説明

再生可能エネルギー多段利用システム

【課題】メタン発酵で発生する二酸化炭素の排出量を増大させることなく、単位面積から得られる再生可能なエネルギー総量を増大させることができる再生可能エネルギー多段利用システムを提供する。
【解決手段】水を貯留する人工池1に太陽光発電装置2が設置されるとともに、前記人工池1で微細藻類7が培養され、該微細藻類7が発酵されてメタンと二酸化炭素が生成され、該二酸化炭素が前記微細藻類7に固定化される再生可能エネルギー多段利用システムであって、散水装置3と、固液分離装置16と、メタン発酵槽17と、人工池1の水をメタン発酵槽17に循環させる循環系統18と、メタン発酵槽17から排出されるメタンガスから二酸化炭素を分離するメタンガス精製装置19と、メタンガス精製装置19で分離された二酸化炭素を人工池に供給する移送手段21と、を有することを特徴とする再生可能エネルギー多段利用システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電装置の発電効率を向上させるとともに、微細藻類を嫌気性発酵させてメタンを生成し、同時に生成する二酸化炭素を微細藻類に供給することで、再生可能エネルギーを多段利用するシステムに関する。
詳細には、人工池の水面上に設置した太陽光発電装置の受光面を冷却して発電効率を向上させ、あわせて太陽光発電装置の周辺で微細藻類を培養することで土地の多段利用を図り、更には、培養した微細藻類を発酵させて生成したメタンを燃料として利用し、同時に生成する二酸化炭素を前記微細藻類に供給することでバイオマス栽培の促進と二酸化炭素の固定化を行う、再生可能エネルギーの多段利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の社会的活動に伴って、発電所、工場、自動車等から大気中に排出される二酸化炭素は地球温暖化の主たる原因であることが知られており、近年、この二酸化炭素の排出量を削減することが地球環境の保護の大きな課題となっている。かかる背景に鑑み、二酸化炭素の排出を増大させることなくエネルギーを得る方法として、太陽光発電や風力発電、地熱発電、ミニ水力発電あるいは波力発電等の自然エネルギーを利用した発電や、バイオマスを活用した発電やメタン、メタノール等の燃料製造など、再生可能エネルギーに関する技術開発が行われている。
【0003】
太陽光発電においては、温度が発電効率に大きな影響を与え、太陽電池の温度が上昇すると発電量が低下することが知られている。例えば、シリコン系の太陽電池の場合、温度が80℃になると、25℃の定格状態と比較して、光電変換効率が2割以上低下することがある。また、太陽電池の温度が急激に上昇すると、太陽光発電装置の構成部材に熱負荷が掛かり、太陽電池が劣化するという問題が生じる場合もある。そこで、太陽光発電装置を空冷方式や水冷方式で冷却することが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
一方、藻類の嫌気性発酵によってメタンや二酸化炭素を生成し、二酸化炭素を藻類に供給する方法も提案されている(特許文献4、5参照)。しかしながら、栽培で得られるバイオマスは、調達量が非常に大きく、太陽光や風力と比較すると安価という利点はあるが、単位土地(栽培)面積当たりの得られるエネルギーは、他のRPS電源に比べて著しく低いという問題点があり、エネルギー密度は太陽光の1/50〜1/100程度である。
【0005】
ところで、自然エネルギーを利用した発電とバイオマスを組合せて、再生可能なエネルギーを得る方法として、例えば、特許文献6には、太陽光発電や風力発電により得られた電力を利用して、バイオマスを発酵させメタンガスを製造する方法が開示されており、特許文献7には、太陽光発電や風力発電により得られた電力を利用して水を電気分解して水素を製造し、この水素をバイオマスのガス化により生じる生成ガスと反応させてメタノールを得る方法が開示されている。
【0006】
特許文献6あるいは特許文献7に開示された方法は、太陽光や風力といった自然エネルギーと再生可能なエネルギーであるバイオマスを融合させるものであるが、太陽光あるいは風力による発電を実施する場所とバイオマスを入手する場所を同じ場所に限定するものではなく、また、単位面積から得られる再生可能なエネルギー総量の増大を図ろうとするものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−170974号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2004−259797号公報(段落[0003]〜[0005])
【特許文献3】特開2004−259797号公報(請求項1〜6)
【特許文献4】特開2010−088368号公報(請求項6、7)
【特許文献5】特許第3004510号公報(段落[0010])
【特許文献6】特開2007−313427号公報
【特許文献7】特開2002−193858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、水を貯留する特定の場所に太陽光発電装置を設置し、そこで微細藻類を培養するとともに、太陽光発電装置の発電効率を上げ、かつ微細藻類を発酵させ燃料として活用することができ、しかも、発酵で発生する二酸化炭素の排出量を増大させることなく、単位面積から得られる再生可能なエネルギー総量を増大させることができる再生可能エネルギー多段利用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、下記の構成のシステムを提供する。
(1)水を貯留する人工池に太陽光発電装置が設置されるとともに、前記人工池で微細藻類が培養され、該微細藻類が発酵されてメタンと二酸化炭素が生成され、該二酸化炭素が前記微細藻類に固定化される再生可能エネルギー多段利用システムであって、
太陽光発電装置の受光面に水を散布する散水装置と、
人工池で培養した微細藻類を分離する固液分離装置と、
分離した微細藻類を発酵させるメタン発酵槽と、
メタン発酵槽の加温熱源として人工池の水を該メタン発酵槽に循環させる循環系統と、
メタン発酵槽から排出されるメタンガスを二酸化炭素と分離するメタンガス精製装置と、
メタンガス精製装置で分離された二酸化炭素を前記人工池に供給する移送手段と、
を有することを特徴とする再生可能エネルギー多段利用システム。
(2)前記散水装置に、太陽光発電装置の受光面に設置された温度センサの検知温度に連動して散水装置の電源をオンオフできる制御装置を付設したことを特徴とする上記(1)に記載の再生可能エネルギー多段利用システム。
(3)前記制御装置が、温度センサの検知温度が第1の所定温度を越えた場合に前記受光面への水の散布を開始し、温度センサの検知温度が第2の所定温度以下になった場合に水の散布を停止することを特徴とする上記(2)に記載の再生可能エネルギー多段利用システム。
(4)前記散水装置の動力源ならびに前記制御装置の電源として、太陽光発電装置の発電電力を用いることを特徴とする上記(2)又は(3)に記載の再生可能エネルギー多段利用システム。
(5)前記太陽光発電装置の発電電力を蓄電する蓄電池を設置し、蓄電した電力を、前記散水装置の動力源ならびに前記制御装置の電源に供給することを特徴とする上記(2)〜(4)のいずれかに記載の再生可能エネルギー多段利用システム。
(6)前記人工池の水を撹拌できる撹拌装置を備え、該撹拌装置の動力源として、前記太陽光発電装置による発電電力又は前記蓄電池による放電電力を用いることを特徴とする上記(5)に記載の再生可能エネルギー多段利用システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の再生可能エネルギーの多段利用システムによれば、水を貯留する人工池に太陽光発電装置を設置し、かつ太陽光発電装置の受光面に水を散布することで太陽光発電装置の光電変換効率の低下を防止するとともに、人工池の中で微細藻類を栽培することにより、太陽光発電装置からは電力として、微細藻類からはバイオマス燃料として、夫々再生可能エネルギーを得ることができるため、単位面積から得られる再生可能エネルギーの総量を増大させることが可能となる。太陽光発電装置は、池の中に設置されているので地面への設置と比較して太陽光の照り返しによる輻射熱が抑えられ、受光面の温度上昇が抑制される。
【0011】
また、微細藻類の発酵で得られるメタンは燃料として利用でき、同時生成する二酸化炭素を微細藻類に供給することで、固定化と栽培促進を同時に行うことができる。生成する二酸化炭素は微細藻類に供給するので、二酸化炭素発生量が増大しない。
【0012】
更に、散水排水又は貯留した水の温度を、微細藻類の栽培及びメタン発酵槽の発酵に適した温度範囲に制御することにより、メタン発酵槽の加温熱源として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る再生可能エネルギーの多段利用システムを示す概略図である。
【図2】太陽光発電装置と微細藻類の栽培を示す概略図である。
【図3】太陽光発電装置周辺の各装置の接続を示す概略図である。
【図4】メタン発酵菌を用いてクロレラを処理した場合のメタン発生量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る再生可能エネルギー多段利用システムの好ましい実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は、再生可能エネルギー多段利用システムの好ましい一例を示す概略図、図2は、同システムにおける太陽光発電装置と微細藻類の栽培を示す概略図、図3は、太陽光発電装置周辺の各装置の接続を示す概略図である。なお、図1〜図3において同一の装置に対しては同じ番号を付与している。
【0016】
図1に示すように、本発明の再生可能エネルギー多段利用システムは、水を貯留する人工池1の中に太陽光発電装置2、太陽光発電装置2の受光面を冷却するための水を散布する散水装置3が設置され、人工池1の外からポンプ4及び水供給配管5を介して散水装置3に水が供給される。ポンプ4と水供給配管5とから、水供給装置が構成されている。散水装置3には、水供給配管5が接続されている。人工池1の中には、人工池1の水を撹拌するとともに、水中へ光合成に必要な二酸化炭素を十分に補給するための撹拌装置6が設置され、太陽光発電装置2の周囲の水中では微細藻類7が培養される。8は微細藻類7に必要な栄養素を供給するための栄養素供給配管であり、必要に応じて設置される。そして、図1には図示していないが、人工池1の周辺には、太陽光発電装置2による発電電力を蓄電するための蓄電池9ならびにポンプ4の駆動を制御するための制御装置12が付設されており、また太陽光発電装置2の受光面には温度センサ11が取り付けられている。
【0017】
太陽光発電装置2は、人工池1に設置された架台2aにより水面より上に載置される。架台2aの形状は任意であり、太陽光発電装置2の受光面が効果的に日照を受けるように適当な傾斜をつけた傾斜架台とするのが好ましい。太陽光発電装置2の設置台数は特に限定されず、人工池1の広さに応じて決定しても良いし、あるいは逆に目標とする発電量から必要な太陽光発電装置2の台数を求め、それに応じて人工池の広さを決定しても良い。また池の形状は、広さに応じて適時決定するが、撹拌の効率を考慮すると、円形もしくは楕円形(レースウェイ)などが好ましい。
【0018】
散水装置3としては、特に限定されるものではなく、図1に示したように、所定の間隔で複数の孔を開けた管を、個々の太陽光発電装置2の受光面の上部に固定して配置し、受光面上に水を流し出す方式の散水装置を用いても良い。あるいは、図2に示したように、複数の孔を開けた管を、モーターなどの動力源で水平方向に回転させながら水を周辺の複数の太陽光発電装置2の受光面に散布する方式の散水装置を用いても良い。
【0019】
太陽光が照射されると太陽光発電装置2の受光面の温度が上昇するとともに、人工池1から水が蒸発して池の水位が低下する。太陽光発電装置2の受光面には温度センサ11が設置されているので、温度センサ11により検知された受光面の温度が、予め設定された温度を越えると、制御装置12が作動してポンプ4を駆動させ散水装置3より水を受光面に散布する。
【0020】
水としては河川水、工業用水、地下水、水道水が挙げられる。水は、ポンプ4を用いて水供給配管5を介して、散水装置3から太陽光発電装置2の受光面に散布する方法で供給することにより、受光面の冷却水として活用できるとともに、水位が低下した人工池1に新たな水を補給することができるので、微細藻類7を培養するために添加した栄養素が水の蒸発により濃縮されるのを防止することができる。また、新たに供給する水源が渇水等で供給困難な場合には、散水装置3より散布する水として人工池1の水を使用することができ、この場合は、ポンプ4を用いて人工池1の水を汲み上げて散布し、太陽光発電装置2の受光面を冷却する。人工池1の水を汲み上げるポンプ4には適宜ろ過装置を取り付け、培養されている微細藻類7が吸入されることを防止するのが良い。
【0021】
微細藻類7の培養に必要な栄養素を追加する必要がある場合には、前記栄養素を必要量池面に添加することができる。この場合、散水装置3とは別に太陽光パネル下部に設置した栄養素供給配管8から散水量に応じて滴下して池に供給することも可能である。栄養素供給配管8は、所定の間隔で複数の孔を開けた管から栄養素含有水を水面に向けて散布する方式の管などで良く、太陽光パネルの受光面に塩分が析出するのを防止するため、太陽光パネル下部に設置する。
【0022】
また海産性微細藻を培養する場合は、散水量に応じて塩もしくは濃い塩水を散水管とは別途設けた太陽光パネル下部に設置した塩分添加用配管などから池面へ直接添加することができる。
【0023】
上記の栄養素としては、主に窒素、リン酸、カリウム分と微量ミネラル分が添加され、例えば硝酸カリウム、リン酸水素2カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、クエン酸第2鉄、塩化コバルト、ホウ酸、塩化マンガン、硫酸亜鉛、硫酸銅、モリブデンナトリウムなどが挙げられる。
【0024】
撹拌装置6は、微細藻類7が培養される水を撹拌する。これにより、太陽光発電装置2による日陰部分に微細藻類7が滞留することを防止し、また人工池1の底に微細藻類7が沈降することを防ぐことができるので、培養を効率的に行うことができる。撹拌装置6の形状は特に限定されず、例えば回転翼式の撹拌機などが挙げられる。撹拌装置6は、気温が低下する夜間においても運転することにより、昼間に上昇した人工池1の水温を効果的に下げることができる。
【0025】
本発明に用いる微細藻類7としては、スピルリナ、ドナリエラ、クロレラ、セネデスムス、ボトリオコッカス、シネココッカス、シネコシスティス、クラミドモナス、デスモデスムス、ナンノクロロプシス、ナンノクロリス、テトラセルミス、ユーグレナ、シュードコリシスティス、クロステリウム、ミクロシスチス、アンキストロデスムス、ゴレンキニア、セレナストルム、プロトシフォン、ボルボックス、クロロコックム、ヘマトコッカス、アナベナ、ミクロキスティス、フォルミディウムなどが挙げられる。微細藻類7の生育に必要な栄養素は予め人工池1の水に添加しておくことができる。所定の期間培養した後に、微細藻類7は水とともにポンプ等で抜き出し、ベルトプレス等の固液分離装置16を用いて分離した後、メタン発酵槽17に導入する。また、微細藻類7から色素やDHA、EPA、アスタキサンチン、グルタミン酸などの生理活性物質を抽出し、残った微細藻残渣をメタン発酵槽17に導入しても良い。
【0026】
固液分離装置16で分離された微細藻類7は、メタン発酵槽17に導入される。メタン発酵槽17では、従来公知の製造法を任意に適用することができる。微細藻類7は直接メタン発酵槽17に導入してもよいし、または必要に応じて、例えば、メタン発酵槽17の前流に混合槽を設け、該混合槽において、微細藻類7に水を加え、水分80%〜90%程度の濃度に希釈したものを、メタン発酵槽17に導入し発酵温度37〜55℃でメタン発酵させる方法が挙げられる。また、乾式発酵法を採用した場合は、含水量の少ない紙ゴミなどを適宜添加して発酵温度37〜55℃でメタン発酵させる方法が挙げられる。
【0027】
メタン発酵槽17では、公知のメタン生成菌による微細藻類7の分解反応によって、主として、メタンガスと二酸化炭素を含む気体が生成する。メタン発酵槽17では、加温熱源として人工池1の水を利用する。そのため、本発明の再生可能エネルギー多段利用システムでは、人工池1の水をメタン発酵槽17に循環させる循環系統18を有している。人工池1の水を循環させる場合、人工池1から水を汲み上げ、循環系統18に配置された熱交換器(図示せず)等を通して、水温をメタン発酵槽17の発酵に適した温度に制御する。また、人工池1の水温が低い場合には、散水装置3から流れ出た排水(温水)を循環系統18に直接導いても良い。
【0028】
メタン発酵槽17から排出されるメタンガスは、メタンガス精製装置19において二酸化炭素と分離される。メタンガス精製装置19としては、例えば、メタン発酵槽17の排ガスを0.55〜2.0MPaに加圧する圧縮機と、加圧された排ガスと水とを接触させて該水に二酸化炭素を溶解させるための吸収塔と、該吸収塔で二酸化炭素が溶解された水を大気圧状態に戻す減圧タンクとを有するものが挙げられる。吸収塔の内部を加圧条件とすることで、大気圧下における飽和濃度以上の二酸化炭素を水に溶解させ、排ガスからの二酸化炭素を除去し、高純度のメタンガスを吸収塔から排出させる。また、減圧タンクで吸収塔からの排水を大気圧状態に減圧し、過飽和に溶解している二酸化炭素の過飽和分を放出させた後の飽和炭酸水を排出できるように形成されているメタンガス精製装置19を用いることができる。
【0029】
吸収塔から排出されるガスは、高純度に精製されたメタンガスであるので、除湿器等を通過させて乾燥した後、ガスタンク(メタンホルダー)20に貯留して燃料として利用することができる。
【0030】
減圧タンクで大気圧状態に戻されることで、過度に溶解されていた二酸化炭素が放出されるので、二酸化炭素ガス及び水に溶解された二酸化炭素(炭酸水)は、移送手段21を介して人工池1に供給される。人工池1で培養されている微細藻類7は、二酸化炭素が供給されることで栽培が促進される。メタン発酵槽17で発生した二酸化炭素は、微細藻類7に固定化されるため、二酸化炭素量が増加することはない。
【0031】
次に、図3を参照して、本発明の再生可能エネルギー多段利用システムにおける各装置の接続について説明する。
【0032】
太陽光発電装置2は、双方向コンバータ10を介して系統電源14と接続されており、双方向コンバータ10の出力側と系統電源14の接続点には、スイッチ13を介してポンプ4が接続されている。スイッチ13の開閉は制御装置12により制御される。また撹拌装置6がスイッチ13と並列に接続されている。
【0033】
双方向コンバータ10の入力側には蓄電池9が接続される。複数の太陽光発電装置2を設置する場合、それぞれの太陽光発電装置2に対応して蓄電池9を設置しても良いが、複数の太陽光発電装置2を共通の1台の蓄電池9と並列に接続するのがシステムをコンパクト化できるので好ましい。
【0034】
太陽光発電装置2の受光面には温度センサ11が設置され、温度センサ11は制御装置12との間に接続回路を有し、温度センサ11により検知された受光面の温度が、予め設定された第1の所定温度を越えると、制御装置12はスイッチ13をオンにしてポンプ4を駆動させ散水装置3より水を受光面に散布する。受光面が冷却され、温度センサ11により検知された受光面の温度が予め設定された第2の所定温度以下に低下すると、制御装置12はスイッチ13をオフにしポンプ4の駆動を停止する。第1の所定温度は、通常40〜75℃程度の範囲内で設定される。第2の所定温度は、第1の所定温度より低く設定され、通常20〜35℃程度の範囲内で設定される。
【0035】
太陽光発電装置2により発電された電力は蓄電池9に充電されるとともに、ポンプ4及び撹拌装置6の動力源及び制御装置12の電源として使用される。また蓄電池9の放電電力もポンプ4及び撹拌装置6の動力源及び制御装置12の電源として使用されるので、太陽光発電装置2が発電状態にあり、かつ蓄電池9が放電状態にあり、ポンプ4ならびに撹拌装置6を駆動するのに必要な電力よりも余剰となる電力は、系統電源14に逆潮流される。
【0036】
太陽光発電装置2の受光面に太陽光が照射され、発電が行われるとともに温度が上昇してくるが、受光面に設置された温度センサ11が温度を検知し、前記第1の所定温度を越えた時点で制御装置12が作動しスイッチ13をオンにすることでポンプ4が駆動して散水装置3より受光面に水が散布されるので、太陽光発電装置2の光電変換効率が低下するのを防ぐことができる。そして、受光面が冷却され前記第2の所定温度以下になった時点で制御装置12によってスイッチ13がオフになりポンプ4の駆動が停止されるので、無駄な電力を使用することなく効率的に受光面を冷却することができる。
【0037】
なお、太陽光発電装置2ならびに蓄電池9は、双方向コンバータ10を介して系統電源14と接続されているので、気象状況によって太陽光発電装置2の出力が蓄電池9を充電するのに不十分な場合は、系統電源14の交流を直流に変換して蓄電池9の充電が行われる。太陽光発電装置2と双方向コンバータ10の間には、逆流防止ダイオード15が配置されている。また、太陽光発電装置2による発電のない夜間において、撹拌装置6を運転する場合で、蓄電池9の蓄電量が放電下限値に近く、蓄電池9からの放電で運転できない場合には系統電源14の電力により運転される。
【0038】
以上、本発明によれば、太陽光発電装置の発電電力の一部を利用して、太陽光発電装置の受光面の冷却を行うことにより発電効率の向上が図れ、同時に微細藻類を培養してメタン発酵させ、生成するメタンをバイオマス燃料として活用できるので、単位面積から得られる再生可能エネルギーの総量を増大させることができる。また、メタン発酵槽の加温熱源として人工池の水(温水)を回収して利用できるので、省エネルギーである。メタン発酵槽で発生する二酸化炭素は、人工池に戻して微細藻類の培養に利用できるので、二酸化炭素の発生をゼロにできる。
【実施例】
【0039】
以下、試験例によりメタン発酵の一例を具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0040】
(試験例)
250mlのねじ口ビンと、ビン内に貫通するプラスチックを取り付けたプラスチック製のキャップ(BOLA G−L45(ドイツfinemech社製))を準備し、ビンの中に乾燥したクロレラ10gおよび水100mlを入れ、土壌から分離したメタン発酵菌群を加えた後、キャップで蓋をした。キャップに取り付けたプラスチック管の端をガス捕集用のアルミニウムバッグ(ジーエルサイエンス(株)製)に導入し、恒温水槽(タイテック(株)製、SJ−07N)にねじ口ビンを浸漬し、40℃で静置培養を行った。培養開始後、8日目、15日目、21日目、28日目および36日目に、それぞれアルミニウムバッグを交換し、取り外したアルミニウムバッグについて、100mlのガラス製注射筒でバッグ内のガスを抜き出してガス容積を測定するとともに、抜き出したガス中のメタン濃度をガスクロマトグラフィー(島津製作所(株)製、GC2010、検出器FID、カラムZB−1)で測定し、メタンの累積生成量を求めた。結果を図−4に示す。
【0041】
図−4に示すように、36日間で、10gのクロレラから約400mgのメタンが生成することが分る。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の再生可能エネルギー多段利用システムによれば、微細藻類の栽培と太陽光発電を同じ場所で同時に実施することができ、しかも太陽光発電装置の受光面の冷却により発電効率の向上も図れるので、単位面積から得られる再生可能エネルギーの総量を増大させるシステムとして極めて有用である。
【符号の説明】
【0043】
1 人工池
2 太陽光発電装置
2a 架台
3 散水装置
4 ポンプ
5 水供給配管
6 撹拌装置
7 微細藻類
8 栄養素供給配管
9 蓄電池
10 双方向コンバータ
11 温度センサ
12 制御装置
13 スイッチ
14 系統電源
15 逆流防止ダイオード
16 固液分離装置
17 メタン発酵槽
18 循環系統
19 メタンガス精製装置
20 ガスタンク(メタンホルダー)
21 移送手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を貯留する人工池に太陽光発電装置が設置されるとともに、前記人工池で微細藻類が培養され、該微細藻類が発酵されてメタンと二酸化炭素が生成され、該二酸化炭素が前記微細藻類に固定化される再生可能エネルギー多段利用システムであって、
太陽光発電装置の受光面に水を散布する散水装置と、
人工池で培養した微細藻類を分離する固液分離装置と、
分離した微細藻類を発酵させるメタン発酵槽と、
メタン発酵槽の加温熱源として人工池の水を該メタン発酵槽に循環させる循環系統と、
メタン発酵槽から排出されるメタンガスを二酸化炭素と分離するメタンガス精製装置と、
メタンガス精製装置で分離された二酸化炭素を前記人工池に供給する移送手段と、
を有することを特徴とする再生可能エネルギー多段利用システム。
【請求項2】
前記散水装置に、太陽光発電装置の受光面に設置された温度センサの検知温度に連動して散水装置の電源をオンオフできる制御装置を付設したことを特徴とする請求項1に記載の再生可能エネルギー多段利用システム。
【請求項3】
前記制御装置が、温度センサの検知温度が第1の所定温度を越えた場合に前記受光面への水の散布を開始し、温度センサの検知温度が第2の所定温度以下になった場合に水の散布を停止することを特徴とする請求項2に記載の再生可能エネルギー多段利用システム。
【請求項4】
前記散水装置の動力源ならびに前記制御装置の電源として、太陽光発電装置の発電電力を用いることを特徴とする請求項2又は3に記載の再生可能エネルギー多段利用システム。
【請求項5】
前記太陽光発電装置の発電電力を蓄電する蓄電池を設置し、蓄電した電力を、前記散水装置の動力源ならびに前記制御装置の電源に供給することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の再生可能エネルギー多段利用システム。
【請求項6】
前記人工池の水を撹拌できる撹拌装置を備え、該撹拌装置の動力源として、前記太陽光発電装置による発電電力又は前記蓄電池による放電電力を用いることを特徴とする請求項5に記載の再生可能エネルギー多段利用システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−90623(P2012−90623A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70028(P2011−70028)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】