説明

再生ポリエステルの製造方法およびそれを用いた成形体

【課題】回収ポリエステルを用いて従来の技術では得られなかった高IVで高性能なポリエステルを含有する成型物を、作業環境の悪化などを引き起こすことなく、安価で安定に製造しようとするものである。
【解決手段】回収ポリエステルにカルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状カルボジイミド化合物を添加し、溶融混錬をおこなう再生ポリエステルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のカルボジイミド化合物を添加して容易に溶融混練で、極限粘度(以下IVと略称する)の高い再生ポリエステルを作成し、該再生ポリエステルを用いて機械的性能や耐久性に優れた成型物を得るものである。
【背景技術】
【0002】
現在、使用済みのPETボトルを回収してポリエステルの繊維やフィルム,シート,成型物などに再利用されている事は周知の通りである。
一般に再生ポリエステル含有成型物を得る方法としては、回収PETボトルを粉砕−洗浄−乾燥してフレークを得たあと、押出機で溶融混練とフィルター濾過を行ってペレット化し、次いで得られたペレットをそのまま又は他のペレットや繊維屑,木屑などを混合して再度押出機で溶融して成形する方法が用いられている。しかし、この方法では溶融混練を2回繰り返す為IVの低下が激しく、成形が困難になったり、あるいは低IVで架橋がない為高強度で耐久性に優れた再生ポリエステル含有成型物が得られない問題があった。一方、再生ポリエステルペレットを真空下又は窒素下で熱処理し固相で重合する事も公知であるが、これは大きな装置と長い時間を要し高価なものになると同時に架橋がない為に耐久性に劣る欠点を有していた。
【0003】
そこで、特許文献1(特開2002−293981号公報)では、カルボキシル基,ジカルボニル基,イミド基,アミド基のいずれかを有する2官能以上の化合物を再生ポリエステルに添加し、溶融混練時に架橋反応を起こさせて高いIVのポリエステルを作成することが提案されている。この提案において用いられているカルボジイミド化合物は、線状のカルボジイミド化合物で、線状カルボジイミド化合物を高分子化合物の末端封止剤として用いると、線状カルボジイミド化合物がポリエステルの末端に結合する反応に伴いイソシアネート基を有する化合物が遊離し、イソシアネート化合物の独特の臭いを発生し、作業環境を悪化させることが問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−293981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、回収ポリエステル(回収されたポリエステル製品やフィルムに製膜する際に生じるエッジ部分など製品にならずに回収されたポリエステル)を用いて従来の技術では得られなかった高IVで高性能なポリエステルを含有する成型物を、作業環境の悪化などを引き起こすことなく、安価で安定に製造しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するためにポリエステルの末端に反応しても、イソシアネート化合物を遊離しない構造のカルボジイミド化合物について、鋭意検討した。
その結果、環状構造の中にカルボジイミド基を有する化合物は、ポリエステルの末端に反応してもイソシアネート化合物を遊離しないことを見出し、本発明を完成した。
【0007】
かくして本発明によれば、回収ポリエステルにカルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状カルボジイミド化合物を添加し、溶融混錬をおこなうことを特徴とする再生ポリエステルの製造方法が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、本発明の好ましい態様として、環状カルボジイミド化合物が、環状構造を形成する原子数が8〜50で、下記式(1)で表される化合物であること、
【化1】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。)、環状カルボジイミド化合物を回収ポリエステルに対して0.05〜10質量部添加することの少なくともいずれかを具備する再生ポリエステルの製造方法も提供される。
さらにまた、本発明によれば、上記本発明の製造方法得られた再生ポリエステルからなる成形体も提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、イソシアネート化合物を遊離させず、カルボジイミド化合物により、ポリエステルの末端を連結することができる。その結果、イソシアネート化合物による悪臭の発生を抑制することができ回収ポリエステルを用いて従来の技術では得られなかった高IVで高性能なポリエステルを含有する成型物を、作業環境の悪化などを引き起こすことなく、安価で安定に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に言う回収ポリエステルとは、例えば繊維やフィルムやボトルなどの成形品を製造する際に、全てのポリエステルが成形品になれば良いが、フィルムの場合は幅方向の両端を把持して幅方向に延伸するため、中央部と両端部は厚みが異なり、厚い両端部は切り落とされて成形品とならないものが発生する。また、繊維の場合も同様で成形加工、すなわち溶融紡糸の途中などで断糸が発生し、製品としては十分な糸長がないものができてしまう。また飲料用や食品用に使われたPETボトルを回収することは一般的である。それらを本発明では回収ポリエステルといい、回収ポリエステルを粉砕し再溶融を行いしペレットしたもの又は単に粉砕−洗浄−乾燥したポリエステルフレークを再生ポリエステルとする。
【0011】
本発明に言う再生ポリエステルとは芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、脂肪族グリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルであることが好ましい。かかるポリエステルは実質的に線状であり、そしてフィルム形成性、特に溶融成形によるフィルム形成性を有する。芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸,ナフタレンジカルボン酸,イソフタル酸,ジフェニルケトンジカルボン酸,アンスラセンジカルボン酸等を挙げることができる。脂肪族グリコールとしては、例えばエチレングリコール,トリメチレングリコール,テトラメチレングリコール,ペンタメチレングリコール,ヘキサメチレングリコール,デカメチレングリコール等の如き炭素数2〜10のポリメチレングリコールあるいはシクロヘキサンジメタノールの如き脂肪族ジオール等を挙げることができる。
【0012】
これらの中でも、本発明においては、アルキレンテレフタレートやアルキレンナフタレートを主たる構成成分とするものが好ましく、特にポリエチレンテレフタレート,ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートをはじめとして、例えば全ジカルボン酸成分の80モル%以上がテレフタル酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、全グリコール成分の80モル%以上がエチレングリコールであるホモポリマーや共重合体が好ましい。
【0013】
エチレンテレフタレートやエチレンナフタレンジカルボキシレートが主たる繰り返し単位であるポリエステルの場合、表面平坦性、乾熱劣化性を損なわない程度であれば、全酸成分の20モル%以下はテレフタル酸及びまたは2,6−ナフタレンジカルボン酸以外の上記、芳香族ジカルボン酸であることができ、また、例えばアジピン酸,セバチン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸,シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸等であることができる。また、全グリコール成分の20モル%以下はエチレングリコール以外の上記、グリコールであることができ、例えばハイドロキノン,レゾルシン,2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の如き芳香族族ジオール,1,4−ビスヒドロキシメチルベンゼンの如き芳香環を有する脂肪族ジオール,ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,ポリテトラメチレングリコール等の如きポリアルキレングリコール(ポリオキシアルキレングリコール)等であることもできる。また、本発明におけるポリエステルには本発明の効果を損なわないかぎり、例えばヒドロキシ安息香酸の如き芳香族オキシ酸,ω−ヒドロキシカプロン酸の如き脂肪族オキシ酸等のオキシカルボン酸に由来する成分を、ジカルボン酸成分及びオキシカルボン酸成分の総量に対し20モル%以下で共重合あるいは結合するものも包含される。
【0014】
さらに本発明におけるポリエステルには実質的に線状である範囲の量であり、かつ、本発明の効果を損なわないかぎり、例えば全酸成分に対し2モル%以下の量で、3官能以上のポリカルボン酸又はポリヒドロキシ化合物、例えばトリメリット酸,ペンタエルスリトール等を共重合したものも包含される。
【0015】
さらに本発明におけるポリエステルには、本発明の効果を損なわない範囲であれば、例えば滑剤,顔料,染料,酸化防止剤,光安定剤,遮光剤(例えばカーボンブラック,酸化チタン等)の如き添加剤を必要に応じて含有させることもできる。
【0016】
<環状構造>
本発明において、カルボジイミド化合物は環状構造を有する(以下、本カルボジイミド化合物を環状カルボジイミド化合物と略記することがある。)。環状カルボジイミド化合物は、環状構造を複数有していてもよい。
【0017】
環状構造は、カルボジイミド基(−N=C=N−)を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている。一つの環状構造中には、1個のカルボジイミド基のみを有するが、例えば、スピロ環など、分子中に複数の環状構造を有する場合にはスピロ原子に結合するそれぞれの環状構造中に1個のカルボジイミド基を有していれば、化合物として複数のカルボジイミド基を有していてよいことはいうまでもない。環状構造中の原子数は、好ましくは8〜50、より好ましくは10〜30、さらに好ましくは10〜20、特に、10〜15が好ましい。
【0018】
ここで、環状構造中の原子数とは、環状構造を直接構成する原子の数を意味し、例えば、8員環であれば8、50員環であれば50である。環状構造中の原子数が8より小さいと、環状カルボジイミド化合物の安定性が低下して、保管、使用が困難となる場合があるためである。また反応性の観点よりは環員数の上限値に関しては特別の制限はないが、50を超える原子数の環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より環状構造中の原子数は好ましくは、10〜30、より好ましくは10〜20、特に好ましくは10〜15の範囲が選択される。
【0019】
環状構造は、下記式(1)で表される構造であることが好ましい。
【化2】

【0020】
式中、Qは、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基である。ヘテロ原子とはこの場合、O、N、S、Pを指す。この結合基の価のうち2つの価は環状構造を形成するために使用される。Qが3価あるいは4価の結合基である場合、単結合、二重結合、原子、原子団を介して、ポリマーあるいは他の環状構造と結合している。
【0021】
結合基は、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基またはこれらの組み合わせであり、上記で規定される環状構造を形成するための必要炭素数を有する結合基が選択される。組み合わせの例としては、アルキレン基とアリーレン基が結合した、アルキレン−アリーレン基のような構造などが挙げられる。
結合基(Q)は、下記式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される2〜4価の結合基であることが好ましい。
【0022】
【化3】

【0023】
式中、ArおよびArは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基である。
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基(2価)として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0024】
およびRは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、およびこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせである。
【0025】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0026】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0027】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これら芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0028】
上記式(1−1)、(1−2)においてXおよびXは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
【0029】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0030】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0031】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0032】
上記式(1−1)、(1−2)においてs、kは0〜10の整数、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0〜1の整数である。s及びkが10を超えると、環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より整数は好ましくは0〜3の範囲が選択される。なお、sまたはkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX、あるいはXが、他のX、あるいはXと異なっていてもよい。
【0033】
上記式(1−3)においてXは、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
【0034】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂肪族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0035】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂環族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリーレン基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0036】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0037】
また、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXはヘテロ原子を含有していてもよい、また、Qが2価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
【0038】
本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として、以下(a)〜(c)で表される化合物が挙げられる。
【0039】
<環状カルボジイミド化合物(a)>
本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として下記式(2)で表される化合物(以下、「環状カルボジイミド化合物(a)」ということがある。)を挙げることができる。
【0040】
【化4】

【0041】
式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(2)の化合物においては、脂肪族基、脂環族基、芳香族基は全て2価である。Qは、下記式(2−1)、(2−2)または(2−3)で表される2価の結合基であることが好ましい。
【0042】
【化5】

【0043】
式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)中のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、これらは全て2価である。
かかる環状カルボジイミド化合物(a)としては、以下の化合物が挙げられる。
【0044】
【化6】

【0045】
【化7】

【0046】
【化8】

【0047】
【化9】

【0048】
【化10】

【0049】
【化11】

【0050】
【化12】

【0051】
【化13】

【0052】
【化14】

【0053】
【化15】

【0054】
【化16】

【0055】
【化17】

【0056】
【化18】

【0057】
【化19】

【0058】
<環状カルボジイミド化合物(b)>
さらに、本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として下記式(3)で表される化合物(以下、「環状カルボジイミド化合物(b)」ということがある。)を挙げることができる。
【0059】
【化20】

【0060】
式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基、またはこれらの組み合わせである3価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。Yは、環状構造を担持する担体である。脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(3)の化合物においては、Qを構成する基の内一つは3価である。
は、下記式(3−1)、(3−2)または(3−3)で表される3価の結合基であることが好ましい。
【0061】
【化21】

【0062】
式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但しこれらの内の一つは3価の基である。
Yは、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーであることが好ましい。Yは結合部であり、複数の環状構造がYを介して結合し、式(3)で表される構造を形成している。
かかる環状カルボジイミド化合物(b)としては、下記化合物が挙げられる。
【0063】
【化22】

【0064】
【化23】

【0065】
【化24】

【0066】
【化25】

【0067】
<環状カルボジイミド化合物(c)>
本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として下記式(4)で表される化合物(以下、「環状カルボジイミド化合物(c)」ということがある。)を挙げることができる。
【0068】
【化26】

【0069】
式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである4価の結合基であり、ヘテロ原子を保有していてもよい。ZおよびZは、環状構造を担持する担体である。ZおよびZは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(4)の化合物において、Qは4価である。従って、これらの基の内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
は、下記式(4−1)、(4−2)または(4−3)で表される4価の結合基であることが好ましい。
【0070】
【化27】

【0071】
Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)の、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。ZおよびZは各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーであることが好ましい。ZおよびZは結合部であり、複数の環状構造がZおよびZを介して結合し、式(4)で表される構造を形成している。
かかる環状カルボジイミド化合物(c)としては、下記化合物を挙げることができる。
【0072】
【化28】

【0073】
【化29】

【0074】
【化30】

【0075】
本発明では、これらの環状カルボジイミド化合物の1種又は2種以上を用いて回収ポリエステルに添加混合して、該ポリエステルの溶融押出時に反応させ、再生ポリエステルを製造する。なお通常の押出温度と時間は270〜300℃×0.5〜5分である。該化合物の添加量は0.05〜10重量%が好ましく、0.05重量%未満では、目的の架橋反応が十分進まず、IV増大効果が減少して高強度で耐久性に優れたポリエステル含有成型物を得る事が難しくなる。一方10重量%を超えると、架橋反応が激しくなりIVが増大(ゲル化)しすぎて押出機からポリマーが出なくなったり、成形ノズルからの吐出が困難になる。好ましい添加量は0.1〜5重量%である。更に好ましくは添加量は0.2〜2重量%である。
【0076】
<環状カルボジイミド化合物の製造方法>
本発明の環状カルボジイミド化合物の製造方法は特に限定無く、従来公知の方法により製造することができる。例として、アミン体からイソシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からイソチオシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からトリフェニルホスフィン体を経由して製造する方法、アミン体から尿素体を経由して製造する方法、アミン体からチオ尿素体を経由して製造する方法、カルボン酸体からイソシアネート体を経由して製造する方法、ラクタム体を誘導して製造する方法などが挙げられる。
【0077】
また、本発明の環状カルボジイミド化合物は、以下の文献に記載された方法により製造することができる。
Tetrahedron Letters,Vol.34,No.32,515−5158,1993.
Medium−and Large−Membered Rings from Bis(iminophosphoranes):An Efficient Preparation of Cyclic Carbodiimides, Pedro Molina etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.61,No.13,4289−4299,1996.
New Models for the Study of the Racemization Mechanism of Carbodiimides.Synthesis and Structure(X−ray Crystallography and 1H NMR) of Cyclic Carbodiimides, Pedro Molina etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.43,No8,1944−1946,1978.
Macrocyclic Ureas as Masked Isocyanates, Henri Ulrich etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.48,No.10,1694−1700,1983.
Synthesis and Reactions of Cyclic Carbodiimides,
R.Richteretal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.59,No.24,7306−7315,1994.
A New and Efficient Preparation of Cyclic Carbodiimides from Bis(iminophosphoranea)and the System BocO/DMAP,Pedro Molina etal.
【0078】
製造する化合物に応じて、適切な製法を採用すればよいが、例えば、(1)下記式(a−1)で表されるニトロフェノール類、下記式(a−2)で表されるニトロフェノール類および下記式(b)で表される化合物を反応させ、下記式(c)で表されるニトロ体を得る工程、
【化31】

【化32】

(2)得られたニトロ体を還元して下記式(d)で表わされるアミン体を得る工程、
【化33】

(3)得られたアミン体とトリフェニルホスフィンジブロミドを反応させ下記式(e)で表されるトリフェニルホスフィン体を得る工程、および
【化34】

(4)得られたトリフェニルホスフィン体を反応系中でイソシアネート化した後、直接脱炭酸させることによって製造したものは、本願発明に用いる環状カルボジイミド化合物として好適に用いることができる。
(上記式中、ArおよびArは各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基で置換されていてもよい芳香族基である。EおよびEは各々独立に、ハロゲン原子、トルエンスルホニルオキシ基およびメタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−ブロモベンゼンスルホニルオキシ基からなる群から選ばれる基である。Arは、フェニル基である。Xは、下記式(i−1)から(i−3)の結合基である。)
【0079】
【化35】

【0080】
【化36】

【0081】
【化37】

【0082】
なお、環状カルボジイミド化合物は、高分子化合物の酸性基を有効に封止することができるが、本発明の主旨に反しない範囲において、所望により、例えば、従来公知のポリマーのカルボキシル基封止剤を併用することができる。かかる従来公知のカルボキシル基封止剤としては、特開2005−2174号公報記載の剤、例えば、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、などが例示される。
【0083】
本発明では回収ポリエステルに上記環状カルボジイミド化合物を含有させる際、回収ポリエステルがペレットのときは予備乾燥または予備結晶化することが好ましい。ペレットの水分を予め除去することで、その後の混練溶融押出しを行った際のIV低下を抑制でき、かつ、ペレットの滑りがなく安定した押出しが可能となる。またペレットと上記環状カルボジイミド化合物については事前に十分混合することが好ましく、そのような混合をより均一にする観点から、ペレットの粒径や嵩密度と上記環状カルボジイミド化合物の粒径や嵩密度とは同様であることが好ましい。混練溶融押出しを行う装置は減圧脱気機能を有するものが望ましい。ポリマー混練溶融中に脱気することで、系内に発生する水分や分解ガスを除去することでIV劣化をより抑制出来る。例えば、回収ポリエステルが溶融状態であり、上記環状カルボジイミド化合物を直接含有させ成形する場合、装置が混練押出し機であれば混練部分の手前で上記環状カルボジイミド化合物を添加し、十分な分散を図ることが好ましい。また添加に際しては、例えばロスインウェイト方式の自動連続式計量装置等を用い、溶融した回収ポリエステルに適量を安定的に添加することが好ましい。
【0084】
本発明では、前述の如く回収ポリエステルに該化合物を添加混合しそのまま成形するか、あるいは一度再生ポリエステルペレットにした後成形しても何ら支障はない。なお、同時に他のポリエステルや他種ポリマーあるいは繊維屑,製品屑,木屑更には顔料,紫外線防止剤,タルク,酸化カルシュウム,セラミックス,耐衝撃向上剤などの機能性向上剤を添加混合して溶融成形する事も可能である。
該架橋された再生ポリエステルペレットのIV値は、0.50〜0.95好ましくは0.60〜0.85であり、架橋と高IV値により高強度で耐久性に優れた再生ポリエステル含有成型物を得る。
【0085】
本発明の特徴は、従来の再生ポリエステルペレットを製造する工程で容易に架橋反応を進め高いIV値得るものであり、最終的に該再生ポリエステルを用いてコスト/性能に優れた成型物を得るものである。
【0086】
本発明で得られた再生ポリエステル含有成型物は、従来の再生成型物に比べて強度が高く、耐加水分解性、耐衝撃性や耐摩耗性あるいは耐熱老化性が良いなど機械的性能や耐久性に優れたものとなり、容器類,板類,擬木,シート類,フィルム類,ケース・パック類など日用雑貨からインテリア,産業資材,土木建築資材まで幅広い用途に使用可能となる。
【0087】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はその主旨を超えない限りこれらの例に何ら制約されるものではない。本実施例に記載される成型品の物性は以下の方法により測定されたものである。
【実施例】
【0088】
1)極限粘度(IV)
重量比が6:4のフェノール:トリクロロエタン混合溶媒に試料を溶解して、35℃の
温度にて測定した。単位は[dl/g]で示す。
【0089】
2)ゲル化率
再生ポリエステルをフリーザーミルを用いて凍結粉砕を行った。粉砕したペレットを100℃40分間真空乾燥を行い、1g(a)を精秤して、空気中で300℃×2.5時間熱処理を行った。該処理ペレットをオルトジクロロフェノール50mlに溶解し、ガラスフィルター(目開き:G3、重量:b)で濾過した後、ジクロロメタンで洗浄し、真空乾燥を行う。そして、真空乾燥後のフィルター上に通過できなかったゲルを有するガラスフィルターの重量(b)を秤量し、[(b−b)/a]×100により求めた値(重量%)を、ゲル化率とした。
【0090】
3)臭気評価
ポリマーを30g採取しガラス製試験管に入れ、300℃にて15分間保持し、溶融したとき官能評価により、測定者がイソシアネート臭を感じるかどうかで判定した。イソシアネート臭を感じないとき合格と判断した。
【0091】
4)耐加水分解性
フィルムの縦方向に100mm長、横方向に10mm幅に切り出した短冊状の試料を、温度85℃、湿度85%RHに設定した環境試験機内に3000時間放置した。その後試料を取り出し、試料の縦方向の破断伸度を5回測定し平均値を求めた。その平均値を放置前の破断伸度の測定値で割った値を破断伸度保持率(%)とし、下記基準にて耐加水分解性を評価した。なお、耐加水分解性は破断伸度保持率の高いものが良好である。
破断伸度保持率(%)
=(処理時間3000時間後の破断伸度)/(処理前の破断伸度)×100
○:破断伸度保持率が50以上
△:破断伸度保持率が30以上50%未満
×:保破断伸度持率が30%未満
【0092】
[参考例1]環状カルボジイミド化合物(1)の製造:
o−ニトロフェノール(0.11mol)と1,2−ジブロモエタン(0.05mol)、炭酸カリウム(0.33mol)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)200mlを攪拌装置及び加熱装置を設置した反応装置にN雰囲気下仕込み、130℃で12時間反応後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン200mlに溶かし、水100mlで3回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、ジクロロメタンを減圧により除去し、中間生成物A(ニトロ体)を得た。
【0093】
次に中間生成物A(0.1mol)と5%パラジウムカーボン(Pd/C)(1g)、エタノール/ジクロロメタン(70/30)200mlを、攪拌装置を設置した反応装置に仕込み、水素置換を5回行い、25℃で水素を常に供給した状態で反応させ、水素の減少がなくなったら反応を終了する。Pd/Cを回収し、混合溶媒を除去すると中間生成物B(アミン体)が得られた。
【0094】
次に攪拌装置及び加熱装置、滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、トリフェニルホスフィンジブロミド(0.11mol)と1,2−ジクロロエタン150mlを仕込み攪拌させる。そこに中間生成物B(0.05mol)とトリエチルアミン(0.25mol)を1,2−ジクロロエタン50mlに溶かした溶液を25℃で徐々に滴下する。滴下終了後、70℃で5時間反応させる。その後、反応溶液をろ過し、ろ液を水100mlで5回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、1,2−ジクロロエタンを減圧により除去し、中間生成物C(トリフェニルホスフィン体)が得られた。
【0095】
次に、攪拌装置及び滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、ジ−tert-ブチルジカーボネート(0.11mol)とN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(0.055mol)、ジクロロメタン150mlを仕込み攪拌させた。そこに、25℃で中間生成物C(0.05mol)を溶かしたジクロロメタン100mlをゆっくりと滴下させた。滴下後、12時間反応させる。その後、ジクロロメタンを除去し得られた固形物を精製することで、下記構造式にて示される環状カルボジイミド化合物(MW=252)を得た。この構造はNMR,IRにより確認した。
【0096】
【化38】

【0097】
[参考例2]環状カルボジイミド化合物(2)の製造:
o−ニトロフェノール(0.11mol)とペンタエリトリチルテトラブロミド(0.025mol)、炭酸カリウム(0.33mol)、N,N−ジメチルホルムアミド200mlを攪拌装置及び加熱装置を設置した反応装置にN雰囲気下仕込み、130℃で12時間反応後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン200mlに溶かし、水100mlで3回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、ジクロロメタンを減圧により除去し、中間生成物D(ニトロ体)を得た。
【0098】
次に中間生成物D(0.1mol)と5%パラジウムカーボン(Pd/C)(2g)、エタノール/ジクロロメタン(70/30)400mlを、攪拌装置を設置した反応装置に仕込み、水素置換を5回行い、25℃で水素を常に供給した状態で反応させ、水素の減少がなくなったら反応を終了した。Pd/Cを回収し、混合溶媒を除去すると中間生成物E(アミン体)が得られた。
【0099】
次に攪拌装置及び加熱装置、滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、トリフェニルホスフィンジブロミド(0.11mol)と1,2−ジクロロエタン150mlを仕込み攪拌させた。そこに中間生成物E(0.025mol)とトリエチルアミン(0.25mol)を1,2−ジクロロエタン50mlに溶かした溶液を25℃で徐々に滴下した。滴下終了後、70℃で5時間反応させる。その後、反応溶液をろ過し、ろ液を水100mlで5回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、1,2−ジクロロエタンを減圧により除去し、中間生成物F(トリフェニルホスフィン体)が得られた。
【0100】
次に、攪拌装置及び滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、ジ−tert−ブチルジカーボネート(0.11mol)とN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(0.055mol)、ジクロロメタン150mlを仕込み攪拌させる。そこに、25℃で中間生成物F(0.025mol)を溶かしたジクロロメタン100mlをゆっくりと滴下させた。滴下後、12時間反応させる。その後、ジクロロメタンを除去し得られた固形物を、精製することで、下記構造式に示す化合物(MW=516)を得た。構造はNMR、IRにより確認した。
【0101】
【化39】

【0102】
[実施例1]
IV=0.47の回収ポリエチレンテレフタレートのフレークに前記参考例2で作成した環状カルボジイミド化合物(2)を、組成物の重量を基準として、0.5重量%となるように添加混合し、275℃〜300℃の押出機で溶融混練した。このペレットのゲル化率は2.3重量%で良好、臭気評価も合格であった。
次にこのペレットを用い乾燥機にて180℃で3時間乾燥した後、押出機に供給して、280℃で溶融押出し、スリットダイよりシート状に成形した。このシートを、表面温度20℃の冷却ドラムで冷却固化して未延伸フィルムとした。これを100℃にて縦方向に3.5倍延伸し、25℃のロール群で冷却し、続いて、フィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き130℃に加熱された雰囲気中で横方向に3.7倍延伸した。その後テンター内で220℃に加熱された雰囲気中で熱固定を行い、横方向に3%の幅入れを行い、室温まで冷やしてポリエステルフィルムを得た。このフィルムの耐加水分解性評価を表−1に記す。
【0103】
[実施例2]
添加する環状カルボジイミド化合物(2)を前記参考例1で作成した環状カルボジイミド化合物(1)へ変更する以外は、実施例1と同様にしてペレットとフィルムを得た。この結果を表−1に記す。
【0104】
[実施例3]
添加する環状カルボジイミド化合物の量を0.2重量%へ変更する以外は、実施例1と同様にしてペレットとフィルムを得た。この結果を表−1に記す。
【0105】
[実施例4]
添加する環状カルボジイミド化合物の量を2重量%へ変更する以外は、実施例1と同様にしてペレットとフィルムを得た。この結果を表−1に記す。
【0106】
[比較例1]
環状カルボジイミドを無添加とする以外は、実施例1と同様にしてペレットとフィルムを得た。この結果を表−1に記す。
【0107】
[比較例2]
環状カルボジイミド化合物(1)を線状カルボジイミド化合物(日清紡績(株)製、「カルボジライト」LA−1)に変更とする以外は、実施例1と同様にしてペレットとフィルムを得た。この結果を表−1に記す。
【0108】
[比較例3]
環状カルボジイミド化合物(1)を線状カルボジイミド化合物(日清紡績(株)製、「カルボジライト」LA−1)に変更し、添加量を12重量%とする以外は、実施例1と同様にしてペレットとフィルムを得た。この結果を表−1に記す。
【0109】
[実施例5]
回収ポリエチレンテレフタレート(IV=0.47)のフレークの変わりに、回収ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(IV=0.47)のフレークに変更する以外は、実施例1と同様にしてペレットを得た。次にこのペレットを用い乾燥機にて180℃で3時間乾燥した後、押出機に供給して、300℃で溶融押出し、スリットダイよりシート状に成形した。このシートを、表面温度20℃の冷却ドラムで冷却固化して未延伸フィルムとした。これを120℃にて縦方向に3.5倍延伸し、25℃のロール群で冷却し、続いて、フィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き130℃に加熱された雰囲気中で横方向に3.7倍延伸した。その後テンター内で220℃に加熱された雰囲気中で熱固定を行い、横方向に3%の幅入れを行い、室温まで冷やしてポリエステルフィルムを得た。この結果を表−1に記す。
【0110】
[比較例4]
環状カルボジイミドを無添加とする以外は、実施例3と同様にしてペレットとフィルムを得た。この結果を表−1に記す。
【0111】
【表1】

【0112】
表1中のPETはポリエチレンテレフタレート、PENはポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、CC1は参考例1で製造された環状カルボジイミド化合物、CC2は参考例1で製造された環状カルボジイミド化合物、LA1は日清紡績(株)製、「カルボジライト LA−1」を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明により、特定のカルボジイミド化合物で架橋され且つ高IVの再生ポリエステルを、作業環境を悪化させることなく作成でき、該再生ポリエステルを含有させる事により高性能な成型物が容易に得られる。特に、再生ポリエステルの溶融混練時に架橋が起こる為、従来の工程で実施出来ると同時に極限粘度を高めにして成形を安定化させ、且つ架橋により従来にみられない機械的性能と耐久性に優れた再生ポリエステル含有の成型物を安価に得る事ができ、容器類,板類,擬木類,シート類,フィルムフィルム,ケース・パック類など日用雑貨からインテリア,産業資材,土木建築資材まで幅広く利用可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収ポリエステルにカルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状カルボジイミド化合物を添加し、溶融混錬をおこなうことを特徴とする再生ポリエステルの製造方法。
【請求項2】
環状カルボジイミド化合物が、環状構造を形成する原子数が8〜50で、下記式(1)で表される化合物である請求項1に記載の再生ポリエステルの製造方法。
【化1】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価
の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。)
【請求項3】
環状カルボジイミド化合物を回収ポリエステルに対して0.05〜10重量%添加する請求項1記載の再生ポリエステルの製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の製造方法により得られた再生ポリエステルからなる成形体。

【公開番号】特開2011−256337(P2011−256337A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133900(P2010−133900)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】