説明

再生医学装置およびフォーム製造法

【課題】再生医学は、損傷組織環境への健康組織の直接移植を可能にすることができ、多くは、植え込み可能な生体適合性および生分解性足場を必要とする。生体適合性足場の製造法の最大の課題の一つは、細胞増殖および組織内部増殖を介して治癒を増強するのに十分な多孔度を有する機械的に安定な足場の製造にあり、これらの足場を中空構造にする適切な方法もない。
【解決手段】本発明は、一般に、一体的細胞増殖が可能な、中空チャンバーを形成する生体適合性および生分解性足場を提供する臓器移植および再生医学のための装置、ならびに、生体適合性生分解性ポリマーを凍結乾燥し、シームレス三次元形状を生成することによる装置の製造法に関する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、臓器置換および再生医学のための装置および方法に関する。さらに具体的には、本発明は、臓器の再生を促進することができる一体的細胞増殖(integral cell growth)が可能な生体適合性および生分解性足場によって形成される中空チャンバーを提供する。
【0002】
〔発明の背景〕
再生医学は、疾病を治療し、ヒト組織を回復させることを目標とした発展途上の分野である。有力な治療法は、損傷組織の自律的再生を生体に促すことができる。さらに、組織工学インプラントも、再生を促すことができる。開発中の手法も、損傷組織環境への健康組織の直接移植を可能にすることができる。
【0003】
これらの新規治療法の多くは、インビトロ(試験管内)、インビボ(生体内)の両方での使用に対して、植え込み可能な生体適合性および生分解性足場を必要とする場合がある。これらの足場は、組織浸潤を介して、あるいは、細胞の付着および増殖の適切な手段を提供することによって治癒を増強することができる。生体適合性および生分解性足場を含む中空チャンバーは、チャンバーが損傷組織を置換するだけでなく、臓器全体を置換する能力を有することができるという点で、特異である。2001年には、少なくとも80,000人が臓器移植を待っていたが、受けられた移植は、13,000例未満であった。そのため、ヒト臓器または組織全体が増殖または再生できる、適切な生体適合性および生分解性足場に対する膨大な要求が依然として満たされないでいる。
【0004】
生体適合性足場の製作法は、限られた数の材料から有効な足場を製造する能力が課題である。現在のところ、最大の課題の一つは、細胞増殖および組織内部増殖を介して治癒を増強するのに十分な多孔度を有する機械的に安定な足場の製造にある。これらの足場を中空構造にする適切な方法もない。先行技術のこれらや他の欠陥は、本発明によって克服される。
【0005】
〔発明の概要〕
本発明の目的は、一体的細胞増殖可能で、中空チャンバーを形成する生体適合性生分解性足場を含む、臓器置換および再生医学用の組織増殖装置を提供する。
【0006】
本発明のある実施形態では、中空チャンバーを形成する生体適合性生分解性足場は、生体適合性生分解性ポリマーを凍結乾燥し、シームレス三次元形状を作り出すことによって製造される。この点で、凍結乾燥法は、昇華性溶媒中に溶解された生体適合性生分解性ポリマーを含む溶液を型に入れる段階と、力を加えて型内で溶液を実質的に均一に分布させる段階と、溶液を型内で冷凍する段階であって、生じる冷凍構成物が、型の内部形状と一致する外部形状およびきめ(texture)を有する段階と、真空昇華によって溶媒を除去する段階を含むことができる。
【0007】
本発明のなおも別の目的は、臓器置換および再生医学用組織増殖装置であって、増殖因子、ホルモン、および、サイトカインなどの生体因子、または、抗生物質、鎮痛剤および抗炎症剤などの薬物、または、それらの配合物などを含む組織増殖装置を提供することである。
【0008】
本発明のなおもある他の目的は、臓器置換および再生医学用増殖装置によって生成される組織を提供することである。
【0009】
〔図面の簡潔な説明〕
本発明の一部の特徴および長所は、数件の好ましい実施形態の図を参照して説明されるが、これらは、例証を意図されており、本発明を制約するものではない。
【0010】
図1は、ポリマー-溶媒溶液の溶媒が凍結乾燥によって分離され、残りの溶質から生成された多孔質ポリマー足場を残す、本発明のある実施形態を示す。
図2は、冷凍前に液体溶液が型に注がれ、各種形状の、中空構成物ではなく固体を生成することができるにすぎない既存技術の限界を示す。
図3は、液体溶液が冷凍前に型に注がれ、冷凍中に機械的に回転され、三次元シームレス中空構造を生じる、本発明のある実施形態を示す。図3は、型が、蝶番で閉鎖され、溶液で部分的に充填されている、本発明のある実施形態の第一段階を示す。
図4は、液体溶液が冷凍前に型に注がれ、冷凍中に機械的に回転され、三次元シームレス中空構造を生じる、本発明のある実施形態を示す。図4は、部分充填された型が、垂直に保持され、急速回転され、それによって、遠心力が液体溶液に働き、溶液を型の中央からその側方に押しやる、本発明のある実施形態を示す。
図5は、液体溶液が冷凍前に型に注がれ、冷凍中に機械的に回転され、三次元シームレス中空構造を生じる、本発明のある実施形態を示す。図5は、部分充填された型が水平に保持され、低速回転され、それによって、重力がポリマーを、型の片側に定着させる、本発明のある実施形態を示す。
図6は、中空構成物が二段階型(two-step mold)によって生成され、二段階型において、型の一方の部分が中空部分から成り、他方部分がコアから成る、本発明のある実施形態を示す。
【0011】
〔発明の詳細な説明〕
当然ながら、本発明は、本明細書で説明される特定の方法論、プロトコルなどに制約されるものではなく、変更も可能である。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態の説明を目的とするにすぎず、本発明の範囲を制約することは意図されておらず、本発明の範囲は、特許請求の範囲のみに規定されている。
【0012】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、本文が、他に明確に規定されない限り、複数形指示を含む。よって、例えば、細胞の指示は、指示内容が、他に明確な規定がない限り、当業者に既知の相当語句を含めて、1個以上の細胞への指示であることができる。他に規定されない限り、本明細書で使用される全技術用語は、本発明が関係する当業者に共通して理解されている意味と同じ意味を有する。実施例の場合以外で、あるいは、他に規定されている場合、本明細書で使用される成分の量を表す全数または反応条件は、当然ながら、いずれの場合も、用語「約(about)」によって修正される。用語「約(about)」は、パーセンテージと関連して使用される場合、平均値±1%であることができる。
【0013】
特定されている全特許および他の刊行物は、本発明と関連して使用可能と考えられる刊行物に記述されている、例えば方法を説明および開示することを目的にして、参照することによって本明細書に組み入れられている。これらの刊行物は、本出願の出願日前の開示書類に関してのみ提供される。この点で、本発明人が先行発明によって、あるいは、他の理由で、開示書類に先行する権限を付与されていないことを承認するものとして、何物も解釈されてはならない。日付に関する全記載事項、または、これら書類の内容に関する表現は、すべてが出願人が入手し得る情報に基づいており、これらの書類の日付もしくは内容の正確さに関して承認されているわけではない。
【0014】
本発明は、一体的細胞増殖が可能な、中空チャンバーを形成する生体適合性生分解性足場を含む、臓器置換および再生医学のための装置を提供する。足場は、細胞、増殖因子、生体活性物質および薬物の基質もしくはキャリアとしても作用することができる。
【0015】
「中空チャンバー」に関して、この装置は、中空、あるいは、実質的に中空の単一チャンバーから成ることができる。別法として、この装置は、中空の、あるいは、実質的に中空の2個以上のチャンバーから成ることができる。チャンバーは、互いに接続されることも、接続されないことも可能である。事実、本発明は、個別の中空チャンバーの集合体、ならびに、細分割された単一チャンバーを意図する。「一体的細胞増殖(Integral cell growth)」は、細胞の付着、増殖、分化、浸潤、滞留(residence)および増生(outgrowth)を含むが、それらに制約されないプロセスを指し、それによって、足場が分解するにつれ、組織増殖および臓器再生が、生体機能する組織または臓器を生じることができる。
【0016】
凍結乾燥、即ち、フリーズドライ、は、昇華によってポリマー溶媒溶液から溶媒を除去し、あとに多孔質固体を残す。さらに具体的には、プロセスは、固相-気相転移によって冷凍溶液から溶媒を分離する。この転移は、昇華と呼ばれ、溶媒が液体状態になることがなく、その溶媒を除去する。最終構成物は、しばしばフォームとして記述されている残留溶質から成る多孔質固体構造である。
【0017】
最近の刊行物では、フォーム足場を製造するための凍結乾燥法の使用を論じている。米国特許第6,333,029号および米国特許第6,306,424号は、各種ポリマーを溶解し、凍結乾燥によって、それらを「組成および/または微小構造勾配」を有する多孔質フォームに加工する方法に言及している。米国特許第6,905,105号、米国特許出願公開第20030171705号および、米国特許出願公開第20050221484号は、チャンバーにマトリックス形成液を充填した後、チャンバーを制御された速度で冷却することによって「植え込み可能または植え付け可能な外科装置を形成するための細胞を支持できる生体適合性生分解性マトリックスを調製する」装置を開示している。これらの発明は、中空構造に基づいていない。
【0018】
昇華によって除去可能な溶媒に溶解されたいずれかの天然もしくは合成生体適合性生分解性ポリマー、またはそのようなポリマーの任意の混合物を含む液体溶液は、開口蝶番閉鎖式型(open-ended, hinged mold)に注がれ、冷凍中に機械で回転された。本発明は、このような溶液のいずれにも利用可能である。第一段階では、この型は、蝶番で閉じられ、部分的に溶液で充填される。図3を参照されたい。充填中、型の容量の一部は、空のままである。凍結乾燥後、型に注がれた溶液の容量は、足場の容積を構成することになるが、空の容積は、中空のくぼみを構成する。充填後、型は、多数の方法で回転されることができる。型が垂直に保持され、急速回転されると、遠心力が液体溶液に働き、この溶液を型の中央から側方に押しやる。次に、回転する型は、ゆっくりと冷却される、あるいは、液体窒素中への浸漬によって瞬間冷凍されることができる。図4を参照されたい。型は、水平にも保持され、低速回転されることができ、それによって、重力が、ポリマーを型の片側に定着させる。型の温度が周囲の空気よりも低いとすると、冷凍液体層が、徐々に、型の内部に積み重なり、内部冷凍スキンを生じる。両方法は、型の内部形状と一致する形状およびきめを有する冷凍構成物を生じる。いったん完全に冷凍されると、この構成物は、昇華のために真空内に置かれる。
【0019】
フォームの製造には、様々な吸収性ポリマーが使用可能である。使用可能な適切な生体適合性生体吸収性ポリマーの例は、脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル-エステル)、ポリアルキレンオキザレート(polyalkylene oxalates)、ポリアミド、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルソエステル(polyorthoesters)、ポリオキサエステル(polyoxaesters)、ポリアミドエステル、アミン基含有ポリオキサエステル、ポリ(アンヒドリド)(poly(anhydrides))、ポリフォスファゼン(polyphosphazenes)、生体分子(即ち、コラーゲン、エラスチン、生体吸収性デンプンなどの生体ポリマー)、およびそれらの混合物から成る群から選択されるポリマーを含む。
【0020】
適切な溶媒は、ギ酸、ギ酸エチル、酢酸、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、環式エーテル(即ち、THF、DMFおよびPDO)、アセトン、C2〜C5アルコールのアセテート(酢酸エチルおよび酢酸t-ブチル(t-butylacetate)など)、グライム(glyme)(即ち、モノグライム、エチルグライム、ジグライム(diglyme)、エチルジグライム、トリグライム、ブチルジグライムおよびテトラグライム)、メチルエチルケトン、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ラクトン(γ-バレロラクトン(γ-valerolactone)、δ-バレロラクトン、β-ブチロラクトン(β-butyrolactone)、γ-ブチロラクトンなど)、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキソラン-2-オン(エチレンカーボネート)、ジメチルカーボネート、ベンゼン、トルエン、ベンジルアルコール、p-キシレン、ナフタレン、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、1,2-ジクロロメタン、モルホリン、ジメチルスルホキシド、ヘキサフルオロアセトンセスキハイドレート(hexafluoroacetone sesquihydrate)(HFAS)、アニソールおよびそれらの混合物から成る群から選択される溶媒を含むが、それらに制約されない。溶媒中のポリマーの均質溶液は、標準技術を使って調製される。
【0021】
当業者によって理解されることになるが、利用されることができる適用可能なポリマー濃度または溶媒量は、系ごとに変化する。数種の系に適した位相図曲線が、すでに作成されている。しかし、適切な曲線が入手できない場合、これは、既知技術で容易に作成されることができる。ポリマー量は、所与の溶媒中のポリマーの溶解度および所望のフォームの最終特性に大きく左右される。
【0022】
フォーム構造の制御に使用されることができるパラメーターは、ポリマー-溶媒溶液の冷凍速度である。冷凍段階中に閉じ込められる細孔形態のタイプは、溶液熱力学、冷凍速度、冷却される温度、溶液の濃度、均質または不均質核形成などに依存する。このような相分離現象の詳細な説明は、本明細書で提供される参照文献中に認められることができる。A.T.ヤング(A. T. Young)による「相分離によるマイクロセルフォーム(Microcellular foams via phase separation)」(J. Vac. Sci. Technol. A 4(3)、1986年5月/6月)、S.マツダによる 「溶液からの多孔質ポリマー膜形成の熱力学(Thermodynamics of Formation of Porous Polymeric Membrane from Solutions)」(Polymer J. Vol. 23, No. 5, pp 435-444, 1991)、を参照されたい。
【0023】
本発明の別の実施形態では、中空チャンバーは、型の一方の部分が中空部分から成り、別の部分がコアから成る二段階型によって構成される。図6を参照されたい。このデザインは、典型的な射出成形プロセスで使用されるデザインと類似している。溶液は、くぼみとコアとの間の空間から充填されることができる。この空間は、最終構成物の厚さによって決定されることができる。いったん充填が完了すると、溶液は、上記の段階によって冷凍されることができる。
【0024】
本発明の各種実施形態では、前記の生体適合性生分解性足場の形成に使用されるポリマーまたはポリマー混合物は、ある医薬組成物を含有することができる。前述のポリマーは、足場形成前に、1種類以上の医薬品と混合されることができる。別法として、そのような医薬組成物は、足場が形成された後に、その足場をコートすることができる。本発明の足場と併用されることができる様々な医薬品は、技術上周知のいずれかのものを含む。一般に、本発明の組成物によって投与されることができる医薬品は、抗生物質および抗ウイルス薬などの抗感染症薬;化学療法剤;拒絶反応抑制剤;鎮痛剤および鎮痛合剤(analgesic combinations);抗炎症剤;ステロイドなどのホルモン;増殖因子;および、他の天然由来または遺伝子工学(組換え)タンパク、ポリサッカライド、グリコプロテインまたはリポプロテインを含むが、それらに制約されない。
【0025】
これらの材料を含有する足場は、足場の製造に使用されるポリマー、または、溶媒、または、ポリマー-溶媒混合物と1種類以上の作用物質を混合することによって調合されることができる。別法として、作用物質は、足場上で、好ましくは薬学的に受容可能なキャリアとともにコートされることができる。足場を実質的に分解しないいずれの医薬キャリアも使用されることができる。医薬品は、液体、微粉砕固体、または、いずれかの他の適切な物理的形態として存在することができる。任意ではあるが、典型的には、医薬品は、希釈剤、キャリア、賦形剤、安定化剤など、1種類以上の添加剤を含むことができる。さらに、抗体、細胞接着因子などの各種生体化合物が、本発明の足場への選択作用物質(例、医薬品または他の生体因子)の接触および/または結合送達に使用されることができる。
【0026】
本発明の中空チャンバーは、膀胱などの臓器の再生に有用であることができ、それによって、本発明は、細胞、好ましくは宿主の細胞を播種または植え付けされる。例えば、原始ウサギ尿路上皮細胞(RUC)は、インビトロで不織ポリグリコール酸ポリマーに容易に付着し、生存し、インビボで増殖することが認められている(米国特許第5,851,833号)。軟骨細胞や肝細胞などの一部の分化細胞型は、機能が分化されるままであり、ある場合は、インビボにおいて、不織ポリグリコール酸またはポリ乳酸ポリマー上で増大することが認められている。ポリマー繊維は、細胞付着部位を提供し、ポリマー格子(polymer lattice)の網状性は、限界距離をかなり下回る距離でガス交換を起こし、このポリマーは、細胞増殖を促進する血管形成などの宿主細胞反応を引き起こす。
【0027】
合成ポリマーは、使用前にインビトロで改質されることができ、増殖、および分化を促進する増殖因子、および、ペプチドやステロイドホルモンなど他の生理的作用物質を運ぶことができる。ポリグリコール酸ポリマーは、4ヶ月間かけて生分解を受ける。そのため、ポリグリコール酸ポリマーは、細胞送達媒体として、植え込み前に大型の組織構造をインビトロで再建し、その後、植え付けられた細胞から増大する細胞群によってポリマーを置換することができる。
【0028】
膀胱などの臓器を再生するには、本発明の中空チャンバーは、予め細胞を播種せずに、植え込まれることもできる。マトリックスは、医薬品またはタンパク質、例えば細胞接着因子に付着される抗体を含有でき、これが、細胞の付着、増殖、分化、浸潤、滞留、および、増殖を促進し、それによって、いったん足場が分解すると、生体機能する組織または臓器が残る。
【0029】
〔実施例1〕
凍結乾燥によって製造される中空マトリックス
開口式蝶番連結式型(open-ended, hinged mold)は、蝶番で閉鎖され、昇華性溶媒中に溶解された生体適合性生分解性ポリマーを含む溶液を部分的に充填される。次に、この型は、垂直に保持され、急速回転され、それによって、遠心力が液体溶液に働き、この液体溶液を型の中央から側方に押しやる。回転する型は、その後、液体窒素への浸漬によって瞬間冷凍される。いったん完全に冷凍されると、構成物は、昇華のために真空下に置かれる。
【0030】
〔実施例2〕
凍結乾燥によって製造される中空マトリックス
開口式蝶番連結式型は、蝶番で閉鎖され、昇華性溶媒中に溶解された生体適合性生分解性ポリマーを含む溶液を部分的に充填される。次に、この型は、水平に保持され、低速回転され、それによって、重力が、ポリマーを型の片側に定着させる。型の温度が周囲の空気よりも低いと、冷凍液体層は、徐々に、型の内部に積み重なる。これは、内部冷凍スキンを生じる。いったん完全に冷凍されると、構成物は、昇華のために真空下に置かれる。
【0031】
〔実施例3〕
二段階型(Two-Step Mold)によって形成される中空マトリックス
中空足場の製造に、二段階型が使用される。この型は、中空部分とコアから成る。溶液は、くぼみとコアの間の空間から充填される。いったん充填が完了すると、この溶液は、上記の段階の一方によって冷凍される。
【0032】
本明細書に開示されている発明の詳細な説明と実施を考慮することによって、本発明の他の実施形態が当業者に明らかになる。
【0033】
〔実施の態様〕
(1) 組織増殖装置において、
一体的細胞増殖が可能な、中空チャンバーを形成する生体適合性生分解性足場、
を含む、装置。
(2) 実施態様1に記載の装置において、
前記足場は、生体適合性生分解性ポリマーを凍結乾燥し、シームレス三次元形状を生成することによって製造される、装置。
(3) 実施態様1に記載の装置において、
前記足場は、
a.昇華性溶媒に溶解された生体適合性生分解性ポリマーを含む溶液を型に入れる段階、
b.力を加えて、型内で前記溶液を実質的に均一に分布させる段階、
c.前記溶液を前記型内で冷凍する段階であって、生じた冷凍構成物が、前記型の内部形状と一致する外部形状およびきめを有する、段階、ならびに、
d.真空昇華によって溶媒を除去する段階、
を含む、段階によって製造される、装置。
(4) 実施態様1に記載の装置において、
医薬品、
をさらに含む、装置。
(5) 実施態様4に記載の装置において、
前記医薬品は、抗生物質、抗ウイルス薬、化学療法剤、拒絶反応抑制剤、鎮痛剤、抗炎症剤、ホルモン、ステロイド、増殖因子、タンパク質、ポリサッカライド、グリコプロテイン、およびリポプロテインから成る群から選択される、装置。
(6) 組織において、
実施態様1に記載の装置を使って生成される、組織。
(7) 実施態様6に記載の組織において、
前記組織は、膀胱組織である、組織。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、ポリマー-溶媒溶液の溶媒が凍結乾燥によって分離され、残りの溶質から生成された多孔質ポリマー足場を残す、本発明のある実施形態を示す。
【図2】図2は、冷凍前に液体溶液が型に注がれ、各種形状の、中空構成物ではなく固体を生成することができるにすぎない既存技術の限界を示す。
【図3】図3は、液体溶液が冷凍前に型に注がれ、冷凍中に機械的に回転され、三次元シームレス中空構造を生じる、本発明のある実施形態を示す。図3は、型が、蝶番で閉鎖され、溶液で部分的に充填されている、本発明のある実施形態の第一段階を示す。
【図4】図4は、液体溶液が冷凍前に型に注がれ、冷凍中に機械的に回転され、三次元シームレス中空構造を生じる、本発明のある実施形態を示す。図4は、部分充填された型が、垂直に保持され、急速回転され、それによって、遠心力が液体溶液に働き、溶液を型の中央からその側方に押しやる、本発明のある実施形態を示す。
【図5】図5は、液体溶液が冷凍前に型に注がれ、冷凍中に機械的に回転され、三次元シームレス中空構造を生じる、本発明のある実施形態を示す。図5は、部分充填された型が水平に保持され、低速回転され、それによって、重力がポリマーを、型の片側に定着させる、本発明のある実施形態を示す。
【図6】図6は、中空構成物が二段階型(two-step mold)によって生成され、二段階型において、型の一方の部分が中空部分から成り、他方部分がコアから成る、本発明のある実施形態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織増殖装置において、
一体的細胞増殖が可能な、中空チャンバーを形成する生体適合性生分解性足場、
を含む、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
前記足場は、生体適合性生分解性ポリマーを凍結乾燥し、シームレス三次元形状を生成することによって製造される、装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、
前記足場は、
a.昇華性溶媒に溶解された生体適合性生分解性ポリマーを含む溶液を型に入れる段階、
b.力を加えて、型内で前記溶液を実質的に均一に分布させる段階、
c.前記溶液を前記型内で冷凍する段階であって、生じた冷凍構成物が、前記型の内部形状と一致する外部形状およびきめを有する、段階、ならびに、
d.真空昇華によって溶媒を除去する段階、
を含む、段階によって製造される、装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置において、
医薬品、
をさらに含む、装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置において、
前記医薬品は、抗生物質、抗ウイルス薬、化学療法剤、拒絶反応抑制剤、鎮痛剤、抗炎症剤、ホルモン、ステロイド、増殖因子、タンパク質、ポリサッカライド、グリコプロテイン、およびリポプロテインから成る群から選択される、装置。
【請求項6】
組織において、
請求項1に記載の装置を使って生成される、組織。
【請求項7】
請求項6に記載の組織において、
前記組織は、膀胱組織である、組織。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−86772(P2008−86772A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−254170(P2007−254170)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(507324119)ジョンソン・アンド・ジョンソン・リジェネレイティブ・セラピューティックス・エルエルシー (4)
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Regenerative Therapeutics, LLC
【住所又は居所原語表記】325 Paramount Drive, Raynham, MA 02767, United States of America
【Fターム(参考)】