説明

再現性向上のためのアルゴリズムを用いる生体データ測定装置及び生体データ測定方法

再現性向上のためのアルゴリズムを用いる生体データ測定装置及び生体データ測定方法が開示される。本発明の一実施例による生体データ測定方法は、測定初期の一定区間での平均変化率に基づいて、反応の安定化如何を判断して反応終了時点を決定し、該決定された反応終了時点で測定した値に、補正値を加算し、最終測定値を導出して、生体データ測定を行う。これによれば、測定偏差を減少させて、再現性及びデータの信頼度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様による技術分野は、生体データ測定に関する。
【背景技術】
【0002】
乾式生化学(Dry Chemistry)は、標本を添加する乾燥した酵素が染み込んだストリップの使用を意味する。この評価方法は、コンピュータ分析器による化学反応の定量的な分析に焦点を合わせている。
【0003】
この評価方法は、化学及び生物学的な要因を除いても、試料注入量、試料注入方法、温度などの環境的な要因によって、同じ試料による測定結果間にも偏差が発生する、特に、実験室ではない、家庭で測定が行われる装置の場合には、大きな偏差が発生する。このような測定結果間の偏差は、測定結果の正確度に対して疑問が生じるので、測定結果の再現性を確保する方法が問題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、測定結果間の偏差を減らすことによって、再現性を向上させて、測定結果の信頼度を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面によって、生化学的反応によって生体データを測定する方法が提供される。この方法は、測定初期の一定時間区間での測定値の平均変化率に基づいて、生化学的反応が安定化される反応終了時点を決定する段階と、前記決定された反応終了時点で測定した値に補正値を換算して、最終測定値を算出する段階と、を含む。
【0006】
本発明の他の側面によって、測定ストリップを挿入して生体データを測定する生体データ測定装置が提供される。この装置は、測定ストリップが挿入される領域内に平面状に配されている1つ以上の感知部と、前記感知部で感知されたデータを基にして、測定初期の一定時間区間での測定データ値の平均変化率を算出し、この算出された平均変化率を基にして、生化学的反応が安定化される反応終了時点を決定する反応終了時点決定部と、前記感知部で感知されたデータを基にして、補正データ値を生成する補正データ生成部と、前記決定された反応終了時点で、前記感知部で感知されたデータ値、及び前記生成された補正データ値を基にして、最終生体データ値を算出する生体データ測定部と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明による生体データ測定方法は、反応速度によって合理的な反応終了時点を決定し、補正値を決定することによって、測定偏差を減少させて、再現性及びデータ信頼度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】生体データ測定装置及び測定ストリップの概観図である。
【図2】本発明の一実施例による総コレステロールの反応を示したグラフである。
【図3】本発明の一実施例による同じ血液による反応初期の一定区間での平均変化量とデータエラー率との相関関係を示したグラフである。
【図4】本発明の一実施例による生体データ測定装置の概略的な構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付された図面を参照して記述される望ましい実施例を通じて、本発明を当業者が容易に理解し、再現できるように詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施例による生体データ測定装置及び測定ストリップの概観図である。図1を参照すると、示された測定ストリップ300は、血液の中性脂肪やコレステロールの量などの生体データを測定することができる複数個の反応部を含む領域331−1、331−2、331−3を含んでいる。反応部を含む領域331−1、331−2、331−3は、位置によって測定するデータが異なる。測定ストリップ300の上部には、ストリップ挿入領域130の溝と噛み合い、挿入後に固定を容易にするために、突起を含んでいる。生体データ測定装置100は、電源ボタン、ストリップ挿入領域130、表示部180を含む。ストリップ挿入領域130の縁部は、内側に溝が形成されている構造からなっていて、測定ストリップの挿入及び固定が容易である。また、ストリップ挿入領域130は、中央部に互いに離隔して配されている複数個の感知部を含む。複数個の感知部110は、測定ストリップ300上の反応部を含む領域331−1、331−2、331−3と一対一に対応し、測定の類型によって、全部または一部が活性化されて測定ストリップの反応部を含む領域331−1、331−2、331−3を感知する。
【0011】
本発明の一実施例によれば、本発明は、生体データ測定装置100に搭載されて複数個の感知部110で感知した測定ストリップの反応部の反射度に基づいて、生体データの測定を行う。より具体的に、ストリップの反応部が含まれた領域の上部に血液が投与されれば、反応部内の酵素と投与された血液とが化学反応を起こす。この際、初期に白色である反応部が、白色ではない他の色に変わり、変色された反応部の反射度を複数個の感知部110で感知して、生体データ測定部で反射度に基づいて、生体データを生成する。
【0012】
図2は、本発明の一実施例による総コレステロールと酵素の時間による化学反応の特性を示したグラフである。図2で、グラフの横軸は、反応時間を意味し、縦軸は、反応部の反射度を測定した値(以下、“K/S値”と称する)を意味する。図2を参照すると、総コレステロールと酵素の化学反応は、反応初期の50秒の間に、すなわち、活性領域の間に活発になされ、その後には、反応がほとんど起こらないことが分かる。
【0013】
ここで、反応初期の一定区間での平均K/S変化量をA−valueと言う。A−valueを求める区間の開始点及び終了点は、測定する生体データの種類によって変わりうる。一実施例によれば、総コレステロールを測定する場合、A−valueは、15秒と30秒との間の平均K/Sの変化量になり、下記の数式1によって、その値が決定される。また、中性脂肪を測定する場合にも、同様にA−valueを求める区間の開始点及び終了点は、それぞれ15秒と30秒であり得る。
【0014】
[数1]
A−value=(K/S30秒−K/S15秒)/(30−15)
本発明の一実施例によって、反応終了時点は、A−valueを用いて決定される。反応終了時点は、数式2によって次のように決定される。
【0015】
[数2]
{(A−value)*0.3}≧(K/S(a+5)秒−K/Sa秒)/5
数式2によれば、任意のa秒での5秒間の平均変化率が(A−value*0.3)より小さいか、同じになれば、反応が終了したと見て、その時のa秒を反応終了時点として決定する。A−valueの倍数になる0.3は、測定終了時点を決めるための決定定数である。決定定数は、測定する生体データの種類によって決定される。一実施例によれば、測定定数は、0.001から0.5の間で決定され、総コレステロールの測定の場合、決定定数は、実験的に0.3に決定された。また、測定する生体データの種類が中性脂肪である場合には、決定定数は0.1で実験的に決定された。
【0016】
一般的に、温度は、反応速度に大きな影響を及ぼす。温度が高くなれば、酵素反応が活発になって反応速度が速くなり、温度が低くなれば、酵素反応が鈍化されて反応速度が遅くなる。反応速度が早ければ、反応終了時点に迅速に到逹し、逆に反応速度が遅ければ、反応終了時点に遅く到逹する。A−valueは、反応初期の活性領域での平均変化率であるので、これは、特定条件での酵素の反応速度を表わす指標となる。したがって、数式2でA−valueを用いて反応終了時点を決定することは、温度のような反応条件を反映して、合理的な測定時点を決定することになる。通常、測定する生体サンプルの濃度によって、反応終了時点が異なるが、コレステロールの場合、通常、2分以内が適当であると判断した。
【0017】
図3は、本発明の一実施例による同じ血液による反応初期の一定区間での平均変化量とデータエラー率との相関関係を示したグラフである。一実施例によって、同じ血液を有して総コレステロールを測定する実験を反復的に行い、A−valueと測定されたデータの平均値と測定値の偏差に関するグラフを図示することができる。これを通じて反応終了時点に発生する偏差は、A−valueと正の相関関係を有することが分かる。これは、測定された結果値は、補正が可能であるということを意味し、同時に反応初期の結果値を用いて補正することが効果的であるということも意味する。一実施例によって、最終測定値は、数式3によって決定されうる。
【0018】
[数3]
最終測定値=K/S反応終了時点−(K/S30秒−K/S15秒)
数式3によれば、最終測定値は、反応終了時点のK/S値で補正データを加算した値にする。補正データは、数式1の分子の負数に該当し、測定の類型によって決定される。一例として、総コレステロールを測定する場合、補正データは、数式3で見るように15秒と30秒との間のK/Sの差に該当する。前述したように、温度及び試料注入量のような反応条件は、反応速度に影響を及ぼし、これは、反応初期のK/S値の変化量で表われる。また反応初期のK/S変化量は、全体反応に大きな影響を及ぼすので、これを用いて最終測定値を算定すれば、同じ試料の間の偏差を効果的に減らすことができ、再現性を確保することができる。
【0019】
図4は、本発明の一実施例による生体データ測定装置の概略的な構成ブロック図である。図4を参照すると、本発明による生体データ測定装置は、1つ以上の感知部410、データ処理部420、及び出力部480を含んでおり、データ処理部420は、生体データ測定部440、反応終了時点決定部460、及び補正データ生成部470を含む。
【0020】
さらい詳細に、1つ以上の感知部410は、感知部に対応するストリップ上の領域を感知する。1つ以上の感知部410は、感知部に対応するストリップ上の領域の反射度を測定する方式として具現され、発光部と受光部とを含んで具現されうる。感知部の発光部は、光を発生させるLEDと駆動回路とで構成されうる。また、受光部は、光を吸収するフォトダイオードを含む形態で具現可能であり、ストリップ上の対応領域で反射された光を受信し、該受信された光量をK/S値に変換して、生体データ測定部440、補正データ生成部470、及び反応終了時点決定部460に伝送する。
【0021】
反応終了時点決定部460は、感知部で感知した結果に基づいて、反応終了時点を決定する。一実施例によって、感知部で感知したK/S値は、反応終了時点決定部に継続的に入力され、反応終了時点決定部460は、そのうち、反応初期の15秒から30秒間の平均変化率をA−valueに決定する。また、反応終了時点決定部460は、前述した数式2によって反応終了時点を決定する。任意のa秒での5秒間の平均変化率が(A−value*0.3)より小さいか、同じになれば、その時点に反応が終了したと見て、その時のa秒を反応終了時点として決定する。A−valueに乗算される0.3は、測定終了時点を決めるための決定定数である。決定定数は、測定する生体データの種類によって決定される。一例として、総コレステロールの測定の場合、決定定数は、実験的に0.3に決定された。
【0022】
補正データ生成部470は、感知部で感知した結果に基づいて、補正データを生成する。一実施例によって、補正データ生成部470は、前述した数式1の分子の負数を補正データとして生成する。補正データを生成する区間は、測定する生体データの種類によって決定される。一例として、総コレステロールを測定する場合、補正データは、数式3のように、15秒と30秒との間のK/Sの差に該当する。
【0023】
生体データ測定部440は、反応終了時点に感知部で感知されたデータ及び補正データに基づいて、生体データを測定する。一実施例によって、生体データ測定部440は、数式3によって最終測定値を決定する。具体的に、平均変化率が(A−value*0.3)と同じか、それより小さくなる時点に、感知部で感知したK/S値と補正データ生成部470で生成した補正データ、すなわち、15秒から30秒の間のK/S値の差の負数値を加えて最終測定値を決定する。前述したように、補正データは、測定する生体データの種類によって変わりうる。最終測定値は、測定の種類による生体データに変換される。
【0024】
測定した生体データは、出力部480によって外部に出力される。出力部480は、一実施例において、液晶ディスプレイあるいは7セグメントディスプレイになる。また他の例において、出力部480は、測定値を音声で出力する音声合成及び出力部であり得る。さらに他の例において、出力部480は、携帯電話などの外部機器に測定値を出力するUSBなどのインターフェースでもあり得る。
【0025】
本発明は、添付された図面に基づいて望ましい実施例を中心に記述されたが、当業者ならば、このような記載から本発明の範ちゅうを外れずに、多様で自明な変形が可能であるということは明白である。したがって、このような多くの変形例を含むように記述された特許請求の範囲によって解析しなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、コレステロールのような生体データの測定に適用されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生化学的反応によって生体データを測定する方法であって、
測定初期の一定時間区間での測定値の平均変化率に基づいて、生化学的反応が安定化される反応終了時点を決定する段階と、
前記決定された反応終了時点で測定した値に、補正値を加算し、最終測定値を算出する段階と、を含む生体データ測定方法。
【請求項2】
前記生化学的反応は、酵素反応である請求項1に記載の生体データ測定方法。
【請求項3】
前記反応終了時点は、その近所での測定値の平均変化率が、前記測定初期の一定時間区間での測定値の平均変化率に決定定数を乗算した値と同じか、それより小さくなる時点である請求項1に記載の生体データ測定方法。
【請求項4】
前記決定定数は、0.001と0.5との間の値である請求項3に記載の生体データ測定方法。
【請求項5】
前記補正値は、前記測定初期の一定時間区間の開始点での測定値と終了点での測定値との差であることを特徴とする請求項1に記載の生体データ測定方法。
【請求項6】
前記測定初期の一定時間区間は、測定する生体データの種類によって決定されることを特徴とする請求項1に記載の生体データ測定方法。
【請求項7】
測定する生体データの種類は、総コレステロールであり、
前記決定定数は、0.3である請求項3に記載の生体データ測定方法。
【請求項8】
測定する生体データの種類は、中性脂肪であり、
前記決定定数は、0.1である請求項3に記載の生体データ測定方法。
【請求項9】
前記測定する生体データの種類は、中性脂肪であるか、総コレステロールであり、
前記測定初期の一定時間区間は、初期生化学的反応が始まった後の15秒ないし30秒の範囲区間である請求項6に記載の生体データ測定方法。
【請求項10】
測定ストリップを挿入して生体データを測定する生体データ測定装置であって、
測定ストリップが挿入される領域内に平面状に配されている1つ以上の感知部と、
前記感知部で感知されたデータを基にして、測定初期の一定時間区間での測定データ値の平均変化率を算出し、この算出された平均変化率を基にして、生化学的反応が安定化される反応終了時点を決定する反応終了時点決定部と、
前記感知部で感知されたデータを基にして、補正データ値を生成する補正データ生成部と、
前記決定された反応終了時点で、前記感知部で感知されたデータ値、及び前記生成された補正データ値を基にして、最終生体データ値を算出する生体データ測定部と、を含む生体データ測定装置。
【請求項11】
コレステロール値を測定する請求項10に記載の生体データ測定装置。
【請求項12】
前記反応終了時点決定部は、その近所での測定データ値の平均変化率が、前記測定初期の一定時間区間での測定データ値の平均変化率に決定定数を乗算した値より小さいか、同じ値になる時点を反応終了時点として決定することを特徴とする請求項10に記載の生体データ測定装置。
【請求項13】
前記補正データ生成部は、前記生成された補正データ値を、前記測定初期の一定時間区間の開始点での測定データ値と終了点での測定データ値との差で決定することを特徴とする請求項10に記載の生体データ測定装置。
【請求項14】
前記測定初期の一定時間区間は、測定する生体データの種類によって決定されることを特徴とする請求項10に記載の生体データ測定装置。
【請求項15】
前記測定初期の一定時間区間は、初期の生化学的反応が始まった後、15秒ないし30秒の範囲区間である請求項10に記載の生体データ測定装置。
【請求項16】
前記算出された最終生体データ値を外部に出力する出力部をさらに含む請求項10に記載の生体データ測定装置。
【請求項17】
測定する生体データの種類は、総コレステロールであり、
前記決定定数は、0.3である請求項12に記載の生体データ測定装置。
【請求項18】
測定する生体データの種類は、中性脂肪であり、
前記決定定数は、0.1である請求項12に記載の生体データ測定装置。
【請求項19】
前記決定定数は、測定する生体データの種類によって決定される請求項3に記載の生体データ測定方法。
【請求項20】
前記決定定数は、測定する生体データの種類によって決定される請求項12に記載の生体データ測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2012−529038(P2012−529038A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513855(P2012−513855)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【国際出願番号】PCT/KR2010/002407
【国際公開番号】WO2010/140769
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(509328113)インフォピア カンパニー,リミテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】INFOPIA CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】891,Hogye−dong,Dongan−gu,Anyang−si,Gyeonggi−do,431−080 Republic of Korea
【Fターム(参考)】