説明

再生サイクル型ガスタービンシステムおよび発電プラント

【課題】高効率化を実現し得るばかりでなく、再生熱交換器の小型化も実現し得る再生サイクル型ガスタービンシステムを提供する。
【解決手段】 タービン5からの排気ガスとタービン5に燃焼ガスを供給する燃焼器33に供給される圧縮空気との熱交換を行わせる再生熱交換器6と、排気ガスが流通する排気管路40における再生熱交換器6の上流側で排気管路40から分岐された分岐排気管路40Aと、圧縮空気が流通する空気管路41における再生熱交換器6の上流側で空気管路41から分岐された分岐空気管路41Aと、分岐排気管路40Aと分岐空気管路41Aとの交点に配設されるとともに、前記圧縮空気を駆動ガスとして前記排気ガスを吸い込み、両者の混合ガスを燃焼器33に向けて噴出するエゼクター42とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は再生サイクル型ガスタービンシステムおよび発電プラントに関し、特に高湿分空気を利用した再生サイクル型のガスタービンシステムに適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
タービンで仕事をした作動流体の排気ガスの熱を、燃焼器に供給する圧縮空気で回収して効率を向上させるためのガスタービンシステムとして再生サイクル型ガスタービンが知られている(例えば特許文献1参照)。この種の再生サイクル型ガスタービンは、タービンからの排気ガスと前記タービンに燃焼ガスを供給する燃焼器に供給される圧縮空気との熱交換を行わせる再生熱交換器を有している。
【0003】
かかる再生サイクル型ガスタービンの効率は、再生熱交換器における熱交換効率に依存する。すなわち、熱交換効率が高いほどタービン効率も向上する。
【0004】
近年、再生サイクル型ガスタービンの効率を向上させるための技術として高湿分空気を利用したものが提案されている。これは、圧縮手段で圧縮された空気を加湿する加湿手段を備えるとともに、前記加湿手段で加湿された空気を再生熱交換器においてタービンの排気ガスで加熱した後、燃焼器に供給する再生サイクルを構成しているガスタービンシステムである。このように高湿分空気を利用したガスタービンシステムにおいては、圧縮空気に加湿手段で水分を含ませて比熱の大きい高湿分の湿り空気として燃焼器に供給しているので、空気の質量流量が増大するとともに、比熱も大きくなる結果、圧縮動力を変えることなくタービンの出力を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−007111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の如き高湿分を利用した再生サイクル型ガスタービンシステムにおいても再生熱交換器における熱交換効率を向上させることにより、さらなる効率の向上を期待し得る。また、この種の再生サイクル型ガスタービンにおける再生熱交換器は充分な熱交換効率を確保するためには大型化を免れず、それ自体のコストの高騰を招来するだけでなく、大きな設置面積も必要となる。
【0007】
本発明は、上記従来技術に鑑み、高効率化を実現し得るばかりでなく、再生熱交換器の小型化も実現し得る再生サイクル型ガスタービンシステムおよび発電プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、
タービンからの排気ガスと前記タービンに燃焼ガスを供給する燃焼器に供給される圧縮空気との熱交換を行わせる再生熱交換器と、
前記排気ガスが流通する排気管路における前記再生熱交換器の上流側で前記排気管路から分岐された分岐排気管路と、
前記圧縮空気が流通する空気管路における前記再生熱交換器の上流側で前記空気管路から分岐された分岐空気管路と、
前記分岐排気管路と前記分岐空気管路との交点に配設されるとともに、前記圧縮空気を駆動ガスとして前記排気ガスを吸い込み、両者の混合ガスを前記燃焼器に向けて噴出するエゼクターとを有することを特徴とする再生サイクル型ガスタービンシステムにある。
【0009】
本態様によれば、燃焼器に供給される圧縮空気の一部が排気ガスと混合されるので、圧縮空気による排気ガスの熱回収を高効率で行うことができる。一方、再生熱交換器に供給される圧縮空気の圧力とタービンの排気ガスの圧力とが大きく異なることが両者を混合する際の障害となっていたが、かかる障害はエゼクターの使用により克服することができる。
【0010】
この結果、再生熱交換器における熱交換に伴う有効エネルギーの損失を低減して、全体の熱効率を向上させることができるばかりでなく、再生熱交換器の小型化も実現でき、据付面積の縮小に伴う効果とも相俟って当該ガスタービンシステムの製造コストの低減にも寄与させることができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、
第1の態様に記載する再生サイクル型ガスタービンシステムにおいて、
圧縮手段で圧縮された空気を加湿する加湿手段を備えるとともに前記加湿手段で加湿された圧縮空気をタービンの排気ガスで加熱した後、燃焼器に供給する再生サイクルを構成していることを特徴とする再生サイクル型ガスタービンシステムにある。
【0012】
本態様によれば、高湿分の空気を利用することで改善される効率の向上を併せて享受することができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、
第2の態様に記載する再生サイクル型ガスタービンシステムにおいて、
前記圧縮手段として吸気を加湿する加湿噴霧手段および該加湿噴霧手段で加湿された空気を圧縮する圧縮機を有していることを特徴とする再生サイクル型ガスタービンシステムにある。
【0014】
本態様によれば、加湿噴霧手段で加湿された空気を圧縮することによる圧縮動力の低減効果を得る。この結果、圧縮動力の低減により改善される効率の向上も併せて享受することができる。
【0015】
本発明の第4の態様は、
第2または第3の実施の形態に記載する再生サイクル型ガスタービンシステムにおいて、
再生可能エネルギーで駆動される他の圧縮手段と、該他の圧縮手段で圧縮した圧縮空気を貯蔵する圧縮空気貯蔵手段とを有するとともに、
前記圧縮空気貯蔵手段に貯蔵した前記圧縮空気を前記加湿手段の上流側で前記圧縮手段の下流側に供給するように構成したことを特徴とする再生サイクル型ガスタービンシステムにある。
【0016】
本態様によれば、さらに天候に左右されて不安定な供給となる点が問題となる再生可能エネルギーの前記問題点を解決するとともに、再生可能エネルギーを利用して得た圧縮空気を利用して高効率のタービン駆動を実現できる。
【0017】
本発明の第5の態様は、
第2または第3の態様に記載する再生サイクル型ガスタービンシステムにおいて、
前記圧縮手段で圧縮された圧縮空気が前記加湿手段の上流側の分岐点から供給されて貯蔵されるとともに、貯蔵された前記圧縮空気が前記分岐点の下流側で前記加湿手段の上流側の合流点に合流されるように構成された圧縮空気貯蔵手段を有することを特徴とする再生サイクル型ガスタービンシステムにある。
【0018】
本態様によれば、ガスタービンシステムが高湿分の湿り空気を利用する再生サイクルを構築しているガスタービンシステムと圧縮空気貯蔵手段とを組み合わせているので、ガスタービンシステムの加湿手段の上流側に圧縮空気貯蔵手段からの圧縮空気を供給することができる。この結果、例えば再生可能な自然エネルギーや夜間の余剰電力等を利用して圧縮して貯蔵しておいた圧縮空気を利用してガスタービンシステムの圧縮機を駆動させることなく任意の必要な時間帯に高効率で再生サイクル型ガスタービンシステムを駆動させることができる。ここで、前記ガスタービンシステムにおいては、圧縮手段で圧縮した空気を加湿手段で加湿すべく圧縮手段から一旦外部に取り出す配管が設けられており、加湿手段を通した後、燃焼器に圧縮空気を供給するような構成となっているので、圧縮手段と燃焼器との途中に圧縮空気貯蔵手段からの圧縮空気を良好に供給することができる。すなわち、ガスタービンシステムの大きな構造変化を伴うことなく圧縮空気貯蔵手段をガスタービンシステムと一体化させることが容易に可能となる。
【0019】
本発明の第6の態様は、
第5の態様に記載する再生サイクル型ガスタービンシステムにおいて、
前記圧縮手段から前記分岐点を介して供給される圧縮空気をさらに圧縮して前記圧縮空気貯蔵手段に貯蔵させるとともに、前記圧縮空気貯蔵手段から供給される圧縮空気でタービンが駆動され、その排気ガスが前記合流点に供給されるように構成した他のガスタービンシステムを有することを特徴とする再生サイクル型ガスタービンシステムにある。
【0020】
本態様によれば、圧縮空気貯蔵手段に貯蔵するための圧縮動力を他のガスタービンシステムに有効に回収させることができ、全体の効率向上に寄与させることができる。
【0021】
本発明の第7の態様は、
第1〜第6の態様の何れか一つに記載する再生サイクル型ガスタービンシステムを原動機とする発電機を備えたことを特徴とする発電プラントにある。
【0022】
本態様によれば、高効率の発電を行うことができる。また、再生熱交換器の小型化に伴う設置の際のコストを低減させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、再生熱交換器における熱交換に伴う有効エネルギーの損失を低減して、再生サイクル型ガスタービンシステムとしての全体の熱効率を向上させることができるばかりでなく、再生熱交換器の小型化も実現でき、据付面積を縮小できるという効果とも相俟って当該再生サイクル型ガスタービンシステムの製造コストの低減にも寄与させることができる。
【0024】
さらに、再生サイクル型ガスタービンシステムとして高湿分の湿り空気を利用するガスタービンシステムを適用することでさらに効率を向上させることができる。同時に、圧縮空気貯蔵システムとの相性が良好なものとなり、揚水発電システムの代替システムとしても有用なものとなる。特に圧縮空気貯蔵システムに貯蔵する圧縮空気の圧縮に再生可能エネルギーを利用したシステムと組み合わせることにより、再生可能エネルギーが天候に左右され、供給が不安定になるという問題も解決し得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る再生サイクル型ガスタービンシステムを示すブロック線図である。
【図2】図1におけるエゼクター部分を抽出してその構造を概念的に示す説明図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る再生サイクル型ガスタービンシステムを示すブロック線図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る再生サイクル型ガスタービンシステムを示すブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0027】
<第1の実施の形態>
図1は本発明の第1の実施の形態に係る再生サイクル型ガスタービンシステムを示すブロック線図である。同図に示すように、本形態に係る再生サイクル型ガスタービンシステムは、高湿分の空気を利用するもので、供給空気を圧縮する圧縮手段Iと、圧縮手段Iで圧縮された圧縮空気を増湿させる加湿手段IIおよび加湿手段IIで増湿させた圧縮空気をタービン5の排気ガスと熱交換させて昇温させる再生熱交換器6とを有している。ここで、本形態における圧縮手段Iは、吸気を加湿する加湿噴霧器1と、加湿された空気をタービン5の駆動により圧縮する圧縮機2とを有している。発電機36はタービン5を原動機として駆動されて電力を発生する。また、加湿手段IIは、圧縮機2で圧縮され、空気冷却器3で冷却された圧縮空気を増湿させる増湿器4を有している。かくして、再生熱交換器6で昇温された高温で高湿分の湿り空気とともに燃焼器33で燃料を燃焼させ、燃焼により生成される高温・高圧の燃焼ガスをタービン5に供給して膨張させることによりタービン5を駆動させて大きな出力を得る。すなわち、本形態に係る再生サイクル型ガスタービンシステムは、高湿分空気を利用した再生サイクル型ガスタービンシステムであるAHAT(Advanced Humid Air Gas Turbine)として構成されている。
【0028】
ここで、本形態では、タービン5からの排気ガスが流通する排気管路40における再生熱交換器6の上流側で排気管路40から分岐された分岐排気管路40Aと、圧縮空気が流通する空気管路41における再生熱交換器6の上流側で空気管路41から分岐された分岐空気管路41Aとを有している。そして、分岐排気管路40Aと分岐空気管路41Aとの交点にはエゼクター42が配設されており、このエゼクター42で排気ガスと圧縮空気とが混合される。この結果生成される混合ガスは混合ガス管路43を介して再生熱交換器6の下流側で空気管路41に接続されている。
【0029】
図2はエゼクター部分を抽出してその構造を概念的に示す説明図である。同図に示すように、エゼクター42は末広ノズル42Aを有しており、この末広ノズル42Aを介して高圧の駆動ガスを噴射させるようになっている。この結果、駆動ガスは低圧超音速となり
吸込ガスを吸込む。かくして駆動ガスと吸込ガスとがディフューザー42Bの前半部42Cで混合され、後半部42Dでは速度を減じて昇圧しつつ吐出口42Eに向かい、吐出ガスとして吐出される。本形態においては分岐空気管路41Aを介してエゼクター42に供給される圧縮空気が駆動ガスとなり、分岐排気管路40Aを介してエゼクター42に供給される排気ガスが吸込ガスとなる。したがって、両者はディフューザー42Bで混合されることにより熱交換される。すなわち、エゼクター42に供給された圧縮空気は、ディフューザー42Bで排気ガスから直接熱回収を行うので、その分熱回収効率が向上する。したがって、エゼクター42に供給する排気ガスの量が多いほど熱交換効率は向上すると考えられるが、両者の圧力および流量の差を考慮して分岐排気管路40Aに分岐させる排気ガスの量を決めることになる。ちなみに、圧縮空気は、例えば20気圧程度であるのに対し、排気ガスは通常大気圧程度である。
【0030】
図1に示すように、空気冷却器3で圧縮空気と熱交換した冷却水は、排気ガス再加熱器8およびエコノマイザ7で排気ガスと熱交換した水とともに増湿器4内に供給される。エコノマイザ7は再生熱交換器6の下流側で排気ガスの熱を回収している。一方、排気ガス再加熱器8はエコノマイザ7の下流側で排気ガスを加熱し、煙突9を介して外部に排出している。
【0031】
このときの熱回収効率を向上させるためには、ポンプ15で循環される増湿器4の出口における冷却水の温度を可及的に低下させることが肝要である。
【0032】
さらに、ガスタービンシステムは水回収システムIIIを有する。本形態における水回収システムIIIは、水回収器10と、水回収器10との間でポンプ11により循環される水を冷却する冷却器12とを有している。ここで、水回収器10からはポンプ13の駆動により加湿噴霧器1に対し冷却水を供給する。また、ポンプ14の駆動により空気冷却器3に供給されて圧縮空気と熱交換された冷却水を増湿器4に供給する。さらに、ポンプ15の駆動により排気ガス再加熱器8およびエコノマイザ7で排気ガスと熱交換された冷却水を増湿器4に供給する。
【0033】
かかる本形態においては、タービン5から排出される排気ガスの一部が分岐排気管路40Aを介して、また圧縮空気の一部が分岐空気管路41Aを介してエゼクター42で混合される。この結果、圧縮空気による排気ガスの熱回収を高効率で行うことができる。一方、エゼクター42において高圧の駆動ガスを圧縮空気とし、低圧の吸込ガスを排気ガスとすることで、圧縮空気の圧力(例えば、20気圧程度)と排気ガスの圧力(ほぼ大気圧)とが大きく異なっていても両者を良好に混合させ、混合ガスとして混合ガス管路43を介し、再生熱交換器6の上流側で空気管路41に合流させることができる。
【0034】
この結果、再生熱交換器6における熱交換に伴う有効エネルギーの損失を低減して、全体の熱効率を向上させることができる。同時に、再生熱交換器6の小型化も実現でき、据付面積を縮小できるという効果とも相俟って当該ガスタービンシステムの製造コストの低減にも寄与させることができる。
【0035】
さらに、本形態はAHATの再生サイクル型ガスタービンとして構成されている。すなわち、加湿噴霧器1で吸入空気を加湿して圧縮機2で圧縮させている。この結果、吸込空気は水分の蒸発潜熱で冷却されることとなり、圧縮動力を低減し得る。また、圧縮機2で圧縮された圧縮空気に増湿器4で水分を含ませている。この結果、燃焼器33に供給される圧縮空気が比熱が大きい高湿分の湿り空気となり、圧縮動力を変えることなくタービン5の出力を向上させることができる。
【0036】
したがって、エゼクター42の導入による効率の向上効果とAHATによる効率の向上効果とが相俟って顕著な効率改善効果を得ることができる。
【0037】
<第2の実施の形態>
図3は本発明の第2の実施の形態に係る再生サイクル型ガスタービンシステムを示すブロック線図である。なお、図3中、図1と同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。
【0038】
図3に示すように、本形態に係る再生サイクル型ガスタービンシステムは、AHATに圧縮空気貯蔵手段35を組み合わせたものである。圧縮空気貯蔵手段35は、タービン5に供給する圧縮空気を貯蔵するもので、例えば地中に大きな空間として形成されている。
【0039】
ここで、本形態における圧縮空気貯蔵手段35は、再生可能エネルギーを利用して圧縮した空気を貯蔵するように構成してある。具体的には、太陽電池30の電力で電動機32を駆動し、さらに電動機32の駆動により圧縮機31を駆動して空気を圧縮し、圧縮した空気を開閉弁37を介して圧縮空気貯蔵手段35に貯蔵するように構成してある。また、貯蔵している圧縮空気は、開閉弁38を介して空気冷却器3の上流側に供給し圧縮機2から空気冷却器3に供給される圧縮空気に合流させるように構成してある。
【0040】
本形態によれば、天候に左右される太陽光発電による電力を圧縮空気という異なる形態のエネルギーに変換して貯蔵しておき、必要に応じて貯蔵している圧縮空気を取り出すことにより再度電気エネルギーに変換することが可能となる。この結果、再生可能エネルギーを安定的に利用することができる。
【0041】
<第3の実施の形態>
図4は本発明の第3の実施の形態に係る再生サイクル型ガスタービンシステムを示すブロック線図である。なお、図4中、図1と同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。
【0042】
図4に示すように、本形態に係る再生サイクル型ガスタービンシステムは、AHATと他のガスタービンシステムIVおよび圧縮空気貯蔵手段35を組み合わせたものである。そこで、本形態に係る再生サイクル型ガスタービンシステムは、通常の発電運転モード(図4に示すモード)の他に圧縮空気貯蔵手段35に対して圧縮空気を貯蔵させる圧縮空気の貯蔵モードおよび圧縮空気貯蔵手段35に貯蔵した圧縮空気を利用して発電を行う発電モードの三種類の運転モードで運転される。このため、圧縮機2とタービン5との間には、クラッチ17,18を介して発電・電動機16が接続されている。発電・電動機16は、クラッチ17のみの接続時で圧縮機2を駆動する電動機として駆動され、クラッチ17の状態の如何にかかわらずクラッチ18の接続時に発電機として駆動される。
【0043】
圧縮空気貯蔵手段35の単位容積当たりに貯蔵される圧縮空気の量を増大させるためには貯蔵される圧縮空気の圧力を高圧にすることが肝要である。
【0044】
そこで、本形態では、圧縮機2で圧縮して所定の高圧にした圧縮空気をさらに高圧に圧縮して圧縮空気貯蔵手段35に貯蔵させるとともに、圧縮空気貯蔵手段35に貯蔵されている圧縮空気で燃料を燃焼させて動力を得るとともに、その排気ガスをタービン5に供給して二段燃焼させるための他のガスタービンシステムIVが設置されている。本形態における他のガスタービンシステムIVは、空気冷却器3の下流側から供給される圧縮空気をさらに圧縮する高圧側圧縮機19、二段燃焼させるための高圧側タービン20および高圧側タービン20の排気ガスの熱を回収するための高圧側再生熱交換器21を有する再生サイクル型のガスタービンシステムである。
【0045】
ここで、高圧側圧縮機19と高圧側タービン20との間には、クラッチ23,24を介して発電・電動機22が接続されている。発電・電動機22は、クラッチ23のみの接続時に高圧側圧縮機19を駆動する電動機として駆動され、クラッチ23の状態の如何にかかわらずクラッチ24の接続時(図4に示す状態)に発電機として駆動される。
【0046】
前述の如く、本形態に係る再生サイクル型ガスタービンシステムは、圧縮空気貯蔵手段35に対する圧縮空気の貯蔵モード、圧縮空気貯蔵手段35から圧縮空気を供給しての発電モード、通常の発電モードの三種類のモードで運転される。このため各モードを切替えるための五個の開閉弁25,26,27,28,29を有している。ここで、開閉弁25は空気冷却器3と増湿器4との間に配設され、以下開閉弁26は開閉弁25の上流側で空気冷却器3の下流側と高圧側圧縮機19の入口側との間、開閉弁27は開閉弁25の下流側で増湿器4の上流側と高圧側再生熱交換器21の出口側との間、開閉弁28は高圧側圧縮機19の出口側と圧縮空気貯蔵手段35との間、開閉弁29は圧縮空気貯蔵手段35と高圧側再生熱交換器21の入口側との間にそれぞれ配設されている。すなわち、本形態においては、圧縮機2で圧縮された圧縮空気が増湿器4の上流側の分岐点39から他のガスタービンシステムIVを介して圧縮空気貯蔵手段35に供給されて貯蔵される。一方、圧縮空気貯蔵手段35に貯蔵された圧縮空気が他のガスタービンシステムIVを介して分岐点39の下流側で増湿器4の上流側の合流点44に合流される。
【0047】
本形態に係る再生サイクル型ガスタービンシステムにおける通常の発電モードでは、図4に示すようにクラッチ17、18を接続して発電・電動機16を発電機として駆動させる。また、開閉弁25〜29の開閉モードは図4に示す通りの状態とする。すなわち、当該発電モードは他のガスタービンシステムIVおよび圧縮空気貯蔵手段35を切り離してAHATを単独運転させて発電する図1と同様の発電モードである。
【0048】
したがって、当該発電モードでは、第1の実施の形態における再生サイクル型ガスタービンシステムと全く同様の運転モードとなり、同様の作用・効果が発揮される。
【0049】
本形態に係る再生サイクル型ガスタービンシステムにおいて、圧縮空気貯蔵手段35に対する圧縮空気の貯蔵モードでは、クラッチ18を切り離し、クラッチ17を接続して発電・電動機16を電動機として駆動させるとともに、クラッチ24を切り離し、クラッチ23を接続して発電・電動機22を電動機として駆動させる。また、開閉弁25は閉、開閉弁26は開、開閉弁27は閉、開閉弁28は開、開閉弁29は閉とする。
【0050】
かかる貯蔵モードにおいて、発電・電動機16を電動機として駆動することにより供給空気を圧縮する。ここで供給空気には加湿噴霧器1により水分が噴霧される。この結果、供給空気は水分の蒸発潜熱で冷却されることとなり、圧縮動力を低下させることができる。
【0051】
加湿噴霧器1により水分が噴霧され圧縮機2で圧縮された圧縮空気は空気冷却器3で冷却され、開閉弁26を介して高圧側圧縮機19に至る。高圧側圧縮機19にはクラッチ23を介して発電・電動機22が連結されているので、電動機としての機能する発電・電動機22で高圧側圧縮機19が駆動される。この結果、供給された圧縮空気がさらに圧縮されて高圧となり開閉弁28を介して圧縮空気貯蔵手段35に貯蔵される。ここで、高圧側圧縮機19に供給される圧縮空気は空気冷却器3で冷却されているので、高圧側圧縮機19における圧縮動力低減を図ることができる。また、圧縮機2および高圧側圧縮機19の駆動電力としては夜間等の余剰電力を利用するのが望ましい。電力使用量の平準化を図り合理的な電力使用を実現することができるからである。
【0052】
本形態に係る再生サイクル型ガスタービンシステムにおける圧縮空気貯蔵手段35から供給される圧縮空気を利用した発電モードでは、クラッチ17を切り離し、クラッチ18を接続して発電・電動機16を発電機として駆動させるとともに、クラッチ23を切り離し、クラッチ24を接続して発電・電動機22を発電機として駆動させる。また、開閉弁25は閉、開閉弁26は閉、開閉弁27は開、開閉弁28は閉、開閉弁29は開とする。
【0053】
かかる発電モードにおいて、圧縮空気貯蔵手段35から供給される圧縮空気は開閉弁29および高圧側再生熱交換器21を介して燃焼器34で燃料と混合される。このことにより燃料が燃焼され高温・高圧の燃焼ガスとなって高圧側タービン20に供給される結果、高圧側タービン20が駆動され、クラッチ24を介して接続されている発電・電動機22が駆動されて発電が行われる。かくして高圧側圧縮機19で要した圧縮動力が電気エネルギーとして回収される。一方、高圧側タービン20の排気ガスは高圧側再生熱交換器21で燃焼器34に供給される圧縮空気と熱交換される結果、圧縮空気を加熱する。すなわち、排気ガスの熱エネルギーが燃焼器34に供給される圧縮空気に回収される。したがって、これによってもシステム効率を向上させることができる。
【0054】
高圧側再生熱交換器21から排出された排気ガスは、開閉弁27を介して増湿器4に供給され、以降は通常の発電モードと全く同様に、増湿されることにより高湿度の湿り空気として再生熱交換器6およびエゼクター42でタービン5から排出される排気ガスの熱を回収して燃焼器33に供給されることにより二段燃焼される。
【0055】
<他の実施の形態>
上述の如く本発明の第1〜第3の実施の形態を説明したが、本発明は、勿論第1〜第3の実施の形態に限定されるものではない。例えば次のような他の実施の形態が考えられる。
【0056】
1) 第1〜第3の実施の形態における再生サイクル型ガスタービンシステムはAHATとして説明したが、これに限るものではない。再生熱交換器6を有する再生サイクルを構成しているガスタービンシステムであれば、例外なく適用し得る。ただ、AHATを適用した場合には、高湿分の湿り空気を利用してそれ自体で高効率のガスタービンシステムとすることができる。また、高湿分の湿り空気を利用するガスタービンシステムをAHATに限定するものでもない。例えば、圧縮手段Iとして低圧圧縮機、該低圧圧縮機で圧縮された空気を冷却する中間冷却器および該中間冷却器で冷却された空気をさらに圧縮する高圧圧縮機を有するとともに、前記圧縮手段で圧縮された空気を加湿する加湿手段を有する高湿分空気を利用した再生サイクル型ガスタービンシステムであるHAT(Humid Air Gas Turbine)でも構わない。
【0057】
2) 第2の実施の形態において再生可能エネルギーとしては太陽光を利用した太陽電池30により電動機32を駆動して圧縮機31で空気を圧縮する場合を示したが、勿論太陽電池30に限るものではない。風力、波力、潮汐、地熱等、全ての再生可能エネルギーを対象とすることができる。中でも天候に影響されて供給が特に不安定となる風力、波力のエネルギーを圧縮空気として蓄積する場合に顕著な効果が得られる。また、再生可能エネルギーを利用すれば良く、必ずしも電気エネルギーに変換する必要はない。例えば風力エネルギーを利用した風車により直接圧縮機を駆動させるシステムであっても構わない。
【0058】
3) 第3の実施の形態において、他のガスタービンシステムIVは必ずしも必要ではない。再生サイクルを構成して加湿空気を燃焼器33に供給するように再生サイクル型ガスタービンシステムを構成しているので、圧縮空気貯蔵手段35に貯蔵される空気の圧力をより高圧にできない場合でも、また圧縮空気貯蔵手段35から供給される空気を直接再生サイクル型ガスタービンシステムに供給した場合でも、流量質量と比熱が大きい空気を燃焼器33に供給することができるので、従来に比べ、充分効率を向上させることは可能になる。ただ、他のガスタービンシステムIVを設けた場合、再生サイクル型ガスタービンシステムで圧縮した空気をさらに高圧に圧縮して体積を縮小させることができるので、その分多くの圧縮空気を圧縮空気貯蔵手段35に貯蔵させることができる。
【0059】
4) 第3の実施の形態において、他のガスタービンシステムIVは再生サイクル型のガスタービンシステムで構成したが、これに限るものではない。再生サイクル型ガスタービンシステムで圧縮した空気をさらに圧縮する際の圧縮動力を回収し得るよう圧縮機のみならず、圧縮空気貯蔵手段35から再生サイクル型ガスタービンシステムに供給される圧縮空気でタービン発電機を駆動させるガスタービンシステムであれば、その形式に制限はない。すなわち、AHATやHATのみならず、圧縮機、燃焼器およびタービンを有するものであれば通常のガスタービンシステムであっても良い。ただ、他のガスタービンシステムIVを再生サイクル型のガスタービンシステム,AHAT,HAT等で形成した場合の方が効率はより良好なものとなる。
【0060】
5) 第3の実施の形態において、圧縮空気貯蔵手段35に圧縮空気を貯蔵するための圧縮手段として第2の実施の形態で示した再生可能エネルギーを利用したシステムと組み合わせることもできる。すなわち、図3に示すように、太陽電池30の電力で電動機32を駆動し、さらに電動機32の駆動により圧縮機31を駆動して空気を圧縮し、圧縮した空気を開閉弁37を介して圧縮空気貯蔵手段35に貯蔵するシステムを、図4に示す第3の実施の形態に追加してもよい。
【0061】
ここで、上記2)で述べた第2の実施の形態の変形例に関する記載は、この場合にも、もちろん当てはまる。すなわち、再生可能エネルギーとしては太陽エネルギーのみならず、風力、波力、潮汐、地熱等、全ての再生可能エネルギーを対象とすることができる。また、再生可能エネルギーを利用すれば良く、必ずしも電気エネルギーに変換する必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は余剰電力や自然エネルギーの貯蔵を行う必要がある産業分野において有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
I 圧縮手段
II 加湿手段
III 水回収システム
IV 他のガスタービンシステム
1 加湿噴霧器
2 圧縮機
3 空気冷却器
4 増湿器
5 タービン
6 再生熱交換器
35 圧縮空気貯蔵手段
40 排気管路
40A 分岐排気管路
41 空気管路
41A 分岐空気管路
42 エゼクター


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンからの排気ガスと前記タービンに燃焼ガスを供給する燃焼器に供給される圧縮空気との熱交換を行わせる再生熱交換器と、
前記排気ガスが流通する排気管路における前記再生熱交換器の上流側で前記排気管路から分岐された分岐排気管路と、
前記圧縮空気が流通する空気管路における前記再生熱交換器の上流側で前記空気管路から分岐された分岐空気管路と、
前記分岐排気管路と前記分岐空気管路との交点に配設されるとともに、前記圧縮空気を駆動ガスとして前記排気ガスを吸い込み、両者の混合ガスを前記燃焼器に向けて噴出するエゼクターとを有することを特徴とする再生サイクル型ガスタービンシステム。
【請求項2】
請求項1に記載する再生サイクル型ガスタービンシステムにおいて、
圧縮手段で圧縮された空気を加湿する加湿手段を備えるとともに前記加湿手段で加湿された圧縮空気をタービンの排気ガスで加熱した後、燃焼器に供給する再生サイクルを構成していることを特徴とする再生サイクル型ガスタービンシステム。
【請求項3】
請求項2に記載する再生サイクル型ガスタービンシステムにおいて、
前記圧縮手段として吸気を加湿する加湿噴霧手段および該加湿噴霧手段で加湿された空気を圧縮する圧縮機を有していることを特徴とする再生サイクル型ガスタービンシステム。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載する再生サイクル型ガスタービンシステムにおいて、
再生可能エネルギーで駆動される他の圧縮手段と、該他の圧縮手段で圧縮した圧縮空気を貯蔵する圧縮空気貯蔵手段とを有するとともに、
前記圧縮空気貯蔵手段に貯蔵した前記圧縮空気を前記加湿手段の上流側で前記圧縮手段の下流側に供給するように構成したことを特徴とする再生サイクル型ガスタービンシステム。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載する再生サイクル型ガスタービンシステムにおいて、
前記圧縮手段で圧縮された圧縮空気が前記加湿手段の上流側の分岐点から供給されて貯蔵されるとともに、貯蔵された前記圧縮空気が前記分岐点の下流側で前記加湿手段の上流側の合流点に合流されるように構成された圧縮空気貯蔵手段を有することを特徴とする再生サイクル型ガスタービンシステム。
【請求項6】
請求項5に記載する再生サイクル型ガスタービンシステムにおいて、
前記圧縮手段から前記分岐点を介して供給される圧縮空気をさらに圧縮して前記圧縮空気貯蔵手段に貯蔵させるとともに、前記圧縮空気貯蔵手段から供給される圧縮空気でタービンが駆動され、その排気ガスが前記合流点に供給されるように構成した他のガスタービンシステムを有することを特徴とする再生サイクル型ガスタービンシステム。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか一つに記載する再生サイクル型ガスタービンシステムを原動機とする発電機を備えたことを特徴とする発電プラント。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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