説明

再生キャリアの製造方法、再生キャリア、再生キャリアのキャリア芯材、電子写真現像剤、および電子写真現像剤の製造方法

【課題】安価に製造することができる再生キャリアの製造方法を提供する。
【解決手段】所定の期間使用された使用済みの現像剤から、使用できるキャリアを再生する再生キャリアの製造方法であって、使用済みの現像剤からキャリア成分を分離する工程(A)と、不活性ガスの雰囲気下で、分離されたキャリア成分を1000℃〜1250℃の温度範囲内で熱処理を行う熱処理工程(B)と、熱処理工程の後に、得られたキャリア芯材成分の表面に樹脂を被覆する樹脂被覆工程(C)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子写真現像剤用の再生キャリア(以下、単に「再生キャリア」ということもある)の製造方法、再生キャリア、再生キャリアのキャリア芯材、電子写真現像剤、および電子写真現像剤の製造方法に関するものであり、特に、複写機やMFP(Multifunctional Printer)等に用いられる電子写真現像剤に用いられる再生キャリアの製造方法、再生キャリア、再生キャリアのキャリア芯材、電子写真現像剤、および電子写真現像剤の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機やMFP等においては、電子写真における乾式の現像方式として、トナーのみを現像剤の成分とする一成分系現像剤と、トナーおよびキャリアを現像剤の成分とする二成分系現像剤とがある。いずれの現像方式においても、所定の電荷量に帯電させたトナーを感光体に供給する。そして、感光体上に形成された静電潜像をトナーによって可視化し、これを用紙に転写する。その後、トナーによる可視画像を用紙に定着させ、所望の画像を得る。
【0003】
ここで、二成分系現像剤における現像について、簡単に説明する。現像器内には、所定量のトナーおよび所定量のキャリアが収容されている。現像器には、S極とN極とが周方向に交互に複数設けられた回転可能なマグネットローラおよびトナーとキャリアとを現像器内で攪拌混合する攪拌ローラが備えられている。磁性粉から構成されるキャリアは、マグネットローラによって担持される。このマグネットローラの磁力により、キャリア粒子による直鎖状の磁気ブラシが形成される。キャリア粒子の表面には、攪拌による摩擦帯電により複数のトナー粒子が付着している。マグネットローラの回転により、この磁気ブラシを感光体に当てるようにして、感光体の表面にトナーを供給する。二成分系現像剤においては、このようにして現像を行なう。
【0004】
昨今において、上記したキャリアは、そのコア、すなわち、核となる部分を構成するキャリア芯材と、このキャリア芯材の表面を被覆するようにして設けられるコーティング樹脂とから構成されているのが主流である。二成分系現像剤の構成材料であるキャリアには、攪拌による摩擦帯電により効率的にトナーを帯電させるトナー帯電機能、感光体にトナーを適切に搬送して供給するトナー搬送能力、およびトナーを感光体に移動させた後のキャリア表面の残留電荷を速やかにリークさせる電荷移動速度等、種々の機能が求められる。
【0005】
現像時、すなわち、画像形成時において、トナーについては、用紙への定着により現像器内のトナーが順次消費されていくため、現像器に取り付けられたトナーホッパーから、消費された量に相当する新しいトナーが、現像器内に随時供給される。一方、キャリアについては、現像による消費がないため、現像器内において同じキャリアが繰り返し使用される。
【0006】
ここで、キャリアについては、使用される時間が長くなると、その性能が劣化してしまうことになる。具体的には、現像器内において使用する時間が長くなれば、キャリア同士、または、キャリアと現像器の壁面との間において、攪拌接触する機会が増大し、コーティング樹脂がキャリア芯材の表面から局部的に剥がれたり、熱によってトナー成分がキャリア表面に固着したりする。そうすると、剥がれた部分や固着した部分の影響で、キャリアとしての性能が劣化することになる。したがって、このようなキャリアを構成材料として備える現像剤には、画質の維持等の観点から、寿命が設けられている。寿命に達した現像剤は、現像器から回収され、新たな現像剤が投入される。寿命に達した現像剤については、一般的には、廃棄処理がなされている。
【0007】
昨今においては、エコロジーの観点から、このような寿命に達した使用済みの現像剤の再利用が要求されている。すなわち、現像剤を回収後、寿命に達したキャリアを再生品として再び利用可能とし、新たなトナーと混合して現像剤として再利用することが要求されている。このような再利用可能な再生キャリアに関する技術が、特開平7−72665号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−72665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示されるキャリアの再生方法によると、回収した使用済みのMn−Zn系フェライトキャリアにおいて、付着トナー及びコート樹脂を除去可能な温度以上で且つ500℃未満の空気中で一次加熱処理を行い、その後、400〜600℃の還元雰囲気中で二次加熱処理を行うこととしている。
【0010】
しかし、このような再生方法によると、一次加熱、二次加熱といった段階的な加熱処理が必要となり、処理工程が多くなってしまう。そうすると、再生キャリアの製造におけるエネルギーコストのアップに繋がってしまうおそれがある。
【0011】
この発明の目的は、安価に製造することができる再生キャリアの製造方法を提供することである。
【0012】
この発明の他の目的は、安価に製造することができる再生キャリアを提供することである。
【0013】
この発明のさらに他の目的は、安価に製造することができる再生キャリアのキャリア芯材を提供することである。
【0014】
この発明のさらに他の目的は、安価に製造することができる電子写真現像剤を提供することである。
【0015】
この発明のさらに他の目的は、安価に製造することができる電子写真現像剤の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願発明者らは、再生キャリアを製造するにおいて、まず、回収した使用済みの現像剤のうち、キャリアを構成するキャリア芯材自体の電気的特性および磁気的特性を落とさないキャリア芯材を安価に得ようとすることを考えた。すなわち、新規に樹脂がコーティングされる前の未使用のキャリア芯材と同等の機能を有する使用済みのキャリア芯材を、回収された現像剤から安価に得ることとした。そして、得られた使用済みのキャリア芯材に改めて新たに樹脂をコーティングして、再生キャリアを得ることとした。
【0017】
ここで、回収した現像剤から分離された使用済みのキャリア成分からキャリア芯材を得る際に、比較的単純な工程となるようにした。具体的には、段階的な熱処理の繰り返しや有機溶剤等の液体を用いた処理を行わないことを考えた。
【0018】
すなわち、この発明に係る再生キャリアの製造方法は、一般式:MFe3−x(0≦x≦1、ただし、Mは、Mg、Mn、Ca、Ti、Cu、Zn、Sr、Niからなる群から選択される少なくとも一種の金属)で表されるコア組成をキャリア芯材の主成分とし、その表面に樹脂が被覆されたコーティングキャリア、およびトナーから構成される現像剤から、再び使用できるキャリアを再生する再生キャリアの製造方法であって、現像剤からキャリア成分を分離する工程と、不活性ガスの雰囲気下で、分離されたキャリア成分を1000℃〜1250℃の温度範囲内で熱処理を行う熱処理工程と、熱処理工程の後に、得られたキャリア芯材成分の表面に樹脂を被覆する樹脂被覆工程とを含む。
【0019】
上記したような構成の再生キャリアは、使用済みの現像剤から、キャリア成分が分離され、不活性ガスの雰囲気下で、1000℃〜1250℃の温度範囲内で熱処理が行われる。こうすることにより、一度の熱処理工程で、分離されたキャリア成分の表面からコーティング樹脂を含む樹脂成分を除去することができる。また、このような熱処理工程によれば、キャリア芯材としての電気的特性および磁気的特性を落とさないようにすることができる。このような熱処理が施されたキャリア芯材成分の表面にコーティング樹脂を被覆して、新規品、すなわち未使用のキャリアと同等の性能を有する再生キャリアを製造することができる。したがって、安価に再生キャリアを製造することができる。
【0020】
なお、熱処理工程においては、酸素濃度を10000ppm以下とすることが好ましい。すなわち、好ましくは、熱処理工程は、酸素濃度を10000ppm以下とした不活性ガスの雰囲気下で、キャリア成分の熱処理を行う。こうすることにより、より確実に、未使用のキャリアと同等の再生キャリアを製造することができる。
【0021】
また、熱処理工程において、不活性ガスとして、Nガスを用いるようにしてもよい。このようなガスは比較的入手がしやすく、取扱いが容易であり、さらに安価に製造することができる。
【0022】
なお、現像剤は、電子写真現像剤として所定の期間使用された使用済みのものであってもよい。
【0023】
この発明の他の局面において、再生キャリアは、一般式:MFe3−x(0≦x≦1、ただし、Mは、Mg、Mn、Ca、Ti、Cu、Zn、Sr、Niからなる群から選択される少なくとも一種の金属)で表されるコア組成をキャリア芯材の主成分とし、その表面に樹脂が被覆されたコーティングキャリア、およびトナーから構成される現像剤から、再び使用できるよう再生された再生キャリアであって、現像剤からキャリア成分を分離し、不活性ガスの雰囲気下で、分離されたキャリア成分を1000℃〜1250℃の温度範囲内で熱処理を行い、熱処理後に、得られたキャリア芯材成分の表面に樹脂を被覆して製造される。
【0024】
このような再生キャリアについても、安価に製造することができる。
【0025】
この発明のさらに他の局面において、再生キャリアのキャリア芯材は、一般式:MFe3−x(0≦x≦1、ただし、Mは、Mg、Mn、Ca、Ti、Cu、Zn、Sr、Niからなる群から選択される少なくとも一種の金属)で表されるコア組成をキャリア芯材の主成分とし、その表面に樹脂が被覆されたコーティングキャリア、およびトナーから構成される現像剤から、再び使用できるよう再生された再生キャリアのキャリア芯材であって、現像剤からキャリア成分を分離し、不活性ガスの雰囲気下で、分離されたキャリア成分を1000℃〜1250℃の温度範囲内で熱処理を行って得られる。
【0026】
このような再生キャリアのキャリア芯材についても、安価に製造することができる。
【0027】
この発明のさらに他の局面において、電子写真現像剤は、上記した構成の再生キャリアと、トナーとを含む。
【0028】
このような電子写真現像剤は、安価に製造することができる。
【0029】
この発明のさらに他の局面においては、電子写真現像剤の製造方法は、上記した構成の再生キャリアと、トナーとを所定の割合で混合する工程を含む。
【0030】
このような電子写真現像剤の製造方法についても、安価に製造することができる。
【発明の効果】
【0031】
この発明に係る再生キャリアの製造方法、再生キャリア、再生キャリアのキャリア芯材、電子写真現像剤、および電子写真現像剤の製造方法は、安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】未使用のキャリアのキャリア芯材の外観を示す電子顕微鏡写真である。
【図2】未使用のキャリアの外観を示す電子顕微鏡写真である。
【図3】この発明の一実施形態に係る再生キャリアの製造方法において、代表的な工程を示すフローチャートである。
【図4】再生キャリアのキャリア芯材の外観を示す電子顕微鏡写真である。
【図5】再生キャリアの外観を示す電子顕微鏡写真である。
【図6】空気雰囲気下で、500℃で熱処理を行ったキャリア芯材の外観を示す電子顕微鏡写真である。
【図7】空気雰囲気下で、500℃で熱処理を行った後、さらに、還元雰囲気下で、600℃で熱処理を行ったキャリア芯材の外観を示す電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。まず、未使用のキャリアのキャリア芯材の製造工程の好ましい例について、Mn系ソフトフェライトを用いた場合を例示しながら説明するが、本発明に係るキャリア芯材に用いるソフトフェライトとしては、マンガンフェライト、マグネシウムフェライト、マンガンマグネシウムフェライト等、多様な磁性体を用いることができる。具体的には、一般式:MFe3−x(0≦x≦1、ただし、Mは、Mg、Mn、Ca、Ti、Cu、Zn、Sr、Niからなる群から選択される少なくとも一種の金属)で表されるコア組成をキャリア芯材の主成分とするものである。なお、コア組成として、上記したx=0の場合、マグネタイト(Fe)を示す。
【0034】
(原料粉の調合)
ソフトフェライトを構成する各成分の原料の調合にあたり、Mn源としてはMnやMnCO、Fe源としてはFeを準備した。そして、ソフトフェライト中のMnおよびFeの組成比が、意図するソフトフェライトの組成比に相当するように、各原料を秤量する。さらに、C源として用いるカーボンブラック(以下、CBと記載する。)を秤量した。これらの原料を十分に混合して調合するが、混合方法は、乳鉢等の使用による通常の混合でよい。配合されたCBは、後述する焼成工程において、COになると考えられる。
【0035】
なお、フェライトとしてマグネシウムフェライトを選択する場合には、Mg源としては、MgOやMg(OH)、MgCO、Fe源としてはFeを用いればよく、マンガンマグネシウムフェライトを選択する場合には、Mn源としてはMnやMnO、Mg源としては、MgOやMg(OH)、MgCO、Fe源としてはFeを用いればよい。また、C源としては、CBの他に、ポリビニルアルコール(PVA)、グラファイト、ポリアクリルアミド、アセチレン等が好適に使用できる。そして、いずれの原料を用いた場合でも、以下に説明するマンガンフェライトの製造工程と同様の製造工程で、各フェライトを製造することができる。
【0036】
(粉砕、造粒工程)
調合した原料を水と混合し、さらに必要に応じてポリカルボン酸等の分散剤を混合し、原料の配合比で固形分濃度が60〜90重量%程度のスラリーとし、これをボールミル等で湿式粉砕する。この湿式粉砕により、微細に粉砕された原料のスラリーが得られる。この原料のスラリーを噴霧乾燥機等で噴霧乾燥するか、あるいはペレタイザーで造粒し、径が10〜500μmの球状ペレットにして乾燥する。
【0037】
(焼成工程)
次に、上記した球状ペレットを焼成してソフトフェライトとするが、その際、電気炉にて窒素ガス雰囲気中、1000〜1350℃の温度で焼成処理を行う。この焼成処理において、原料中の炭素化合物はCOとなるが、炭素の添加割合が、炭素元素換算で0.5〜2.0重量%であれば、粒子の球状性を維持できる範囲内で焼結性を制御できるので、好ましい。
【0038】
(篩分工程)
焼成されたソフトフェライトを解砕機で解砕して解砕粉とし、この解砕粉を分級または篩分けして所定の粒度を有するものを採取し、キャリア芯材とする。これにより、例えば、平均粒子径が20〜100μmの範囲、好ましくは35μm程度のソフトフェライト粒子を含む、見掛け密度が、2.0〜2.8g/cmの範囲のキャリア芯材を製造することができる。なお、このようにして得られた未使用のキャリアのキャリア芯材11の外観の電子顕微鏡写真を、図1に示す。
【0039】
(樹脂被覆工程)
次に、上記得られたキャリア芯材へ樹脂被覆を行って、電子写真現像剤用キャリア粉(以下、キャリアと記載する。)、いわゆる未使用のキャリアを製造する工程について説明する。
【0040】
キャリア芯材に樹脂被覆を施してキャリアを製造する場合、その樹脂被覆量は、キャリア芯材の総重量の0.5〜10.0重量%に調整するのがよい。被覆する樹脂としては種々のものが適用でき、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、オレフィン樹脂(ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等)、不飽和ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等)、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂等が挙げられる。
【0041】
樹脂被覆を行うには、上記した所定の樹脂を溶剤に希釈して、キャリア芯材の表面に被覆するのが一般的である。溶剤としては、所定の樹脂が可溶なものであればよく、所定の樹脂が有機溶剤に可溶な樹脂の場合、溶剤としてはトルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール等を使用することができ、所定の樹脂が水溶性樹脂またはエマルジョンタイプの樹脂であれば、水を用いることができる。
【0042】
適当な溶剤で希釈した所定の樹脂をキャリア芯材の表面に被覆するには、浸漬法、スプレー法、刷毛塗り法等が適用できる。所定の樹脂が被覆されたキャリア芯材を乾燥させるとキャリアを得ることができる。このような湿式法による樹脂被覆の他、キャリア芯材表面に所定の樹脂の粉末を付着させる乾式法によっても、キャリアを得ることができる。
【0043】
上記した湿式法、乾式法のいずれにしても、キャリア芯材の表面に被覆した所定の樹脂を焼き付けるのが好ましい。そこで、固定式または流動式の電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉などを使用して、外部加熱方式または内部加熱方式で、キャリア芯材の表面に被覆された所定の樹脂を焼き付けることが好ましい。なお、マイクロウェーブによる焼付けも可能である。焼き付け温度は、所定の樹脂によって異なるが、融点以上またはガラス転移点以上の温度が必要である。所定の樹脂が、熱硬化性樹脂または縮合型樹脂である場合は、硬化が十分に進む温度にまで上げる必要がある。
【0044】
ここで、所定の樹脂としてシリコーン樹脂を選択し、キャリア芯材へ被覆を施す場合を例として、具体的に説明する。
【0045】
まず、シリコーン樹脂をトルエンで希釈するが、例えば、シリコーン樹脂の割合が、キャリア芯材の総重量の3重量%となるように配合し、この液とキャリア芯材とを攪拌機に入れて攪拌する。この場合、必要に応じて、硬化剤を添加する。攪拌混合を終えたら、樹脂溶液が被覆されたキャリア芯材へ、例えば、190℃×30分の加熱処理をして、溶媒を乾燥除去する。次に、加熱処理後の樹脂が被覆されたキャリア芯材を、オーブンまたはトンネル炉を用いて、例えば、170〜280℃×3時間の加熱処理を行い、シリコーン樹脂の焼き付け処理を行う。これによりキャリアが得られる。なお、このようにして得られた未使用のキャリア12の外観の電子顕微鏡写真を、図2に示す。
【0046】
そして、このようにして得られた未使用のキャリアと、所定の量のトナーとを攪拌混合して、未使用の現像剤を得る。このようにして得られた未使用の現像剤は、現像器に所定量投入され、複写機の所定の箇所に取り付けられ、一般的には寿命に達するまで使用される。
【0047】
次に、この発明の一実施形態に係る再生キャリアを製造する製造方法について説明する。図3は、この発明の一実施形態に係る再生キャリアの製造方法において、代表的な工程を示すフローチャートである。以下、図3に沿って、この発明の一実施形態に係る再生キャリアの製造方法について説明する。
【0048】
まず、複写機等に備えられた現像器から、寿命に達した使用済みの現像剤を回収する。使用済みの現像剤とは、所定の複写機等において使用され、寿命として設定された時間や枚数に達した現像剤のことをいう。
【0049】
そして、回収された使用済みの現像剤から、トナー成分を除去して、キャリア成分を分離する(図3(A))。トナー成分の除去としては、例えば、エアーブロー方式を採用し、現像剤からトナー成分を除去するようにしてキャリア成分を分離してもよいし、篩によってトナー成分をふるい落とし、キャリア成分を分離してもよい。この場合、全く完全にトナー成分とキャリア成分とを分離しなくともよく、微量のトナー成分が残存し、キャリア成分に付着等していても構わない。
【0050】
次に、分離したキャリア成分の熱処理を行う(図3(B))。ここで、熱処理工程とは、不活性ガスの雰囲気下で、分離されたキャリア成分を1000℃〜1250℃の温度範囲内で熱処理を行う工程である。具体的には、得られたキャリア成分を、不活性ガスの雰囲気下で、1000℃〜1250℃に加熱した炉に投入し、3時間の熱処理を行う。
【0051】
ここで、熱処理の温度であるが、熱処理時における再生キャリアのキャリア芯材の焼結のおそれを防止するため、1250℃以下としたものである。また、1000℃以上とすることにより、後述するように、再生キャリアのキャリア芯材としての電気的特性および磁気的特性を落とさないようにすることができる。
【0052】
また、熱処理の時間について、ここでは3時間としたが、熱処理を行うキャリア成分の量等にもよるものであり、キャリア成分の表面の樹脂成分が熱処理により除去できる時間であればよく、例えば、キャリア成分の量等によっては、1時間程度であってもよい。
【0053】
熱処理に関しては、不活性ガスの雰囲気下で行うが、不活性ガスの雰囲気下における酸素濃度については、できるだけ低いほうが望ましく、具体的には、酸素濃度は、10000ppm以下であればよい。なお、工程上、不活性ガスの雰囲気下としても、若干量の酸素が含有されるものである。すなわち、不活性ガスの雰囲気下とは、極微量、具体的には、例えば、500ppm以下の酸素が不可避的に含有されている状態である。
【0054】
図4は、この発明の一実施形態に係る再生キャリアのキャリア芯材の外観を示す電子顕微鏡写真である。図4を参照して、この発明の一実施形態に係る再生キャリアのキャリア芯材13については、その外形形状が、略球形状である。また、その外観の性状については、図1に示すキャリア芯材の外観の性状とほぼ同様である。この発明の一実施形態に係る再生キャリアのキャリア芯材13の粒径は、再生キャリアの元となる新規キャリア、すなわち、未使用のキャリアのキャリア芯材と同様に約35μmである。上記した粒径は、体積平均粒径を意味する。ここで、粒径の測定については、日機装株式会社製のマイクロトラック、Model9320−X100を用いた。
【0055】
次に、このようにして得られた再生キャリアのキャリア芯材に対して、樹脂を被覆する(図3(C))。具体的には、得られた再生キャリアのキャリア芯材に対して、上述したようにシリコーン系樹脂等を被覆する。このようにして、この発明の一実施形態に係る再生キャリアを得る。
【0056】
この発明の一実施形態に係る再生キャリアは、上述する方法によって得られたキャリア芯材の表面に新たに薄く樹脂をコーティング、すなわち被覆したものであり、その粒径については、被覆前のキャリア芯材とほとんど変化は無い。再生キャリアの表面については、コーティングにより、樹脂でほぼ完全に被覆されている。樹脂コーティングについては、未使用のキャリアのキャリア芯材に樹脂をコーティングする方法と同様の方法でコーティングされる。このようにして得られた再生キャリア14の外観の電子顕微鏡写真を、図5に示す。再生キャリア14の外観の性状についても、図2に示す未使用のキャリア12の外観の性状と、ほぼ同様である。
【0057】
再生キャリアを用いた現像剤は、再生キャリアと、新たなトナーとを所定の割合で適当な混合器で混合して製造される。トナーの外形形状についても、略球形状である。トナーは、スチレンアクリル系樹脂やポリエステル系樹脂を主成分とするものであり、所定量の顔料やワックス等が配合されている。このようなトナーは、例えば、粉砕法や重合法によって製造される。トナーの粒径は、例えば、再生キャリアの粒径の7分の1程度の約5μm程度のものが使用される。このような現像剤は、電子写真現像剤として用いられる。
【0058】
すなわち、この発明の一実施形態に係る再生キャリアの製造方法は、一般式:MFe3−x(0≦x≦1、ただし、Mは、Mg、Mn、Ca、Ti、Cu、Zn、Sr、Niからなる群から選択される少なくとも一種の金属)で表されるコア組成をキャリア芯材の主成分とし、その表面に樹脂が被覆されたコーティングキャリア、およびトナーから構成される現像剤から、再び使用できるキャリアを再生する再生キャリアの製造方法であって、現像剤からキャリア成分を分離する工程と、不活性ガスの雰囲気下で、分離されたキャリア成分を1000℃〜1250℃の温度範囲内で熱処理を行う熱処理工程と、熱処理工程の後に、得られたキャリア芯材成分の表面に樹脂を被覆する樹脂被覆工程とを含む。
【0059】
このような再生キャリアの製造方法によれば、一度の熱処理工程で、分離されたキャリア成分の表面からコーティング樹脂を含む樹脂成分を除去することができる。また、このような熱処理工程によれば、キャリア芯材としての電気的特性および磁気的特性を落とさないようにすることができる。したがって、安価に再生キャリアを製造することができる。
【0060】
また、この発明の一実施形態に係る再生キャリアは、一般式:MFe3−x(0≦x≦1、ただし、Mは、Mg、Mn、Ca、Ti、Cu、Zn、Sr、Niからなる群から選択される少なくとも一種の金属)で表されるコア組成をキャリア芯材の主成分とし、その表面に樹脂が被覆されたコーティングキャリア、およびトナーから構成される現像剤から、再び使用できるよう再生された再生キャリアであって、現像剤からキャリア成分を分離し、不活性ガスの雰囲気下で、分離されたキャリア成分を1000℃〜1250℃の温度範囲内で熱処理を行い、熱処理後に、得られたキャリア芯材成分の表面に樹脂を被覆して製造される。
【0061】
このような再生キャリアは、安価に製造することができる。
【0062】
また、この発明の一実施形態に係る再生キャリアのキャリア芯材は、一般式:MFe3−x(0≦x≦1、ただし、Mは、Mg、Mn、Ca、Ti、Cu、Zn、Sr、Niからなる群から選択される少なくとも一種の金属)で表されるコア組成をキャリア芯材の主成分とし、その表面に樹脂が被覆されたコーティングキャリア、およびトナーから構成される現像剤から、再び使用できるよう再生された再生キャリアのキャリア芯材であって、現像剤からキャリア成分を分離し、不活性ガスの雰囲気下で、分離されたキャリア成分を1000℃〜1250℃の温度範囲内で熱処理を行って得られる。
【0063】
このような再生キャリアのキャリア芯材についても、安価に製造することができる。
【0064】
また、この発明の一実施形態に係る電子写真現像剤は、上記した構成の再生キャリアと、トナーとを含む。
【0065】
このような電子写真現像剤についても、安価に製造することができる。
【0066】
また、この発明の一実施形態に係る電子写真現像剤の製造方法は、上記した構成の再生キャリアと、トナーとを所定の割合で混合する工程を含む。
【0067】
このような電子写真現像剤の製造方法についても、安価に製造することができる。
【実施例】
【0068】
(実施例1)
まず、新規のキャリアとして、以下の方法で製造したMnフェライトをキャリア芯材とする。キャリアの原料として、粒径が1μm程度に微粉砕されたFeとMnとを準備し、モル比でFe:Mn=65:35となるように秤量して混合し、混合粉を得た。得られた混合粉を、CB0.5重量%、分散剤(ポリカルボン酸アンモニウム系分散剤)1.5重量%を含む水中へ投入して攪拌し、固形分濃度70重量%のスラリーを得た。
【0069】
このスラリーを湿式ボールミルにて湿式粉砕し、この湿式粉砕操作を3回繰り返し行って湿式粉砕物とした。この湿式粉砕物をさらに攪拌した後、スプレードライヤーにて噴霧し、粒径10〜100μmの乾燥造粒品を製造した。
【0070】
ここで、網目75μmの篩網を用い、この乾燥造粒品から粗粒を分離した。そして、この粗粒を分離した造粒品を大気中で900℃に加熱して3時間仮焼し、その後、窒素雰囲気下で1300℃、5時間焼成してフェライト化させ、焼成品とした。
【0071】
このフェライト化した焼成品を、ハンマーミルで解砕し、次に、風力分級機を用いてフェライト化した焼成品から微粉を除去した。
【0072】
この微粉が除去された焼成品を、さらに振動篩にかけ、体積平均粒径(Dv)が35.0μmとなるように調整して、Mn−Fe系フェライトをコア組成の主成分とするキャリア芯材を得た。
【0073】
一方、シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング社製SR−2411)を、固形分20重量%となるように、溶剤(トルエン)にて希釈し、シリコーン樹脂溶液を調整した。
【0074】
得られたキャリア芯材と、このキャリア芯材に対して3重量%のシリコーン樹脂溶液にアルミナを添加した混合樹脂溶液を浸漬型コーティング装置へ投入し、加熱した後、240℃で2時間加熱攪拌し、キャリア芯材表面に樹脂を被覆したものを準備した。
【0075】
そして、この新規のキャリアを所定量のトナーと混合し、新規な現像剤を得た。次に、この新規な現像剤を複写機に備えられた現像器に所定量投入し、現像剤を使用した。所定期間使用し、寿命に達した現像剤を使用済み現像剤として回収後、トナー成分をエアーブローにより除去し、トナー成分とキャリア成分とを分離した。分離したキャリア成分1Kgについて、電気炉(マッフル炉)で3時間、1000℃で熱処理を行った。この場合の熱処理の雰囲気は、不活性ガスとしてNガスを用い、酸素濃度は、500ppm以下であった。なお、酸素濃度については、ジルコニア式酸素計(第一熱研株式会社製、ECOAZ TB−II F−S)を用い、炉内の雰囲気における酸素濃度を測定した。このようにして熱処理を行った再生キャリアのキャリア芯材の磁気的特性および電気的特性を、実施例1として表1に示す。実施例2以降についても同様である。なお、その後、再生キャリアのキャリア芯材について、浸漬型コーティング装置により、所定量のアルミナ含有シリコーン樹脂をコーティングし、実施例1に係る再生キャリアを得た。
【0076】
次に、実施例1に係る樹脂被覆再生キャリアと、粒径5μm程度のトナーとを、ポットミルで混合し、実施例1に係る二成分系電子写真現像剤Aを製造した。製造された二成分系電子写真現像剤を用い、デジタル反転現像方式を採用する40枚機を評価機として使用し、キャリア付着および画像階調性について評価した。
【0077】
(1)キャリア付着の評価:
40枚機を評価機として、二成分系電子写真現像剤Aに関するキャリア付着の評価を行った。具体的には、画像上のキャリア付着(白斑)のレベルを、次に4段階で評価した。
【0078】
◎:A3用紙10枚中に白斑が無いレベルである。
【0079】
○:A3用紙10枚中の各1枚に1〜10個の白斑が有るレベルである。
【0080】
×:A3用紙10枚中の各1枚に11個以上の白斑が有るレベルである。
【0081】
その結果、二成分系電子写真現像剤は、A3用紙10枚中に白斑が無いレベルであることが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0082】
(2)画像階調性:
40枚機を評価機として、二成分系電子写真現像剤Aに関する画像上の画像階調性のレベルと、次の4段階で評価した。
【0083】
◎:試験画像を非常によく再現している。
【0084】
○:試験画像をほぼ再現している。
【0085】
×:試験画像を全く再現していない。
【0086】
その結果、二成分系電子写真現像剤は、画像上の画像階調性を非常によく再現していることが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0087】
(実施例2)
熱処理を行う温度を1100℃とした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2に係る再生キャリアのキャリア芯材を得た。得られた再生キャリアのキャリア芯材の磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
【0088】
さらに、実施例1と同様の方法で、実施例2に係る二成分系電子写真現像剤Bを製造し、実施例1と同様にして、キャリア付着および画像階調性について評価した。
【0089】
(1)キャリア付着の評価:
A3用紙10枚中に白斑が無いレベルであることが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0090】
(2)画像階調性:
画像上の画像階調性を非常によく再現していることが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0091】
(実施例3)
熱処理を行う温度を1150℃とした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3に係る再生キャリアのキャリア芯材を得た。得られた再生キャリアのキャリア芯材の磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
【0092】
さらに、実施例1と同様の方法で、実施例3に係る二成分系電子写真現像剤Cを製造し、実施例1と同様にして、キャリア付着および画像階調性について評価した。
【0093】
(1)キャリア付着の評価:
A3用紙10枚中に白斑が無いレベルであることが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0094】
(2)画像階調性:
画像上の画像階調性を非常によく再現していることが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0095】
(実施例4)
熱処理を行う温度を1200℃とした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例4に係る再生キャリアのキャリア芯材を得た。得られた再生キャリア芯材の磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
【0096】
さらに、実施例1と同様の方法で、実施例4に係る二成分系電子写真現像剤Dを製造し、実施例1と同様にして、キャリア付着および画像階調性について評価した。
【0097】
(1)キャリア付着の評価:
A3用紙10枚中の各1枚に1〜10個の白斑が有るレベルであることが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0098】
(2)画像階調性:
画像上の画像階調性を非常によく再現していることが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0099】
(実施例5)
熱処理時の酸素濃度5000ppmとした以外は、実施例3と同様の方法で、実施例5に係る再生キャリアのキャリア芯材を得た。得られた再生キャリアのキャリア芯材の磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
【0100】
さらに、実施例1と同様の方法で、実施例5に係る二成分系電子写真現像剤Eを製造し、実施例1と同様にして、キャリア付着および画像階調性について評価した。
【0101】
(1)キャリア付着の評価:
A3用紙10枚中の各1枚に1〜10個の白斑が有るレベルであることが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0102】
(2)画像階調性:
画像上の画像階調性を非常によく再現していることが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0103】
(実施例6)
熱処理時の酸素濃度10000ppmとした以外は、実施例3と同様の方法で、実施例6に係る再生キャリアのキャリア芯材を得た。得られた再生キャリアのキャリア芯材の磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
【0104】
さらに、実施例1と同様の方法で、実施例6に係る二成分系電子写真現像剤Fを製造し、実施例1と同様にして、キャリア付着および画像階調性について評価した。
【0105】
(1)キャリア付着の評価:
A3用紙10枚中に白斑が無いレベルであることが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0106】
(2)画像階調性:
画像上の画像階調性をほぼ再現していることが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0107】
(実施例7)
コーティング樹脂として2種のシリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング社製:SH−804、東レ・ダウコーニング社製:SR−2402)をSH−804:SR−2402=6:4の比で混合したシリコーン樹脂を用い、アルミナを無添加とした以外は、実施例3と同様の方法で、実施例7に係る再生キャリアのキャリア芯材を得た。得られた再生キャリアのキャリア芯材の磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
【0108】
さらに、実施例1と同様の方法で、実施例7に係る二成分系電子写真現像剤Gを製造し、実施例1と同様にして、キャリア付着および画像階調性について評価した。
【0109】
(1)キャリア付着の評価:
A3用紙10枚中に白斑が無いレベルであることが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0110】
(2)画像階調性:
画像上の画像階調性を非常によく再現していることが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0111】
(実施例8)
キャリア芯材組成をMn−Mg−Fe系フェライトとした以外は、実施例7と同様の方法で、実施例8に係る再生キャリアのキャリア芯材を得た。得られた再生キャリアのキャリア芯材の磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
【0112】
さらに、実施例1と同様の方法で、実施例8に係る二成分系電子写真現像剤Hを製造し、実施例1と同様にして、キャリア付着および画像階調性について評価した。
【0113】
(1)キャリア付着の評価:
A3用紙10枚中に白斑が無いレベルであることが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0114】
(2)画像階調性:
画像上の画像階調性をほぼ再現していることが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0115】
(比較例1)
熱処理を行う温度を600℃とし、熱処理を行う雰囲気を空気とした以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1に係る再生キャリアのキャリア芯材を得た。得られた再生キャリアのキャリア芯材の磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
【0116】
さらに、実施例1と同様の方法で、比較例1に係る二成分系電子写真現像剤Iを製造し、実施例1と同様にして、キャリア付着および画像階調性について評価した。
【0117】
(1)キャリア付着の評価:
A3用紙10枚中の各1枚に11個以上の白斑が有るレベルであることが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0118】
(2)画像階調性:
画像上の画像階調性を全く再現していないことが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0119】
(比較例2)
熱処理を行う温度を600℃とした以外は、実施例1と同様の方法で、比較例2に係る再生キャリアのキャリア芯材を得た。得られた再生キャリアのキャリア芯材の磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
【0120】
さらに、実施例1と同様の方法で、比較例2に係る二成分系電子写真現像剤Jを製造し、実施例1と同様にして、キャリア付着および画像階調性について評価した。
【0121】
(1)キャリア付着の評価:
A3用紙10枚中の各1枚に1〜10個の白斑が有るレベルであることが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0122】
(2)画像階調性:
画像上の画像階調性を全く再現していないことが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0123】
(比較例3)
熱処理を行う温度を700℃とした以外は、実施例1と同様の方法で、比較例3に係る再生キャリアのキャリア芯材を得た。得られた再生キャリアのキャリア芯材の磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
【0124】
さらに、実施例1と同様の方法で、比較例3に係る二成分系電子写真現像剤Kを製造し、実施例1と同様にして、キャリア付着および画像階調性について評価した。
【0125】
(1)キャリア付着の評価:
A3用紙10枚中の各1枚に1〜10個の白斑が有るレベルであることが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0126】
(2)画像階調性:
画像上の画像階調性を全く再現していないことが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0127】
(比較例4)
熱処理を行う温度を800℃とした以外は、実施例1と同様の方法で、比較例4に係る再生キャリアのキャリア芯材を得た。得られた再生キャリアのキャリア芯材の磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
【0128】
さらに、実施例1と同様の方法で、比較例4に係る二成分系電子写真現像剤Lを製造し、実施例1と同様にして、キャリア付着および画像階調性について評価した。
【0129】
(1)キャリア付着の評価:
A3用紙10枚中の各1枚に1〜10個の白斑が有るレベルであることが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0130】
(2)画像階調性:
画像上の画像階調性を全く再現していないことが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0131】
(比較例5)
熱処理を行う温度を900℃とした以外は、実施例1と同様の方法で、比較例5に係る再生キャリアのキャリア芯材を得た。得られた再生キャリアのキャリア芯材の磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
【0132】
さらに、実施例1と同様の方法で、比較例5に係る二成分系電子写真現像剤Mを製造し、実施例1と同様にして、キャリア付着および画像階調性について評価した。
【0133】
(1)キャリア付着の評価:
A3用紙10枚中の各1枚に1〜10個の白斑が有るレベルであることが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0134】
(2)画像階調性:
画像上の画像階調性を全く再現していないことが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0135】
(比較例6)
熱処理時の酸素濃度50000ppmとした以外は、実施例3と同様の方法で、比較例6に係る再生キャリアのキャリア芯材を得た。得られた再生キャリアのキャリア芯材の磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
【0136】
さらに、実施例1と同様の方法で、比較例6に係る二成分系電子写真現像剤Nを製造し、実施例1と同様にして、キャリア付着および画像階調性について評価した。
【0137】
(1)キャリア付着の評価:
A3用紙10枚中の各1枚に11個以上の白斑が有るレベルであることが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0138】
(2)画像階調性:
画像上の画像階調性を全く再現していないことが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0139】
(比較例7)
熱処理時の酸素濃度100000ppmとした以外は、実施例3と同様の方法で、比較例7に係る再生キャリアのキャリア芯材を得た。得られた再生キャリアのキャリア芯材の磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
【0140】
さらに、実施例1と同様の方法で、比較例7に係る二成分系電子写真現像剤Oを製造し、実施例1と同様にして、キャリア付着および画像階調性について評価した。
【0141】
(1)キャリア付着の評価:
A3用紙10枚中の各1枚に11個以上の白斑が有るレベルであることが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0142】
(2)画像階調性:
画像上の画像階調性を全く再現していないことが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0143】
(比較例8)
熱処理を行う温度を500℃とし、熱処理を行う雰囲気を空気とした以外は、実施例7と同様の方法で、比較例8に係る再生キャリアのキャリア芯材を得た。得られた再生キャリアのキャリア芯材の磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
【0144】
さらに、実施例1と同様の方法で、比較例8に係る二成分系電子写真現像剤Pを製造し、実施例1と同様にして、キャリア付着および画像階調性について評価した。
【0145】
(1)キャリア付着の評価:
A3用紙10枚中の各1枚に11個以上の白斑が有るレベルであることが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0146】
(2)画像階調性:
画像上の画像階調性を全く再現していないことが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0147】
(比較例9)
比較例8のものを用い、さらに熱処理を行う温度を600℃とした以外は、実施例7と同様の方法で、比較例9に係る再生キャリアのキャリア芯材を得た。得られた再生キャリアのキャリア芯材の磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
【0148】
さらに、実施例1と同様の方法で、比較例9に係る二成分系電子写真現像剤Qを製造し、実施例1と同様にして、キャリア付着および画像階調性について評価した。
【0149】
(1)キャリア付着の評価:
A3用紙10枚中の各1枚に11個以上の白斑が有るレベルであることが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0150】
(2)画像階調性:
画像上の画像階調性を全く再現していないことが判明した。この評価結果を、表1に示す。
【0151】
(参考例1)
Mn−Fe系フェライトをキャリア芯材とし、樹脂をコーティングする前の未使用のキャリアのキャリア芯材の磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
【0152】
(参考例2)
上記、参考例1のMn−Fe系フェライトをキャリア芯材とし、抵抗調整を目的に空気雰囲気下で、低温で熱処理を行った、樹脂をコーティングする前の未使用のキャリアのキャリア芯材の磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
【0153】
(参考例3)
Mn−Mg−Fe系フェライトをキャリア芯材とし、樹脂をコーティングする前の未使用のキャリアのキャリア芯材の磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
【0154】
【表1】

【0155】
電気的特性を示す抵抗値の測定について説明する。まず、水平に置かれた絶縁板、例えば、テフロン(登録商標)でコートされたアクリル板の上に、電極として表面を電解研摩した板厚2mmの真鍮板2枚を、電極間距離2mmとなるように配置する。この時、2枚の電極板は、その法線方向が水平方向となるようにする。2枚の電極板の間の空隙に被測定粉体200±1mgを装入した後、それぞれの電極板の背後に断面積240mmの磁石を配置して電極間に被測定粉体のブリッジを形成させる。この状態で、電極間に各電圧を小さいものから順に直流電圧で印加し、被測定粉体を流れる電流値を2端子法により測定し、電気抵抗値を算出する。なお、ここでは、日置電機株式会社製の超絶縁計SM−8215を用いている。そして、表中の各電圧を印加した場合の印加時の抵抗値(Ω)を測定した。印加電圧は、100Vとした。
【0156】
また、磁気的特性を示す磁化の測定については、VSM(東英工業株式会社製、VSM−P7)を用いて、磁化率を測定した。ここで、表1中、「σs」とは、飽和磁化であり、「σ1000」とは、外部磁場1000Oeである場合における磁化である。
【0157】
また、熱処理を行ったキャリア成分について、有機物の残量を測定するため、炭素量の測定を行った。炭素量の測定については、JIS G 1211「鉄および鋼中の炭素定量方法」に基づき、赤外線吸収法(積分法)にて行った。具体的には、約1gの試料と助燃剤として1gのタングステンをるつぼに秤量し、これを酸素気流中で高温に加熱し、炭素を十分に加熱して二酸化炭素とし、これを酸素と共に赤外吸収セルに送り、赤外線吸収量から炭素量を定量した。
【0158】
なお、表1中、アルミナ含有シリコーン樹脂とは、コーティング樹脂としてのシリコーン樹脂の中にアルミナが含有されたものをいい、コーティング樹脂としてのアルミナ非含有シリコーン樹脂とは、シリコーン樹脂の中にアルミナが含有されていないものを示す。
【0159】
表1を参照して、まず、キャリア芯材のコア組成がMn−Fe系フェライトの場合について検討する。磁気的特性について検討してみると、参考例1、2は、実使用幅を示したもので、σ1000の値で67.2〜69.6Am/kgであり、実使用状況において問題のないレベルである。そして、実施例1〜7についても、σ1000の値で最低でも67.7Am/kg以上あり、実使用状況において問題のないレベルである。一方、比較例1を見てみると、σ1000の値で37.9Am/kgである。また、比較例6についても、51.3Am/kgであり、比較例7についても、36.2Am/kgである。このような低い磁化であると、実使用状況において、問題のあるレベルである。これは、熱処理時において、酸素濃度が高いと、キャリア芯材の磁化が大きく下がることに起因するものである。
【0160】
電気的特性について検討してみると、参考例1、2の値は、100Vの場合で、2.3E+06〜7.3E+07Ωである。また、実施例1〜7の場合についても、最高の値で3.0E+07Ωである。これに対し、比較例1〜9において、最低でも1.3E+09Ωの値である。このような高い抵抗値では、実使用状況において、問題のあるレベルである。
【0161】
この電気的特性については、炭素量からもその結果が裏付けられるものである。すなわち、実施例1〜7については、キャリア芯材の炭素量として最高でも0.006重量%である。これは、上記した熱処理工程において、樹脂等の有機物がほぼ完全に除去されているため、抵抗値が相対的に低くなったものと考えられる。一方、比較例2〜5については、キャリア芯材の炭素量として最低でも0.012重量%含有している。すなわち、コーティング樹脂やスペントが完全に除去しきれず、この残留した有機物成分の影響で抵抗値が高くなっていると考えられる。なお、比較例1、比較例6および比較例7については、炭素量がそれぞれ、0.004重量%、0.005重量%、0.004重量%であり、これらの炭素量のデータからも、有機物成分がほとんど残留していないと把握することができる。なお、比較例1、比較例6および比較例7については、上記したように酸素濃度が高い雰囲気下で熱処理を行っているため、磁化が低下し、キャリア付着および画像階調性の観点から、実使用状況において問題のあるレベルである。また、比較例8、9についても、炭素量が相当残存していることが把握できる。
【0162】
図6は、比較例8の場合のキャリア芯材15の外観を示す電子顕微鏡写真である。図7は、比較例9の場合のキャリア芯材16の外観を示す電子顕微鏡写真である。図6および図7、そして、図1および図4を再び参照すると、図6および図7に示すキャリア芯材の外観と、図1および図4に示すキャリア芯材の外観とは、その性状が大きく異なるものである。これは、図6および図7に示すキャリア芯材の場合、その表面に炭化した炭化物が多く残存していると考えられる。これは、上記したように、表1中の比較例8、9における炭素量のデータからも裏付けられるものである。
【0163】
なお、実施例8に示すMn−Mg−Fe系フェライトの場合も、参考例3に示すMn−Mg−Fe系フェライトの場合と同等の電気的特性および磁気的特性を示すことが把握できる。すなわち、このようなコア芯材の組成においても、キャリア芯材としての電気的特性および磁気的特性を落とさないようにすることができる。
【0164】
以上より、この発明に係る再生キャリアの製造方法、および再生キャリアは、電気的特性および磁気的特性を新規品と比較して落とすことなく、安価に製造することができる。
【0165】
なお、上記の実施の形態においては、不活性ガスとして、Nガスを用いることとしたが、これに限らず、他の不活性ガス、例えば、Ar(アルゴン)ガスやHe(ヘリウム)ガスを用いることとしてもよい。
【0166】
また、この発明に係る再生キャリアの製造方法においては、所定の期間使用された使用済みの現像剤を用いることとしたが、これに限らず、寿命に達せず、一度でも現像剤として使用されたものを用いることもできる。また、新規なキャリアを製造する際に、キャリア芯材への樹脂被覆工程において発生した不良品、具体的には、樹脂被覆工程において樹脂のコートが厚すぎたり、薄すぎたり、表面に均一に被覆できなかったり、コートのムラが生じたコーティングキャリアについても、同様の方法を用いて再生することができる。
【0167】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0168】
この発明に係る再生キャリアの製造方法、再生キャリア、再生キャリアのキャリア芯材、電子写真現像剤、および電子写真現像剤の製造方法は、エコロジーが要求される複写機等に適用される場合に、有効に利用される。
【符号の説明】
【0169】
11,13,15,16 キャリア芯材、12,14 キャリア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:MFe3−x(0≦x≦1、ただし、Mは、Mg、Mn、Ca、Ti、Cu、Zn、Sr、Niからなる群から選択される少なくとも一種の金属)で表されるコア組成をキャリア芯材の主成分とし、その表面に樹脂が被覆されたコーティングキャリア、およびトナーから構成される現像剤から、再び使用できるキャリアを再生する再生キャリアの製造方法であって、
前記現像剤からキャリア成分を分離する工程と、
不活性ガスの雰囲気下で、分離された前記キャリア成分を1000℃〜1250℃の温度範囲内で熱処理を行う熱処理工程と、
前記熱処理工程の後に、得られたキャリア芯材成分の表面に樹脂を被覆する樹脂被覆工程とを含む、再生キャリアの製造方法。
【請求項2】
前記熱処理工程は、酸素濃度を10000ppm以下とした不活性ガスの雰囲気下で、前記キャリア成分の熱処理を行う、請求項1に記載の再生キャリアの製造方法。
【請求項3】
前記不活性ガスは、Nガスを含む、請求項1または2に記載の再生キャリアの製造方法。
【請求項4】
前記現像剤は、電子写真現像剤として所定の期間使用された使用済みのものである、請求項1〜3のいずれかに記載の再生キャリアの製造方法。
【請求項5】
一般式:MFe3−x(0≦x≦1、ただし、Mは、Mg、Mn、Ca、Ti、Cu、Zn、Sr、Niからなる群から選択される少なくとも一種の金属)で表されるコア組成をキャリア芯材の主成分とし、その表面に樹脂が被覆されたコーティングキャリア、およびトナーから構成される現像剤から、再び使用できるよう再生された再生キャリアであって、
前記現像剤からキャリア成分を分離し、不活性ガスの雰囲気下で、分離された前記キャリア成分を1000℃〜1250℃の温度範囲内で熱処理を行い、熱処理後に、得られたキャリア芯材成分の表面に樹脂を被覆して製造される、再生キャリア。
【請求項6】
一般式:MFe3−x(0≦x≦1、ただし、Mは、Mg、Mn、Ca、Ti、Cu、Zn、Sr、Niからなる群から選択される少なくとも一種の金属)で表されるコア組成をキャリア芯材の主成分とし、その表面に樹脂が被覆されたコーティングキャリア、およびトナーから構成される現像剤から、再び使用できるよう再生された再生キャリアのキャリア芯材であって、
前記現像剤からキャリア成分を分離し、不活性ガスの雰囲気下で、分離された前記キャリア成分を1000℃〜1250℃の温度範囲内で熱処理を行って得られる、再生キャリアのキャリア芯材。
【請求項7】
請求項5に記載の再生キャリアと、トナーとを含む、電子写真現像剤。
【請求項8】
請求項5に記載の再生キャリアと、トナーとを所定の割合で混合させる工程を含む、電子写真現像剤の製造方法。


【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−53195(P2012−53195A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194601(P2010−194601)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(506334182)DOWAエレクトロニクス株式会社 (336)
【出願人】(000224802)DOWA IPクリエイション株式会社 (96)
【Fターム(参考)】