説明

再生ローラ、廃物ローラの再生方法、現像装置及び画像形成装置

【課題】弾性層が再利用された低コストで高品質な再生ローラ、高品質を維持した低コストの現像装置及び画像形成装置、並びに、廃物ローラを前記再生ローラに歩留りよく再生することのできる廃物ローラの再生方法を提供すること。
【解決手段】第1弾性層3Aと第1弾性層3Aの外周面に形成された第2弾性層4Aとを備え、第1弾性層3Aが条件(1)及び(2)を満足する再生ローラ1A、廃物ローラの弾性層3Aを条件(1)及び(3)を満たすように除去し、弾性層3Aの外周面に第2弾性層4Aを形成する廃物ローラの再生方法、前記再生ローラ、又は、前記廃物ローラの再生方法によって再生した再生ローラを備えて成る現像装置及び画像形成装置。
(1)十点平均粗さRzが1〜9(μm)であること、(2)第1弾性層3Aの厚さt1が第2弾性層4Aの厚さをt2との合計厚さに対して50%以上100%未満であること

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、再生ローラ、廃物ローラの再生方法、現像装置及び画像形成装置に関し、さらに詳しくは、弾性層が再利用された低コストで高品質な再生ローラ、この再生ローラを備え高品質を維持した低コストの現像装置及び画像形成装置、並びに、廃物ローラの弾性層を再利用した低コストで高品質な再生ローラに歩留りよく再生することのできる廃物ローラの再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は多種多様の各種ローラを備えている。例えば、現像剤を担持搬送する現像ローラ、現像剤を現像ローラに供給する現像剤供給ローラ、記録体を搬送する搬送ローラ、現像剤を記録体に転写させる転写ローラ、記録体上の現像剤を記録体に定着させる定着ローラ、定着ローラを圧接する加圧ローラ等が挙げられる。このようなローラは、通常、軸体と、軸体の外周面に形成された弾性層と、所望により弾性層の外周面に形成された表面層とを備えている。
【0003】
画像形成装置用の各種ローラは、画像形成装置に装着されたときに所望の品質を有する画像を形成するのに貢献するために、所定の特性を満たしている必要がある。ところが、所定の特性を満たしていないローラが製造されることがある。例えば、外径精度、振れ精度等の寸法精度が劣る場合、ピンホール及び/又は表面の凹み等の表面不良が発生する場合等が挙げられる。このような製品規格を満たさないローラは、通常、廃棄される。一方で、製品規格を満たした各種のローラは使用後に廃棄される。このように、製品規格を満たすか否かにかかわらず、前記ローラはいずれ廃棄されることになる。
【0004】
近年、製品規格を満たさず廃棄される廃物ローラ及び使用済みの廃物ローラを回収・再利用することが製造コストの削減、環境対策等の観点から重要な課題になっている。
【0005】
ローラの軸体を回収・再利用する方法として、例えば、特許文献1に記載された発明が挙げられる。特許文献1には、「軸芯体と、該軸芯体の周囲に配された弾性層を有する弾性ロールの再生方法であって、弾性層を厚さtaだけ残して弾性層の外周側から剥離する剥離工程;および、該剥離工程において残された弾性層の周囲に新たに弾性層を形成し、弾性層の総厚をtbとする弾性層形成工程を有し、ta≦0.2tb、且つ、taが0.2mm以上とする弾性ロールの再生方法」(請求項6)、並びに、「軸芯体と、該軸芯体の周囲に配された弾性層を有する弾性ロールから得られる再生軸芯体であって、該弾性ロールの弾性層の総厚をtcとしたとき、該軸芯体の周囲に、該弾性層のうちの厚さtaの部分のみを有し、ta≦0.2tc、且つ、taが0.2mm以上である再生軸芯体」(請求項7)等が記載されている。
【0006】
ところで、特許文献1のように、ローラの軸体を回収・再利用する方法においては、軸体の外周面に形成された弾性層のほとんどすべてを剥離して廃棄することになるから、製造コストの削減、環境対策等の観点からは未だ十分ではなく改善の余地が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−4044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、大半の弾性層が再利用された低コストで高品質な再生ローラを提供することを目的とする。
【0009】
この発明は、廃物ローラの弾性層を再利用した低コストで高品質な再生ローラに歩留りよく再生することのできる廃物ローラの再生方法を提供することを目的とする。
【0010】
この発明は、再生ローラを備えつつも高品質を維持した低コストの現像装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の発明者らは、製造コストをより一層削減し、より効果的な環境対策等を推進するために、廃物ローラの軸体に加えて弾性層をも再利用する場合に、弾性層の外周近傍部分を単に除去すればよいというのではなく、再利用される廃物ローラの弾性層の、再生ローラの弾性層に対する割合を特定の範囲に設定すると共に、再利用される弾性層の十点平均粗さRzを特定の範囲に調整すると、画像形成装置に用いられる各種ローラに要求される特性を満足できる高い品質を有する再生ローラに廃物ローラを再生できることを見出した。
【0012】
前記課題を解決するための第1の手段として、
請求項1は、軸体の外周面に形成された第1弾性層と前記第1弾性層の外周面に形成された第2弾性層とを備えて成る再生ローラであって、前記第1弾性層は下記条件(1)及び(2)を満足することを特徴とする再生ローラであり、
請求項2は、前記第1弾性層と前記第2弾性層とは同種のゴムを含有するゴム組成物で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の再生ローラであり、
請求項3は、前記第2弾性層の外周面に形成されたコート層を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の再生ローラである。
(1)十点平均粗さRz(JIS B0601−1994)が1〜15(μm)であること
(2)前記第1弾性層の厚さをt1(mm)とし、前記第2弾性層の厚さをt2(mm)としたときに、式:(t1+t2)>t1≧0.5(t1+t2)を満たすこと
【0013】
前記課題を解決するための第2の手段として、
請求項4は、軸体の外周面に形成された弾性層を備えた廃物ローラを再生する方法であって、前記弾性層の一部を下記条件(1)及び(2)を満たすように除去する工程と、前記一部が除去されて成る第1弾性層の外周面でこの第1弾性層を形成するゴムと同種のゴムを含有するゴム組成物を成形して前記外周面に第2弾性層を形成する工程とを有することを特徴とする廃物ローラの再生方法であり、
請求項5は、形成された第2弾性層の外周面にコート層を形成する工程を有することを特徴とする請求項4に記載の廃物ローラの再生方法であり、
請求項6は、前記廃物ローラは、前記弾性層の外周面に形成されたコート層を備えていることを特徴とする請求項4又は5に記載の廃物ローラの再生方法である。
(1)十点平均粗さRz(JIS B0601−1994)が1〜15(μm)であること
(2)前記第1弾性層の厚さをt1(mm)とし、前記第2弾性層の厚さをt2(mm)としたときに、式:(t1+t2)>t1≧0.5(t1+t2)を満たすこと
【0014】
前記課題を解決するための第3の手段として、請求項7は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の再生ローラ、又は、請求項4〜6のいずれか1項に記載の廃物ローラの再生方法によって再生した再生ローラを、備えて成ることを特徴とする現像装置であり、
前記課題を解決するための第4の手段として、請求項8は、請求項7に記載の現像装置を備えて成ることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、大半の弾性層が再利用された低コストで高品質な再生ローラ、この再生ローラを備え高品質を維持した低コストの現像装置及び画像形成装置を提供することができる。また、この発明によれば、廃物ローラの弾性層を再利用した低コストで高品質な再生ローラに歩留りよく再生することのできる廃物ローラの再生方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、この発明に係る再生ローラの一実施例における再生ローラを示す概略斜視図である。
【図2】図2は、この発明に係る再生ローラの一実施例における再生ローラを示す概略断面図である。
【図3】図3は、この発明に係る再生ローラの別の一実施例における再生ローラを示す概略斜視図である。
【図4】図4は、この発明に係る再生ローラの別の一実施例における再生ローラを示す概略断面図である。
【図5】図5は、この発明に係る現像装置及びこの発明に係る画像形成装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明に係る再生ローラは、軸体と、軸体の外周面に形成された第1弾性層と、第1弾性層の外周面に形成された第2弾性層とを備えている。ここで、前記第1弾性層は、再生される前のローラすなわち廃物ローラの弾性層に由来する筒状の弾性層であり、廃物ローラの弾性層が残存して再利用された弾性層である。前記第2弾性層は、前記廃物ローラを再生する際に新たに形成された、すなわち、再度形成された筒状の弾性層である。
【0018】
前記軸体は、良好な導電特性を有していればよく、通常、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で構成された所謂「芯金」と称される軸体とされる。また、軸体は、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の絶縁性芯体にメッキを施して導電化した軸体であってもよく、さらには、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂で形成された軸体であってもよい。軸体は装着される画像形成装置に応じて適宜の直径及び軸線方向の長さに調整される。例えば、軸体2の直径は、例えば、4〜10mmに調整される。
【0019】
前記第1弾性層は、自身の厚さをt1(mm)とし、第2弾性層の厚さをt2(mm)としたときに、式:(t1+t2)>t1≧0.5(t1+t2)を満たしている。換言すると、再利用される第1弾性層は、再生ローラが備える弾性層の合計厚さ(t1+t2)に対して50%以上100%未満の厚さを有している。第1弾性層が前記式を満たすと、再生する前の廃物ローラの軸体と共に、再生ローラの大半の弾性層として廃物ローラの弾性層を再利用することができ、製造コストをより一層削減し、より効果的な環境対策等を推進することができる。再生ローラは、通常、その外径が実質的に同一又は大きな外径の廃物ローラから再生される。特に、再生ローラの弾性層の外径が廃物ローラの弾性層の外径と実質的に同一である場合には、前記廃物ローラの軸体と共に再生ローラの大半の弾性層として廃物ローラの大半のすなわちその厚さの半分以上の弾性層を再利用することができ、製造コストの削減及び環境対策等の推進が顕著になる。ここで、前記「実質的に同一」とは、再生ローラとしての機能を損なわない程度に同一であることを意味し、例えば、±5%程度の誤差を有していてもよい。
【0020】
第1弾性層の厚さt1の上限値は、前記合計厚さに対して100%未満であるが、廃物ローラに応じて適宜に選択される。例えば、廃物ローラの表面に前記表面不良がなければ、第1弾性層の上限値は前記合計厚さに対して100%未満とすればよく、一方、廃物ローラの表面に凹部等の表面不良を有している場合には、この表面不良を除去するのに十分な上限値に設定される。前記効果に優れる点で、第1弾性層の厚さt1は、前記表面不良が存在する場合には表面不良を除去可能となるように、第1弾性層の厚さt1と第2弾性層の厚さt2との合計厚さ(t1+t2)に対して0.5〜0.8であるのが好ましく、0.6〜0.8であるのが特に好ましい。なお、第1弾性層の厚さt1は前記範囲内でも0.75が除かれるのがよい。
【0021】
前記第1弾性層は、第2弾性層が形成される外表面の十点平均粗さRz(JIS B0601−1994)が1〜15(μm)である。第1弾性層の十点平均粗さRzが15(μm)を超えると、再生ローラが画像形成装置に用いられる各種ローラに要求される特性、例えば、振れ精度、外径精度を十分に満足することができないことがある。前記十点平均粗さRzの下限値は理想的には0であるが作業性及び実現性を考慮すると1(μm)程度になる。したがって、作業性等を考慮しないのであれば、十点平均粗さRzの下限値を1(μm)以下、例えば0.5(μm)に設定することもできる。廃物ローラにおける弾性層を再利用しても画像形成装置に用いられる各種ローラに要求される特性を十分に満足するより一層高い品質を実現することができる点で、前記十点平均粗さRzは3〜10(μm)であるのが好ましい。十点平均粗さRzは、JIS B0601―1984(十点平均粗さ)に準じ、先端半径2μmの測定プローブを備えた表面粗さ計(商品名「590A」、株式会社東京精密製)に、第2弾性層を除去した再生ローラをセットし、測定長2.4mm、カットオフ波長0.8mm、カットオフ種別ガウシアンにより、第1弾性層表面の少なくとも3点における表面粗さ測定し、これらの平均値を表面粗さRzとする。
【0022】
前記第1弾性層及び前記第2弾性層は、共に、ゴムを含有するゴム組成物で形成されている。前記ゴムとしては、例えば、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等のゴムが挙げられ、耐熱性及び帯電特性等に優れる点でシリコーン若しくはシリコーン変性ゴム好ましい。これらのゴムは液状型であってもミラブル型であってもよい。
【0023】
前記ゴム組成物として、例えば、前記ゴムと、導電性付与剤と、所望により発泡剤と、所望により各種添加剤とを含有するゴム組成物を挙げることができる。このようなゴム組成物として、例えば、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物、導電性ウレタンゴム組成物、発泡ウレタンゴム組成物等が挙げられる。
【0024】
前記付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物として、例えば、(A)平均組成式:RSiO(4−n)/2(Rは、同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の一価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1〜12、より好ましくは炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、nは1.95〜2.05の正数である。)で示されるオルガノポリシロキサン、(B)充填材、及び、(C)前記(B)成分に属するもの以外の導電性材料を含有する付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物が挙げられる。これらの各成分(A)〜(C)は、例えば、特開2008−058622号公報に記載の「付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物」における各成分と基本的に同様である。
【0025】
前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、(D)一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンと、(E)一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(F)平均粒径が1〜30μmで、嵩密度が0.1〜0.5g/cmである無機質充填材と、(G)導電性付与剤と、(H)付加反応触媒とを含有する付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物が挙げられる。これらの各成分(D)〜(H)は、例えば、特開2008−058622号公報に記載の「付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物」における各成分と基本的に同様である。
【0026】
前記付加反応型発泡シリコーンゴム組成物として、例えば、ビニル基含有シリコーン生ゴムと、シリカ系充填材と、発泡剤と、付加反応架橋剤と、付加反応触媒と、反応制御剤と、導電性付与剤とを含有し、所望により有機過酸化物架橋剤と各種添加剤とを含有する付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が挙げられる。これらの各成分は、例えば、特開2008−076751号公報に記載されている「付加反応型発泡シリコーンゴム組成物」における各成分と基本的に同様である。
【0027】
前記導電性ウレタンゴム組成物として、例えば、ポリオールとイソシアネート、これらを反応して得られるプレポリマー及びこれらを反応して得られるポリウレタンからなる群より選択される少なくとも1種のポリウレタン調製成分と前記導電性付与剤とを含有する導電性ウレタンゴム組成物が挙げられる。また、前記発泡導電性ウレタンゴム組成物として、例えば、少なくとも1種の前記ポリウレタン調製成分と導電性付与剤と前記発泡剤と所望により各種添加剤とを含有する発泡導電性ウレタンゴム組成物が挙げられる。前記ポリウレタン調製成分としては、例えば、特開2008−070420号公報に記載の「ポリウレタン調製成分」を挙げることができる。その中でも、前記ポリオールは、耐摩耗性、電気安定性及び耐水性等に優れる点でポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールであるのが好ましい。前記導電性付与剤及び各種添加剤は前記した通りである。
【0028】
これらのゴム組成物の中でも、少なくとも前記第1弾性層は耐熱性の高いゴム組成物で形成されているのが特に好ましい。第1弾性層が耐熱性の高いゴム組成物で形成されていると、前記第2弾性層を形成するときに再度加熱されても熱劣化しにくく、第1弾性層が有していた、ローラに要求される所期の特性を実質的に損なうことがない。
【0029】
前記第1弾性層及び前記第2弾性層は異なるゴム組成物で形成されていてもよいが、各弾性層を形成するゴム組成物に含有されるゴムは同種であるのが好ましく、接着剤等を用いなくても第1弾性層と第2弾性層との密着性に優れる点でシリコーンゴムであるのが好ましい。前記密着性により一層優れる点で、前記ゴムは同じゴムであるのがより好ましく、同一の組成を有するゴム組成物であるのが特に好ましい。
【0030】
この発明に係る再生ローラは、前記した再生ローラに限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、この発明に係る再生ローラは、第1弾性層及び第2弾性層は単層構造であっても複層構造であってもよい。第1弾性層が複層構造である場合には、第1弾性層における第2弾性層が形成される層すなわち最外層が前記条件(1)を満たしていればよい。第1弾性層及び第2弾性層が複層構造である場合には、第1弾性層の合計厚さと第2弾性層の合計厚さが前記条件(2)を満たしていればよい。また、この発明に係る再生ローラは、第1弾性層と第2弾性層との間に、密着性、追従性等を向上させる、プライマー層、接着剤層等を設けることもできる。
【0031】
図面を参照してこの発明に係る再生ローラを具体的に説明する。この発明に係る再生ローラの一実施例における再生ローラ1Aは、図1及び図2に示されるように、軸体2と、軸体2の外周面に形成された第1弾性層3Aと、第1弾性層3Aの外周面に形成された第2弾性層4Aとを備えて成る。図2は、再生ローラ1Aの軸線に垂直な断面で切断したときの断面図である。この再生ローラ1Aは、第1弾性層1Aの外周面における十点平均粗さRz(JIS B0601−1994)が1〜15(μm)の範囲にあり、第1弾性層1Aの厚さt1と第2弾性層2Aの厚さt2とが、式:t1+t2>t1≧0.5(t1+t2)を、満たしている。また、第1弾性層1Aと第2弾性層2Aとは共に付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物で形成されている。
【0032】
この発明に係る再生ローラの別の一実施例における再生ローラ1Bは、図3及び図4に示されるように、軸体2と、軸体2の外周面に形成された第1弾性層3Bと、第1弾性層3Bの外周面に形成された第2弾性層4Bと、第2弾性層4Bの外周面に形成されたコート層5とを備えて成る。図4は、再生ローラ1Bの軸線に垂直な断面で切断したときの断面図である。この再生ローラ1Bは、第1弾性層1Bの外周面における十点平均粗さRz(JIS B0601−1994)が1〜15(μm)の範囲にあり、第1弾性層1Bの厚さt1と第2弾性層2Bの厚さt2とが、式:t1+t2>t1≧0.5(t1+t2)を、満たしている。また、第1弾性層1Bと第2弾性層2Bとは共に付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物で形成されている。前記コート層5は樹脂組成物で0.1〜50μmの層さに形成されている。
【0033】
この発明に係る再生ローラは、前記のように、条件(1)及び(2)を満足しているから、再生する前の廃物ローラの軸体と共に、再生ローラの第1弾性層として廃物ローラの弾性層が再利用され、前記再生ローラの再生コストを抑制できると共に、前記弾性層が残存していても高い品質、すなわち、画像形成装置用のローラとして要求される要求特性、より具体的には、均一な外径精度及び振れ精度を有している。
【0034】
この発明に係る廃物ローラの再生方法は、廃物ローラにおける弾性層の一部を条件(1)及び(2)を満たすように除去する工程と、一部が除去されて成る第1弾性層の外周面で前記第1弾性層を形成するゴムと同種のゴムを含有するゴム組成物を成形して前記外周面に第2弾性層を形成する工程とを有している。この発明に係る廃物ローラの再生方法は後述する廃物ローラからこの発明に係る再生ローラを再生させる方法である。この発明に係る廃物ローラの再生方法において再生される再生ローラは、通常、その外径が同じ又は大きな外径の廃物ローラから再生される。
【0035】
この発明に係る廃物ローラの再生方法(以下、この発明の再生方法と称することがある。)においては廃物ローラを準備する。準備する廃物ローラは、製品規格を満たさないローラ、使用済みのローラ等である。製品規格を満たさないローラとしては、例えば、外径精度、振れ精度等の寸法精度が劣るローラ、ピンホール及び/又は表面の凹み等の表面不良が発生したローラ等が挙げられる。使用済みのローラとして、画像形成装置用のローラに使用された後に回収されたローラ等が挙げられる。画像形成装置用のローラはその最外層が僅かに擦り減ると十分な機能を発揮できなくなるから、回収されるローラはその弾性層の厚さが使用前とほとんど変わらない。このような廃物ローラを不良品又は使用済み品(中古品とも称する。)等を回収する。
【0036】
この発明の再生方法においては、準備した廃物ローラにおける弾性層の一部を除去する。除去する弾性層は、条件(2):除去後の弾性層すなわち第1弾性層の厚さをt1(mm)とし、新たに形成される第2弾性層すなわち再生しようとする第2弾性層の厚さをt2(mm)としたときに、式:(t1+t2)>t1≧0.5(t1+t2)を満たすように、その一部が除去される。換言すると、この条件(2)は、第1弾性層の厚さをt1(mm)とし、再生後の弾性層(第1弾性層と第2弾性層とからなる。)の予定厚さをt(mm)としたときに、式:t>t1≧0.5tを満たす。さらにいうと、一部が除去されて軸体の外周面に残存する弾性層(この発明の再生方法において第1弾性層と称する。)が再生後の弾性層の予定厚さt(mm)に対して50%以上100%未満の厚さを有するように、弾性層の除去量が設定される。第1弾性層の厚さt1が前記式を満たすと、廃物ローラの軸体と弾性層とを再利用した低コストで高品質な再生ローラに歩留りよく再生することができる。特に、再生ローラの弾性層の外径が廃物ローラの弾性層の外径と実質的に同一である場合には、前記廃物ローラの軸体と共に、再生ローラの大半の弾性層として廃物ローラの大半の弾性層を再利用した低コストで高品質な再生ローラに歩留りよく再生することができる。この効果に優れる点で、第1弾性層の厚さt1は、再生後の弾性層の予定厚さtに対して、0.5〜0.8であるのが好ましく、0.6〜0.8であるのが特に好ましい。なお、第1弾性層の厚さt1は第2弾性層を形成する際の厚さであり、例えば、第1弾性層が研磨処理される場合には研磨後の厚さであり、第2弾性層の前記厚さt2及び再生後の弾性層の前記予定厚さtは、再生ローラとしたときの前記第2弾性層の厚さ及び再生後の弾性層の予定厚さtであり、例えば、前記第2弾性層又は前記再生後の弾性層が研磨処理されている場合には研磨処理後のそれぞれの厚さである。
【0037】
前記式を満たすようにその一部が除去された第1弾性層は、その表面が条件(1)を満たしており、換言すると、その表面の十点平均粗さRz(JIS B0601−1994)が1〜15(μm)の範囲内にある。十点平均粗さRzは、一部を除去して成る第1弾性層の表面を前記方法に準拠して測定した値である。前記条件(1)を満たす第1弾性層の表面は研磨後の表面であるのが表面全体を均一な表面状態に調整できる点で好ましい。
【0038】
廃物ローラの弾性層の一部を除去する方法は、特に限定されず、例えば、研磨処理、切除処理、ブラスト処理、旋削処理等の各処理を適宜に選択できる。弾性層の除去と表面粗さの調整とを同時に実施可能となる点で研磨処理が好ましい。弾性層の研磨処理は、その処理条件として、廃物ローラを軸体の軸線を中心にして、回転速度100〜300rpm、好ましくは100〜200rpmで、回転させた状態で、又は、固定した状態で、研磨材、好ましくは下記特性の研磨材を表面にする砥石を、例えば、回転周速度30〜33m/sで回転させ、廃物ローラの表面に砥石の切り込み量が0.3〜1.2mm、好ましくは0.4〜0.8mmとなるように、5〜20秒、好ましくは10〜15秒にわたって、接触させる条件が挙げられる。このような処理条件を採用すれば第1弾性層の表面における前記十点平均粗さRzを前記範囲内に調整することができる。例えば、前記平均粒径を大きくすると、又は、前記接触時間を短くすると、前記十点平均粗さRzが大きくなる傾向にあり、一方、前記平均粒径を小さくすると、又は、前記接触時間を長くすると、前記十点平均粗さRzが小さくなる傾向にある。
・研磨材の形状:球状
・研磨材の材質:ダイヤモンド砥粒、アルミナ砥粒、酸化クロム砥粒、酸化鉄砥粒、酸化ケイ素砥粒、酸化セシウム砥粒、炭化珪素砥粒又はカーボン砥粒等
・研磨材の平均粒径:好ましくは60〜200μm、より好ましくは60〜140μmであるが、適宜の大きさとすることができる。
・平均粒径の測定方法:市販の測定器(JEOL JSM−5300LV)にて粒子を観察し、80個の粒子径の平均を平均粒径値とする。
【0039】
この発明の再生方法においては、このようにして残存させた第1弾性層の外周面でこの第1弾性層を形成するゴムと同種のゴムを含有するゴム組成物を成形して、第1弾性層の外周面に第2弾性層を形成する。ここで、第1弾性層を形成するゴムの種類は、廃物ローラの種類によって判別する。例えば、廃物ローラが製品規格を満たさないローラであれば第1弾性層を形成したゴム組成物から明らかであり、廃物ローラが使用済みのローラであればトナー付着等の不純物付着によって判別できる。第2弾性層を形成するゴム組成物は前記した通りであり、採用されるゴム組成物に応じて適宜の成形方法及び硬化条件を選択できる。例えば、ゴム組成物として前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を用いる場合には金型を用いた型成形等を採用することができる。また、前記ゴム組成物を硬化させる際の硬化条件は、前記ゴム組成物が加熱硬化する条件であればよく、例えば、前記ゴム組成物が付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物である場合は100〜500℃、特に120〜300℃、時間は数秒以上1時間以下、特に10秒以上〜35分以下であるのが好ましく、前記ゴム組成物が付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物である場合は100〜300℃、特に110〜200℃、時間は5分〜5時間、特に5分〜3時間であるのが好ましい。また、必要に応じ、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物を100〜200℃で1〜20時間程度の硬化条件で、また、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を120〜250℃で30〜70時間程度の硬化条件で二次加硫してもよい。一方、ゴム組成物が前記導電性ウレタンゴム組成物及び発泡ウレタンゴム組成物である場合には、例えば、加熱及び/又は湿気により、硬化させることができる。この発明において、このようにして成形された前記ゴム組成物の成形体を研磨処理することもできる。
【0040】
このとき、新たに形成される第2弾性層は、好ましくは、次の条件を満たすように形成される。すなわち、第2弾性層の厚さをt2(mm)としたときに、第2弾性層と第1弾性層との合計厚さ(t2+t1)が前記予定厚さtと一致するように、第2弾性層の厚さt2が調整される。
【0041】
この発明の再生方法においては、このようにして、廃物ローラの弾性層をこの廃物ローラが備えていた第1弾性層と新たに形成された第2弾性層とに再生することができる。したがって、この発明の再生方法は廃物ローラの弾性層再生方法と称することもできる。
【0042】
この発明の再生方法においては、再生した弾性層の外周面に所望によりコート層を形成してもよい。
【0043】
この発明の再生方法においては、このようにして廃物ローラを再生することができ、特に、廃物ローラと実質的に同一の外径を有する再生ローラに廃物ローラを再生することができる。この発明の再生方法は、前記工程を有しているから、廃物ローラの軸体と共に弾性層を再利用してコストを抑制できるうえ、高い品質を発揮する再生ローラに廃物ローラを再生することができる。
【0044】
この発明に係る廃物ローラの再生方法は、前記内容に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
【0045】
この発明に係る再生ローラ及びこの発明に係る廃物ローラの再生方法によって再生された再生ローラは、画像形成装置用のローラとしての要求特性を十分に満足して高い品質を発揮するから、画像形成装置用の各種ローラであればどのようなローラにも使用可能である。このような画像形成装置用の各種ローラの中でも種々の特性が高い精度で要求される現像ローラ、又は、特に物性が要求されない搬送ローラ等として特に好適に使用される。
【0046】
次に、この発明に係る再生ローラ又はこの発明に係る廃物ローラの再生方法によって再生された再生ローラを備えて成る現像装置(以下、この発明に係る現像装置と称することがある。)及びこの現像装置を備えて成る画像形成装置(以下、この発明に係る画像形成装置と称することがある。)の一例を、図5を参照して、説明する。
【0047】
図5に示されるように、この発明に係る画像形成装置30は、静電潜像が形成される回転可能な像担持体31例えば感光体と、前記像担持体31の周囲に配置された、帯電手段32例えば帯電ローラ、露光手段33、現像装置40、転写手段34例えば転写ローラ及びクリーニング手段37と、記録体の搬送方向下流側に定着手段35例えば画像形成装置用定着装置とを備えている。
【0048】
この現像装置40は、図5に示されるように、現像剤収納部41と、像担持体31に現像剤42を供給する現像剤担持体44例えば現像ローラと、現像剤担持体44に現像剤42を供給する現像剤供給手段43例えば現像剤供給ローラと、現像剤42を帯電させる現像剤規制部材45とを備えて成る。この現像装置40は、前記現像剤担持体44としてこの発明に係る再生ローラ1が装着されている。この現像装置40がこの発明に係る現像装置の一例とされている。この現像装置40は、現像剤担持体44としてこの発明に係る再生ローラ1が装着されていること以外は、従来の現像装置と基本的に同様に形成されている。なお、現像剤42は、一成分系の現像剤であれば、乾式現像剤であっても湿式現像剤であってもよく、また、非磁性現像剤であっても磁性現像剤であってもよい。
【0049】
前記定着手段35は、記録体36に転写された現像剤42(静電潜像)を定着させることができればよく、例えば、発熱可能な定着ローラを備えた熱ローラ定着装置、オーブン定着器等の加熱定着装置、加圧可能な定着ローラを備えた圧力定着装置等を用いることができる。これらの定着装置は無端ベルトを備えた定着装置であってもよい。この定着装置35は、図5にその断面が示されるように、記録体36を通過させる開口52を有する筐体50内に、定着ローラ53と、定着ローラ53の近傍に配置された無端ベルト支持ローラ54と、定着ローラ53及び無端ベルト支持ローラ54に巻き掛けられた無端ベルト55と、定着ローラ53と対向配置された加圧ローラ56とを備え、無端ベルト55を介して定着ローラ53と加圧ローラ56とが互いに当接又は圧接するように回転自在に支持されて成る圧力熱定着装置である。無端ベルト支持ローラ54は画像形成装置に通常用いられるローラであればよく、例えば、弾性ローラ等が用いられる。無端ベルト55は、例えば、ポリアミド、ポリアミドイミド等の樹脂により、無端状に形成されたベルトであればよく、その厚さ等も適宜定着手段35に適合するように調整することができる。定着ローラ53、無端ベルト支持ローラ54及び加圧ローラ56はそれぞれ、加熱体(図示しない。)が内蔵され、加圧ローラ56はスプリング等の付勢手段(図示しない。)によって無端ベルト55を介して定着ローラ53に圧接している。無端ベルト55と加圧ローラ56との圧接された間を記録体36が通過することにより、加圧と同時に加熱され、記録体36に転写された現像剤42(静電潜像)を定着させることができる。
【0050】
この発明に係る画像形成装置30は、次のように作用する。まず、画像形成装置30において、帯電手段32により像担持体31が一様に帯電され、露光手段33により像担持体31の表面に静電潜像が形成される。次いで、現像装置40から現像剤42が像担持体31に供給され、静電潜像が現像される。次いで、現像剤像は像担持体31と転写手段34との間に搬送される記録体36上に転写される。この記録体36は定着手段35に搬送され、現像剤像が永久画像として記録体36に定着される。このようにして、記録体36に画像を形成することができる。
【0051】
この発明に係る現像装置及び画像形成装置は、前記現像剤担持体44としてこの発明に係る再生ローラ又はこの発明に係る廃物ローラの再生方法によって再生された再生ローラを備えているから、高品質と低コストとを実現することができる。
【0052】
この発明に係る現像装置及び画像形成装置は、前記内容に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、前記画像形成装置30は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。
【0053】
また、前記画像形成装置30は、現像装置40に単色の現像剤42のみを収容するモノクロ画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、モノクロ画像形成装置に限定されず、現像剤供給手段を有する現像装置を備えているのが好ましく、カラー画像形成装置であってもよい。カラー画像形成装置としては、例えば、像担持体上に担持された現像剤像を中間転写体に順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置、各色毎の現像装置を備えた複数の像担持体を中間転写体や転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等が挙げられる。画像形成装置30は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置とされる。
【0054】
また、画像形成装置30において、現像剤42は、一成分系の現像剤が有利に用いられるが、トナーと、鉄、ニッケル等のキャリアとを含む二成分系の現像剤も使用することができる。
【実施例】
【0055】
(規格外ローラの準備)
次のようにして製造したローラのうち製品規格を満たさないローラを任意に選択して規格外ローラを準備した。
【0056】
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体2(SUM22製、直径7.5mm、長さ281.5mm)をトルエンで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマー処理した軸体2を、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体2の表面にプライマー層を形成した。
【0057】
次いで、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(D)(重合度300)100質量部、BET比表面積が110m/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製、R−972)1質量部、平均粒径6μm、嵩密度が0.25g/cmである珪藻土(F)(オプライトW−3005S、北秋珪藻土株式会社製)40質量部、及び、アセチレンブラック(G)(デンカブラックHS−100、電気化学工業株式会社製)5質量部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌した後、3本ロールに1回通した。これを再度プラネタリーミキサーに戻し、架橋剤として、両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(E)(重合度17、Si−H量0.0060mol/g)2.1質量部、反応制御剤として、エチニルシクロヘキサノール0.1質量部、及び、白金触媒(H)(Pt濃度1%)0.1部を添加し、15分撹拌して混練して、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を調製した。調製した付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を液体射出成形により前記軸体2の外周面に21mmの外径となるように成形した。液体射出成形において、前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を10分間150℃に加熱して硬化させた。この成形体を研磨して外径20mmの弾性層を形成した。
【0058】
次いで、イソシアネート(トリレンジイソシアネート付加物、商品名「D−103H」、三井武田ケミカル株式会社製)86質量部、ポリオール(ポリエステルポリオール、商品名「U−25」、三井武田ケミカル株式会社製)100質量部、導電性付与剤(商品名「トーカブラック #7500」、東海カーボン株式会社製)15質量部、シリコーンオイル(商品名「X−22−4272」、信越化学株式会社製)6質量部及び疎水性シリカ(商品名「NiSiIL SS−70」、東ソー・シリカ株式会社製)8質量部を混練して、ウレタン樹脂組成物を調製した。
【0059】
このようにして調整したウレタン樹脂組成物を、軸体の外周面に形成された弾性層の外周面に、スプレーコート法によって一回塗布し、150℃で30分間加熱して、層厚7〜15μmのコート層を形成し、複数のローラを製造した。製造したローラの中から、印字特性(黒ベタ、ハーフトーン印字)が製品規格を満たしていなかったローラを規格外ローラとして選択した。なお、前記印字特性(黒ベタ)とは印刷物における印刷面一面を黒く塗り潰したときの印字特性であり、前記印字特性(ハーフトーン印字)とは印刷物における印刷面を二等分した一方の領域(面積比50%)を黒く塗り潰したときの印字特性である。
【0060】
(実施例1)
前記規格外ローラのコート層及び弾性層(厚さ6.25mm)を下記条件で研磨処理して厚さ2.5mm分除去した。このようにして規格外ローラの一部を除去して成る第1弾性層の厚さt1(mm)は3.75mm(後述する予定厚さt(mm)に対して0.6)であり、この第1弾性層の前記十点平均粗さRzは9μmであった。
・廃物ローラの回転速度:180rpm
・砥石の回転周速度:33m/sec
・砥石の切り込み量:1.0mm
・接触時間:10秒
・研磨材の形状:球状
・研磨剤の平均粒径:150μm(製品名:MVT、砥粒:GC、基材9v)
【0061】
前記第1弾性層の外周面に前記規格外ローラの製造と同様にして前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を液体射出成形した。このようにして成形された成形体を研磨して研磨後の外径を20mmに調整し、規格外ローラの弾性層を再生した。再生した弾性層において、新たに形成した第2弾性層の厚さt2(研磨処理後)は2.5mm、一部が除去されて残存した前記第1弾性層と前記第2弾性層との予定厚さt(研磨処理後)は6.25mmであった。
【0062】
再生した弾性層の外周面に前記ウレタン樹脂組成物を塗布し、前記規格外ローラの製造と同様にしてコート層を形成し、規格外ローラを再生した再生ローラを製造した。
【0063】
(実施例2)
前記規格外ローラの弾性層を厚さ1.8mm分除去したこと以外は、実施例1と基本的に同様にして再生ローラを製造した。この再生ローラにおける第1弾性層の厚さt1(mm)は4.45mm(後述する予定厚さt(mm)に対して0.71)であり、この第1弾性層の前記十点平均粗さRzは9μmであった。
(実施例3)
前記規格外ローラの弾性層を厚さ1.5mm分除去したこと以外は、実施例1と基本的に同様にして再生ローラを製造した。この再生ローラにおける第1弾性層の厚さt1(mm)は4.75mm(後述する予定厚さt(mm)に対して0.76)であり、この第1弾性層の前記十点平均粗さRzは9μmであった。
(実施例4)
前記規格外ローラの弾性層を厚さ1.2mm分除去したこと以外は、実施例1と基本的に同様にして再生ローラを製造した。この再生ローラにおける第1弾性層の厚さt1(mm)は5.05mm(後述する予定厚さt(mm)に対して0.81)であり、この第1弾性層の前記十点平均粗さRzは9μmであった。
【0064】
(実施例5)
前記研磨処理条件を下記条件に変更したこと以外は、実施例1と基本的に同様にして再生ローラを製造した。この再生ローラにおける第1弾性層の厚さt1(mm)は3.75mm(後述する予定厚さt(mm)に対して0.6)であり、この第1弾性層の前記十点平均粗さRzは1μmであった。
・研磨剤の平均粒径:60μm(砥粒:GC320)
【0065】
(実施例6)
前記研磨処理条件を下記条件に変更したこと以外は、実施例1と基本的に同様にして再生ローラを製造した。この再生ローラにおける第1弾性層の厚さt1(mm)は3.75mm(後述する予定厚さt(mm)に対して0.6)であり、この第1弾性層の前記十点平均粗さRzは15μmであった。
・研磨剤の平均粒径:200μm(砥粒:GC80)
【0066】
(実施例7)
前記規格外ローラの準備において、前記のようにして製造したローラのうち印字特性(黒ベタ、ハーフトーン印字)が製品規格を満たしたローラを画像形成装置(商品名「HL-5240DN」、ブラザー工業株式会社製)に装着して、この画像形成装置を用いて、黒ベタ画像とハーフトーン画像を前記画像形成装置に装着された現像装置の交換目安である6000枚印字した後(黒ベタ画像とハーフトーン画像とを各3000枚)、前記規格適合ローラを取り出して回収ローラとした。この回収ローラを用いて実施例1と基本的に同様にして再生ローラを製造した。この再生ローラにおける第1弾性層の厚さt1(mm)は3.75mm(後述する予定厚さt(mm)に対して0.6)であり、この第1弾性層の前記十点平均粗さRzは9μmであった。
【0067】
(比較例1)
前記研磨処理条件を下記条件に変更したこと以外は、実施例1と基本的に同様にして再生ローラを製造した。この再生ローラにおける第1弾性層の厚さt1(mm)は3.75mm(後述する予定厚さt(mm)に対して0.6)であり、この第1弾性層の前記十点平均粗さRzは17μmであった。
・研磨剤の平均粒径:400μm(砥粒:GC50)
【0068】
(比較例2)
前記規格外ローラの弾性層を厚さ3.8mm分除去したこと以外は、実施例1と基本的に同様にして再生ローラを製造した。この再生ローラにおける第1弾性層の厚さt1(mm)は2.45mm(後述する予定厚さt(mm)に対して0.39)であり、この第1弾性層の前記十点平均粗さRzは9μmであった。なお、規格外ローラの弾性層はその大半が除去されているので、第2弾性層を形成する前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の使用量は多く、コスト抑制の効果は大きくなかった。
【0069】
(密着性試験)
このようにして再生した各再生ローラの第1弾性層と第2弾性層との密着性を評価した。具体的には、各再生ローラを、内部温度を200℃に設定した加熱乾燥機内に2時間収納した後に20℃の水中に投入して30分間浸漬させる加熱冷却サイクルを繰り返し3回実施した。この加熱冷却サイクルを実施した各再生ローラを、60mmの円筒体(金属製、軸線長さ50mm)に押し込み量(再生ローラの半径方向の凹み量)が2.0mmとなるように、換言すると、円筒体と再生ローラとの軸線距離が円筒体の半径と再生ローラの半径との合計よりも2.0mm短くなるように、再生ローラの軸線に沿って押圧した状態で、円筒体を215rpmで1時間にわたって回転させた。このとき、再生ローラを円筒体に従動回転するように軸支した。回転終了後に、再生ローラを取り出し、再生ローラの両端部において第1弾性層と第2弾性層との界面が剥離しているか否かを目視にて確認した。その結果、実施例1〜7の再生ローラはいずれも剥離していなかった。
【0070】
(画像品質)
各再生ローラそれぞれを、画像形成装置(商品名「HL−5250DN」、ブラザー工業株式会社製)に備え付けのトナーカートリッジ(商品名「TN−35J」)に現像ローラとして装着した。この画像形成装置を25℃、60RH%の環境下で、黒ベタ印刷を100枚行い、得られた黒ベタ印刷物に濃度ムラ、白スジの発生等の画像ムラを目視にて確認した。その結果、実施例1〜7の再生ローラを用いた場合はいずれも画像ムラを確認できなかった。一方、比較例2の再生ローラを用いた場合は画像ムラを確認できなかったが、比較例1の再生ローラを用いた場合は画像ムラを確認できた。比較例1の再生ローラを用いた場合に画像ムラが生じた理由は再生ローラの振れ精度及び/又は外径精度が低いためであると推測される。
【0071】
(歩留り)
実施例1〜7並びに比較例1及び2と同様にしてそれぞれ100本ずつ再生ローラを製造した。その結果、実施例1〜7において製品規格を満たさなかった再生ローラは全体の約10%であり歩留りが高かった。一方、比較例1及び2において製品規格を満たさなかった再生ローラはいすれも全体の30〜40%であり、歩留りが低かった。
【符号の説明】
【0072】
1A、1B 再生ローラ
2 軸体
3A、3B 第1弾性層
4A、4B 第2弾性層
5 コート層
30 画像形成装置
31 像担持体
32 帯電手段(帯電ローラ)
33 露光手段
34 転写手段(転写ローラ)
35 定着手段
36 記録体
37 クリーニング手段
40 現像装置
41 現像剤収納部
42 現像剤
43 現像剤供給手段(現像剤供給ローラ)
44 現像剤担持体(現像ローラ)
45 現像剤規制部材
50 筐体
52 開口
53 定着ローラ
54 無端ベルト支持ローラ
55 無端ベルト
56 加圧ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の外周面に形成された第1弾性層と前記第1弾性層の外周面に形成された第2弾性層とを備えて成る再生ローラであって、前記第1弾性層は下記条件(1)及び(2)を満足することを特徴とする再生ローラ。
(1)十点平均粗さRz(JIS B0601−1994)が1〜15(μm)であること
(2)前記第1弾性層の厚さをt1(mm)とし、前記第2弾性層の厚さをt2(mm)としたときに、式:(t1+t2)>t1≧0.5(t1+t2)を満たすこと
【請求項2】
前記第1弾性層と前記第2弾性層とは同種のゴムを含有するゴム組成物で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の再生ローラ。
【請求項3】
前記第2弾性層の外周面に形成されたコート層を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の再生ローラ。
【請求項4】
軸体の外周面に形成された弾性層を備えた廃物ローラを再生する方法であって、
前記弾性層の一部を下記条件(1)及び(2)を満たすように除去する工程と、
前記一部が除去されて成る第1弾性層の外周面でこの第1弾性層を形成するゴムと同種のゴムを含有するゴム組成物を成形して前記外周面に第2弾性層を形成する工程と
を有することを特徴とする廃物ローラの再生方法。
(1)十点平均粗さRz(JIS B0601−1994)が1〜15(μm)であること
(2)前記第1弾性層の厚さをt1(mm)とし、前記第2弾性層の厚さをt2(mm)としたときに、式:(t1+t2)>t1≧0.5(t1+t2)を満たすこと
【請求項5】
形成された第2弾性層の外周面にコート層を形成する工程を有することを特徴とする請求項4に記載の廃物ローラの再生方法。
【請求項6】
前記廃物ローラは、前記弾性層の外周面に形成されたコート層を備えていることを特徴とする請求項4又は5に記載の廃物ローラの再生方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の再生ローラ、又は、請求項4〜6のいずれか1項に記載の廃物ローラの再生方法によって再生した再生ローラを、備えて成ることを特徴とする現像装置。
【請求項8】
請求項7に記載の現像装置を備えて成ることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−170039(P2011−170039A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32651(P2010−32651)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】