説明

再生電子写真用ローラの製造方法

【課題】電子写真用ローラの物理的なダメージを抑制し、その特性を損なうことなく表面に固着した現像剤由来の固着物を除去し、電子写真プロセスを利用する画像形成装置の各種電子写真用ローラとして再利用可能な再生電子写真用ローラの製造方法を提供する。
【解決手段】電子写真用ローラ1の表面に固着している現像剤由来の固着物を除去する工程を有する再生電子写真用ローラの製造方法であって、該工程は、球状粒子を含むダイラタンシー性流体2に浸漬した該電子写真用ローラ1をその周方向に回転させて該ダイラタンシー性流体2を高粘性化する工程を含むことを特徴とする再生電子写真用ローラの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は再生電子写真用ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置等において用いられている現像ローラ、帯電ローラ、定着ローラ、転写ローラ等の電子写真用ローラは、長期の使用に伴って、その表面に現像剤や紙粉等が付着してくる。また、これらは、電子写真装置内において、電子写真用ローラと他部材とが圧接することにより物理的な力や摩擦熱等の影響を受けて、表面に固着している場合もある。このような現像剤由来の固着物は、エアブローなどでは容易には除去できない。一方、かかる固着物は、電子写真用ローラの表面特性を損ない、その結果として電子写真画像の品位に影響を与えることがある。
【0003】
ところで、近年、環境保護の観点から、使用に伴って表面に現像剤由来の固着物等が付着した電子写真用ローラを再生させることが望まれてきている。特許文献1では、電子写真用ローラ表面に付着している表面付着物を、表面から除去するブラスト処理工程を有する電子写真用ローラの再生方法が提案されている。また、特許文献2では、磁性小片と分散媒体からなる洗浄液が入った槽に感光ドラムを浸漬し、槽を回転させることによって感光ドラムの塗膜を除去する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−123155号公報
【特許文献2】特開平11−160894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のようなブラスト処理は、現像剤の付着物の除去には効果はあるが、現像剤由来の固着物を、十分には除去できない可能性がある。また、特許文献2は感光ドラムの塗膜の除去を目的としており、樹脂やゴム製のローラにそのまま応用すると、ローラ表面を損傷する可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、電子写真用ローラの物理的なダメージを抑制し、その特性を損なうことなく表面に固着した現像剤由来の固着物を除去し、電子写真用ローラとして再利用可能な再生電子写真用ローラの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本出願に係る発明は、電子写真用ローラの表面に固着している現像剤由来の固着物を除去する工程を有する再生電子写真用ローラの製造方法であって、
該工程は、球状粒子を含むダイラタンシー性流体に浸漬した該電子写真用ローラをその周方向に回転させて該ダイラタンシー性流体を高粘性化する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電子写真用ローラへの物理的なダメージを抑制し、その特性を損なうことなく表面に付着した現像剤由来の固着物を除去し、電子写真装置の画像形成装置の各種電子写真用ローラとして再利用可能な再生電子写真用ローラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の再生電子写真用ローラ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の再生電子写真用ローラ表面近傍での作用を示す説明図である。
【図3】本発明の再生電子写真用ローラの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の再生電子写真用ローラの製造方法は、球状粒子を含むダイラタンシー性流体に浸漬した該電子写真用ローラをその周方向に回転させて該ダイラタンシー性流体を高粘性化する工程を有する。
【0011】
ここで、ダイラタンシー性流体とは、非ニュートン性を示す流体の一種であって、低い剪断力を加えた場合には、低い粘性を示すが、加える剪断力を増加させていくと、粘性が急激に増加する流体のことである。一般的に0.1μm〜10μm程度の大きさの粒子を溶媒に大量に分散させた流体である。
【0012】
本発明において球状とは、粒子投影像における粒子の長径/短径の比が1.0〜1.5程度のものを意味しており、本発明において好ましくは長径/短径の比が1.0〜1.2の粒子を使用することが良い。粒子が球状であることで、再生電子写真用ローラを製造する際のローラの物理的ダメージを抑制することができる。
【0013】
用いる球状粒子としては、公知の材料からなるものが使用可能であり、特に限定されないが、例えば、球状の樹脂粒子、球状の無機粒子などを挙げることができる。
【0014】
球状樹脂粒子の材料としては以下のものが挙げられる。ポリアクリレート、ポリメタクリレート等のアクリル系樹脂粒子、ナイロン等のポリアミド系樹脂粒子、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子、フェノール系樹脂粒子、ポリウレタン系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、ベンゾグアナミン粒子等。粉砕法により得られた樹脂粒子を熱的に或は物理的に球形化処理を行ってから用いても良い。
【0015】
球状無機粒子の材料としては、藻土、石英粉末、乾式シリカ、湿式シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミノケイ酸、炭酸カルシウム等の粒子等が挙げられる。
【0016】
ダイラタンシー性流体に用いる球状粒子の粒径は0.1μm〜10μmであることが好ましい。
【0017】
本発明に用いる溶媒としては、水、ならびに1価のアルコール類、グリコール類、およびグリコールエーテル類またはそれらを混合した溶媒が好ましい。2以上の溶媒を混合して用いる場合の混合割合は特に限定されない。好ましい理由としては、これらの溶媒を用いた場合、電子写真用ローラが膨潤する、構成材料が溶出するなどを抑制することができるためである。
【0018】
さらに、用いる溶媒は炭素数が1以上6以下の1価のアルコール、グリコール、グリコールエーテルおよびそれらの混合水溶液であることが好ましい。これらの混合水溶液の水と溶媒の混合割合は特に限定されない。炭素数が1以上の1価のアルコール、グリコール、グリコールエーテルは粒子との親和性に優れるため、粒子が凝集をせず、ダイラタンシー性流体の分散安定性が向上すると考えられる。炭素数が6以下の1価のアルコール、グリコール、グリコールエーテルの場合、溶媒の粘性を低く抑えることができるため、球状粒子の剪断力を効果的に与えることができる。
【0019】
用いる溶媒の具体例としては、水、およびメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ベンジルアルコール、ダイアセトンアルコール等のアルコール類、
エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類、
セロソルブ、ブチルセロソルブ、イソブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールt−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、
またはそれらを混合した溶媒が挙げられる。
【0020】
本発明において、ダイラタンシー性流体を構成する溶媒と球状粒子との混合割合は、溶媒100質量部に対し、球状粒子が200〜300質量部であることが好ましい。
【0021】
また、ダイラタンシー性流体中の粒子が沈降する場合には、公知の有機分散安定剤を使用してもよい。具体的には例えば、以下のものを例示することができる。ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ポリアクリル酸及びその塩、デンプン等の有機化合物、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等、オレイン酸カルシウム等の界面活性剤など。
【0022】
ダイラタンシー性流体が示す粘度としては、低剪断領域では低いことが好ましい。これは、低剪断領域で粘度が高い流体の場合、高剪断領域では溶媒の粘度の影響を受け、球状粒子からの剪断力をローラ表面に効果的に与えられないためである。具体的には、B型粘度計で6〔rpm〕の時に20〜100〔Pa・s〕であり、900〔rpm〕の時に500〜1000〔Pa・s〕であることが好ましい。B型粘度計で6〔rpm〕の時に20〔Pa・s〕以上である場合、高剪断領域で電子写真用ローラ表面近傍に効果的に剪断力を与えることができる。このようにダイラタンシー性流体は、電子写真用ローラを高剪断領域で回転させることで高粘性化することができる。
【0023】
また、100〔Pa・s〕以下である場合、高剪断領域で電子写真用ローラ表面にかかる剪断力は溶媒より球状粒子が支配的になるため現像剤由来の固着物を効果的に除去できる。900〔rpm〕の時に500〔Pa・s〕以上である場合、電子写真用ローラ表面近傍に効果的に剪断力を与えることができる。また1000〔Pa・s〕以下である場合、電子写真用ローラの物理的ダメージを抑制することができる。
【0024】
本発明において、再生電子写真用ローラはダイラタンシー性流体中で周方向に回転させる工程を含む。
【0025】
ローラの周方向への回転方法は、特に制限されないが、各種小型攪拌機にローラの軸体を設置した物を用いることができる。
【0026】
また球状粒子は樹脂粒子であることが好ましい。樹脂粒子であることで、再生電子写真用ローラを製造する際のローラの物理的ダメージを抑制することができる。
【0027】
さらに、球状粒子およびダイラタンシー性流体の溶媒の各々の比重をm、nとしたとき、m/nが0.9以上、1.0以下であることが好ましい。m/nが0.9以上である場合、球状粒子と溶媒の比重が近いため、ローラが回転する際に流体が応力を受けても、球状粒子をローラ表面近傍に効果的に存在させることができる。また、m/nが1.0以下である場合、球状粒子が自重により沈降するのを抑制することができる。
【0028】
弾性ローラに固着する成分としては結着樹脂などの一般的な現像剤に含まれるポリマーや金属化合物を挙げることができる。例えば、結着樹脂としてスチレンアクリル樹脂やポリエステル樹脂等を挙げることができる。また、その他の成分としては、着色顔料、荷電制御剤、シリカ、酸化チタン等の金属酸化物を挙げることができる。
【0029】
再生電子写真用ローラ製造装置として、図1の概略構成図に示すものを一例として挙げることができる。図1に示す再生電子写真用ローラ製造装置には、電子写真用ローラ1の軸体が接続される回転可能なモータ5、モータ5を保持する支持体6が設けられる。設置された電子写真用ローラ1は溶媒4および球状粒子3から構成されるダイラタンシー性流体2が充填された槽に浸漬される。電子写真用ローラは回転可能なモータ5によって、周方向に回転され、図2のローラ表面近傍断面図のようにダイラタンシー性流体2中の球状粒子3と電子写真用ローラ1表面との摺擦により現像剤由来の固着物の除去を行うようになっている。図2のように球状粒子3が大量に存在すると、電子写真用ローラ1が白矢印方向に回転した場合、粒子は黒矢印のように近接する粒子により移動が拘束される。そのため、電子写真用ローラ1表面に固着している現像剤由来の固着物7に対してより強いせん断力を与えることができる。また、粒子が球状であるため、強いせん断を与えても、電子写真用ローラ1表面にキズが発生するのを低減することができる。
【0030】
モータは回転数が調整可能であり、電子写真用ローラの硬度や固着している現像剤由来の固着物の量を考慮して所望の摺擦負荷を与えることが可能である。
【0031】
ローラの回転数としては、600rpm〜1200rpmが好ましい。ローラの回転数が600rpm以上の場合、現像剤由来の固着物を効果的に除去でき、1200rpm以下である場合、電子写真用ローラ表面への物理的ダメージを抑制できる。
【0032】
また、回転時間としては、60秒〜300秒が好ましく、120秒〜180秒が特に好ましい。回転時間が60秒以上である場合、現像剤由来の固着物を効果的に除去でき、300秒以下である場合、電子写真用ローラの膨潤や構成材料の溶出を抑制することができる。
【0033】
本発明において、現像剤由来の固着物除去工程の後、電子写真用ローラ表面上の球状粒子、現像剤の削りカスなどの付着物を除去する工程を付加することがより好ましい。例えば、エアーや水を吹き付けることで除去する方法がある。より好ましい形態としては、水槽中で、熱、超音波、回転などを加えて洗浄を行う、所謂水洗浄方式を用いると良い。
【0034】
上記再生電子写真用ローラの製造方法により得られる再生電子写真用ローラは電子写真プロセスを利用したローラに用いられる。具体的には、現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラ、定着ローラ、加圧ローラ、クリーニングローラ、除電ローラ、給紙ローラ、搬送ローラ、現像スリーブ用として利用でき、特に現像ローラ用として好適である。
【0035】
かかる電子写真用ローラは、軸体と、この軸体の外周に設けられた樹脂層を有するものである。また、電子写真用ローラに弾性を持たせるため、軸体と樹脂層の間に1層もしくは複数の弾性層を設けることができる。
【0036】
電子写真用ローラの軸体は、特に制限されるものではなく、中空状あるいは中実状であっても差し支えなく使用できる。また、電子写真用ローラの電極及び支持部材として機能するもので、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼の如き金属または合金;クロム、又はニッケルで鍍金処理した鉄;導電性を有する合成樹脂の如き導電性の材質で構成される。さらに、金属製の軸体に酸化処理などの防錆処理を行ったものであってもよい。また、必要に応じて表面にプライマー処理を行ってもよい。これらの大きさは限定されないが、例えば、外径4〜20mm程度、長さ240〜340mm程度である。
【0037】
本発明において、弾性層を設ける場合、従来から電子写真用ローラに用いられている種々のゴム材を用いることができ、具体的には以下のものが挙げられる。エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBRの水素化物、ウレタンゴム等。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、シリコーンゴムは柔軟性に富み、且つ、圧縮永久歪が小さい為、好ましい。シリコーンゴムとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサンや、これらのポリシロキサンの共重合体を挙げることができる。
【0038】
弾性層には、電子写真用ローラに導電性が要求される場合、イオン導電剤、電子導電剤等の導電付与剤を含有させることができる。
【0039】
イオン導電剤としては、以下のものを挙げることができる。
周期律表第I族金属の塩(LiCF3SO3、NaClO4、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、NaSCN、KSCN、NaCl等)
周期律表第II族金属の塩(Ca(ClO42、Ba(ClO42等)
アンモニウム塩(NH4Cl、(NH42SO4、NH4NO3等)
上記塩とモノオール(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル等)との錯体
陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤
等。
【0040】
また、電子導電剤としては、以下のものを挙げることができる。
炭素系物質(カーボンブラック、グラファイト等)
金属や合金(アルミニウム、銀、金、錫−鉛合金、同−ニッケル合金)
金属酸化物(酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化銀等)
更に、上記の電子導電剤に銅、ニッケル、銀等の導電性金属めっきを施した物質等も導電性付与剤として挙げることができる。
【0041】
これらイオン導電剤、電子導電剤は粉末状や繊維状の形態で、1種又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらのうちカーボンブラックは導電性の制御が容易であり、また経済的であることから好ましい。
【0042】
弾性層には、その他、上記組成の機能を阻害しない範囲で、必要に応じて架橋剤、可塑剤、充填剤、増量剤、加硫剤、加硫助剤、架橋助剤、酸化防止剤、老化防止剤、加工助剤の如き各種添加剤を含有させることができる。非導電性充填剤としては、シリカ、石英粉末、及び炭酸カルシウムを挙げることができる。架橋剤としては、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、及びジクミルパーオキサイドが挙げられる。
【0043】
軸体上に弾性層を形成する方法としては、型成形法、押出成形法、射出成形法、塗工成形法を挙げることができる。弾性層の表面は、樹脂層との密着性向上の為、表面研磨や、コロナ処理、フレーム処理、エキシマ処理の表面改質方法によって改質することもできる。
【0044】
弾性層は、電子写真用ローラに要求される弾性を有し、その硬度としては、例えば、アスカーC硬度で20度以上80度以下、厚みとして、2.0mm〜6.0mm以下を挙げることができる。
【0045】
樹脂層としては電子写真用ローラ表面を保護し、耐摩耗性を付与する表面層等を挙げることができる。かかる樹脂層の材質としては、以下のものを挙げることができる。スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、繊維素系樹脂、アクリル系樹脂の如き熱可塑性樹脂。エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂の如き熱あるいは光硬化性樹脂など。
【0046】
中でも、次のものが好ましく用いられる。離型性のあるものとしてシリコーン樹脂、フッ素樹脂など。物理的性質に優れたものとしてポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂など。
【0047】
これらは1種又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち耐摩耗性に優れることからウレタン樹脂が好ましい。
【0048】
電子写真用ローラとして表面粗度が必要な場合は、樹脂層分散液中に粗さ制御のための微粒子を添加してもよい。粗さ制御用微粒子としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂の微粒子を用いることができる。
【0049】
上記樹脂層には、必要に応じて導電性を付与することができ、導電性を付与する方法としては導電剤を含有させる方法を挙げることができる。導電剤としては、具体的には、上記弾性層に用いる導電剤として例示したものと同様のものを例示することができる。
【0050】
樹脂層には、その他、機能を阻害しない範囲で、架橋剤、可塑剤、充填剤、増量剤、加硫剤、加硫助剤、架橋助剤、酸化防止剤、老化防止剤、加工助剤、レベリング剤を含有させることができる。
【0051】
樹脂層の厚さとしては、1μm〜500μmが好ましい。樹脂層の厚さが1μm以上であれば磨耗等による劣化を抑制することができ、500μm以下であれば電子写真用ローラ表面が高硬度になるのを抑制し、現像剤の劣化を抑制し、電子写真用ローラの表面への現像剤由来の固着を抑制することができる。現像剤へのダメージを考慮すると、樹脂層の厚さは1μm〜50μmであることがより好ましい。
【0052】
樹脂層は、樹脂を含有する分散液を塗工して形成される。塗工方法としては、浸漬塗工、リング塗工、スプレー塗工又はロールコートを採用することができる。
【0053】
このような電子写真用ローラとしては、具体的には、図3(a)、及び図3(b)に示すものを一例として挙げることができる。図3(a)、及び図3(b)は電子写真用ローラの軸体に直行する方向の断面図である。図3(a)に示すように、電子写真用ローラ1は、中実状軸体8上に順次弾性層10、樹脂層11を有する。または、図3(b)に示すように、電子写真用ローラ1は、中空状軸体9上に樹脂層11を有する。弾性層、樹脂層は単層構造のみならず、多層構造を有するものであってもよい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。実施例中の各物性値等は以下の方法で測定した。
〔1.体積平均粒子径の測定〕
球状粒子について、粒度分布測定装置(商品名:UPA−UT151、日機装株式会社製)を用い、多点法にて3回測定し、平均値を体積平均粒子径とした。
〔2.粘度の測定〕
粘度の測定には、B型粘度計(商品名:BMII、東機産業株式会社製)を用いた。ダイラタンシー性流体を温度25℃で回転数6rpmおよび900rpmで回転させた時の粘度を測定した。
〔3.比重の測定〕
比重の測定には、ヘリウムによるガス置換式の測定法を用いた。測定装置は乾式自動密度計(商品名:アキュピック1340−10CC、株式会社島津製作所社製)を用いた。測定条件は、ステンレス製の内径18.0mm、長さ39.3mm,容量10cm3のセルに、測定サンプルを3g入れ、試料セル中のサンプルの容積をヘリウムの圧力変化によって測定し、求められた容積とサンプルの重さから比重を求めた。
【0055】
ダイラタンシー性流体1の製造例
攪拌機を備えた500mlのメスシリンダーに、水100質量部を投入した。攪拌下、温度25℃で粒子として体積平均粒子径0.5μm、比重2.1g/cm3の球状シリカ200質量部をメスシリンダーに投入した。さらに、回転数900rpmで30分攪拌して流体1を得た。
【0056】
得られた流体1を、B型粘度計で粘度を測定したところ、回転数が6rpmでは50Pa・s、900rpmでは550Pa・sであった。
【0057】
ダイラタンシー性流体2の製造例
球状シリカを体積平均粒子径2.0μmに変更した以外は流体1の製造例と同様にして流体2を得た。得られた流体の粘度を表1に示す。
【0058】
ダイラタンシー性流体3の製造例
球状シリカを体積平均粒子径5.0μm、300質量部に変更し、分散安定剤として、ラウリル酸ナトリウム0.5質量部を流体に添加した以外は流体1の製造例と同様にして流体3を得た。得られた流体の粘度を表1に示す。
【0059】
ダイラタンシー性流体4の製造例
球状粒子を体積平均粒子径0.7μm、比重3.9g/cm3の球状アルミナ200質量部に変更し、分散安定剤として、ポリビニルアルコール0.5質量部をダイラタンシー性流体に添加した。それ以外は流体1の製造例と同様にして流体4を得た。得られた流体の粘度を表1に示す。
【0060】
ダイラタンシー性流体5〜9の製造例
球状粒子、溶媒を表1に示すものに変更した以外はダイラタンシー流体4の製造例と同様にして流体5〜9を得た。得られた流体の粘度を表1に示す。
【0061】
ダイラタンシー性流体10の製造例
球状シリカの体積平均粒子径を2.0μmに変更し、溶媒を水50質量部、エタノール50質量部を混合した流体に変更した以外は、流体3の製造例と同様にして流体10を得た。得られた流体の粘度を表1に示す。
【0062】
ダイラタンシー性流体11及び12の製造例
球状粒子の添加量を300質量部とし、溶媒を表1に示す混合水溶液に変更した以外は、流体8の製造例と同様にして流体11及び12を得た。得られた流体の粘度を表1に示す。
【0063】
ダイラタンシー性流体13〜25の製造例
球状粒子の種類、体積平均粒子径、比重、添加量を表1に示すものとし、溶媒を表1に示すものにした。その他の条件はダイラタンシー性流体1の製造例と同様にして流体13〜25を得た。得られた流体の粘度を表1に示す。
【0064】
(電子写真用ローラの製造例)
外径6mm、長さ250mmのSUS304製の軸体にプライマー(商品名:DY35−051、東レ・ダウコーニング株式会社製)を塗布し、内径12mmの円筒状金型内に同心となるように設置した。弾性層の原料として液状シリコーンゴム材料(商品名:SE6724A/B、東レ・ダウコーニング社製)100.0質量部に対し、以下の材料を混合した付加型シリコーンゴム組成物を金型内に注入した。
・カーボンブラック(商品名:トーカブラック#7360SB、東海カーボン株式会社製) 35.0質量部
・耐熱性付与剤として シリカ粉体 0.2質量部
白金触媒 0.1質量部
温度130℃で20分加熱成型した後、金型を温度50℃まで冷却し、軸体と一体となった弾性層を金型から取り出した。次に軸体と一体となった弾性層を温度200℃で2時間加熱して硬化反応を完結させ、外径12mmの弾性層を有するローラを製造した。
【0065】
次に樹脂層の材料として、以下の2材料をメチルエチルケトン(MEK)溶媒中で段階的に混合した。
・ポリテトラメチレングリコール(商品名:PolyTHF、BASF製)100質量部
・イソシアネート(商品名:ミリオネートMT(MDI)、日本ポリウレタン工業株式会社製)14.0質量部
この溶液を窒素雰囲気下温度80℃にて3時間反応させて、ポリウレタンポリオールプレポリマーを得た。
【0066】
上記ポリウレタンポリオールプレポリマー100質量部とイソシアネート(商品名:コロネート4191、日本ポリウレタン株式会社製)41.8質量部を加えて、[NCO]/[OH]の値は1.1となるようにした。さらに、カーボンブラック(商品名:MA100、三菱化学株式会社製)を適量添加して抵抗値を調整した。
【0067】
上記原料混合液にMEKを加え固形分25質量%に調整したものにポリウレタン樹脂粒子(商品名:アートパールC400(体積平均粒子径14μm)、根上工業株式会社製)20質量部を加え、ボールミルで攪拌分散して、樹脂層用塗布液を得た。
【0068】
前記で得られた弾性層を有するローラを用い、樹脂層用塗布液で浸漬塗工することにより膜厚13μmとなるように塗布した。温度80℃のオーブンで15分乾燥後、温度140℃のオーブンで2時間硬化し、電子写真用ローラを得た。
【0069】
〔現像剤由来の固着物の形成〕
電子写真用ローラの製造例で得た電子写真用ローラを画像形成装置(商品名:Color Laser JetCP3525x:Hewlett−Packard社製)専用の電子写真プロセスカートリッジ(商品名:Color Laser Jet CE250A:Hewlett−Packard社製)に現像ローラとして組み込んだ。
温度15℃、湿度10%RHの環境に24時間放置した後、上記電子写真プロセスカートリッジを画像形成装置本体に搭載し、同環境において印字率1%で連続画像出力を行った。公称寿命後も画像出力を続け、最終的に画像に白抜けが発生する状態まで画像出力を行った。その後、温度45℃、湿度95%RHの環境下に電子写真プロセスカートリッジを2ヶ月放置した。放置後、電子写真用ローラを電子写真プロセスカートリッジから取り出し、顕微鏡で電子写真用ローラ表面を観察したところ、電子写真用ローラ表面には現像剤が固着しているのが確認された。同条件で現像剤が固着し、変形が生じている電子写真用ローラを複数本作製した。これらの電子写真用ローラをサンプルA群とした。
【0070】
〔実施例1〕
サンプルA群から1本の電子写真用ローラを選択し、図1に示す再生電子写真用ローラ製造装置に組み込んだ。
【0071】
ダイラタンシー性流体として、ダイラタンシー性流体1を用いた。流体1中に浸漬した電子写真用ローラをモータにより回転数を900rpmで180秒回転させた後、水を満たした水槽中で回転数を500rpmで180秒回転させた。回転後、水槽から取り出し、室温で24時間放置して十分乾燥させた後、再生電子写真用ローラを取り出し、以下の評価を行った。
【0072】
〔評価〕
〔表面観察〕
再生電子写真用ローラの表面状態を走査型顕微鏡にて観察した。傷や固着物が存在しなければ「A」、ローラ表面に極軽微な傷やシワもしくは極微小な固着物が確認できる程度であれば「B」、ローラ表面に明確な傷やシワが確認できる、もしくは明確に固着物を確認できる場合には「C」として、評価を行った。
【0073】
〔かぶり評価〕
表面に現像剤由来の固着物が多く発生した電子写真用ローラを用い、画像形成を行うと現像剤の帯電量が減少する。この状態でベタ白画像の形成を行うと、帯電量が不足する現像剤は感光ドラムへと移動し、更に、転写紙上へ移動する。この現象はかぶりと呼ばれる。このため、かぶりの評価を行うことで、電子写真用ローラの表面汚れ、即ち現像剤由来の固着物の有無の指標とした。以下にかぶりの評価方法を示す。
【0074】
ベタ白画像を出力し、かぶりの程度(かぶり値)を測定した。かぶり値は、反射濃度計(商品名:TC−6DS/A、東京電色社製)を用いて、画像形成前の転写紙の反射濃度と、ベタ白画像の画像形成を行った後の転写紙の反射濃度を測定し、その差分をかぶり値とした。転写紙の画像印刷領域を左上から順に1cm×1cmの領域に分割し、各領域における反射濃度を測定し、その値の最小値をその転写紙の反射濃度とした。以下の基準でかぶり評価(A〜D)を行った。ここで、下記評価「A」、「B」は目視では「かぶり」を確認できないレベルで良好な画像である。評価「C」はやや「かぶり」を確認されるが、画像上問題のないレベルの画像である。しかし、評価「D」は、目視で「かぶり」を確認できるレベルの画像であると判断した。
かぶり(反射濃度)
A:1.0未満
B:1.0以上3.0未満
C:3.0以上5.0未満
D:5.0以上
〔ベタ濃度評価〕
表面に現像剤由来の固着物が多く発生した電子写真用ローラを用い、画像形成を行うと現像剤の帯電量が減少する。この状態でベタ黒画像の形成を行うと、帯電量が不足した現像剤が正常に感光ドラムへと移動できず、画像濃度が低下する。このため、ベタ濃度の評価を行うことで、電子写真用ローラの表面汚れ、即ち現像剤由来の固着物の有無の指標とした。以下にベタ濃度の評価方法を示す。
【0075】
上記の電子写真装置を用い、気温25℃相対湿度50%RHの環境下、ベタ黒画像を出力し、紙面上の濃度を反射濃度計(商品名:GretagMacbeth RD918、マクベス社製)を用いて9点測定し、平均値を計算した。以下の基準でベタ濃度評価(A〜D)を行った。
【0076】
画像濃度(ベタ黒画像)
A:非常に良好 画像濃度が1.30以上
B:良好 画像濃度が1.25以上1.30未満
C:実用上問題なし 画像濃度が1.20以上1.25未満
D:濃度が薄い 画像濃度が1.20未満
〔実施例2〜26〕
ダイラタンシー性流体の種類を表2に示すものに変更し、電子写真用ローラの回転数、回転時間を表2の値とした。その他の条件は実施例1と同様にして、再生電子写真用ローラを作成し、実施例1と同様に評価を行った。
〔比較例1〕
ダイラタンシー性流体の種類を流体25に示すものに変更し、電子写真用ローラの回転数1200rpm、回転時間300秒とし、その他の条件は実施例1と同様にして、再生電子写真用ローラを作成し、実施例1と同様に評価を行った。
〔比較例2〕
体積平均粒子径0.5μm、比重2.1g/cm3の球状シリカで満たしたメスシリンダー内に電子写真用ローラを入れ、実施例1と同様にして、再生電子写真用ローラを作成し、実施例1と同様に評価を行った。
〔比較例3〕
水で満たしたメスシリンダー内に電子写真用ローラを入れ、電子写真用ローラの回転数1200rpm、回転時間300秒とし、その他の条件は実施例1と同様にして、再生電子写真用ローラを作成し、実施例1と同様に評価を行った。
【0077】
〔比較例4〕
再生電子写真用ローラの作成方法として、以下の条件でブラスト処理を行った。
(1)電子写真用ローラとノズルとの距離 150mm
(2)スラリー圧力 6kg/cm2
(3)ノズル径 2mm
(4)ノズル噴射量 5 L/min
(5)電子写真用ローラの回転数 120rpm
(6)ノズルの移動速度 1000mm/min
(7)ダイラタンシー性流体 流体2
また、実施例1と同様に評価を行った。室内蛍光灯の下で、目視でローラ表面を観察したところ、ローラの周方向にキズが見られた。
〔比較例5〕
ダイラタンシー性流体の種類を流体2に変更し、電子写真用ローラの回転数30rpm、回転時間300秒とし、電子写真用ローラの回転数、回転時間を表2の値とし、その他の条件は実施例1と同様にして、再生電子写真用ローラを作成し、実施例1と同様に評価を行った。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【符号の説明】
【0080】
1‥‥電子写真用ローラ
2‥‥ダイラタンシー性流体
3‥‥球状粒子
4‥‥溶媒
5‥‥モータ
6‥‥支持体
7‥‥現像剤由来の固着物
8‥‥中実状軸体
9‥‥中空状軸体
10‥‥弾性層
11‥‥樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真用ローラの表面に固着している現像剤由来の固着物を除去する工程を有する再生電子写真用ローラの製造方法であって、
該工程は、球状粒子を含むダイラタンシー性流体に浸漬した該電子写真用ローラをその周方向に回転させて該ダイラタンシー性流体を高粘性化する工程を含むことを特徴とする再生電子写真用ローラの製造方法。
【請求項2】
該ダイラタンシー性流体を構成する溶媒が、炭素数が1以上6以下の1価のアルコール、グリコール、グリコールエーテルまたはそれらの水溶液である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
該球状粒子が樹脂粒子である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
該球状粒子の比重をm、該ダイラタンシー性流体の溶媒の比重をnとしたとき、m/nが0.9以上、1.0以下である、請求項1〜3の何れかに記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−83593(P2012−83593A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230436(P2010−230436)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】