説明

再生骨材に対する評価試験を行う際の前処理方法、および再生骨材の試験方法

【課題】 再生骨材に対してASRの評価を行う際に、再生骨材の表面に付着したセメント成分を効果的に除去することができると共に、ASRの評価精度が低下してしまうのを抑制することができる前処理方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 前記再生骨材をグルコン酸ナトリウム溶液からなる前処理溶液に浸漬することで、再生骨材の表面に付着したセメント成分を除去するセメント除去工程を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物等から回収されて製造された再生骨材に対して、JIS A 1145に規定する「骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(化学法)」を適用する際の前処理方法に関する。また、該前処理方法によって処理された再生骨材に対して上記の試験方法を適用する再生骨材の試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐用年数が過ぎたコンクリート構造物等を粉砕することで発生するコンクリート塊は、その発生量が今後も大きく変化しないことが予想されている。このため、コンクリート塊の再利用率を向上させて廃棄量を減らすことが環境負荷を低減する上で必要となっている。
【0003】
現在、コンクリート塊が再利用される用途としては、舗装用の路盤材が主であり、コンクリート構造物として再利用されることは殆どない。そこで、コンクリート塊から骨材を取り出し、斯かる骨材(再生骨材)をコンクリートの原料として再利用する試みがなされている。
【0004】
該再生骨材は、コンクリート塊から取り出された後に、必要とする品質となるように、様々な処理が行われる。これにより、例えば、JISに規定する再生骨材Hのように天然の骨材に相当する品質を有するものや、簡易処理されることで得られる再生骨材M,Lのように再生骨材Hよりも品質の劣るものが製造されている。
【0005】
ところで、過去に形成されたコンクリート構造物には、アルカリシリカ反応(ASR)の評価が行われていない骨材が使用されている場合がある。このため、再生骨材をコンクリートの原料として再利用する際には、再生骨材に対してASRの評価を行い、無害と評価されたものを使用すれば、混合セメントなどのASR対策を施すことなく使用できる。ASRの評価方法としては、JIS A 1145に規定する「骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(化学法)」が一般的に用いられている(非特許文献1参照)。そして、斯かる試験方法を用いて再生骨材の評価を行う際には、通常、再生骨材を塩酸に浸漬し、再生骨材の表面に付着したセメント成分を除去した後で評価が行われている(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】JIS A 1145「骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(化学法)」
【非特許文献2】JIS A 5021「コンクリート用再生骨材H」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のように塩酸を用いて前処理を行うと、骨材自体の成分が塩酸中に溶出してしまうため、ASRの評価を正確に行うことができなくなる可能性がある。
【0008】
そこで、本発明は、再生骨材に対してASRの評価を行う際に、再生骨材の表面に付着したセメント成分を効果的に除去することができると共に、ASRの評価精度が低下してしまうのを抑制することができる前処理方法を提供することを課題とする。また、斯かる前処理方法を用いて前処理を行ってASRの評価試験を行う再生骨材の試験方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る前処理方法は、再生骨材に対してJIS A 1145に規定する「骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(化学法)」の試験を行う際の前処理方法であって、前記再生骨材をグルコン酸ナトリウム溶液からなる前処理溶液に浸漬することで、再生骨材の表面に付着したセメント成分を除去するセメント除去工程を備えることを特徴とする。
【0010】
斯かる構成によれば、再生骨材をグルコン酸ナトリウム溶液からなる前処理溶液に浸漬して前処理することで、再生骨材の表面に付着したセメント成分が除去されると共に、塩酸からなる前処理溶液を用いた場合よりも、骨材自体の成分が前処理溶液中に溶出してしまうのを抑制することができる。このため、上記の試験方法によってASRの評価を行った際に、前処理溶液の影響によって評価精度が低下してしまうのを抑制することができる。
【0011】
また、前記セメント除去工程前に再生骨材を加熱処理する加熱処理工程を備えることが好ましい。更に、前記セメント除去工程は、再生骨材が浸漬された状態の前処理溶液が所定温度に加温されることが好ましい。
【0012】
斯かる構成によれば、加熱処理工程を行うことで、骨材とセメント成分の熱膨張係数の相違によって両者に温度ひずみの差が生じ、両者の界面に剥離が生じるため、前処理溶液に再生骨材を浸漬させた際に、骨材とセメント成分との間に前処理溶液を浸透させることができる。このため、セメント成分と前処理溶液との接触面積が増加し、セメント成分の前処理溶液中への溶出を効率的に行うことができる。これにより、セメント成分を再生骨材から効果的に除去することができる。また、再生骨材が浸漬された前処理溶液を加温することで、セメント成分と前処理溶液との反応性を向上させることができる。これにより、セメント成分を再生骨材から効果的に除去することができる。
【0013】
また、前記加熱処理工程を行い、その後にセメント除去工程を行う操作を繰り返し行うことが好ましい。
【0014】
本発明に係る再生骨材の試験方法は、上記何れかの前処理方法を用いて前処理を行う前処理工程を備え、該前処理工程で処理された再生骨材をJIS A 1145に規定された「骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(化学法)」で試験することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、再生骨材に対してASRの評価を行う際に、再生骨材の表面に付着したセメント成分を効果的に除去することができると共に、ASRの評価精度が低下してしまうのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例におけるJIS法による溶解シリカ量SCおよびアルカリ濃度減少量RCの定量結果を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について参照しながら説明する。
【0018】
本実施形態に係る前処理方法は、コンクリート構造物や該コンクリート構造物を粉砕等することで発生するコンクリート塊から採取された骨材(再生骨材)に対して、ASRの評価を行う際に用いられるものである。具体的には、JIS A 1145に規定する「骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(化学法)」(以下、JIS法と記す)を用いて再生骨材のASRの評価を行う際に、再生骨材の前処理を行う方法である。
【0019】
前記再生骨材としては、再生粗骨材や再生細骨材を用いることができ、具体的には、JIS A 5021に規定される再生骨材H、JIS A 5022の附属書Aに規定される再生骨材M、またはJIS A 5023の附属書1に規定される再生骨材L等を用いることができる。また、再生骨材は、コンクリート構造物を形成する際に使用されたセメント成分が表面に付着した状態となっている。このため、JIS法を用いてASRの評価を行う際には、セメント成分を再生骨材の表面から除去することが必要となる。本実施形態に係る前処理方法は、該セメント成分を再生骨材から除去するためのものである。
【0020】
本実施形態に係る前処理方法は、再生骨材を前処理溶液に浸漬することで、再生骨材の表面に付着したセメント成分を除去するセメント除去工程を備えている。前処理溶液としては、グルコン酸ナトリウム溶液からなるものが用いられる。前処理溶液中のグルコン酸ナトリウムの含有量としては、10〜20wt%程度であることが好ましく、13〜16wt%程度であることがより好ましい。なお、再生骨材の質量に対するグルコン酸ナトリウム溶液の容積は、3L/kg以上となるのが望ましく、5L/kg以上がより望ましい。
【0021】
また、セメント除去工程では、再生骨材が浸漬された状態の前処理溶液が所定の温度に加温されることが好ましい。具体的には、再生骨材が浸漬された状態の前処理溶液が50℃以上60℃以下となるように加温されることが好ましい。また、セメント除去工程では、再生骨材が浸漬された状態の前処理溶液を揺り動かしながら所定時間セメント成分の除去が行われることが好ましい。セメント除去工程を行う時間としては、1日以上7日以下であることが好ましい。
【0022】
また、再生骨材に付着しているセメント成分の状態(付着量など)によっては、再生骨材をふるい分けし、ふるい上の再生骨材とふるい下再生骨材とを別々にしてセメント除去工程を行なってもよい。ふるい分けに用いるふるいとしては、例えば、1.2mmのものを用いることができる。
【0023】
また、本実施形態に係る前処理方法は、セメント除去工程前に再生骨材を加熱処理する加熱処理工程を備えてもよい。加熱処理工程の温度としては、250℃以上350℃以下であることが好ましく、270℃以上320℃以下であることがより好ましい。また、加熱処理を行う時間としては、前処理を行う再生骨材の量に応じて適宜設定することができるが、2時間以上加熱処理を行うことが好ましい。
【0024】
また、斯かる前処理方法は、加熱処理工程後にセメント除去工程を行う操作を繰り返し行うようにしてもよい。具体的には、加熱処理工程後の再生骨材を用いてセメント除去工程を行った後、前処理溶液から再生骨材を取り出して洗浄する。そして、再生骨材の表面のセメント成分の付着状態を目視にて確認し、セメント成分が残っている場合には、再度加熱処理工程およびセメント除去工程を行い、セメント成分が目視にて確認できなくなるまで、前処理を繰り返すことが好ましい。
【0025】
上記のような前処理方法で処理された再生骨材は、JIS法を用いてASRの評価が行われる。JIS法は、前処理後の再生骨材に対して、溶解シリカ量SCおよびアルカリ濃度減少量RCの定量を行い、得られた値の関係からASRの評価を行うものである。具体的には、溶解シリカ量SCが10mmol/L以上であり、且つ、アルカリ濃度減少量RCが700mmol/L未満である再生骨材において、SC<RCとなる再生骨材は、「無害」と判定され、逆に、SC≧RCとなる再生骨材は、「無害でない」と判定される。また、溶解シリカ量SCが10mmol/L未満であり、且つ、アルカリ濃度減少量RCが700mmol/L未満である再生骨材は、「無害」と判定される。
【0026】
以上のように、本発明に係る前処理方法によれば、再生骨材に対してASRの評価を行う際に、再生骨材の表面に付着したセメント成分を効果的に除去することができると共に、ASRの評価精度が低下してしまうのを抑制することができる。
【0027】
即ち、再生骨材をグルコン酸ナトリウム溶液からなる前処理溶液に浸漬して前処理することで、再生骨材の表面に付着したセメント成分が除去されると共に、塩酸からなる前処理溶液を用いた場合よりも、骨材自体の成分が前処理溶液中に溶出してしまうのを抑制することができる。このため、上記の試験方法によってASRの評価を行った際に、前処理溶液の影響によって評価精度が低下してしまうのを抑制することができる。
【0028】
斯かる構成によれば、加熱処理工程を行うことで、骨材とセメント成分の熱膨張係数の相違によって両者に温度ひずみの差が生じ、両者の界面に剥離が生じる。この界面の剥離によって、前処理溶液に再生骨材を浸漬させた際に、骨材とセメント成分との間に前処理溶液を浸透させることができる。このため、セメント成分と前処理溶液との接触面積が増加し、セメント成分の前処理溶液中への溶出を効率的に行うことができる。これにより、セメント成分を再生骨材から効果的に除去することができる。また、再生骨材が浸漬された前処理溶液を加温することで、セメント成分と前処理溶液との反応性を向上させることができる。これにより、セメント成分を再生骨材から効果的に除去することができる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0030】
<実施例>
1.前処理
(1)加熱処理工程
下記表1に記載の各原細骨材(コンクリート構造物に使用される前のもの)と同一の原細骨材を用いて形成されたコンクリート構造物から採取された各再生細骨材のそれぞれに対し、加熱処理工程を行った。具体的には、再生細骨材約5kgをステンレス製の容器に入れ、加熱装置内で300℃で2時間、加熱処理を行った。その後、加熱処理後の再生細骨材を常温まで冷却した。
【0031】
(2)セメント除去工程
前処理溶液(15wt%グルコン酸ナトリウム溶液)8.5Lが入った3個の容器内に、加熱処理工程で得られた再生細骨材を等量に分けて入れ、再生細骨材を前処理溶液に浸漬させた。そして、再生細骨材が入った容器を振動装置(宮本理研工業社製 溶出振とう試験装置 MW−YS)上に配置し、容器内の温度が55±5℃となるように加温しつつ1日間揺れ動かしながら(振れ幅:50mm、振動数:130回/min)放置した。その後、容器内から再生細骨材を取り出して洗浄し、乾燥させた。
【0032】
2.ASRの評価
前処理後の各再生細骨材に対して、JIS法に基づいて溶解シリカ量SCおよびアルカリ濃度減少量RCの定量を行った。各再生細骨材における溶解シリカ量SCおよびアルカリ濃度減少量RCの定量結果は、図1のグラフに示す通りである。
【0033】
<比較例>
前処理溶液として5wt%塩酸溶液を用いたこと以外は、実施例と同様の方法で前処理を行い、前処理後の再生細骨材を用いてASRの評価を行った。各再生細骨材における溶解シリカ量SCおよびアルカリ濃度減少量RCの定量結果は、図1のグラフに示す通りである。
【0034】
<参考例>
表1に記載の各原細骨材に対して、前処理を行うことなくJIS法に基づく溶解シリカ量SCおよびアルカリ濃度減少量RCの定量を行った。各原細骨材における溶解シリカ量SCおよびアルカリ濃度減少量RCの定量結果は、図1のグラフに示す通りである。
【0035】
【表1】

【0036】
<まとめ>
図1のグラフを見ると、比較例よりも実施例の方が参考例の結果に近いものとなっていることが認められる。また、比較例が実施例よりも「無害でない」領域側に位置していることが認められる。
つまり、塩酸溶液を用いて前処理を行うことで、溶解シリカ量SCおよびアルカリ濃度減少量RCが本来の定量結果よりも「無害でない」領域側にシフトしてしまうことが認められる。このため、塩酸溶液を用いた前処理では、本来は「無害」と判定されるべき再生細骨材が「無害でない」と判定される虞があり、ASRの評価精度が低くなる。
これに対し、グルコン酸ナトリウム溶液を用いて前処理を行うことで、原細骨材に対して前処理を行うことなくJIS法を用いた場合と同等の評価結果を得ることができ、ASRの評価精度が塩酸溶液を用いた場合より高いものとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生骨材に対してJIS A 1145に規定する「骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(化学法)」の試験を行う際の前処理方法であって、
前記再生骨材をグルコン酸ナトリウム溶液からなる前処理溶液に浸漬することで、再生骨材の表面に付着したセメント成分を除去するセメント除去工程を備えることを特徴とする前処理方法。
【請求項2】
前記セメント除去工程前に再生骨材を加熱処理する加熱処理工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の前処理方法。
【請求項3】
前記セメント除去工程は、再生骨材が浸漬された状態の前処理溶液が所定温度に加温されることを特徴とする請求項1又は2に記載の前処理方法。
【請求項4】
前記加熱処理工程を行い、その後にセメント除去工程を行う操作を繰り返し行うことを特徴とする請求項2又は3に記載の前処理方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の前処理方法を用いて前処理を行う前処理工程を備え、該前処理工程で処理された再生骨材をJIS A 1145に規定された「骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(化学法)」で試験することを特徴とする再生骨材の試験方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−215384(P2012−215384A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78891(P2011−78891)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【出願人】(594018267)株式会社中研コンサルタント (10)
【Fターム(参考)】