再生式ガスタービンの過速度回避装置
【課題】 負荷の急減時に過速度を迅速に回避するとともに、回転数を定格値に維持または排ガスEの温度を制限範囲内に維持しながら、再生器に蓄積された熱エネルギを効果的に放出することができる再生式ガスタービンの過速度回避装置を提供する
【解決手段】 高圧空気を生成する圧縮機1と、高圧空気に燃料を供給して燃焼させる燃焼器3と、燃焼器3からの燃焼ガスGにより作動して負荷L1を駆動するタービン7と、タービン7から排出される排ガスEによって高圧空気を加熱する再生器2と、高圧空気、燃焼ガスGまたは排ガスEからなる動作流体の一部を系外に放出する放風弁13と、タービンの回転数および排ガスEの温度の少なくとも一方に基づくフィードバック制御により放風弁13の開度を調節する弁制御手段14とを備えている。
【解決手段】 高圧空気を生成する圧縮機1と、高圧空気に燃料を供給して燃焼させる燃焼器3と、燃焼器3からの燃焼ガスGにより作動して負荷L1を駆動するタービン7と、タービン7から排出される排ガスEによって高圧空気を加熱する再生器2と、高圧空気、燃焼ガスGまたは排ガスEからなる動作流体の一部を系外に放出する放風弁13と、タービンの回転数および排ガスEの温度の少なくとも一方に基づくフィードバック制御により放風弁13の開度を調節する弁制御手段14とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷の急減や遮断などに起因してタービン回転数が上昇する過速度が生じた場合に、回転数を定格速度に回復させ、かつ、再生器に蓄積された熱エネルギを放出する過速度回避装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、舶用ガスタービンでは、負荷の急減や遮断などに起因して過速度が生じた場合に、燃料供給を完全に遮断して運転停止することは、船舶の運行に支障をきたすことから、好ましくないので、燃焼器において吹き消え(失火)が発生する直前の限界値まで燃料供給量を可及的に絞ることによって回転数の上昇を抑制し、速やかに定格速度に回復するように図る過速度回避装置が設けられている。このような過速度回避装置として、図16に示すものが知られている(特許文献1参照)。このものは、負荷急減により過速度が発生した場合、この過速度発生が速度検出器50により検出されて、入口案内翼51を開いて圧縮機52の抵抗を増大させるとともに、圧縮機52の吐出部からタービン53の排出部を結ぶ管路54上に設けた制御弁55を開いて、この制御弁55から圧縮空気を放出することにより、タービン回転数を定格速度まで低減させ、これにより、エンジンを停止させることなく過速度を回避するように図っている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−165934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記制御弁55の弁開度を制御するための関数発生器56には、過速度領域の回転数と制御弁55の弁開度との関係を示すスケジュールが予め設定されている。制御弁55は、関数発生器56から出力される、速度検出器50の検出回転数に対応した制御信号に基づき、弁開度を制御する。したがって、この過速度回避装置は、再生器を備えない図16のような単純サイクルガスタービンに適用した場合には過速度を回避する効果が期待できる。
【0005】
しかしながら、前記過速度回避装置は、排ガスの熱エネルギを回収する再生器を備えた再生式ガスタービンに用いた場合、負荷の急減直後に発生する大きな過速度を一旦回避することはできても、そののちに、再生器に蓄積された熱エネルギが回収されるのに伴い回転数が再び上昇しようとする作用に対して、その回転数を定常状態に維持し続けることができない。
【0006】
すなわち、再生器には、これが一般に大きな熱容量を有することから、負荷運転時において大量の熱エネルギが蓄積されており、負荷の急減時にはその大量の熱エネルギが回収されて回転数を上昇させるように作用する。そのため、再生式ガスタービンでは、負荷の急減時に燃料供給量を吹き消え限界まで絞っても、再生器に蓄積された熱エネルギの量によって大きな過速度が発生する可能性がある。しかも、再生器に蓄積された熱エネルギは、再生器の熱容量が大きくなるほど、その放出に長い時間を要する。したがって、前記過速度回避装置を再生式ガスタービンに用いる場合には、燃料供給量の低減と制御弁55を開くことによる圧縮空気の放出とによって負荷の急減による過速度を一旦回避したのち、回転数を定常状態に維持しようとすれば、図16の制御弁55を開き続けて再生器に蓄積された熱エネルギを放出する制御動作が必要となる。
【0007】
ところが、前記過速度回避装置の関数発生器56は、過速度領域の回転数と制御弁55の弁開度との関係を予め一義的に設定した弁開度制御信号を出力するようになっており、この弁開度制御信号は、再生器を有しない単純サイクルガスタービンに対応するように設定されたものであるから、再生器から回収される熱エネルギの状況を考慮していない。つまり、前記弁開度制御信号は、制御弁55の開放により過速度状態が回避されて回転数が定格値に戻るに従って制御弁55を閉じる方向に動作させるので、圧縮機52から再生器に入る高圧空気の量が多くなる結果、再生器の持つ熱エネルギが多く回収されてタービン53に入ることになり、タービン回転数を再び上昇させようとする。このように、過速度を一旦回避したのちは、再生器により回収される熱エネルギを速やかに放出することができないので、回転数を定格値に維持し続けることができない。この状況について、図17を参照しながら詳述する。
【0008】
図17(a)〜(f)は、前記過速度回避装置を再生式二軸ガスタービンに用いた場合における負荷の急減発生時の各部の状態をシミュレーションして示したものである。同図において、t時点で負荷が急減したときには、燃料制御弁57(図16)の弁開度を絞って燃料供給量を吹き消え限界まで絞る(図17(b))とともに、制御弁55を開いて圧縮空気を放出する(図17(c))。これにより、圧縮機52を駆動するガスジェネレータタービンの回転数は大きく低減し(図17(e))、排ガス温度も低下するが(図17(f))、負荷を駆動するパワータービンの回転数は、図17(d)に示す変動許容範囲Ra内における目標値Rrよりも高い値を比較的長い時間にわたり維持し続けるので、過速度状態が長く続いてしまう。
【0009】
これは、図17(c)に示す制御弁50の開度が、負荷の回転数が目標値Rrに向け低減するに従って小さくなるので、再生器から回収される熱エネルギが多くなり、パワータービンの回転数が再び上昇し、これに伴い制御弁55を開く方向に変化し、再生器に蓄積された大量の熱エネルギが所定値に低減するまで、小さく開き続けるためである。
【0010】
また、前記過速度回避装置のように圧縮空気を抽出することで過速度を回避する場合には、容積の大きな気体を流すために比較的容量の大きい制御弁55が必要となるが、弁開度が連続的に制御される連続制御弁55は、一般に容量が大きくなるほど動作速度が遅くなる。したがって、動作流量が多い大型ガスタービンでは、負荷の急減や瞬時遮断が発生したときに、応答性の低い連続制御弁では動作が間に合わないので、過速度を効果的に回避することが困難となる。
【0011】
本発明は前記従来の課題に鑑みてなされたもので、負荷の急減直後の過速度を回避したのちに、回転数を定格値に維持しながら、または排ガスの温度を制限範囲内に維持しながら、再生器に蓄積された熱エネルギを効果的に放出して、過速度を迅速に回避することができる再生式ガスタービンの過速度回避装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明に係る再生式ガスタービンの過速度回避装置は、高圧空気を生成する圧縮機と、前記高圧空気に燃料を供給して燃焼させる燃焼器と、前記燃焼器からの燃焼ガスにより作動して負荷を駆動するタービンと、前記タービンから排出される排ガスによって前記高圧空気を加熱する再生器と、前記高圧空気、燃焼ガスまたは排ガスからなる動作流体の一部を系外に放出する放風弁と、前記タービンの回転数、タービンからの排ガスの温度、または回転数と排ガス温度の両方に基づくフィードバック制御により前記放風弁の開度を調節する弁制御手段とを備えている。
【0013】
この構成によれば、負荷の急減が発生したときには、回転数が上昇し、この回転数の上昇により放風弁が開いて動作流体の一部をガスタービンの系外に放出するので、負荷の減少に伴い回転数が上昇しようとするのが抑制される。この負荷の急減発生直後からは、負荷運転中に再生器に蓄積された大量の熱エネルギが回収されてタービンに投入されることにより、回転数を上昇させ、かつ、排ガス温度を上昇させる方向に作用するが、弁制御手段が、前記上昇しようとする回転数、排ガス温度、またはその両方に基づき放風弁の開度をフィードバック制御する。これにより、放風弁は、回転数または排ガス温度を例えば目標値に常に維持する開度に制御され、かつ、この開度の制御が再生器に蓄積された熱エネルギが放出され終わるまで継続される。
【0014】
したがって、従来装置のように過速度領域の回転数と制御弁の開度とを一義的に関連付けて予め設定したスケージュールに基づき制御弁の開度をオープン制御するものとは異なり、この過速度回避装置では、再生器に蓄積された熱エネルギの状況に対応して放風弁の開度が常に適切に制御されるので、負荷の急減による過速度を回避したのちに、回転数を定格値に維持、または排ガス温度を制限範囲内に維持しながら、再生器に蓄積された熱エネルギを放出させることができ、過速度を効果的に、かつ、迅速に回避することができる。なお、前記開度は、放風弁による動作流体の放出量に対応している。
【0015】
前記弁制御手段が前記排ガス温度に基づいてフィードバック制御を行う場合、フィードバック制御の際に目標排ガス温度を制御開始後に徐々に低下させるようにすることが好ましい。この構成によれば、負荷の急減直後の過速度状態から回復して回転数が定格値に戻ったのちに、目標排ガス温度が一定値のままであると、放風弁の開度は、排ガス温度を目標排ガス温度になるようにフィードバックするので、再生器に蓄積された熱エネルギが減少していくにも拘らず、放風弁が開き続けてしまうが、目標排ガス温度を制御開始後に徐々に低下させることにより、放風弁の開度を全閉状態に向けて徐々に低下させることができる。
【0016】
本発明において、前記弁制御手段は、前記タービンの回転数および排ガス温度に基づく2つのフィードバック制御信号のうち、信号レベルの低い方を選択して前記放風弁の調節用信号として出力することが好ましい。この構成によれば、回転数および排ガス温度に基づく2つのフィードバック制御信号を併用して放風弁の開度を制御しながらも、両制御信号のうちの信号レベルの低い方を選択することによって、次の理由により、放風弁の開度を一層適切に制御することができる。
【0017】
すなわち、回転数に基づくフィードバック制御系のみでは、例えば動作流体である圧縮機からの高圧空気を放出させ過ぎて、燃焼温度および排ガス温度を過度に上昇させてしまうおそれがあり、一方、排ガス温度に基づくフィードバック制御系のみでは、再生器に蓄積された熱エネルギが減少して排ガス温度が目標排ガス温度より低下すると、排ガス温度が目標値になるように放風弁をさらに開こうとするので、目標排ガス温度値を徐々に低下させる特殊な制御手段が必要になる。これに対し、両制御信号のうちの信号レベルの低位の方を選択すると、回転数に基づくフィードバック制御により放風弁が開き過ぎとなったときには、排ガス温度に基づくフィードバック制御に切り換えられて排ガス温度が制限値を超えないように制限でき、一方、再生器に蓄積された熱エネルギが減少したときには、回転数に基づくフィードバック制御に切り換えることにより、目標排ガス温度値を徐々に低下させる複雑な制御手段を用いることなく放風弁を徐々に閉じさせることができる。
【0018】
削除。燃料制御手段の効果を〔0026〕の末尾にいれました。
【0019】
また、前記放風弁は、前記開度が全開および全閉の2段階に変化する開閉弁と、開度が連続的に変化可能な調整弁とを有している構成とすることが好ましい。この構成によれば、負荷が発電用などの電気的装置である場合には、負荷が瞬時に遮断される可能性があるので、発電機の運転に使われていた膨大なエネルギが瞬間的に大きな加速エネルギに変わって回転数の上昇速度が極めて大きなものとなるが、このような場合には、負荷遮断の発生時に動作速度の速い開閉弁を即座に全開することにより、瞬間的な全負荷遮断に伴い大きな過速度が発生するのを確実に抑制することができる。過速度を一旦回避したのちは、開閉弁に代えて調整弁を連続的に制御することにより、再生器に蓄積された熱エネルギを適切な速さで徐々に放出させることができる。
【0020】
前記放風弁は、前記圧縮機と再生器との間、または再生器と燃焼器との間の高圧空気の流路に設けることができる。この構成によれば、放風弁を開いて圧縮機から再生器に供給される高圧空気の一部、または再生器から燃焼器に供給される高圧空気の一部を系外に放出することにより、タービンの出力が低下して、過速度を回避することができる。
【0021】
また、前記放風弁は、前記タービンの出口と再生器との間の排ガスの流路に設けてもよい。この構成によれば、タービンから再生器に供給される排ガスの一部を系外に放出することにより再生器で回収される排ガスによる熱エネルギを少なくすることができる。これにより、タービンの出力が低下して過速度を回避することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の再生式ガスタービンの過速度回避装置によれば、負荷の急減直後の過速度を回避したのちに、動作流体の一部を系外に放出する放風弁の開度を、タービンの回転数および排ガス温度の少なくとも一方に基づきフィードバック制御していることにより、回転数を定格値に維持または排ガス温度を制限範囲内に維持しながら、再生器に蓄積された熱エネルギを徐々に放出して、過速度を効果的に、かつ、迅速に回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、本発明の第1実施形態に係る過速度回避装置を適用した再生式二軸フリーガスタービンを示す系統図である。このガスタービンは、圧縮機1が空気を圧縮して生成した高圧空気A1を再生器2を介して燃焼器3に供給し、燃焼器3が、再生器2から供給された高圧空気A2に燃料を混合して燃焼させ、その燃焼により発生する高温高圧の燃焼ガスGのエネルギにより、ガスジェネレータタービン4およびパワータービン7をそれぞれ作動させる。ガスジェネレータタービン4は、第1軸であるガスジェネレータ軸8を介して圧縮機1を駆動し、出力を取り出すためのパワータービン7は、第2軸であるパワータービン軸9を介して負荷L1を駆動する。ここでの負荷L1は、舶用プロペラのような機械的装置、または発電機のような電気的装置である。パワータービン7から排出される排ガスEは再生器2に送給され、再生器2は、排ガスEと圧縮機1からの高圧空気A1との間で熱交換して排ガスEの熱エネルギを回収し、高圧空気A1を加熱することにより高温の高圧空気A2を生成して、これをタービン4,7に供給する。
【0024】
前記パワータービン軸9には、パワータービン7の回転数を検出する回転センサ10が設けられている。燃料制御手段である燃料コントローラ11は、回転センサ10が検出するパワータービン7の回転数に基づき燃料制御弁12の開度をフィードハック制御することにより、パワータービン7の回転数を所定値に設定するように燃料の供給量を可変調節する。また、圧縮機1と再生器2との間の高圧空気A1の流路には、高圧空気A1の一部をガスタービンの系外に放出するための放風弁13が接続されている。この放風弁13は開度が連続的に変化可能なものである。
【0025】
前記放風弁13の開度を調節する弁制御手段である弁コントローラ14は、パワータービン7の定格回転数付近の値に予め設定した回転数目標値が記憶されているメモリ17と、前記回転数目標値と回転センサ10が検出するパワータービン7の回転数との差分値を算出する減算器18と、この減算器18が算出した偏差に基づいて制御信号を演算する制御器19と、この制御器19から出力される制御信号の符号を反転してフィードバック制御信号FS1を出力する反転器20と、この反転器20と放風弁13との接続線に介設されたスィッチのような開閉手段21と、回転センサ10からの回転数検出値および放風弁13の開度検出値に基づき開閉手段21を開閉制御する開閉制御手段22とを備えている。この弁コントローラ14は、パワータービン7の回転数に基づくフィードバック制御により放風弁13の開度を調節する。
【0026】
つぎに、前記実施形態の過速度回避装置における過速度を回避する動作について、各部の状況を示した図2のシミュレーション結果を参照しながら説明する。図1に示す負荷L1が図2(a)に示すようにt1時点で急減すると、図1の燃料コントローラ11は、回転センサ10からの回転数検出値の上昇により負荷L1の急減発生であると判別して、図2(b)に示す燃料制御弁12を、吹き消え限界の燃料供給量に対応する開度まで絞る制御を行う。これにより、図2(e)のガスジェネレータタービン4の回転数が大きく低下し、図2(d)に示すパワータービン7の回転数が負荷L1の急減に伴い急激に上昇しようとするのが抑制されて、負荷L1の急減直後の過速度状態が速やかに回避される。ここで、開度が連続的に変化可能な放風弁13は、応答性が比較的悪いために、過速度の発生に対しこれを即座に抑制するように機能できない場合があるが、燃料コントローラ11は、負荷の急減が発生した時点で燃料の供給量を吹き消え限界まで瞬時に絞るよう制御できるから、これにより、負荷の急減に伴う過速度を、これの発生直後に迅速に抑制することができる。
【0027】
このように過速度状態が一旦回避されたのちには、負荷L1の運転中に再生器2に蓄積されている大量の熱エネルギが回収され始めてパワータービン7の回転数を上昇させる方向に作用するから、上述のように燃料の供給量を吹き消え限界まで絞っても、パワータービン7の回転数が図2(d)に示す回転数目標値Rrに戻らない。そのため、図1の弁コントローラ14では、開閉制御手段22が、回転センサ10の回転数検出値に基づき過速度状態を検知して開閉手段21を閉じることにより、フィードバック制御が可能な状態に設定する。この状態で制御器19が、減算器18からの偏差に基づいて制御信号を演算し、この演算結果である負の信号が反転器20で正の信号に変換されて、フィードバック制御信号FS1が得られる。このフィードバック制御信号FS1により、図2(c)のt2時点で放風弁13を開かせたのち、その放風弁13の開度をパワータービン7の回転数に基づいてフィードバック制御する。フィードバック制御信号FS1は放風弁13の開度を大きくする方向を正とする。
【0028】
放風弁13が開かれると、ガスタービンを通過する動作流体である高圧空気A1の一部は放風弁13を通じて外部へ放出されて、再生器2を通過する高圧空気A1の流量が減少する。このように放風弁13を開いて圧縮機1から再生器2に供給される高圧空気A1の一部を外部に放出することにより、パワータービン7の出力が低下して、過速度を回避することができる。
【0029】
図16の従来装置では、圧縮機52の吐出部に設けた制御弁55を、過速度領域の回転数に対し一義的に設定した弁開度に制御するので、これを再生式ガスタービンに適用した場合に再生器の熱エネルギの状況に応じた開度に設定することができなかった。これに対し、前記過速度回避装置では、放風弁13の開度を再生器から回収される熱エネルギの状況に応じて設定できる。再生器2に蓄積された熱エネルギが残っている間は、放風弁13を閉じる方向に作動すると、再生器2から回収される熱エネルギによりパワータービン7の回転数が上昇しようとするので、弁コントローラ14は放風弁13を開いた状態に保持するように制御する。
【0030】
そののち、再生器2に蓄積された熱エネルギが徐々に放出されてパワータービン7を回転させようとするエネルギが減少してくると、パワータービン7の回転数はt3時点で回転数目標値Rrよりも下回ろうとするが、このとき、弁コントローラ14は、フィードバック制御信号FS1によって放風弁13を図2(c)に示すように閉じる方向にフィードバック制御するので、パワータービン7の回転数は回転数目標値Rrに維持される。これにより、パワータービン7は、負荷L1の急減により比較的大きな過速度が発生しやすい状況下においても、図2(d)に示す変動許容範囲Ra内に確実に保持される。
【0031】
弁コントローラ14は、再生器2に蓄積された熱エネルギが徐々に放出されるのに伴なって放風弁13を徐々に閉じさせる方向に制御する。この結果、パワータービン7の回転数が回転数目標値Rrに維持されながら、最終的には放風弁13が全閉状態に制御される。開閉制御手段22は前記放風弁13の全閉状態を検知した時点で開閉手段21をオフさせ、通常の運転状態に戻る。
【0032】
ところで、放風弁13が全閉となるまでの間に負荷L1の投入が行われた場合には、開閉制御手段22が、回転センサ10の回転数検出値に基づきパワータービン7の回転数の急激な低下を検知して、開閉手段21をオフさせることにより放風弁13を即座に全閉状態に制御するので、即座に通常の運転状態に戻すことができる。これにより、負荷L1が投入された状態で放風弁13が開いた状態に保持されることに起因してパータービン7の回転数が大きく低下するのを防止することができる。
【0033】
また、前記過速度回避装置では、パワータービン7の回転数に基づき燃料コントローラ11が燃料制御弁12を調節する燃料フィードバック制御系と、前記回転数に基づき弁コントローラ14が放風弁13の開度を調節する弁フィードバック制御系とを設けており、2つのフィードバック制御系が共にパワータービン7の回転数を制御するようになっているが、この2つのフィードバック制御系が互いの制御動作を干渉し合って制御動作が不安定になることはない。すなわち、燃料コントローラ11は、一般に制御動作の感度が高くなるよう調整されているので、負荷L1の変動に対し速やかに追従できる。これに対し、燃料に比べて流量が大きい動作流体の流路を開閉する放風弁13は、前述のように大形となるから、動作速度が比較的遅くなるので、弁コントローラ14は、放風弁13の応答性に対応するために、制御動作の感度をあまり高くすることができない。したがって、放風弁13の開度制御は燃料の流量制御に比較して制御動作の感度が低くならざるを得ず、その結果、双方の制御動作が干渉を起こさないように容易に調整できる。
【0034】
前記第1実施形態の過速度回避装置を適用した再生式二軸フリーガスタービンは、負荷L1の急減時に比較的大きな過速度が発生しやすいガスタービンである。すなわち、一軸ガスタービンでは、出力軸と同軸上に圧縮機とタービンと負荷とが結合されており、負荷の急減時にタービンの回転数を上昇させようとするのに対して圧縮機がある程度の抵抗となり、過速度を妨げようとする方向に作用する。これに対し、二軸フリータービンでは、負荷L1を駆動するパワータービン軸9には圧縮機1が結合されていないので、負荷L1の急減が発生した際には、摩擦抵抗など若干の機械損を除いて抵抗となる要素がなくなってしまうことから、過速度が発生しやすい状態となる。これを再生式とした場合には、さらに再生器2から回収された熱エネルギも加わるので、再生式二軸フリータービンは、負荷L1の急減時に比較的大きな過速度が発生しやすくなる。これに対し、前記過速度回避装置は、そのような大きな過速度が発生しても、上述のように確実に回避でき、さらに、二軸フリータービン以外のいかなる形態の再生式ガスタービンに適用した場合にも、確実に過速度を回避することができ、これは、以下の実施形態のいずれにおいても同様である。
【0035】
図3は、本発明の第2実施形態に係る過速度回避装置を適用した再生式二軸フリーガスタービンを示す系統図である。この過速度回避装置が第1実施形態のものと相違するのは、第1実施形態ではパワータービン7の回転数に基づくフィードハック制御により放風弁13の開度を調節するのに対し、この過速度回避装置ではパワータービン7から排出される排ガスEの温度に基づくフィードバック制御により放風弁13の開度を調節する点のみであり、したがって、放風弁13をフィードバック制御するための弁コントローラ14Aの構成が第1実施形態とは相違する。
【0036】
すなわち、前記弁コントローラ14Aは、温度テーブル24と減算器28とを有している。温度テーブル24には、初期値から時間経過ともに低下する排ガスEの目標排ガス温度値が予め設定されている。前記減算器28は、温度テーブル24からの目標排ガス温度値と、温度センサ27が検出する排ガスEの温度との差分値を算出する。この排ガス温度は、パワータービン7と再生器2間の排ガスEの温度である。弁コントローラ14Aはさらに、減算器28が算出した偏差に基づいてフィードバック制御信号FS2を演算する制御器29と、この制御器29と放風弁13との接続線に介設された開閉手段21と、回転センサ10からの回転数検出値および放風弁13の開度検出値に基づき開閉手段21を開閉制御する開閉制御手段22と、回転センサ10からの回転数検出値および放風弁13の開度検出値に基づき温度テーブル24の目標排ガス温度の変更指令およびリセット指令を行うテーブル制御手段30とを備えている。
【0037】
つぎに、この第2実施形態の過速度回避装置における過速度を回避する動作について、各部の状況を示した図4のシミュレーション結果を参照しながら説明する。図3に示す負荷L1が図4(a)に示すようにt11時点で急減すると、第1実施形態と同様に、燃料コントローラ11が燃料制御弁12を吹き消え限界の燃料供給量に対応する開度まで絞る制御を行うので、負荷L1の急減直後の過速度状態が速やかに回避される。そののち、再生器2に蓄積された熱エネルギが回収されてパワータービン7の回転数を上昇させる方向に作用するから、パワータービン7の回転数は即座に回転数目標値Rrに戻らない。また、負荷L1の急減時には、開閉制御手段22が回転数検出値に基づき過速度状態を検知して開閉手段21を閉じることにより、弁コントローラ14Aがフィーバック制御の状態に入る。
【0038】
弁コントローラ14Aの温度テーブル24には、図4(f)に示す目標排ガス温度値Trとして、負荷運転時に許容されている制限温度よりも少し低い値が設定されている。これは、温度制限に対してある程度の余裕を持たせるためである。つまり、図3の放風弁13を開くと、再生器2から燃焼器3に入る高圧空気A2の流量が減少して、排ガスEの温度が上昇するので、排ガス温度の制限値Trに到達するまで、放風弁13を閉状態させることができる余裕を与えるためである。
【0039】
そして、負荷L1の急変が生じたt11時点では、上述のように燃料が吹き消え限界まで絞られるのに伴ない排ガスEの温度も目標排ガス温度Trよりも大きく低下するので、減算器28から比較的大きな差分値が出力されて、制御器29が放風弁13を大きな開度に開かせるように調節する。これにより、比較的多くの高圧空気A1が放風弁13を通じて外部へ放出されるので、再生器2を通過する高圧空気A1の流量が減少するのに伴い燃焼温度が上昇して、図4(f)に示すように排ガスEの温度も同様に上昇する。このとき、弁コントローラ14Aは、前記上昇した排ガスEの温度に基づくフィードバック制御を行って放風弁13を適度な開度に調節し、排ガスEの温度が目標排ガス温度値Trに達する方向に放風弁13の開度の制御を継続する。
【0040】
したがって、この過速度回避装置では、再生器2に蓄積された大量の熱エネルギの放出を行いながらも、放風弁13の開度を、排ガスEの温度が目標排ガス温度値Trを超えない範囲内に制限してフィードバック制御できるので、放風弁13の開度が大きくなり過ぎることに起因して燃焼温度や排ガスEの温度がガスタービンの高温部材が耐えられる限界温度を超えるまで過度に上昇してしまうといったことを確実に防止できる利点がある。
【0041】
そして、図4(d)のt12時点では、負荷L1の急減直後の過速度状態から回復してパワータービン7の回転数が目標回転数Rrに戻った整定状態となる。こののち、排ガスEの温度を目標排ガス温度値Trになるように放風弁13の開度を設定するフィードバック制御をそのまま継続すると、再生器2に蓄積された熱エネルギが減少していくから、排ガスEの温度が目標排ガス温度値Trまで到達しなくなる。この場合、放風弁13は、目標排ガス温度値Trになるように制御されることから、再生器2の熱エネルギが減少しているにもかかわらず、さらに開く方向に動作することになる。
【0042】
そこで、前記過速度回避装置では、図3のテーブル制御手段30が、回転センサ10の回転数検出値に基づきパワータービン7の回転数が定格状態に整定したのを検知した時点で、温度テーブル24に対し目標排ガス温度値Trの変更指令を与えるようになっている。これにより、温度テーブル24は、ランプ関数などの手段により、図4(f)の2点鎖線に示すように、目標排ガス温度値Trを徐々に低下させるように変更する。弁コントローラ14Aは、排ガスEの温度が変更された目標排ガス温度値Trになるように放風弁13の開度を設定するフィードバック制御を行うので、放風弁13は全閉に向け徐々に小さな開度に絞られていき、放風弁13が小さな開度に保持されることによってパワータービン7の回転数の上昇が抑制され、再生器に蓄積された熱エネルギを徐々に放出し続ける。
【0043】
前記テーブル制御手段30は、過速度、放風弁13の全閉、または負荷L1の投入の何れかを検知したときに、温度テーブル24に対しリセット指令を与えて初期(時点t11)の目標排ガス温度Trを再設定させる。また、前記過速度回避装置においても、第1実施形態と同様に、放風弁13が全閉となるまでの間に負荷L1の投入が行われた場合、開閉制御手段22が開閉手段21をオフさせることにより、放風弁13を即座に全閉状態として通常の運転状態に戻される。
【0044】
なお、前記過速度回避装置では、排ガスEの温度に代えて、燃焼ガスGの温度に基づくフィードバック制御を行っても、上述と同様の作用および効果を得ることができる。その場合には、ガスタービンの燃焼温度が通常1200℃前後の高温であることから、耐久性に優れた高価な温度センサを用いる必要があるので、前記第2実施形態のように比較的低い排ガスEの温度を利用する方が好ましい。
【0045】
図5は、本発明の第3実施形態に係る過速度回避装置を適用した再生式二軸フリーガスタービンを示す系統図である。この過速度回避装置では、弁コントローラ14Bが、第1実施形態で設けたのと同一のメモリ17、減算器18、制御器19および反転器20を有する第1のフィードバック制御系34と、予め設定した一定値である目標排ガス温度Tr0 が記憶されたメモリ32、減算器28および制御器29を有して第2実施形態とほぼ同じ構成となった第2のフィードバック制御系37と、これら第1および第2のフィードバック制御系34,37に基づく2つの第1および第2のフィードバック制御信号FS1,FS2のうちの信号レベルの低い方を選択して放風弁13の開度の調整用信号として出力する低位選択器33と、第1および第2実施形態で設けたのと同一の開閉手段21および開閉制御手段22とを備えている。すなわち、この弁コントローラ14Bは、第1のフィードバック制御系によるパワータービン7の回転数の制御と、第2のフィードハック制御系による排ガスEの温度の制御とを選択的に行って、過速度の回避を行うように制御動作する。
【0046】
つぎに、この実施形態の過速度回避装置における過速度を回避する動作について、各部の状況を示した図6のシミュレーション結果を参照しながら説明する。なお、第1および第2実施形態で説明したのと同一の動作については、重複する説明を省略する。図5に示す負荷L1が図6(a)に示すようにt21時点で急減すると、燃料の供給量を絞ってパワータービン7の急激な上昇を抑制し、その直後に、第1のフィードバック制御系34によるパワータービン7の回転数のフィードバック制御と、第2のフィードハック制御系37による排ガス温度のフィードバック制御とが同時に開始されるが、低位選択器33は、両フィードバック制御系34,37から出力される2つのフィードバック制御信号FS1,FS2のうちの信号レベルの低い方、つまり開度指令の小さい方を選択して、放風弁13の開度を調節する。
【0047】
負荷L1の急減発生直後は、燃料の供給量が絞られることにより排ガスEの温度が比較的大きく低下するのに伴い、温度センサ27で検知された排ガス温度に基づく第2のフィードバック制御信号FS2による開度指令も大きくなるので、低位選択器33が低信号レベルの第1のフィードバック制御信号FS1を選択して放風弁13の開度の調整用信号として出力する。これにより、パワータービン7の回転数がメモリ17に記憶された回転数目標値Rrになるようにフィードバック制御される。
【0048】
再生器2に蓄積された熱エネルギが徐々に放出されてパワータービン7を回転させようとするエネルギが減少してくると、図6(d)のt22時点で、パワータービン7の回転数が回転数目標値Rrを下回る方向に低下してくる。このとき、排ガスEの温度は、放風弁13を通じ高圧空気A1の一部が系外に放出されてガスタービンを通過する動作流体の流量が減少するのに伴い上昇するので、第2のフィードバック制御信号FS2による開度指令が第1のフィードバック制御信号FS1の開度指令よりも小さくなる。したがって、弁コントローラ14Bは、低位選択器33により、第1のフィードバック制御信号FS1から第2のフィードバック制御信号FS2に切り換えることにより、放風弁13の開度を、排ガスEの温度がメモリ32に記憶された目標排ガス温度値Tr0 (図6(f))に合致するようにフィードバック制御する。
【0049】
前記目標排ガス温度Tr0 は、第2実施形態のような徐々に低下させる値ではなく、メモリ32に記憶設定された一定値とされている。しかしながら、排ガスEの温度は、再生器2に蓄積された熱エネルギが放出されるのに伴い、目標排ガス温度Tr0 に到達することなく低下していく。そのため、t23時点では、第2のフィードバック制御信号FS2による開度指令が第1のフィードバック制御信号FS1による開度指令よりも大きくなり、低位選択器33によって再び第1のフィードバック制御信号FS1が選択されて、パワータービン7の回転数に基づき放風弁13の開度がフィードバック制御される。
【0050】
上述のように、第1および第2のフィーバック制御系34,37を併用して、これらの各フィードバック制御信号FS1,FS2のうちの信号レベルの低い方を選択して放風弁13の開度をフィードバック制御することにより、第1実施形態において発生するおそれがある不具合および第2実施形態が有する構成の若干の複雑化を共に解消することができる。この点について、以下に説明する。
【0051】
図1および図2に示した第1実施形態では、排ガスEの温度を監視することなく、パワータービン7の回転数のみに基づき放風弁13の開度を制御しているので、場合によっては高圧空気A1の放出量が大きくなり過ぎて燃焼温度や排ガスEの温度を過度に上昇させてしまうおそれがあり、このような不具合が発生した場合を図2に例示してある。すなわち、図2(b)のt3時点で、放風弁13の設定開度が大き過ぎたことに起因して、同図(d),(b)に示すように、動作流体の減少によりパワータービン7の回転数が回転数目標値Rrよりも下回ろうとすると、燃料の供給量が一時的に増大し、かつ、高圧空気A1の放出量が多いので、同図(f)に示すように、排ガスEの温度が一時的に過度に上昇する。これに対し、第3実施形態では、放風弁13の開度が大きくなり過ぎたことに起因して、図6(d)に示すパワータービン7の回転数が目標回転数Rrに近づいたt22時点で、第2のフィードバック制御信号FS2による制御に切り換えて、排ガスEの温度が制限値を超えないように制御するので、第1実施形態が有する不具合の発生が解消される。
【0052】
また、図3および図4に示した第2実施形態では、再生器2に蓄積された熱エネルギが或る程度放出されてパワータービン7の回転数がほぼ定格値に落ち着く整定状態になったときに、温度テーブル24とテーブル制御手段30とにより、前記整定状態を検知して目標排ガス温度値Trを徐々に低下させる特殊な制御を行う必要がある。これに対し、第3実施形態では、目標排ガス温度値Tr0 を図5のメモリ32に設定するだけの簡単な構成としながらも、再生器2に蓄積されたエネルギの放出に伴い排ガスEの温度が低下する図6(f)のT23時点では、再び第1のフィードバック制御信号FS1による制御に切り換えて、再生器2に蓄積された熱エネルギが減少するのに伴って放風弁13を全閉に向け徐々に閉じさせるように制御できる。
【0053】
図7および図8は、本発明の第4および第5実施形態に係る各過速度回避装置をそれぞれ適用した再生式二軸フリーガスタービンの要部を示す系統図である。第1ないし第3実施形態では、放風弁13を圧縮機1の出口と再生器2の入口との間の空気流路に設けたのに対し、図7の第4実施形態では、放風弁13を再生器2の出口と燃焼器3の入口の間の空気流路に設けており、図8の第5実施形態では、放風弁13をパワータービン7の出口と再生器2の入口との間の排ガス流路に設けている。
【0054】
図7の第4実施形態では、第1ないし第3実施形態の場合と異なり、再生器2を通過する空気流量が減少しないので、再生器2において回収される熱エネルギを減少させることはできないが、この再生器において熱エネルギにより加熱された高圧空気A2の一部をガスタービンの系外へ放出することにより、パワータービン7に投入される熱エネルギを少なくすることができる。これにより、第1ないし第3実施形態における再生器2へ供給する高圧空気A1の一部を系外に放出する場合と同様の作用および効果を得ることができる。なお、図7においては、図示を省略しているが、第1ないし第3実施形態で示したいずれのフィードバック制御系をもそのまま適用することができる。
【0055】
また、図8の第5実施形態では、再生器2を通過する排ガスEの流量を減少させることができ、これにより、再生器2自身に回収される熱エネルギを減らすことができる。その結果、高圧空気A2の熱エネルギ、つまりパワータービン7に投入される熱エネルギを少なくすることができるので、やはり第1ないし第3実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。なお、図8においては、図示を省略しているが、第1実施形態で示した回転数に基づくフィードバック制御系をそのまま適用することができる。
【0056】
この第5実施形態に第2または第3実施形態のフィードバック制御系(排ガス温度、または排ガス温度と回転数の両方に基づく制御)を適用することは、次の理由から好ましくない。図8の第5実施形態では、放風弁13の開閉操作に対する排ガスEの温度の特性が異なる。すなわち、第1〜第4の実施形態では、放風弁13を開くと燃焼器3およびタービン4,7を通過するガス流量が減少するため、排ガスEの温度が上昇しようとする。これに対し、第5実施形態では、図8の放風弁13を開くと、再生器2を通過する排ガスEの流量が減少する一方で、燃焼器3およびタービン4,7を通過するガス流量は減少しない。したがって、排ガスEの温度は、再生器2からの回収熱量が減るのに伴い若干低下する。このように、第5実施形態においては、第1〜第4実施形態とは異なり、排ガスEの温度は上昇しないので、排ガスEの温度のフィードバック制御を用いる方法は適切でなく、パワータービン7の回転数を用いる方法が適切である。なお、この回転数に基づくフィードバック制御によっても、放風弁13の開放によって排ガスEの温度が上昇することはないので、高圧空気A1,A2を放出する場合と異なり、過度な放出によって燃焼温度および排ガス温度を過度に上昇させるおそれはない。
【0057】
図9は、本発明の第6実施形態に係る過速度回避装置を適用した再生式二軸フリーガスタービンの要部を示す系統図である。この第6実施形態は、発電用や電気推進を対象とした発電機などの電気的装置を負荷L2として用いる場合に特に適したものである。この過速度回避装置が第1ないし第3実施形態と相違するのは、放風弁38として、第1ないし第3実施形態において放風弁とした用いたものと同一の、開度が連続的に変化可能な調整弁39と、開度が全開および全閉の2段階に変化する開閉弁40とを有している構成のみであり、フィードバック制御系として、第1ないし第3実施形態で示したいずれかのものをそのまま適用することができる。
【0058】
先ず、放風弁38を調整弁39と開閉弁40とで構成した理由について説明する。船の推進機のような機械的装置からなる負荷L1では、瞬時に遮断された場合であっても、負荷L1自身の機械的な抵抗によって或る程度の時間遅れを持って出力が減少するため、ガスタービンに対しては瞬時に負荷L1の出力が瞬時に0まで低下しない。これに対し、電気的装置からなる負荷L2では、瞬時に負荷投入や負荷遮断が行われ、さらに、発電機や電力系統に異常が生じたような場合には、例えば遮断器の開放により制御系統から切り離されて、瞬時に全負荷状態から全負荷遮断に至ることがある。さらに、前記負荷L2では、瞬時に全負荷遮断が生じた場合に、発電などに使われていた膨大なエネルギが瞬間的に大きな加速エネルギに変わるため、過速度発生時におけるパワータービン7の回転数の上昇速度は極めて大きなものとなる。
【0059】
そこで、前記過速度回避装置では、放風弁38として開閉弁40を加えることにより、瞬間的な負荷遮断に対する追従性を確保するとともに、放風弁38において開閉弁40から調整弁39に切り換えることにより、再生器2から回収される熱エネルギに対しても適切な過速度の回避制御を行えるようにしたものである。
【0060】
つぎに、この第6実施形態の過速度回避装置における過速度を回避する動作について、各部の状況を示した図10のシミュレーション結果を参照しながら説明する。なお、図10は、第3実施形態における図5の弁コントローラ14Bを用いる場合とほぼ同等のフィードバック制御系によって図9の放風弁38の開度をフィードバック制御した場合を例示してある。図10(a)に示すt31時点で図9に示す負荷L2が遮断されると、図10(d)に示すようにパワータービン7の回転数が瞬間的に上昇する。このとき、同図(c)に示すように、放風弁38では開閉弁40が全開し、かつ、調整弁39がパワータービン7の回転数に基づくフィードバック制御による開度に設定されるが、前記パワータービン7の回転数の瞬間的な上昇は、開閉弁40の全開によって比較的大量の動作流体が系外に放出されることにより、抑制される。
【0061】
開閉弁40の全開によって、パワータービン7の回転数が適当な値まで低下した図10(d)のt32時点では、開閉弁40が全閉状態に制御され、そののちは、第1ないし第3実施形態のいずれかで説明したと同様のフィードバック制御により調整弁39の開度が連続的に制御され、これにより、再生器2に蓄積された熱エネルギが放出される。
【0062】
このように、前記過速度回避装置では、電気的装置のような負荷L2が瞬間に遮断された場合に効果的、かつ、迅速に過速度を回避できるものであり、このような効果が得られることを具体的に示すための比較例として、第1および第2実施形態の過速度回避装置において電気的装置である負荷L2の瞬間遮断が生じた場合の各部の状態を図11および図12に示してある。図11(第1実施形態)および図12(第2実施形態)の場合においても、開度が連続的に変化可能な放風弁13では、動作速度が比較的遅いことから、多くの流量の高圧空気または排ガスEを瞬間的に放風することができないので、図11(d)および図12(d)に示すように、パワータービン7の回転数が変動許容範囲Raの上限を超えて上昇したり、排ガス温度が目標排ガス温度Tr以上に上昇する、といった不具合が発生し、過速度を効果的に回避することができない。
【0063】
また、第6実施形態の放風弁38の一部として用いた開閉弁40は、調整弁39よりは動作速度が速いので、この開閉弁40のみで電気的装置のような負荷L2の瞬時遮断時の過速度を回避することも考えられる。図13は、第6実施形態における放風弁38のうちの調整弁39を除外した構成で負荷L2の瞬時遮断時の過速度を回避するように図った比較例の各部の状態を示したものである。この場合、負荷L2が遮断された直後のパワータービン7の回転数の瞬間的な上昇は、開閉弁40の全開によって比較的大量の動作流体を系外に放出することによって抑制することができる。
【0064】
しかし、再生式ガスタービンの場合には、負荷L2の遮断直後の過速度状態を回避した後も再生器2に蓄積された熱エネルギが放出され終わるまでに比較的長い時間を要することから、負荷L2の遮断直後の過速度状態を回避した時点で開閉弁40を閉じてしまうと、再生器2から回収された熱エネルギにより再び過速度状態となってしまうので、開閉弁40を再び開かなければならず、図13(c)に示すように、開閉弁40を全開と全閉に交互に頻繁に繰り返すように制御しなければならない。したがって、再生式ガスタービンでは、開閉弁40に加えて、開度が連続的に変化可能な調整弁39を設けることが好ましい。
【0065】
図14および図15は、本発明の第7および第8実施形態に係る各過速度回避装置をそれぞれ適用した再生式二軸フリーガスタービンの要部を示す系統図である。図9の第6実施形態では、調整弁39と開閉弁40とを備えた放風弁38を圧縮機1の出口と再生器3の入口との間の空気流路に設けたのに対し、図14の第7実施形態では、前記放風弁38を再生器2の出口と燃焼器3の入口の間の空気流路に設けており、これにより、再生器において熱エネルギにより加熱された高圧空気の一部を系外へ放出することによってパワータービン7に投入される熱エネルギを少なくすることができる。図15の第8実施形態では、放風弁38をパワータービン7の出口と再生器2の入口との間の排ガス流路に設けており、これにより、再生器2を通過する排ガスEの流量を減少させて再生器2自身に回収される熱エネルギを減らすことができる。したがって、いずれの場合にも、第6実施形態で説明したと同様の効果を得ることができる。
【0066】
図14の第7実施形態では、第1〜第3実施形態で示したいずれのフィードバック制御(回転数または/および排ガス温度に基づく制御)も適用できる。図15の第8実施形態では、排ガスEを放出するので、図8の第5実施形態の場合と同様に、第1実施形態のフィードバック制御(回転数に基づく制御)を適用するのが好ましい。
【0067】
本発明の放風弁13,38は、前記各実施形態からもわかるとおり、圧縮機1から再生器2、燃焼機3、ガスジェネレータタービン4およびパワータービン7を経て再生器2に至るまでの作動流体の流路(流路の両端である圧縮機1および再生器2を含む)のいずれの箇所にも設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1実施形態に係る過速度回避装置を適用した再生式ガスタービンを示す系統図である。
【図2】(a)〜(f)は同上の過速度回避装置における負荷の急減発生時の各部の状態を示すシミュレーション図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る過速度回避装置を適用した再生式ガスタービンを示す系統図である。
【図4】(a)〜(f)は同上の過速度回避装置における負荷の急減発生時の各部の状態を示すシミュレーション図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る過速度回避装置を適用した再生式ガスタービンを示す系統図である。
【図6】(a)〜(f)は同上の過速度回避装置における負荷の急減発生時の各部の状態を示すシミュレーション図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る過速度回避装置を適用した再生式ガスタービンの要部を示す系統図である。
【図8】本発明の第5実施形態に係る過速度回避装置を適用した再生式ガスタービンの要部を示す系統図である。
【図9】本発明の第6実施形態に係る過速度回避装置を適用した再生式ガスタービンの要部を示す系統図である。
【図10】(a)〜(f)は同上の過速度回避装置における負荷の急減発生時の各部の状態を示すシミュレーション図である。
【図11】(a)〜(f)は第1実施形態に係る過速度回避装置における電気的装置の負荷の遮断発生時の各部の状態を示すシミュレーション図である。
【図12】(a)〜(f)は第2実施形態に係る過速度回避装置における電気的装置の負荷の遮断発生時の各部の状態を示すシミュレーション図である。
【図13】(a)〜(f)は第6実施形態に係る過速度回避装置における放風弁を開閉弁のみで構成した比較例の電気的装置の負荷の遮断発生時の各部の状態を示すシミュレーション図である。
【図14】本発明の第7実施形態に係る過速度回避装置を適用した再生式ガスタービンの要部を示す系統図である。
【図15】本発明の第8実施形態に係る過速度回避装置を適用した再生式ガスタービンの要部を示す系統図である。
【図16】従来のガスタービンの過速度回避装置を示す系統図である。
【図17】(a)〜(f)は同上の過速度回避装置を再生式二軸ガスタービンに用いた場合における負荷の急減発生時の各部の状態を示すシミュレーション図である。
【符号の説明】
【0069】
1 圧縮機
2 再生器
3 燃焼器
7 パワータービン(タービン)
11 燃料コントローラ(燃料制御手段)
13,38 放風弁
14,14A,14B 弁コントローラ(弁制御手段)
39 調整弁
40 開閉弁
L1,L2 負荷
FS1,FS2 フィードバック制御信号
Tr,Tr0 目標排ガス温度
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷の急減や遮断などに起因してタービン回転数が上昇する過速度が生じた場合に、回転数を定格速度に回復させ、かつ、再生器に蓄積された熱エネルギを放出する過速度回避装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、舶用ガスタービンでは、負荷の急減や遮断などに起因して過速度が生じた場合に、燃料供給を完全に遮断して運転停止することは、船舶の運行に支障をきたすことから、好ましくないので、燃焼器において吹き消え(失火)が発生する直前の限界値まで燃料供給量を可及的に絞ることによって回転数の上昇を抑制し、速やかに定格速度に回復するように図る過速度回避装置が設けられている。このような過速度回避装置として、図16に示すものが知られている(特許文献1参照)。このものは、負荷急減により過速度が発生した場合、この過速度発生が速度検出器50により検出されて、入口案内翼51を開いて圧縮機52の抵抗を増大させるとともに、圧縮機52の吐出部からタービン53の排出部を結ぶ管路54上に設けた制御弁55を開いて、この制御弁55から圧縮空気を放出することにより、タービン回転数を定格速度まで低減させ、これにより、エンジンを停止させることなく過速度を回避するように図っている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−165934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記制御弁55の弁開度を制御するための関数発生器56には、過速度領域の回転数と制御弁55の弁開度との関係を示すスケジュールが予め設定されている。制御弁55は、関数発生器56から出力される、速度検出器50の検出回転数に対応した制御信号に基づき、弁開度を制御する。したがって、この過速度回避装置は、再生器を備えない図16のような単純サイクルガスタービンに適用した場合には過速度を回避する効果が期待できる。
【0005】
しかしながら、前記過速度回避装置は、排ガスの熱エネルギを回収する再生器を備えた再生式ガスタービンに用いた場合、負荷の急減直後に発生する大きな過速度を一旦回避することはできても、そののちに、再生器に蓄積された熱エネルギが回収されるのに伴い回転数が再び上昇しようとする作用に対して、その回転数を定常状態に維持し続けることができない。
【0006】
すなわち、再生器には、これが一般に大きな熱容量を有することから、負荷運転時において大量の熱エネルギが蓄積されており、負荷の急減時にはその大量の熱エネルギが回収されて回転数を上昇させるように作用する。そのため、再生式ガスタービンでは、負荷の急減時に燃料供給量を吹き消え限界まで絞っても、再生器に蓄積された熱エネルギの量によって大きな過速度が発生する可能性がある。しかも、再生器に蓄積された熱エネルギは、再生器の熱容量が大きくなるほど、その放出に長い時間を要する。したがって、前記過速度回避装置を再生式ガスタービンに用いる場合には、燃料供給量の低減と制御弁55を開くことによる圧縮空気の放出とによって負荷の急減による過速度を一旦回避したのち、回転数を定常状態に維持しようとすれば、図16の制御弁55を開き続けて再生器に蓄積された熱エネルギを放出する制御動作が必要となる。
【0007】
ところが、前記過速度回避装置の関数発生器56は、過速度領域の回転数と制御弁55の弁開度との関係を予め一義的に設定した弁開度制御信号を出力するようになっており、この弁開度制御信号は、再生器を有しない単純サイクルガスタービンに対応するように設定されたものであるから、再生器から回収される熱エネルギの状況を考慮していない。つまり、前記弁開度制御信号は、制御弁55の開放により過速度状態が回避されて回転数が定格値に戻るに従って制御弁55を閉じる方向に動作させるので、圧縮機52から再生器に入る高圧空気の量が多くなる結果、再生器の持つ熱エネルギが多く回収されてタービン53に入ることになり、タービン回転数を再び上昇させようとする。このように、過速度を一旦回避したのちは、再生器により回収される熱エネルギを速やかに放出することができないので、回転数を定格値に維持し続けることができない。この状況について、図17を参照しながら詳述する。
【0008】
図17(a)〜(f)は、前記過速度回避装置を再生式二軸ガスタービンに用いた場合における負荷の急減発生時の各部の状態をシミュレーションして示したものである。同図において、t時点で負荷が急減したときには、燃料制御弁57(図16)の弁開度を絞って燃料供給量を吹き消え限界まで絞る(図17(b))とともに、制御弁55を開いて圧縮空気を放出する(図17(c))。これにより、圧縮機52を駆動するガスジェネレータタービンの回転数は大きく低減し(図17(e))、排ガス温度も低下するが(図17(f))、負荷を駆動するパワータービンの回転数は、図17(d)に示す変動許容範囲Ra内における目標値Rrよりも高い値を比較的長い時間にわたり維持し続けるので、過速度状態が長く続いてしまう。
【0009】
これは、図17(c)に示す制御弁50の開度が、負荷の回転数が目標値Rrに向け低減するに従って小さくなるので、再生器から回収される熱エネルギが多くなり、パワータービンの回転数が再び上昇し、これに伴い制御弁55を開く方向に変化し、再生器に蓄積された大量の熱エネルギが所定値に低減するまで、小さく開き続けるためである。
【0010】
また、前記過速度回避装置のように圧縮空気を抽出することで過速度を回避する場合には、容積の大きな気体を流すために比較的容量の大きい制御弁55が必要となるが、弁開度が連続的に制御される連続制御弁55は、一般に容量が大きくなるほど動作速度が遅くなる。したがって、動作流量が多い大型ガスタービンでは、負荷の急減や瞬時遮断が発生したときに、応答性の低い連続制御弁では動作が間に合わないので、過速度を効果的に回避することが困難となる。
【0011】
本発明は前記従来の課題に鑑みてなされたもので、負荷の急減直後の過速度を回避したのちに、回転数を定格値に維持しながら、または排ガスの温度を制限範囲内に維持しながら、再生器に蓄積された熱エネルギを効果的に放出して、過速度を迅速に回避することができる再生式ガスタービンの過速度回避装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明に係る再生式ガスタービンの過速度回避装置は、高圧空気を生成する圧縮機と、前記高圧空気に燃料を供給して燃焼させる燃焼器と、前記燃焼器からの燃焼ガスにより作動して負荷を駆動するタービンと、前記タービンから排出される排ガスによって前記高圧空気を加熱する再生器と、前記高圧空気、燃焼ガスまたは排ガスからなる動作流体の一部を系外に放出する放風弁と、前記タービンの回転数、タービンからの排ガスの温度、または回転数と排ガス温度の両方に基づくフィードバック制御により前記放風弁の開度を調節する弁制御手段とを備えている。
【0013】
この構成によれば、負荷の急減が発生したときには、回転数が上昇し、この回転数の上昇により放風弁が開いて動作流体の一部をガスタービンの系外に放出するので、負荷の減少に伴い回転数が上昇しようとするのが抑制される。この負荷の急減発生直後からは、負荷運転中に再生器に蓄積された大量の熱エネルギが回収されてタービンに投入されることにより、回転数を上昇させ、かつ、排ガス温度を上昇させる方向に作用するが、弁制御手段が、前記上昇しようとする回転数、排ガス温度、またはその両方に基づき放風弁の開度をフィードバック制御する。これにより、放風弁は、回転数または排ガス温度を例えば目標値に常に維持する開度に制御され、かつ、この開度の制御が再生器に蓄積された熱エネルギが放出され終わるまで継続される。
【0014】
したがって、従来装置のように過速度領域の回転数と制御弁の開度とを一義的に関連付けて予め設定したスケージュールに基づき制御弁の開度をオープン制御するものとは異なり、この過速度回避装置では、再生器に蓄積された熱エネルギの状況に対応して放風弁の開度が常に適切に制御されるので、負荷の急減による過速度を回避したのちに、回転数を定格値に維持、または排ガス温度を制限範囲内に維持しながら、再生器に蓄積された熱エネルギを放出させることができ、過速度を効果的に、かつ、迅速に回避することができる。なお、前記開度は、放風弁による動作流体の放出量に対応している。
【0015】
前記弁制御手段が前記排ガス温度に基づいてフィードバック制御を行う場合、フィードバック制御の際に目標排ガス温度を制御開始後に徐々に低下させるようにすることが好ましい。この構成によれば、負荷の急減直後の過速度状態から回復して回転数が定格値に戻ったのちに、目標排ガス温度が一定値のままであると、放風弁の開度は、排ガス温度を目標排ガス温度になるようにフィードバックするので、再生器に蓄積された熱エネルギが減少していくにも拘らず、放風弁が開き続けてしまうが、目標排ガス温度を制御開始後に徐々に低下させることにより、放風弁の開度を全閉状態に向けて徐々に低下させることができる。
【0016】
本発明において、前記弁制御手段は、前記タービンの回転数および排ガス温度に基づく2つのフィードバック制御信号のうち、信号レベルの低い方を選択して前記放風弁の調節用信号として出力することが好ましい。この構成によれば、回転数および排ガス温度に基づく2つのフィードバック制御信号を併用して放風弁の開度を制御しながらも、両制御信号のうちの信号レベルの低い方を選択することによって、次の理由により、放風弁の開度を一層適切に制御することができる。
【0017】
すなわち、回転数に基づくフィードバック制御系のみでは、例えば動作流体である圧縮機からの高圧空気を放出させ過ぎて、燃焼温度および排ガス温度を過度に上昇させてしまうおそれがあり、一方、排ガス温度に基づくフィードバック制御系のみでは、再生器に蓄積された熱エネルギが減少して排ガス温度が目標排ガス温度より低下すると、排ガス温度が目標値になるように放風弁をさらに開こうとするので、目標排ガス温度値を徐々に低下させる特殊な制御手段が必要になる。これに対し、両制御信号のうちの信号レベルの低位の方を選択すると、回転数に基づくフィードバック制御により放風弁が開き過ぎとなったときには、排ガス温度に基づくフィードバック制御に切り換えられて排ガス温度が制限値を超えないように制限でき、一方、再生器に蓄積された熱エネルギが減少したときには、回転数に基づくフィードバック制御に切り換えることにより、目標排ガス温度値を徐々に低下させる複雑な制御手段を用いることなく放風弁を徐々に閉じさせることができる。
【0018】
削除。燃料制御手段の効果を〔0026〕の末尾にいれました。
【0019】
また、前記放風弁は、前記開度が全開および全閉の2段階に変化する開閉弁と、開度が連続的に変化可能な調整弁とを有している構成とすることが好ましい。この構成によれば、負荷が発電用などの電気的装置である場合には、負荷が瞬時に遮断される可能性があるので、発電機の運転に使われていた膨大なエネルギが瞬間的に大きな加速エネルギに変わって回転数の上昇速度が極めて大きなものとなるが、このような場合には、負荷遮断の発生時に動作速度の速い開閉弁を即座に全開することにより、瞬間的な全負荷遮断に伴い大きな過速度が発生するのを確実に抑制することができる。過速度を一旦回避したのちは、開閉弁に代えて調整弁を連続的に制御することにより、再生器に蓄積された熱エネルギを適切な速さで徐々に放出させることができる。
【0020】
前記放風弁は、前記圧縮機と再生器との間、または再生器と燃焼器との間の高圧空気の流路に設けることができる。この構成によれば、放風弁を開いて圧縮機から再生器に供給される高圧空気の一部、または再生器から燃焼器に供給される高圧空気の一部を系外に放出することにより、タービンの出力が低下して、過速度を回避することができる。
【0021】
また、前記放風弁は、前記タービンの出口と再生器との間の排ガスの流路に設けてもよい。この構成によれば、タービンから再生器に供給される排ガスの一部を系外に放出することにより再生器で回収される排ガスによる熱エネルギを少なくすることができる。これにより、タービンの出力が低下して過速度を回避することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の再生式ガスタービンの過速度回避装置によれば、負荷の急減直後の過速度を回避したのちに、動作流体の一部を系外に放出する放風弁の開度を、タービンの回転数および排ガス温度の少なくとも一方に基づきフィードバック制御していることにより、回転数を定格値に維持または排ガス温度を制限範囲内に維持しながら、再生器に蓄積された熱エネルギを徐々に放出して、過速度を効果的に、かつ、迅速に回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、本発明の第1実施形態に係る過速度回避装置を適用した再生式二軸フリーガスタービンを示す系統図である。このガスタービンは、圧縮機1が空気を圧縮して生成した高圧空気A1を再生器2を介して燃焼器3に供給し、燃焼器3が、再生器2から供給された高圧空気A2に燃料を混合して燃焼させ、その燃焼により発生する高温高圧の燃焼ガスGのエネルギにより、ガスジェネレータタービン4およびパワータービン7をそれぞれ作動させる。ガスジェネレータタービン4は、第1軸であるガスジェネレータ軸8を介して圧縮機1を駆動し、出力を取り出すためのパワータービン7は、第2軸であるパワータービン軸9を介して負荷L1を駆動する。ここでの負荷L1は、舶用プロペラのような機械的装置、または発電機のような電気的装置である。パワータービン7から排出される排ガスEは再生器2に送給され、再生器2は、排ガスEと圧縮機1からの高圧空気A1との間で熱交換して排ガスEの熱エネルギを回収し、高圧空気A1を加熱することにより高温の高圧空気A2を生成して、これをタービン4,7に供給する。
【0024】
前記パワータービン軸9には、パワータービン7の回転数を検出する回転センサ10が設けられている。燃料制御手段である燃料コントローラ11は、回転センサ10が検出するパワータービン7の回転数に基づき燃料制御弁12の開度をフィードハック制御することにより、パワータービン7の回転数を所定値に設定するように燃料の供給量を可変調節する。また、圧縮機1と再生器2との間の高圧空気A1の流路には、高圧空気A1の一部をガスタービンの系外に放出するための放風弁13が接続されている。この放風弁13は開度が連続的に変化可能なものである。
【0025】
前記放風弁13の開度を調節する弁制御手段である弁コントローラ14は、パワータービン7の定格回転数付近の値に予め設定した回転数目標値が記憶されているメモリ17と、前記回転数目標値と回転センサ10が検出するパワータービン7の回転数との差分値を算出する減算器18と、この減算器18が算出した偏差に基づいて制御信号を演算する制御器19と、この制御器19から出力される制御信号の符号を反転してフィードバック制御信号FS1を出力する反転器20と、この反転器20と放風弁13との接続線に介設されたスィッチのような開閉手段21と、回転センサ10からの回転数検出値および放風弁13の開度検出値に基づき開閉手段21を開閉制御する開閉制御手段22とを備えている。この弁コントローラ14は、パワータービン7の回転数に基づくフィードバック制御により放風弁13の開度を調節する。
【0026】
つぎに、前記実施形態の過速度回避装置における過速度を回避する動作について、各部の状況を示した図2のシミュレーション結果を参照しながら説明する。図1に示す負荷L1が図2(a)に示すようにt1時点で急減すると、図1の燃料コントローラ11は、回転センサ10からの回転数検出値の上昇により負荷L1の急減発生であると判別して、図2(b)に示す燃料制御弁12を、吹き消え限界の燃料供給量に対応する開度まで絞る制御を行う。これにより、図2(e)のガスジェネレータタービン4の回転数が大きく低下し、図2(d)に示すパワータービン7の回転数が負荷L1の急減に伴い急激に上昇しようとするのが抑制されて、負荷L1の急減直後の過速度状態が速やかに回避される。ここで、開度が連続的に変化可能な放風弁13は、応答性が比較的悪いために、過速度の発生に対しこれを即座に抑制するように機能できない場合があるが、燃料コントローラ11は、負荷の急減が発生した時点で燃料の供給量を吹き消え限界まで瞬時に絞るよう制御できるから、これにより、負荷の急減に伴う過速度を、これの発生直後に迅速に抑制することができる。
【0027】
このように過速度状態が一旦回避されたのちには、負荷L1の運転中に再生器2に蓄積されている大量の熱エネルギが回収され始めてパワータービン7の回転数を上昇させる方向に作用するから、上述のように燃料の供給量を吹き消え限界まで絞っても、パワータービン7の回転数が図2(d)に示す回転数目標値Rrに戻らない。そのため、図1の弁コントローラ14では、開閉制御手段22が、回転センサ10の回転数検出値に基づき過速度状態を検知して開閉手段21を閉じることにより、フィードバック制御が可能な状態に設定する。この状態で制御器19が、減算器18からの偏差に基づいて制御信号を演算し、この演算結果である負の信号が反転器20で正の信号に変換されて、フィードバック制御信号FS1が得られる。このフィードバック制御信号FS1により、図2(c)のt2時点で放風弁13を開かせたのち、その放風弁13の開度をパワータービン7の回転数に基づいてフィードバック制御する。フィードバック制御信号FS1は放風弁13の開度を大きくする方向を正とする。
【0028】
放風弁13が開かれると、ガスタービンを通過する動作流体である高圧空気A1の一部は放風弁13を通じて外部へ放出されて、再生器2を通過する高圧空気A1の流量が減少する。このように放風弁13を開いて圧縮機1から再生器2に供給される高圧空気A1の一部を外部に放出することにより、パワータービン7の出力が低下して、過速度を回避することができる。
【0029】
図16の従来装置では、圧縮機52の吐出部に設けた制御弁55を、過速度領域の回転数に対し一義的に設定した弁開度に制御するので、これを再生式ガスタービンに適用した場合に再生器の熱エネルギの状況に応じた開度に設定することができなかった。これに対し、前記過速度回避装置では、放風弁13の開度を再生器から回収される熱エネルギの状況に応じて設定できる。再生器2に蓄積された熱エネルギが残っている間は、放風弁13を閉じる方向に作動すると、再生器2から回収される熱エネルギによりパワータービン7の回転数が上昇しようとするので、弁コントローラ14は放風弁13を開いた状態に保持するように制御する。
【0030】
そののち、再生器2に蓄積された熱エネルギが徐々に放出されてパワータービン7を回転させようとするエネルギが減少してくると、パワータービン7の回転数はt3時点で回転数目標値Rrよりも下回ろうとするが、このとき、弁コントローラ14は、フィードバック制御信号FS1によって放風弁13を図2(c)に示すように閉じる方向にフィードバック制御するので、パワータービン7の回転数は回転数目標値Rrに維持される。これにより、パワータービン7は、負荷L1の急減により比較的大きな過速度が発生しやすい状況下においても、図2(d)に示す変動許容範囲Ra内に確実に保持される。
【0031】
弁コントローラ14は、再生器2に蓄積された熱エネルギが徐々に放出されるのに伴なって放風弁13を徐々に閉じさせる方向に制御する。この結果、パワータービン7の回転数が回転数目標値Rrに維持されながら、最終的には放風弁13が全閉状態に制御される。開閉制御手段22は前記放風弁13の全閉状態を検知した時点で開閉手段21をオフさせ、通常の運転状態に戻る。
【0032】
ところで、放風弁13が全閉となるまでの間に負荷L1の投入が行われた場合には、開閉制御手段22が、回転センサ10の回転数検出値に基づきパワータービン7の回転数の急激な低下を検知して、開閉手段21をオフさせることにより放風弁13を即座に全閉状態に制御するので、即座に通常の運転状態に戻すことができる。これにより、負荷L1が投入された状態で放風弁13が開いた状態に保持されることに起因してパータービン7の回転数が大きく低下するのを防止することができる。
【0033】
また、前記過速度回避装置では、パワータービン7の回転数に基づき燃料コントローラ11が燃料制御弁12を調節する燃料フィードバック制御系と、前記回転数に基づき弁コントローラ14が放風弁13の開度を調節する弁フィードバック制御系とを設けており、2つのフィードバック制御系が共にパワータービン7の回転数を制御するようになっているが、この2つのフィードバック制御系が互いの制御動作を干渉し合って制御動作が不安定になることはない。すなわち、燃料コントローラ11は、一般に制御動作の感度が高くなるよう調整されているので、負荷L1の変動に対し速やかに追従できる。これに対し、燃料に比べて流量が大きい動作流体の流路を開閉する放風弁13は、前述のように大形となるから、動作速度が比較的遅くなるので、弁コントローラ14は、放風弁13の応答性に対応するために、制御動作の感度をあまり高くすることができない。したがって、放風弁13の開度制御は燃料の流量制御に比較して制御動作の感度が低くならざるを得ず、その結果、双方の制御動作が干渉を起こさないように容易に調整できる。
【0034】
前記第1実施形態の過速度回避装置を適用した再生式二軸フリーガスタービンは、負荷L1の急減時に比較的大きな過速度が発生しやすいガスタービンである。すなわち、一軸ガスタービンでは、出力軸と同軸上に圧縮機とタービンと負荷とが結合されており、負荷の急減時にタービンの回転数を上昇させようとするのに対して圧縮機がある程度の抵抗となり、過速度を妨げようとする方向に作用する。これに対し、二軸フリータービンでは、負荷L1を駆動するパワータービン軸9には圧縮機1が結合されていないので、負荷L1の急減が発生した際には、摩擦抵抗など若干の機械損を除いて抵抗となる要素がなくなってしまうことから、過速度が発生しやすい状態となる。これを再生式とした場合には、さらに再生器2から回収された熱エネルギも加わるので、再生式二軸フリータービンは、負荷L1の急減時に比較的大きな過速度が発生しやすくなる。これに対し、前記過速度回避装置は、そのような大きな過速度が発生しても、上述のように確実に回避でき、さらに、二軸フリータービン以外のいかなる形態の再生式ガスタービンに適用した場合にも、確実に過速度を回避することができ、これは、以下の実施形態のいずれにおいても同様である。
【0035】
図3は、本発明の第2実施形態に係る過速度回避装置を適用した再生式二軸フリーガスタービンを示す系統図である。この過速度回避装置が第1実施形態のものと相違するのは、第1実施形態ではパワータービン7の回転数に基づくフィードハック制御により放風弁13の開度を調節するのに対し、この過速度回避装置ではパワータービン7から排出される排ガスEの温度に基づくフィードバック制御により放風弁13の開度を調節する点のみであり、したがって、放風弁13をフィードバック制御するための弁コントローラ14Aの構成が第1実施形態とは相違する。
【0036】
すなわち、前記弁コントローラ14Aは、温度テーブル24と減算器28とを有している。温度テーブル24には、初期値から時間経過ともに低下する排ガスEの目標排ガス温度値が予め設定されている。前記減算器28は、温度テーブル24からの目標排ガス温度値と、温度センサ27が検出する排ガスEの温度との差分値を算出する。この排ガス温度は、パワータービン7と再生器2間の排ガスEの温度である。弁コントローラ14Aはさらに、減算器28が算出した偏差に基づいてフィードバック制御信号FS2を演算する制御器29と、この制御器29と放風弁13との接続線に介設された開閉手段21と、回転センサ10からの回転数検出値および放風弁13の開度検出値に基づき開閉手段21を開閉制御する開閉制御手段22と、回転センサ10からの回転数検出値および放風弁13の開度検出値に基づき温度テーブル24の目標排ガス温度の変更指令およびリセット指令を行うテーブル制御手段30とを備えている。
【0037】
つぎに、この第2実施形態の過速度回避装置における過速度を回避する動作について、各部の状況を示した図4のシミュレーション結果を参照しながら説明する。図3に示す負荷L1が図4(a)に示すようにt11時点で急減すると、第1実施形態と同様に、燃料コントローラ11が燃料制御弁12を吹き消え限界の燃料供給量に対応する開度まで絞る制御を行うので、負荷L1の急減直後の過速度状態が速やかに回避される。そののち、再生器2に蓄積された熱エネルギが回収されてパワータービン7の回転数を上昇させる方向に作用するから、パワータービン7の回転数は即座に回転数目標値Rrに戻らない。また、負荷L1の急減時には、開閉制御手段22が回転数検出値に基づき過速度状態を検知して開閉手段21を閉じることにより、弁コントローラ14Aがフィーバック制御の状態に入る。
【0038】
弁コントローラ14Aの温度テーブル24には、図4(f)に示す目標排ガス温度値Trとして、負荷運転時に許容されている制限温度よりも少し低い値が設定されている。これは、温度制限に対してある程度の余裕を持たせるためである。つまり、図3の放風弁13を開くと、再生器2から燃焼器3に入る高圧空気A2の流量が減少して、排ガスEの温度が上昇するので、排ガス温度の制限値Trに到達するまで、放風弁13を閉状態させることができる余裕を与えるためである。
【0039】
そして、負荷L1の急変が生じたt11時点では、上述のように燃料が吹き消え限界まで絞られるのに伴ない排ガスEの温度も目標排ガス温度Trよりも大きく低下するので、減算器28から比較的大きな差分値が出力されて、制御器29が放風弁13を大きな開度に開かせるように調節する。これにより、比較的多くの高圧空気A1が放風弁13を通じて外部へ放出されるので、再生器2を通過する高圧空気A1の流量が減少するのに伴い燃焼温度が上昇して、図4(f)に示すように排ガスEの温度も同様に上昇する。このとき、弁コントローラ14Aは、前記上昇した排ガスEの温度に基づくフィードバック制御を行って放風弁13を適度な開度に調節し、排ガスEの温度が目標排ガス温度値Trに達する方向に放風弁13の開度の制御を継続する。
【0040】
したがって、この過速度回避装置では、再生器2に蓄積された大量の熱エネルギの放出を行いながらも、放風弁13の開度を、排ガスEの温度が目標排ガス温度値Trを超えない範囲内に制限してフィードバック制御できるので、放風弁13の開度が大きくなり過ぎることに起因して燃焼温度や排ガスEの温度がガスタービンの高温部材が耐えられる限界温度を超えるまで過度に上昇してしまうといったことを確実に防止できる利点がある。
【0041】
そして、図4(d)のt12時点では、負荷L1の急減直後の過速度状態から回復してパワータービン7の回転数が目標回転数Rrに戻った整定状態となる。こののち、排ガスEの温度を目標排ガス温度値Trになるように放風弁13の開度を設定するフィードバック制御をそのまま継続すると、再生器2に蓄積された熱エネルギが減少していくから、排ガスEの温度が目標排ガス温度値Trまで到達しなくなる。この場合、放風弁13は、目標排ガス温度値Trになるように制御されることから、再生器2の熱エネルギが減少しているにもかかわらず、さらに開く方向に動作することになる。
【0042】
そこで、前記過速度回避装置では、図3のテーブル制御手段30が、回転センサ10の回転数検出値に基づきパワータービン7の回転数が定格状態に整定したのを検知した時点で、温度テーブル24に対し目標排ガス温度値Trの変更指令を与えるようになっている。これにより、温度テーブル24は、ランプ関数などの手段により、図4(f)の2点鎖線に示すように、目標排ガス温度値Trを徐々に低下させるように変更する。弁コントローラ14Aは、排ガスEの温度が変更された目標排ガス温度値Trになるように放風弁13の開度を設定するフィードバック制御を行うので、放風弁13は全閉に向け徐々に小さな開度に絞られていき、放風弁13が小さな開度に保持されることによってパワータービン7の回転数の上昇が抑制され、再生器に蓄積された熱エネルギを徐々に放出し続ける。
【0043】
前記テーブル制御手段30は、過速度、放風弁13の全閉、または負荷L1の投入の何れかを検知したときに、温度テーブル24に対しリセット指令を与えて初期(時点t11)の目標排ガス温度Trを再設定させる。また、前記過速度回避装置においても、第1実施形態と同様に、放風弁13が全閉となるまでの間に負荷L1の投入が行われた場合、開閉制御手段22が開閉手段21をオフさせることにより、放風弁13を即座に全閉状態として通常の運転状態に戻される。
【0044】
なお、前記過速度回避装置では、排ガスEの温度に代えて、燃焼ガスGの温度に基づくフィードバック制御を行っても、上述と同様の作用および効果を得ることができる。その場合には、ガスタービンの燃焼温度が通常1200℃前後の高温であることから、耐久性に優れた高価な温度センサを用いる必要があるので、前記第2実施形態のように比較的低い排ガスEの温度を利用する方が好ましい。
【0045】
図5は、本発明の第3実施形態に係る過速度回避装置を適用した再生式二軸フリーガスタービンを示す系統図である。この過速度回避装置では、弁コントローラ14Bが、第1実施形態で設けたのと同一のメモリ17、減算器18、制御器19および反転器20を有する第1のフィードバック制御系34と、予め設定した一定値である目標排ガス温度Tr0 が記憶されたメモリ32、減算器28および制御器29を有して第2実施形態とほぼ同じ構成となった第2のフィードバック制御系37と、これら第1および第2のフィードバック制御系34,37に基づく2つの第1および第2のフィードバック制御信号FS1,FS2のうちの信号レベルの低い方を選択して放風弁13の開度の調整用信号として出力する低位選択器33と、第1および第2実施形態で設けたのと同一の開閉手段21および開閉制御手段22とを備えている。すなわち、この弁コントローラ14Bは、第1のフィードバック制御系によるパワータービン7の回転数の制御と、第2のフィードハック制御系による排ガスEの温度の制御とを選択的に行って、過速度の回避を行うように制御動作する。
【0046】
つぎに、この実施形態の過速度回避装置における過速度を回避する動作について、各部の状況を示した図6のシミュレーション結果を参照しながら説明する。なお、第1および第2実施形態で説明したのと同一の動作については、重複する説明を省略する。図5に示す負荷L1が図6(a)に示すようにt21時点で急減すると、燃料の供給量を絞ってパワータービン7の急激な上昇を抑制し、その直後に、第1のフィードバック制御系34によるパワータービン7の回転数のフィードバック制御と、第2のフィードハック制御系37による排ガス温度のフィードバック制御とが同時に開始されるが、低位選択器33は、両フィードバック制御系34,37から出力される2つのフィードバック制御信号FS1,FS2のうちの信号レベルの低い方、つまり開度指令の小さい方を選択して、放風弁13の開度を調節する。
【0047】
負荷L1の急減発生直後は、燃料の供給量が絞られることにより排ガスEの温度が比較的大きく低下するのに伴い、温度センサ27で検知された排ガス温度に基づく第2のフィードバック制御信号FS2による開度指令も大きくなるので、低位選択器33が低信号レベルの第1のフィードバック制御信号FS1を選択して放風弁13の開度の調整用信号として出力する。これにより、パワータービン7の回転数がメモリ17に記憶された回転数目標値Rrになるようにフィードバック制御される。
【0048】
再生器2に蓄積された熱エネルギが徐々に放出されてパワータービン7を回転させようとするエネルギが減少してくると、図6(d)のt22時点で、パワータービン7の回転数が回転数目標値Rrを下回る方向に低下してくる。このとき、排ガスEの温度は、放風弁13を通じ高圧空気A1の一部が系外に放出されてガスタービンを通過する動作流体の流量が減少するのに伴い上昇するので、第2のフィードバック制御信号FS2による開度指令が第1のフィードバック制御信号FS1の開度指令よりも小さくなる。したがって、弁コントローラ14Bは、低位選択器33により、第1のフィードバック制御信号FS1から第2のフィードバック制御信号FS2に切り換えることにより、放風弁13の開度を、排ガスEの温度がメモリ32に記憶された目標排ガス温度値Tr0 (図6(f))に合致するようにフィードバック制御する。
【0049】
前記目標排ガス温度Tr0 は、第2実施形態のような徐々に低下させる値ではなく、メモリ32に記憶設定された一定値とされている。しかしながら、排ガスEの温度は、再生器2に蓄積された熱エネルギが放出されるのに伴い、目標排ガス温度Tr0 に到達することなく低下していく。そのため、t23時点では、第2のフィードバック制御信号FS2による開度指令が第1のフィードバック制御信号FS1による開度指令よりも大きくなり、低位選択器33によって再び第1のフィードバック制御信号FS1が選択されて、パワータービン7の回転数に基づき放風弁13の開度がフィードバック制御される。
【0050】
上述のように、第1および第2のフィーバック制御系34,37を併用して、これらの各フィードバック制御信号FS1,FS2のうちの信号レベルの低い方を選択して放風弁13の開度をフィードバック制御することにより、第1実施形態において発生するおそれがある不具合および第2実施形態が有する構成の若干の複雑化を共に解消することができる。この点について、以下に説明する。
【0051】
図1および図2に示した第1実施形態では、排ガスEの温度を監視することなく、パワータービン7の回転数のみに基づき放風弁13の開度を制御しているので、場合によっては高圧空気A1の放出量が大きくなり過ぎて燃焼温度や排ガスEの温度を過度に上昇させてしまうおそれがあり、このような不具合が発生した場合を図2に例示してある。すなわち、図2(b)のt3時点で、放風弁13の設定開度が大き過ぎたことに起因して、同図(d),(b)に示すように、動作流体の減少によりパワータービン7の回転数が回転数目標値Rrよりも下回ろうとすると、燃料の供給量が一時的に増大し、かつ、高圧空気A1の放出量が多いので、同図(f)に示すように、排ガスEの温度が一時的に過度に上昇する。これに対し、第3実施形態では、放風弁13の開度が大きくなり過ぎたことに起因して、図6(d)に示すパワータービン7の回転数が目標回転数Rrに近づいたt22時点で、第2のフィードバック制御信号FS2による制御に切り換えて、排ガスEの温度が制限値を超えないように制御するので、第1実施形態が有する不具合の発生が解消される。
【0052】
また、図3および図4に示した第2実施形態では、再生器2に蓄積された熱エネルギが或る程度放出されてパワータービン7の回転数がほぼ定格値に落ち着く整定状態になったときに、温度テーブル24とテーブル制御手段30とにより、前記整定状態を検知して目標排ガス温度値Trを徐々に低下させる特殊な制御を行う必要がある。これに対し、第3実施形態では、目標排ガス温度値Tr0 を図5のメモリ32に設定するだけの簡単な構成としながらも、再生器2に蓄積されたエネルギの放出に伴い排ガスEの温度が低下する図6(f)のT23時点では、再び第1のフィードバック制御信号FS1による制御に切り換えて、再生器2に蓄積された熱エネルギが減少するのに伴って放風弁13を全閉に向け徐々に閉じさせるように制御できる。
【0053】
図7および図8は、本発明の第4および第5実施形態に係る各過速度回避装置をそれぞれ適用した再生式二軸フリーガスタービンの要部を示す系統図である。第1ないし第3実施形態では、放風弁13を圧縮機1の出口と再生器2の入口との間の空気流路に設けたのに対し、図7の第4実施形態では、放風弁13を再生器2の出口と燃焼器3の入口の間の空気流路に設けており、図8の第5実施形態では、放風弁13をパワータービン7の出口と再生器2の入口との間の排ガス流路に設けている。
【0054】
図7の第4実施形態では、第1ないし第3実施形態の場合と異なり、再生器2を通過する空気流量が減少しないので、再生器2において回収される熱エネルギを減少させることはできないが、この再生器において熱エネルギにより加熱された高圧空気A2の一部をガスタービンの系外へ放出することにより、パワータービン7に投入される熱エネルギを少なくすることができる。これにより、第1ないし第3実施形態における再生器2へ供給する高圧空気A1の一部を系外に放出する場合と同様の作用および効果を得ることができる。なお、図7においては、図示を省略しているが、第1ないし第3実施形態で示したいずれのフィードバック制御系をもそのまま適用することができる。
【0055】
また、図8の第5実施形態では、再生器2を通過する排ガスEの流量を減少させることができ、これにより、再生器2自身に回収される熱エネルギを減らすことができる。その結果、高圧空気A2の熱エネルギ、つまりパワータービン7に投入される熱エネルギを少なくすることができるので、やはり第1ないし第3実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。なお、図8においては、図示を省略しているが、第1実施形態で示した回転数に基づくフィードバック制御系をそのまま適用することができる。
【0056】
この第5実施形態に第2または第3実施形態のフィードバック制御系(排ガス温度、または排ガス温度と回転数の両方に基づく制御)を適用することは、次の理由から好ましくない。図8の第5実施形態では、放風弁13の開閉操作に対する排ガスEの温度の特性が異なる。すなわち、第1〜第4の実施形態では、放風弁13を開くと燃焼器3およびタービン4,7を通過するガス流量が減少するため、排ガスEの温度が上昇しようとする。これに対し、第5実施形態では、図8の放風弁13を開くと、再生器2を通過する排ガスEの流量が減少する一方で、燃焼器3およびタービン4,7を通過するガス流量は減少しない。したがって、排ガスEの温度は、再生器2からの回収熱量が減るのに伴い若干低下する。このように、第5実施形態においては、第1〜第4実施形態とは異なり、排ガスEの温度は上昇しないので、排ガスEの温度のフィードバック制御を用いる方法は適切でなく、パワータービン7の回転数を用いる方法が適切である。なお、この回転数に基づくフィードバック制御によっても、放風弁13の開放によって排ガスEの温度が上昇することはないので、高圧空気A1,A2を放出する場合と異なり、過度な放出によって燃焼温度および排ガス温度を過度に上昇させるおそれはない。
【0057】
図9は、本発明の第6実施形態に係る過速度回避装置を適用した再生式二軸フリーガスタービンの要部を示す系統図である。この第6実施形態は、発電用や電気推進を対象とした発電機などの電気的装置を負荷L2として用いる場合に特に適したものである。この過速度回避装置が第1ないし第3実施形態と相違するのは、放風弁38として、第1ないし第3実施形態において放風弁とした用いたものと同一の、開度が連続的に変化可能な調整弁39と、開度が全開および全閉の2段階に変化する開閉弁40とを有している構成のみであり、フィードバック制御系として、第1ないし第3実施形態で示したいずれかのものをそのまま適用することができる。
【0058】
先ず、放風弁38を調整弁39と開閉弁40とで構成した理由について説明する。船の推進機のような機械的装置からなる負荷L1では、瞬時に遮断された場合であっても、負荷L1自身の機械的な抵抗によって或る程度の時間遅れを持って出力が減少するため、ガスタービンに対しては瞬時に負荷L1の出力が瞬時に0まで低下しない。これに対し、電気的装置からなる負荷L2では、瞬時に負荷投入や負荷遮断が行われ、さらに、発電機や電力系統に異常が生じたような場合には、例えば遮断器の開放により制御系統から切り離されて、瞬時に全負荷状態から全負荷遮断に至ることがある。さらに、前記負荷L2では、瞬時に全負荷遮断が生じた場合に、発電などに使われていた膨大なエネルギが瞬間的に大きな加速エネルギに変わるため、過速度発生時におけるパワータービン7の回転数の上昇速度は極めて大きなものとなる。
【0059】
そこで、前記過速度回避装置では、放風弁38として開閉弁40を加えることにより、瞬間的な負荷遮断に対する追従性を確保するとともに、放風弁38において開閉弁40から調整弁39に切り換えることにより、再生器2から回収される熱エネルギに対しても適切な過速度の回避制御を行えるようにしたものである。
【0060】
つぎに、この第6実施形態の過速度回避装置における過速度を回避する動作について、各部の状況を示した図10のシミュレーション結果を参照しながら説明する。なお、図10は、第3実施形態における図5の弁コントローラ14Bを用いる場合とほぼ同等のフィードバック制御系によって図9の放風弁38の開度をフィードバック制御した場合を例示してある。図10(a)に示すt31時点で図9に示す負荷L2が遮断されると、図10(d)に示すようにパワータービン7の回転数が瞬間的に上昇する。このとき、同図(c)に示すように、放風弁38では開閉弁40が全開し、かつ、調整弁39がパワータービン7の回転数に基づくフィードバック制御による開度に設定されるが、前記パワータービン7の回転数の瞬間的な上昇は、開閉弁40の全開によって比較的大量の動作流体が系外に放出されることにより、抑制される。
【0061】
開閉弁40の全開によって、パワータービン7の回転数が適当な値まで低下した図10(d)のt32時点では、開閉弁40が全閉状態に制御され、そののちは、第1ないし第3実施形態のいずれかで説明したと同様のフィードバック制御により調整弁39の開度が連続的に制御され、これにより、再生器2に蓄積された熱エネルギが放出される。
【0062】
このように、前記過速度回避装置では、電気的装置のような負荷L2が瞬間に遮断された場合に効果的、かつ、迅速に過速度を回避できるものであり、このような効果が得られることを具体的に示すための比較例として、第1および第2実施形態の過速度回避装置において電気的装置である負荷L2の瞬間遮断が生じた場合の各部の状態を図11および図12に示してある。図11(第1実施形態)および図12(第2実施形態)の場合においても、開度が連続的に変化可能な放風弁13では、動作速度が比較的遅いことから、多くの流量の高圧空気または排ガスEを瞬間的に放風することができないので、図11(d)および図12(d)に示すように、パワータービン7の回転数が変動許容範囲Raの上限を超えて上昇したり、排ガス温度が目標排ガス温度Tr以上に上昇する、といった不具合が発生し、過速度を効果的に回避することができない。
【0063】
また、第6実施形態の放風弁38の一部として用いた開閉弁40は、調整弁39よりは動作速度が速いので、この開閉弁40のみで電気的装置のような負荷L2の瞬時遮断時の過速度を回避することも考えられる。図13は、第6実施形態における放風弁38のうちの調整弁39を除外した構成で負荷L2の瞬時遮断時の過速度を回避するように図った比較例の各部の状態を示したものである。この場合、負荷L2が遮断された直後のパワータービン7の回転数の瞬間的な上昇は、開閉弁40の全開によって比較的大量の動作流体を系外に放出することによって抑制することができる。
【0064】
しかし、再生式ガスタービンの場合には、負荷L2の遮断直後の過速度状態を回避した後も再生器2に蓄積された熱エネルギが放出され終わるまでに比較的長い時間を要することから、負荷L2の遮断直後の過速度状態を回避した時点で開閉弁40を閉じてしまうと、再生器2から回収された熱エネルギにより再び過速度状態となってしまうので、開閉弁40を再び開かなければならず、図13(c)に示すように、開閉弁40を全開と全閉に交互に頻繁に繰り返すように制御しなければならない。したがって、再生式ガスタービンでは、開閉弁40に加えて、開度が連続的に変化可能な調整弁39を設けることが好ましい。
【0065】
図14および図15は、本発明の第7および第8実施形態に係る各過速度回避装置をそれぞれ適用した再生式二軸フリーガスタービンの要部を示す系統図である。図9の第6実施形態では、調整弁39と開閉弁40とを備えた放風弁38を圧縮機1の出口と再生器3の入口との間の空気流路に設けたのに対し、図14の第7実施形態では、前記放風弁38を再生器2の出口と燃焼器3の入口の間の空気流路に設けており、これにより、再生器において熱エネルギにより加熱された高圧空気の一部を系外へ放出することによってパワータービン7に投入される熱エネルギを少なくすることができる。図15の第8実施形態では、放風弁38をパワータービン7の出口と再生器2の入口との間の排ガス流路に設けており、これにより、再生器2を通過する排ガスEの流量を減少させて再生器2自身に回収される熱エネルギを減らすことができる。したがって、いずれの場合にも、第6実施形態で説明したと同様の効果を得ることができる。
【0066】
図14の第7実施形態では、第1〜第3実施形態で示したいずれのフィードバック制御(回転数または/および排ガス温度に基づく制御)も適用できる。図15の第8実施形態では、排ガスEを放出するので、図8の第5実施形態の場合と同様に、第1実施形態のフィードバック制御(回転数に基づく制御)を適用するのが好ましい。
【0067】
本発明の放風弁13,38は、前記各実施形態からもわかるとおり、圧縮機1から再生器2、燃焼機3、ガスジェネレータタービン4およびパワータービン7を経て再生器2に至るまでの作動流体の流路(流路の両端である圧縮機1および再生器2を含む)のいずれの箇所にも設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1実施形態に係る過速度回避装置を適用した再生式ガスタービンを示す系統図である。
【図2】(a)〜(f)は同上の過速度回避装置における負荷の急減発生時の各部の状態を示すシミュレーション図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る過速度回避装置を適用した再生式ガスタービンを示す系統図である。
【図4】(a)〜(f)は同上の過速度回避装置における負荷の急減発生時の各部の状態を示すシミュレーション図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る過速度回避装置を適用した再生式ガスタービンを示す系統図である。
【図6】(a)〜(f)は同上の過速度回避装置における負荷の急減発生時の各部の状態を示すシミュレーション図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る過速度回避装置を適用した再生式ガスタービンの要部を示す系統図である。
【図8】本発明の第5実施形態に係る過速度回避装置を適用した再生式ガスタービンの要部を示す系統図である。
【図9】本発明の第6実施形態に係る過速度回避装置を適用した再生式ガスタービンの要部を示す系統図である。
【図10】(a)〜(f)は同上の過速度回避装置における負荷の急減発生時の各部の状態を示すシミュレーション図である。
【図11】(a)〜(f)は第1実施形態に係る過速度回避装置における電気的装置の負荷の遮断発生時の各部の状態を示すシミュレーション図である。
【図12】(a)〜(f)は第2実施形態に係る過速度回避装置における電気的装置の負荷の遮断発生時の各部の状態を示すシミュレーション図である。
【図13】(a)〜(f)は第6実施形態に係る過速度回避装置における放風弁を開閉弁のみで構成した比較例の電気的装置の負荷の遮断発生時の各部の状態を示すシミュレーション図である。
【図14】本発明の第7実施形態に係る過速度回避装置を適用した再生式ガスタービンの要部を示す系統図である。
【図15】本発明の第8実施形態に係る過速度回避装置を適用した再生式ガスタービンの要部を示す系統図である。
【図16】従来のガスタービンの過速度回避装置を示す系統図である。
【図17】(a)〜(f)は同上の過速度回避装置を再生式二軸ガスタービンに用いた場合における負荷の急減発生時の各部の状態を示すシミュレーション図である。
【符号の説明】
【0069】
1 圧縮機
2 再生器
3 燃焼器
7 パワータービン(タービン)
11 燃料コントローラ(燃料制御手段)
13,38 放風弁
14,14A,14B 弁コントローラ(弁制御手段)
39 調整弁
40 開閉弁
L1,L2 負荷
FS1,FS2 フィードバック制御信号
Tr,Tr0 目標排ガス温度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧空気を生成する圧縮機と、
前記高圧空気に燃料を供給して燃焼させる燃焼器と、
前記燃焼器からの燃焼ガスにより作動して負荷を駆動するタービンと、
前記タービンから排出される排ガスによって前記高圧空気を加熱する再生器と、
前記高圧空気、燃焼ガスまたは排ガスからなる動作流体の一部を系外に放出する放風弁と、
前記タービンの回転数に基づくフィードバック制御により前記放風弁の開度を調節する弁制御手段とを備えた再生式ガスタービンの過速度回避装置。
【請求項2】
高圧空気を生成する圧縮機と、
前記高圧空気に燃料を供給して燃焼させる燃焼器と、
前記燃焼器からの燃焼ガスにより作動して負荷を駆動するタービンと、
前記タービンから排出される排ガスによって前記高圧空気を加熱する再生器と、
前記高圧空気、燃焼ガスまたは排ガスからなる動作流体の一部を系外に放出する放風弁と、
前記タービンからの排ガスの温度に基づくフィードバック制御により前記放風弁の開度を調節する弁制御手段とを備えた再生式ガスタービンの過速度回避装置。
【請求項3】
高圧空気を生成する圧縮機と、
前記高圧空気に燃料を供給して燃焼させる燃焼器と、
前記燃焼器からの燃焼ガスにより作動して負荷を駆動するタービンと、
前記タービンから排出される排ガスによって前記高圧空気を加熱する再生器と、
前記高圧空気、燃焼ガスまたは排ガスからなる動作流体の一部を系外に放出する放風弁と、
前記タービンの回転数および排ガスの温度に基づくフィードバック制御により前記放風弁の開度を調節する弁制御手段とを備えた再生式ガスタービンの過速度回避装置。
【請求項4】
請求項2において、前記弁制御手段は、フィードバック制御の際に目標排ガス温度を制御開始後に徐々に低下させる再生式ガスタービンの過速度回避装置。
【請求項5】
請求項3において、前記弁制御手段は、前記タービンの回転数および排ガスの温度に基づく2つのフィードバック制御信号のうち、信号レベルの低い方を選択して前記放風弁の調節用信号として出力する再生式ガスタービンの過速度回避装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項において、前記放風弁は、前記開度が全開および全閉の2段階に変化する開閉弁と、開度が連続的に変化可能な調整弁とを有している再生式ガスタービンの過速度回避装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項において、前記放風弁が前記圧縮機と再生器との間の高圧空気の流路に設けられている再生式ガスタービンの過速度回避装置。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項において、前記放風弁が前記再生器と燃焼器との間の高圧空気の流路に設けられている再生式ガスタービンの過速度回避装置。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか一項において、前記放風弁が前記タービンの出口と再生器との間の排ガスの流路に設けられている再生式ガスタービンの過速度回避装置。
【請求項1】
高圧空気を生成する圧縮機と、
前記高圧空気に燃料を供給して燃焼させる燃焼器と、
前記燃焼器からの燃焼ガスにより作動して負荷を駆動するタービンと、
前記タービンから排出される排ガスによって前記高圧空気を加熱する再生器と、
前記高圧空気、燃焼ガスまたは排ガスからなる動作流体の一部を系外に放出する放風弁と、
前記タービンの回転数に基づくフィードバック制御により前記放風弁の開度を調節する弁制御手段とを備えた再生式ガスタービンの過速度回避装置。
【請求項2】
高圧空気を生成する圧縮機と、
前記高圧空気に燃料を供給して燃焼させる燃焼器と、
前記燃焼器からの燃焼ガスにより作動して負荷を駆動するタービンと、
前記タービンから排出される排ガスによって前記高圧空気を加熱する再生器と、
前記高圧空気、燃焼ガスまたは排ガスからなる動作流体の一部を系外に放出する放風弁と、
前記タービンからの排ガスの温度に基づくフィードバック制御により前記放風弁の開度を調節する弁制御手段とを備えた再生式ガスタービンの過速度回避装置。
【請求項3】
高圧空気を生成する圧縮機と、
前記高圧空気に燃料を供給して燃焼させる燃焼器と、
前記燃焼器からの燃焼ガスにより作動して負荷を駆動するタービンと、
前記タービンから排出される排ガスによって前記高圧空気を加熱する再生器と、
前記高圧空気、燃焼ガスまたは排ガスからなる動作流体の一部を系外に放出する放風弁と、
前記タービンの回転数および排ガスの温度に基づくフィードバック制御により前記放風弁の開度を調節する弁制御手段とを備えた再生式ガスタービンの過速度回避装置。
【請求項4】
請求項2において、前記弁制御手段は、フィードバック制御の際に目標排ガス温度を制御開始後に徐々に低下させる再生式ガスタービンの過速度回避装置。
【請求項5】
請求項3において、前記弁制御手段は、前記タービンの回転数および排ガスの温度に基づく2つのフィードバック制御信号のうち、信号レベルの低い方を選択して前記放風弁の調節用信号として出力する再生式ガスタービンの過速度回避装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項において、前記放風弁は、前記開度が全開および全閉の2段階に変化する開閉弁と、開度が連続的に変化可能な調整弁とを有している再生式ガスタービンの過速度回避装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項において、前記放風弁が前記圧縮機と再生器との間の高圧空気の流路に設けられている再生式ガスタービンの過速度回避装置。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項において、前記放風弁が前記再生器と燃焼器との間の高圧空気の流路に設けられている再生式ガスタービンの過速度回避装置。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか一項において、前記放風弁が前記タービンの出口と再生器との間の排ガスの流路に設けられている再生式ガスタービンの過速度回避装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−183608(P2006−183608A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−380022(P2004−380022)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】
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