検出が困難であった特定の糖鎖関連遺伝子に着目し、これらを含む遺伝子群の中から、再燃性前立腺癌細胞においてより高い又はより低い発現量を示す遺伝子を特定することに成功した。本発明はこの知見に基づき完成するに至ったものである。
【0005】
本発明の課題は下記の手段により達成された。
<1>下記(a)〜(d)のいずれかのDNAからなる少なくとも1種の遺伝子の発現量を測定することを含む、再燃性前立腺癌の検出方法:
(a)配列番号1の塩基配列、配列番号3の塩基配列、配列番号5の塩基配列、配列番号7の塩基配列、配列番号9の塩基配列、配列番号11の塩基配列、配列番号15の塩基配列、配列番号17の塩基配列、配列番号19の塩基配列、配列番号21の塩基配列、配列番号23の塩基配列、配列番号25の塩基配列、配列番号27の塩基配列、配列番号31の塩基配列、配列番号33の塩基配列、配列番号35の塩基配列、配列番号37の塩基配列、配列番号39の塩基配列、配列番号41の塩基配列、配列番号43の塩基配列、配列番号45の塩基配列、配列番号47の塩基配列、配列番号51の塩基配列、配列番号53の塩基配列、配列番号55の塩基配列、配列番号57の塩基配列、配列番号59の塩基配列及び配列番号61の塩基配列からなる群から選ばれる塩基配列からなるDNA、
(b)上記(a)のDNAの塩基配列と80%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAであって、前立腺癌細胞のゲノム中に存在するDNA、
(c)上記(a)のDNAの塩基配列において、1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列からなるDNAであって、前立腺癌細胞のゲノム中に存在するDNA、
(d)上記(a)のDNAの塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、前立腺癌細胞のゲノム中に存在するDNA。
<2>遺伝子の発現量の測定が、該遺伝子の転写産物の量の測定である、<1>に記載の検出方法。
<3>下記(Aa)〜(Bb)からなる群から選ばれる少なくとも1種のプライマーセットを用いて少なくとも1種の遺伝子の発現量を測定する、<2>に記載の検出方法:
(Aa)配列番号63の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号64の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Ab)配列番号65の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号66の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Ac)配列番号67の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号68の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Ad)配列番号69の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号70の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Ae)配列番号71の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号72の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Af)配列番号73の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号74の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Ag)配列番号77の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号78の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Ah)配列番号79の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号80の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Ai)配列番号81の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号82の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Aj)配列番号83の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号84の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Ak)配列番号85の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号86の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Al)配列番号87の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号88の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Am)配列番号89の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号90の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(An)配列番号93の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号94の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、
(Ao)配列番号95の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号96の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、
(Ap)配列番号97の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号98の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、
(Aq)配列番号99の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号100の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、
(Ar)配列番号101の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号102の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、
(As)配列番号103の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号104の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、
(At)配列番号105の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号106の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、
(Au)配列番号107の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号108の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、
(Av)配列番号109の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号110の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、及び
(Aw)配列番号113の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号114の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット。
(Ax)配列番号115の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号116の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット。
(Ay)配列番号117の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号118の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット。
(Az)配列番号119の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号120の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット。
(Ba)配列番号121の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号122の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット。
(Bb)配列番号123の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号124の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット。
<4>遺伝子の発現量の測定が、該遺伝子の発現産物であるタンパク質の量の測定である、<1>に記載の検出方法。
<5>測定されるタンパク質の量が、下記(e)〜(g)のいずれかのアミノ酸配列からなる少なくとも1種のタンパク質の量である、<4>に記載の検出方法:
(e)配列番号2のアミノ酸配列、配列番号4のアミノ酸配列、配列番号6のアミノ酸配列、配列番号8のアミノ酸配列、配列番号10のアミノ酸配列、配列番号12のアミノ酸配列、配列番号16のアミノ酸配列、配列番号18のアミノ酸配列、配列番号20のアミノ酸配列、配列番号22のアミノ酸配列、配列番号24のアミノ酸配列、配列番号26のアミノ酸配列、配列番号28のアミノ酸配列、配列番号32のアミノ酸配列、配列番号34のアミノ酸配列、配列番号36のアミノ酸配列、配列番号38のアミノ酸配列、配列番号40のアミノ酸配列、配列番号42のアミノ酸配列、配列番号44のアミノ酸配列、配列番号46のアミノ酸配列、配列番号48のアミノ酸配列、配列番号52のアミノ酸配列、配列番号54のアミノ酸配列、配列番号56のアミノ酸配列、配列番号58のアミノ酸配列、配列番号60のアミノ酸配列及び配列番号62のアミノ酸配列からなる群から選ばれるアミノ酸配列、
(f)上記(e)のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有し、かつ前立腺癌細胞のゲノム中に存在するDNAにコードされるアミノ酸配列、
(g)上記(e)のアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列であって、前立腺癌細胞のゲノム中に存在するDNAにコードされるアミノ酸配列。
<6>単離した前立腺癌細胞中における遺伝子の発現量を測定する、<1>〜<5>のいずれかに記載の検出方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、再燃性前立腺癌を、ホルモン感受性前立腺癌と区別して特異的に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1に記載のRT−PCRの結果を示す電気泳動の写真である。レーン1はPrE細胞の結果を、レーン2はLNCaP細胞の結果を、レーン3はDu145細胞の結果を、レーン4はPC−3細胞の結果を示す。
【図2】実施例2に記載のリアルタイムRT−PCRの結果を示すグラフである。
【図3】実施例2に記載のリアルタイムRT−PCRの結果を示すグラフである。
【図4】実施例2に記載のリアルタイムRT−PCRの結果を示すグラフである。
【図5】実施例2に記載のリアルタイムRT−PCRの結果を示すグラフである。
【図6】実施例2に記載のリアルタイムRT−PCRの結果を示すグラフである。
【図7】実施例2に記載のリアルタイムRT−PCRの結果を示すグラフである。
【図8】実施例2に記載のリアルタイムRT−PCRの結果を示すグラフである。
【図9】実施例2に記載のリアルタイムRT−PCRの結果を示すグラフである。
【図10】実施例2に記載のリアルタイムRT−PCRの結果を示すグラフである。
【図11】実施例2に記載のリアルタイムRT−PCRの結果を示すグラフである。
【図12】実施例2に記載のリアルタイムRT−PCRの結果を示すグラフである。
【図13】実施例2に記載のリアルタイムRT−PCRの結果を示すグラフである。
【図14】実施例2に記載のリアルタイムRT−PCRの結果を示すグラフである。
【図15】実施例2に記載のリアルタイムRT−PCRの結果を示すグラフである。
【図16】実施例2に記載のリアルタイムRT−PCRの結果を示すグラフである。
【図17】実施例2に記載のリアルタイムRT−PCRの結果を示すグラフである。
【図18】実施例2に記載のリアルタイムRT−PCRの結果を示すグラフである。
【図19】実施例2に記載のリアルタイムRT−PCRの結果を示すグラフである。
【図20】実施例2に記載のリアルタイムRT−PCRの結果を示すグラフである。
【図21】実施例2に記載のリアルタイムRT−PCRの結果を示すグラフである。
【図22】実施例2に記載のリアルタイムRT−PCRの結果を示すグラフである。
【図23】実施例2に記載のリアルタイムRT−PCRの結果を示すグラフである。
【図24】実施例2に記載のリアルタイムRT−PCRの結果を示すグラフである。
【図25】実施例2に記載のリアルタイムRT−PCRの結果を示すグラフである。
【図26】実施例2に記載のリアルタイムRT−PCRの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について、その好ましい実施態様に基づき詳細に説明する。
【0009】
本発明の再燃性前立腺癌の検出方法(以下、単に本発明の検出方法と呼ぶ。)は、特定の遺伝子の発現量を測定し、当該測定結果に基づき再燃性前立腺癌を特異的に検出する方法である。
本発明において「再燃性前立腺癌」とは、「ホルモン低感受性前立腺癌」、「ホルモン抵抗性前立腺癌」及び「ホルモン非依存性前立腺癌」と同義であり、アンドロゲン等のホルモンを遮断するホルモン療法により増殖が抑制されていた癌細胞が再び増殖を開始したホルモン抵抗性の前立腺癌のみならず、癌発生当初からホルモン療法に対する抵抗性を有するホルモン抵抗性の前立腺癌細胞をも含む意味で用いられる。
【0010】
本発明の検出方法により発現量が測定される遺伝子は、配列番号1の塩基配列、配列番号3の塩基配列、配列番号5の塩基配列、配列番号7の塩基配列、配列番号9の塩基配列、配列番号11の塩基配列、配列番号15の塩基配列、配列番号17の塩基配列、配列番号19の塩基配列、配列番号21の塩基配列、配列番号23の塩基配列、配列番号25の塩基配列、配列番号27の塩基配列、配列番号31の塩基配列、配列番号33の塩基配列、配列番号35の塩基配列、配列番号37の塩基配列、配列番号39の塩基配列、配列番号41の塩基配列、配列番号43の塩基配列、配列番号45の塩基配列、配列番号47の塩基配列、配列番号51の塩基配列、配列番号53の塩基配列、配列番号55の塩基配列、配列番号57の塩基配列、配列番号59の塩基配列及び配列番号61の塩基配列からなる群から選ばれる塩基配列からなるDNA、又は当該塩基酸配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の同一性(identity)を有するDNAからなることが好ましい。
本明細書において「塩基配列の同一性(%)」とは、比較する2つの塩基配列を必要に応じて間隙を導入して整列(アラインメント)させ、得られる最大の塩基配列の同一性(%)をいう。塩基配列の同一性を決定する目的のためのアラインメントは、通常の方法を用いて行うことができ、例えばBLASTのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアや、DNASIS Pro(日立ソフトウェアエンジニアリング社製)並びにGENETYX(ゼネティックス社製)等の市販のソフトウェアを使用することもできる。
【0011】
また、本発明の検出方法により発現量が測定される遺伝子は、配列番号1の塩基配列、配列番号3の塩基配列、配列番号5の塩基配列、配列番号7の塩基配列、配列番号9の塩基配列、配列番号11の塩基配列、配列番号15の塩基配列、配列番号17の塩基配列、配列番号19の塩基配列、配列番号21の塩基配列、配列番号23の塩基配列、配列番号25の塩基配列、配列番号27の塩基配列、配列番号31の塩基配列、配列番号33の塩基配列、配列番号35の塩基配列、配列番号37の塩基配列、配列番号39の塩基配列、配列番号41の塩基配列、配列番号43の塩基配列、配列番号45の塩基配列、配列番号47の塩基配列、配列番号51の塩基配列、配列番号53の塩基配列、配列番号55の塩基配列、配列番号57の塩基配列、配列番号59の塩基配列及び配列番号61の塩基配列からなる群から選ばれる塩基配列において1又は数個の塩基が置換、欠失、挿入又は付加された塩基配列からなるDNAからなるものであってもよい。
本明細書において「1又は(もしくは)数個」とは、1〜50の整数であることが好ましく、1〜30の整数であることがより好ましく、1〜20の整数であることがさらに好ましく、1〜15の整数であることが特に好ましく、1〜10の整数であることが殊更好ましい。
【0012】
また、本発明の検出方法により発現量が測定される遺伝子は、配列番号1の塩基配列、配列番号3の塩基配列、配列番号5の塩基配列、配列番号7の塩基配列、配列番号9の塩基配列、配列番号11の塩基配列、配列番号15の塩基配列、配列番号17の塩基配列、配列番号19の塩基配列、配列番号21の塩基配列、配列番号23の塩基配列、配列番号25の塩基配列、配列番号27の塩基配列、配列番号31の塩基配列、配列番号33の塩基配列、配列番号35の塩基配列、配列番号37の塩基配列、配列番号39の塩基配列、配列番号41の塩基配列、配列番号43の塩基配列、配列番号45の塩基配列、配列番号47の塩基配列、配列番号51の塩基配列、配列番号53の塩基配列、配列番号55の塩基配列、配列番号57の塩基配列、配列番号59の塩基配列及び配列番号61の塩基配列からなる群から選ばれる塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAからなるものでもよい。
本明細書において「ストリンジェントな条件」とは、塩基配列の同一性が高いDNA同士、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の同一性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより同一性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗浄条件である60℃、1×SSC、0.1%SDS、好ましくは、60℃、0.1×SSC、0.1%SDS、より好ましくは、65℃、0.1×SSC、0.1%SDS、さらに好ましくは68℃、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する温度及び塩濃度で、1回、より好ましくは2〜3回洗浄する条件が挙げられる。上記ハイブリダイゼーションは、J. Sambrook et al. Molecular Cloning, A Laboratory Manual,2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory(1989)に記載されている方法等、通常の方法で行うことができる。
【0013】
本発明の検出方法により発現量が測定される上記遺伝子は、少なくともヒト前立腺癌細胞のゲノム中に存在するDNAからなる遺伝子であって、ホルモン感受性前立腺癌と再燃性前立腺癌との間で発現量に差がある遺伝子である。配列番号1、3、5、7、9、11、15、17、19、21、23、25、27、31、33、35、37、39、41、43、45、47、51、53、55、57、59及び61の塩基配列からなる各遺伝子の半数以上は、発現量が少ないが故に、これまでDNAマイクロアレイ等の網羅的解析手段によっては発現量の解析が困難であった糖鎖関連遺伝子である。ここで、糖鎖関連遺伝子とは、糖鎖の合成、代謝、修飾等に関与しうる遺伝子を意味する。
【0014】
本明細書に記載される塩基配列の配列番号と当該塩基配列にコードされる遺伝子名との対応を下記表1に示す。
【0015】
【表1】

【0016】
本発明の検出方法により発現量が測定される遺伝子は、配列番号1の塩基配列、配列番号3の塩基配列、配列番号5の塩基配列、配列番号7の塩基配列、配列番号9の塩基配列、配列番号11の塩基配列及び配列番号27の塩基配列からなる群から選ばれる塩基配列からなるDNA、又は、
配列番号1の塩基配列、配列番号3の塩基配列、配列番号5の塩基配列、配列番号7の塩基配列、配列番号9の塩基配列、配列番号11の塩基配列及び配列番号27の塩基配列からなる群から選ばれる塩基配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の同一性(identity)を有するDNA、又は、
配列番号1の塩基配列、配列番号3の塩基配列、配列番号5の塩基配列、配列番号7の塩基配列、配列番号9の塩基配列、配列番号11の塩基配列及び配列番号27の塩基配列からなる群から選ばれる塩基配列において1もしくは数個の塩基が置換、欠失、挿入もしくは付加された塩基配列からなるDNA、又は、
配列番号1の塩基配列、配列番号3の塩基配列、配列番号5の塩基配列、配列番号7の塩基配列、配列番号9の塩基配列、配列番号11の塩基配列及び配列番号27の塩基配列からなる群から選ばれる塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAからなることが好ましい。
【0017】
本発明の検出方法においては、上記表1に示す遺伝子(又はそのバリアント)の少なくとも1種の発現量を測定する(但し、PSA、ACTB、ARを除く。)。すなわち、本発明の検出方法では、上記表1に示す遺伝子(又はそのバリアント)のうち1種の発現量を測定して再燃性前立腺癌の検出を行ってもよいし、上記遺伝子のうち2種以上の発現量を測定して再燃性前立腺癌の検出を行ってもよい。本発明において「測定」には、定量及び定性の両概念が含まれる。
【0018】
本発明の検出方法において、発現量が測定される遺伝子が2種以上である場合において、その好ましい遺伝子の組み合わせの例として、下記(h)〜(m)の組合わせが挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
(h)配列番号1の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子と、
配列番号3の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子、配列番号5の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子、配列番号7の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子、配列番号9の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子、配列番号11の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子及び配列番号27の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子からなる群から選ばれる1種又は2種以上の遺伝子
との組み合わせ、
(i)配列番号3の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子と、
配列番号5の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子、配列番号7の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子、配列番号9の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子、配列番号11の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子及び配列番号27の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子からなる群から選ばれる1種又は2種以上の遺伝子
との組み合わせ、
(j)配列番号5の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子と、
配列番号7の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子、配列番号9の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子、配列番号11の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子及び配列番号27の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子からなる群から選ばれる1種又は2種以上の遺伝子
との組み合わせ、
(k)配列番号7の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子と、
配列番号9の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子、配列番号11の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子及び配列番号27の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子からなる群から選ばれる1種又は2種以上の遺伝子
との組み合わせ、
(l)配列番号9の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子と、
配列番号11の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又は配列番号27の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子
との組み合わせ、
(m)配列番号11の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子と、
配列番号27の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子
との組み合わせ。
【0019】
本発明において、遺伝子の発現量の測定は、当該遺伝子の転写産物の量、すなわちmRNAの発現量を測定することで行うことができる。mRNAの発現量は、RT−PCR、リアルタイムRT−PCR等の通常の方法で行うことができるが、迅速な測定の観点からリアルタイムRT−PCRにより測定することが好ましい。リアルタイムRT−PCR法は、例えば、後述する実施例に記載の方法のような通常の方法で行うことができる。
【0020】
上記mRNAの発現量の測定に用いる遺伝子増幅用プライマーに特に制限はなく、目的とする遺伝子の塩基配列に基づき通常の方法で設計することができる。例えば、下記(Aa)〜(Bb)から選ばれる1種又は2種以上のプライマーセットを用いることで、上記mRNAから合成したcDNAを鋳型として核酸増幅反応を行うことができ、これにより上記mRNAの発現量を測定することができる。
(Aa)配列番号63の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号64の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Ab)配列番号65の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号66の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Ac)配列番号67の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号68の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Ad)配列番号69の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号70の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Ae)配列番号71の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号72の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Af)配列番号73の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号74の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Ag)配列番号77の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号78の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Ah)配列番号79の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号80の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Ai)配列番号81の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号82の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Aj)配列番号83の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号84の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Ak)配列番号85の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号86の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Al)配列番号87の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号88の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Am)配列番号89の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号90の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(An)配列番号93の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号94の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、
(Ao)配列番号95の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号96の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、
(Ap)配列番号97の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号98の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、
(Aq)配列番号99の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号100の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、
(Ar)配列番号101の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号102の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、
(As)配列番号103の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号104の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、
(At)配列番号105の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号106の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、
(Au)配列番号107の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号108の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、
(Av)配列番号109の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号110の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、及び
(Aw)配列番号113の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号114の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット。
(Ax)配列番号115の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号116の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット。
(Ay)配列番号117の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号118の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット。
(Az)配列番号119の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号120の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット。
(Ba)配列番号121の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号122の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット。
(Bb)配列番号123の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号124の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット。
【0021】
上記(Aa)のプライマーセットを用いることにより、配列番号1の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(Ab)のプライマーセットを用いることにより、配列番号3の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(Ac)のプライマーセットを用いることにより、配列番号5の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(Ad)のプライマーセットを用いることにより、配列番号7の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(Ae)のプライマーセットを用いることにより、配列番号9の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(Af)のプライマーセットを用いることにより、配列番号11の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(Ag)のプライマーセットを用いることにより、配列番号15の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(Ah)のプライマーセットを用いることにより、配列番号17の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(Ai)のプライマーセットを用いることにより、配列番号19の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(Aj)のプライマーセットを用いることにより、配列番号21の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(Ak)のプライマーセットを用いることにより、配列番号23の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(Al)のプライマーセットを用いることにより、配列番号25の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(Am)のプライマーセットを用いることにより、配列番号27の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(An)のプライマーセットを用いることにより、配列番号31の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(Ao)のプライマーセットを用いることにより、配列番号33の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(Ap)のプライマーセットを用いることにより、配列番号35の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(Aq)のプライマーセットを用いることにより、配列番号37の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(Ar)のプライマーセットを用いることにより、配列番号39の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(As)のプライマーセットを用いることにより、配列番号41の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(At)のプライマーセットを用いることにより、配列番号43の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(Au)のプライマーセットを用いることにより、配列番号45の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(Av)のプライマーセットを用いることにより、配列番号47の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(Aw)のプライマーセットを用いることにより、配列番号51の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(Ax)のプライマーセットを用いることにより、配列番号53の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(Ay)のプライマーセットを用いることにより、配列番号55の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(Az)のプライマーセットを用いることにより、配列番号57の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(Ba)のプライマーセットを用いることにより、配列番号59の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
上記(Bb)のプライマーセットを用いることにより、配列番号61の塩基配列からなるDNAを有する遺伝子又はそのバリアントの発現量を測定することができる。
【0022】
本発明において、遺伝子の発現量の測定は、当該遺伝子の発現産物であるタンパク質の量を測定することで行うこともできる。
【0023】
本発明において量が測定されるタンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列、配列番号4のアミノ酸配列、配列番号6のアミノ酸配列、配列番号8のアミノ酸配列、配列番号10のアミノ酸配列、配列番号12のアミノ酸配列、配列番号16のアミノ酸配列、配列番号18のアミノ酸配列、配列番号20のアミノ酸配列、配列番号22のアミノ酸配列、配列番号24のアミノ酸配列、配列番号26のアミノ酸配列、配列番号28のアミノ酸配列、配列番号32のアミノ酸配列、配列番号34のアミノ酸配列、配列番号36のアミノ酸配列、配列番号38のアミノ酸配列、配列番号40のアミノ酸配列、配列番号42のアミノ酸配列、配列番号44のアミノ酸配列、配列番号46のアミノ酸配列、配列番号48のアミノ酸配列、配列番号52のアミノ酸配列、配列番号54のアミノ酸配列、配列番号56のアミノ酸配列、配列番号58のアミノ酸配列、配列番号60のアミノ酸配列及び配列番号62のアミノ酸配列からなる群から選ばれるアミノ酸配列、又は
配列番号2のアミノ酸配列、配列番号4のアミノ酸配列、配列番号6のアミノ酸配列、配列番号8のアミノ酸配列、配列番号10のアミノ酸配列、配列番号12のアミノ酸配列、配列番号16のアミノ酸配列、配列番号18のアミノ酸配列、配列番号20のアミノ酸配列、配列番号22のアミノ酸配列、配列番号24のアミノ酸配列、配列番号26のアミノ酸配列、配列番号28のアミノ酸配列、配列番号32のアミノ酸配列、配列番号34のアミノ酸配列、配列番号36のアミノ酸配列、配列番号38のアミノ酸配列、配列番号40のアミノ酸配列、配列番号42のアミノ酸配列、配列番号44のアミノ酸配列、配列番号46のアミノ酸配列、配列番号48のアミノ酸配列、配列番号52のアミノ酸配列、配列番号54のアミノ酸配列、配列番号56のアミノ酸配列、配列番号58のアミノ酸配列、配列番号60のアミノ酸配列及び配列番号62のアミノ酸配列からなる群から選ばれるアミノ酸配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の同一性(identity)を有するアミノ酸配列、又は
配列番号2のアミノ酸配列、配列番号4のアミノ酸配列、配列番号6のアミノ酸配列、配列番号8のアミノ酸配列、配列番号10のアミノ酸配列、配列番号12のアミノ酸配列、配列番号16のアミノ酸配列、配列番号18のアミノ酸配列、配列番号20のアミノ酸配列、配列番号22のアミノ酸配列、配列番号24のアミノ酸配列、配列番号26のアミノ酸配列、配列番号28のアミノ酸配列、配列番号32のアミノ酸配列、配列番号34のアミノ酸配列、配列番号36のアミノ酸配列、配列番号38のアミノ酸配列、配列番号40のアミノ酸配列、配列番号42のアミノ酸配列、配列番号44のアミノ酸配列、配列番号46のアミノ酸配列、配列番号48のアミノ酸配列、配列番号52のアミノ酸配列、配列番号54のアミノ酸配列、配列番号56のアミノ酸配列、配列番号58のアミノ酸配列、配列番号60のアミノ酸配列及び配列番号62のアミノ酸配列からなる群から選ばれるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列
からなることが好ましい。
【0024】
本発明において「アミノ酸配列の同一性(%)」とは、比較する2つのアミノ酸配列を必要に応じて間隙を導入して整列(アラインメント)させ、得られる最大のアミノ酸配列の同一性(%)をいう。アミノ酸配列の同一性を決定する目的のためのアラインメントは、通常の方法を用いて行うことができ、例えばBLASTのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアや、DNASIS Pro(日立ソフトウェアエンジニアリング社製)並びにGENETYX(ゼネティックス社製)等の市販のソフトウェアを使用することもできる。
また、上記「1又は数個」とは上述したとおりである。
【0025】
上記タンパク質は、少なくともヒト前立腺癌細胞のゲノム中に存在するDNAにコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ホルモン感受性前立腺癌と再燃性前立腺癌との間で存在量に差がある遺伝子である。
【0026】
本発明の検出方法において、遺伝子の発現量として測定されるタンパク質は、上記タンパク質の少なくとも1種である。すなわち、2種以上のタンパク質の量を測定してもよい。2種以上のタンパク質の量を測定する際の、測定されるタンパク質の好ましい組み合わせの例として、下記(n)〜(s)の組合わせが挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
(n)配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質と、
配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号10のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号12のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号28のアミノ酸配列からなるタンパク質からなる群から選ばれる1種又は2種以上のタンパク質
との組み合わせ、
(o)配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質と、
配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号10のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号12のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号28のアミノ酸配列からなるタンパク質からなる群から選ばれる1種又は2種以上のタンパク質
との組み合わせ、
(p)配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質と、
配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号10のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号12のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号28のアミノ酸配列からなるタンパク質からなる群から選ばれる1種又は2種以上のタンパク質
との組み合わせ、
(q)配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質と、
配列番号10のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号12のアミノ酸配列からなるタンパク質及び配列番号28のアミノ酸配列からなるタンパク質からなる群から選ばれる1種又は2種以上のタンパク質
との組み合わせ、
(r)配列番号10のアミノ酸配列からなるタンパク質と、
配列番号12のアミノ酸配列からなるタンパク質又は配列番号28のアミノ酸配列からなるタンパク質
との組み合わせ、
(s)配列番号12のアミノ酸配列からなるタンパク質と、
配列番号28のアミノ酸配列からなるタンパク質
との組み合わせ。
【0028】
上記タンパク質の量の測定は、上記タンパク質に特異的に結合する分子を用いて行うことが好ましい。本発明のタンパク質に特異的に結合する分子としては、本発明のタンパク質に対する抗体やアプタマー等が挙げられるが、本発明のタンパク質に対する抗体を用いることが好ましい。上記抗体やアプタマーは、目的に応じて、放射性物質、酵素、蛍光物質、発光物質等で標識して用いることができる。
抗体を用いた測定は、イムノアッセイの分野において通常用いられる手段を採用することができ、例えば、イムノブロット法、酵素免疫測定法(ELISA法)、イムノクロマト法などにより検出することができる。
【0029】
上記タンパク質の検出に用いる抗体は、通常の方法で取得することができる。例えば、上記タンパク質を免疫原として用い、動物に免疫して、該動物から上記タンパク質に選択的に反応する抗体を取得することができる。また、上記タンパク質のアミノ酸配列から上記タンパク質に特徴的なアミノ酸配列を選択し、該アミノ酸配列からなるペプチドを化学的に合成して、これを動物に免疫して、該動物から上記タンパク質に選択的に反応する抗体を取得することができる。
【0030】
上記タンパク質の測定は、上記タンパク質におけるエピトープの異なる2種類の抗体を用いて、サンドイッチイムノアッセイの原理により行うことが好ましい。この場合において、一方の抗体は捕捉抗体として固相に固定化され、もう一方の抗体は、標識され、検出用抗体として機能する。
【0031】
サンドイッチELISA法では、上記タンパク質に対する抗体が固定化されたウェルを用意し、非特異的な吸着を防ぐために、BSAやカゼイン等により当該ウェルをブロッキングしておく。ここに前立腺癌細胞等から調製したタンパク質溶液を入れ、抗体が失活しにくい温度(例えば4〜40℃)で数分〜数日インキュベートする。続いてタンパク質溶液を捨て、リン酸緩衝液等でウェルを洗浄後、固定化抗体が結合するエピトープとは異なるエピトープに結合する標識された抗体を加え、再び数分〜数日インキュベートし、ウェルを洗浄後、ウェル内に存在する標識を検出する。上記タンパク質溶液中に目的のタンパク質が存在する場合には、標識のシグナルが高くなるため、これにより、再燃性前立腺癌の検出を行うことができる。
【0032】
また、イムノクロマト法においては、上記サンドイッチELISAにおける固定化抗体をメンブレンのテストライン上に固定化しておき、上記サンドイッチELISAにおける標識抗体をコンジュゲートパッドに保持した状態のテストストリップを調製する。前立腺癌細胞等から調製したタンパク質溶液をコンジュゲートパッドに直接又は間接的に添加すると、毛細管現象により、当該溶液が標識抗体と液相中で反応しながらコンジュゲートパッドからメンブレンへと進んでいく。タンパク質溶液中に目的のタンパク質が存在する場合には、メンブレンのテストライン上に標識抗体と目的のタンパク質とからなる複合体がトラップされる。したがって、テストライン上に存在する標識を検出することにより、再燃性前立腺癌の検出を行うことができる。
【0033】
本発明において、遺伝子の発現量の測定が行われる試料に特に制限はなく、例えば、血液、血漿、血清、リンパ液、尿、唾液等の体液、前立腺癌組織、前立腺癌細胞等が挙げられるが、前立腺癌組織や前立腺癌細胞を使用することが好ましい。本発明において「単離した前立腺癌細胞」には、生体(前立腺癌患者)から摘出した前立腺癌組織、当該組織をレーザーダイゼクション等により切り出したサンプル等が含まれる。
【0034】
上記試料の由来に特に制限はないが、ヒト由来であることが好ましい。すなわち、本発明の検出方法は、ヒトの再燃性前立腺癌の検出に好適に用いられる。
【0035】
本発明の検出方法を用いることで、前立腺癌のホルモン感受性を、簡便に、しかも精度よく判定することができ、これにより再燃性前立腺癌を特異的に検出することができる。したがって、本発明の検出方法は、再燃性前立腺癌の診断に有用である。
【0036】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
下記のヒト前立腺癌細胞株を用いて、下記のDNAマイクロアレイ解析及び定量的PCRアレイ解析を中心に解析を行い、ホルモン感受性前立腺癌とホルモン抵抗性前立腺癌とを区別しうるマーカー候補遺伝子の選抜を行った。
【0038】
[ヒト前立腺癌細胞株の培養]
前立腺癌細胞株LNCaP(ホルモン感受性(依存性))とDu145(ホルモン抵抗性(非依存性))は独立行政法人理化学研究所バイオリソース研究センター理研セルバンクより入手した。PC−3(ホルモン非依存性)は財団法人ヒューマンサイエンス振興財団JCRB細胞バンクより入手した。正常ヒト前立腺上皮細胞株PrEは、DSファーマバイオメディカル社より購入した。前立腺癌細胞株はすべて、RPMI 1640培地(GIBCO社製)に10% FBS(Hyclone社製)、1% ペニシリン/ストレプトマイシン(GIBCO社製)を添加したものを用いて培養した。正常ヒト前立腺上皮細胞株は、CS−C培地キットR(DSファーマバイオメディカル社製)を用い培養した。すべての細胞は、RNAおよびタンパク質を抽出する1日前にRPMI1640に10% FBSを加えた培地に置換して培養した。
【0039】
[DNAマイクロアレイ解析]
糖鎖関連遺伝子網羅解析のDNAマイクロアレイは、独立行政法人理化学研究所 疾患糖鎖研究チームが開発したツールを用いた。本ツールの詳細は文献(Molecular And Cellular Biology, Apr.2007, p.3008-3022)に記載されている。簡潔に言えば、まず対数増殖期の細胞のmRNAをmTRAP midi kit(アクティブモチーフ社製)を用いて調製し、Agilent Technologies社製のバイオアナライザー2100でクオリティーチェック後、CyScribe Post−Labelling Kit(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)で蛍光標識した。蛍光標識したサンプルを約1200の糖鎖関連遺伝子を搭載したマイクロアレイにハイブリダイズし、Affymetrix 428 Array Scannerでスキャニングした。各スポットのシグナル強度を定量(ImaGene; BioDiscovery社製)し、補正後にクラスタリング作成ソフトMultiExperiment Viewer (MeV)(Opensource software tool, http://www.tm4.org/)で解析した。
【0040】
[定量的PCRアレイ解析]
糖鎖合成酵素に特化した遺伝子網羅解析のツールであるqPCRアレイは、独立行政法人産業技術総合研究所 糖鎖医工学センターが開発したツールを用いた。本ツールの詳細は文献(Jornal of Proteome Reserch. Vol.8, No.3, 2009, p.1358-1367)に記載されている。簡潔に言えば、まず対数増殖期の細胞のtotal RNAを、RNeasy plus mini kit (QIAGEN社製)を用いて調製し、QuantiTect Rev. Transcription kit(QIAGEN社)を用いてFirst strand cDNAを合成した。PCRプライマーは、ProbeFinder(https://www.roche-applied-science.com/)を用いて選択し、インビトロジェン社にて作成、購入した。加水分解プローブは、Universal ProbeLibrary(ロシュ社)より選択した。全189遺伝子のアッセイをduplicateで384プレートにフォーマットし、qPCR Quick GoldStar Mastermix Plus (Eurogentec社製)を用いて、LightCycler 480(ロシュ社製)にて増幅、測定した。各コピー数を算出後、補正後にクラスタリング作成ソフトMultiExperiment Viewer (MeV)(Opensource software tool, http://www.tm4.org/)で解析した。
【0041】
実施例1 RT−PCRによる再燃性前立腺癌の検出
正常ヒト前立腺上皮細胞株PrE並びに前立腺癌細胞株LNCaP(ホルモン感受性株)、Du145(ホルモン抵抗性株)及びPC−3(ホルモン抵抗性株)の各細胞株を用いて、RT−PCRにより、前記表1に示す31種類の遺伝子の転写産物の量を測定した。
具体的には、PrE、LNCaP、Du145及びPC−3の各前立腺癌細胞から上記と同様に合成したcDNAを鋳型とし、DNAポリメラーゼ(商品名:GoTaq(登録商標) Hot Start Polymerase、プロメガ社)と、上述した(Aa)〜(Bb)で表されるプライマーセット、配列番号75及び76の塩基配列を有する各オリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、配列番号91及び92の塩基配列を有する各オリゴヌクレオチドからなるプライマーセット並びに配列番号111及び112の塩基配列を有する各オリゴヌクレオチドからなるプライマーセットとを用い、サーマルサイクラー(商品名:GeneAmp(登録商標) PCR System 9700(アプライドバイオシステムズ社製)により各DNAの増幅反応を行った。2% アガロースゲルにて電気泳動をおこなった後、エチジウムブロミド染色してUVトランスイルミネーターで発光させ、写真を撮った(ポラロイド社製)。なお、上記プライマーセットを構成するプライマーは、ProbeFinder (https://www.roche-applied-science.com/)を用いて選択し、インビトロジェン社にて作成、購入したものである。
結果を図1に示す。なお、図1におけるPSA、ACTB、AR及びGAPDHの測定結果は参考として載せたものであり、本発明の効果を示すものではない。
【0042】
図1の結果から、ホルモン抵抗性前立腺癌細胞株であるDu145及びPC−3では、ホルモン感受性前立腺細胞株であるLNCaPに比べて、GALNAC4S-6ST(配列番号1)、B3GNT5(配列番号3)、LGALS1(配列番号5)、CAV1(配列番号7)、CD18/ITGB2(配列番号9)、ITGA3(配列番号11)、CHST11(配列番号15)、CHST10(配列番号17)、FUT8(配列番号21)、HAS3(配列番号25)、LCN2(配列番号31)、CHST7(配列番号33)、UST(配列番号35)、EXT1(配列番号37)、GALNT4(配列番号39)、HXB/TNC(配列番号41、BACE2(配列番号43)、CD44(配列番号45)、NPR3(配列番号47)、BMP15(配列番号51)、TECK/CCL25(配列番号53)、GALNT14(配列番号55)及びST8SIA5(配列番号57)のmRNA発現量が明らかに増加していることがわかる。したがって、前立腺癌患者から採取した試料におけるこれらの遺伝子の少なくとも1つの発現量を測定し、その発現量が所定のレベルより高い場合には、ホルモン抵抗性の前立腺癌細胞が存在すると判定することができ、これによりホルモン抵抗性前立腺癌(再燃性前立腺癌)を検出することができる。
【0043】
また、図1の結果から、ホルモン抵抗性前立腺癌細胞株であるDu145及びPC−3では、ホルモン感受性前立腺細胞株であるLNCaPに比べて、ST6GALNAC1(配列番号27)、GAL3ST2(配列番号59)及びLARGE(配列番号61)のmRNAの発現量が明らかに抑えられていることがわかる。したがって、前立腺癌患者から採取した試料におけるこれらの遺伝子の少なくとも1つの発現量を測定し、その発現量が所定のレベルより低い場合には、ホルモン抵抗性の前立腺癌細胞が存在すると判定することができ、これによりホルモン抵抗性前立腺癌(再燃性前立腺癌)を検出することができる。
【0044】
実施例2 リアルタイムRT−PCRによる再燃性前立腺癌の検出
下記のヒト前立腺癌の組織サンプルを用いて、下記のリアルタイムRT−PCRにより、前記表1に示す遺伝子のうち25種類の遺伝子の転写産物の量を測定した。
【0045】
[ヒト前立腺癌組織サンプル]
前立腺癌臨床組織サンプルは、愛知県がんセンターより供与された。総てのサンプルは、インフォームドコンセントが取れた患者より供与されたものである。ホルモン療法を処置していない前立腺癌患者より摘出した前立腺組織を8例と、前立腺摘出手術を受ける前に3ヶ月以上のホルモン療法(ネオアジュバント療法:Leuteining hormone-releasing hormone analogue(LH-RHa)と非ステロイド性抗アンドロゲン剤のBicalutamideの併用)を受けた前立腺癌患者であって、当該治療に対して低感受性(治療効果が薄い)患者より摘出した組織8例を本実施例にて用いた。
【0046】
一般に前立腺癌では、癌細胞はアンドロゲン等の雄性ホルモンに依存して増殖し、ホルモンの働きを抑えることにより癌細胞の増殖は効果的に抑制されることが多い。一方、ホルモン抵抗性の前立腺癌は、ホルモン療法を受けたのち、一度増殖が抑制されたにもかかわらず、生き残った癌細胞が再び増殖してきたものであることが多く、ホルモン療法を受けていない前立腺癌患者における発症率は比較的低い。そこで、ホルモン療法を受けていない前立腺癌患者をホルモン感受性前立腺癌患者であるものと仮定し、下記の試験を行った。ホルモン療法を受けていない前立腺癌患者から採取した癌細胞と、ホルモン療法に対する低感受性の前立腺癌患者から採取した癌細胞との間でもなお、発現量に有意な差が認められる遺伝子は、再燃性前立腺癌マーカーとしても非常に有用であると判断できると考えられる。
【0047】
[リアルタイムRT−PCR解析]
インフォームドコンセントが取れている前立腺癌患者より摘出した前立腺臨床組織サンプルの薄切より、癌部をレーザーマイクロダイセクション(LMD6000;ライカ社製)により切り出し、RNA抽出キット(商品名:RecoverAll(商標) Total Nucleic Acid Isolation Kit、Ambion社製)にてRNAを抽出した。High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(アプライドバイオシステムズ社製)を用いてcDNAを調製後、TaqMan(登録商標) PreAmp Master Mix Kit(アプライドバイオシステムズ社製)で前増幅し、qPCR Quick GoldStar Mastermix Plus (Eurogentec社製)を用いて、ABI PRISM(登録商標) 7700 Sequence detection Systemで増幅、測定した。なお、使用したプライマーセットは実施例1と同様である。各コピー数を算出後、コントロールとして用いたglyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase(GAPDH)mRNAの発現量で標準化した。統計解析はヒューリンクス社の「KaleidaGraph」を用い、t−検定をおこなった。
結果をグラフ化したものを図2〜26に示す。また、t−検定の結果(P値)を下記表2に示す。なお、図8のPSA、図16のACTB及び図26のARの結果は参考として載せたものであり、本発明の効果を示すものではない。
【0048】
【表2】

【0049】
図2及び表2の結果から、GALNAC4S−6ST(配列番号1)、B3GNT5(配列番号3)、LGALS1(配列番号5)、CAV1(配列番号7)、ITGB2(配列番号9)、ITGA3(配列番号11)及びST6GALNAC1(配列番号27)において、ホルモン療法を受けていない前立腺癌患者8名から採取した癌細胞と、ホルモン療法に対する低感受性の前立腺癌患者8名から採取した癌細胞との間で、mRNAの発現量に明らかな有意差(P<0.05)が認められた(表2中、8vs8の欄参照)。なお既存マーカーであるPSAの発現量は、ホルモン療法に対する低感受性の前立腺癌患者8名から採取した癌細胞において有意に低下しているが、これは、アンドロゲンが遮断された結果引き起こされたものであり、ホルモン抵抗性との直接の関連性は低い。
また、ホルモン療法を受けていない未治療群の中にも、ホルモン療法に低感受性の患者が存在する可能性がある。したがって、参考のために、ホルモン療法を受けていない前立腺癌患者8名から採取した検体のうち、mRNAの発現量が高い患者検体2つを除き、ホルモン療法を受けていない前立腺癌患者6名から採取した癌細胞と、ホルモン療法に対する低感受性の前立腺癌患者8名から採取した癌細胞との間の有意差を調べた。その結果、HAS3(配列番号25)、UST(配列番号35)及びEXT1(配列番号37)でも有意差(P<0.05)を認めた(表2中、6vs8の欄参照)。
【0050】
なお、上記で有意差が認められなかった遺伝子に関しても、実施例1で示すように前立腺癌のセルラインを用いた試験では、ホルモン感受性前立腺癌細胞とホルモン抵抗性の前立腺癌細胞とを区別しうることが示されている。したがって、現状では困難であるが、ホルモン感受性患者として特定された患者検体を用いることができれば、ホルモン療法に対する低感受性の前立腺癌患者検体との間で発現量の有意差が認められうるものと考えられる。
【0051】
以上の結果、本発明の検出方法は、再燃性前立腺癌を特異的に検出できる方法であることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(d)のいずれかのDNAからなる少なくとも1種の遺伝子の発現量を測定することを含む、再燃性前立腺癌の検出方法:
(a)配列番号1の塩基配列、配列番号3の塩基配列、配列番号5の塩基配列、配列番号7の塩基配列、配列番号9の塩基配列、配列番号11の塩基配列、配列番号15の塩基配列、配列番号17の塩基配列、配列番号19の塩基配列、配列番号21の塩基配列、配列番号23の塩基配列、配列番号25の塩基配列、配列番号27の塩基配列、配列番号31の塩基配列、配列番号33の塩基配列、配列番号35の塩基配列、配列番号37の塩基配列、配列番号39の塩基配列、配列番号41の塩基配列、配列番号43の塩基配列、配列番号45の塩基配列、配列番号47の塩基配列、配列番号51の塩基配列、配列番号53の塩基配列、配列番号55の塩基配列、配列番号57の塩基配列、配列番号59の塩基配列及び配列番号61の塩基配列からなる群から選ばれる塩基配列からなるDNA、
(b)上記(a)のDNAの塩基配列と80%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAであって、前立腺癌細胞のゲノム中に存在するDNA、
(c)上記(a)のDNAの塩基配列において、1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列からなるDNAであって、前立腺癌細胞のゲノム中に存在するDNA、
(d)上記(a)のDNAの塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、前立腺癌細胞のゲノム中に存在するDNA。
【請求項2】
遺伝子の発現量の測定が、該遺伝子の転写産物の量の測定である、請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
下記(Aa)〜(Bb)からなる群から選ばれる少なくとも1種のプライマーセットを用いて少なくとも1種の遺伝子の発現量を測定する、請求項2に記載の検出方法:
(Aa)配列番号63の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号64の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Ab)配列番号65の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号66の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Ac)配列番号67の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号68の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Ad)配列番号69の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号70の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Ae)配列番号71の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号72の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Af)配列番号73の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号74の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Ag)配列番号77の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号78の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Ah)配列番号79の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号80の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Ai)配列番号81の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号82の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Aj)配列番号83の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号84の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Ak)配列番号85の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号86の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Al)配列番号87の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号88の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(Am)配列番号89の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号90の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット、
(An)配列番号93の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号94の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、
(Ao)配列番号95の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号96の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、
(Ap)配列番号97の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号98の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、
(Aq)配列番号99の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号100の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、
(Ar)配列番号101の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号102の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、
(As)配列番号103の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号104の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、
(At)配列番号105の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号106の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、
(Au)配列番号107の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号108の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、
(Av)配列番号109の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号110の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット、及び
(Aw)配列番号113の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号114の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット。
(Ax)配列番号115の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号116の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット。
(Ay)配列番号117の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号118の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット。
(Az)配列番号119の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号120の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット。
(Ba)配列番号121の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号122の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット。
(Bb)配列番号123の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号124の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドからなるからなるプライマーセット。
【請求項4】
遺伝子の発現量の測定が、該遺伝子の発現産物であるタンパク質の量の測定である、請求項1に記載の検出方法。
【請求項5】
測定されるタンパク質の量が、下記(e)〜(g)のいずれかのアミノ酸配列からなる少なくとも1種のタンパク質の量である、請求項4に記載の検出方法:
(e)配列番号2のアミノ酸配列、配列番号4のアミノ酸配列、配列番号6のアミノ酸配列、配列番号8のアミノ酸配列、配列番号10のアミノ酸配列、配列番号12のアミノ酸配列、配列番号16のアミノ酸配列、配列番号18のアミノ酸配列、配列番号20のアミノ酸配列、配列番号22のアミノ酸配列、配列番号24のアミノ酸配列、配列番号26のアミノ酸配列、配列番号28のアミノ酸配列、配列番号32のアミノ酸配列、配列番号34のアミノ酸配列、配列番号36のアミノ酸配列、配列番号38のアミノ酸配列、配列番号40のアミノ酸配列、配列番号42のアミノ酸配列、配列番号44のアミノ酸配列、配列番号46のアミノ酸配列、配列番号48のアミノ酸配列、配列番号52のアミノ酸配列、配列番号54のアミノ酸配列、配列番号56のアミノ酸配列、配列番号58のアミノ酸配列、配列番号60のアミノ酸配列及び配列番号62のアミノ酸配列からなる群から選ばれるアミノ酸配列、
(f)上記(e)のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有し、かつ前立腺癌細胞のゲノム中に存在するDNAにコードされるアミノ酸配列、
(g)上記(e)のアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列であって、前立腺癌細胞のゲノム中に存在するDNAにコードされるアミノ酸配列。
【請求項6】
単離した前立腺癌細胞中における遺伝子の発現量を測定する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の検出方法。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−178990(P2012−178990A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42967(P2011−42967)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18〜22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、糖鎖機能活用技術開発プロジェクト委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(598123138)学校法人 創価大学 (49)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】