説明

再生成形材およびその製造方法

【課題】廃棄物の削減による環境保護をはかることができるとともに、剛性が高く、釘の打ち込み性や引き抜き強度に優れ、釘の打ち込み時に釘の変形や部材の割れを起こしにくい再生成形材、特にパチスロ機用筐体板などの遊技機部材として好適に使用される再生成形材およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】
使用済み部材を回収して得られる回収材と、200℃未満の融点を有する熱可塑性合成樹脂結合材と、3〜30mmの範囲内の繊維長を有する繊維とを含み、全重量に対する前記繊維の配合率が5〜40重量%の範囲内であって、前記回収材と繊維とが前記結合材によって結合されている再生成形材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物の削減による環境保護をはかることができ、剛性が高く、釘の打ち込み性や引き抜き強度に優れ、釘の打ち込み時に釘の変形や部材の割れを起こしにくい再生成形材、特にパチスロ機用筐体板などの遊技機部材として好適に使用される再生成形材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄物の増加や資源・エネルギーの枯渇などの環境問題に伴い、家電リサイクル法、容器リサイクル法が法定化されるなど、リサイクルの重要性が高まっている。中でも、金属やガラス類、紙などのマテリアルリサイクル技術については鋭意検討がなされ、これらの技術は実用化レベルでほぼ確立されたといえる。
【0003】
しかしながら、木質系材料や、異なる材料か混在した樹脂系材料については、分別作業の困難さや長期の使用による材料自体の劣化により、強度や釘保持性に優れた再生材を得ることが困難であった。このような問題点に対し、木粉とプラスチック粉末とを混合し、この混合物を加熱し、プラスチックを溶融させた状態で押し出し成形することで、高強度、高耐久性の合成板が得られ、使用後は一旦成型された後であっても、該合成板を細かく切断した後に溶融することによって、再成形することができる技術が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、上述のように木粉とプラスチックを混合、加熱成形したとしても、木粉とプラスチック粉末のみでは優れた剛性や釘抜き強度を得ることは難しく、また、部材に均一な空隙を持たせることが困難であることから、釘打ち時に釘が折れ曲がったり、打ち込み部位が割れるなどの問題があった。更に再成形部材については、成形→使用→溶融→再成形というリサイクルの繰り返しに伴う溶融の繰り返しにより、材料自体の劣化が進行する問題があった。
【0005】
一方、上述の釘抜き強度については、解離した植物繊維にフェノール樹脂、エポキシ樹脂あるいは変性エポキシ樹脂を添加して成形することにより、所定の釘の引き抜き強度を必要とする建築材などに使用できる合成板が提案されている。これら部材は、古材や廃木材などの木質繊維を用いるため、資源保護やリサイクルの見地からも無駄が無いものである(例えば特許文献2参照。)。
【0006】
しかしながら、上述のように古材や廃木材から得られた木質繊維は、実質的な繊維長が短く、その長さにもバラツキがあることから優れた剛性や釘抜き強度を安定して得ることは困難であった。また、フェノール樹脂やエポキシ樹脂に代表される熱硬化性樹脂を用いるため、環境に有害とされている物質が含まれると共に、溶媒や水などに希釈した樹脂を用いる必要があり、前記の溶媒などを揮発させながら成形する必要があるため、生産性に劣るなどの問題があった。
【特許文献1】特開平11−114159号公報(段落0006)
【特許文献2】特開平9−155013号公報(段落0013および段落0014)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、かかる従来技術の欠点に鑑み、廃棄物の削減による環境保護をはかることができ、剛性が高く、釘の打ち込み性や引き抜き強度に優れ、釘の打ち込み時に釘の変形や部材の割れを起こしにくい再生成形材、特にパチスロ機用筐体板などの遊技機部材として好適に使用される再生成形材およびその製造方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用する。
【0009】
(1)使用済み部材を回収して得られる回収材と、200℃未満の融点を有する熱可塑性合成樹脂結合材と、3〜30mmの範囲内の繊維長を有する繊維とを含み、全重量に対する前記繊維の配合率が5〜40重量%の範囲内であって、前記回収材と繊維とが前記結合材によって結合されている再生成形材。
【0010】
(2)前記繊維の繊維長が、5〜20mmの範囲内にある上記(1)に記載の再生成形材。
【0011】
(3)前記回収材の配合率が、20〜60重量%の範囲内にある(1)または(2)に記載の再生成形材。
【0012】
(4)前記熱可塑性合成樹脂結合材の配合率が、30〜60重量%の範囲内にある(1)〜(3)のいずれかに記載の再生成形材。
【0013】
(5)空隙率が、10〜70%の範囲内にある(1)〜(4)のいずれかに記載の再生成形材。
【0014】
(6)200℃未満の融点を有する熱可塑性合成樹脂結合材が、ポリ乳酸樹脂である(1)〜(5)のいずれかに記載の再生成形材。
【0015】
(7)前記熱可塑性合成樹脂結合材が、繊維状である(1)〜(6)のいずれかに記載の再生成形材。
【0016】
(8)前記繊維が、天然繊維または熱可塑性合成樹脂結合材の融点より20℃以上高い融点を有する合成繊維から選ばれる少なくとも1種以上の繊維である(1)〜(7)のいずれかに記載の再生成形材。
【0017】
(9)前記天然繊維が、セルロース系繊維である(1)〜(8)のいずれかに記載の再生成形材。
(10)前記ポリ乳酸樹脂にカルボジイミド化合物が添加されている(1)〜(9)のいずれかに記載の再生成形材。
(11)回収材が遊技機として使用された部材または前記部材を製造する工程において排出された加工屑からなる(1)〜(10)のいずれかに記載の再生成形材。
(12)回収材がパチンコ機用ゲージ板、パチンコ機用枠体またはパチスロ機用筐体板として使用された部材または前記部材を製造する工程において排出された加工屑からなる(1)〜(11)のいずれかに記載の再生成形材。
(13)遊技機用部材として使用される(1)〜(12)のいずれかに記載の再生成形材。
(14)少なくとも下記a〜hの工程を順次経てなる再生成形材の製造方法。
【0018】
a.使用された部材を回収し、素材別に分離するかまたは加工時に排出された加工屑を回収する工程。
【0019】
b.回収された部材を破砕し、回収材を得る工程。
【0020】
c.繊維状物を3〜30mmの繊維長にカットする工程。
【0021】
d.回収材と200℃未満の融点を有する熱可塑性合成樹脂結合材と、5〜30mmの繊維長を有する繊維とを混合する工程。
【0022】
e.回収材と200℃未満の融点を有する熱可塑性合成樹脂結合材と、5〜30mmの繊維長を有する繊維との混合物をフォーミングする工程。
【0023】
f.前記混合物を圧縮する工程。
【0024】
g.前記混合物を150℃〜250℃の温度範囲内に加熱する工程。
【0025】
h.前記混合物を100℃以下の温度まで冷却する工程。
(15)回収材が遊技機として使用された部材または前記部材を製造する工程において排出された加工屑からなる(14)に記載の再生成形材の製造方法。
(16)回収材がパチンコ機用ゲージ板、パチンコ機用枠体またはパチスロ機用筐体板として使用された部材または前記部材を製造する工程において排出された加工屑からなる(14)または(15)に記載の再生成形材の製造方法。
(17)遊技機用部材として使用される(14)〜(16)のいずれかに記載の再生成形材の製造方法。
(18)(1)〜(13)のいずれかに記載の再生成形材または(14)〜(17)のいずれかに記載の製造方法を用いて、遊技機部材を回収し、再生し、再度遊技機部材として用いる遊技機部材の再生方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明の再生成形材によれば、廃棄物量の削減による環境保護をはかることができ、剛性が高く、釘の打ち込み性や引き抜き強度に優れ、釘の打ち込み時に釘の変形や部材の割れを起こしにくい再生成形材を提供することができる。また、本発明の再生成形材の製造方法によれば、これらの再生成形材を効率的に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0028】
まず、本発明の再生成形材は、上述した手段を採用するものであるが、特に3〜30mmの繊維を再生成形材の全重量に対して5〜40重量%の範囲内で含ませることに特徴を有し、これにより、廃棄物量の削減による環境保護をはかることができるとともに、剛性が高く、釘の打ち込み性や引き抜き強度に優れ、釘の打ち込み時に釘の変形や部材の割れを起こしにくい再生成形材が得られることを見出した。
【0029】
ここで、本発明の再生成形材の原料となる「使用済み部材を回収して得られる回収材」とは、製品として使用された部材を破砕機などを用いて破砕し得られる粒状物や粉体、或いは、製品への加工工程において排出された加工屑を上記の通り破砕して得られる粒状物や粉体、または、製品への加工工程において切削加工等により排出された粒状や粉体状の加工屑をいい、例えば遊技機として使用された木材やプラスチック部材を破砕機などで破砕し得られる粒状物、或いは、木材などを家具や遊技機に加工する際に排出される切り屑等が挙げられる。すなわち、本発明の回収材は、例えば製品寿命が短く、近年廃棄物量の増大が問題視され始めている遊技機部材、特にその再生が困難とされているパチンコ機用ゲージ板、パチンコ機用枠体、またはパチスロ機用筐体板より得られたものを使用することができる。このように遊技機部材として一度使用された部材を再生することで、廃棄物量の抑制に大きく寄与できる。
【0030】
これら回収材の混率としては、再生成形材の全重量に対して、20〜60重量%の範囲内であることが好ましい。回収材の混率を20重量%以上とすることにより、リサイクル比率を高め、廃棄物量の削減に寄与することができる。回収材の混率が60重量%を超えると、後述する繊維や結合材の混率が低くなり、剛性や釘抜き強度、すなわち釘保持性が低下するため好ましくない。
【0031】
本発明の再生成形材に使用される原料である「繊維」としては、天然繊維である各種のセルロース系繊維、例えば、木質系や草本系のセルロース系繊維を採用することができる。具体的には、木材パルプ、バガス、ムギワラ、アシ、パピルス、タケ類等のイネ科植物パルプ、木綿、ケナフ、ローゼル、アサ、アマ、ラミー、ジュート、ヘンプ等の靭皮繊維、サイザルアサ、マニラアサ等の葉脈繊維等から選ばれる1種以上からなる繊維を用いることが好ましい。これらのうちでも、比較的繊維長が長く、一年草であって熱帯地方および温帯地方での成長が極めて早く容易に栽培できる草本類に属するケナフあるいはジュートから採取される繊維を採用することが、天然資源の有効活用の面や釘の保持性や剛性の面から好ましい。特に、ケナフの靭皮にはセルロース分が60%以上と高い含有率で存在しており、かつ高い強度を有していることから、ケナフ靭皮から採取されるケナフ繊維の利用が好ましい。一方、合成繊維としては、例えば、ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ポリアミド系繊維の1つであるナイロン繊維や、ポリトリメチレンテレフタレート繊維から選ばれる1種類以上からなる合成樹脂繊維を用いることができる。
【0032】
本発明者らは、前記繊維の繊維長を3〜30mmの範囲内とすることにより、優れた剛性と釘の打ち込み性、釘保持性を両立する再生成形材が安定的にかつ、効率良く得られることを見出した。繊維長を3mm以上にすることで、優れた剛性が付与でき、かつ、再生成形材に釘を打ち込んだ際に、合成樹脂繊維が釘に絡まり釘保持性を高めることができるからである。繊維長が3mm未満であった場合、剛性や釘保持性が著しく低下する。一方、繊維長が30mmを超えると、繊維と結合材または使用済みの部材を回収し破砕して得られた回収材とを均一に分散させることが困難となり、均一な剛性や釘保持性を得ることができない。また、さらに均一な強度を安定的に得るためには、前記繊維長は5〜20mmの範囲内であることが好ましい。
【0033】
更に、これらの繊維を再生成形材の全重量に対して5〜40重量%の配合率で含ませることにより、優れた剛性と釘の打ち込み性や釘保持性を有する再生成形材が安定的に効率良く得られる。前述の通り再生材中に繊維状物を含ませることにより、優れた剛性が得られ、かつ、再生材中に均一な空隙を持たせることが可能となり、均一な釘打ち性を得ることができると同時に、これらの繊維が釘に絡まり、優れた釘保持性を得ることができる。従って、繊維の配合率が5重量%未満であった場合、剛性が低下すると共に、再生材中の空隙に片寄りが生じたり、繊維と釘との絡まりが減少するなどしやすく、釘保持性が低下するので好ましくない、一方、繊維を40重量%を超えて配合したとしても、剛性や釘保持性の向上効果は少なく、繊維の配合率が多くなる反面、再生材の配合率が少なくなり、使用済み部材を再利用するという本発明の目的効果が失われる。
【0034】
ところで、上記「繊維」は、天然繊維、または後述する熱可塑性合成樹脂結合材の融点より20℃以上高い融点を有する合成繊維から選ばれる少なくとも1種以上の繊維を用いることが好ましい。実質的に融点を有しない天然繊維か、または熱可塑性合成樹脂結合材の融点より20℃以上高い融点を有する合成繊維、すなわち合成樹脂結合材との融点差が20℃以上の繊維を用いることにより、繊維と合成樹脂結合材を混合し、これらを溶融、成形し、一体化させるという簡易的な工程で効率よく再生成形材を得ることができるからである。融点差を上記のように設けることで、溶融、成形時の温度管理を厳密にせずとも、成形材中に繊維の形状を残した、均一な釘打ち性や優れた釘保持性、および剛性を有する再生成形材が容易に得られる。特に再生成形材が大型の部材である場合には、溶融、成形時温度にばらつきが生じやすいので、特に好ましい。繊維と合成樹脂結合材の融点差が20℃未満であった場合、繊維と合成樹脂結合材の双方が成形の際に溶融し、成型材中の空隙に片寄りが生じたり、釘保持性が低下するので好ましくない。
【0035】
次に、本発明の再生成形材でいう「熱可塑性合成樹脂結合材」とは、前述の回収材と、繊維とを結合する機能を有するものである。熱可塑性合成樹脂結合材としては、特に限定されるものではないが、例えば融点が200℃未満の熱可塑性樹脂、すなわち、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂から選ばれる1種類以上からなる合成樹脂を用いることができる。これらの合成樹脂結合材の中でも非石油系原料からなるポリ乳酸樹脂を使用することが特に好ましい。ポリ乳酸樹脂は非石油系の生分解性プラスチックであるとともに、製造工程においても石油系の溶剤をほとんど使用しないために、再生成形材の製造、使用、廃棄の段階を全体で考えたとき、環境への負荷を少なくすることができる。またポリ乳酸樹脂は生分解性プラスチックの中でも融点が170℃程度と適度な耐熱性を有するとともに成形性に優れ、他の木質繊維や合成樹脂繊維との接着性も優れている。
【0036】
ポリ乳酸樹脂とは、ポリ乳酸ホモポリマーの他、乳酸コポリマー、ブレンドポリマーを含むものである。乳酸系ポリマーの重量平均分子量は、一般に5〜50万である。また、ポリ乳酸樹脂におけるL−乳酸単位、D−乳酸単位の構成モル比L/Dは、100/0〜0/100のいずれであっても良いが、高い融点を得るにはL乳酸あるいはD乳酸いずれかの単位を75モル%以上、さらに高い融点を得るにはL乳酸あるいはD乳酸のいずれかの単位を90モル%以上含むことが好ましい。本発明に用いるポリ乳酸樹脂には、カルボジイミド化合物を添加することが好ましい。乳酸ポリマーまたはこれに含まれるオリゴマーの反応活性末端をカルボジイミド化合物で封鎖することにより、ポリマー中の反応化成末端を不活性化し、ポリ乳酸系樹脂の加水分解を抑制するものである。従って、繰り返しの加熱、成形によっても劣化しにくい再生成形材として好適なポリ乳酸樹脂を得ることが可能となる。ここで言うカルボジイミド化合物は、例えばジイソシアネート化合物を重合したものが好適に用いられるが、中でも4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドの重合体やテトラメチルキシリレンカルボジイミドの重合体やその末端をポリエチレングリコールなどで封鎖したものが好ましい。
【0037】
前記の合成樹脂結合材の形状は繊維状であることが好ましい。繊維状の合成樹脂結合材を用いることにより、回収材と繊維と結合材を均一に分散させることができ、均一な強度と釘保持性が得られると共に、回収材と繊維と熱可塑性合成樹脂結合材をハンマーミル等を用いて混合し、これらを溶融、成形し、一体化させるという簡易的な工程で効率よく再生成形材を得ることが可能となる。粉体状やペレット状の合成樹脂結合材を用いた場合、繊維との比重差により、配合斑が発生し、剛性や釘保持性に片寄りが生じるため好ましくない。
【0038】
また、本発明に用いる再生成形材は、200℃未満の融点を有する熱可塑性の合成樹脂結合材であることが必要である。かかる結合材を含むことにより、回収材と繊維と熱可塑性合成樹脂結合材を混合し、これらを溶融、成形し、一体化させるという簡易的な工程で効率よく、再生成形材を製造することができるからである。一方、熱可塑性合成樹脂結合材が熱硬化性、または200℃を超える融点を有する場合、前記の簡易的な工程で再生成形材を得ることが困難となり、例えば、液状の結合材を乾燥させる乾燥工程や、過大な温度を付与する成形機が必要となる。
【0039】
熱可塑性合成樹脂結合材の配合率としては、30〜60重量%の範囲内であることが優れた剛性と釘保持性を得る点で好ましい。合成樹脂結合材の配合率を30重量%以上とすることにより、繊維と回収材とを十分に結合することができ、優れた剛性と釘保持性が得られる。合成樹脂結合材の配合率が30重量%を下回ると、結合力が十分でなく剛性や釘保持性が著しく低下する。一方、合成樹脂結合材を60重量%を超える量で配合した場合、繊維の配合率が低くなり、同様に剛性や釘保持性が低下するため好ましくない。
【0040】
本発明の再生成形材は、10〜70%の空隙率を有することが好ましい。10〜70%の範囲内の空隙を有することにより、良好な釘打ち性、すなわち釘打ち時の部材の割れ等を防止し、かつ、優れた釘保持性を得ることができる。繊維系部材中の空隙率が10%未満である場合、釘を打ち込む際の抵抗力が大きくなり、釘の折れや歪みが発生する。また、釘打ち時に部材に割れが発生するおそれもある。一方、空隙率が70%を超えると、十分な剛性や釘保持性が得られず、例えばパチンコ機用のゲージ板として用いた際に釘抜けなどを引き起こすこととなる。
【0041】
本発明の再生成形材は繊維状物を含むことが重要である。繊維状物を含むことにより再生成形材に剛性を付与することができ、かつ、再生成形材中に均一な空隙を持たせることが可能となり、均一な釘打ち性を得ることができると同時に、これらの繊維が釘に絡まり、優れた釘保持性を得ることができる。
【0042】
次に、本発明の再生成形材の製造方法を実施するための最良の形態について、工程順に説明する。
「a.回収・分離工程」
まず、使用された部材を回収し、素材別に分離する。なお、この際、加工時に排出された加工屑において、単一の素材から構成される場合はこの分離工程を省略することもできる。
「b.破砕工程」
次いで、回収された部材を破砕機を用いて破砕し、粒径0.1〜5mmの回収材を得る。この工程において、破砕機は周知の破砕機を用いることができるが、好ましくは、5mm径程度の穴が多数空いた円筒状のスクリーンを有し、前記スクリーン中で回転刃が回転し、ここに回収部材を投入することで、カッターにより破砕された部材が前記スクリーンを通過して出口側に排出される機構のものが好ましい。この機構により、前記のスクリーンの穴径を適宜調整することで、得られる回収材の粒子径を調節することが可能となる。なお、加工時に排出された加工屑の内、切削時に排出された切り屑等は、実質的に粒状や粉体状であるので、本破砕工程を省略することもできる。
「c.繊維のカット工程」
同様に前記の破砕機を用いて、繊維をカットすることで、安定的に効率良く、剛性の高い再生成形材を得るために好適な3〜30mmの繊維長を有する短繊維を得ることができる。この場合においても前述の通りスクリーンの穴径を適宜調節し、簡易的に繊維長を調節することが可能である。
「d.原料混合工程」
次いで、回収材と、熱可塑性合成樹脂結合材と、繊維とをハンマーミルを用いて混合する。この工程において周知のカーディング法なども用いることができるが、回収材の混合に適したハンマーミルを用いることが、優れた生産性を得るために好ましい。
「e.フォーミング工程」
得られた混合物は、ベルトコンベアの上に一定の重量でフォーミングされ、次いでプレス設備などを用いた圧縮工程へと移送される。
「f.圧縮行程」
圧縮工程においては周知のプレス装置を用いることができ、好ましくはホットプレスにより圧縮と加熱を同時に行うことにより、効率良く再生成形材を得ることができる。
「g.加熱工程」
本発明の熱可塑性合成樹脂結合材は200℃未満の融点を有するものであるから、合成樹脂結合材の融点プラス50℃程度、すなわち、混合物は150℃〜250℃の温度範囲内に加熱することが好ましい。このように成樹脂結合材を溶融させ繊維と合成樹脂結合材とを接着させることにより、充分な剛性と釘保持力を持つ再生成形材を得ることができる。
「h.冷却工程」
本発明の再生成形材は熱可塑性合成樹脂結合材を用いているため、形状の安定した成形物を得るために、加熱後に100℃以下の温度まで冷却することが好ましく、冷却あたっては周知の冷却プレスを用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の再生成形材は各種遊技機、例えばパチンコ機、パチスロ機、アレンジボール機、雀球遊技機の部材や、柱や床材、天井材、壁材、屋根材、表札などの建築資材、または、コンクリート型枠などの土木資材、さらには椅子、机、棚、ラックなどの家具、自動車用の天井材、ドアトリム、スペアタイヤカバー、バックボードなどの自動車資材として好適に使用される。特に、優れた釘打ち性、釘保持性、および剛性の要求されるパチンコ機の枠体、パチンコ機のゲージ板、パチスロ機の筐体板として用いた際にその機能を十分に発揮する。
【0044】
本発明の再生成形材またはその製造方法を用いて、使用済みの遊技機部材または遊技機部材を製造する際に排出された加工屑を回収、再生し、再度遊技機部材として用いることで、製品寿命が短く、近年廃棄物量の増大が問題視され始めている遊技機部材の廃棄物量の抑制に大きく寄与できる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の実施例を説明する。なお実施例中の測定方法は以下の方法を用いた。
【0046】
A.釘打ち性
作成した再生成形材に長さ33mm、胴部経2mmの真鍮釘をハンマーで打ち込み長さが15mmになるまで打ち込み、その際に真っ直ぐ打ち込めたものを○とし、打ち込むことはできるものの若干釘が曲がったものを△、15mm打ち込めないものあるいは釘が大きく曲がったものを×とした。
【0047】
B.釘抜き強度
JIS Z2121−1979の木材の釘引き抜き抵抗試験方法に準じ、使用する釘は長さ33mm、胴部経2mmの真鍮釘を用い、釘の打ち込み長さは15mmとした。引き抜き速度を50±0.5mm/分とし、その時の釘の引き抜きに要した最大荷重(N)を測定し、初期の釘の引き抜き強度(N)とした。
【0048】
C.曲げ強さ
作成した再生成形材から幅W50mm、長さ150mmの試験片を採取する。この時試験片の厚みをtmmとする。次いで試験片を2つの支点で支点間距離L=100mmで支えた状態で支点間中心に荷重速度50mm/minにて荷重Pを加える。ここで、支点および荷重作用点の曲率半径Rは3.2mmとする。そして、試験片を屈曲させるのに要した最大曲げ荷重P(N)を測定し、下式により曲げ強さを求める。その平均値をその試験片の曲げ強さ(N/cm2)とした。
【0049】
曲げ強さ(N/cm2)=(300×P×L)/(2×W×t2
D.総合評価
釘打ち性、釘抜き強度、曲げ強さの評価結果より、下記の基準で評価した。
【0050】
○○ :釘打ち性に優れ、釘抜き強度、曲げ強さが特に優れている。
【0051】
○ :釘打ち性、釘抜き強度、曲げ強さの全てが優れる。
【0052】
△ :釘打ち性、釘抜き強度、曲げ強さのいずれかが優れる。
【0053】
× :釘打ち性、釘抜き強度、曲げ強さの全てが劣る。
【0054】
実施例1
使用済みのパチンコ盤面ボードから真鍮釘を分離し、得られたボードを2mm径のスクリーンを有する破砕機に投入し、平均粒径1.5mmの回収材を得た。次いで、繊維長75mmのケナフ靭皮繊維を9mm径のスクリーンを有するスクリーンに投入し、平均繊維長8mmのケナフ靭皮繊維を得た。一方、ポリ乳酸樹脂にポリカルボジイミド化合物として、熱可塑性ポリカルボジイミドをポリ乳酸樹脂に対して1.0重量%添加し、混練した。得られたポリ乳酸樹脂を公知の方法で繊維化し、捲縮付与後カットして繊度6.6デシテックス、長さ10mmのポリ乳酸短繊維を得た。得られた回収材とケナフ靭皮繊維とポリ乳酸短繊維(合成樹脂結合材、融点169℃)とをそれぞれ40:32:28の重量比でハンマーミルに投入し、混合して前記原料の混合物を得た。この混合物をベルトコンベアの上にフォーミングし、2枚の鉄板の間に12mmのスペーサーと共に挟み、210℃加熱下のプレス機で圧力2.4MPa、15分間加熱加圧成型を行った。得られた再生成形材の厚さは12.3mm、密度は0.72g/cm3であった。
【0055】
このようにして得られた再生成形材の特性を後掲の表1に示した。この再生成形材は釘の打ち込み性、釘保持性および、曲げ強さに優れるものであり、総合評価は○とした。
【0056】
実施例2
実施例1にて使用した回収材(平均粒径1.5mm)とケナフ靭皮繊維(繊維長8mm)とポリ乳酸短繊維(合成樹脂結合材、繊維長10mm、融点169℃)をそれぞれ40:22:38の重量比でハンマーミルに投入し、混合して前記原料の混合物を得た。得られた混合物を実施例1と同一の方法でフォーミング、加熱加圧成型し、厚さ12.1mm、密度0.73g/cm3の再生成形材を得た。
【0057】
このようにして得られた再生成形材の特性を後掲の表1に示した。この再生成形材は釘の打ち込み性、釘保持性、および曲げ強さに優れるものであり、総合評価は○とした。
【0058】
実施例3
実施例1にて使用した回収材(平均粒径1.5mm)とケナフ靭皮繊維(繊維長8mm)とポリ乳酸短繊維(合成樹脂結合材、繊維長10mm、融点169℃)をそれぞれ40:12:48の重量比でハンマーミルに投入し、混合して前記原料の混合物を得た。得られた混合物を実施例1と同一の方法でフォーミング、加熱加圧成型し、厚さ12.1mm、密度0.71g/cm3の再生成形材を得た。
【0059】
このようにして得られた再生成形材の特性を表1に示した。この再生成形材は釘の打ち込み性、釘保持性、および曲げ強さに優れ、他の実施例に比べ特に優れた釘保持性と曲げ強さを有していたため、総合評価は○○とした。
【0060】
実施例4
実施例1にて使用した回収材(平均粒径1.5mm)とケナフ靭皮繊維(繊維長8mm)とポリ乳酸短繊維(合成樹脂結合材、繊維長10mm、融点169℃)をそれぞれ65:12:23の重量比でハンマーミルに投入し、混合して前記原料の混合物を得た。得られた混合物を実施例1と同一の方法でフォーミング、加熱加圧成型し、厚さ12.4mm、密度0.68g/cm3の再生成形材を得た。
【0061】
このようにして得られた再生成形材の特性を表1に示した。この再生成形材は釘の打ち込み性、釘保持性、および曲げ強さに優れるものであり、総合評価は○とした。
【0062】
実施例5
繊維長75mmのケナフ靭皮繊維を6mm径のスクリーンを有するスクリーンに投入し、平均繊維長5mmのケナフ靭皮繊維を得た。次いで、実施例1にて使用した回収材(平均粒径1.5mm)と前記ケナフ靭皮繊維(繊維長5mm)とポリ乳酸短繊維(合成樹脂結合材、繊維長10mm、融点169℃)をそれぞれ40:22:38の重量比でハンマーミルに投入し、混合して前記原料の混合物を得た。得られた混合物を実施例1と同一の方法でフォーミング、加熱加圧成型し、厚さ12.0mm、密度0.69g/cm3の再生成形材を得た。
【0063】
このようにして得られた再生成形材の特性を表1に示した。この再生成形材は釘の打ち込み性、釘保持性、および曲げ強さに優れるものであり、総合評価は○とした。
【0064】
実施例6
繊維長75mmのケナフ靭皮繊維を18mm径のスクリーンを有するスクリーンに投入し、平均繊維長16mmのケナフ靭皮繊維を得た。次いで、実施例1にて使用した回収材(平均粒径1.5mm)と前記ケナフ靭皮繊維(繊維長16mm)とポリ乳酸短繊維(合成樹脂結合材、繊維長10mm、融点169℃)をそれぞれ40:22:38の重量比でハンマーミルに投入し、混合して前記原料の混合物を得た。得られた混合物を実施例1と同一の方法でフォーミング、加熱加圧成型し、厚さ12.3mm、密度0.71g/cm3の再生成形材を得た。
【0065】
このようにして、得られた再生成形材の特性を表1に示した。この再生成形材は釘の打ち込み性、釘保持性、および曲げ強さに優れ、他の実施例に比べ特に優れた釘保持性と曲げ強さを有していたため、総合評価は○○とした。
【0066】
比較例1
実施例1にて使用した回収材(平均粒径1.5mm)とケナフ靭皮繊維(繊維長8mm)とポリ乳酸短繊維(合成樹脂結合材、繊維長10mm、融点169℃)をそれぞれ40:3:57の重量比でハンマーミルに投入し、混合して前記原料の混合物を得た。得られた混合物を実施例1と同一の方法でフォーミング、加熱加圧成型し、厚さ12.1mm、密度0.73g/cm3の再生成形材を得た。
【0067】
このようにして、得られた再生成形材の特性を表1に示した。この再生成形材は実施例の再生成形材に比べ釘打ち性、釘保持性、および曲げ強さに劣るものであり、総合評価は×とした。
【0068】
比較例2
実施例1にて使用した回収材(平均粒径1.5mm)とポリ乳酸短繊維(合成樹脂結合材、繊維長10mm、融点169℃)をそれぞれ40:60の重量比でハンマーミルに投入し、混合して前記原料の混合物を得た。得られた混合物を実施例1と同一の方法でフォーミング、加熱加圧成型し、厚さ11.8mm、密度0.73g/cm3の再生成形材を得た。
【0069】
このようにして、得られた再生成形材の特性を表1に示した。この再生成形材は実施例の再生成形材に比べ釘打ち性、釘保持性、および曲げ強さに劣るものであり総合評価は×とした。
【0070】
比較例3
繊維長75mmのケナフ靭皮繊維を2mm径のスクリーンを有するスクリーンに投入し、平均繊維長1.5mmのケナフ靭皮繊維を得た。次いで、実施例1にて使用した回収材(平均粒径1.5mm)と前記ケナフ靭皮繊維(繊維長5mm)とポリ乳酸短繊維(合成樹脂結合材、繊維長10mm、融点169℃)をそれぞれ40:22:38の重量比でハンマーミルに投入し、混合して前記原料の混合物を得た。得られた混合物を実施例1と同一の方法でフォーミング、加熱加圧成型し、厚さ12.0mm、密度0.69g/cm3の再生成形材を得た。
【0071】
このようにして、得られた再生成形材の特性を次の表1に示した。この再生成形材は釘打ち性に優れるが、実施例の再生成形材に比べ釘保持性、および曲げ強さに劣るものであり、総合評価は△とした。
【0072】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み部材を回収して得られる回収材と、200℃未満の融点を有する熱可塑性合成樹脂結合材と、3〜30mmの範囲内の繊維長を有する繊維とを含み、全重量に対する前記繊維の配合率が5〜40重量%の範囲内であって、前記回収材と繊維とが前記結合材によって結合されている再生成形材。
【請求項2】
前記繊維の繊維長が、5〜20mmの範囲内にある請求項1に記載の再生成形材。
【請求項3】
前記回収材の配合率が、20〜60重量%の範囲内にある請求項1または2に記載の再生成形材。
【請求項4】
前記熱可塑性合成樹脂結合材の配合率が、30〜60重量%の範囲内にある請求項1〜3のいずれかに記載の再生成形材。
【請求項5】
空隙率が、10〜70%の範囲内にある請求項1〜4のいずれかに記載の再生成形材。
【請求項6】
200℃未満の融点を有する熱可塑性合成樹脂結合材が、ポリ乳酸樹脂である請求項1〜5のいずれかに記載の再生成形材。
【請求項7】
前記熱可塑性合成樹脂結合材の形態が、繊維状である請求項1〜6のいずれかに記載の再生成形材。
【請求項8】
前記繊維が、天然繊維または熱可塑性合成樹脂結合材の融点より20℃以上高い融点を有する合成繊維から選ばれる少なくとも1種以上の繊維である請求項1〜7のいずれかに記載の再生成形材。
【請求項9】
前記天然繊維が、セルロース系繊維である請求項1〜8のいずれかに記載の再生成形材。
【請求項10】
前記ポリ乳酸樹脂にカルボジイミド化合物が添加されている請求項1〜9のいずれかに記載の再生成形材。
【請求項11】
回収材が遊技機として使用された部材または前記部材を製造する工程において排出された加工屑からなる請求項1〜10のいずれかに記載の再生成形材。
【請求項12】
回収材がパチンコ機用ゲージ板、パチンコ機用枠体またはパチスロ機用筐体板として使用された部材または前記部材を製造する工程において排出された加工屑からなる請求項1〜11のいずれかに記載の再生成形材。
【請求項13】
遊技機用部材として使用される請求項1〜12のいずれかに記載の再生成形材。
【請求項14】
少なくとも下記a〜hの工程を順次経てなる再生成形材の製造方法。
a.使用された部材を回収し、素材別に分離するかまたは加工時に排出された加工屑を回収する工程。
b.回収された部材を破砕し、回収材を得る工程。
c.繊維状物を3〜30mmの繊維長にカットする工程。
d.回収材と200℃未満の融点を有する熱可塑性合成樹脂結合材と、5〜30mmの繊維長を有する繊維とを混合する工程。
e.回収材と200℃未満の融点を有する熱可塑性合成樹脂結合材と、5〜30mmの繊維長を有する繊維との混合物をフォーミングする工程。
f.前記混合物を圧縮する工程。
g.前記混合物を150℃〜250℃の温度範囲内に加熱する工程。
h.前記混合物を100℃以下の温度まで冷却する工程。
【請求項15】
回収材が遊技機として使用された部材または前記部材を製造する工程において排出された加工屑からなる請求項14に記載の再生成形材の製造方法。
【請求項16】
回収材がパチンコ機用ゲージ板、パチンコ機用枠体またはパチスロ機用筐体板として使用された部材または前記部材を製造する工程において排出された加工屑からなる請求項14または15に記載の再生成形材の製造方法。
【請求項17】
遊技機用部材として使用される請求項14〜16のいずれかに記載の再生成形材の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜13のいずれかに記載の再生成形材または請求項14〜17のいずれかに記載の製造方法を用いて、遊技機部材を回収し、再生し、再度遊技機部材として用いる遊技機部材の再生方法。

【公開番号】特開2006−115877(P2006−115877A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303928(P2004−303928)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】