説明

再生塩化ビニル樹脂組成物用PVCマスターバッチ、塩化ビニル樹脂組成物及び電線・ケーブル並びに再生塩化ビニル樹脂組成物の製造方法及び電線・ケーブルの製造方法

【課題】材料特性を落とすことなく、鉛フリーPVCを再生利用することができる再生塩化ビニル樹脂組成物用PVCマスターバッチ、塩化ビニル樹脂組成物及び電線・ケーブル並びに再生塩化ビニル樹脂組成物の製造方法及び電線・ケーブルの製造方法を提供する。
【解決手段】回収塩化ビニル樹脂に添加し、再生塩化ビニル樹脂組成物を得るためのPVCマスターバッチおいて、前記再生塩化ビニル樹脂に対して、可塑剤を50phr以上、ハイドロタルサイトを5〜30phr、酸化防止剤を3〜20phr含有することを特徴とする再生塩化ビニル樹脂組成物用PVCマスターバッチである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛フリー回収塩化ビニル(PVC)樹脂のオーバーフロー品や電線皮剥ぎ屑等を再生利用するための再生塩化ビニル樹脂組成物用PVCマスターバッチ、塩化ビニル樹脂組成物及び電線・ケーブル並びに再生塩化ビニル樹脂組成物の製造方法及び電線・ケーブルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまでの電線被覆用PVC材料は、安定剤に鉛化合物を用いたPVCコンパウンドが使用されてきたが、環境対応の高まりから、鉛フリー化が進み、現在は、ほぼ鉛フリー材料に置き換わりつつある。
【0003】
しかし、鉛フリー材料のオーバーフロー品や電線皮剥ぎ品などを再生利用する技術については、鉛化合物並の安定化を図れる材料が開発されていないことから再生利用が確立されていない。このことから材料コスト上昇や資源の再利用効率の低下を招いている。
【0004】
従来の鉛系化合物を含むPVCの再生利用法は、回収塩化ビニルにバージンの新規塩化ビニル樹脂を一定の割合で混合し、再生塩化ビニル樹脂組成物として使用してきた(特許文献1〜3)。これは、新規塩化ビニル樹脂が希釈効果をもたらし、材料特性を向上させるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−226657号公報
【特許文献2】特開2002−363364号公報
【特許文献3】特開2002−167487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、当該方法を鉛フリーの回収塩化ビニル樹脂に適用すると、回収塩化ビニル樹脂の質により、バージン新規塩化ビニル樹脂の特性を低下させてしまうことがあり、有効な方法ではなかった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、材料特性を落とすことなく、鉛フリーの回収塩化ビニル樹脂を再生利用することができる再生塩化ビニル樹脂組成物用PVCマスターバッチ、塩化ビニル樹脂組成物及び電線・ケーブル並びに再生塩化ビニル樹脂組成物の製造方法及び電線・ケーブルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、回収塩化ビニル樹脂に添加し、再生塩化ビニル樹脂組成物を得るためのPVCマスターバッチおいて、新規塩化ビニル樹脂に対して、可塑剤を50phr以上、ハイドロタルサイトを5〜30phr、酸化防止剤を3〜20phr含有することを特徴とする再生塩化ビニル樹脂組成物用PVCマスターバッチである。
【0009】
請求項2の発明は、前記酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤である請求項1記載の再生塩化ビニル樹脂組成物用PVCマスターバッチである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の再生塩化ビニル樹脂組成物用PVCマスターバッチを、回収塩化ビニル樹脂に対して1〜10phr含有させたことを特徴とする再生塩化ビニル樹脂組成物である。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3に記載の再生塩化ビニル樹脂組成物を、被覆材として用いたことを特徴とする電線・ケーブルである。
【0012】
請求項5の発明は、新規塩化ビニル樹脂に、50phr以上の可塑剤と、5〜30phrのハイドロタルサイトと、3〜20phrの酸化防止剤を添加してPVCマスターバッチを製造する工程と、
回収塩化ビニル樹脂と前記PVCマスターバッチとを溶融混練して再生塩化ビニル樹脂組成物を製造する工程と、
を含むことを特徴とする再生塩化ビニル樹脂組成物の製造方法である。
【0013】
請求項6の発明は、請求項5に記載の再生塩化ビニル樹脂組成物の製造方法において、さらに、再生塩化ビニル樹脂組成物を押出被覆したことを特徴とする電線・ケーブルの製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、鉛フリーの回収塩化ビニル樹脂であるオーバーフロー粉砕品や電線屑粉砕品を材料特性や押出加工性を落とすことなく、再生塩化ビニル樹脂組成物として使用できるという優れた効果を発揮するものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な一実施の形態を詳述する。
【0016】
ここに、回収塩化ビニル樹脂とは、オーバーフロー材又は市場に流通などした後に回収された樹脂成形体から得られる樹脂材料である。新規塩化ビニル樹脂とは未使用の樹脂材料である。
【0017】
本発明は、鉛フリーのオーバーフロー品や電線皮剥ぎ品屑などの回収塩化ビニル樹脂に、PVCマスターバッチを添加することで、材料特性を落とすことなく再生塩化ビニル樹脂を再生利用するものである。
【0018】
PVCマスターバッチとしては、新規塩化ビニル樹脂に対して、フタル酸エステル系等の可塑剤を50phr以上、ハイドロタルサイトを5〜30phr、フェノール系等の酸化防止剤を3〜20phr含有するもので、これらの総量が、20〜60mass%からなるものである。
【0019】
このPVCマスターバッチを、回収塩化ビニル樹脂に対して1〜10phr添加して再生塩化ビニル樹脂組成物とするものである。
【0020】
次に本発明に至った経緯を説明する。
【0021】
回収塩化ビニル樹脂(電線被覆材用PVC材料)について:
電線用のPVC材料は、PVCレジン、可塑剤、安定剤、難燃剤、充填剤他からなる混和物である。これらを均一に分散させるため、130〜190℃程度で混練後、造粒する工程が必要となる。また、造粒されたペレットを電線形状にするため、材料を導体に140〜195℃程度で被覆押出する工程も必要となる。
【0022】
このようにPVC材料は、電線の被覆材に成形されるまで、2回の熱履歴を伴う。
【0023】
再生作業について:
鉛フリーの回収塩化ビニル樹脂を再生させるためには、上述の通り、2回の熱履歴を受けた材料、すなわち絶縁押出作業や外皮押出作業で発生したオーバーフロー材や実用電線屑などを再利用する。
【0024】
しかし、このような材料は、以下の問題点があることから、再生が困難とされてきた。
【0025】
再生時の問題点:
回収したオーバーフロー材や電線屑材は、各々の部材で配合処方が異なることから、すなわち可塑剤や熱安定剤、充填剤の種類や添加量が異なることから、例えば、連続押出機で再生作業を行う際、通常のバージン材料を混練する場合より、高いせん断発熱が発生する。
【0026】
このせん断発熱は、
(再生時の成形樹脂温度)−(バージン材の成形樹脂温度)=10〜15℃
であり、バージン材の成形樹脂温度より10〜15℃高いことに起因する。
【0027】
これまで使用されてきた鉛入りPVCは、2回以上熱履歴を受けても、成形時の樹脂温度付近での熱安定性が良好であったことから、オーバーフロー材や電線屑材からなる回収塩化ビニル樹脂とバージンの新規塩化ビニル樹脂を一定の割合で混合して再利用されてきた。
【0028】
しかし、鉛フリーの回収塩化ビニル樹脂は、鉛入りの回収塩化ビニル樹脂と比較して、3回目の熱履歴を受けるあたりから、熱安定性が急激に悪くなる。
【0029】
すなわち、鉛フリーの回収塩化ビニル樹脂は、
バージン混練(1回)−電線押出(2回)−オーバーフロー,電線皮剥ぎ品再混練(3回)
と3回の熱履歴を受ける。
【0030】
このように回収塩化ビニル樹脂は繰返し使用されるため、この問題点がネックであった。
【0031】
また3回以上の熱履歴を受けた鉛フリーの回収塩化ビニル樹脂を用いると、バージンの鉛フリー新規塩化ビニル樹脂と一定の割合で混合しても、熱安定性や電気特性などについては、電線材料としての規格をみたさなかった。
【0032】
これらの要因としては
(1)高温時の脱塩酸や可塑剤の分解を抑制する新規塩化ビニル樹脂中の原材料が、オーバーフロー品や電線皮剥ぎ品屑を再加工する際、消費されてしまうこと。
【0033】
(2)副生成物として生成する亜鉛塩化物が、電解質であるため、必要な電気特性が得られないこと。
【0034】
また、これが塩化ビニル樹脂の脱塩酸を促進してしまうことなどが挙げられる。
【0035】
そこで、本発明者は、低温加工(脱塩酸量が少ない)が可能で、高温加工時、効率的に脱塩酸を捕捉し、塩化亜鉛の生成を抑え、可塑剤の酸化劣化を防止する手法として本発明を見出したものである。
【0036】
すなわち、可塑剤添加量が50phr以上で、ハイドロタルサイト添加量が5〜30phr、フェノール系酸化防止剤添加量が3〜20phrからなるPVCマスターバッチを用い、これを鉛フリーの回収塩化ビニル樹脂に対して1〜10phr添加して再生塩化ビニル樹脂組成物とするものである。
【0037】
可塑剤としては、フタル酸エステル系のDINPが挙げられるが、非フタル酸系可塑剤(トリメリット酸エステル、アジピン酸ポリエステル、シクロヘキサンジカルボン酸エステル他)を用いても良い。また、フタル酸エステルと非フタル酸エステルの混合系であっても良い。
【0038】
酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤を用いる他に、チオエーテル、ホスファイト系酸化防止剤もしくはこれらの混合系であっても良い。
【0039】
以上、本発明においては、可塑剤がPVCマスターバッチを混練する際の分散性向上効果に寄与し、また酸化防止剤が可塑剤の酸化劣化を防止すると共に、ハイドロタルサイトが脱塩酸捕捉剤として機能し、特に再生加工時の高温域(195℃付近)において効果を発揮する。
【実施例】
【0040】
以下に本発明の実施例と比較例を説明する。
【0041】
実施例と比較例とも、先ず(a)鉛フリーの再生塩化ビニル樹脂組成物用PVCマスターバッチを作製し、そのPVCマスターバッチを用いて(b)再生塩化ビニル樹脂組成物を作製し、これを電線の被覆材として(c)押し出してその特性を調べたものである。
【0042】
(a)再生塩化ビニル樹脂組成物用PVCマスターバッチの作製
表1の配合組成のPVCマスターバッチを以下の方法で作製した。
【0043】
【表1】

【0044】
表1に示す配合組成にて、a1〜a7のマスターバッチを作製した。
【0045】
各マスターバッチa1〜a7は、合計量が100質量部となるように、レジン、可塑剤、安定剤、他原材料を計量後に高速撹拌機(ヘンシェルミキサー)に投入し、110℃に樹脂温度が上がるまで撹拌したあと、40℃まで冷却した。
【0046】
次に、冷却した混合物を、容量75Lのバッチ式混練機に対して80kg投入し、バッチ式ミキサのチャンバ温度150℃、ロータ回転数を50rpmとして混練し、ミキサ内の樹脂温度が170℃で混練を完了させた。
【0047】
混練した材料を、150mm単軸造粒押出機に投入し、造粒したあと、空冷し、PVC樹脂組成物からなるPVCマスターバッチを得た。
【0048】
単軸造粒押出機の条件は、シリンダー温度130〜170℃、ヘッド170℃、スクリーンメッシュ:40M、成形品が3mmφ×3mmHとなるよう空冷造粒した。
【0049】
(b)再生塩化ビニル樹脂組成物の作製
表1に示したPVCマスターバッチを用いて再生塩化ビニル樹脂組成物を作製した。
【0050】
【表2】

【0051】
比較例2〜5、実施例1〜7は、オーバーフロー粉砕品(3〜5mm角)を50質量部、電線屑粉砕品(3〜5mm角)を50質量部とし、これに表1に示したマスターバッチa1〜a7を加えて混合したもので、比較例1は、マスターバッチを加えずにオーバーフロー粉砕品50質量部、電線屑粉砕品50質量部に一般シース用バージンコンパウンドを50質量部加えて混合したものである。
【0052】
混合は、計量したオーバーフロー粉砕品、電線屑粉砕品、マスターバッチをタンブラーミキサで3分間混合した後、容量75Lのバッチ式混練機に混合物を85kg投入し、バッチ式ミキサのチャンバ温度160℃、ロータ回転数を50rpmで混練し、ミキサ内の樹脂温度が180℃で混練を完了させた。
【0053】
次に、混練した材料を150mm単軸造粒押出機に投入し、造粒したあと、空冷し、再生塩化ビニル樹脂組成物を得た。
【0054】
単軸造粒押出機の条件は、
シリンダー:140〜180℃、ヘッド180℃、スクリーンメッシュ:40+80M、成形品が3mmφ×3mmHとなるよう空冷造粒した。
【0055】
(c)電線材料への適用評価
表2中の引張試験、加熱後の引張試験、耐油試験、加熱変形、耐寒性試験の各適用評価は、JISK6723(軟質ポリ塩化ビニルコンパウンド)1種3号(一般シース)をべースとして行った。
【0056】
また、電線材料として必要な以下の項目を追加し判定した。
【0057】
体積抵抗率;
JISK6723 6.8項に規定された体積抵抗率試験により測定し、体積抵抗率(30℃)1×1012Ω・cm以上の規格を満たすものを○とし、満たさないものを×とした。
【0058】
硬度ショアD;
JISK6301に規定された硬さ試験により測定し、硬度ショアD 30〜40にあるものを○とし、それ以外を×とした。
【0059】
また、再生塩化ビニル樹脂組成物であることを考慮して、耐熱特性は、老化試験、耐油試験、加熱変形、耐寒性、熱安定性を測定して評価した。
【0060】
ここで熱安定性は、JISK6723 6.7項に規定された試験方法で、油槽温度を195℃に設定し、変色までの時間を測定し、熱老化試験は、JISK6723 6.4項に規定された加熱後引張試験により測定し、熱安定性は195℃で95MIN以上(鉛含有品相当)を○、熱老化時の伸び残率80%以上を○とした。
【0061】
連続押出性;
連続押出性は、24hr連続電線被覆作業時のヤケ発生有無を観察した。
【0062】
被覆材としては、CVV3×1.25SQのシース押出作業を90mmEXTにて、24hr連続稼働させたあと、ヘッド解体時ヤケがないか、シース外観表面にヤケによる粒が無いか目視確認した。
【0063】
また、押出は、シリンダー温度130〜185℃、ヘッド185℃、ダイス185℃、スクリーンメッシュ40+60Mとした。
【0064】
75℃浸水ブルーミング性1日;
75℃の蒸留水に25mm角2mm厚のシートを浸たし、1日経過後、表面にブルーミング物がないか目視で確認した。
【0065】
比較例1:
一般シース用バージンコンパウンド50質量部、オーバーフロー粉砕品50質量部、電線屑粉砕を50質量部混合した再生品であるが、加熱後の熱老化特性、体積抵抗、熱安定性が規格を達成できなかった。
【0066】
比較例2:
オーバーフロー粉砕品と電線屑粉砕を50:50で混合し、表1に示したマスターバッチを加えずに再生品としたものであるが、加熱後の熱老化後の伸び、体積抵抗、熱安定性が規格を満たさなかった。
【0067】
また、連続押出作業では、外観にヤケ起因の粒が発生した他、ヘッド解体後のスリーブ部にヤケた材料が確認された。鉛フリー材料はバージンでは押出時の熱負荷に耐えうる配合設計がなされているものの、その際、塩酸捕捉剤が消費され、また、副生成物(塩化亜鉛他)が生成する。これらが再び同様の熱履歴を伴う再生作業にて、系の脱塩酸を促進し、高温域(180〜195℃)の熱安定性能を低下させたものと推定する。
【0068】
比較例3〜5:
比較例3〜5は、比較例1の高温時の熱安定性や体積抵抗の改善を狙って表1に示したマスターバッチa1〜a3をそれぞれ5phr添加したものである。
【0069】
比較例3は、ハイドロタルサイトの添加量が4phrと低いマスターバッチa1を用いたものであり、比較例1,2に比べて、耐熱性に改善はみられるものの十分ではない。
【0070】
比較例4は、ハイドロタルサイトの添加量を54phrとしたマスターバッチa2を用いたものであるが、耐熱性は改善されたものの、体積抵抗が規格を満たさない。
【0071】
また比較例5においては、フェノール系酸化防止剤を54phrとしたマスターバッチa3を用いたものであるが、酸化防止剤起因の白色ブルーミングが発生し、NGとなった。
【0072】
また、比較例3,4,5とも耐油試験における伸び残率をクリアすることはできなかった。
【0073】
実施例1〜7:
実施例1〜7は、a4〜a7のマスターバッチを用いたもので、いずれの特性も規格値を満足している。
【0074】
このマスターバッチa4〜a7組成は、可塑剤添加量が50phr以上で、ハイドロタルサイト添加量が5〜30phr、フェノール系酸化防止剤添加量が3〜20phrとしたもので、オーバーフロー粉砕品と電線屑粉砕品100質量部に対する添加割合が、1〜10phrとしたものであり、いずれも全ての材料特性や連続押出性を満足し、鉛フリーの再生塩化ビニル樹脂組成物材料として使用できることを確認した。
【0075】
実施例3,4の再生塩化ビニル樹脂組成物については、電線の被覆材として押し出してその特性を調べた後、再度これを粉砕し、更に本発明のPVCマスターバッチを添加することなく、これを実施例1〜7と同じ条件で再混練し、電線の被覆材に適用することを7回繰り返した後、これを評価したところ、実施例1〜7と同様に全ての特性項目をクリアしていることがわかった。
【0076】
その結果、本発明の再生塩化ビニル樹脂組成物は、7回の混練、押出による熱履歴を受けた後にも、熱安定性が良好であることがかかり、本発明のPVCマスターバッチは、繰り返しのリサイクル性に優れており、リサイクルの際に一度添加してしまえば、その後は複数回にわたり再生処理をしたとしても、再生塩化ビニル樹脂組成物としての特性を損なわず、これを維持することができるものであることがわかった。
【0077】
以上より、マスターバッチの組成は、
可塑剤添加量:
可塑剤は、マスターバッチを混練する際の分散性向上に寄与し、少ないと分散性が悪く、多すぎても滑性過多の状態となり分散性が悪くなるため、マスターバッチ分散の観点から50〜80phrが好ましい。より好ましくは50〜60phrとなる。添加量が多すぎると、上述のように混練時外部滑性過多の状態となり、マスターバッチ分散が遅れ生産効率低下を招く。
【0078】
ハイドロタルサイト添加量:
ハイドロタルサイトは、脱酸捕捉剤として機能し、特に再生加工時の高温域(195℃付近)で脱酸捕捉剤としての効果を発揮する。添加量は、再生塩化ビニル樹脂組成物の耐熱性と再生時の成形加工性の観点から5〜30phr、より好ましくは10〜25phrである。添加量が多いと再生塩化ビニル樹脂組成物の発泡を招くので好ましくない。
【0079】
酸化防止剤添加量:
酸化防止剤は、可塑剤の酸化劣化防止機能を有し、その添加量は、可塑剤の酸化防止の観点から3〜20phr、より好ましくは3〜15phrである。添加量が多いと再生品表面からブルーミングし外観悪化を招くため好ましくない。
【0080】
回収塩化ビニル樹脂組成物に対するマスターバッチの添加量は、原料のオーバーフロー粉砕品や電線屑粉砕の材料特性から判断すると、1〜10phr、より好ましくは3〜8phrが良好であるが、再々品の流通やバージンペレットとの併用も考えられ、その都度適量域を見極めることが好ましい。
【0081】
以上本発明は、再生塩化ビニル樹脂組成物の適用例として、導体上に被覆した電線、複数の絶縁電線を被覆したケーブル等の電線被覆材料を例に説明したが、電線被覆材料以外でも、鉛フリー軟質PVCを使用する分野全般に有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収塩化ビニル樹脂に添加し、再生塩化ビニル樹脂組成物を得るためのPVCマスターバッチおいて、新規塩化ビニル樹脂に対して、可塑剤を50phr以上、ハイドロタルサイトを5〜30phr、酸化防止剤を3〜20phr含有することを特徴とする再生塩化ビニル樹脂組成物用PVCマスターバッチ。
【請求項2】
前記酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤である請求項1記載の再生塩化ビニル樹脂組成物用PVCマスターバッチ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の再生塩化ビニル樹脂組成物用PVCマスターバッチを、回収塩化ビニル樹脂に対して1〜10phr含有させたことを特徴とする再生塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の再生塩化ビニル樹脂組成物を、被覆材として用いたことを特徴とする電線・ケーブル。
【請求項5】
新規塩化ビニル樹脂に、50phr以上の可塑剤と、5〜30phrのハイドロタルサイトと、3〜20phrの酸化防止剤を添加してPVCマスターバッチを製造する工程と、
回収塩化ビニル樹脂と前記PVCマスターバッチとを溶融混練して再生塩化ビニル樹脂組成物を製造する工程と、
を含むことを特徴とする再生塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の再生塩化ビニル樹脂組成物の製造方法において、さらに、再生塩化ビニル樹脂組成物を押出被覆したことを特徴とする電線・ケーブルの製造方法。

【公開番号】特開2011−207973(P2011−207973A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75793(P2010−75793)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】