説明

再生皮革および再生皮革の製造方法

【課題】簡便な方法で天然皮革に匹敵する色調、光沢、風合い、および耐久性を有する再生皮革を製造可能な再生皮革の製造方法およびそれにより製造される再生皮革を提供する。
【解決手段】皮革微粒子14と、皮革微粒子14表面の官能基と熱で反応して化学結合を形成する複数の結合基を有する架橋剤11とを含む混合物を加圧下で加熱し、皮革微粒子14表面の官能基と結合基との反応により化学結合を形成させる工程を含む、複数の皮革微粒子14が、架橋剤分子11の両端の結合基と皮革微粒子表面の官能基との反応により形成された共有結合を介して互いに結合し、所定の形状に成形硬化されている再生皮革10を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な再生皮革およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮革は、柔軟性、強度、耐久性および吸湿性に優れ、独特の質感や風合いを有していることから、衣服、スポーツ用品、家具、日用雑貨等の様々な用途に用いられている。また、皮革は、動物から採取した皮を原料としており、毛皮として用いられるものを除き、脱毛、なめし等の複雑な工程を経て製造されるため、一般に高価である。また、皮革製品は、形状が規格化されていない上に、原料の大きさおよび形状もさまざまであるため、製品の所定形状に裁断等する際に、皮屑等の大小様々な形状を有する皮革廃材が多量に発生する。従来、皮革廃材は、形状等が一定せず再利用が困難であるため、廃棄または焼却処分されてきたが、なめし工程でクロムを使用した場合には、有害な六価クロムが発生するおそれがあるため、現在では廃棄が困難になりつつある。それに加えて、資源の有効利用の観点からも、皮革廃材の再利用に関する技術が注目を集めつつある。
【0003】
上記のような課題を背景に、再生皮革の製造方法に関するいくつかの技術が提案されている。例えば、特許文献1では、タンニンなめし皮屑を乾式粉砕したタンニンなめし皮屑繊維を含有する再生皮革紙基紙に合成樹脂を含浸してなる再生皮革紙からなることを特徴とする靴用芯材が開示されている。また、特許文献2には、繊毛部分を有していない微粉状の皮革粉を熱可塑性樹脂コンパウンドに混入してなることを特徴とする皮革様成形品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−108709号公報
【特許文献2】特開平8−259999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の靴用芯材の製造においては、タンニンなめし革屑を叩解し、必要に応じてセルロース等の他の繊維質と混合し抄造した上で合成樹脂を含浸させるという煩雑な工程を経る必要がある。また、特許文献1、2記載の方法のように、革屑の粉砕物を合成樹脂と混合して再生皮革を製造する場合、合成樹脂を含むため風合いや物性が天然皮革に比べて大幅に劣り、革屑の粉砕物の大きさや合成樹脂との配合比によっては、均一に分散せずに凝集する。また、革屑は親水性であり、合成樹脂との親和性が低いために強度や耐久性にも劣る等の課題がある。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、簡便な方法で天然皮革に匹敵する色調、光沢、風合い、および耐久性を有する再生皮革およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明の第1の態様は、分子架橋を介して互いに化学結合した複数の皮革微粒子を含み、所定の形状に成形硬化されたことを特徴とする再生皮革を提供することにより上記課題を解決するものである。
【0008】
皮革微粒子同士が分子架橋を介して化学結合しているため、皮革微粒子と合成樹脂とがファンデルワールス力を介して結合した従来の再生皮革に比べ、強度および耐久性に優れていると共に、天然皮革により近い色調、光沢および風合いを有している。
【0009】
本発明の第1の態様に係る再生皮革において、前記分子架橋が、前記皮革微粒子の表面官能基と直接反応して化学結合を形成する複数の結合基を含む第1の架橋剤を介して化学結合することにより形成されていてもよい。
【0010】
本発明の第1の態様に係る再生皮革において、前記分子架橋が、皮革微粒子の1つと化学結合した第1の被膜の有する第1の反応性の官能基と、前記1つの皮革微粒子以外の皮革微粒子と化学結合した第2の被膜の有する前記第1の官能基と反応して化学結合を形成する第2の反応性の官能基とが反応して化学結合することにより形成されていてもよい。
【0011】
本発明の第1の態様に係る再生皮革において、前記分子架橋が、皮革微粒子の1つと化学結合した被膜の有する反応性の第3の官能基と、前記1つの皮革微粒子以外の皮革微粒子と化学結合した被膜の有する前記反応性の官能基と、前記反応性の官能基と熱で反応して化学結合を形成する複数の架橋反応基を有する第2の架橋剤を介して化学結合することにより形成されていてもよい。
【0012】
本発明の第1の態様に係る再生皮革において、前記皮革微粒子の大きさが100nm〜5mmであることが好ましい。
【0013】
本発明の第2の態様は、皮革微粒子と、該皮革微粒子表面の官能基と熱で反応して化学結合を形成する複数の結合基を有する第1の架橋剤とを含む混合物を加圧下で加熱し、前記皮革微粒子表面の官能基と前記結合基との反応により化学結合を形成させる工程を含むことを特徴とする再生皮革の製造方法を提供することにより上記課題を解決するものである。
【0014】
上記の製造方法により、皮革微粒子同士が架橋剤分子の両端の結合基と皮革微粒子表面の官能基との反応により形成された化学結合を介して結合し、所定の形状に成形硬化された再生皮革を得ることができる。このようにして得られる再生皮革は、皮革微粒子同士が分子架橋を介して化学結合しているため、皮革微粒子と合成樹脂とがファンデルワールス力を介して結合した従来の再生皮革に比べ、強度および耐久性に優れていると共に、バインダーに相当すら成分が極限まで低減できるので、天然皮革により近い色調、光沢および風合いを有している。
【0015】
本発明の第3の態様は、第1の反応性の官能基および結合基をそれぞれ有する第1の膜化合物を皮革微粒子と接触させ、前記結合基と前記皮革微粒子の表面官能基との間で化学結合を形成させ、前記第1の膜化合物の形成する被膜で表面の少なくとも一部が覆われた第1の反応性皮革微粒子を製造する工程と、前記第1の反応性の官能基と熱で反応して化学結合を形成する第2の反応性の官能基および結合基をそれぞれ有する第2の膜化合物を皮革微粒子と接触させ、前記結合基と前記皮革微粒子の表面官能基との間で化学結合を形成させ、前記第2の膜化合物の形成する被膜で表面の少なくとも一部が覆われた第2の反応性皮革微粒子を製造する工程と、前記第1の反応性皮革微粒子と、前記第2の反応性皮革微粒子とを含む混合物を加圧下で加熱し、前記第1の反応性の官能基と前記第2の反応性の官能基との反応により化学結合を形成させる工程とを含むことを特徴とする再生皮革の製造方法を提供することにより上記課題を解決するものである。
【0016】
本態様に係る再生皮革の製造方法では、まず第1および第2の反応性皮革微粒子を製造し、それぞれの有する反応性の官能基同士を反応させることにより、皮革微粒子同士を共有結合させている。そのため、架橋剤が同一皮革微粒子の表面上に存在する複数の官能基と反応し、皮革微粒子間での結合が形成されなくなるおそれを低減させることができる。
【0017】
本発明の第3の態様に係る再生皮革の製造方法において、前記第1および第2の膜化合物の形成する被膜が単分子膜であることが好ましい。
【0018】
本発明の第3の態様に係る再生皮革の製造方法において、前記第1の反応性の官能基と前記第2の反応性の官能基との反応により形成された結合が、アミノ基またはイミノ基とエポキシ基との反応により形成されたN−CHCH(OH)結合であってもよい。
【0019】
本発明の第3の態様に係る再生皮革の製造方法において、前記第1の反応性の官能基と前記第2の反応性の官能基との反応により形成された結合が、アミノ基またはイミノ基とイソシアネート基との反応により形成されたNH−CONH結合であってもよい。
【0020】
本発明の第4の態様は、第3の反応性の官能基および結合基をそれぞれ有する第3の膜化合物を皮革微粒子と接触させ、前記結合基と前記皮革微粒子の表面官能基との間で化学結合を形成させ、前記膜化合物の形成する被膜で表面の少なくとも一部が覆われた第3の反応性皮革微粒子を製造する工程と、前記第3の反応性皮革微粒子と、前記第3の反応性の官能基と熱で反応して化学結合を形成する複数の架橋反応基を有する第2の架橋剤とを含む混合物を加圧下で加熱し、前記第3の反応性の官能基と前記架橋反応基との反応により化学結合を形成させる工程とを含むことを特徴とする再生皮革の製造方法を提供することにより上記課題を解決するものである。
【0021】
本態様に係る再生皮革の製造方法では、使用する膜化合物の種類および反応性皮革微粒子の種類を減少させることができるため、より簡便に再生皮革を製造することが可能になる。
【0022】
本発明の第4の態様に係る再生皮革の製造方法において、前記第3の膜化合物の形成する被膜が単分子膜であることが好ましい。
【0023】
本発明の第4の態様に係る再生皮革の製造方法において、前記第3の反応性の官能基と前記架橋反応基との架橋反応により形成された結合が、アミノ基またはイミノ基とエポキシ基との反応により形成されたN−CHCH(OH)結合であってもよい。
【0024】
本発明の第4の態様に係る再生皮革の製造方法において、前記第3の反応性の官能基と前記架橋反応基との架橋反応により形成された結合が、アミノ基またはイミノ基とイソシアネート基との反応により形成されたNH−CONH結合であってもよい。
【0025】
本発明の第2から第4の態様に係る再生皮革の製造方法において、前記結合基が、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、カルボキシル基、酸ハロゲン化物、酸無水物、アルデヒド基、アルコキシシリル基およびハロシリル基からなる群より選択されるものであってもよい。
これらの官能基は、皮革(コラーゲン)の表面に存在するヒドロキシル基、アミノ基等の官能基と熱により反応し、共有結合を形成できるため、これらの官能基を結合基として含む化合物は、皮革微粒子の架橋剤として特に有用である。
【0026】
本発明の第2から第4の態様に係る再生皮革の製造方法において、前記皮革微粒子の大きさは、100nm〜5mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
以上述べたように、本発明によると、皮革微粒子同士を結合させるために使用される架橋性分子は、ナノレベルであり、たとえ皮革微粒子が100nmレベルとしても、従来のバインダーに相当する成分が極限まで低減できるので、大部分は皮革で構成されることになり、天然皮革に匹敵する色調、光沢、風合い、染色性および耐久性を有する再生皮革を簡便に製造可能な再生皮革の製造方法およびそれにより製造され、天然皮革に匹敵する色調、光沢、風合い、染色性および耐久性を有する再生皮革が提供できる。また、本発明の再生皮革は、原料となる皮革微粒子の大きさを適宜選択することにより、色調、光沢、風合い等を制御できると共に、あらかじめ金型表面に天然皮革表面様の模様等の任意の模様を加工しておけば、天然皮革表面様の意匠を持つ再生皮革を製造できる。さらに、複数種類の皮革微粒子を混合して用いることにより、天然皮革にない質感や風合いを発現できる点でも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係る再生皮革の断面構造を模式的に表した説明図である。
【図2】本発明の第二の実施の形態に係る再生皮革の断面構造を模式的に表した説明図である。
【図3】同再生皮革の製造方法において、エポキシ化皮革微粒子を製造する工程を模式的に表した説明図である。
【図4】同再生皮革の製造方法において、エポキシ化皮革微粒子を製造する工程を説明するために分子レベルまで拡大した模式図であり、(a)は反応前の皮革微粒子の断面構造、(b)はエポキシ基を含む単分子膜が形成されたエポキシ化皮革微粒子の断面構造をそれぞれ表す。
【図5】本発明の第三の実施の形態に係る再生皮革の断面構造を模式的に表した説明図である。
【図6】実施例1により製造された再生皮革の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
【0030】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る再生皮革10は、複数の皮革微粒子14が、架橋剤分子11の両端の結合基と皮革微粒子表面の官能基とが反応することにより形成された分子架橋を介して互いに化学結合し、所定の形状に成形硬化されている。再生皮革10は、皮革微粒子14と、皮革微粒子14表面の表面官能基と熱で反応して化学結合を形成する複数の結合基を有する架橋剤(第1の架橋剤)11とを含む混合物を加圧下で加熱し、皮革微粒子表面14のヒドロキシル基15とイソシアネート基との反応により化学結合を形成させる工程を含む方法により製造される。
【0031】
皮革微粒子14は、牛革、馬革等の任意の皮革をボールミル等の任意の粉砕装置および方法を用いて製造することができる。皮革微粒子14の原料としては、皮革製品の製造工程等で生じた、革の削り屑や裁断屑等の、いわゆる、革屑等の皮革廃材であることが、廃棄物の削減および有効利用の観点から好ましい。皮革微粒子14の形状および性状は特に制限されず、例えば、球状、略球状、不定形等の粉末状、繊維状のいずれであってもよい。
【0032】
得られる再生皮革10が十分な機械的強度および耐久性を保ちつつ、皮革独特の風合いや柔軟さを併せ持つのに必要な皮革微粒子14の大きさは、ナノメートルレベルからセンチメートルレベル、例えば100nm〜5mm、好ましくは100nm〜1mm、より好ましくは1〜30μmである。皮革微粒子14の大きさは、再生皮革11の色調、光沢、風合い、強度等に影響を及ぼしうるため、それらの所望の性質に応じて適宜選択して用いることができる。均一な大きさの皮革微粒子が必要な場合には、ふるい等の任意の手段を用いて分級し、所望の大きさのものを選択的に用いることもでき、異なる大きさの皮革微粒子14を所望の割合で混合して用いることもできる。また、表面から裏面にかけて粒子の大きさを変化させておけば、より天然皮革に近い再生皮革を提供できる。さらにまた、複数種の皮革微粒子14を所望の割合で混合して用いることにより、天然皮革にない質感や特性を発現させることもできる。
【0033】
架橋剤11としては、皮革微粒子14の主な構成成分であるコラーゲンの表面に存在する官能基と熱で反応して共有結合を形成できる結合基を複数有している。結合基の数は特に制限されないが、架橋密度が高くなりすぎると、再生皮革10における柔軟さが低下する等の問題が生じるおそれがあるため、結合基の数は2または3が好ましく、2が特に好ましい。コラーゲンの表面に存在する官能基としては、ヒドロキシル基(ヒドロキシプロリン、セリン、スレオニン、チロシン、ヒドロキシリジン)、カルボキシル基(アスパラギン酸、グルタミン酸)、アミノ基(リジン)、チオール基(システイン)が挙げられ、これらと反応する結合基の具体例としては、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、カルボキシル基、酸ハロゲン化物、酸無水物、アルデヒド基、アルコキシシリル基およびハロシリル基が挙げられる。架橋材中に存在する複数の結合基は、同一のものであってもよく、互いに異なっていてもよい。また、ラクトン、ラクタムのように、開環反応により2つの結合基を生じるような化合物を架橋剤として用いることもできる。
【0034】
結合基として2つのイソシアネート基を有する架橋剤の例としては、ヘキサン1,6−ジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等が挙げられる。結合基として2つのカルボキシル基を有する架橋剤の例としては、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、マレイン酸等のジカルボン酸類が挙げられる。また、結合基として2つのアルコキシシリル基を有する架橋剤の例としては、下記の式(1)、(2)で表される化合物が挙げられる。
(1) (OCHSi(CH(CHSi(OCH
(2) (OCHSi(CH(CHSi(OCH
【0035】
これらの皮革微粒子14および架橋剤を含む混合物を加圧下で加熱し、皮革微粒子表面14のヒドロキシル基15とイソシアネート基との反応により化学結合を形成させることにより、所定の形状に成形硬化された再生皮革10が得られる。混合は、任意の公知の手段および方法を用いて行うことができる。混合物は、上記の2成分以外に、必要に応じて、溶媒、活性化剤または縮合剤(カルボキシル基とアミノ基またはヒドロキシル基を反応させる場合には、カルボジイミド等、ヒドロキシル基とアルコキシシリル基とを反応させる場合には、後述するシラノール縮合触媒等)をさらに含んでいてもよい。皮革微粒子14と架橋剤の配合比は、皮革および架橋剤の種類、皮革微粒子14の大きさ、再生皮革10に要求される性質等に応じて適宜選択される。
【0036】
加圧および加熱の方法は特に制限されず、所定形状のキャビティを有する金型中に混合物を入れ、熱プレスで所定の温度および圧力を印加する方法、あるいは熱ロールでシート状に成形する方法等、任意の方法を適宜選択して用いることができる。
【0037】
加熱温度は、皮革微粒子14の大きさ、皮革および架橋剤の種類、製造しようとする再生皮革10の大きさおよび形状等の種々の因子に依存するため一義的に決定するのは困難であるが、50〜150℃が好ましい。加熱温度が50℃未満だと、架橋反応が十分に進行しない上に、溶媒が完全に除去できない。加熱温度が150℃を超えると、皮革微粒子14中のコラーゲンの変性が起こる。
【0038】
加圧の際に印加する圧力は、皮革微粒子14の大きさ、製造しようとする再生皮革10の大きさおよび形状等に加え、加熱温度にも依存するので、これらの因子を考慮して適宜決定されるが、好ましくは0.2〜100MPaである。
【0039】
同様に、加熱時間も、皮革微粒子14の大きさ、製造しようとする再生皮革10の大きさおよび形状等に加え、加熱温度や圧力にも依存するので、これらの因子を考慮して適宜決定されるが、好ましくは0.5〜1時間である。
【0040】
図2に示すように、本発明の第二の実施の形態に係る再生皮革20は、分子の一端にエポキシ基(第1の反応性の官能基の一例)を有するアルコキシシラン化合物(第1の膜化合物の一例)の形成する単分子膜(第1の被膜の一例)22で表面の少なくとも一部が被覆されたエポキシ化皮革微粒子21(第1の反応性皮革微粒子の一例)と、分子の一端にアミノ基(第2の反応性の官能基の一例)を有するアルコキシシラン化合物(第2の膜化合物の一例)の形成する単分子膜(第2の被膜の一例)22aで表面が被覆されたアミノ化皮革微粒子21a(第2の反応性皮革微粒子の一例)とを略等量含む混合物を加圧下で加熱し、エポキシ基とアミノ基とを反応させて化学結合を形成させることにより、エポキシ化皮革微粒子21とアミノ化皮革微粒子21aとが、エポキシ基とアミノ基との反応により形成された結合を介して結合し、所定の形状に成形および硬化されている。
【0041】
以下、各工程についてより詳細に説明する。
[1]エポキシ化皮革微粒子の製造
エポキシ化皮革微粒子21は、図3に示すように、エポキシ基を含むアルコキシシラン化合物と、アルコキシシリル基と皮革微粒子24の表面のヒドロキシル基25との縮合反応を促進するための縮合触媒と、非水系の有機溶媒とを含む反応液中で、皮革微粒子24をアルコキシシラン化合物と接触させることにより製造される。エポキシ化皮革微粒子21の製造に用いる皮革微粒子24については、本発明の第一の実施の形態に係る再生皮革10の場合と同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0042】
エポキシ化皮革微粒子21の製造に用いる反応液は、エポキシ基を含むアルコキシシラン化合物と、アルコキシシリル基と皮革微粒子24の表面のヒドロキシル基25との縮合反応を促進するための縮合触媒と、非水系の有機溶媒とを混合することにより調製される。
【0043】
エポキシ基を含むアルコキシシラン化合物としては、直鎖状アルキレン基の両末端に、エポキシ基(オキシラン環)を含む官能基およびアルコキシシリル基をそれぞれ有し、下記の一般式(化1)で表されるアルコキシシラン化合物が好ましい。
【0044】
【化1】

【0045】
上式において、Eはエポキシ基を含む官能基を、mは3〜20の整数を、Rは炭素数1〜4のアルキル基をそれぞれ表す。
【0046】
エポキシ化皮革微粒子21の製造に用いることができるエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物の一例としては、下記(11)〜(22)に示した化合物が挙げられる。
【0047】
(11) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OCH)3
(12) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OCH)3
(13) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OCH)3
(14) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(15) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(16) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(17) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OC)3
(18) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OC)3
(19) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OC)3
(20) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(21) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(22) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
【0048】
ここで、(CHOCH)CHO−基は、化2で表される官能基(グリシジルオキシ基)を表し、(CHCHOCH(CH)CH−基は、化3で表される官能基(3,4−エポキシシクロヘキシル基)を表す。
【0049】
【化2】

【0050】
【化3】

【0051】
縮合触媒としては、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステルおよびチタン酸エステルキレート等の金属塩が利用可能である。
この様な触媒を用いれば、エポキシ基を開環反応させることなく室温で正確が可能となる。
縮合触媒の添加量は、好ましくはアルコキシシラン化合物の0.2〜5質量%であり、より好ましくは0.5〜1質量%である。
【0052】
カルボン酸金属塩の具体例としては、酢酸第1スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジオクテート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクタン酸第1スズ、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、2−エチルヘキセン酸鉄が挙げられる。
【0053】
カルボン酸エステル金属塩の具体例としては、ジオクチルスズビスオクチリチオグリコール酸エステル塩、ジオクチルスズマレイン酸エステル塩が挙げられる。
カルボン酸金属塩ポリマーの具体例としては、ジブチルスズマレイン酸塩ポリマー、ジメチルスズメルカプトプロピオン酸塩ポリマーが挙げられる。
カルボン酸金属塩キレートの具体例としては、ジブチルスズビスアセチルアセテート、ジオクチルスズビスアセチルラウレートが挙げられる。
【0054】
チタン酸エステルの具体例としては、テトラブチルチタネート、テトラノニルチタネートが挙げられる。
チタン酸エステルキレート類の具体例としては、ビス(アセチルアセトニル)ジ−プロピルチタネートが挙げられる。
【0055】
皮革微粒子24を反応液中に浸漬し、室温の空気中で反応させると、アルコキシシリル基と皮革微粒子21の表面のヒドロキシル基25とが縮合反応を起こし、下記の化4で示されるような構造を有するエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜12を生成する。なお、酸素原子から延びた3本の単結合は皮革微粒子24の表面または隣接するシラン化合物のケイ素(Si)原子と結合しており、そのうち少なくとも1本は皮革微粒子24の表面のケイ素原子と結合している。
【0056】
【化4】

【0057】
アルコキシシリル基は、水分の存在下で分解するので、反応は相対湿度45%以下の空気中で行うことが好ましい。縮合触媒として上述の金属塩のいずれかを用いた場合、縮合反応の完了までに要する時間は2時間程度である。
【0058】
上述の金属塩の代わりに、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1または2以上の化合物を縮合触媒として用いた場合、反応時間を1/2〜2/3程度まで短縮できる。
【0059】
あるいは、これらの化合物を助触媒として、上述の金属塩と混合(質量比1:9〜9:1の範囲で使用可能だが、1:1前後が好ましい)して用いると、反応時間をさらに短縮できる。
【0060】
例えば、縮合触媒として、ジブチルスズオキサイドの代わりにケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3を用い、その他の条件は同一にしてエポキシ化皮革微粒子21の製造を行うと、エポキシ化皮革微粒子21の品質を損なうことなく反応時間を1時間程度にまで短縮できる。
【0061】
さらに、縮合触媒として、ジャパンエポキシレジン社のH3とジブチルスズビスアセチルアセトネートとの混合物(混合比は1:1)を用い、その他の条件は同一にしてエポキシ化皮革微粒子21の製造を行うと、反応時間を20分程度に短縮できる。
【0062】
なお、ここで用いることができるケチミン化合物は特に限定されるものではないが、例えば、2,5,8−トリアザ−1,8−ノナジエン、3,11−ジメチル−4,7,10−トリアザ−3,10−トリデカジエン、2,10−ジメチル−3,6,9−トリアザ−2,9−ウンデカジエン、2,4,12,14−テトラメチル−5,8,11−トリアザ−4,11−ペンタデカジエン、2,4,15,17−テトラメチル−5,8,11,14−テトラアザ−4,14−オクタデカジエン、2,4,20,22−テトラメチル−5,12,19−トリアザ−4,19−トリエイコサジエン等が挙げられる。
【0063】
また、用いることができる有機酸としても特に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、マロン酸等が挙げられるが、この場合、濃度が高いと室温でもエポキシ基が開環してしまうので、添加量は、アルコキシシラン化合物の0.2〜0.5%が好ましい。
【0064】
反応液の調製には、有機塩素系溶媒、炭化水素系溶媒、フッ化炭素系溶媒、シリコーン系溶媒、およびこれらの混合溶媒を用いることができる。アルコキシシラン化合物の加水分解を防止するために、乾燥剤または蒸留により使用する溶媒から水分を除去しておくことが好ましい。また、溶媒の沸点は50〜250℃であることが好ましい。
【0065】
具体的に使用可能な溶媒としては、非水系の石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、ノナン、デカン、灯油、ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
さらに、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、あるいはそれらの混合物を用いることもできる。
【0066】
また、用いることができるフッ化炭素系溶媒としては、フロン系溶媒、フロリナート(米国3M社製)、アフルード(旭硝子株式会社製)等がある。なお、これらは1種単独で用いても良いし、良く混ざるものなら2種以上を組み合わせてもよい。さらに、ジクロロメタン、クロロホルム等の有機塩素系溶媒を添加してもよい。
【0067】
反応液におけるアルコキシシラン化合物の好ましい濃度は、0.5〜3質量%である。
【0068】
反応後、溶媒で洗浄し、未反応物として表面に残った過剰なアルコキシシラン化合物および縮合触媒を除去すると、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物の形成する単分子膜22で表面が覆われたエポキシ化皮革微粒子21が得られる。洗浄には、連続処理およびバッチ処理のいずれの方法を用いてもよい。洗浄溶媒とエポキシ化皮革微粒子との分離は、ろ過、デカンテーション、および遠心分離等の任意の公知の方法を用いて行うことができる。このようにして製造されるエポキシ化皮革微粒子21の断面構造の模式図を図4(b)に示す。
【0069】
洗浄溶媒としては、アルコキシシラン化合物を溶解できる任意の溶媒を用いることができるが、安価であり、溶解性が高く、風乾により容易に除去することのできるジクロロメタン、クロロホルム、N−メチルピロリドン等が好ましい。
【0070】
反応後、生成したエポキシ化皮革微粒子21を溶媒で洗浄せずに空気中に放置すると、表面に残ったアルコキシシラン化合物の一部が空気中の水分により加水分解を受け、生成したシラノール基がアルコキシシリル基と縮合反応を起こす。その結果、エポキシ化皮革微粒子21の表面にポリシロキサンよりなる極薄のポリマー膜が形成される。このポリマー膜は、エポキシ化皮革微粒子21の表面に共有結合により固定されていないが、エポキシ基を含んでいるため、2−メチルイミダゾールに対して膜化合物の単分子膜12と同様の反応性を有している。そのため、洗浄を行わなくても、以後の再生皮革10の製造工程に特に支障をきたすことはない。
【0071】
[2]アミノ化皮革微粒子の製造
アミノ化皮革微粒子21aは、アルコキシシラン化合物として、直鎖状アルキレン基の両末端に、アミノ基およびアルコキシシリル基をそれぞれ有し、下記の一般式(化5)で表されるアルコキシシラン化合物を用いること以外は、上述のエポキシ化皮革微粒子21と同様に製造することができる。
【0072】
【化5】

【0073】
上式において、mは3〜20の整数を、Rは炭素数1〜4のアルキル基をそれぞれ表す。なお、エポキシ基は、アルコキシシリル基との副反応を避けるために、保護基によって保護されていてもよい。保護基は加水分解等により容易に除去できるものが好ましく、ケトンとアミノ基との反応により生成するケチミン誘導体等が挙げられる。
また、アミノ基は、化5に示したような1級アミン以外に2級アミンでもよく、アミノ基の代わりにピロール基、イミダゾール基等のイミノ基を有する官能基を含むアルコキシシラン化合物を用いることができる。
この場合において、用いることができるアミノ基を有するアルコキシシラン化合物の一例としては、下記(31)〜(38)に示した化合物が挙げられる。
【0074】
(31) H2N(CH2)Si(OCH)3
(32) H2N(CH2)Si(OCH)3
(33) H2N(CH2)Si(OCH)3
(34) H2N(CH2)Si(OCH)3
(35) H2N(CH2)Si(OC)3
(36) H2N(CH2)Si(OC)3
(37) H2N(CH2)Si(OC)3
(38) H2N(CH2)Si(OC)3
【0075】
縮合触媒のうち、スズ(Sn)塩を含む化合物は、アルコキシシラン誘導体に含まれるアミノ基と反応して沈殿を生成するため、縮合触媒として用いることができない。したがって、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物を用いる場合には、カルボン酸スズ塩、カルボン酸エステルスズ塩、カルボン酸スズ塩ポリマー、カルボン酸スズ塩キレートを除き、反応液と同様の化合物を単独でまたは2種類以上を混合して縮合触媒として用いることができる。
【0076】
用いることのできる助触媒の種類およびそれらの組み合わせ、溶媒の種類、アルコキシシラン化合物、縮合触媒、および助触媒の濃度、反応条件ならびに反応時間についてはエポキシ基化皮革微粒子21aの製造の場合と同様であるので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0077】
[3]再生皮革の製造
上述のようにして製造したエポキシ化皮革微粒子21とアミノ化皮革微粒子21aとを略等量含む混合物を加圧下で加熱し、エポキシ基とアミノ基との反応により化学結合を形成させることにより、再生皮革20を製造する。混合物の製造および加圧下で加熱する際の条件については、本発明の第一の実施の形態に係る再生皮革10の製造の場合と同様であるため、ここでは詳しい説明を省略する。
【0078】
図5に示すように、本発明の第三の実施の形態に係る再生皮革30は、分子の一端にエポキシ基(第3の反応性の官能基の一例)を有するアルコキシシラン化合物(第3の膜化合物の一例)の形成する単分子膜(被膜の一例)32で表面の少なくとも一部が被覆されたエポキシ化皮革微粒子31(第3の反応性皮革微粒子の一例)と、2−メチルイミダゾール33(第2の架橋剤の一例)とを含み、エポキシ化皮革微粒子31が、エポキシ基と、2−メチルイミダゾール33のアミノ基およびイミノ基(架橋反応基の一例)との反応により形成された結合を介して成形および硬化している。
【0079】
再生皮革30は、エポキシ基およびアルコキシシリル基(結合基の一例)を分子の両端にそれぞれ有する膜化合物を皮革微粒子(皮革微粒子の一例)31と接触させ、アルコキシシリル基と皮革微粒子の表面のヒドロキシル基32との間で化学結合を形成させ、エポキシ化皮革微粒子31を製造する工程と、エポキシ化皮革微粒子31と、2−メチルイミダゾール33とを含む混合物を加圧下で加熱し、エポキシ基と、2−メチルイミダゾール33のアミノ基およびイミノ基(架橋反応基の一例)との反応により化学結合を形成させる工程とを含む方法により製造される。
【0080】
以下、各工程についてより詳細に説明する。
[1]エポキシ化皮革微粒子の製造
エポキシ化皮革微粒子31の製造については、本発明の第二の実施の形態に係る再生皮革20の製造におけるエポキシ化皮革微粒子21の製造の場合と同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0081】
[2]再生皮革30の製造
上述のように製造したエポキシ化皮革微粒子31と、2−メチルイミダゾール33とを含む混合物を加圧下で加熱し、エポキシ基と、2−メチルイミダゾール33のアミノ基およびイミノ基との反応により化学結合を形成させ、再生皮革30を製造する(図5)。
2−メチルイミダゾールはエポキシ基と反応するアミノ基(>NH)およびイミノ基(=N−)を、それぞれ1−位および3−位に有しており、下記の化6に示すような架橋反応により化学結合を形成する。
【0082】
【化6】

【0083】
2−メチルイミダゾール33の添加量は、皮革微粒子の大きさに依存して制御する必要があるが、エポキシ化皮革微粒子31の0.5〜15重量%が好ましい。2−メチルイミダゾール33の添加量がエポキシ化皮革微粒子31の表面のエポキシ基の数に比べて極端に少なくなると、得られる再生皮革30の機械的強度が低くなり、同等以上になると、架橋密度が高くなりすぎるので得られる再生皮革30の風合いや柔軟さが悪化する。
【0084】
エポキシ化皮革微粒子31と、2−メチルイミダゾール33とは、固体状態で混合してもよいが、エポキシ化皮革微粒子31を混合しながら2−メチルイミダゾール33を含む溶液を加えて、エポキシ化皮革微粒子31の表面に2−メチルイミダゾール33が均一に付着した混合物を作製してもよい。
【0085】
2−メチルイミダゾール33の溶液の調製には、2−メチルイミダゾール33が可溶な任意の溶媒を用いることができるが、価格、室温での揮発性、および毒性等を考慮すると、イソプロピルアルコール、エタノール等の低級アルコール系溶媒が好ましい。
【0086】
ペースト状あるいはスラリー状の混合物の調製に用いる溶媒の量は、エポキシ化皮革微粒子31の大きさによって適宜定められるため一義的に決定することは困難であるが、エポキシ化皮革微粒子31および2−メチルイミダゾール33の10〜50重量%である。
具体的には、エポキシ化皮革微粒子31の表面を2−メチルイミダゾール33の単分子被膜で被覆するために必要な量以下に設定すればよい。
エポキシ化皮革微粒子31、2−メチルイミダゾール33、および溶媒の混合は、撹拌ばね、ハンドミキサー等の任意の手段により行うことができる。
【0087】
このようにして得られたエポキシ化皮革微粒子31と、2−メチルイミダゾール33とを含む混合物を加圧しながら加熱して、エポキシ化皮革微粒子31の表面のエポキシ基と、2−メチルイミダゾール33の窒素官能基(アミノ基およびイミノ基)との間で架橋反応を形成させる。前述のとおり、加圧および加熱は、任意の公知の手段を用いて行うことができる。
【0088】
本実施の形態においては、架橋剤として2−メチルイミダゾールを用いたが、下記化7で表される任意のイミダゾール誘導体を用いることができる。あるいは、イミダゾール−金属錯体やトリアゾールを用いてもよい。
【0089】
【化7】

【0090】
化7で表されるイミダゾール誘導体の具体例としては、下記(41)〜(48)に示すものが挙げられる。
(41) 2−メチルイミダゾール(R=Me、R=R=H)
(42) 2−ウンデシルイミダゾール(R=C1123、R=R=H)
(43) 2−ペンタデシルイミダゾール(R=C1531、R=R=H)
(44) 2−メチル−4−エチルイミダゾール(R=Me、R=Et、R=H)
(45) 2−フェニルイミダゾール(R=Ph、R=R=H)
(46) 2−フェニル−4−エチルイミダゾール(R=Ph、R=Et、R=H)
(47) 2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(R=Ph、R=Me、R=CHOH)
(48) 2−フェニル−4,5−ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール(R=Ph、R=R=CHOH)
なお、Me、Et、およびPhは、それぞれメチル基、エチル基、およびフェニル基を表す。
【0091】
また、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる無水フタル酸、無水マレイン酸等の酸無水物、ジシアンジアミド、ノボラック等のフェノール誘導体、トリアゾール等の化合物を第2の架橋剤として用いてもよい。この場合、架橋反応を促進するためにイミダゾール誘導体を触媒として用いてもよい。
【0092】
なお、本実施の形態においてはエポキシ基を有する膜化合物を用いた場合について説明しているが、アミノ基またはイミノ基を有する膜化合物を用いる場合には、架橋反応基として2もしくは3以上のエポキシ基または2もしくは3以上のイソシアネート基を有するカップリング剤を用いる。イソシアネート基を有する化合物の具体例としては、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート等が挙げられる。
これらのジイソシアネート化合物の添加量は、2−メチルイミダゾールの場合と同様、エポキシ化皮革微粒子の5〜15重量%が好ましい。この場合、膜前駆体の製造に用いることのできる溶媒としては、キシレン等の芳香族有機溶媒が挙げられる。
また、架橋剤としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル等の2または3以上のエポキシ基を有する化合物を用いることもできる。
【実施例】
【0093】
以下、実施例を用いて本発明の詳細を説明するが、本願発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0094】
実施例1:再生皮革の製造[1]
(1)エポキシ化皮革微粒子の製造
粒径が1mm程度の皮革微粒子(牛皮の裁断屑をボールミルで粉砕後、分級した。粒径が100nm〜1mmであれば、光沢は異なるが、ほぼ類似した物性が得られた。)を用意し、よく乾燥した。
3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(化8)0.99重量部、およびジブチルスズビスアセチルアセトナート(縮合触媒)0.01重量部を秤量し、これを100重量部のヘキサメチルジシロキサン溶媒に溶解し、反応液を調製した。
【0095】
【化8】

【0096】
このようにして得られた反応液中に皮革微粒子を混合し、撹拌しながら空気中(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。
その後、エタノールで洗浄し、余分なアルコキシシラン化合物およびジブチルスズビスアセチルアセトナートを除去した。
【0097】
(2)アミノ化皮革微粒子の製造
粒径が100nm程度の乾燥した皮革微粒子((1)で用いたものと同一。粒径が100nm〜1mmであれば、光沢は異なるが、ほぼ類似した物性が得られた。)を用意し、よく乾燥した。
3−アミノプロピルトリメトキシシラン(化9、信越化学工業株式会社製)0.99重量部、および酢酸(縮合触媒)0.01重量部を秤量し、これを100重量部のヘキサメチルジシロキサン溶媒に溶解し、反応液を調製した。
【0098】
【化9】

【0099】
このようにして得られた反応液中に皮革微粒子を混合し、撹拌しながら空気中(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。
その後、エタノールで洗浄し、余分なアルコキシシラン化合物およびジブチルスズビスアセチルアセトナートを除去した。
【0100】
(3)エポキシ化皮革微粒子およびアミノ化皮革微粒子の成形および硬化
(1)で調製したエポキシ化皮革微粒子100重量部と(2)で調製したアミノ化皮革微粒子100重量部を十分混合し、金型へ充填した。金型を加圧(100MPa)し、さらに50〜100℃程度に加熱すると、エポキシ基と、アミノ基との架橋反応により形成された共有結合を介して硬化し、十分な機械的強度を有する再生皮革を製造できた。
【0101】
上記のようにして製造された再生皮革の写真を図6に示す。ここで、バインダー成分に相当する架橋剤は、2分子で構成されており、バインダー成分としては極限まで低減されていて、大部分は皮革で構成されている。したがって、成形硬化された再生皮革は、天然皮革に限りなく近い風合いや光沢を有していた。
また、皮革部粒子間の結合は全て共有結合で結合されており、強度も天然皮革並みであった。
【0102】
実施例2:再生皮革の製造方法[2]
実施例1の(1)で調製したエポキシ化皮革微粒子100重量部に、2−メチルイミダゾールを5%重量部加え十分混合し、金型へ充填した。金型を加圧(0.2MPa)し、さらに50〜100℃程度に加熱すると、エポキシ基と、イミダゾール基に含まれる2つの窒素官能基(イミノ基ともいう。)との架橋反応により形成された共有結合を介して硬化し、風合いに優れた柔らかい再生皮革を製造できた。
【0103】
この方法では、バインダー成分に相当する架橋剤は、3分子で構成されており、バインダー成分としては極限まで低減されていて、大部分は皮革で構成されている。したがって、成形硬化された再生皮革は、天然皮革に限りなく近い風合いや光沢を有していた。また、皮革部粒子間の結合は全て共有結合で結合されており、強度も天然皮革並みであった。
【0104】
実施例3:再生皮革の製造[3]
実施例1の(2)で調製したアミノ化皮革微粒子100重量部に、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート5重量部を加え十分混合し、金型へ充填した。金型を加圧(20MPa)し、さらに50〜100℃程度に加熱すると、アミノ基とイソシアネート基の架橋反応により形成された共有結合を介して硬化し、十分な機械的強度を有する再生皮革を製造できた。
【0105】
この方法でも、バインダー成分に相当する架橋剤は、3分子で構成されており、バインダー成分としては極限まで低減されていて、大部分は皮革で構成されている。したがって、成形硬化された再生皮革は、天然皮革に限りなく近い風合いや光沢を有していた。また、皮革部粒子間の結合は全て共有結合で結合されており、強度も天然皮革並みであった。
実施例4:再生皮革の製造[4]
【0106】
1ミクロンの皮革微粒子100重量部に、架橋剤としてヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート5重量部を加え十分混合し、金型へ充填した。金型を加圧(20MPa)し、さらに50〜100℃程度に加熱すると、皮革表面のアミノ基や水酸基とイソシアネート基の架橋反応により形成された共有結合を介して硬化し、十分な機械的強度を有する再生皮革を製造できた。
【0107】
この方法では、バインダー成分に相当する架橋剤の添加量の制御は、粒子形状に大きく影響されるので、難しくなるが、適当量の添加量を選べば皮革微粒子の大部分は1分子の架橋剤で結合されることになり、やはりバインダー成分としては極限まで低減できて、大部分は皮革で構成されている再生皮革を製造できた。また、成形硬化された再生皮革は、天然皮革に限りなく近い風合いや光沢を有していた。さらに、皮革部粒子間の結合は全て共有結合で結合されており、強度も天然皮革並みであった。なお、この場合、架橋剤の添加量が多すぎると、風合いが悪くなった。また、少なすぎると、強度が劣化した。
【符号の説明】
【0108】
10、20、30 再生皮革
11 架橋剤
21、31 エポキシ化皮革微粒子
22 エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物の形成する単分子膜
33 2−メチルイミダゾール
14、24 皮革微粒子
25 ヒドロキシル基

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子架橋を介して互いに化学結合した複数の皮革微粒子を含み、所定の形状に成形硬化されたことを特徴とする再生皮革。
【請求項2】
前記分子架橋が、前記皮革微粒子の表面官能基と直接反応して化学結合を形成する複数の結合基を含む第1の架橋剤を介して化学結合するより形成されていることを特徴とする請求項1記載の再生皮革。
【請求項3】
前記分子架橋が、皮革微粒子の1つと化学結合した第1の被膜の有する第1の反応性の官能基と、前記1つの皮革微粒子以外の皮革微粒子と化学結合した第2の被膜の有する前記第1の官能基と反応して化学結合を形成する第2の反応性の官能基とが反応して化学結合することにより形成されていることを特徴とする請求項1記載の再生皮革。
【請求項4】
前記分子架橋が、皮革微粒子の1つと化学結合した被膜の有する反応性の第3の官能基と、前記1つの皮革微粒子以外の皮革微粒子と化学結合した被膜の有する前記反応性の官能基と、前記反応性の官能基と熱で反応して化学結合を形成する複数の架橋反応基を有する第2の架橋剤を介して化学結合することにより形成されていることを特徴とする請求項1記載の再生皮革。
【請求項5】
前記皮革微粒子の大きさが100nm〜5mmであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の再生皮革。
【請求項6】
皮革微粒子と、該皮革微粒子表面の官能基と熱で反応して化学結合を形成する複数の結合基を有する第1の架橋剤とを含む混合物を加圧下で加熱し、前記皮革微粒子表面の官能基と前記結合基との反応により化学結合を形成させる工程を含むことを特徴とする再生皮革の製造方法。
【請求項7】
第1の反応性の官能基および結合基をそれぞれ有する第1の膜化合物を皮革微粒子と接触させ、前記結合基と前記皮革微粒子の表面官能基との間で化学結合を形成させ、前記第1の膜化合物の形成する被膜で表面の少なくとも一部が覆われた第1の反応性皮革微粒子を製造する工程と、
前記第1の反応性の官能基と熱で反応して化学結合を形成する第2の反応性の官能基および結合基をそれぞれ有する第2の膜化合物を皮革微粒子と接触させ、前記結合基と前記皮革微粒子の表面官能基との間で化学結合を形成させ、前記第2の膜化合物の形成する被膜で表面の少なくとも一部が覆われた第2の反応性皮革微粒子を製造する工程と、
前記第1の反応性皮革微粒子と前記第2の反応性皮革微粒子とを含む混合物を加圧下で加熱し、前記第1の反応性の官能基と前記第2の反応性の官能基との反応により化学結合を形成させる工程とを含むことを特徴とする再生皮革の製造方法。
【請求項8】
前記第1および第2の膜化合物の形成する被膜が単分子膜であることを特徴とする請求項7記載の再生皮革の製造方法。
【請求項9】
前記第1の反応性の官能基と前記第2の反応性の官能基との反応により形成された化学結合が、アミノ基またはイミノ基とエポキシ基との反応により形成されたN−CHCH(OH)結合であることを特徴とする請求項7または8記載の再生皮革の製造方法。
【請求項10】
前記第1の反応性の官能基と前記第2の反応性の官能基との反応により形成された化学結合が、アミノ基またはイミノ基とイソシアネート基との反応により形成されたNH−CONH結合であることを特徴とする請求項7または8記載の再生皮革の製造方法。
【請求項11】
第3の反応性の官能基および結合基をそれぞれ有する第3の膜化合物を皮革微粒子と接触させ、前記結合基と前記皮革微粒子の表面官能基との間で化学結合を形成させ、前記膜化合物の形成する被膜で表面の少なくとも一部が覆われた第3の反応性皮革微粒子を製造する工程と、
前記第3の反応性皮革微粒子と、前記第3の反応性の官能基と熱で反応して化学結合を形成する複数の架橋反応基を有する第2の架橋剤とを含む混合物を加圧下で加熱し、前記第3の反応性の官能基と前記架橋反応基との反応により化学結合を形成させる工程とを含むことを特徴とする再生皮革の製造方法。
【請求項12】
前記第3の膜化合物の形成する被膜が単分子膜であることを特徴とする請求項11記載の再生皮革の製造方法。
【請求項13】
前記第3の反応性の官能基と前記架橋反応基との架橋反応により形成された化学結合が、アミノ基またはイミノ基とエポキシ基との反応により形成されたN−CHCH(OH)結合であることを特徴とする請求項11または12記載の再生皮革の製造方法。
【請求項14】
前記第3の反応性の官能基と前記架橋反応基との架橋反応により形成された化学結合が、アミノ基またはイミノ基とイソシアネート基との反応により形成されたNH−CONH結合であることを特徴とする請求項11または12記載の再生皮革の製造方法。
【請求項15】
前記結合基が、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、カルボキシル基、酸ハロゲン化物、酸無水物、アルデヒド基、アルコキシシリル基およびハロシリル基からなる群より選択されることを特徴とする請求項6から14のいずれか1項記載の再生皮革の製造方法。
【請求項16】
前記皮革微粒子の大きさが100nm〜5mmであることを特徴とする請求項6から15のいずれか1項記載の再生皮革の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−131845(P2012−131845A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282492(P2010−282492)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【Fターム(参考)】