説明

再生速度同期装置及びプログラム

【課題】鑑賞者の情動や活動度に影響を受ける呼吸に併せてコンテンツの再生速度を適切に制御する。
【解決手段】鑑賞者の呼吸情報を用い、鑑賞者によって行われた複数回の呼吸に対応する複数個の呼吸周期に対応する情動呼吸周期を抽出し、情動呼吸周期が長いほど長い基本サンプル更新間隔を算出し、基本サンプル更新間隔に対応する時間間隔であるサンプル更新間隔で、時間軸に沿った複数の再生位置にそれぞれ対応するコンテンツ情報に含まれる再生対象のコンテンツ情報を更新し、再生対象のコンテンツ情報を表す再生情報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテンツの再生技術に関し、特に、鑑賞者の呼吸にコンテンツを同期させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、音楽などのコンテンツのサンプル点等に目標となる呼吸状態が設定され、コンテンツの鑑賞者の呼吸状態が設定された目標となる呼吸状態になるべく一致するようにコンテンツの再生速度を変化させる技術が開示されている。また非特許文献1には、呼吸状態が情動や活動度の影響を受ける旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011―059419
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Patrick Gomez and Brigitta Danuser, "Affective and physiological responses to environmental noises and music," International Journal of Psychophysiology,vol. 53, pp.91-103, 2004.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンテンツに設定された目標となる呼吸状態と鑑賞者の情動や活動度に影響を受ける呼吸状態とが著しく乖離する場合、特許文献1の技術では鑑賞者の呼吸に併せてコンテンツの再生速度を適切に制御するのが困難であるという問題がある。
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、鑑賞者の情動や活動度に影響を受ける呼吸に併せてコンテンツの再生速度を適切に制御することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では上記課題を解決するために、鑑賞者の呼吸情報を用い、鑑賞者によって行われた複数回の呼吸に対応する複数個の呼吸周期に対応する情動呼吸周期を抽出し、情動呼吸周期が長いほど長い基本サンプル更新間隔を算出し、基本サンプル更新間隔に対応する時間間隔であるサンプル更新間隔で、時間軸に沿った複数の再生位置にそれぞれ対応するコンテンツ情報に含まれる再生対象のコンテンツ情報を更新し、再生対象のコンテンツ情報を表す再生情報を出力する。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、鑑賞者によって行われた複数回の呼吸に対応する複数個の呼吸周期に対応する情動呼吸周期が長いほど長い基本サンプル更新間隔にサンプル更新間隔を対応させるため、コンテンツに設定された目標となる呼吸状態と鑑賞者の呼吸状態とが著しく乖離する場合であっても、鑑賞者の呼吸に併せてコンテンツの再生速度を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、第1,2実施形態の再生速度同期装置の機能構成を例示するためのブロック図である。
【図2】図2は、呼吸計測部から出力される呼吸レベルV(t)を例示したグラフである。
【図3】図3は、呼吸周期を例示するためのグラフである。
【図4】図4は、設定呼吸周期付きコンテンツの具体例を表す図である。
【図5】図5は、第1実施形態の再生速度同期方法を例示するためのフローチャートである。
【図6】図6は、第2実施形態の再生速度同期方法を例示するためのフローチャートである。
【図7】図7は、第3,4実施形態の再生速度同期装置の機能構成を例示するためのブロック図である。
【図8】図8は、呼気開始時刻の予測値の一例を説明するための図である。
【図9】図9は、第3実施形態の再生速度演算部の処理機能を例示するための図である。
【図10】図10は、第3実施形態の再生速度同期方法を例示するためのフローチャートである。
【図11】図11は、第4実施形態の再生速度演算部の処理機能を例示するための図である。
【図12】図12Aは、第4実施形態の呼吸指標抽出部が算出する呼吸指標の例を説明するための図である。図12Bは、呼吸指標φ(t1)と呼吸目標情報Φ(p(t1))とL(t1)との関係を例示した図である。
【図13】図13A−13Cは、関数D[L]の具体例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
[用語の定義]
以下のように用語を定義する。
コンテンツ:音楽、音声若しくは朗読、又は、演劇、映画若しくはテレビ番組その他の動画など、鑑賞目的のための音響情報や映像情報を意味する。
コンテンツ情報:コンテンツを構成し、時間軸に沿って順次再生される情報を意味する。
再生位置:時間軸に沿って順次再生される各コンテンツ情報の再生位置、つまり、コンテンツ再生における時間軸上の進行位置を意味する。より具体的には、例えば、フレーム位置、サンプル点、タイムコード、ソングポジションポインターなどが再生位置に対応する。
呼吸目標設定位置:少なくとも一部の再生位置に対応する時間軸上の進行位置を意味する。呼吸目標設定位置の例は少なくとも一部の再生位置である。
【0010】
呼吸状態:周期的に行われる呼吸運動中の各状態を意味する。より具体的には、例えば、呼気運動を開始する時点の状態である呼気開始状態、呼気運動中の各時点での呼気状態、呼気運動を終了する時点の状態である呼気終了状態、吸気運動を開始する時点の状態である吸気開始状態、吸気運動中の各時点での吸気状態、吸気運動を終了する時点の状態である吸気終了状態などが呼吸状態に対応する。
基準状態:所定の呼吸状態を意味する。例えば、呼気開始状態、呼気終了状態、吸気開始状態、吸気終了状態などが基準状態に対応する。
呼吸基準位置:呼吸状態が特定の基準状態となる時間軸上の位置を意味する。
【0011】
呼吸情報:コンテンツを鑑賞する鑑賞者やコンテンツを演奏又は演ずる演者の呼吸状態を計測して得られる情報を意味する。より具体的には、例えば、胸部回りや腹部回りの長さ、呼吸の気流量、呼気と吸気の温度差などを意味する。
再生速度:ある再生位置Aのコンテンツ情報を再生してから次の再生位置Bのコンテンツ情報を再生するまでに要する時間の逆数を意味する。再生テンポやクロック間隔などに読み替え可能な概念である。
【0012】
設定呼吸周期:コンテンツに対して設定されたそのコンテンツの鑑賞に適すると考えられる鑑賞者の呼吸周期を表す。本形態では1つのコンテンツに対して1つの設定呼吸周期が設定されているものとする。任意の定数値が設定呼吸周期とされてもよいし、コンテンツのテンポの逆数に対する倍数や約数が設定呼吸周期とされてもよい。
設定呼吸周期付きコンテンツ:設定呼吸周期とコンテンツ情報とを含むコンテンツを意味する。設定呼吸周期付きコンテンツの具体例は後述する。
設定呼吸周期付き呼吸目標コンテンツ:目標となる呼吸状態が呼吸目標設定位置に設定された設定呼吸周期付きコンテンツを意味する。設定呼吸周期付き呼吸目標コンテンツの具体例は後述する。
【0013】
〔第1実施形態〕
以下に本発明の第1実施形態を説明する。
<構成>
図1に例示するように、第1実施形態の再生速度同期装置1は、入力部11と、設定呼吸周期付きコンテンツ12aを格納する記憶部12と、呼吸計測部13と、呼吸情動成分抽出部14と、基本再生速度演算部15と、コンテンツ再生速度制御部16と、再生部17と、制御部18とを有する。
【0014】
[入力部11]
入力部11は、設定呼吸周期付きコンテンツ12aの入力を受け付ける機能部であり、入力部11の例は、入力ポート、入力インタフェース、読み出し装置、受信装置などである。
【0015】
[設定呼吸周期付きコンテンツ12a]
本形態の設定呼吸周期付きコンテンツ12aは、設定呼吸周期と時間軸に沿った各再生位置にそれぞれ対応するコンテンツ情報とを含むデータ構造からなるデータである。例えば、図4に例示する設定呼吸周期付きコンテンツ12aは、時間軸に沿った各サンプル点τにそれぞれ対応する音程や音の強さを示すMIDIデータであるコンテンツ情報d(τ)との設定呼吸周期sBfとを含む。この例のサンプル点τは0以上の整数であり、値が大きいほど遅い時間に対応する。図4に例示する設定呼吸周期付きコンテンツ12aは、再生対象のサンプル点τが時間軸に沿って順次更新されながら、各再生対象のサンプル点τに対応するコンテンツ情報が順次再生される。この再生対象のサンプル点τの更新周期をサンプル更新間隔と呼び、コンテンツ創作時等に予め定められたサンプル更新間隔の標準設定値をS0とする。p(t)は時刻tの時点で再生されるコンテンツ情報d(τ)に対応するサンプル点τを表し、現時刻t=t1の時点で再生されるコンテンツ情報をd(p(t1))と表す。tは離散的な時刻に対応する整数インデックスであり、「時刻t」とは整数インデックスtに対応する時刻を意味する。簡単のためにtは周期T1で1ずつ増加するものとする。
【0016】
[記憶部12]
記憶部12は、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリなどの情報記憶装置である。
【0017】
[呼吸計測部13]
呼吸計測部13は、コンテンツの鑑賞者100の呼吸状態を計測し、それによって得られる呼吸情報を出力する周知の装置である。本形態の例では、胸部回りや腹部回りの長さに対応する情報(呼吸レベル)を呼吸情報とし、胸部や腹部に巻き付けられたゴム管の抵抗変化から呼吸を検出する装置(例えば、日本光電製のTR-753Tや、ADInstruments製のMLT1132)を呼吸計測部13とする。この例の呼吸計測部13は、設定されたある任意の周期T1で呼吸レベルV(t)を計測して出力する。V(t)は時刻tでの呼吸レベルを表す。
図2は、呼吸計測部から出力される呼吸レベルV(t)を例示したグラフである。
図2の例では、呼気が開始される時刻である呼気開始時刻(bpe(n-1)等)で呼吸レベルV(t)が極大となり、呼気状態が進むにつれて呼吸レベルV(t)が減少し、吸気が開始される時刻である吸気開始時刻(bpi(n)等)で呼吸レベルV(t)が極小となり、吸気状態が進むにつれて呼吸レベルV(t)が増加し、次の呼気開始時刻(bpe(n)等)で再び呼吸レベルV(t)が極大となる、といった状態が周期的に繰り返される。
【0018】
[呼吸情動成分抽出部14]
呼吸情動成分抽出部14は、例えば、CPU(central processing unit)、メモリ等で構成され、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。呼吸情動成分抽出部14は、呼吸計測部13から出力された鑑賞者100の呼吸レベルV(t)(呼吸情報)を用い、鑑賞者100によって行われた複数回の呼吸に対応する複数個の呼吸周期に対応する情動呼吸周期を抽出して出力する。情動呼吸周期は、鑑賞者100の呼吸レベルを中・長期的に計測して得られる周期であり、鑑賞者100の情動や活動度の影響が反映されたものとなる。
【0019】
この例の呼吸情動成分抽出部14は、呼吸計測部13から出力された呼吸レベルV(t)を入力とし、呼吸レベルV(t)が極大値となるときのtの値を呼気開始時刻: bpe(n)とし、呼吸情動成分抽出部14内のメモリ(図示せず)に一時的に保存する。nは各呼吸を表すために便宜的に付した整数であり、呼吸のたびに1ずつ増加するものとする。まず呼吸情動成分抽出部14は、例えばメモリ上に一時的に保存された呼気開始時刻bpe(n)を用い、以下の式に従って呼吸周期Btot(n)を算出する(図3参照)。
Btot(n)=bpe(n)-bpe(n-1) …(1)
図3の例では現時刻t=t1の直前の呼気開始時刻をbpe(n)としているがこれは本発明を限定するものではなく、それよりも過去の呼気開始時刻をbpe(n)としてもよい。
【0020】
次に、この例の呼吸情動成分抽出部14は、得られた複数個の呼吸周期Btot(n)の平均値に対応する値を情動呼吸周期Bfとする。例えば呼吸情動成分抽出部14は、以下の式に従って得られる平均呼吸周期を情動呼吸周期Bfとして算出して出力する。
Bf=(Btot(n)+Btot(n-1)+…+Btot(n-N))÷(N+1) …(2)
ただし、Nは所定の正整数であり、nはNよりも大きい。Nの例は4以上の整数である(非特許文献1参照)。この場合、情動呼吸周期Bfは、5回以上の呼吸に対応する5個以上の呼吸周期に対応する。その他、複数個の呼吸周期Btot(n)の平均値の単調増加関数値や、複数個の呼吸周期Btot(n)の平均値に最も近い当該複数個の呼吸周期Btot(n)中の代表値などを情動呼吸周期Bfとしてもよい。
【0021】
[基本再生速度演算部15]
基本再生速度演算部15は、例えば、CPU、メモリ等で構成され、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。基本再生速度演算部15は、記憶部12に格納された設定呼吸周期付きコンテンツ12aが含む設定呼吸周期sBfと呼吸情動成分抽出部14から出力された情動呼吸周期Bfとを用い、sBf÷S0とBf÷mS0との値が近づくように基本サンプル更新間隔mS0を算出して出力する。設定呼吸周期sBfとサンプル更新間隔の標準設定値S0は定数であるため、基本再生速度演算部15は、情動呼吸周期Bfが長いほど長い基本サンプル更新間隔mS0を算出する。例えば基本再生速度演算部15は、情動呼吸周期Bfに対する一次関数値を基本サンプル更新間隔mS0とする。言い換えると、基本再生速度演算部15は、例えば情動呼吸周期Bfに単調増加一次関数を作用させた結果を基本サンプル更新間隔mS0とする。例えば基本サンプル更新間隔mS0は以下の式に従って得られる。
mS0=S0×(a×(Bf÷sBf-1)+1) …(3)
ただし、aは情動呼吸周期Bfと設定呼吸周期sBfの違いを基本サンプル更新間隔mS0へ反映させる程度を表す調節量であり、例えば0より大きく1以下の任意の定数である。
【0022】
[コンテンツ再生速度制御部16]
コンテンツ再生速度制御部16は、例えば、CPU、メモリ等で構成され、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。コンテンツ再生速度制御部16には、基本再生速度演算部15から出力された基本サンプル更新間隔mS0と、記憶部12に格納された設定呼吸周期付きコンテンツ12aに含まれるコンテンツ情報d(τ)とが入力される。コンテンツ再生速度制御部16は、基本サンプル更新間隔mS0に対応する時間間隔であるサンプル更新間隔で、時間軸に沿った複数のサンプル点τ(再生位置)にそれぞれ対応するコンテンツ情報d(τ)に含まれる再生対象のコンテンツ情報d(τ)を更新し、再生対象のコンテンツ情報d(τ)を表す再生情報r(τ)を順次出力する。本形態のサンプル更新間隔は、基本サンプル更新間隔mS0そのものである。
【0023】
[再生部17]
再生部17は、例えば、アンプ、スピーカー、画像表示装置などから構成される周知の呈示装置である。再生部17は、コンテンツ再生速度制御部16から出力された再生情報r(τ)を入力とし、再生情報r(τ)によって特定される音響情報等のコンテンツを出力する。
【0024】
[制御部18]
制御部18は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。制御部18は、再生速度同期装置1の処理全体を制御する。
【0025】
<方法>
次に、本形態の再生速度同期方法を例示する。
図5に例示するように、入力部11に設定呼吸周期付きコンテンツ12aが入力され(ステップS101)、記憶部12に格納される(ステップS102)。
【0026】
鑑賞者100に取り付けられた呼吸計測部13が周期T1で鑑賞者100の呼吸状態を計測し、それによって得られた呼吸情報である呼吸レベルV(t1), V(t1-1), V(t1-2),...を出力する(ステップS103)。呼吸レベルV(t1), V(t1-1), V(t1-2),...は呼吸情動成分抽出部14に入力され、呼吸情動成分抽出部14は、新たな情動呼吸周期Bfを生成するために必要な呼吸レベルV(t1), V(t1-1), V(t1-2),...が入力されたかを判定する(ステップS104)。本形態では1つの設定呼吸周期付きコンテンツ12aを再生するために1つの情動呼吸周期Bfのみが生成されるため、呼吸情動成分抽出部14は、1つの情動呼吸周期Bfを生成するために必要な呼吸レベルV(t1), V(t1-1), V(t1-2),...が入力されたかを判定する。必要な呼吸レベルV(t1), V(t1-1), V(t1-2),...が呼吸情動成分抽出部14に入力されていない場合にはステップS103の処理に戻る。必要な呼吸レベルV(t1), V(t1-1), V(t1-2),...が呼吸情動成分抽出部14に入力されている場合には、呼吸情動成分抽出部14は、例えば式(1)(2)に従って情動呼吸周期Bfを抽出して出力する(ステップS105)。
【0027】
基本再生速度演算部15に、設定呼吸周期付きコンテンツ12aが含む設定呼吸周期sBfと呼吸情動成分抽出部14から出力された情動呼吸周期Bfとが入力される。基本再生速度演算部15は、例えば式(3)に従って基本サンプル更新間隔mS0を算出して出力する(ステップS106)。
【0028】
基本再生速度演算部15から出力された基本サンプル更新間隔mS0と、記憶部12に格納された設定呼吸周期付きコンテンツ12aに含まれるコンテンツ情報d(τ)とが、コンテンツ再生速度制御部16に入力される。コンテンツ再生速度制御部16は、基本サンプル更新間隔mS0をサンプル更新間隔として、時間軸に沿った複数のサンプル点τ(再生位置)にそれぞれ対応するコンテンツ情報d(τ)に含まれる再生対象のコンテンツ情報d(τ)を更新し、再生対象のコンテンツ情報d(τ)を表す再生情報r(τ)を順次出力する。これは設定呼吸周期付きコンテンツ12aに含まれる最後のサンプル点τに対応する再生情報r(τ)が出力されるまで継続される(ステップS107)。再生部17は、再生情報r(τ)によって特定される音響情報等のコンテンツを順次出力する(ステップS108)。
【0029】
〔第2実施形態〕
以下に本発明の第2実施形態を説明する。第1実施形態では設定呼吸周期付きコンテンツ12aの再生が開始される前に1つの基本サンプル更新間隔mS0が算出され、基本サンプル更新間隔mS0を更新間隔として再生対象のコンテンツ情報d(τ)が更新されつつ、設定呼吸周期付きコンテンツ12aの再生が行われた。第2実施形態では、設定呼吸周期付きコンテンツ12aの再生開始後、呼吸計測部13での処理、呼吸情動成分抽出部での処理及び基本再生速度演算部での処理が繰り返されることで基本サンプル更新間隔mS0が更新され、更新された基本サンプル更新間隔mS0をサンプル更新間隔として再生対象のコンテンツ情報d(τ)を更新する。以下では第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と共通する事項については説明を省略する。第1実施形態と共通する事項については第1実施形態と共通の参照番号を用いる。
【0030】
<構成>
図1に例示するように、第2実施形態の再生速度同期装置2は、入力部11と、設定呼吸周期付きコンテンツ12aを格納する記憶部12と、呼吸計測部13と、呼吸情動成分抽出部24と、基本再生速度演算部25と、コンテンツ再生速度制御部26と、再生部17と、制御部28とを有する。
【0031】
[入力部11,記憶部12,設定呼吸周期付きコンテンツ12a,呼吸計測部13,再生部17]
第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0032】
[呼吸情動成分抽出部24]
呼吸情動成分抽出部24は、例えば、CPU、メモリ等で構成され、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。本形態の呼吸情動成分抽出部24は、現時刻t=t1直前の複数回の呼吸に対応する複数個の呼吸周期に対応する情動呼吸周期Bf(i)を抽出して出力する。iは情動呼吸周期Bf(i)の算出回数を表すために便宜的に付した整数である。情動呼吸周期Bf(i)が更新されるたびにiが1ずつ増加するものとする。
【0033】
この例の呼吸情動成分抽出部24は、呼吸計測部13から出力された呼吸レベルV(t)を入力とし、呼吸レベルV(t)が極大値となるときのtの値を呼気開始時刻: bpe(n)とし、呼吸情動成分抽出部24内のメモリ(図示せず)に一時的に保存する。まず呼吸情動成分抽出部24は、例えばメモリ上に一時的に保存された呼気開始時刻bpe(n)を用い、式(1)に従って呼吸周期Btot(n)を算出する。本形態では現時刻t=t1の直前の呼気開始時刻をbpe(n)としているがこれは本発明を限定するものではなく、それよりも過去の呼気開始時刻をbpe(n)としてもよい。
【0034】
次に、この例の呼吸情動成分抽出部24は、得られた複数個の呼吸周期Btot(n)の平均値に対応する値を情動呼吸周期Bf(i)とする。例えば呼吸情動成分抽出部24は、以下の式に従って、現時刻t=t1の直前のN+1回分の呼吸に対応するN+1個の呼吸周期Btot(n)から情動呼吸周期Bf(i)を算出して出力する。
Bf(i)=(Btot(n)+Btot(n-1)+…+Btot(n-N))÷(N+1) …(4)
【0035】
[基本再生速度演算部25]
基本再生速度演算部25は、例えば、CPU、メモリ等で構成され、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。基本再生速度演算部25は、記憶部12に格納された設定呼吸周期付きコンテンツ12aが含む設定呼吸周期sBfと呼吸情動成分抽出部24から出力された情動呼吸周期Bf(i)とを用い、sBf÷S0とBf(i)÷mS(i)との値が近づくように基本サンプル更新間隔mS(i)を算出して出力する。設定呼吸周期sBfとサンプル更新間隔の標準設定値S0は定数であるため、基本再生速度演算部25は、情動呼吸周期Bf(i)が長いほど長い基本サンプル更新間隔mS(i)を算出する。例えば基本再生速度演算部25は、情動呼吸周期Bf(i)に対する一次関数値を基本サンプル更新間隔mS(i)とする。言い換えると、基本再生速度演算部25は、例えば情動呼吸周期Bf(i)に単調増加一次関数を作用させた結果を基本サンプル更新間隔mS(i)とする。例えば基本サンプル更新間隔mS(i)は以下の式に従って得られる。
mS(i)=S0×(a×(Bf(i)÷sBf-1)+1) …(5)
【0036】
[コンテンツ再生速度制御部26]
コンテンツ再生速度制御部26は、例えば、CPU、メモリ等で構成され、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。基本再生速度演算部25から出力された最新の基本サンプル更新間隔mS(i)と、記憶部12に格納された設定呼吸周期付きコンテンツ12aに含まれるコンテンツ情報d(τ)とが、コンテンツ再生速度制御部26に入力される。コンテンツ再生速度制御部26は、基本サンプル更新間隔mS(i)に対応する時間間隔であるサンプル更新間隔で、時間軸に沿った複数のサンプル点τ(再生位置)にそれぞれ対応するコンテンツ情報d(τ)に含まれる再生対象のコンテンツ情報d(τ)を更新し、再生対象のコンテンツ情報d(τ)を表す再生情報r(τ)を順次出力する。本形態のサンプル更新間隔は、基本サンプル更新間隔mS(i)そのものである。
【0037】
[制御部28]
制御部28は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。制御部28は、再生速度同期装置2の処理全体を制御する。
【0038】
<方法>
次に、本形態の再生速度同期方法を例示する。
図6に例示するように、第1実施形態で説明したステップS101−S105の処理が実行された後、基本再生速度演算部25に、設定呼吸周期付きコンテンツ12aが含む設定呼吸周期sBfと呼吸情動成分抽出部24から出力された情動呼吸周期Bf(i)とが入力される。基本再生速度演算部25は、例えば式(5)に従って基本サンプル更新間隔mS(i)を算出して出力する(ステップS206)。
【0039】
基本再生速度演算部25から出力された基本サンプル更新間隔mS(i)と、記憶部12に格納された設定呼吸周期付きコンテンツ12aに含まれるコンテンツ情報d(τ)とが、コンテンツ再生速度制御部26に入力される。コンテンツ再生速度制御部26は、基本サンプル更新間隔mS(i)をサンプル更新間隔として、時間軸に沿った複数のサンプル点τ(再生位置)にそれぞれ対応するコンテンツ情報d(τ)に含まれる再生対象のコンテンツ情報d(τ)を更新し、再生対象のコンテンツ情報d(τ)を表す再生情報r(τ)を出力する(ステップS207)。再生部17は、再生情報r(τ)によって特定される音響情報等のコンテンツを出力する(ステップS208)。
【0040】
制御部28が、設定呼吸周期付きコンテンツ12aが含むすべてのコンテンツ情報d(τ)の再生が終了したか否かを判定する(ステップS209)。ここで、すべてのコンテンツ情報d(τ)の再生が終了していると判定された場合、処理が終了する。一方、すべてのコンテンツ情報d(τ)の再生が終了していないと判定された場合、制御部28が、呼吸計測部13で呼吸レベルV(t)を計測する時刻になっているか(前回の呼吸レベルV(t)の計測から時間T1が経過しているか)を判定する(ステップS210)。呼吸計測部13で呼吸レベルV(t)を計測する時刻になっていないと判定された場合、ステップS207に戻る。一方、呼吸計測部13で呼吸レベルV(t)を計測する時刻になっていると判定された場合、ステップS103に戻る。
【0041】
〔第3実施形態〕
第3実施形態は第1実施形態の変形例である。第3実施形態では、コンテンツ情報と少なくとも一部の再生位置に対応する時間軸上の進行位置である呼吸目標設定位置に対して定められた呼吸状態を特定する呼吸目標情報とを含む呼吸目標コンテンツの再生を行う。呼吸目標設定位置に対して定められた呼吸状態が当該呼吸目標設定位置に対応するコンテンツ情報が再生される時点での鑑賞者の呼吸状態に近づくようにコンテンツのサンプル更新間隔を制御する。本形態の特徴は、第1実施形態で説明した「情動呼吸周期が長いほど長い基本サンプル更新間隔」に基づいて、サンプル更新間隔の制御を行う点である。以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0042】
<構成>
図7に例示するように、第3実施形態の再生速度同期装置3は、入力部11と、設定呼吸周期付き呼吸目標コンテンツ32aを格納する記憶部32と、呼吸計測部13と、呼吸情動成分抽出部14と、呼吸指標抽出部34と、基本再生速度演算部15と、再生速度演算部39と、コンテンツ再生速度制御部36と、再生部17と、制御部38とを有する。
【0043】
[入力部11,呼吸計測部13,呼吸情動成分抽出部14,基本再生速度演算部15,再生部17]
第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0044】
[設定呼吸周期付き呼吸目標コンテンツ32a]
本形態の設定呼吸周期付き呼吸目標コンテンツ32aは、設定呼吸周期と、時間軸に沿った各再生位置にそれぞれ対応するコンテンツ情報と、少なくとも一部の再生位置に対応する時間軸上の位置である呼吸目標設定位置に対して定められた呼吸状態を特定する呼吸目標情報と、再生位置にそれぞれ対応する係数である同期重要度とを含むデータ構造からなるデータである。同期重要度は、それに対応する再生位置に対応する呼吸目標情報の重要度を示す。すなわち同期重要度は、それに対応する再生位置に対応する呼吸目標情報と、その再生位置に対応するコンテンツ情報が再生される時点での鑑賞者100の呼吸と、を同期させる重要度が大きいほど大きな値をとる。本形態の同期重要度は0以上1以下の値に設定されることが望ましい。
【0045】
本形態の例では、サンプル点を再生位置とし、音程や音の強さを示すMIDIデータをコンテンツ情報とし、呼気運動を開始する時点として望ましいサンプル点(呼吸目標サンプル点)を呼吸目標設定位置とし、呼気開始状態を呼吸目標サンプル点において予め定められた呼吸状態とし、呼吸目標サンプル点における呼気開始状態を特定するための情報を呼吸目標情報とする。
例えば、図8に例示する設定呼吸周期付き呼吸目標コンテンツ32aは、設定呼吸周期sBfと、時間軸に沿った各サンプル点τ(再生位置)にそれぞれ対応する音程や音の強さを示すMIDIデータであるコンテンツ情報d(τ)と、呼気運動を開始する時点として望ましいサンプル点である各呼吸目標サンプル点に対して定められた呼気開始状態を特定するための呼吸目標情報Bpe(μ)と、各サンプル点τにそれぞれ対応する係数である同期重要度α(τ)を含むデータ構造からなるデータである。
【0046】
この例の呼吸目標情報Bpe(μ)は、それに対応するサンプル点τ(呼吸目標サンプル点)を示す。例えば、呼吸目標サンプル点τ=100に対して定められた呼吸目標情報Bpe(μ)の値は100である。μは説明上便宜的に付した指標であり、各呼吸目標情報Bpe(μ)を識別するための0以上の連続した整数である。値が大きいμほど時間的に後の呼吸目標情報に対応する。
【0047】
[記憶部32]
記憶部32は、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリなどの情報記憶装置である。
【0048】
[呼吸指標抽出部34]
呼吸指標抽出部34は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。呼吸指標抽出部34は、鑑賞者を計測して得られる呼吸情報から当該鑑賞者の呼吸状態に対応する呼吸指標を抽出し、当該呼吸指標を出力するものである。本形態の例の呼吸指標抽出部34は、呼吸計測部13から出力された呼吸レベルV(t)を入力とし、計測対象となる鑑賞者100の、時刻tからみた直近の未来の呼気開始時刻の予測値pbpe(n)を呼吸指標として出力する。
【0049】
図8は、呼気開始時刻の予測値の一例を説明するための図である。
呼気開始時刻の予測値pbpe(n)は、例えば、現在の時刻t=t1からみた直近の過去の呼吸周期を、時刻t=t1からみた直近の未来の呼吸周期と推定して求めることができる。すなわち、呼気開始時刻の予測値pbpe(n)は、例えば以下のように算出することができる。
pbpe(n)=bpe(n-1)+(bpe(n-1)-bpe(n-2))
=2・bpe(n-1)-bpe(n-2) …(6)
ここでbpe(n-1)は、呼吸レベルV(t1), V(t1-1), V(t1-2),...を用いて算出された時刻t=t1からみた直近の過去の呼気開始時刻を表し、bpe(n-2)は、呼吸レベルV(t1), V(t1-1), V(t1-2),...を用いて算出された呼気開始時刻bpe(n-1)からみた直近の過去の呼気開始時刻を表す。より具体的には、例えば、時刻t=t1からみた直近の呼吸レベルの極大値に対応する時刻をbpe(n-1)とし、呼気開始時刻bpe(n-1)からみた直近の呼吸レベルの極大値に対応する時刻をbpe(n-2)とする(図8参照)。
【0050】
[再生速度演算部39]
再生速度演算部39は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。再生速度演算部39は、何れかの呼吸目標設定位置に対応する呼吸目標情報によって特定される呼吸状態が、当該呼吸目標設定位置に対応するコンテンツ情報が再生される時点での鑑賞者の呼吸状態に近づくように、各再生位置にそれぞれ対応する各コンテンツ情報を時間軸に沿って順次再生する際のサンプル更新間隔を設定する。言い換えると、再生速度演算部39は、何れかの呼吸目標設定位置に対応する呼吸目標情報によって特定される呼吸状態と、当該呼吸目標設定位置に対応するコンテンツ情報が再生される時点での鑑賞者の呼吸状態との相関が高くなるように、コンテンツのサンプル更新間隔を設定する。
【0051】
例えば時刻t=t1において再生速度演算部39に、基本再生速度演算部15から出力された基本サンプル更新間隔mS0と、呼吸指標抽出部34から出力された呼吸指標である呼気開始時刻の予測値pbpe(n)と、記憶部32に格納された設定呼吸周期付き呼吸目標コンテンツ32aから抽出した呼吸目標サンプル点Bpe(m)、同期重要度α(p(t1))及びサンプル点τ=p(t1)とが入力される。ただし、図9に例示するように、時刻t=t1の時点でサンプル点τ=p(t1)に対応するコンテンツ情報d(p(t1))までの再生が終了しており、このとき設定呼吸周期付き呼吸目標コンテンツ32aに含まれるサンプル点τ=p(t1)からみて直近の未来の呼吸目標サンプル点がBpe(m)(μ=m)であり、時刻t=t1の時点で呼吸指標抽出部34から出力された呼気開始時刻の予測値(呼吸指標)がpbpe(n)であるとする。
【0052】
再生速度演算部39は、サンプル点τ=p(t1)の同期重要度α(p(t1))を考慮しつつ、呼気開始時刻の予測値pbpe(n)に、呼吸目標サンプル点Bpe(m)に対応するコンテンツ情報d(τ)の再生時刻が近づくように、基本サンプル更新間隔mS0を補正してサンプル更新間隔S(t1)を算出して出力する。この際の補正値(基本サンプル更新間隔mS0に対するサンプル更新間隔の変化量)は、現時刻t=t1から呼吸指標に対応する呼吸状態となる時刻t=pbpe(n)までの予測期間pbpe(n)-t1を、現時刻t=t1での再生対象のコンテンツ情報d(p(t1))に対応する再生位置p(t1)から呼吸目標サンプル点(呼吸目標設定位置)Bpe(m)に対応するサンプル点(再生位置)τ=Bpe(m)までの間に存在する再生位置の個数Bpe(m)-p(t1)で除することで得られる値(pbpe(n)-t1)/(Bpe(m)-p(t1))と、基本サンプル更新間隔mS0と、の間の差分{(pbpe(n)-t1)/(Bpe(m)-p(t1))-mS0}に対応する値である。すなわち、例えば再生速度演算部39は、以下の式に従ってサンプル更新間隔S(t1)を算出する。
S(t1)=α(p(t1)){((pbpe(n)-t1)/(Bpe(m)-p(t1)))-mS0}+mS0 …(7)
この例ではα(p(t1)){((pbpe(n)-t1)/(Bpe(m)-p(t1)))-mS0}が補正値である。同期重要度α(p(t1))が1の場合、時刻t1から時刻pbpe(n)までの間に再生対象のサンプル点がp(t1)からBpe(m)まで更新されるようなサンプル更新間隔S(t1)が算出される。同期重要度α(p(t1))が0以上1未満の場合、同期重要度α(p(t1))が1の場合のものよりも補正値の小さなサンプル更新間隔S(t1)が算出される。同期重要度α(p(t1))が0の場合には第1実施形態と同様にS(t1)=mS0となり、同期重要度α(p(t1))が0よりも大きい場合にはS(t1)≠mS0となる。
【0053】
[コンテンツ再生速度制御部36]
コンテンツ再生速度制御部36は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。コンテンツ再生速度制御部36には、再生速度演算部39から出力されたサンプル更新間隔S(t1)と、記憶部32に格納された設定呼吸周期付き呼吸目標コンテンツ32aに含まれるコンテンツ情報d(τ)とが入力される。コンテンツ再生速度制御部36は、サンプル更新間隔S(t1)で再生対象のコンテンツ情報d(τ)を更新し、再生対象のコンテンツ情報d(τ)を表す再生情報r(τ)を順次出力する。
【0054】
[制御部38]
制御部38は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。制御部38は、再生速度同期装置3の処理全体を制御する。
【0055】
<方法>
次に、本形態の再生速度同期方法を例示する。
図10に例示するように、第1実施形態で説明したステップS101−S106の処理が実行された後、呼吸指標抽出部34が例えば式(6)に従って呼吸指標pbpe(n)を算出して出力する。さらに再生速度演算部39に、基本再生速度演算部15から出力された基本サンプル更新間隔mS0と、呼吸指標抽出部34から出力された呼吸指標pbpe(n)と、記憶部32に格納された設定呼吸周期付き呼吸目標コンテンツ32aから抽出した呼吸目標サンプル点Bpe(m)、同期重要度α(p(t1))及びサンプル点τ=p(t1)とが入力される。再生速度演算部39は、例えば式(7)に従ってサンプル更新間隔S(t1)を算出して出力する(ステップS306)。
【0056】
再生速度演算部39から出力されたサンプル更新間隔S(t1)と、記憶部12に格納された設定呼吸周期付きコンテンツ12aに含まれるコンテンツ情報d(τ)とが、コンテンツ再生速度制御部36に入力される。コンテンツ再生速度制御部36は、サンプル更新間隔S(t1)で再生対象のコンテンツ情報d(τ)に対応するサンプル点を更新し、再生対象のコンテンツ情報d(τ)を表す再生情報r(τ)を出力する(ステップS307)。再生部17は、再生情報r(τ)によって特定される音響情報等のコンテンツを出力する(ステップS208)。
【0057】
制御部28が、設定呼吸周期付き呼吸目標コンテンツ32aが含むすべてのコンテンツ情報d(τ)の再生が終了したか否かを判定する(ステップS309)。ここで、すべてのコンテンツ情報d(τ)の再生が終了していると判定された場合、処理が終了する。一方、すべてのコンテンツ情報d(τ)の再生が終了していないと判定された場合、制御部28が、呼吸計測部13で呼吸レベルV(t)を計測する時刻になっているかを判定する(ステップS210)。呼吸計測部13で呼吸レベルV(t)を計測する時刻になっていないと判定された場合、ステップS306に戻る。一方、呼吸計測部13で呼吸レベルV(t)を計測する時刻になっていると判定された場合、ステップS103に戻る。
【0058】
〔第3実施形態の変形例〕
第3実施形態では第1実施形態で説明した基本サンプル更新間隔mS0に基づいてサンプル更新間隔の制御が行われたが、第2実施形態で説明した基本サンプル更新間隔mS(i)に基づいてサンプル更新間隔の制御が行われてもよい。以下では第3実施形態との相違点を中心に説明する。
【0059】
<構成>
図7に例示するように、第3実施形態の変形例の再生速度同期装置3’は、再生速度同期装置3の基本再生速度演算部15が基本再生速度演算部25に置換され、再生速度演算部39が再生速度演算部39’に置換されたものである。
[再生速度演算部39’]
再生速度演算部39’は、再生速度演算部39で用いられた基本サンプル更新間隔mS0の代わりに基本再生速度演算部25から出力された基本サンプル更新間隔mS(i)を用いて、サンプル更新間隔S(t1)を算出する。例えば再生速度演算部39は、以下の式に従ってサンプル更新間隔S(t1)を算出する。
S(t1)=α(p(t1)){((pbpe(n)-t1)/(Bpe(m)-p(t1)))-mS(i)}+mS(i) …(8)
【0060】
<方法>
図10に例示するように、第3実施形態の変形例の再生速度同期方法では、ステップS106の代わりにステップS206の処理が実行される。また、ステップS306の代わりに、再生速度演算部39’に基本再生速度演算部25から出力された基本サンプル更新間隔mS(i)と、呼吸指標抽出部34から出力された呼吸指標である呼気開始時刻の予測値pbpe(n)と、記憶部32に格納された設定呼吸周期付き呼吸目標コンテンツ32aから抽出した呼吸目標サンプル点Bpe(m)、同期重要度α(p(t1))及びサンプル点τ=p(t1)とが入力される。再生速度演算部39’は、例えば式(8)に従ってサンプル更新間隔S(t1)を算出して出力する(ステップS306’)。その他は第3実施形態と同様である。
【0061】
〔第4実施形態〕
第4実施形態は第3実施形態の変形例である。第4実施形態の呼吸目標情報及び呼吸指標は、それぞれ、周期的な呼吸運動の位相を特定するための情報であり、第4実施形態の再生速度演算部は、何れかの呼吸目標設定位置に対応する呼吸目標情報によって特定される位相と、当該呼吸目標設定位置に対応するコンテンツ情報が再生される時点での呼吸指標よって特定される位相との差が小さくなるようにサンプル更新間隔を制御する。本形態の特徴は、第1実施形態で説明した「情動呼吸周期が長いほど長い基本サンプル更新間隔」に基づいて、サンプル更新間隔の制御を行う点である。以下では、第3実施形態との相違点を中心に説明を行う。
【0062】
<構成>
図7に例示するように、第4実施形態の再生速度同期装置4は、入力部11と、設定呼吸周期付き呼吸目標コンテンツ42aを格納する記憶部42と、呼吸計測部13と、呼吸情動成分抽出部14と、呼吸指標抽出部44と、基本再生速度演算部15と、再生速度演算部49と、コンテンツ再生速度制御部36と、再生部17と、制御部48とを有する。
【0063】
[入力部11,呼吸計測部13,呼吸情動成分抽出部14,基本再生速度演算部15,再生部17]
第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0064】
[設定呼吸周期付き呼吸目標コンテンツ42a]
設定呼吸周期と、時間軸に沿った各再生位置にそれぞれ対応するコンテンツ情報と、少なくとも一部の再生位置に対応する時間軸上の位置である呼吸目標設定位置に対して定められた呼吸状態を特定する呼吸目標情報と、再生位置にそれぞれ対応する係数である同期重要度とを含むデータ構造からなるデータである。設定呼吸周期付き呼吸目標コンテンツ32aとの相違は、呼吸目標情報が周期的な呼吸運動の位相を特定するための情報である点である。
【0065】
例えば、図11に例示する設定呼吸周期付き呼吸目標コンテンツ42aは、設定呼吸周期sBfと、時間軸に沿った各サンプル点τ(再生位置)にそれぞれ対応する音程や音の強さを示すMIDIデータであるコンテンツ情報d(τ)と、すべてのサンプル点τ(呼吸目標設定位置)に対して定められた、各サンプル点τにおいて望ましい「周期的な呼吸運動の位相」を特定するための情報Φ(τ)(呼吸目標情報)と、同期重要度α(τ)とを含むデータ構造からなるデータである。なお、本形態の呼吸目標情報Φ(τ)の具体例については後述する。
【0066】
[記憶部42]
記憶部42は、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリなどの情報記憶装置である。
【0067】
[呼吸指標抽出部44]
呼吸指標抽出部44は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。呼吸指標抽出部44は、鑑賞者100を計測して得られる呼吸情報から当該鑑賞者の周期的な呼吸運動の位相を特定するための情報を呼吸指標として抽出し、当該呼吸指標を出力するものである。
図12Aは、第4実施形態の呼吸指標抽出部44が算出する呼吸指標の例を説明するための図である。
【0068】
どのような値を「鑑賞者の周期的な呼吸運動の位相を特定するための情報」として用いるかについては特に制限はない。以下では、呼吸レベルV(t)を1次元目の値とし、その遅延値V(t-γ)を2次元目の値とした直交座標系の空間(相空間)での極座標の偏角を「鑑賞者の周期的な呼吸運動の位相を特定するための情報(呼吸指標φ(t))」として用いる。この場合の呼吸指標抽出部44の時刻tに対応する処理は、例えば以下のようになる。
1.呼吸計測部13から出力された時刻tにおける呼吸レベルV(t)を相空間の1次元目の値とする。
2.呼吸レベルV(t)を時間遅延フィルターに通して得られる呼吸レベルV(t-γ)を相空間の2次元目の値とする。ここでγは時間遅延フィルターの遅延幅であり、呼吸の場合は200msから800ms程度が望ましい。
3.相空間の直行座標系の点(V(t),V(t-γ))を極座標表示した場合の偏角を、呼吸指標φ(t)として求めて出力する(図12A参照)。
このような値を呼吸指標φ(t)とする場合、予め定められた各サンプル点τにおいて望ましい呼吸指標φ(t)が、当該サンプル点τに対応する呼吸目標情報Φ(τ)(図11参照)として設定呼吸周期付き呼吸目標コンテンツ42aに設定されている。
【0069】
[再生速度演算部49]
再生速度演算部49は、例えば、CPUに所定のプログラムが読み込まれることで構成される処理部である。再生速度演算部49は、何れかの呼吸目標設定位置に対応する呼吸目標情報によって特定される位相と、当該呼吸目標設定位置に対応するコンテンツ情報が再生される時点での呼吸指標よって特定される位相との差が小さくなるようにサンプル更新間隔S(t1)を算出して出力する。
【0070】
本形態の再生速度演算部49は、呼吸計測部13で呼吸レベルV(t)が得られるたびに、すなわち、周期T1でサンプル更新間隔S(t)を算出して出力する。図11に例示するように、時刻t=t1の時点で、サンプル点τ=p(t1)に対応するコンテンツ情報d(p(t1))までの再生が終了しているとする。このとき設定呼吸周期付き呼吸目標コンテンツ42aに含まれるサンプル点τ=p(t1)に対応する呼吸目標情報がΦ(p(t1))であり、時刻t=t1の時点で呼吸指標抽出部44から出力された呼吸指標(鑑賞者の周期的な呼吸運動の位相を特定するための情報)がφ(t1)であったとする。再生速度演算部49は、これらの呼吸指標φ(t1)と呼吸目標情報Φ(p(t1))とを入力とし、これらが図12Aの相空間上でなす角を以下のように符号付きで求める。
R(t1)=φ(t1)-Φ(p(t1)) …(9)
If |R(t1)|>π then L(t1)=R(t1)-Sgn(R(t1))・2π else L(t1)=R(t1) …(10)
ただし、Sgn(δ)は符号関数であり、その関数値は、δ<0のときはSgn(δ)=-1となり、δ=0のときはSgn(δ)=0となり、δ>0のときはSgn(δ)=1となる。L(t1)>0の場合、時刻t=t1において鑑賞者100の呼吸が呼吸目標情報の示す呼吸より進んでいることになり、L(t1)<0の場合、時刻t=t1において鑑賞者100の呼吸が呼吸目標情報の示す呼吸より遅れていることになる。図12Bに、呼吸指標φ(t1)と呼吸目標情報Φ(p(t1))とL(t1)との関係を例示する。図12BはL(t1)<0の例である。
【0071】
再生速度演算部49は、さらに基本再生速度演算部15から出力された基本サンプル更新間隔mS0と、記憶部42から読み出された設定呼吸周期付き呼吸目標コンテンツ42aに含まれる同期重要度α(p(t1))とを用い、基本サンプル更新間隔mS0を補正値で補正することで時刻t=t1でのサンプル更新間隔S(t1)を得る。本形態の補正値は、現時刻t=t1の呼吸指標に対応する呼吸状態φ(t1)と呼吸目標設定位置に対して定められた呼吸状態Φ(p(t1))との間の位相差に対応する値である。例えば再生速度演算部49は、以下の式に従って時刻t=t1でのサンプル更新間隔S(t1)を算出して出力する。
S(t1)=mS0/{α(p(t1))・C・L(t1)+1} …(11)
CはC>0を満たす任意の定数である。例えば、取り得るすべてのα(τ),L(t)に対してα(p(t))・C・L(t)+1>0となるように定数Cが定められた場合、再生速度演算部49は、鑑賞者の呼吸が呼吸目標情報の示す呼吸より進んでいる場合(L(t1)>0)に、mS0よりも大きなサンプル更新間隔S(t1)を算出し、鑑賞者の呼吸が呼吸目標情報の示す呼吸に同期している場合(L(t1)=0)に、mS0と等しいサンプル更新間隔S(t1)を算出し、鑑賞者の呼吸が呼吸目標情報の示す呼吸より遅れている場合(L(t1)<0)に、mS0よりも小さなサンプル更新間隔S(t1)を算出する。
【0072】
<方法>
図10を用いて本形態の再生速度同期方法を例示する。
図10に例示するように、第1実施形態で説明したステップS101−S106の処理が実行された後、呼吸指標抽出部44が前述した呼吸指標φ(t)を算出して出力する。さらに再生速度演算部49に、基本再生速度演算部15から出力された基本サンプル更新間隔mS0と、呼吸指標抽出部44から出力された呼吸指標φ(t)と、記憶部42に格納された設定呼吸周期付き呼吸目標コンテンツ42aから抽出した呼吸目標情報Φ(τ)、同期重要度α(p(t1))及びサンプル点τ=p(t1)とが入力される。再生速度演算部49は、例えば式(11)に従ってサンプル更新間隔S(t1)を算出して出力する(ステップS406)。その後の処理は第3実施形態と同じである。
【0073】
〔第4実施形態の変形例1〕
式(11)の代わりに、以下の式に従ってサンプル更新間隔S(t1)が算出されてもよい。
S(t1)=mS0/{α(p(t1))・D[L(t1)]+1} …(12)
ただし、D[L(t)]はL(t)に関数D[L]を作用させた関数値である。関数D[L]に応じ、鑑賞者100の呼吸に対するコンテンツの再生速度の追従のさせ方を変化させることができる。
【0074】
図13A−13Cは、関数D[L]の具体例を説明するための図である。
図13Aは、以下の式で示される関数を例示した図である。
D[L]=C・L …(13)
この場合の関数値D[L(t)]は、L(t)に対して比例関係にある。この例の場合の処理は、第3実施形態と同一となる。
【0075】
図13Bは、以下の式で示される関数を例示した図である。
D[L]=C1*L (L<0) …(14)
D[L]=C2*L (L>=0) …(15)
ただし、C1,C2はC1>C2>0の条件を満たす任意の定数である。この関数D[L]の場合、L(t)>0である場合のL(t)の変化量に対する関数値D[L(t)]の変化量は、L(t)<0である場合のL(t)の変化量に対する関数値D[L(t)]の変化量よりも小さい。この場合、再生速度演算部は、鑑賞者の呼吸の位相が呼吸目標情報の示す呼吸の位相より進んでいる場合(L(t1)>0)のサンプル更新間隔の調整(再生速度を速くする調整)よりも、鑑賞者の呼吸の位相が呼吸目標情報の示す呼吸の位相より遅れている場合(L(t1)<0)のサンプル更新間隔の調整(再生速度を遅くする調整)を強調した処理を行うことになる。すなわち、絶対値が等しいL(t1)に対し、L(t1)<0の場合のS0に対するS(t1)の変化量は、L(t1)>0の場合のS0に対するS(t1)の変化量よりも大きい。
【0076】
図13Cは、以下の式で示される関数を例示した図である。
D[L]=SIN(L) …(16)
この関数D[L]の場合、再生速度演算部は、図13Aの関数D[L]を用いる場合に比べ、鑑賞者の呼吸と呼吸目標情報の示す呼吸との位相差が大きくなってもサンプル更新間隔の変化量をさほど増加させないことになる。すなわち、図13B,13Cのように関数値D[L(t)]がL(t)に対して比例関係にない場合、何れかの呼吸目標設定位置に対応する呼吸目標情報によって特定される位相と、当該呼吸目標設定位置に対応するコンテンツ情報が再生される時点での呼吸指標よって特定される位相との差の変化量に対する再生速度の変化量(サンプル更新間隔の変化量)は、当該呼吸目標設定位置に対応する呼吸目標情報によって特定される位相に対する、当該呼吸目標設定位置に対応するコンテンツ情報が再生される時点での呼吸指標よって特定される位相の相対値(L(t))に依存することになる。
【0077】
〔第4実施形態の変形例2〕
第4実施形態やその変形例1では第1実施形態で説明した基本サンプル更新間隔mS0に基づいてサンプル更新間隔の制御が行われたが、第2実施形態で説明した基本サンプル更新間隔mS(i)に基づいてサンプル更新間隔の制御が行われてもよい。以下では第4実施形態やその変形例1との相違点を中心に説明する。
【0078】
<構成>
図7に例示するように、第4実施形態の変形例2の再生速度同期装置4’は、再生速度同期装置4の基本再生速度演算部15が基本再生速度演算部25に置換され、再生速度演算部49が再生速度演算部49’に置換されたものである。
【0079】
[再生速度演算部49’]
再生速度演算部49’は、再生速度演算部49で用いられた基本サンプル更新間隔mS0の代わりに基本再生速度演算部25から出力された基本サンプル更新間隔mS(i)を用いて、サンプル更新間隔S(t1)を算出する。例えば再生速度演算部49は、以下の式に従ってサンプル更新間隔S(t1)を算出する。
S(t1)=mS(i)/{α(p(t1))・C・L(t1)+1} …(17)
或いは、以下の式に従ってサンプル更新間隔S(t1)が算出されてもよい。
S(t1)=mS(i)/{α(p(t1))・D[L(t1)]+1} …(18)
【0080】
<方法>
図10に例示するように、第4実施形態の変形例2の再生速度同期方法では、ステップS106の代わりにステップS206の処理が実行される。また、ステップS406の代わりに、再生速度演算部49’に基本再生速度演算部25から出力された基本サンプル更新間隔mS(i)と、呼吸指標抽出部44から出力された呼吸指標φ(t)と、記憶部42に格納された設定呼吸周期付き呼吸目標コンテンツ42aから抽出した呼吸目標情報Φ(τ)、同期重要度α(p(t1))及びサンプル点τ=p(t1)とが入力される。再生速度演算部49’は、例えば式(17)又は(18)に従ってサンプル更新間隔S(t1)を算出して出力する(ステップS406’)。その他は第4実施形態と同様である。
【0081】
〔各実施形態の特徴〕
全実施形態において、鑑賞者によって行われた複数回の呼吸に対応する複数個の呼吸周期に対応する情動呼吸周期が長いほど長い基本サンプル更新間隔に対応するサンプル更新間隔で再生対象のコンテンツ情報を更新することにした。情動呼吸周期は鑑賞者の中長期的な情動や活動状態を反映するものである。よって、全実施形態では、鑑賞者の情動や活動度に影響を受ける呼吸に併せてコンテンツの再生速度を適切に制御することができる。
【0082】
第2実施形態によれば、コンテンツの再生中に情動呼吸周期も逐次更新されるため、コンテンツ再生中の鑑賞者の体調変化や鑑賞そのものに起因する情動変化に応じ、適切にコンテンツの再生速度を制御できる。
【0083】
第3実施形態によれば、鑑賞者の中長期的な情動や活動状態を反映された情動呼吸周期に基づいて、コンテンツの再生位置に設定された目標となる呼吸状態と鑑賞者の呼吸状態とが近づくように再生速度を制御する。そのため、コンテンツに設定された目標となる呼吸状態と鑑賞者の情動や活動度に影響を受ける呼吸状態とが著しく乖離する場合であっても、コンテンツの再生速度を適切に制御できる。
【0084】
〔その他の変形例〕
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではない。
例えば、上記の各実施形態やその変形例では、サンプル点に呼吸目標情報や同期重要度が対応付けられたコンテンツを例示した。しかし、呼吸目標情報や同期重要度が何れかの再生位置に対応付けられるのであれば、必ずしも、サンプル点に呼吸目標情報や同期重要度が対応付けられている必要はない。例えば、呼吸目標情報や同期重要度がコンテンツのサンプリング周波数と同じかその(1/自然数)倍の周波数でコンテンツに分布して記録されていても良いし、任意の間隔で記録されていても良い。任意の間隔で記録する際は、例えば、コンテンツ情報の開始点を特定する始点情報と、当該始点情報に対する呼吸目標情報や同期重要度の相対位置を特定する情報とをコンテンツに格納しておけばよい。また、呼吸目標情報や同期重要度は、離散データある必要もなく、アナログ的に記録されていても良い。また、呼吸目標情報や同期重要度は、コンテンツ全体に定義される必要もなく、その一部分にだけに対して定義されていてもよい。
【0085】
また、上記の各実施形態やその変形例では、呼吸計測部から出力される呼吸情報の具体例として呼吸レベルを例示した。しかし、例えば、呼吸レベルの微分値などを呼吸情報としてもよい。なお、呼吸レベルの微分値は、例えば、呼吸の気流量を検出して得られる。
また、上記の各実施形態やその変形例では、コンテンツ情報の具体例として、音程や音の強さを示すMIDIデータを示した。しかし、音楽、音声、映画やテレビ番組等の動画など、鑑賞目的のための音響情報や映像情報を特定するその他のデータがコンテンツ情報であってもよい。また、コンテンツ再生速度制御部は、再生速度が変わっても、音であればピッチや音質を変更しない、映像であればコマ送りや早送りによる映像の乱れを抑える等の処理を含む再生時間制御処理を行うことが望ましい。
【0086】
第3実施形態では、0以上1以下の値の同期重要度が好ましいことを示した。しかし、これは本発明を限定するものではなく、同期重要度が0未満であってもよいし、1よりも大きくてもよい。これにより、コンテンツの再生方法のバリエーションを増やし、楽しみ方の選択肢を増やすことができる。例えば、同期重要度を0未満とすることで、鑑賞者にとって違和感のあるコンテンツ再生が可能となり、芸術的表現の幅が広がる。また、すべての実施形態やその変形例において、再生速度演算部が同期重要度の代わりに上述同期重要度の符号を反転させた値が用いられてもよい。
【0087】
各ブロック図の各ブロックは概念的に区切られた処理区分であり、それぞれが独立した装置として存在する必要はない。また、各ブロックが1つの装置として構成されている必要もなく、複数の装置に分散して配置されていてもよい。
また、上述の各種の処理は、記載に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【0088】
また、上述の構成をコンピュータによって実現する場合、各装置が有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。
この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体の例は、非一時的な(non-transitory)記録媒体である。このような記録媒体の例は、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等である。
【0089】
このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
【0090】
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶装置に格納する。そして、処理の実行時、このコンピュータは、自己の記録装置に格納されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従った処理を実行する。また、このプログラムの別の実行形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。また、サーバコンピュータから、このコンピュータへのプログラムの転送は行わず、その実行指示と結果取得のみによって処理機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって、上述の処理を実行する構成としてもよい。なお、本形態におけるプログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの(コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータ等)を含むものとする。
【0091】
この形態では、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより、本装置を構成することとしたが、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1−4,3',4’ 再生速度同期装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鑑賞者の呼吸情報を用い、前記鑑賞者によって行われた複数回の呼吸に対応する複数個の呼吸周期に対応する情動呼吸周期を抽出する呼吸情動成分抽出部と、
前記情動呼吸周期が長いほど長い基本サンプル更新間隔を算出する基本再生速度演算部と、
前記基本サンプル更新間隔に対応する時間間隔であるサンプル更新間隔で、時間軸に沿った複数の再生位置にそれぞれ対応するコンテンツ情報に含まれる再生対象のコンテンツ情報を更新し、前記再生対象のコンテンツ情報を表す再生情報を出力するコンテンツ再生速度制御部と、
を有する再生速度同期装置。
【請求項2】
請求項1の再生速度同期装置であって、
前記基本サンプル更新間隔は、前記情動呼吸周期に対する一次関数値である、
ことを特徴とする再生速度同期装置。
【請求項3】
請求項1又は2の再生速度同期装置であって、
前記呼吸情動成分抽出部での処理及び前記基本再生速度演算部での処理が繰り返されることで前記サンプル更新間隔が更新され、
前記コンテンツ再生速度制御部は、更新された前記サンプル更新間隔で、前記再生対象のコンテンツ情報を更新する、
ことを特徴とする再生速度同期装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れかの再生速度同期装置であって、
前記コンテンツ情報と、少なくとも一部の前記再生位置に対応する時間軸上の位置である呼吸目標設定位置に対して定められた呼吸状態を特定する呼吸目標情報と、を含む、呼吸目標コンテンツを格納する記憶部と、
前記呼吸情報から当該鑑賞者の呼吸状態に対応する呼吸指標を抽出する呼吸指標抽出部と、を有し、
前記サンプル更新間隔は、補正値で前記基本サンプル更新間隔を補正することで得られ、
前記補正値は、現時刻から前記呼吸指標に対応する呼吸状態となる時刻までの予測期間を、前記現時刻での前記再生対象のコンテンツ情報に対応する前記再生位置から前記呼吸目標設定位置に対応する前記再生位置までの間に存在する前記再生位置の個数で除することで得られる値と、前記基本サンプル更新間隔と、の間の差分に対応する値である、
ことを特徴とする再生速度同期装置。
【請求項5】
請求項1から3の何れかの再生速度同期装置であって、
前記コンテンツ情報と、少なくとも一部の前記再生位置に対応する時間軸上の位置である呼吸目標設定位置に対して定められた呼吸状態を特定する呼吸目標情報と、を含む、呼吸目標コンテンツを格納する記憶部と、
前記呼吸情報から当該鑑賞者の呼吸状態に対応する呼吸指標を抽出する呼吸指標抽出部と、を有し、
前記サンプル更新間隔は、補正値で前記基本サンプル更新間隔を補正することで得られ、
前記補正値は、現時刻の前記呼吸指標に対応する呼吸状態と前記呼吸目標設定位置に対して定められた呼吸状態との間の位相差に対応する値である、
ことを特徴とする再生速度同期装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れかの再生速度同期装置であって、
前記情動呼吸周期は、5回以上の呼吸に対応する5個以上の呼吸周期に対応する、
ことを特徴とする再生速度同期装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れかの再生速度同期装置であって、
前記情動呼吸周期は、前記複数個の呼吸周期の平均値に対応する値である、
ことを特徴とする再生速度同期装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れかの再生速度同期装置の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−255869(P2012−255869A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128159(P2011−128159)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(503420833)学校法人常翔学園 (62)
【Fターム(参考)】