説明

再生された吸収溶液の画分の気化および/または精製を伴う吸収溶液を使用するガス脱酸方法

【課題】再生吸収溶液中の非再生性塩の除去に要するコストを低減でき、かつ、分解生成物の除去が可能であるガス状流出物の脱酸方法を提供できる。
【解決手段】ガス状流出物および酸性化合物を含んだ吸収溶液3中のガス状流出物を再生ゾーンC2で放出した後、再生された溶液8を水が富化された画分11と反応性化合物が富化された画分8bに分離し、水が富化された画分を吸着、イオン交換、蒸留のいずれかひとつで、反応性化合物が富化された画分を吸着または蒸留で処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、吸収溶液を用いることによってガス状流出物(gaseous effluent)を脱酸する(deacidizing)分野に関する。
【0002】
本発明による方法により、ガス状流出物中に含有される二酸化炭素(CO2)や硫化水素(H2S)などの酸性化合物(acid compounds)を除去することが可能になる。この方法は、天然ガス、合成ガス、または燃焼プロセスからの排ガス(fumes)を処理するために適用することができる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
文献FR-2,898,284は、酸性化合物を含んだ脱混合(demixing)吸収溶液を加熱した場合に分割する性質を有する前記吸収溶液の使用を目的とする。吸収溶液を、脱酸すべきガスに接触させる。再生中、溶液は2相に:即ち酸性化合物に富む画分と酸性化合物に乏しい画分とに分かれる。したがって文献FR-2,898,284は、吸収溶液の再生に必要なエネルギーを最小限に抑えるために、酸性化合物が富化された画分のみを蒸留によって再生することを目的とする。
【0004】
しかし、吸収溶液の熱再生は、この吸収溶液に含有される有機化合物の分解(degradation)をうながす。有機化合物は、再生に必要とされる熱エネルギーを提供するリボイラを通過するときに、分解する。これは、運転条件が最も厳しいプロセスの一部である。さらに、燃焼排ガス処理の場合、たとえば火力発電所の排ガスでは、酸素の存在によって、その他の分解反応が発生する可能性がある。これらの複合効果の下、有機分解生成物および非再生性の塩は、吸収溶液中に蓄積される。この蓄積は、吸収溶液による酸性ガス吸収の性質を変化させる。その上、有機分解生成物は、表面活性を有する可能性がある。したがって、エマルジョンの形をとる相を安定化させることにより、泡立ちの問題または液−液分離の問題が課される可能性がある。これらの液−液分離の問題は、文献FR-2,898,284に記載されている方法を使用するときに、または吸収カラム(column)の後で液体炭化水素が液−液分離によって吸収溶液から除去されるガス処理の場合に生ずる可能性がある。さらに、非再生性の塩は、ユニット内の腐食およびフォーム形成の問題の原因となることが知られている。
【0005】
これらの問題を抑制するために、吸収溶液は一般に、順次または連続的な手法で、イオン交換によってまたは蒸留によって精製される。イオン交換による精製において、イオン交換樹脂は、非再生性の塩を、再生可能な炭酸水素塩に交換するのに使用される。蒸留による精製の場合、水および反応性化合物は気化し、捕獲ユニット(capture unit)に送り返され、したがって弱揮発性有機分解生成物および非再生性塩は、蒸留ドラム(distillation drum)の底部に蓄積される。これらはその後、除去される。加えて、反応性化合物が弱揮発性である場合は、吸収溶液を大気圧で気化させることが困難になる可能性がある。そのときは、蒸留温度を制限するために、吸収溶液が真空(vacuum)蒸留によって精製されるが、これは大気圧での蒸留よりも費用がかかる。この蒸留温度の低下にも関わらず、分解は、この精製操作中に依然として生ずる可能性がある。吸収溶液の分解が速くなるほど、吸収溶液の一定の性能および溶液中の最大非再生性塩濃度を保証するために、精製操作の頻度は高くなる。これらの精製操作は、ユニットの運転コストにかなり著しい影響を及ぼす。最後に、イオン交換または蒸留による精製操作では、有機分解生成物のすべてが除去されないので、その性能が低すぎる場合には、吸収溶液のすべてを定期的に新しくすることが必要と考えられる。新しい溶媒材料の購入および分解した吸収溶液材料の除去に関連したコストは高い。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、再生された吸収溶液を、2つの画分すなわち水が富化された画分および反応性化合物が富化された画分に分離することにより、吸収溶液に対して行われる操作を最適化することを目的とする。
【0007】
発明の概要
概略的に言えば、本発明は、硫化水素(H2S)および二酸化炭素(CO2)で構成された群の少なくとも1種の酸性化合物を含む、ガス状流出物を脱酸する方法について記述し、この方法では、以下の段階:
a)酸性化合物が減少した(depleted in acid compounds)ガス状流出物および酸性化合物を含んだ(laden with acid compounds)吸収溶液が得られるように、ガス状流出物を接触ゾーン内で吸収溶液に接触させる段階であって、この吸収溶液は、加熱されたときに2つの分離可能な液体画分を形成するその性質により選択されるものである段階、
b)ガス状の酸性化合物が放出されるように、また再生された吸収溶液が得られるように、酸性化合物を含んだ吸収溶液を再生ゾーン内で再生する段階、
c)再生された溶液の一部を、水が富化された画分および反応性化合物が富化された画分に分離する段階を実施する段階、
d)以下の操作:
i)再生ゾーンまたは接触ゾーンに供給する蒸気を生成させるために、水が富化された画分の少なくとも一部を気化させる操作、
ii)再生ゾーンまたは接触ゾーンに供給する精製された画分を生成させるために、水が富化された画分を精製する操作を実施する操作、
iii)再生ゾーンまたは接触ゾーンに供給する精製された画分を生成させるために、反応性化合物が富化された画分を精製する操作を実施する操作
の少なくとも1つを実施する段階
が実施される。
【0008】
本発明によれば、操作i)は、リボイラを使用して実施することができる。
【0009】
操作ii)のために、以下の技法の1つを実行することができる:吸着、イオン交換、蒸留。
【0010】
操作iii)のために、以下の技法の1つを実行することができる:吸着、蒸留。
【0011】
操作i)で生成した蒸気を、再生ゾーンに供給することができる。前記水が富化された画分の少なくとも一部をリボイラに供給して、前記水が富化された画分を全部もしくは部分的に気化し、その全部もしくは部分的に気化された、水が富化された画分を再生ゾーンに供給することによって、操作i)を実施することができる。
【0012】
操作ii)によって生成した精製された画分を、再生ゾーンに供給することができる。
【0013】
操作iii)によって生成した精製された画分を、再生ゾーンに供給することができる。
【0014】
操作i)またはii)の後、水が富化された画分を、接触ゾーンまたは再生ゾーンに送ることができる。
【0015】
操作iii)の後、反応性化合物が富化された画分を、接触ゾーンまたは再生ゾーンに送ることができる。
【0016】
段階b)の前に、酸性化合物を含んだ吸収溶液を加熱することができ、酸性化合物が減少した流れを吸収溶液から分離することができ、この流れを、接触ゾーンに供給することによってリサイクルすることができる。
【0017】
酸性化合物を含んだ吸収溶液は、50℃から150℃の範囲の温度に加熱することができる。
【0018】
再生した吸収溶液の第2の部分は、接触ゾーンに供給することによってリサイクルすることができる。
【0019】
段階c)では、以下の分離技法の1つを使用することができる:デカンテーション、遠心分離、濾過。
【0020】
吸収溶液は、水相に反応性化合物を含むことができ、ここでこの反応性化合物は、アミン、アルカノールアミン、ポリアミン、アミノ酸、アミノ酸アルカリ塩、アミド、尿素、アルカリ金属リン酸塩、炭酸塩およびホウ酸塩からなる群から選択される。
【0021】
ガス状流出物は、天然ガス、合成ガス、燃焼排ガス、製油所ガス、クラウス法テールガス(Claus tail gas)、およびバイオマス発酵ガスで構成された群から選択することができる。
【0022】
分離によって、再生吸収溶液について実施される操作を最適化することが可能になる。一方では、再生された吸収溶液を2つの画分に分離することによって、好ましくは吸収溶液に対して制限された反応性化合物濃度を含有する吸収溶液の画分を、リボイラにより気化させることが可能になり、したがって、その分解が制限される。他方では、分離は、非再生性塩を除去するために処理すべき溶液の量を減少させ、したがって非再生性塩の除去に関連したコストを低下させることを可能とする。最後に、分離は、各画分ごとに特定の適切な精製を実施することにより、分解生成物の除去を可能にする。
【0023】
図面の簡単な説明
本発明のその他の特徴および利点は、添付の図を参照しながら以下の説明を読むことによって明らかにされよう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による方法の第1の実施形態を示す。
【図1b】吸収溶液組成に対する臨界脱混合温度の曲線の漸進的変化を示す。
【図2】本発明の第1の実施形態の変形例を図式的に示す。
【図3】本発明による方法のその他の実施形態を示す。
【図4】本発明による方法のその他の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
図1を参照すると、ライン1内を流通する、脱酸すべきガス状流出物は、吸収カラムC1内で、ライン4内を通って流れ込む吸収溶液に接触する。カラムC1は、気体/液体接触内部構造物(gas/liquid contacting internals)、たとえば蒸留トレー、ランダムまたは積層(stacked)充填体(packing)を備える。
【0026】
本発明による脱酸法は、様々なガス状流出物に適用することができる。たとえばこの方法は、燃焼排ガスの脱炭酸、天然ガスまたはクラウス法テールガスの脱酸を可能にする。この方法は、合成ガス、石炭または天然ガス燃焼複合プラントでの転換ガス(conversion gas)、およびバイオマス発酵から生ずるガスに含有される、酸性化合物の除去も可能にする。
【0027】
カラムC1では、吸収溶液に可溶な塩が形成されるように、吸収溶液の反応性化合物が酸性化合物と反応する。酸性化合物が減少したガスを、C1からライン2を通して排出する。水に溶解した塩の形をとる酸性化合物が富化された吸収溶液を、C1からライン3を通して排出する。
【0028】
吸収溶液は、1種または複数の反応性化合物を含み且つ/または酸性化合物に対して物理化学的親和性(physico−chemical affinity)を有する、水溶液である。H2SやCO2などの酸性化合物と可逆的に反応する化合物を含む吸収溶液が、選択される。本発明によれば、温度が臨界温度(critical temperature)よりも高い場合に2つの分離可能な液相を形成する性質を有する酸性化合物に対して物理化学的親和性を有する反応性化合物が選択される。言い換えれば反応性化合物は、その温度が臨界脱混合温度(critical demixing temperature)、即ち温度閾値(temperature threshold)を超えたときに、吸収溶液が2つの液相を形成するように選択される。本発明による方法で使用される吸収溶液の組成については、後に詳述する。
【0029】
次いで吸収溶液を、熱交換器E1に送る。この溶液は、より高い温度で、ライン5を通して熱交換器から離れる。
【0030】
E1からの吸収溶液を、ライン5を通してカラム2に送り込み、そこで、蒸留または酸性化合物のスチーミング(steaming)、一般にストリッピングと呼ばれる操作、によって再生する。カラムC2は、リボイラR1および気体/液体接触内部構造物を備える。C2では、リボイラR1によって発生し且つC2の底部に供給された水蒸気に、吸収溶液を接触させる。C2では、水蒸気との接触の作用の下、酸性化合物を、吸収溶液の反応性化合物から分離する。酸性化合物をガス状で放出し、C2からライン7を通して排出する。酸性化合物に富む水蒸気の流れ7を、E3内で冷却することによって部分的に凝縮し、凝縮物を、還流としてC2の頂部に送る。
【0031】
C2の底部で収集される再生された吸収溶液の一部を、ライン6を通して排出し、再びカラムC1に供給する。カラムC2の底部で収集された吸収溶液の冷却によって放出された熱は、再生される様々な流れを加熱するために回収することができる。たとえば図1を参照すると、ライン6内を流通する吸収溶液は、熱交器E1において、ライン3内を流通する酸性化合物を含んだ吸収溶液を加熱させる。次いでこの溶液を、熱交換器E2によって、カラムC1の操作温度に冷却し、次いでライン4を通してC1に供給する。
【0032】
本発明によれば、吸収溶液の別の部分を、ライン8を通してカラムC2の底部から抜き出し、分離ドラムB1に供給する。吸収溶液は、この吸収溶液が2つの画分すなわち反応性化合物に富む画分と水に富む画分とに分かれる臨界温度よりも、高い温度にある。装置B1では、吸収溶液は、デカンテーション、遠心分離、または濾過によって分離することができる。B1は、水に富む画分を、反応性化合物に富む画分から分離させる。B1での分離操作は、前記分離段階が促進されるように、C2の圧力とは異なる圧力で任意選択で実施することができる。図1bは、脱混合現象を説明する。
【0033】
図1bは、酸性化合物を吸収していないTMHDAの水溶液からなる吸収溶液に関する、反応性化合物TMHDA(N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン)の濃度[C]の関数としての、臨界脱混合温度Tの漸進的変化の例を示す。領域Dは、吸収溶液が2相溶液となる温度および濃度条件を示す。高温では、包括的(global)反応性化合物濃度[C0]の吸収溶液が2相溶液(ゾーンD)であり、2相に、即ち反応性化合物に乏しい相(反応性化合物濃度[C1])と反応性化合物に富む相(反応性化合物濃度[C2])とに分かれる。領域Mは、吸収溶液が単相の溶液となる温度および濃度条件を示す。
【0034】
本発明によれば、水に富む画分は、ライン8bを通してB1から排出され、全部または部分的に気化させるためリボイラR1に供給される。R1での気化は、加熱により実施される。R1によって生成された全部または部分的に気化した流れは、吸収溶液の熱再生を実施するために、ライン9を通してカラムC2の底部に送られる。
【0035】
R1での再沸騰操作に、水に富む画分8bのみ送ることにより、リボイラR1の高温ゾーンで反応性化合物の分解を減少させることが可能になる。
【0036】
反応性化合物が富化された第2の液体画分は、B1からライン10を通して排出され、ライン6内を流通する吸収溶液の流れと混合される。
【0037】
吸収溶液の反応性化合物の性質は、処理すべき(1種または複数の)酸性化合物との可逆的化学反応を可能にするために処理すべき(1種または複数の)酸性化合物の性質に応じて選択することができる。
【0038】
反応性化合物は、非限定的な例として、(第1級、第2級、第3級、環状または非環状、芳香族または非芳香族、飽和または不飽和)アミン、アルカノールアミン、ポリアミン、アミノ酸、アミノ酸アルカリ塩、アミド、尿素、アルカリ金属リン酸塩、炭酸塩またはホウ酸塩とすることができる。
【0039】
たとえば、以下の反応性化合物:一般にTMHDAと呼ばれるN,N,N’,N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミンを使用することができる。
【0040】
反応性化合物は、様々な濃度、たとえば水溶液中で10重量%から90重量%、好ましくは15重量%から60重量%、より好ましくは20重量%から50重量%の範囲の濃度にすることができる。
【0041】
吸収溶液は、10重量%から90重量%の間の水を含有することができる。
【0042】
ある実施形態では、吸収溶液の反応性化合物を、活性化剤(activator)として作用するように少なくとも一つの第1級または第2級アミン官能基を含有する、別のアミンと混合することができる。吸収溶液は、活性化剤を最大で20重量%、好ましくは15重量%未満、より好ましくは10重量%未満の濃度で含有することができる。
【0043】
このタイプの配合は、産業排ガス中のCO2捕獲、または所望の仕様を上回るCO2を含有する天然ガスの処理の場合に、特に興味深い。実際、このタイプの用途では、装置のサイズを小さくするためにCO2捕獲反応速度(kinetics)を増大させることが望まれる。
【0044】
活性化剤として使用することができる化合物の非網羅的リストを、以下に示す:
− モノエタノールアミン、
− アミノエチルエタノールアミン、
− ジグリコールアミン、
− ピペラジン、
− N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、
− N−(2−アミノエチル)ピペラジン、
− N−メチルピペラジン、
− N−エチルピペラジン、
− N−プロピルピペラジン、
− 1,6−ヘキサンジアミン、
− 1,1,9,9−テトラメチルジプロピレントリアミン、
− モルホリン、
− ピペリジン、
− 3−(メチルアミノ)プロピルアミン、
− N−メチルベンジルアミン。
【0045】
ある実施形態では、吸収溶液、特にN,N,N’,N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミンをベースにした吸収溶液は、他の有機化合物を含有することもできる。したがって本発明による吸収溶液は、酸性化合物に対して反応性ではなく(一般に、「物理溶媒」と呼ぶ)ガス状流出物の少なくとも1種または複数の酸性化合物の溶解度を増大させる、有機化合物を含有することができる。たとえば吸収溶液は、アルコール、グリコールエーテル、ラクタム、N−アルキル化ピロリドン、N−アルキル化ピペリドン、シクロテトラメチレンスルホン、N−アルキルホルムアミド、N−アルキルアセトアミド、エーテルケトン、またはアルキルホスフェート、およびこれらの誘導体などの物理溶媒を5重量%から50重量%の間で含むことができる。非限定的な例として、メタノール、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、またはN−ホルミルモルホリンとすることができる。
【0046】
ある実施形態では、吸収溶液、特にN,N,N’,N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミンをベースにした吸収溶液は、有機または無機酸を含むこともできる。使用することができる酸性化合物の非網羅的リストを、以下に示す:
− ギ酸
− シュウ酸
− 酢酸
− プロパン酸
− ブタン酸
− アミノ酸(グリシン、タウリンなど)
− リン酸
− 亜リン酸
− ピロリン酸
− 硫酸
− 亜硫酸
− 亜硝酸
− 塩酸。
【0047】
図1に図式的に示されるプロセスは、図2に示されるように、カラムC2の上流で吸収溶液の分離段階を実施することによって、補うことができる。図1の場合と同一の図2の参照番号は、同じ要素を示す。
【0048】
図2を参照すると、C1の底部で得られた酸性化合物を含んだ吸収溶液は、E4およびE1で加熱される。この溶液は、より高い温度でライン14を通してE1から離れる。交換器E1で、酸性化合物を含んだ吸収溶液は、この酸性化合物を含んだ溶液が2つの分離可能な液相を形成する臨界温度よりも高い温度に加熱される。たとえば、酸性化合物を含んだ吸収溶液は、50℃から150℃、好ましくは70℃から120℃の範囲の温度に加熱される。したがって、ライン14内を流通する流体は、2つの分離可能な液相:酸性化合物に富む相と酸性化合物に乏しい相とからなる。さらに、温度上昇の影響の下、酸性化合物の一部はガスの形で放出される。ライン14内を流通する流体の3つの相は、分離ドラムBS1内で分離する。たとえば2つの液相は、デカンテーション、遠心分離、または濾過によってBS1で分離される。BS1の頂部のガス画分は、ライン15を通して取り出され、場合により流れ7と混合される。酸性化合物が富化された、即ち酸性化合物と反応した活性化合物が富化された、第1の液体画分は、ライン5を通して再生カラムC2に送られる。酸性化合物が減少した、即ち未反応活性化合物が富化された、第2の液体画分は、ライン16を通してBS1から排出され、E4で冷却される。図2を参照すると、液体画分16は、ライン4内を流通する吸収溶液部分と混合されながら、カラムC1に供給される。
【0049】
図1のプロセスは、ユニットP1およびP2で実施される精製操作によって補うことができる。図1の場合と同一な図3の参照番号は、同じ要素を示す。
【0050】
ライン8bを通してB1から流入する吸収溶液の、水に富む画分は、反応性化合物が減少した画分の特定の精製を行うために、ライン11を通して精製ユニットP1に供給することもできる。様々な精製技法を、ユニットP1で実行することができる。
【0051】
たとえば、ユニットP1で実施される精製プロセスは、たとえば活性炭が充填されたカラムにおける、水相に可溶な有機分解生成物の吸着による除去とすることができる。この実施形態では、吸収溶液のすべてが精製ユニットに共有される場合には効率的ではなくなる可能性がある、精製が行われる。実際、分解生成物よりも高い濃度の反応性化合物の吸着が、特権的となる(privileged)可能性がある。
【0052】
たとえば、ユニットP1での精製プロセスは、たとえば陰イオン交換樹脂が充填されたカラムにおける、非再生性塩を除去するためのイオン交換技法とすることができる。非再生性塩は、イオン交換によって、再生可能な炭酸水素塩に転換される。この実施形態では、処理すべき溶媒の流量が減少し、したがって装置のサイズおよび関連する操作コストが削減される。実際、非再生性塩は、水に富む画分中で濃度が高くなり、その結果、この精製段階中で、吸収溶液の限られた画分のみ処理することが可能になる。
【0053】
精製ユニットP1は、非再生性塩と、水に富む相に可溶な弱揮発性分解生成物とを除去するための蒸留カラムとすることもできる。流れ17を通しての強塩基、たとえばソーダまたはカリの添加は、アミン塩を中和するために任意選択で行うことができる。この実施形態では、水に富む画分に低濃度で存在する反応性化合物の熱分解反応が、制限される。その上、低い反応性化合物濃度は、低温精製を実行するのに一般に使用される真空蒸留なしで済ますことも可能にする。最後に、処理すべき溶媒の流量は減少し、したがって装置のサイズが小さくなる。
【0054】
P1で精製された水に富む画分は、ライン13、次いで9を通してC2に供給され、一方、分離された生成物は、ライン12を通してこのプロセスから排出される。あるいは、P1で精製された水に富む画分は、P1での精製操作が低温で実施される場合にはC1に供給されるように、ライン4内を流通する流れと任意選択で混合することができる。
【0055】
ライン10を通してB1から流入する反応性化合物に富む吸収溶液画分は、反応性化合物が富化された画分の特定の精製を実行するために、流れ18を通して精製ユニットP2に全部または部分的に供給することができる。様々な精製技法を、ユニットP2で使用することができる。
【0056】
たとえば精製プロセスP2は、たとえば活性炭、ゼオライト、活性化されまたは活性化されていない、アルミナ、土(earths)(たとえばクレイ)、シリカなどが充填されたカラムを通した流れ18の通過による、反応性化合物に富む相に可溶な有機分解生成物の吸着による除去とすることができる。この実施形態では、吸収溶液のすべてが精製ユニットに供給される場合には効率的ではないと考えられる精製が、実施される。たとえばゼオライトの場合、分解生成物よりも極性が高くより高い濃度で存在する水分子の吸着が、特権的となる可能性がある。このように精製された反応性化合物に富む画分は、ライン19を通してC2に再び供給される。
【0057】
あるいは、精製ユニットP2は、たとえば反応性化合物蒸留カラムとすることができる。反応性化合物の揮発性に応じて、この蒸留は、真空下でまたは大気圧で実施することができる。反応性化合物に対応する蒸留留分は、ライン19を通して再びC2に供給され、一方、より揮発性があるまたより揮発性がない生成物は、ライン20を通してプロセスから排出される。
【0058】
図3に図式的に示されるプロセスで、ユニットP1は、ユニットP2を操作することなく操作することができ、またはユニットP2は、ユニットP1を操作することなく操作することができ、またはユニットP1およびP2は、同時に操作することができる。
【0059】
本発明の変形例について、図4を参照しながら記述する。図3の場合と同一な図4の参照番号は、同じ要素を示す。図4のプロセスで、カラムC1およびC2の操作は、図3の場合と同様である。一方、図4のプロセスの変形部分は、カラムC2のリボイラと、精製ユニットP1およびP2とにある。
【0060】
ライン8を通してC2の底部で排出された吸収溶液の一部は、分離装置B1に供給される。ライン8dを通してC2の底部で排出された吸収溶液の別の一部は、吸収溶液の再生が実行されるように、リボイラR1内で加熱される。R1内で気化させた流れは、ライン26を通してC2に供給される。C2での熱再生の後、吸収溶液は、この吸収溶液が2つの画分:反応性化合物に富む画分と水に富む画分とに分割される臨界温度よりも高い温度にある。
【0061】
非再生性塩は、水に富む画分中で濃度が高くなる。その上、流れ21を通した強塩基、たとえばソーダまたはカリの注入によって、塩の形で水に富む相に捕捉された反応性化合物の画分の、B1での放出および分離が可能になる。B1で中和された塩を含有する水性画分は、ライン23を通して精製ユニットP1に送られる。図4のユニットP1で実行される精製技法は、図3のユニットP1を参照しながら記述されたものと同一である。図4を参照すると、P1で精製された流れは、ライン25、次いで26を通してカラムC2の底部に送られ、非再生性塩またはその他の分解生成物は、ライン24を通してP1から排出される。あるいは、P1で精製された流れは、ライン25を通してカラムC1に供給することができる。
【0062】
反応性化合物に富む画分は、流れ27を通して精製ユニットP2に送られる。図4のユニットP2で実行される精製技法は、図3のユニットP2を参照しながら記述されたものと同一である。図4を参照すると、次いで反応性化合物に富む精製画分は、ライン29を通してC2に送り返され、分離された分解生成物は、ライン28を通して排出される。あるいは、ライン29を通してP2から排出された、反応性化合物に富む精製画分を、C1に供給することができる。
【0063】
図4を参照しながら記述されたプロセスで、ユニットP1およびP2は、同時に使用することができる。あるいは、ユニットP1は、ユニットP2を動作させずに、使用することができる。この場合、ライン27内を流通する流れは、ライン6を介して吸収カラムC1に直接注入することができる。あるいは、ユニットP2は、ユニットP1を動作させずに、使用することができる。この場合、流れ23は、リボイラR1内にもしくはカラムC2の底部に直接、またはカラムC1にライン6を介して注入することができる。
【0064】
B1での分離操作は、当該分離段階が促進されるように、C2の圧力とは異なる圧力で任意選択で行うことができる。
【0065】
図3および4で図式的に示されるプロセスは、図2のドラムBS1で示されるように、カラムC2の上流で吸収溶液分離段階を実施することによって補うことができる。
【0066】
本発明による方法およびその利点を、以下の操作例によって例示する。
【0067】
提供される例は、50重量%TMHDA水溶液を使用する、図4に関して記述されたプロセスに関する。ここでは、CO2捕獲ユニットで形成される非再生性塩の除去という視点に立つ。後者はプロトン化アミンの、主にギ酸イオン、そしてより少量のグリコール酸イオン、シュウ酸イオン、酢酸イオン、またはプロピオン酸イオンである。ここでは、以後、ギ酸イオンについてのみ考える。溶液中のプロトン化アミンギ酸塩(protonated amine formiate)の濃度が1.5重量%に到達する場合、精製操作は、泡立ちまたは腐食の問題を抑制するために、仮説上は必要と考えられる。カラムC2の底部では、吸収溶液は、その温度が臨界温度よりも高いので、2相溶液である。したがって2つの画分を、デカンタB1で分離することができる。2つの画分の組成を、デカンタB1の温度が約90℃である場合について、以下の表に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
分離装置B1では、たとえばプロトン化アミンとナトリウム陽イオンとを交換するために、ソーダを流れ21から供給することができる。ギ酸イオンに対して1当量の割合でソーダを添加した後、2相の組成物は、デカンタB1の温度が約90℃である場合に以下の表の通り得られる。
【0070】
【表2】

【0071】
水に富む相は吸収溶液の約45重量%に相当するのに対し、反応性化合物に富む相は吸収溶液の約55重量%に相当する。後者はギ酸イオンを含有していないので、ライン27を通して精製へと任意選択で送ることができ、次いでライン29を通して吸収カラムC2の底部に送ることができる。ギ酸ナトリウムのイオンを含有する水に富む相は、流れ23を通して蒸留ユニットに送ることができる。上流で、B1において実行された液−液分離を考慮すると、蒸留装置は、吸収溶液のすべてが蒸留へと送られる参照の場合に比べて約半分の小ささである。その上、気化すべき溶液の流量は二分され、その結果、この精製段階に関連するエネルギー消費が減少する。さらに、気化すべき溶液は、非常に少ない割合のアミンしか含有せず:したがって、吸収溶液のすべてが蒸留へと送られた場合に必要となった可能性がある(アミンは、溶液の50重量%に相当し、その標準沸騰温度(standard boiling temperature)は210℃である。)真空蒸留を、実施する必要がない。最後に、この精製段階でのアミンの分解は、蒸留される水相での低いアミン濃度(1重量%アミン)を考えると抑制される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化水素および二酸化炭素で構成された群の少なくとも1種の酸性化合物を含むガス状流出物を脱酸する方法であって、以下の段階:
a)酸性化合物が減少したガス状流出物(2)および酸性化合物を含んだ吸収溶液(3)が得られるように、ガス状流出物(1)を接触ゾーン(C1)内で吸収溶液(4)に接触させる段階、ただし前記吸収溶液は、加熱されたときに2つの分離可能な液体画分を形成するその性質により選択される、
b)ガス状の酸性化合物(7)が放出されるように、かつ再生された吸収溶液が得られるように、前記酸性化合物を含んだ吸収溶液を再生ゾーン(C2)内で再生する段階、
c)前記再生された溶液の一部を、水が富化された画分および反応性化合物が富化された画分に分離する段階(B1)を実施する段階、
d)以下の操作:
i)接触ゾーン(C1)または再生ゾーン(C2)に供給される蒸気が生成されるように、前記水が富化された画分の少なくとも一部を気化させること(R1)、
ii)接触ゾーン(C1)または再生ゾーン(C2)に供給される、精製された画分が生成されるように、前記水が富化された画分を精製(P1)する操作を実施すること、
iii)接触ゾーン(C1)または再生ゾーン(C2)に供給される、精製された画分が生成されるように、前記反応性化合物が富化された画分を精製(P2)する操作を実施すること
の少なくとも1つを実施する段階、
が実施される方法。
【請求項2】
操作i)が、リボイラ(R1)を使用して実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
吸着、イオン交換、蒸留のうちの1つの技法が、操作ii)で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
吸着、蒸留のうちの1つの技法が、操作iii)で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記水が富化された画分の少なくとも一部を、前記水が富化された画分を全てまたは部分的に気化させるために、リボイラに供給すること、および、該全てまたは部分的に気化された、水が富化された画分を再生ゾーン(C2)に供給することによって、操作i)が実行される請求項2記載の方法。
【請求項6】
操作ii)によって生成した精製された画分を、再生ゾーン(C2)に供給する請求項3記載の方法。
【請求項7】
操作iii)によって生成した精製された画分を、再生ゾーン(C2)に供給する請求項4記載の方法。
【請求項8】
段階b)の前に、前記酸性化合物を含んだ吸収溶液を加熱し、酸性化合物が減少した流れをその吸収溶液から分離し(BS1)、この流れを接触ゾーン(C1)に供給することによってリサイクルする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記酸性化合物を含んだ吸収溶液を、50℃から150℃の範囲の温度に加熱する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記再生された吸収溶液の第2の部分を、接触ゾーンに供給することによってリサイクルする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
段階c)で、デカンテーション、遠心分離、濾過のうちの1つの分離技法が使用される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記吸収溶液が水相中に反応性化合物を含み、前記反応性化合物はアミン、アルカノールアミン、ポリアミン、アミノ酸、アミノ酸アルカリ塩、アミド、尿素、アルカリ金属リン酸塩、炭酸塩およびホウ酸塩からなる群から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ガス状流出物が、天然ガス、合成ガス、燃焼排ガス、製油所ガス、クラウス法テールガス、およびバイオマス発酵ガスで構成された群から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−207809(P2010−207809A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−53210(P2010−53210)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(591007826)イエフペ (261)
【Fターム(参考)】