説明

再生熱可塑性樹脂成形品

熱可塑性樹脂を主成分とする成形品に、熱可塑性樹脂と相容(溶)性を有する熱可塑性樹脂が主成分である塗料を少なくとも一部に塗装した塗装成形品を、塗膜付きのまま、粉砕して再成形する再生熱可塑性樹脂成形品であって、塗料には、顔料が添加されており、顔料は、成形品を構成する熱可塑性樹脂および塗料を構成する熱可塑性樹脂と相容(溶)性を有する樹脂で表面処理されているため、リサイクルしても物性が低下しない再生熱可塑性樹脂成形品を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、塗装成形品の表面の塗膜を分離または剥離せず、粉砕してそのまま再成形する再生熱可塑性樹脂成形品に関する。
【背景技術】
塗膜付きの熱可塑性樹脂からなる成形品(塗装成形品)をリサイクルする場合であって、かつ塗料のビヒクル(塗料を構成する熱硬化性、或いは熱可塑性樹脂)が成形用樹脂と相容(溶)性がない場合、塗膜の分離・剥離をすることなく、塗膜付きのままリサイクルすると、加熱溶融の過程で、塗料樹脂が相分離をおこし、リサイクルされた樹脂成形品の強度等の物性が低下することが知られている。
このため、成形品の主成分である熱可塑性樹脂と、塗料のビヒクルである塗料用樹脂とが相容(溶)性を有する塗料を使用することにより、塗膜を剥離することなく、リサイクル可能であることが提案されている(例えば、特許第3289914号公報参照)。
しかし、近年、家電やOA機器のプラスチックハウジングには、意匠性に優れるメタリック塗料が塗装されることが多く、メタリック塗料には、例えば、アルミニウムフレーク等の顔料が多量に配合されるようになってきた。かかる顔料を含む塗料で塗装された塗装成形品を塗膜付きのままリサイクルすると、再生した成形品の強度等の物性が低下するという問題がある。
再生した樹脂の強度は、アルミニウムフレーク等の顔料が、成形品を構成する樹脂や、塗料を構成する樹脂と非相容(溶)性であるため、顔料と成形品の樹脂の間で分離し、これが物性低下の原因となっている。
本発明は、上記した問題を解決するためになされたものであって、塗装成形品の塗膜を分離または剥離することなくリサイクルした成形品が、粉砕し再成形する過程で混入した顔料により、物性低下等の影響を受けない再生熱可塑性樹脂成形品を提供することを目的とするものである。
【発明の開示】
請求の範囲第1項に記載の再生熱可塑性樹脂成形品は、熱可塑性樹脂を主成分とする成形品に、該熱可塑性樹脂と相容(溶)性を有する熱可塑性樹脂が主成分である塗料を少なくとも一部に塗装した塗装成形品を、塗膜付きのまま、粉砕して再成形した再生熱可塑性樹脂成形品において、塗料には、顔料が添加されており、顔料は、成形品を構成する熱可塑性樹脂および塗料を構成する熱可塑性樹脂と相容(溶)性を有する樹脂で表面処理されているため、再生した成形品中に顔料が分散しても、物性の低下を抑えることができる。
ここで、相容(溶)性を有するとは、成形品の主成分である熱可塑性樹脂および/または塗料を構成する熱可塑性樹脂と、顔料の表面にコーテイングされた樹脂とが加熱溶融の段階において何れかが溶融して、熱融着,熱接着,分子間力,アンカー効果、拡散などによって物理的に結合する性質を云い、結合させているか即ち相容(溶)か非相容(溶)かは、透過型電子顕微鏡を用い剥がれの有無を観察することことで確認ができる。
また上記の性質以外に其々の樹脂が分子レベルで混ざり合う場合も含まれる。
請求の範囲第2項に記載の再生熱可塑性樹脂成形品は、請求の範囲第1項に記載の再生熱可塑性樹脂成形品において、顔料は、無機および/または有機化合物であるため、樹脂コートすることができ、再生した成形品中に顔料が分散しても、物性の低下を抑えることができる。
請求の範囲第3項に記載の再生熱可塑性樹脂成形品は、請求の範囲第1項に記載の再生熱可塑性樹脂成形品において、顔料は、アルミニウムフレークであるため、意匠性に優れるメタリック塗料が塗装された塗装成形品を粉砕、再成形しても物性の低下を抑えることができる。
請求の範囲第4項に記載の再生熱可塑性樹脂成形品は、請求の範囲第2項または第3項に記載の再生熱可塑性樹脂成形品において、塗料を構成する熱可塑性樹脂が、熱可塑性アクリル樹脂またはスチレン変性アクリル樹脂であり、樹脂コートしたアルミニウムフレークは相容(溶)性を有し、再生した成形品中に顔料が分散しても、物性の低下を抑えることができる。
請求の範囲第5項に記載の再生熱可塑性樹脂成形品は、請求の範囲第3項に記載の再生熱可塑性樹脂成形品において、アルミニウムフレークは、有機重合体によって被覆されているため、意匠性に優れるメタリック塗料が塗装された塗装成形品を粉砕、再成形しても物性の低下を抑えることができる。
請求の範囲第6項に記載の再生熱可塑性樹脂成形品は、請求の範囲第5項に記載の再生熱可塑性樹脂成形品において、有機重合体は、アクリル樹脂であるため、意匠性に優れるメタリック塗料が塗装された塗装成形品を粉砕、再成形しても物性の低下を抑えることができる。
請求の範囲第7項に記載の再生熱可塑性樹脂成形品は、請求の範囲第5項に記載の再生熱可塑性樹脂成形品において、アルミニウムフレークは、有機溶剤中でエチレン性不飽和モノマーを溶解させ、重合開始剤の共存下で加熱重合することにより、または、少なくとも1個の重合性二重結合を有するオリゴマーおよびモノマーよりなる群から選ばれた少なくとも2種を反応させて得られる共重合体により、被覆されているため、意匠性に優れるメタリック塗料が塗装された塗装成形品を粉砕、再成形しても物性の低下を抑えることができる。
請求の範囲第8項に記載の再生熱可塑性樹脂成形品は、請求の範囲第5項に記載の再生熱可塑性樹脂成形品において、アルミニウムフレークを被覆する有機重合体の被覆量は、アルミニウムフレークの質量に対して、5質量%以上であるため、意匠性に優れるメタリック塗料が塗装された塗装成形品を粉砕、再成形しても、顔料と成形品を構成する樹脂の間に剥離がなく、物性の低下を抑えることができる。
【発明の効果】
熱可塑性樹脂を主成分とする塗装成形品を、塗膜付きのまま、粉砕し、再成形することによりリサイクルしても、顔料に相容(溶)性があるため、塗膜が混入した再生熱可塑性樹脂成形品の物性、例えば、機械的な強度は低下しないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の再生熱可塑性樹脂成形品の一実施例を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
〔熱可塑性樹脂〕
本発明において、成形品の材料として使用する熱可塑性樹脂としては、一般的に成形に用いられている熱可塑性樹脂であれば種類を問わない。
熱可塑性樹脂を例示すれば、スチレン系単量体を重合せしめてなるポリスチレン系樹脂、例えばポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、ニトリル系単量体、スチレン系単量体との共重合体であるスチレン系樹脂、例えば、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ニトリル系単量体・スチレン系単量体・ブタジエン系ゴム質重合体,オレフィン系ゴム質重合体,アクリル系ゴム質重合体からなる樹脂、例えば、アクリロニトリル・ブタジエン、又はエチレンゴム、又はアクリルゴム・スチレン共重合体(ABSとAbS)等のスチレン系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP,オレフィン系ゴム含有のPPも含む)等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE,変性PPEと変性PPe含む)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のエンジニアリングプラスチック、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、塩化ビニル(PVC)等のビニル系樹脂等或いは、上記熱可塑性樹脂の二種以上の混合物がある。
尚、本発明で使用する成形品の材料として特に有用であるのは、ポリスチレン系樹脂、ニトリル系単量体・スチレン系単量体との共重合体、PPE、ABS、AAS(ASA)、AES、耐衝撃性ポリスチレン、或いはABS及び/又はHIPS(HiPS含む)を含むPPE、PP、ABS及び/又はHIPS(HiPS含む)とPC、PA、PBT、PSF、PEI等の混合物、ポリマーブレンド、又はポリマーアロイである。
以下に上記熱可塑性樹脂のいくつかに付いて詳細な説明を行う。
(A:スチレン系樹脂)
本発明の対象とするスチレン系樹脂とは、重合体中にスチレン系単量体を少なくとも25質量%以上含有する樹脂であり、スチレン系単量体の単独重合体又は該スチレン系単量体の二種以上の共重合体、該スチレン系単量体と該スチレン系単量体と共重合可能な他の単量体の一種又は二種以上との共重合体、上記ジエン系又は、オレフィン系又は、アクリル系ゴムに上記スチレン系単量体の単独もしくは二種以上をグラフト重合せしめた(HiPS含む)、上記スチレン系樹脂と上記ジエン系ゴム等のゴム質重合体とのミクロブレンド或いはポリマーブレンド等が包含される。
上記スチレン系樹脂の代表的なものとしては、スチレン単独重合体であるポリスチレン(PS)、上記ジエン系ゴム質重合体又は、アクリル系ゴム質重合体又は、オレフィン系ゴム質重合体にスチレンをグラフト重合したスチレングラフトゴム質重合体と、ポリスチレンとのブレンドポリマーである耐衝撃性ポリスチレン{HIPS(グラフトジエン系ゴム質重合体含有のPS),HiPS、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・α−メチルスチレン共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、スチレン・メチルメタクリレート共重合体、スチレン・エチレン共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・ブタジエン共重合体、ジエン系ゴム質重合体にアクリロニトリルとスチレンとをグラフト共重合したグラフトゴム質重合体にアクリロニトリル・スチレン共重合体をブレンドしたABS樹脂、塩素化ポリエチレンとアクリロニトリル・スチレン共重合体との混合樹脂であるACS、オレフィン系ゴム質重合体にアクリロニトリルとスチレンとをグラフト重合したグラフトオレフィン系ゴム質重合体含有のアクリロニトリルとスチレンとの3元共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体との混合樹脂であるAES(AbS)、アクリル系ゴム質重合体にアクリロニトリルとスチレンとをグラフト重合したアクリル系ゴム含有のアクリロニトリルとスチレンとの3元共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体との混合樹脂であるAAS{(ASA)(AbS)}、アクリロニトリル・ジメチルシロキサン・スチレン共重合体とアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂との混合樹脂であるASiS、オレフィン系ゴム質重合体又は、アクルル系ゴム質重合体にスチレンとをグラフト重合したグラフトオレフィン系ゴム質重合体含有とスチレン重合体との混合樹脂や、アクリル系ゴム質重合体にスチレンとをグラフト重合したグラフトアクリル系ゴム質重合体とスチレン重合体との混合樹脂(HiPS)等がある。
本発明では、AAS、及びAESをAbS、グラフトオレフィン系ゴム質重合体及び/又はグラフトアクリル系ゴム質重合体強化(配合)のPS樹脂をHiPSと称する。
(B:ポリフェニレンエーテル(PPE)系樹脂)
本発明が対象とするPPE系樹脂の代表的なものとしては、2,6−キシレノールを銅触媒で酸化重合して得られるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)があるが、更に2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテルと2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテルとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体等がある。
また、上記PPE系樹脂にスチレン系樹脂及び/又はアミド系樹脂等で変性したものも本発明のPPE系樹脂に含まれる。
(C:ポリカーボネート樹脂)
本発明においてPC樹脂は成形(型)用熱可塑性樹脂として単独に使用される事もできるが、主として上記スチレン系樹脂やPPE系樹脂等と混合してポリマーアロイ・ポリマーブレンドとする材料として使用もされる。
上記PC樹脂(芳香族PC樹脂)としては、芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導されたポリ炭酸エステルであれば特に制限はない。
上記芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールAとも云う)、テトラメチルビスフェノールA、テトラブロムルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル等を使用する事ができるが、通常はビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン系ジヒドロキシ化合物が選択され、特にビスフェノールA、又はビスフェノールAと他の芳香族ジヒドロキシ化合物との組み合わせが好ましい。
(D:ポリオレフィン系樹脂)
ポリオレフィン系樹脂とは、α−オレフィンの一種又は二種以上をラジカル開始剤、金属酸化物系触媒、チーグラー・ナッタ触媒、カミンスキー触媒等を使用して重合する事によって得られる樹脂であり、上記樹脂は二種以上混合させてもよい。前記α−オレフィンはα位に重合性の二重結合を有する直鎖状・分岐状或いは環状オレフィンであって、通常炭素数2〜8のものが選ばれる。該α−オレフィンの具体例としてはエチレン及びプロピレンがある。本発明の対象であるポリオレフィン系樹脂には、α−オレフィンと共重合可能な他の単量体が共重合させてもよい。
他の単量体としてはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、アリールマレイン酸イミド、アルキルマレイン酸イミド等のα−β不飽和有機酸又はその誘導体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル;スチレン、メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;ビニルトリメチルメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシランがあり、更に1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−4−メチル−1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン(4−エチリデン−2−ノンボルネン)等の非共役ジエンを少量共重合させてもよい。前記ポリオレフィン系樹脂として代表的なものは、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等である。前記ポリオレフィン系樹脂は、単独又は二種以上の混合物の状態で成形材料として使用されるが、更に上記スチレン系樹脂、例えばPS、HIPS及びHiPS、AS、ABS及びAbS、PPE(変性PPe含む)系樹脂等の他の熱可塑性樹脂と混合させてもよい。
(ポリマーブレンド、ポリマーアロイ)
前記熱可塑性樹脂は、二種以上を混合してポリマーブレンド或いはポリマーアロイとしてもよい。前記ポリマーブレンド或いはポリマーアロイは例えば押出成形機におけるスクリュー混練等によって製造される。更に、前記成形用熱可塑性樹脂には、機械的な特性を付与させる為に、前記ジエン系ゴム質重合体、オレフィン系ゴム質重合体、アクリル系ゴム質重合体等例えば、NR、BR、SBR、STR、IR、CR、CBR、IBR、IBBR、IIR、アクリルゴム、多硫化ゴム、ウレタンゴム、ポリエーテルゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロブチルゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素系ゴム等のゴム類やエチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、塩化ビニル等で代表されるビニル系樹脂、ポリノルボリネン等の他の熱可塑性樹脂が混合されてもよい。
これらゴム質重合体は必要に応じて、配合予定の樹脂単量体をブロック、ランダム、グラフト共重合させ相容(溶)性を持たせる。塗装の付着性を考慮すれば、グラフト共重合体が望ましく、本発明に使用されるグラフト重合体とは、幹部分がジエン系ゴム質重合体、オレフィン系ゴム質重合体又はアクリル系ゴム質重合体であり、上記成形品、付属部材、塗布材、印刷インキ及び接着剤、溶接棒等のビヒクルとして使用される熱可塑性樹脂と相容(溶)性を有するグラフト鎖を有するグラフトゴム質重合体である。
即ち本発明において使用されるゴム質重合体(ゴム状物質)とは、グラフトジエン系ゴム質重合体(ジエン系ゴムグラフト重合体)、グラフトオレフィン系ゴム質重合体(オレフィン系ゴムグラフト重合体)及びグラフトアクリル系ゴム質重合体(アクリル系ゴムグラフト重合体)である。特に熱安定性に優れているオレフィン系ゴムグラフト重合体及びアクリル系ゴムグラフト重合体が好ましい。
以下、各ゴム状(質)物質(重合体)に付いて説明する。
(A:グラフトジエン系ゴム質重合体)
本発明で用いられる共重合体の構成成分であるジエン系ゴム質重合体(ジエン系ゴム)としては、共役ジエンを主成分とした重合体又は共重合体が好適である。このうち共役ジエンの含有量は75質量%以上、特に85質量%以上が好ましい。具体的には、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体又はイソプレンゴム等を使用することができる。
(B:グラフトオレフィン系ゴム質重合体)
本発明に使用されるオレフィン系ゴム質重合体(オレフィン系ゴム)はα−オレフィンの一種又は二種以上の重合体、或いは該α−オレフィンの一種又は二種以上と共重合可能な他の単量体の一種又は二種以上との共重合体であり、特にエチレンと他のα−オレフィンの一種又は二種以上との共重合体或いは、更にそれらと共重合可能な他の単量体、特に非共役ジエン化合物との共重合体である。上記エチレン−α−オレフィン系共重合体において、エチレンと共重合される単量体として使用されるα−オレフィンとは、炭素数が3〜12のα−オレフィンがあり、具体的にはプロピレン、ブテン−1、4メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等がある。
該非共役ジエン化合物としては、例えばジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、5−メチル−2,5−ノルボルナジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−(1−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、4,7,8,9−テトラヒドロ−インデン、及びイソプロピリデンテトラヒドロ−インデン、シクロオクタジエン、ビニルシクロヘキセン、1,5,9−シクロドデカトルエン、6−メチル−4,7,8,9−テトラヒドロインデン、2,2’−ジシクロペンテニル、トランス−1,2−ジビニルシクロブタン、1,4−ヘキサジエン、2−メチル−1,4ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、3,6−ジメチル−1,7−オクタジエン、4,5−ジメチル−1,7−オクタジエン、1,4,7−オクタトリエン、5−メチル−1,8−ノナジエン等がある。
これら非共役ジエン化合物の中で好ましいものは、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、及び/又はジシクロペンタジエン(DCP)、更に好ましくはジシクロペンタジエンがある。5−エチリデン−2−ノルボルネンを用いたグラフトオレフィン系ゴム質重合体とAS、又はPSとの混合樹脂は成形品の外観が良好になる。又グラフトオレフィン系ゴム質重合体において、その主成分をなすゴム質重合体としてEPMよりもEPDMを用いた方が成形用熱可塑性樹脂の衝撃強度を高くすることができる。
本発明に使用されるグラフトオレフィン系ゴム質重合体のおけるエチレン−α−オレフィン、及び必要に応じて使用される非共役ジエン化合物の使用割合は、モル分率で好ましくは、エチレン/α−オレフィン/非共役ジエン化合物=0.2〜1.0/0.2〜0.8/0〜0.2、更に好ましくは、0.5〜0.9/0.25〜0.75/0〜0.1であり、エチレン/プロピレンのモル比は60/40以上、望ましくは65/35以上即ち、得られる樹脂成形品の機械的性質(耐衝撃性等)の再生性(以下、再生性)の点からみればエチレンリッチなエチレン・プロピレン共重合ゴム(EPM)或いはエチレン・プロピレン・非共役ジエン化合物三元共重合ゴム(EPDM)を使用する事が望ましい。
また、本発明に使用されるエチレン−α−オレフィン系共重合体のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、再生性(熱安定性、即ちリサイクル性)の点からみて好ましくは5〜150、更に好ましくは、10〜120、最適値は20〜80である。
前記オレフィン系ゴム質重合体の代表的なものは、エチレン・プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・非共役ジエン化合物三元共重合ゴム(EPDM)、エチレン・ブテン共重合ゴム(EBM)、エチレン・ブテン・非共役ジエン化合物三元共重合ゴム(EBDM)である。該EBDMに使用される非共役ジエン化合物は上述したEPDMの場合と同じである。
(C:グラフトアクリル系ゴム質重合体)
本発明で使用されるアクリル系ゴム質重合体(アクリル系ゴム)とは、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等の望ましくは炭素数2〜8のアルキル基を有するアクリレートの単独重合体、或いは上記アクリレートの二種以上の共重合体、或いは上記アクリレートの一種又は二種以上とブタジエン或いはEPDMに使用されているものと同様な非共役ジエン化合物、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、酢酸ビニル、スチレン、エチレン、プロピレン等の他の単量体の一種又は二種以上との共重合体、更にはアクリル酸、メタクリル酸、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート等の官能性単量体、或いはγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、p−トリメトキシシリルスチレン、p−トリエトキシシリルスチレン、p−トリメトキシシリル−α−メチルスチレン、p−トリエトキシシリル−α−メチルスチレン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシッシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−β(N−ビニルベンジルアミノエチル−γ−アミノプロピル)トリメトキシシラン・塩酸塩等の重合性シランカップリング剤との共重合体である。
汎用のアクリル系ゴム質重合体としては、例えば若干の上記官能性単量体を共重合したポリエチルアクリレート、ポリn−ブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート−アクリロニトリル共重合体、n−ブチルアクリレート−ブタジエン共重合体、n−ブチルアクリレート−エチレン共重合体、n−ブチルアクリレート−γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン共重合体、n−ブチルアクリレート−ビニルトリメトキシシラン共重合体等であり、望ましいアクリル系ゴムとしてはn−ブチルアクリレート/ブタジエンのモル比が30/70以上であるn−ブチルアクリレート−ブタジエン共重合体がある。前記アクリル系ゴム質重合体は通常サスペンション重合、エマルション重合等によって製造される。これらのジエン系,オレフィン系,アクリル系それぞれのゴム質重合体ラテックスの平均粒子径は0.1〜50μmにある事が必要であり、特に0.15〜15μmの範囲にあることが好ましい。ここで、ジエン系ゴム質重合体ラテックスの平均粒子径が0.1μm未満の場合は樹脂組成物の耐衝撃性が悪く、逆に50μmを越える場合には表面光沢が低下して満足できる樹脂組成物を得ることができない。
また、ジエン系,オレフィン系,アクリル系それぞれのゴム質重合体ラテックスのゲル含有率に付いては、得られる組成物の表面光沢と耐衝撃性を考慮して、40質量%以上,好ましくは60質量%以上である。ここでゲル含有率とは、ゴムラテックスを凝固、乾燥した後のトルエン不溶分の質量分率を指す。
これらのゴム質重合体ラテックスの製造方法としては、通常の乳化重合法を採用する事ができる。平均粒子径、粒子径分布及びゲル含有率の所望の範囲への設定は、重合時の重合水量、乳化剤量、連鎖移動剤量、重合温度、撹拌速度及び重合時間等を綿密にコントロールする事により可能となる。
(グラフト共重合)
配合予定の樹脂がPSの場合に相容(溶)性を持たせる目的で、ゴム質重合体にグラフト重合(共重合)させる芳香族ビニル系単量体としてはスチレン、α−アルキルモノビニリデン芳香族単量体(例えばα−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−メチルビニルトルエン、α−メチルジアルキルスチレン等)、環置換アルキルスチレン(例えばo、m、又はp−ビニルトルエン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−第三級ブチルスチレン等)、環置換ハロスチレン(例えばo−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、2,4−ジクロスチレン等)、環−アルキル,環ハロ−置換スチレン(例えば2−クロロ−4−メチルスチレン、2,6−ジクロロスチレン等)ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等のスチレン系単量体等が挙げられるが、特にスチレンが好ましく用いられる。これらは1種又は2種以上を併用してもよい。また、一般にアルキル置換基は1〜4個の炭素原子を有し、直鎖及び分岐アルキル基の両方が含まれる。また、配合予定の樹脂がASの場合はスチレン系単量体と、更にシアン化ビニル系単量体をグラフトさせる。シアン化ビニル系単量体はアクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フマロニトリル等が挙げられるが、特にアクリロニトリルが好ましい。これらは1種又は2種以上を併用してもよい。
上記スチレン系単量体及びニトリル系単量体以外に他の単量体を共重合させてもよい。上記他の単量体(第3成分)とは上記スチレン系単量体、ニトリル系単量体と共重合可能な単量体であれば特に限定しないが、一般にはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類や、N−フェニルマレイミド、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、(p−ブロモフェニル)マレイミドメタクリレート、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類、無水マレイン酸、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物類等が挙げられる。(メタ)アクリレート類としては炭素数1〜4のアルキルエステル、特にメタクリレートが望ましい。ここで、本発明のグラフト重合体(グラフトゴム質重合体)は、ゴム質重合体65〜85質量部、好ましくは70〜80質量部に対し、単量体混合物15〜35質量部、好ましくは20〜30質量部をグラフト重合する事により得られる。ゴム質重合体が85質量部を超えるとグラフトさせる単量体の相対的低下により熱可塑性樹脂の良好な物性が得られなくなる。ここで、グラフトさせる全単量体に対し、芳香族ビニル系単量体の割合は50〜99質量%、好ましくは60〜90質量%、より好ましくは70〜80質量%であり、50質量%未満では熱可塑性樹脂中のゴム質重合体の分散状態が悪化する為好ましくない。配合予定の樹脂がASの場合には、シアン化ビニル系単量体の割合は全単量体に対し1〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは20〜30質量%である。また、これらと共重合可能な他のビニル系単量体は50質量%以下で用いれば本発明の目的を達成させる事が可能である。
グラフト重合体は、製造方法に付いては特に制限がなく、一般的に公知な溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等によって得られるゴム質重合体に上記単量体をグラフト重合させるには、一般に上記オレフィン系ゴム質重合体存在下に上記単量体を前記した油溶性或いは水溶性開始剤及び/又は紫外線、電子線等の高エネルギー線によって重合させる重合方式が使用され、該重合方式としては塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合等の一般的方法が適用される。
グラフト重合によって得られるグラフトゴム質重合体は、ゴム質重合体を幹とし上記単量体の重合鎖を枝とする狭義のグラフト重合体を主成分とし、場合によって該狭義のグラフトゴム質重合体にゴム質重合体及び/又は上記単量体からなる重合体がミクロブレンドされているものである。
グラフト重合における単量体混合物、乳化剤、重合開始剤及び連鎖移動剤等の成分の添加方法としては様々の方法を採用する事ができる。即ち、重合初期に全量を添加する方法、一部を初期に添加し残りを連続添加する方法、全量を連続添加する方法及び2回以上に分割して添加する方法等が挙げられる。
使用する乳化剤、重合開始剤及び連鎖移動剤の種類に付いては特に制限はなく、通常の乳化重合で用いられる試薬を使用できる。代表的な乳化剤としてはロジン酸カリウム、ステアリン酸カリウム及びオレイン酸カリウム等が、重合開始剤としては有機ハイドロパーオキサイドと含糖ピロリン酸−硫酸第一鉄の併用系及び過流酸塩等が、又連鎖移動剤としてはアルキルチオール化合物がそれぞれ挙げられる。
乳化重合によって得られたグラフトゴム質重合体は、ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体及びこれらと共重合可能な他のビニル系単量体からなる単量体がグラフト重合したグラフトゴム成分と、ゴム質重合体にグラフトしない非グラフト重合体成分からなる組成物である。このとき、グラフトゴム成分のグラフト率(ゴム質重合体に対するグラフトしている重合体成分の質量割合)は10%以上、好ましくは15%以上である。この範囲で上記グラフトゴム質重合体の熱可塑性樹脂に対する相容(溶)性と、該熱可塑性樹脂に対する再生性の向上効果、即ちリサイクルの際の耐衝撃性の低下防止効果とがバランスする。グラフト率が10%未満では樹脂組成物の耐衝撃性、成形品表面外観特性が悪化する為好ましくない。また、非グラフト重合体成分のグラフト重合体に占める質量割合を5質量%以上、好ましくは8質量%以上である。非グラフト重合体成分が5質量%未満では、樹脂組成物の成形品表面に凝集物が現れ外観が著しく低下し、かつ耐衝撃性等の物性も低下する為好ましくない。更に非グラフト重合体成分のメチルエチルケトン溶媒、30℃で測定した極限粘度は0.3dl/g以下、好ましくは0.05〜0.28dl/g、より好ましくは0.1〜0.26dl/gである。極限粘度が0.3dl/gを超えるとゴム粒子がマトリックスに均一に分散せず耐衝撃性、表面外観特性の低下を引き起こす為好ましくない。ここで、一般的に非グラフト重合体成分とグラフトしている重合体成分の重合度はほぼ等しいと考えられている為、グラフトしている重合体成分の鎖長が長いと、別のゴム質重合体にグラフトしている重合体成分と絡み合いグラフトゴムの均一分散を妨げる事が、耐衝撃性、表面外観特性の低下の原因となる。グラフト率、非グラフト重合体の極限粘度はゴム質重合体と単量体混合物の比率、重合開始剤の種類及び量、連鎖移動剤の種類及び量、及び乳化剤の種類及び量を調節する事により制御可能である。
以下、各熱可塑性樹脂に適するゴム質重合体からなるグラフトゴム質重合体に付いて説明する。
(1)スチレン系樹脂用グラフトゴム質重合体
スチレン系樹脂、特にPS(或いはHIPSとHiPS)に対しては、スチレン及び/又はスチレンと類似な単量体として前記(A:スチレン系樹脂)の項に例示されている他のスチレン系単量体の一種又は二種以上をグラフト重合したグラフトゴム質重合体(ジエン系、又はオレフィン系、又はアクリル系ゴム質重合体含有のスチレン及び/又はスチレンと類似な単量体とのグラフト共重合体であるスチレングラフトゴム質重合体)が使用される。
該スチレングラフトゴム質重合体は前記スチレン系樹脂、特にPSと略同一なソルビリティーパラメーターを有するスチレン系単量体の重合鎖を枝としているので、PSに対して良好な相容(溶)性を示す。
スチレン系樹脂、特にAS(或いはABSとAbS)に対しては、スチレン(スチレン化ビニル)及び/又は他のスチレン系単量体の一種又は二種以上と、アクリロニトリル(シアン化ビニル)及び/又は他のニトリル系単量体の一種又は二種以上をグラフト重合したグラフトゴム質重合体(ジエン系、又はオレフィン系、又はアクリル系ゴム質重合体含有のスチレン及び/又は他のスチレン系単量体、又はスチレンと類似な単量体と、アクリロニトリル及び/又は他のニトリル系単量体とのグラフト共重合体であるスチレンニトリルグラフトゴム質重合体が使用される。
前記単量体以外にゴム質重合体には上記単量体と共重合可能な他の単量体がグラフト共重合されてもよい。この様な単量体は(A:スチレン系樹脂)の項において例示されている。
前記スチレンニトリルグラフトオレフィン系グラフト重合体は前記スチレン系樹脂、特にAS(或いはABSやAbS)と略同一なソルビリティーパラメーターを有するスチレン・ニトリル共重合鎖を枝としているので、AS(或いはABSやAbS)に対して良好な相容(溶)性を示す。
(2)PPE系樹脂用グラフトゴム質重合体
PPEは、前記した様にフェニル基を有する構成ユニットからなり、したがってグラフトゴム質重合体としてはスチレングラフトゴム質重合体が選択される事が望ましい。該グラフトゴム質重合体はPPEと近似したソルビリティーパラメーターを有するスチレン重合鎖を枝として有し、PPE系樹脂と良好な相容(溶)性を有するので、該グラフトゴム質重合体はPPE系樹脂に分離を起す事なく安定に混合され、該PPE系樹脂の物性を付与する。
(3)オレフィン系樹脂用ゴム質重合体
ポリエチレン,ポリプロビレン等のポリオレフィン系樹脂に対しては、オレフィン系ゴム質重合体はポリオレフィン系樹脂と同一又は類似の単量体が共重合されているので前記ポリオレフィン系樹脂、特にPPと略同一なソルビリティーパラメーターを有しているので、良好な相容(溶)性を示すのでそのままで使用され得る。
オレフィン系樹脂用のゴム質重合体としてのエチレン−α−オレフィン、及び必要に応じて使用される非共役ジエン化合物の使用割合は、モル分率で好ましくは、エチレン/α−オレフィン/非共役ジエン化合物=0.2〜1.0/0.2〜0.8/0〜0.2、更に好ましくは、0.5〜0.9/0.25〜0.75/0〜0.1であり、エチレン/プロピレンのモル比は60/40以上、望ましくは65/35以上即ち、得られる樹脂成形品の機械的性質(耐衝撃性等)の再生性(以下、再生性)の点からみれば、エチレンリッチなEPM或いはEPDMを使用する事が望ましい。
また、本発明に使用されるエチレン−α−オレフィン系共重合体のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、再生性の点からみて好ましくは5〜150、更に好ましくは、10〜120、最適値は20〜80である。
更に、上記熱可塑性樹脂の耐衝撃性を改良する為には、熱可塑性エラストマー(TPE)を添加してもよい。該熱可塑性エラストマーとは常温で加硫ゴムの性質を有するが熱可塑性で熱成形可能なものであり、ハードセグメントとソフトセグメントとによって構成されるものである。該TPEとしては、ウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ビニル系エラストマー、エステル系エラストマー等がある。
〔成形(型)物〕
本発明の成形品は、上記熱可塑性樹脂を材料として射出成形、ブロー成形、真空成形、圧空成形、プレス成形、押出成形等、種々の成形方法によって製造され、容器状、箱状、トレイ状、シート状等、種々の形状を有してもよい。
〔付属部材〕
付属部材は、上記成形品の熱可塑性樹脂に対して相容(溶)性を有する熱可塑性樹脂を材料として成形品と同様な成形方法で製造される。付属部材は、例えば成形品に接着される把手、脚、シールやラベルの類、フレーム等である。
成形品の熱可塑性樹脂と相容(溶)性を有する熱可塑性樹脂とは、加熱混合溶融しても該成形品の熱可塑性樹脂と相分離を起さない様な熱可塑性樹脂をいう。
付属部材に使用される熱可塑性樹脂としては、一般的には上記成形品の熱可塑性樹脂として例示される熱可塑性樹脂が使用される。例えば、上記成形品の熱可塑性樹脂が、HIPS或いはHiPS、又はPSである場合、付属部材の熱可塑性樹脂としては、成形品の熱可塑性樹脂に対して相容(溶)性を有するHIPS、HiPS、PS等が使用される。
成形品の熱可塑性樹脂が、ABS或いはAbS又はASである場合、付属部材の熱可塑性樹脂としては、成形品の熱可塑性樹脂に対して相容(溶)性を有するABS、AbS、AS、ACS、ASiS等が使用される。
成形品の熱可塑性樹脂が、PPE(或いは変性PPE)である場合、付属部材の熱可塑性樹脂としては、成形品の熱可塑性樹脂に対して相容(溶)性を有するPPE、変性PPE、PS、HIPS、HiPS等が使用される。
成形品の熱可塑性樹脂が、PC/ABS或いはAbSの混合物(ポリマーアロイ、ポリマーブレンドを含む。以下、PC/ABSの混合物等)である場合、付属部材の熱可塑性樹脂としては、成形品の熱可塑性樹脂に対して相容(溶)性を有するPC/ABS、或いはAbSの混合物等、AS、AbS、ACS、ASiS等が使用される。
成形品の熱可塑性樹脂が、PPである場合、付属部材の熱可塑性樹脂としては、成形品の熱可塑性樹脂に対して相容(溶)性を有する、PP及び塩素化PP等のハロゲン化PP等が使用される。
〔塗布材〕
本発明において使用される塗布材は、塗料、インキ等の成形品表面に塗布されるものであって、該成形品の熱可塑性樹脂に対して相容(溶)性を有する熱可塑性樹脂をビヒクルとする。即ち上記ビヒクルとしての熱可塑性樹脂は該成形品の熱可塑性樹脂と溶融混合した場合に相分離を起さない様な樹脂である。このような樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、PPE樹脂、PC樹脂を材料とする成形品に対しては、スチレン系樹脂、スチレン変性アクリル樹脂等があり、ポリオレフィン樹脂を材料とする成形品に対してはハロゲン化オレフィン樹脂等がある。塗布材の形態には、溶剤型、エマルション型、サスペンション型、水溶性、及び粉体がある。上記ビヒクルとしての熱可塑性樹脂には、塗装作業性、顔料分散性、乾燥性等を改良する為に繊維素誘導体が添加され、この様な繊維素誘導体としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、酢酸セルロース、ベンジルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート等がある。該セルロースアセテートブチレートの粘度は、0.01〜20秒の範囲内である事が望ましい。該セルロースアセテートブチレートのアセチル基含有量は、0〜15.0%の範囲内である事が望ましい。該セルロースアセテートブチレートのブチル基含有量は30.0〜55.0%の範囲内である事が望ましい。
該酢酸セルロースは二酢酸セルロースであり、酸化度が50〜60%、好ましくは54〜56%である事が望ましい。該エチルセルロースのエトキシ基含有量は、45〜50%の範囲内である事が望ましい。また、該メチルセルロースのメトキシ基含有量が19〜31.5%の範囲内である事が望ましい。該ヒドロキシプロピルメチルセルロースのヒドロキシプロポキシ基含有量が4〜12%の範囲内である事が望ましい。該ヒドロキシエチルメチルセルロースは、ヒドロキシエトキシ基含有量が4〜12%の範囲内である事が望ましい。該ヒドロキシエチルセルルースの2質量%水溶液の粘度が20〜100000cps(mPa・s)の範囲内である事が望ましい。ニトロセルロースの窒素含有量は3質量%以上である事が望ましい。
前記塗布材は無黄変のクリアラッカーであってもよいが、着色を目的とする場合には例えば、チタン白、クロム黄、ベンガラ、コバルトブルー、カーボンブラック等の顔料、分散染料、カチオン染料、塩基性染料、酸性染料、金属錯塩染料、反応染料、直接染料、硫化染料、建染染料、アイゾック染料、複合染料等の染料が添加される。更に上記塗布材にはジメチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の可塑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、顔料或いは染料の分散剤等が添加されてもよい。
特にスチレン系樹脂、PPE系樹脂、PC樹脂に使用される塗布材のビヒクルとしてはスチレン変性アクリル樹脂を使用する事が望ましい。
前記スチレン変性アクリル樹脂とは、スチレンとアクリルエステルからなる共重合体である。該アクリルエステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等のアクリレートが例示され、又メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等のメタクリレートが使用されてもよい。
尚、前記スチレン変性アクリル樹脂は、成形品等の熱可塑性樹脂との相容(溶)性を損なわない程度において、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、iso−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の脂肪族ビニル、エチレン、プロピレン等のオレフィン類、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン等のジエン類、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、アトロパ酸、シトラコン酸等のα、β−不飽和カルボン酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、アリルアルコール等の水酸基含有単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド類、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート等のアミノ基含単量体、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアリルエーテル等のエポキシ基含有単量体、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルアセトキシシラン、p−トリメトキシシリルスチレン、p−トリエトキシシリルスチレン、p−トリメトキシシリル−α−メチルスチレン、p−トリエトキシシリル−α−メチルスチレン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−β(N−ビニルベンジルアミノエチル−γ−アミノプロピル)トリメトキシシラン・塩酸塩等の加水分解性シリル基含有ビニル単量体等の単量体が、共重合されてもよい。尚上記単量体は単独で、又は二種以上組合せて使用されてもよい。
該スチレン変性アクリル樹脂からなる塗料等は、上記スチレン系樹脂(HIPS、HiPS、PS、ABS、AbS、AS)、PPE(変性PPE)、PC/ABS,AbS,HIPS,HiPSの混合物等からなるいずれの成形品等の塗装においても使用可能であり、又付着性、耐候性、作業性も良好であり特に有用な塗料等である。
前記塗料等を使用して上記成形品及び付属成形品を塗装する方法としては、公知の塗装方法の何れでも可能であり、一般的にはエアースプレー塗装が用いられる。
前記塗布材である塗料或いはインキにより塗装或いは印刷によって塗布した成形品は、上記塗布材の樹脂が該成形品の樹脂と相容(溶)性を有する樹脂から構成されるので、この様な成形品をリサイクルする場合には、塗膜等を成形品から分離する必要がない。従って、本発明の塗布材を塗布した樹脂成形品は、リサイクル性の優れた樹脂成形品である。
(着色剤)
装飾的な色付け目的で塗料中に配合する材料を着色剤と云い、ふつう顔料が用いられる。ここで顔料とは、水や溶剤等には溶けない色のある粉末、水に溶ける色のある粉末をいう。これらの例としては、以下のものがある。
無機顔料において、白色顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、鉛白、リトポン、バライト、沈降性硫酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、沈降性シリカ等があり、黒色顔料としては、カーボンブラック、ランプブラック、チタンブラック、合成鉄黒、複写機の廃トナー等がある。また、灰色顔料としては、亜鉛末、亜酸化鉛、スレート粉等、白顔料としては、亜鉛華、アンチモン白、一塩基性硫酸鉛、鉛白、チタン白等、黒顔料としては、カーボンブラック、ランプブラック、ボーン黒、黒鉛、鉄黒、廃トナー等がある。また、赤顔料としては、カドミウム赤、カドミウム水銀赤、銀朱、べんがら、モリブデン赤、鉛丹;光明丹等、クロームバーミリオン、べんがら、レーキレッド4R、カーミンFB、ジニトロアニリンオレンジ、ピラゾロンオレンジ、ピラゾロンレッド、ペリノンオレンジ、パーマネントレッド2B、レーキレッドR、ボンマルーンライト、ボルドー10B、ボンマルーンメジュウム、チオインジゴボルドー、ボンマルーL、ペリレンバーミリオン、ペリレンスカーレット、ペリレンマルーン、ベンツイミダゾロンオレンジ等がある。また、褐色顔料としては、アンバー、酸化鉄茶、カドミウム黄等がある。また、黄色顔料としては、亜鉛黄、黄土;オーカ及びシエナ、黄色酸化鉄:合成オーカ、黄鉛、チタン黄等がある。また、緑色顔料としては、酸化クロム、コバルト緑、クロム緑等、黄鉛、黄色酸化鉄、チタン黄、黄土、アンチモン黄、バリウム黄、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、縮合アゾ顔料、イソインドリノン顔料、スレン系顔料等がある。また、緑顔料としては、クロムグリーン、コバルトグリーン、酸化クロム、シアニングリーン、ブロム化グリーン、クロムグリーン等がある。また、青顔料としては、群青、紺青・鉄青、コバルト青、群青、紺青、シアニンブルー、無金属シアニンブルー、インダンスレンブルー、コバルトブルー等がある。また、紫顔料としては、コバルトバイオレット、マンガンバイオレット、キナクリドンバイオレット、キナクリドンレッド、ジオキサジンバイオレット等がある。また、防錆顔料としては、亜鉛末、亜酸化鉛、鉛丹、ジンククロメート、鉛酸カルシウム、ストロンチウムクロメート、シアナミド鉛、塩基性クロム酸鉛、塩基性硫酸鉛、MIO等がある。また、金属粉顔料は、メタリックな感じを与える為のもので、アルミ粉(アルミニウムフレーク)、ブロンズ粉(ブロンズフレーク)、マイカ、貝粉、真珠粉、魚鱗等がある。また、体質顔料としては、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、けい藻土、シリカ白、ベントナイト、タルク滑石粉、沈降性炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム等がある。その他の顔料としては、亜酸化銅、蛍光顔料、ガラスビーズ、リサージ、雲母質チタン箔、雲母粉等がある。
染料としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、含金属錯塩染料、油溶性染料等がある。有機顔料は、アゾ顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、塩基性染料系レーキ、媒染染料系レーキおよび建染染料系顔料が必要に応じて用いられる。
〔樹脂コート〕
塗料用樹脂と成形用樹脂とが相容(溶)性を有し、塗膜付きのまま粉砕、ペレット化する再生方法では、塗料用樹脂が熱可塑性樹脂の場合、塗料中の顔料の全部あるいは一部は再生時加熱熔融の段階(塗膜が加熱溶融されて)で成形用樹脂中に移行する。その結果、成形用樹脂内に非相容(溶)な物質{顔料・染料は成形用樹脂とは相容(溶)性が乏しい}が増え、結果前記成形用樹脂の物性は塗膜中の顔料の影響によって、再生後に低下する。
かかる問題を解決する為に成形用樹脂と顔料と其々の界面・境界領域における結合を持たせる目的{所謂相容(溶)性を持たせる目的}で、前記顔料を、特開昭64−40566号公報、特開昭51−11818号公報または特公平1−49746号公報等に記載されている公知の方法によって樹脂コートすることで、再生成形用樹脂の物性低下を少なくすることができる。樹脂コートの量は0.5質量%以上である事が成形用樹脂と相容(溶)性を持つ為の必要条件である。また、エマルション型に代表される水系塗料にアルミニウムフレーク顔料を使用する場合、アルミニウムフレークの腐食の問題があるが樹脂コートによって解決される。
樹脂コート化のプロセスの概念をアルミニウムフレークを例に以下に説明する。
▲1▼アルミニウムフレークに、▲2▼塗料用樹脂と成形用樹脂、好ましくは塗装予定の成形用樹脂と相容(溶)性を持たせる目的で、成形用樹脂と同一及び/又は類似のモノマーの1種類乃至2種類以上を重合して樹脂の成長、吸着をさせる。
この工程は1回の場合、2回以上繰り返し実施する場合とがある。
成形用樹脂及び/または塗料用樹脂と相容(溶)性を示せば、コート樹脂は熱可塑性、熱硬化性どちらでも使用可能であるが、塗料に配合される事から、塗料中の溶剤によって膨潤、溶解しない事、再生時加熱溶融の段階で溶融されない事に鑑み、熱硬化性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂の場合は、溶剤によって膨潤、溶解しない事、再生時の加熱溶融の温度よりも、コート樹脂の溶融温度が高い事、即ち再生時加熱溶融混練によって顔料表面のコート樹脂が溶融しない事の要求がある。
成形用樹脂を(A:スチレン系樹脂)に言及すれば、熱硬化性のスチレン変性アクリル樹脂、アクリル樹脂が適する。スチレン変性ウレタン樹脂も使用可能であるが、前記熱硬化性のスチレン変性アクリル樹脂、アクリル樹脂に比べて、相容(溶)性は劣る。
(溶剤)
塗料に用いる溶剤は、炭化水素系ではノルマルヘキサン、低芳香族含有ミネラルスピリット、トルエン、キシレン、ターペン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等、アルコール系では、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、イソブタノール、第2ブタノール、第3ブタノール、メチルイソブチルカルビノール等、エーテルアルコール及びエーテル系ではメチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ターシャリーブチルセロソルブ、3メチル3メトキシブタノール、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール等、エステル及びエーテルエステル系では酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸メチルセロソルブ、酢酸セロソルブ、酢酸ブチルセロソルブ、酢酸メトキシブチル、酢酸カルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等、ケトン系ではアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、イソホロン等がある。
その他として水、ジメチルホルムアミド等があり、更には超臨界流体や二酸化炭素、He、Ne、Ar、窒素ガス等の不活性ガス、LPG、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン等の可燃性ガス、空気、酸素、塩素等を液化した液化ガス等がある。
(添加剤)
塗料に用いることができる添加剤は、可塑剤、消泡剤、色わかれ防止剤、色むら防止剤、浮き防止剤、界面活性剤、皮張り防止剤、増粘剤、沈澱防止剤、沈降防止剤、流れ止剤、たれ防止剤、防腐剤、防かび剤、紫外線安定剤、難燃剤、防汚剤、つや消し剤、塩化ビニル樹脂用安定剤、抗菌剤等がある。
【実施例1】
(塗料組成)
アルミニウム顔料ペースト(前記アルミフレークに少量の溶剤や樹脂を加えてペースト状にしたもので、塗料の製造には広く用いられている。)10質量%、アクリル樹脂ワニス(※1)40質量%、CAB樹脂ワニス(※2)19質量%、可塑剤(※3)2質量%、シンナー(溶剤)(※4)29質量%の配合で、塗料を調整した。
ここで、アルミニウム顔料ペーストは、樹脂コート量が2.5重量%(アルペースト(商標)FZC3080/東洋アルミ社製),5.6重量%(アルペースト(商標)FZC6370/東洋アルミ社製),12.4質量%(アルペースト(商標)FZH5660/東洋アルミ社製),17.1質量%(アルペースト(商標)FZ−U75C/東洋アルミ社製)と、樹脂コートなし(アルペースト(商標)1109M/東洋アルミ社製,アルペースト(商標)7675NS/東洋アルミ社製)を其々使用した。
塗料用樹脂は、HiPSと相容(溶)性のあるアクリル樹脂で、ワニス(※1)は、大日本インキ製のアクリディック(商標)A−157(不揮発分:45%)常温乾燥型アクリル樹脂ワニスを使用した。
CAB樹脂ワニス(※2)は、イーストマン製のCAB−381−0.5 セルロースアセテートブチレート樹脂(不揮発分:20%)を、可塑剤(※3)として大日本インキ製のアジピン酸エステルを使用した。
また、シンナー(※4)は、酢酸エチル35質量%、イソプロピルアルコール20質量%、イソブタノール15質量%、酢酸ブチル10質量%、ブチルセロソルブ20質量%からなる。
〔塗装〕
ABS樹脂(テクノポリマー製 GARADE−150 TYPE−NP(自然色)を用いて成形した第1図に示す成形品1の片面に、前記塗料を前記シンナーを用い粘度を11秒(FC#4/20℃)に調整したものを、膜厚10μでエアースプレー塗装した。その後、50℃乾燥炉で20分乾燥し、第1図に示す塗装成形品1とした。第1図における2はリブである。
〔再生〕
該塗装成形品1を粉砕・ペレット化して再生ABS樹脂ペレットを得た。得られた再生ABSペレットを用いて、物性評価用の試験片(成形品)を成形加工し、Izod衝撃強度を測定し、比較して、顔料への樹脂コートの有無の有効性を確認した(表1)。

アルミニウムペーストへの樹脂コートは、リサイクルの観点から見ると5重量%以上であることが望ましい。
【実施例2】
前記実施例1のABSの替わりに、HIPS{スタイロン492(商品名)}を用いた場合でも、前記ABSと略同様な結果を示した(表2)。

【実施例3】
実施例3は、変性PPE{Xyron100Z(商品名)}を用いた場合で、前記ABSと略同様な結果を示した(表3)。

【実施例4】
AbS{AES{ユニブライト700A(商品名)}を用いた場合で、前記実施例1のABSと略同様な結果を示した(表4)。

【実施例5】
前記実施例1のABSの替わりに、PSにPSと相容(溶)性を持たせたスチレングラフトのアクリル酸ブチルとブタジエンとの共重合体を25質量部混ぜ合わせたHiPSの結果でも、前記実施例1のABSと略同様な結果を示した(表5)。

また、本実施例は、塗料について確認したが、塗料との類似の組成を持つ印刷インクにおいても良好であることが推測される。
前記した実施形態および実施例は、説明のために例示したものであって、本発明としては、それらに限定されるものではなく、特許請求の範囲、発明の詳細な説明及び図面の記載から当業者が認識する事ができる本発明の技術的思想に反しない限り、変更及び付加が可能である。
例えば、本発明は塗膜中に顔料が含まれる塗装成形品を粉砕、再成形してリサイクルしたものを詳細に説明したが、本発明で説明した表面がコーテイング処理された顔料が、表面に塗膜のない成形品に含有され、それを再成形した場合にも同じ効果が得られることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
本発明は熱可塑性樹脂成形品のリサイクルに利用できる。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を主成分とする成形品に、該熱可塑性樹脂と相容(溶)性を有する熱可塑性樹脂が主成分である塗料を少なくとも一部に塗装した塗装成形品を、塗膜付きのまま、粉砕して再成形した再生熱可塑性樹脂成形品において、
前記塗料には、顔料が添加されており、該顔料は、前記成形品を構成する熱可塑性樹脂および前記塗料を構成する熱可塑性樹脂と相容(溶)性を有する樹脂で表面処理されていることを特徴とする再生熱可塑性樹脂成形品
【請求項2】
前記顔料は、無機および/または有機化合物である請求の範囲第1項に記載の再生熱可塑性樹脂成形品
【請求項3】
前記顔料は、アルミニウムフレークであることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の再生熱可塑性樹脂成形品
【請求項4】
前記塗料を構成する熱可塑性樹脂が、熱可塑性アクリル樹脂またはスチレン変性アクリル樹脂であることを特徴とする請求の範囲第2項または第3項に記載の再生熱可塑性樹脂成形品
【請求項5】
前記アルミニウムフレークは、有機重合体によって被覆されたことを特徴とする請求の範囲第3項に記載の再生熱可塑性樹脂成形品
【請求項6】
前記有機重合体は、アクリル樹脂であることを特徴とする請求の範囲第5項に記載の再生熱可塑性樹脂成形品
【請求項7】
前記アルミニウムフレークは、有機溶剤中でエチレン性不飽和モノマーを溶解させ、重合開始剤の共存下で加熱重合する事により、
または、少なくとも1個の重合性二重結合を有するオリゴマーおよびモノマーよりなる群から選ばれた少なくとも2種を反応させて得られる共重合体により、被覆されている請求の範囲第5項に記載の再生熱可塑性樹脂成形品
【請求項8】
アルミニウムフレークを被覆する有機重合体の被覆量は、アルミニウムフレークの質量に対して、0.5質量%以上であることを特徴とする請求の範囲第5項に記載の再生熱可塑性樹脂成形品

【国際公開番号】WO2004/089591
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【発行日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505203(P2005−505203)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004465
【国際出願日】平成16年3月29日(2004.3.29)
【出願人】(000251288)鈴鹿富士ゼロックス株式会社 (156)
【出願人】(391011157)株式会社トウペ (8)
【Fターム(参考)】