説明

再発性癌の処置のための方法および組成物

本発明は、個体における再発性癌(例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌、または卵管癌)を処置する方法を提供し、この方法は、タキサンおよびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含んでいる組成物(例えばNab−パクリタキセルまたはAbraxane(登録商標))の有効量をこの個体に投与することを包含する。本発明はまた、個体において、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌を処置する方法であって、該個体に対して:a)タキサンおよびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量と、b)白金ベースの作用物質の有効量とを投与することを包含する方法もまた提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
本願は、2007年6月1日に出願した米国仮特許出願第60/932,750号に対する優先権を主張する。米国仮特許出願第60/932,750号の内容は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、再発性癌、特に、再発性の卵巣癌の処置のための方法および組成物に関連しており、この方法は、タキサンおよびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の投与を包含する。
【背景技術】
【0003】
背景
卵巣癌は卵巣(卵子または卵が形成される雌性生殖腺の対のうちの1方)の組織中で生じる。ほとんどの卵巣癌は卵巣上皮癌(卵巣の表面上の細胞中で始まるガン)または悪性胚細胞腫瘍(卵細胞で始まるガン)のいずれかである。国立ガン研究所(National Cancer Institute)によれば、卵巣癌は7番目に多いガンであって、2006年には新しい症例は20,180と推定されたが、死亡は4番目であって、2006年には15,310の死亡例と見積もられている。
【0004】
家族歴を有する女性の間でのこのガンの頻度が増大していること、および、ガンが疑われる常染色体優性遺伝と適合したパターンをもち、家族の構成員に卵巣癌の罹患が多発しているまれな家族を観察することから、卵巣癌リスクに遺伝的な寄与がある可能性が示されている。家族について本格的に研究すること(連鎖解析)で卵巣癌に対する常染色体優性の素因の存在が引き続き証明されており、ガンになりやすい多くの家系で遺伝性のガンリスクの原因として浸透率の高い遺伝子の特定がいくつか得られている。これらの遺伝子における変異は、一般的な集団ではまれであり、かつ卵巣癌症例全体のうち5%〜10%以下と見積もられている。
【0005】
生殖要因、個体群統計学的要因、およびライフスタイルの要因は、卵巣癌のリスクに影響するが、単独で最も大きい卵巣癌の危険因子は、その疾患の家族歴である。15の公開された研究についての大規模なメタアナリシスによって、卵巣癌を有する少なくとも第一度近親者の関連する卵巣癌のリスクについて3.1というオッズ比(OR)が見積もられた。
【0006】
近年の改良に関わらず、最初のまたは第一選択の化学療法は、卵巣癌を有する患者のうち70%超で寛解することができない。さらに第一選択の化学療法を受けた後、寛解を達成する女性のうちほぼ40〜50%が3年以内にガンの再発を経験する。再発性の卵巣、腹膜または卵管の癌を有する患者は一般に、現在の治療では転帰が劣る。再発性の卵巣癌を有する患者の有効な処置方法が必要である。好ましくは、この処置は、現在の薬物および移植処置の欠点、例えば、薬物が溶解される溶媒/サーファクタントに起因する過敏症反応を克服する。
【0007】
多くの抗増殖剤が、過敏症反応を生じる溶媒/サーファクタントで溶解される。水溶性を増強し、これによって毒性の可能性がある溶媒/サーファクタントの必要性を省く水溶性のプロドラッグおよび高い親水性の基を有する抗増殖性剤の誘導体の開発には多くの労力が投資されている。抗増殖性剤の水溶性が劣ることに関連する問題に取り組むための別のアプローチは、ナノ粒子、水中油型エマルジョンおよびリポソームなどの種々の処方物の開発である。例えば、Abraxane(登録商標)は、パクリタキセルおよびアルブミンのナノ粒子組成物である。実質的に水溶性が劣る薬物のナノ粒子組成物およびその使用は、例えば、特許文献1;特許文献2;特許文献3;および特許文献4;特許文献5:および特許文献6、特許文献7、特許文献8および特許文献9に開示されている。再発性の卵巣癌を有する患者に対するAbraxane(登録商標)の投与は、非特許文献1に記載されている。
【0008】
本明細書に引用される全ての刊行物、特許、特許出願および公開特許出願の開示は、その全体が参照によって本明細書に援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,916,596号明細書
【特許文献2】米国特許第6,096,331号明細書
【特許文献3】米国特許第6,749,868号明細書
【特許文献4】米国特許第6,537,579号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0199425号明細書
【特許文献6】国際公開第98/14174号パンフレット
【特許文献7】国際公開第99/00113号パンフレット
【特許文献8】国際公開第07/027941号パンフレット
【特許文献9】国際公開第07/027819号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Midaら、Gynecologic Oncology,100:437〜438(2006)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の簡単な概要
本発明は、タキサンおよびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含んでいる組成物(本明細書において以降では「タキサンナノ粒子組成物」と呼ばれる)を投与することによる再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌)の処置のための方法を提供する。ある実施形態では、個体において再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣、腹膜または卵管の癌)を処置するための方法が提供され、この方法は、この個体に対して、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量を投与することを包含する。ある実施形態ではこの再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)は、白金感受性である。ある実施形態では、この再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)は白金耐性である。ある実施形態では、この再発癌は再発性の肺癌である。
【0012】
ある実施形態では、この再発性癌とは再発性の婦人科癌である。ある実施形態では、この再発性の婦人科癌とは、再発性の卵管癌(例えば、再発性の上皮性卵巣癌)である。ある実施形態では、この再発性の婦人科癌は再発性の腹膜癌である。ある実施形態では、この再発性の婦人科癌は再発性の卵管癌(例えば、乳頭漿液性腺癌、肉腫および移行上皮癌など)。他の再発性の婦人科癌、例えば、再発性の悪性混合ミューラー腫瘍および漿液性エンド(serous endo)も処置され得る。
【0013】
ある実施形態では、個体とは、約40〜約85歳、例えば約60〜約70歳などの女性である。ある実施形態では、この個体は、タキサンナノ粒子組成物の投与の前に0〜2(例えば、0、1または2のうちのいずれか)というEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンス・ステータスを有する。ある実施形態では、この個体は、事前の癌治療(例えば、化学療法)を受けており、かつ事前の化学療法の完了から約3、6または9カ月のいずれかより長い無処置間隔(treatment free interval)がある。ある実施形態では、この個体は、事前の癌治療(例えば、化学療法)を受けており、かつ事前の化学療法の完了から約12、18、24、36または48カ月のいずれかより長い無処置間隔がある。ある実施形態では、この事前の化学療法はタキサンとは異なる作用機序を有する。ある実施形態では、この個体は、タキサンナノ粒子組成物の投与の前に白金ベースの作用物質(platinum−based agent;単数または複数)で処置されているだけである。ある実施形態では、この個体は、タキサンナノ粒子組成物の投与の前に1投与レジメンで処置されているだけである。ある実施形態では、この個体は、タキサンベースの治療で以前には処置されていない。
【0014】
ある実施形態では、この個体は、事前の癌治療(例えば、化学療法)を受けており、かつ本明細書に記載された方法の開始の前に約3、6または9カ月のいずれかより長い無処置間隔がある。ある実施形態では、この個体は、事前の癌治療(例えば、化学療法)を受けており、かつ本明細書に記載される方法の開始の前に約12、18、24、36または48カ月のいずれかより長い無処置間隔がある。ある実施形態では、この個体は、本明細書に記載される方法の開始の前(例えば、本明細書に記載の方法の開始の前12、9、6、5、4、3、2または1カ月内)に過敏症(例えば、神経障害)の症状を示していない。ある実施形態では、この個体は、本明細書に記載される方法での処置期間を通じて過敏症の症状を示さない。ある実施形態では、この個体は、本明細書に記載される方法での処置の完了の際に過敏症の症状を示さない。
【0015】
ある実施形態では、本発明の方法が再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌の処置に関している場合、この個体は、卵巣、腹膜または卵管の癌を組織学的にまたは細胞学的に有することが確認されていてもよい。ある実施形態では、この個体は、RECIST(固形腫瘍での応答評価基準:Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)に基づいて卵巣、腹膜または卵管の癌を有することが確認される。ある実施形態では、この個体は、Cancer Antigen125(ガン抗原125)の血液の値が上昇している(CA−125、例えば、約40、50、60、70、80または90単位/mlより大きいか、または正常なCA−125の値の上限よりも約2×、3×、4×倍大きいCA−125の値)。ある実施形態では、この個体は、卵巣癌、腹膜癌または卵管癌の指標であるマーカー値が変化している。
【0016】
ある実施形態では、この個体は、上記の基準のうち少なくとも2つを満たす。例えば、ある実施形態では、この個体は、RECISTおよびCA−125の血液値の上昇によって測定可能な疾患を有する。ある実施形態では、この個体は組織学的にまたは細胞学的に卵巣癌を有することが確認されており、かつ上記のナノ粒子組成物の投与前には白金ベースの作用物質(単数または複数)で処置されているだけである。ある実施形態では、この個体は、上記の基準のうち少なくとも2、3、4、5またはそれより多くのいずれかを満たす。ある実施形態では、この個体は、上記の基準の全てを満たす。
【0017】
ある実施形態では、再発性癌(例えば、再発性の卵巣癌)は白金感受性である。例えば、ある実施形態では、個体は事前の白金ベースの化学療法を受けており、かつその白金ベースの化学療法の完了から約3、6または9カ月のいずれかよりも長い無処置期間がある。ある実施形態では、この個体は、事前の白金ベースの化学療法を受けており、かつその白金ベースの化学療法の完了から約12、18、24、36または48カ月のいずれかよりも長い無処置期間がある。白金ベースの化学療法としては限定はしないが、カルボプラチン、シスプラチンおよびオキサリプラチンでの処置が挙げられる。ある実施形態では、この白金ベースの化学療法は、カルボプラチンでの処置である。
【0018】
本明細書に記載される方法は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量を個体に投与することを包含する。ある実施形態では、このタキサンナノ粒子組成物は、別の化学療法剤(例えば、白金ベースの作用物質)と組み合わせて投与される。例えば、タキサンナノ粒子組成物および他の化学療法剤(例えば、白金ベースの作用物質)は、連続的に、同時にまたは一緒に投与されてもよい。ある実施形態では、他の化学療法剤(例えば、白金ベースの作用物質)は、タキサンおよびキャリアタンパク質を含むナノ粒子と同じ組成物中で投与される。他の化学療法剤(例えば、白金ベースの作用物質)も本明細書に記載のようにナノ粒子組成物中に処方されてもよい。
【0019】
ある実施形態では、個体において再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)を処置する方法であって、この個体に対して:a)タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量と、b)白金ベースの作用物質の有効量とを投与することを包含する方法が提供される。ある実施形態では、個体において再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)を処置する方法であって、この個体に対して:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子を含んでいる組成物(例えば、Abraxane(登録商標))の有効量と、b)白金ベースの作用物質の有効量とを投与することを包含する方法が提供される。適切な白金ベースの作用物質としては限定はしないが、カルボプラチン、シスプラチン、およびオキサリプラチンが挙げられる。ある実施形態では、この白金ベースの作用物質はカルボプラチンである。ある実施形態では、このタキサンナノ粒子組成物および白金ベースの作用物質は、同時に投与される。ある実施形態では、このタキサンナノ粒子組成物および白金ベースの作用物質は連続して投与される。ある実施形態では、このタキサンナノ粒子組成物および白金ベースの作用物質は一緒に投与される。
【0020】
ある実施形態では、個体において再発性の卵巣癌を処置する方法であって、この個体に対して:a)タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量と、b)白金ベースの作用物質の有効量とを投与することを包含する方法が提供される。ある実施形態では、個体において原発性の腹膜癌を処置する方法であって、この個体に対して:a)タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量と、b)白金ベースの作用物質の有効量とを投与することを包含する方法が提供される。
【0021】
ある実施形態では、個体において再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)を処置する方法であって、この個体に対して:a)タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量と、b)白金ベースの作用物質の有効量とを投与することを包含する方法であって、ここでこのタキサンナノ粒子組成物および白金ベースの作用物質が一緒に投与される方法が提供される。ある実施形態では、個体において再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)を処置する方法であって、この個体に対して:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子を含んでいる組成物(例えば、Abraxane(登録商標))の有効量と、b)白金ベースの作用物質の有効量とを投与することを包含する方法であって、ここでこのパクリタキセルナノ粒子組成物および白金ベースの作用物質が一緒に投与される方法が提供される。
【0022】
ある実施形態では、個体において再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)を処置する方法であって、この個体に対して:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子を含んでいる組成物(例えば、Abraxane(登録商標))の有効量であって、この組成物中のパクリタキセルの量が少なくとも約40mg/m(例えば、約50mg/m、60mg/m、70mg/m、80mg/m、90mg/m、100mg/m、150mg/m、または200mg/mのいずれかを含む)である有効量と、b)白金ベースの作用物質の有効量(例えば、AUC3、AUC4、またはAUC6の量の白金ベースの作用物質)とを投与する(例えば、静脈内にまたは腹腔内に)ことを包含する方法であって、ここでこのタキサンナノ粒子組成物および白金ベースの作用物質が一緒に投与される方法が提供される。ある実施形態では、この方法は、4週間のうち3週、約100mg/mで、パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子を含んでいる組成物(例えば、Abraxane(登録商標))と、4週ごとに白金ベースの作用物質(例えば、カルボプラチン)AUC6とを同じ処置サイクルで投与することを包含する。ある実施形態では、この方法は、4週間のうち3週、約100mg/mで、パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子を含んでいる組成物(例えば、Abraxane(登録商標))と、4週ごとに白金ベースの作用物質(例えば、カルボプラチン)AUC5とを同じ処置サイクルで投与することを包含する。ある実施形態では、この方法は、同じ処置サイクルで、パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子を含んでいる組成物(例えば、Abraxane(登録商標))を約100mg/mで、4週間のうち3週静脈内投与することと、白金ベースの作用物質(例えば、カルボプラチン)AUC5を4週ごとに静脈内投与することとを包含する。ある実施形態では、この個体は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くの任意の回数のこのような処置サイクルで処置される。
【0023】
ある実施形態では、再発性の卵巣癌を処置する方法であって、同じ処置サイクルで、パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子を含んでいる組成物(例えば、Abraxane(登録商標))を約100mg/mで、4週間のうち3週静脈内投与することと、白金ベースの作用物質(例えば、カルボプラチン)AUC5(またはAUC6)を4週ごとに静脈内投与することとを投与することを包含する方法が提供される。ある実施形態では、原発性の腹膜癌を処置する方法であって、同じ処置サイクルで、パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子を含んでいる組成物(例えば、Abraxane(登録商標))を約100mg/mで、4週間のうち3週静脈内投与することと、白金ベースの作用物質(例えば、カルボプラチン)AUC5(またはAUC6)を4週ごとに静脈内投与することとを包含する方法が提供される。ある実施形態では、この個体は少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くの任意の回数のこのような処置サイクルで処置される。
【0024】
ある実施形態では、このタキサンナノ粒子組成物は、白金ベースの作用物質とともに投与されず、すなわち、このタキサンナノ粒子組成物は、単独療法投薬レジメンで投与されるか、または白金ベースの作用物質以外の化学療法剤と組み合わせて投与される。ある実施形態では、白金ベースの作用物質は、個体がタキサンナノ粒子組成物の1回以上の投与を受けている期間内にはこの個体に投与されない。ある実施形態では、この個体は、タキサンナノ粒子組成物の投与と一緒に白金ベースの作用物質で処置されることはない。
【0025】
ある実施形態では、このタキサンナノ粒子組成物は、単独で投与されてもよく、すなわち、このタキサンナノ粒子は単独療法投薬レジメンで投与される。例えば、ある実施形態では、単独で投与されるタキサンナノ粒子組成物の量は、その個体において完全寛解を生じるのに十分である。ある実施形態では、単独で投与されるタキサンナノ粒子組成物の量は、その個体で部分反応を生じるのに十分である。ある実施形態では、単独で投与されるタキサンナノ粒子の量は、そのタキサンナノ粒子で処置された個体の集団のうち約40%、50%、60%、または64%のいずれかを超える全奏功率を得るのに十分である。ある実施形態では、単独で投与されるタキサンナノ粒子組成物の量は、そのタキサンナノ粒子組成物で処置された個体の集団のうち約50%、60%、70%、または77%のいずれかを超える臨床的有益性を得るのに十分である。
【0026】
本明細書に記載されるタキサンナノ粒子組成物は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含む。ある実施形態では、このタキサンはパクリタキセル、ドセタキセル、オルタタキセルまたはIDN5390である。ある実施形態では、このキャリアタンパク質は、アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミンである。ある実施形態では、タキサンナノ粒子組成物におけるタキサンに対するキャリアタンパク質の重量比は、約18:1未満(例えば、約15:1、12:1、10:1、例えば9:1未満のいずれかを含む)である。
【0027】
ある実施形態では、このナノ粒子は、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むコーティングでコーティングされたタキサンを含む。ある実施形態では、このコーティングは、本質的にキャリアタンパク質からなるか、またはキャリアタンパク質からなる。ある実施形態では、タキサンナノ粒子組成物のナノ粒子部分におけるキャリアタンパク質の少なくとも一部が架橋されている(例えば、ジスルフィド結合によって架橋される)。ある実施形態では、この組成物のナノ粒子は架橋されるキャリアタンパク質の少なくとも5%(例えば、少なくとも10%、15%、20%、または25%のいずれかをなど)を含む。
【0028】
ある実施形態では、組成物中のナノ粒子の平均(averageまたはmean)直径は、約200nm以下である。ある実施形態では、この粒子の平均直径は、約20nm〜約400nm(例えば、約40nm〜約200nm)である。ある実施形態では、このナノ粒子は、除菌ろ過可能である。ある実施形態では、このナノ粒子中のタキサンは非結晶性である。ある実施形態では、このナノ粒子は実質的にポリマーコア物質を含まない。ある実施形態では、このナノ粒子は実質的にポリマー物質(例えば、ポリマーマトリクス)を含まないタキサンのコアを含む。ある実施形態では、この組成物中のナノ粒子は、固形のコアを有する。ある実施形態では、この組成物中のナノ粒子は、水性でないコア(すなわち、水性以外のコア)を有する。ある実施形態では、この組成物のナノ粒子は実質的に脂質を含まない。ある実施形態では、この組成物のナノ粒子は脂質を含まない。
【0029】
ある実施形態では、この組成物は、約50%を超える(例えば、約60%、70%、80%、90%または95%のいずれかを超える)のタキサンをナノ粒子形態で含む。ある実施形態では、タキサンナノ粒子組成物のナノ粒子部分におけるタキサンの重量割合は、その組成物のナノ粒子部分の総重量のうち少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%または95%のいずれかである。
【0030】
ある実施形態では、この組成物は、少なくともほぼ3週ごとに1回、2週ごとに1回、1週に1回、1週に2回、1週に3回、1週に4回、1週に5回、1週に6回、または毎日のうちのいずれかで投与される。他の例示的な投薬頻度としては、限定はしないが、毎週、3週に2回;毎週、4週間のうち3週;および毎週、5週に4回が挙げられる。ある実施形態では、この組成物は、少なくともほぼ1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、12カ月またはそれより多くの月数にわたって投与される(投与サイクル中の中断は有無がある)。
【0031】
ある実施形態では、この組成物は、静脈内、腹腔内、口腔または吸入の経路のいずれかを介して投与される。ある実施形態では、このナノ粒子組成物は、前投薬とともに投与される。ある実施形態では、このナノ粒子組成物は、前投薬なしで投与される。
【0032】
ナノ粒子組成物中のタキサンの用量は、処置されるガンの種類、ガンの重篤度および経過、個体の臨床歴、および担当医の判断に依存するであろう。タキサンナノ粒子組成物中のタキサンの適切な投薬量としては、限定はしないが、約50mg/m、約60mg/m、約75mg/m、約80mg/m、約90mg/m、約100mg/m、約120mg/m、約125mg/m、約150mg/m、約160mg/m、約180mg/m、約200mg/m、約210mg/m、約220mg/m、約230mg/m、約240mg/m、約260mg/m、および約300mg/mが挙げられる。タキサンナノ粒子組成物(例えば、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物、例えば、Abraxane(登録商標))の投与のための例示的な投薬スケジュールとしては限定はしないが、260mg/m、3週ごと;60〜150mg/m、毎週、中断なし、および60〜150mg/m、毎週、4週間のうち3週が挙げられる。さらに、タキサンは、本明細書に記載の以下のメトロノミック(メトロノーム様)投薬レジメンに従って投与されてもよい。ある実施形態では、本発明の方法は、3週ごとに30分のIV注入によって260mg/mでAbraxane(登録商標)を投与することを包含する。
【0033】
また本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される方法に適切である組成物、キットおよび単位剤形である。例えば、ある実施形態では、再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌および卵管癌)の処置における使用のための組成物が提供され、ここで、この組成物は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含んでいるナノ粒子を含む。ある実施形態では、再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌および卵管癌)から生じる1つ以上の症状を軽減するのにおける使用のための組成物が提供され、ここでこの組成物は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含んでいるナノ粒子を含む。ある実施形態では、再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌および卵管癌)の処置における、白金ベースの作用物質と組み合わせた使用のための組成物が提供され、ここでこの組成物は、タキサン(例えば、パクリタキセル)を含んでいるナノ粒子を含み、ここでこの組成物は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含んでいるナノ粒子を含む。ある実施形態では、再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌および卵管癌)から生じる1つ以上の症状を軽減するのにおける、白金ベースの作用物質と組み合わせた使用のための組成物が提供され、ここでこの組成物は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含んでいるナノ粒子を含む。
【0034】
本発明のこれらおよび他の局面および利点は、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。本明細書に記載される種々の実施形態の特性のうち1つ、いくつかまたは全てが本発明の他の実施形態を形成するために組み合されてもよいということが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1A】図1Aは、生存の割合(y軸)に対して月数(x軸)に関してプロットした患者間の全生存を示す。
【図1B】図1Bは、無増悪の割合(y軸)に対して月数(x軸)に関してプロットした患者間の無増悪生存を示す。
【図2】図2は、Nab−パクリタキセルが腹腔内にまたは静脈内に投与されるときのパクリタキセルの血漿の値の比較を示す(対数−対数)。
【図3】図3は、Nab−パクリタキセルが腹腔内にまたは静脈内に投与されるときのパクリタキセルの血漿の値の比較を示す(対数−直線)。
【発明を実施するための形態】
【0036】
発明の詳細な説明
本発明は、再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌)の処置のための方法を提供し、この方法は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含する。詳細には、本発明者らは、タキサンおよびキャリアタンパク質(本明細書において以降では、「タキサンナノ粒子組成物」と命名する)を含むナノ粒子を含んでいる組成物、特にパクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子を含んでいる組成物、さらに詳細には、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセルを含む組成物(「Nab−パクリタキセル」)が、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌を含む白金感受性の再発性の婦人科の癌を有する患者において、単剤として、または白金ベースの作用物質(カルボプラチン)と組み合わせて極めて活性であったことを示している。処置の全奏功率は64%であって、臨床的有益性の率は77%であった。完全寛解はAbraxane(登録商標)およびカルボプラチンで処置した約70%の患者で得られた。これによって、白金感受性再発性癌、特に再発性の婦人科癌を処置するためにタキサンナノ粒子組成物が特に適している(単剤でまたは白金ベースの作用物質を組み合わせていずれかで)ことが示される。
【0037】
従って、本発明は一局面では、白金感受性の再発性癌を処置する方法であって、個体に対してタキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物(例えば、Nab−パクリタキセルまたはAbraxane(登録商標))の有効量を投与することを包含する方法を提供する。別の局面では、再発性の卵巣癌(例えば、白金感受性再発卵巣癌)を処置する方法であって、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物(例えば、Nab−パクリタキセルまたはAbraxane(登録商標))の有効量を個体に対して投与することを包含する方法が提供される。
【0038】
定義
本明細書において用いる場合、「組成物(単数または複数)」とは、本発明の組成物を含み、かつ本発明の組成物に対して適用可能である。本発明はまた、本明細書に記載の成分を含む薬学的組成物を提供する。
【0039】
本明細書において「タキサン」という言及は、タキサンまたはその誘導体に当てはまり、従って、本発明は、これらのバリエーションの全てを考慮しかつ包含する。「タキサン」という言及は、説明を簡略にするためであって、かつ例示的である。タキサンとしては限定はしないが、構造的に類似であるかまたは同じ一般的な化学の分類である化合物、例えば、パクリタキセル(すなわち、タキソール)、ドセタキセル(すなわち、タキソテール)、またはオルタタキセル(ortataxel)ならびにパクリタキセル、ドセタキセル、およびオルタタキセルの薬学的に受容可能な塩、誘導体またはアナログが挙げられる。タキサンはチューブリン二量体からの微小管のアセンブリおよび安定化を促進することによって細胞複製を阻害する抗菌剤である
【0040】
他に明示しない限り、本明細書において「個体」とは、ヒトをいう。
【0041】
本明細書において用いる場合、「処置」または「処置する」とは臨床的結果を含む有益な結果または所望の結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のために、有益または所望される臨床結果としては、限定はしないが、以下の1つ以上が挙げられる:疾患から生じる1つ以上の症状の軽減、疾患の程度の低減、疾患の安定化(例えば、その疾患の悪化の防止または遅延)、疾患の進行の遅延もしくは緩徐化、疾患状態を改善すること、疾患を処置するために必要な1つ以上の他の医薬の用量を減量すること、クオリティー・オブ・ライフの向上、および/または生存(全生存および無増悪生存を含む の延長。ある実施形態では、この組成物は、ガンに関連する1つ以上の症状の重篤度を、同じ被験体の処置の前における対応する症状に比較して、またはその組成物を投与されていない他の被験体における対応する症状に比較して、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%のいずれかまで軽減する。また、「処置」によって包含されるのは、ガンの病理学的結果の低減である。本発明の方法は、処置のこれらの局面のうち任意の1つ以上を考慮する。
【0042】
本明細書において用いる場合、ガンの発達を「遅延する」とは、その疾患の発達を、延期する、邪魔する、ゆっくりさせる、遅らせる、安定にする、および/または延ばすことを意味する。この遅延は、疾患の歴史、および/または処置されている個体によって、種々の長さであり得る。当業者には明確であるとおり、十分なまたは有意な遅延とは、個体が疾患を発達させないという点で、事実上、予防を包含してもよい。ガンの発達を「遅延する」方法とは、その方法を用いない場合に比較して、所定の時間枠で疾患の発達の可能性を減じるか、および/または所定の時間枠でその疾患の程度を軽減する方法である。このような比較は代表的には、被験体の統計学的に有意な数を用いる、臨床研究に基づく。ガン発達は、標準的な方法、例えば、慣用的な健康診断またはX線を用いて検出可能であり得る。発達とはまた、最初は検出不能であり得る疾患進行を指し、発生および出現を包含してもよい。
【0043】
「補助療法」とは、個体が、卵巣癌の病歴を有していたことがあり、かつ一般に(ただし必須ではない)治療に反応性になる臨床設定を指し、これには限定はしないが、手術(例えば、外科的切除)、放射線療法、および化学療法が挙げられる。しかし、ガンの既往のせいで、これらの個体は、疾患の発達のリスクがあると考えられる。「補助療法」における処置または投与とは、引き続く処置方式を指す。リスクの程度(すなわち、補助療法中の個体が「高リスク」、または「低リスク」とみなされるとき)は、いくつかの要因、最も通常には最初に処置される疾患の程度に依存する。
【0044】
「ネオアジュバント療法」とは、その方法が一次療法/根治療法の前に行われる臨床治療法をいう。
【0045】
本明細書において用いる場合、「リスクのある」個体とは、ガンを発症するリスクのある個体である。「リスクのある」個体は、検出可能な疾患を有してもよいし、有さなくてもよく、本明細書に記載される処置方法の前に、示された検出可能な疾患を有してもよいし、有さなくてもよい。「リスクのある」とは、ある個体が、ガンの発達と相関する測定可能なパラメーターであって、本明細書に記載されている、1つ以上のいわゆる危険因子(リスクファクター)を有していることを意味する。これらの危険因子のうちの1つ以上を有する個体は、これらの危険因子(単数または複数)なしの個体よりもガンを発症する確率が高い。
【0046】
本明細書において用いる場合、「薬学的に活性な化合物」とは、所望の効果、例えば、ガンを処置すること、安定化すること、予防すること、および/または遅延することを誘導する化合物を意味する。
【0047】
本明細書において用いる場合、「併用療法」とは、ガンを処置すること、安定化すること、予防すること、および/または遅延することのために有用な二次的治療(例えば、手術または治療剤)と組み合わせて、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含んでいるナノ粒子を包含する第一の治療を意味する。別の化合物と「組み合わせた」投与とは、同じまたは異なる化合物(単数または複数)中で、連続、同時または一緒のいずれかの投与を包含する。ある実施形態では、この併用療法は必要に応じて、1つ以上の薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤、薬学的に活性でない化合物および/または不活性物質を包含する。
【0048】
「有効量」という用語は、患者のガンを治療するために有効な薬物の量を指す。有効量の薬物により、癌細胞の数を減少し;腫瘍の大きさを小さくし;末梢器官への癌細胞の浸潤を阻害し(すなわち、ある程度遅らせ、好ましくは止める);腫瘍の転移を阻害する(すなわち、ある程度遅らせ、好ましくは止める);ある程度まで腫瘍の成長を阻害し;および/またはガン関連の症状の1つ以上をある程度まで軽減し得る。薬剤が、既存の癌細胞の成長を妨げるかおよび/または殺傷するという意味において、これは細胞増殖抑制性および/または細胞障害性であるといえる。有効量により、無増悪生存期間が延長し(例えば、固形腫瘍のための応答評価基準であるRECIST(Response Evaluation Criteria for Solid Tumors)またはCA−125変化により測定される)、他覚的応答(部分反応または完全寛解を含む)が生じ、全生存期間が延長し、および/またはガンの1つ以上の症状が改善(例えば、FOSIにより評価される)し得る。
【0049】
当該分野で理解されるとおり、「有効量」とは、1つ以上の用量であってもよく、すなわち、所望の処置の指標を達成するためには単一用量が必要な場合、または複数用量が必要な場合がある。有効量とは、1つ以上の治療剤を投与する状況で考慮される場合があり、そしてナノ粒子組成物(例えば、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質を含む組成物)は、1つ以上の他の剤と組み合わせた場合、所望のもしくは利益のある結果があるか、または達成され得る有効量で与えられるように考慮される場合がある。
【0050】
ある実施形態では、この組成物の量は、同じ被験体の処置の前における対応する腫瘍の大きさ、ガン細胞の数、もしくは腫瘍増殖速度に比較して、またはその処置を受けていない他の被験体における対応する活性に比較して、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%のいずれかまで腫瘍の大きさを減少するか、ガン細胞の数を減少するか、または腫瘍の増殖速度を減少するのに十分な量である。精製された酵素でのインビトロアッセイ、細胞ベースのアッセイ、動物モデルまたはヒト試験など標準的な方法が、この効果の大きさを測定するために用いられ得る。
【0051】
「タンパク質」という用語は、任意の長さ(全長またはフラグメントを含む)のアミノ酸のポリペプチドまたはポリマーをいい、これは、直線であってもまたは分枝であってもよく、修飾されたアミノ酸を含んでもよく、および/または非アミノ酸で中断されてもよい。この用語はまた、天然に、または介在によって修飾されているアミノ酸ポリマーを包含し、これには、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは修飾が挙げられる。またこの用語内には、例えば、アミノ酸の1つ以上のアナログ(例えば、天然でないアミノ酸などを含む)を含むポリペプチド、および当該分野で公知の他の修飾も包含される。本明細書に記載されるタンパク質は天然に存在してもよい、すなわち、天然の供給源、(例えば、血液)から得られてももしくは由来してもよいし、または合成されてもよい(例えば、化学的に合成されるか、または組み換えDNA技術によって合成される)。例示的なキャリアタンパク質は本明細書に記載される。
【0052】
本明細書において用いられる「抗菌剤」という用語は、1つ以上の微生物の増殖を阻害(例えば、遅延、低減、緩徐化、および/または防止)し得る作用物質を指す。有意な微生物増殖は、以下のうちの1つ以上など、当該分野で公知の多数の方法によって測定または示され得る:(i)組成物が個体に投与されたとき、その個体に1つ以上の有害な影響を生じるのに十分である組成物中の微生物増殖;(ii)外因性の汚染(例えば、20〜25℃の範囲の温度で10〜10コロニー形成単位への曝露)の際の特定の期間にわたる(例えば、24時間を超える)微生物増殖における約10倍を超える増大。有意な微税物増殖の他の指標は、その全体が参照によって本明細書に援用される、米国特許出願公開第20070117744号(米国特許出願第11/514,030号、2006年8月30日出願)に記載されている。
【0053】
本明細書において用いる場合、「糖」としては限定はしないが、単糖類、二糖類、多糖類およびその誘導体または修飾物が挙げられる。本明細書に記載される組成物に適切な糖としては、例えば、マンニトール、スクロース、フルクトース、ラクトース、マルトースおよびトレハロースが挙げられる。
【0054】
本明細書において用いる場合、「薬学的に受容可能な」または「薬学的に適合性の」とは、生物学的にもまたはそれ以外でも望ましい物質、例えば、この物質は、なんら有意な望ましくない生物学的効果を生じることも、その物質が含まれる組成物のいかなる他の成分とも有害な方式で相互作用することもなく、患者に投与される薬学的組成物に組み込まれ得る物質を意味する。薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤は好ましくは、毒性学的および製造の試験の必要な標準を満たすか、および/または米国の食品医薬品庁(U.S.Food and Drug administration)によって作製される不活性成分ガイド(Inactive Ingredient Guide)に含まれる。
【0055】
「生存(survival)」とは、生き残っている患者をいい、そして全生存(overall survival)および無増悪生存(progression free survival)を包含する。
【0056】
「全生存(overall survival)」とは、診断または処置の時点から、1年、5年などのような所定の期間生き残っている患者をいう。
【0057】
「無増悪生存(progression free survival)」とは、ガンの進行も悪化もなく、生き残っている患者をいう。
【0058】
「生存の延長(prolonging survival)」とは、未処置の患者に対する(例えば、タキサンナノ粒子組成物で処置していない患者に対する)、処置した患者における全生存または無増悪生存の増大を意味する。
【0059】
本明細書において用いる場合、値またはパラメーターが「違う、ではない(not)」という言及は、一般にある値またはパラメーター「以外」を意味し、かつ記述するものである。例えば、タキサンが投与されないという場合、これはタキサン以外の作用物質が投与されることを意味する。
【0060】
本明細書で「約」、「ほぼ」、「およそ」の値またはパラメーターという言及は、その値またはパラメーター自体に関するバリエーションを包含する(かつ述べる)。例えば、「約X」を指す記載は、「X」の記載を包含する。
【0061】
本明細書において、および添付の特許請求の範囲に用いられる場合、単数形、「1つの、ある(不定冠詞:a)」、「または(or)」、および「この、その(定冠詞:the)」とは、その文脈が別段明示しない限り、複数への言及を包含する。本明細書に記載される本発明の局面およびバリエーションは、局面およびバリエーションを「含む、包含する」および/または「本質的に〜からなる」を包含することが理解される。
【0062】
本発明の方法
本発明は、タキサンおよびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含んでいる組成物を投与することによる、再発性癌(例えば、再発性の婦人科の癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)の処置のための方法を提供する。ある実施形態では、個体における再発性癌を処置する方法が提供され、この方法は、タキサンおよびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量を個体に投与することを包含する。ある実施形態では、この再発性癌は白金感受性である。ある実施形態では、この再発癌は白金耐性である。ある実施形態では、この再発癌は再発性の卵巣癌、再発性の腹膜癌、再発性の卵管癌、再発性の悪性混合ミューラー腫瘍および漿液性エンド(serous endo)のいずれかである。
【0063】
ある実施形態では、個体における再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌の処置の方法が提供され、この方法は、タキサンおよびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含する。ある実施形態では、個体における白金感受性の再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌の処置の方法が提供され、この方法は、タキサンおよびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含する。ある実施形態では、この再発性癌は、再発性の卵巣癌(例えば、再発性の上皮卵巣癌)である。ある実施形態では、この再発性癌は、再発性の腹膜癌である。ある実施形態では、この再発性癌は、再発性の卵管癌(例えば、乳頭漿液性腺癌、肉腫および移行上皮癌を含む)である。
【0064】
ある実施形態では、個体における再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)の処置の方法が提供され、この方法は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含し、ここでこの個体は事前の化学療法を受けており、かつ事前の化学療法の完了からほぼ3、6、9カ月のいずれかより長い無処置間隔がある。ある実施形態では、個体における再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)の処置の方法が提供され、この方法は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含し、ここでこの個体は事前の化学療法を受けており、かつ事前の化学療法の完了から約12、18、24、36または48カ月のいずれかより長い無処置間隔がある。ある実施形態では、この事前の化学療法はタキサンベースの治療の作用機序とは異なる作用機序を有する。ある実施形態では、この個体は、タキサンナノ粒子組成物の投与の前に白金ベースの作用物質(単数または複数)で処置されているだけである。ある実施形態では、この個体は、タキサンナノ粒子組成物の投与の前に1投与レジメンで処置されているだけである。ある実施形態では、この個体は、タキサンベースの治療で以前には処置されていない。
【0065】
ある実施形態では、個体における再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)の処置の方法が提供され、この方法は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含し、ここでこの個体は事前の白金ベースの化学療法を受けており、かつその白金ベースの化学療法の完了からほぼ3、6、9カ月を超える無処置間隔がある。ある実施形態では、個体における再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)を処置する方法が提供され、この方法は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含し、ここでこの個体は事前の白金ベースの化学療法を受けており、かつこの白金ベースの化学療法の完了から約12、18、24、36または38カ月のいずれかより長い無処置間隔がある。ある実施形態では、この方法はさらに、白金ベースの作用物質(例えば、カルボプラチン)の有効量をこの個体に投与することをさらに包含する。ある実施形態では、タキサンおよびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含んでいる組成物は、白金剤と組み合わせて投与されることはなく、すなわち、タキサンおよびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含んでいる組成物は、単独で、または白金ベースの作用物質以外の化学療法剤と組み合わせて投与される。
【0066】
ある実施形態では、個体における再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)の処置の方法が提供され、この方法は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含し、ここでこの個体は事前の化学療法を受けており、かつタキサンナノ粒子組成物での処置方法の開始の前にほぼ3、6、9カ月のいずれかより長い無処置間隔がある。ある実施形態では、個体における再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)の処置の方法が提供され、この方法は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含し、ここでこの個体は事前の化学療法を受けており、かつタキサンナノ粒子組成物での処置方法の開始の前にほぼ12、18、24、36または48カ月のいずれかより長い無処置間隔がある。ある実施形態では、この事前の化学療法は、タキサンベースの治療の作用機序とは異なる作用機序を有する。ある実施形態では、この個体は、タキサンナノ粒子組成物の投与の前に、白金ベースの作用物質(単数または複数)で処置されているだけである。ある実施形態では、この個体は、タキサンナノ粒子組成物の投与の前に1投薬レジメンで処置されているだけである。ある実施形態では、この個体は以前には、タキサンベースの治療で処置されていない。
【0067】
ある実施形態では、個体における再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)の処置の方法が提供され、この方法は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含し、ここでこの個体は事前の白金ベースの化学療法を受けており、かつタキサンナノ粒子組成物での処置方法の開始の前にほぼ3、6、9カ月のいずれかより長い無処置間隔がある。ある実施形態では、個体における再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)の処置の方法が提供され、この方法は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含し、ここでこの個体は事前の白金ベースの化学療法を受けており、かつタキサンナノ粒子組成物での処置方法の開始の前にほぼ12、18、24、36または38カ月のいずれかより長い無処置間隔がある。ある実施形態では、この方法は、この個体に対して白金ベースの作用物質の有効量を投与することをさらに包含する。ある実施形態では、タキサンおよびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含んでいる組成物は、白金作用物質と組み合わせて投与されることはなく、すなわち、タキサンおよびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含んでいる組成物は、単独で投与されるか、または白金ベースの作用物質以外の化学療法剤と組み合わせて投与される。
【0068】
ある実施形態では、個体における再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)の処置の方法が提供され、この方法は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含し、ここでこの個体はタキサンナノ粒子組成物での処置方法の開始の前に過敏症(例えば、神経障害の症状を示さない)。ある実施形態では、個体における再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)の処置の方法が提供され、この方法は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含し、ここでこの個体はこの処置期間全体にわたって過敏症の症状を示すことはない。ある実施形態では、個体における再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)の処置の方法が提供され、この方法は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含し、ここでこの個体はこの処置の完了の際に過敏症の症状を示すことはない。
【0069】
ある実施形態では、タキサンおよびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含んでいる組成物は単独で投与される。例えば、ある実施形態では、個体における再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)の処置の方法が提供され、この方法は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含し、ここでこの個体に対して投与される組成物の量は単独で、この個体における完全寛解を生じるのに有効である。ある実施形態では、個体における再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)の処置の方法が提供され、この方法は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含し、ここでこの個体に対して投与されるこの組成物の量は単独で、この個体における部分反応を生じるのに有効である。
【0070】
ある実施形態では、個体における再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)を処置する方法が提供され、この方法は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含し、ここでこの個体に対して投与される組成物の量は単独で、この組成物で処置された個体の集団のうち約40%、50%、60%または64%のいずれかを超える全奏功率を得るのに十分である。ある実施形態では、個体における再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)の処置の方法が提供され、この方法は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含し、ここでこの個体に対して投与される組成物の量は単独で、この組成物で処置された個体の集団のうち約50%、60%、70%、または77%のいずれかを超える臨床的有益性を得るのに十分である。
【0071】
ある実施形態では、この方法は、個体に対してパクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量を投与することを包含する。ある実施形態では、この方法は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量を個体に投与することを包含し、ここでこの組成物中のナノ粒子の平均(averageまたはmean)直径は約200nm未満である。ある実施形態では、この方法は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量を個体に投与することを包含し、ここでこのナノ粒子は、キャリアタンパク質を含むコーティングでコーティングされたタキサンを含む。ある実施形態では、この方法は、有効量のNab−パクリタキセル(例えば、Abraxane(登録商標))を個体に対して投与することを包含する。例えば、ある実施形態では、個体における白金感受性の再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌を処置する方法が提供され、この方法は、Nab−パクリタキセルまたはAbraxane(登録商標)の有効量をこの個体に投与することを包含する。
【0072】
ある実施形態では、個体における再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌(例えば、白金耐性の卵巣、腹膜または卵管の癌)を処置する方法が提供され、この方法は、約50mg/m〜約300mg/m(例えば、約260mg/mを含む)のNab−パクリタキセルまたはAbraxane(登録商標)をこの個体に対して投与することを包含する。ある実施形態では、Nab−パクリタキセルまたはAbraxane(登録商標)は3週ごとに投与される。ある実施形態では、このNab−パクリタキセルまたはAbraxane(登録商標)は静脈内投与される(例えば、約30分未満の間隔にわたるi.v.注入による)。ある実施形態では、このNab−パクリタキセルまたはAbraxane(登録商標)は腹腔内に投与される。
【0073】
本発明の方法は、以下のうちのいずれか1つ以上に有用である(従って、以下のうちのいずれか1つ以上を種々の実施形態で達成し得るか、および/または包含し得る):1)再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌および卵管癌)から生じる1つ以上の症状を軽減すること;2)再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌および卵管癌)の全奏功率を増大すること;3)再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌および卵管癌)の部分反応率を増大すること;4)再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌および卵管癌)の完全奏功率を増大すること;5)再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌および卵管癌)を有する個体の疾患進行を遅らせること;6)再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌および卵管癌)を有する個体におけるクオリティー・オブ・ライフを向上させること;7)再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌および卵管癌)を有する個体の全生存を延長すること;ならびに8)再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌および卵管癌)を有する個体の無増悪生存を延長すること。
【0074】
従って、ある実施形態では、再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌および卵管癌)から生じる1つ以上の症状を低減する方法が提供され、この方法は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含する。ある実施形態では、再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌および卵管癌)から生じる1つ以上の症状を軽減する方法が提供され、この方法は、Nab−パクリタキセルまたはAbraxane(登録商標)の有効量をこの個体に対して投与することを包含する。
【0075】
ある実施形態では、再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌および卵管癌)の奏功率を増大する方法が提供され、この方法は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含する。ある実施形態では、再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌および卵管癌)の奏功率を増大する方法が提供され、この方法は、Nab−パクリタキセルまたはAbraxane(登録商標)の有効量をこの個体に対して投与することを包含する。
【0076】
ある実施形態では、再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌および卵管癌)を有する個体の疾患進行を遅延する方法が提供され、この方法は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含する。ある実施形態では、再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌および卵管癌)を有する個体の疾患進行を遅延する方法が提供され、この方法は、Nab−パクリタキセルまたはAbraxane(登録商標)の有効量をこの個体に対して投与することを包含する。
【0077】
ある実施形態では、再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌および卵管癌)を有する個体の生存を延長する方法が提供され、この方法は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含する。ある実施形態では、再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、卵巣癌、腹膜癌および卵管癌)を有する個体の生存を延長する方法が提供され、この方法は、Nab−パクリタキセルまたはAbraxane(登録商標)の有効量をこの個体に対して投与することを包含する。
【0078】
ある実施形態では、個体における再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌を処置する方法が提供され、この方法は、タキサンおよびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含し、ここで、この再発性癌から生じる1つ以上の症状が軽減される。ある実施形態では、個体における再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌を処置する方法が提供され、この方法は、タキサンおよびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含し、ここで、この個体は、ほぼ1、2、3、4、5、6、7または8回のいずれか未満の処置サイクルの終了の際に処置に対して部分反応を有する。ある実施形態では、個体における再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌を処置する方法が提供され、この方法は、タキサンおよびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含し、ここで、この個体は、ほぼ1、2、3、4、5、6、7または8回のいずれか未満の処置サイクルの終了の際に処置に対して完全寛解を有する。ある実施形態では、この処置サイクルは、4週間である。ある実施形態では、この処置サイクルは3週間である。
【0079】
ある実施形態では、個体における再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌を処置する方法が提供され、この方法は、タキサンおよびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含し、ここで、この個体は、処置の終了の際に少なくともほぼ0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22または24カ月にわたって無病である。ある実施形態では、個体における再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌を処置する方法が提供され、この方法は、タキサンおよびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含し、ここで、この個体は、処置の終了の際に少なくともほぼ0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22または24カ月にわたって再発性癌から生じる症状を示さない。ある実施形態では、個体における再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌を処置する方法が提供され、この方法は、タキサンおよびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に投与することを包含し、ここで、この個体は、処置の終了の際にCA−125レベルが減少している(例えば、処置の前のレベルのほぼ70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%のうちのいずれか未満のレベル)。ある実施形態では、この個体は、処置の終了の際に少なくともほぼ0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22または24カ月のいずれかにわたってCA−125が減少している。
【0080】
ある実施形態では、個体における再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌を処置する方法が提供され、この方法は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量をこの個体に対して(例えば、静脈内または腹腔内で)投与することを包含し、この1投与あたりのタキサンの量は、少なくとも約50mg/m(例えば、少なくとも約70mg/m、100mg/m、150mg/m、200mg/m、または260mg/mのいずれか)であり、ここで再発性癌から生じる1つ以上の症状が軽減される。ある実施形態では、個体において再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌を処置する方法が提供され、この方法は、Abraxane(登録商標)の有効量をこの個体に対して(例えば、静脈内または腹腔内で)投与することを包含しており、この1投与あたりのパクリタキセルの量は、少なくとも約50mg/m(例えば、少なくとも約70mg/m、100mg/m、150mg/m、200mg/m、または260mg/mのいずれか)であり、ここで再発性癌から生じる1つ以上の症状が軽減される。ある実施形態では、この組成物は、3週ごとに1回投与される。ある実施形態では、この組成物は毎週投与される。ある実施形態では、この組成物は、4週間のうち3週投与される。ある実施形態では、この個体は、処置の開始の前に過敏症(例えば、神経障害)の症状を示していない。ある実施形態では、この個体は、処置期間全体を通じて過敏症の症状を示していない。ある実施形態では、この個体は、処置期の終了の際に過敏症の症状を示していない。
【0081】
ある実施形態では、タキサンナノ粒子組成物は、別の化学療法剤(例えば、白金ベースの作用物質)と組み合わせて投与される。例えば、ある実施形態では、このタキサンナノ粒子組成物および他の化学療法剤(例えば、白金ベースの作用物質)は同時に投与される。本明細書において用いる場合、「同時投与」という用語は、タキサンナノ粒子組成物を意味し、他の化学療法剤は約15分(単数または複数)以下、例えば、ほぼ10、5または1分以下のいずれかの時間間隔で投与される。この薬物が同時に投与されるとき、ナノ粒子中のタキサンおよび他の化学療法剤は、同じ組成物(例えば、ナノ粒子および他の化学療法剤の両方を含む組成物)中に含まれてもよいし、または別の組成物(例えば、ナノ粒子が一方の組成物に含まれており、他の化学療法剤が別の組成物中に含まれている)中に組み込まれてもよい。例えば、タキサンおよび他の化学療法剤は、少なくとも2つの異なるナノ粒子を含む単一の組成物中に存在してもよく、ここではこの組成物中のナノ粒子のある程度はタキサンおよびキャリアタンパク質を含み、かつその組成物中の他のナノ粒子のいくつかは他の化学療法剤およびキャリアタンパク質を含む。ある実施形態では、タキサンのみがナノ粒子中に含まれる。ある実施形態では、ナノ粒子組成物中の薬物および他の化学療法剤の同時投与は、補充用量のタキサンおよび/または他の化学療法剤と組み合されてもよい。
【0082】
ある実施形態では、このナノ粒子組成物および他の化学療法剤(例えば、白金ベースの作用物質)は、連続して投与される。本明細書に用いられる「連続投与」という用語は、ナノ粒子組成物中のタキサンおよび他の化学療法剤が約15分を超える、例えば、約20、30、40、50、60分またはそれを超える分のうちの任意の時間間隔で投与されることを意味する。ナノ粒子組成物または他の化学療法剤のいずれが最初に投与されてもよい。このナノ粒子組成物および他の化学療法剤は、別の組成物に含まれ、この組成物は同じパッケージに含まれても異なるパッケージに含まれてもよい。
【0083】
ある実施形態では、ナノ粒子組成物および他の化学療法剤の投与は、同時であり、すなわちナノ粒子組成物の投与期間および他の化学療法剤の投与期間はお互いに重複する。ある実施形態では、このナノ粒子組成物および他の化学療法剤は同じ処置サイクル(単数または複数)で投与される。
【0084】
薬物含有ナノ粒子組成物および他の化学療法剤の投薬頻度は、投与する医師の判断に基づいて、処置の経過にまたがって調節され得る。別々に投与する場合、薬物含有ナノ粒子組成物および他の化学療法剤は、異なる投薬の頻度または間隔で投与されてもよい。例えば、薬物含有ナノ粒子組成物は、毎週投与されてもよいが、化学療法剤は、それより高頻度に投与されてもよい。ある実施形態では、薬物含有ナノ粒子および/または化学療法剤の徐放性処方物が用いられてもよい。種々の処方物および徐放性を達成するためのデバイスが当該分野で公知である。
【0085】
ある実施形態では、個体において再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)を処置する方法が提供され、この方法は、この個体に対して:a)タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量と、b)白金ベースの作用物質の有効量とを投与することを包含する。ある実施形態では、個体において再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)を処置する方法が提供され、この方法は、この個体に対して:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子を含んでいる組成物(例えば、Abraxane(登録商標))の有効量と、b)白金ベースの作用物質の有効量とを投与することを包含する。適切な白金ベースの作用物質としては限定はしないが、カルボプラチン、シスプラチン、およびオキサリプラチンが挙げられる。ある実施形態では、この白金ベースの作用物質はカルボプラチンである。ある実施形態では、このタキサンナノ粒子組成物および白金ベースの作用物質は、同時に投与される。ある実施形態では、このタキサンナノ粒子組成物および白金ベースの作用物質は連続して投与される。ある実施形態では、このタキサンナノ粒子組成物および白金ベースの作用物質は一緒に投与される。
【0086】
ある実施形態では、個体において再発性の卵巣癌を処置する方法が提供され、この方法はこの個体に対して:a)タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量と、b)白金ベースの作用物質の有効量とを投与することを包含する。ある実施形態では、個体において原発性の腹膜癌を処置する方法が提供され、この方法は、この個体に対して:a)タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量と、b)白金ベースの作用物質の有効量とを投与することを包含する。
【0087】
ある実施形態では、個体において再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)を処置する方法が提供され、この方法は、この個体に対して:a)タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量と、b)白金ベースの作用物質の有効量とを投与することを包含しており、ここでこのタキサンナノ粒子組成物および白金ベースの作用物質が一緒に投与される。ある実施形態では、個体において再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)を処置する方法が提供され、この方法はこの個体に対して:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子を含んでいる組成物(例えば、Abraxane(登録商標))の有効量と、b)白金ベースの作用物質の有効量とを投与することを包含しており、ここでこのパクリタキセルナノ粒子組成物および白金ベースの作用物質が一緒に投与される。
【0088】
ある実施形態では、個体において再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌)を処置する方法が提供され、この方法は、この個体に対して:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子を含んでいる組成物(例えば、Abraxane(登録商標))の有効量であって、この組成物中のパクリタキセルの量が少なくとも約40mg/m(例えば、約50mg/m、60mg/m、70mg/m、80mg/m、90mg/m、100mg/m、150mg/m、または200mg/mのいずれかなど)である有効量と、b)白金ベースの作用物質の有効量(例えば、AUC3、AUC4、またはAUC6の量の白金ベースの作用物質)とを投与することを包含し、ここでこのタキサンナノ粒子組成物および白金ベースの作用物質は一緒に投与される。ある実施形態では、この方法は、4週間のうち3週、約100mg/mで、パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子を含んでいる組成物(例えば、Abraxane(登録商標))と、4週ごとに白金ベースの作用物質(例えば、カルボプラチン)AUC6とを同じ処置サイクルで投与することを包含する。ある実施形態では、この方法は、4週間のうち3週、約100mg/mで、パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子を含んでいる組成物(例えば、Abraxane(登録商標))と、4週ごとに白金ベースの作用物質(例えば、カルボプラチン)AUC5とを同じ処置サイクルで投与することを包含する。ある実施形態では、この方法は、同じ処置サイクルで、パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子を含んでいる組成物(例えば、Abraxane(登録商標))を約100mg/mで、4週間のうち3週静脈内投与すること、および白金ベースの作用物質(例えば、カルボプラチン)AUC5を4週ごとに静脈内投与することと、を包含する。ある実施形態では、この個体は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くの任意の回数のこのような処置サイクルで処置される。
【0089】
ある実施形態では、再発性の卵巣癌を処置する方法であって、同じ処置サイクルで、パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子を含んでいる組成物(例えば、Abraxane(登録商標))を約100mg/mで、4週間のうち3週静脈内投与することと、白金ベースの作用物質(例えば、カルボプラチン)AUC5(またはAUC6)を4週ごとに静脈内投与することとを投与することを包含する方法が提供される。ある実施形態では、原発性の腹膜癌を処置する方法であって、同じ処置サイクルで、パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子を含んでいる組成物(例えば、Abraxane(登録商標))を約100mg/mで、4週間のうち3週静脈内投与することと、白金ベースの作用物質(例えば、カルボプラチン)AUC5(またはAUC6)を4週ごとに静脈内投与することとを包含する方法が提供される。ある実施形態では、この個体は少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くの任意の回数のこのような処置サイクルで処置される。
【0090】
再発性癌を有する個体
本発明は、個体において、再発性癌(例えば、再発性の婦人科癌、例えば、再発性の卵巣癌、腹膜癌および卵管癌)を処置する方法を提供する。「再発性」のガンとは、最初の治療に反応した後で、最初の部位または遠位のいずれかで、再増殖しているガンである。ある実施形態では、最初の治療の終了と、再発性疾患の発生との間の時間の長さは約3カ月より長く、例えば、ほぼ4、5、6、7、8、9、10または11カ月のいずれかより長い。ある実施形態では、最初の治療の終了と、再発性疾患の発生との間の時間の長さは約12カ月より長く、例えば、ほぼ14、16、18、20、22、24、36または48カ月のいずれかより長い。
【0091】
ある実施形態では、この再発性癌は、再発性の婦人科癌である。「婦人科癌」とは本明細書において用いる場合、女性の生殖器に由来する癌をいう。これには、(子宮)頸部、卵管、卵巣、子宮、膣および外陰部の癌が挙げられる。ある実施形態では、この再発性癌は、再発性の卵巣癌である。ある実施形態では、この癌は、卵巣上皮癌である。例示的な卵巣上皮癌の組織学的分類としては以下が挙げられる:卵巣嚢胞(例えば、漿液性良性嚢胞腺腫、漿液性嚢胞腺腫(上皮細胞の増殖活性および核の異常を有するが、浸潤性の破壊的増殖性を有さない)、または漿液性嚢胞腺癌)、粘液嚢腫(例えば、粘液良性嚢胞腺腫、粘液嚢胞腺腫(上皮細胞の増殖活性および核の異常を有するが、浸潤性の破壊的増殖性を有さない)、または粘液嚢胞腺癌)、子宮内膜性腫瘍(例えば、子宮内膜良性腫瘍、子宮内膜性腫瘍(上皮細胞の増殖活性および核の異常を有するが、浸潤性の破壊的増殖性を有さない)、または類内膜腺癌)、明細胞(中腎)腫瘍(例えば、良性明細胞腫瘍、明細胞腫(上皮細胞の増殖活性および核の異常を有するが、浸潤性の破壊的増殖性を有さない)、または明細胞嚢胞腺癌)、上記分類の1つに割り当てられない未分類腫瘍、あるいは他の悪性腫瘍。
【0092】
ある実施形態では、再発性癌は、再発性の卵巣胚細胞腫瘍である。例示的な組織学的サブタイプとしては、未分化胚細胞腫または他の胚細胞腫瘍(例えば、内胚葉洞腫瘍、例えば、肝様腫または腸腫瘍、胚性癌腫、胎児性癌(olyembryomas)、絨毛癌、奇形腫または混合型腫瘍)が挙げられる。例示的な奇形腫は、未熟型奇形腫、成熟型奇形腫、充実性奇形腫および嚢胞性奇形腫(例えば、皮様嚢腫、例えば、成熟型皮様嚢腫および悪性転換を有する皮様嚢腫)である。いくつかの奇形腫は、胚葉性および高度限定型、例えば、卵巣甲状腺腫、カルチノイド、卵巣甲状腺腫およびカルチノイドなど(例えば、悪性の神経外胚葉性および上衣細胞腫)である。
【0093】
ある実施形態では、この再発性癌は、再発性の腹膜癌である。ある実施形態では、この再発癌は、再発性の卵管癌(例えば、乳頭漿液性腺癌、肉腫および移行上皮癌を含む)である。他の再発性癌、例えば、再発性の悪性混合型ミューラー腫瘍および漿液性エンド(serous endo)も処置され得る。
【0094】
卵巣、腹膜または卵管の癌の再発は、例えば、双手骨盤検査、CA−125または他の腫瘍マーカーの連続的測定、1つ以上の画像化研究再評価、およびセカンドルック開腹術に基づいて決定され得る。画像化研究、例えば、CT、PETまたはCT/PETの組み合わせも用いられ得る。ある実施形態では、卵巣、腹膜または卵管癌の再発は、固形腫瘍での応答評価基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)(RECIST)に基づいて決定してもよい。
【0095】
本明細書において用いる「個体」とはヒトをいう。ある実施形態では、この個体は、およそ40〜およそ85歳、例えば、およそ60〜およそ70歳などの女性である。ある実施形態では、この個体は、タキサンナノ粒子組成物の投与の前に0〜2(例えば、0、1または2のうちのいずれか)というEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンス・ステータスを有する。ある実施形態では、この個体は、事前の化学療法を受けており、かつ事前の化学療法の完了から約3、6または9カ月のいずれかより長い無処置間隔がある。ある実施形態では、この個体は、事前の化学療法を受けており、かつ事前の化学療法の完了から約12、18、24、36または48カ月のいずれかより長い無処置間隔がある。ある実施形態では、この事前の化学療法はタキサンとは異なる作用機序を有する。ある実施形態では、この個体は、タキサンナノ粒子組成物の投与の前に白金ベースの作用物質(単数または複数)で処置されているだけである。ある実施形態では、この個体は、タキサンナノ粒子組成物の投与の前に1投与レジメンで処置されているだけである。ある実施形態では、この個体は、タキサンベースの治療で以前には処置されていない。
【0096】
ある実施形態では、この方法が再発性の卵巣、腹膜または卵管の癌の処置に関する場合、個体は、組織学的にまたは細胞学的に卵巣、腹膜または卵管の癌を有することが確認される。ある実施形態では、この個体は、RECISTに基づいて卵巣、腹膜または卵管の癌を有することが確認される。ある実施形態では、この個体は、Cancer Antigen125の血液の値が上昇している(CA−125、例えば、約40、50、60、70、80または90単位/mlより大きいか、または正常なCA−125の値の上限よりも約2×、3×、4×倍大きいCA−125の値)。ある実施形態では、この個体は、再発性の卵巣癌、腹膜癌および卵管癌の指標である別のマーカーの発現レベルが変化している。
【0097】
処置されている個体は、卵巣、腹膜および卵管の癌を発症する可能性が高いことに関連する1つ以上の危険因子を有し得る。これらの危険因子としては限定はしないが、年齢、性別、人種、食餌、以前の疾患歴、前疾患の存在、遺伝的(すなわち、遺伝性)懸念、および環境的な曝露が挙げられる。ある実施形態では、この個体は、卵巣、腹膜および卵管の癌、特に再発性の卵巣、腹膜および卵管の癌を遺伝的に発症するか、またはそうでなければ発症する素因があるヒトであり得る。
【0098】
卵巣、腹膜および卵管の癌のリスクのある個体としては、例えば、この疾患の経験がある親類のいる個体、および遺伝的または生化学的なマーカーの分析によって決定されるリスクが確認されている個体が挙げられる。例えば、この個体は、卵巣癌(例えば、BRCA1またはBRCA2)に関連する遺伝子、遺伝子変異もしくは多型を有するか、または卵巣癌に関連する遺伝子の1つ以上の余分のコピー(例えば、HER2遺伝子の1つ以上の余分のコピー)を有するヒトであってもよい。ある実施形態では、この個体はHER2陽性である。ある実施形態では、この個体はHER2陰性である。ある実施形態では、この卵巣癌は、基底細胞母斑(ゴーリン(Gorlin))症候群、多発性内分泌腺腫1型(MEN1)、または遺伝性の非ポリポーシス結腸直腸癌(HNPCC)に関連する。
【0099】
ある実施形態では、この個体は、上記の基準のうち少なくとも2つを満たす。例えば、ある実施形態では、この個体は、RECISTおよびCA−125レベルの上昇によって測定可能な疾患を有する。ある実施形態では、この個体は、組織学的または細胞学的に卵巣癌を有すると確認され、かつ上記のナノ粒子組成物の投与前には白金ベースの作用物質(単数または複数)で処置されているだけである。ある実施形態では、この個体は、少なくとも上記の2、3、4、5またはそれより多くの任意の基準を満たす。ある実施形態では、この個体は、上記の基準の全てを満たす。
【0100】
ある実施形態では、この再発性癌は、白金感受性である。例えば、ある実施形態では、この個体は、事前の白金ベースの化学療法を受けており、かつこの白金ベースの化学療法の完了から約3、6または9カ月のいずれかより長い無処置間隔がある。ある実施形態では、この個体は、事前の白金ベースの化学療法を受けており、かつこの白金ベースの化学療法の完了から約12、18、24、36または48カ月のいずれかより長い無処置間隔がある。ある実施形態では、再発性癌は、白金感受性の卵巣癌である。ある実施形態では、この再発性癌は、白金感受性の腹膜癌である。ある実施形態では、この再発性癌は、白金感受性の卵管癌である。
【0101】
ある実施形態では、この再発性癌(例えば、再発性の卵巣、腹膜または卵管の癌)は白金耐性である。「白金耐性」癌とは、癌を有する個体が、白金ベースの化学療法を受けていながら進行している(すなわち、この患者は「白金不応性」である)ことを意味する。
【0102】
「白金ベースの化学療法」とは、必要に応じて1つ以上の他の化学療法剤と組み合わせた、1つ以上の白金ベースの化学療法剤での治療を意味するものである。「白金ベースの化学療法剤」は、その分子の不可欠な部分として白金を含む有機化合物を含む。これらの作用物質は、DNA分子の鎖内および鎖間の架橋を形成する反応性の白金錯体を形成することによって細胞増殖を阻害し、DNA合成を阻害すると考えられている。白金ベースの化合物の例としては、カルボプラチン、シスプラチンおよびオキサリプラチナ(oxaliplatinum)が挙げられる。ある実施形態では、この白金ベースの化学療法剤は、白金ベースの作用物質のみでの処置を含む。ある実施形態では、この白金ベースの化学療法は、カルボプラチンでの処置を含む。
【0103】
用法用量
個体(例えは、ヒト)に投与される本発明の組成物の量は、特定の組成物、投与方法および処置されている再発性癌の特定の型で異なってもよい。その量は、所望の有益な効果を生じるのに十分でなければならない。例えば、ある実施形態では、組成物の量は、目的の応答(例えば、部分反応または完全寛解)を生じるのに有効である。ある実施形態では、タキサンナノ粒子組成物の量は、個体の完全寛解を生じるのに十分である。ある実施形態では、タキサンナノ粒子組成物の量は、個体において部分反応を生じるのに十分である。ある実施形態では、投与されるタキサンナノ粒子組成物の量(例えば、単独で投与される場合)は、タキサンナノ粒子組成物で処置された個体の集団のなかで約40%、50%、60%または64%のいずれかを超える全奏功率を得るのに十分である。本明細書に記載される方法の処置に対する個体の応答は、例えば、RECISTまたはCA−125レベルに基づいて決定され得る。例えば、CA−125を用いる場合、完全寛解は、処置前の値から少なくとも28日の正常範囲の値への復帰として規定され得る。部分反応とは、処置前の値からの50%を超える持続的な低下と規定され得る。
【0104】
ある実施形態では、組成物の量は、個体の無増悪生存(例えば、RECISTまたはCA−125の変化によって測定される)を延長するのに十分である。ある実施形態では、その組成物の量は、個体の全生存を延長するのに十分である。ある実施形態では、組成物の量(例えば、単独で投与されるとき)は、タキサンナノ粒子組成物で処置された個体の集団のうち約50%、60%、70%または77%のいずれかを超える臨床的利益を生じるのに十分である。
【0105】
ある実施形態では、組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の量は、毒性学的影響(すなわち、臨床的に受容可能なレベルの毒性を上回る影響)を誘導するレベルより低いか、またはその組成物が個体に投与されるときにあり得る副作用が制御されるかまたは耐容され得るレベルである。ある実施形態では、この組成物の量は、同じ投薬レジメン後の組成物の最大耐量(MTD)に近い。ある実施形態では、この組成物の量は、MTDの約80%、90%、95%または98%のいずれかを上回る。
【0106】
ある実施形態では、組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の量は、以下の範囲のいずれかに含まれる:約0.5〜約5mg、約5〜約10mg、約10〜約15mg、約15〜約20mg、約20〜約25mg、約20〜約50mg、約25〜約50mg、約50〜約75mg、約50〜約100mg、約75〜約100mg、約100〜約125mg、約125〜約150mg、約150〜約175mg、約175〜約200mg、約200〜約225mg、約225〜約250mg、約250〜約300mg、約300〜約350mg、約350〜約400mg、約400〜約450mg、または約450〜約500mg。ある実施形態では、この組成物の有効量(例えば、単位剤形)におけるタキサン(例えば、パクリタキセル)またはその誘導体の量は、約5mg〜約500mg、例えば、約30mg〜約300mgまたは約50mg〜約200mgの範囲である。ある実施形態では、組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の濃度は、希釈される(約0.1mg/ml)かまたは濃縮され(約100mg/ml)、この濃度としては、例えば、約0.1〜約50mg/ml、約0.1〜約20mg/ml、約1〜約10mg/ml、約2〜約8mg/ml、約4〜約6mg/ml、約5mg/mlが挙げられる。ある実施形態では、タキサン(例えば、パクリタキセル)の濃度は、少なくとも約0.5mg/ml、1.3mg/ml、1.5mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、または50mg/mlのいずれかである。
【0107】
ナノ粒子組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の例示的な有効量としては、限定はしないが、ほぼ次のいずれかのタキサン(例えば、パクリタキセル)が挙げられる。
【数1】


種々の実施形態では、この組成物は、ほぼ次のいずれか未満のタキサン(例えば、パクリタキセル)を含む。
【数2】


ある実施形態では、1投与あたりのタキサン(例えば、パクリタキセル)の量は、ほぼ次のいずれか未満である。
【数3】


ある実施形態では、組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の有効量は、以下の範囲のいずれかに含まれる:約1〜約5mg/m、約5〜約10mg/m、約10〜約25mg/m、約25〜約50mg/m、約50〜約75mg/m、約75〜約100mg/m、約100〜約125mg/m、約125〜約150mg/m、約150〜約175mg/m、約175〜約200mg/m、約200〜約225mg/m、約225〜約250mg/m、約250〜約300mg/m、約300〜約350mg/m、または約350〜約400mg/m。好ましくは、組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の有効量は、約5〜約300mg/m、例えば、約100〜約150mg/m、約120mg/m、約130mg/m、または約140mg/mである。
【0108】
上記の局面のいずれかのうちある実施形態では、組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の有効量としては、少なくとも約1mg/kg、2.5mg/kg、3.5mg/kg、5mg/kg、6.5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、または20mg/kgのいずれかが挙げられる。種々の実施形態では、組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の有効量としては、タキサン(例えば、パクリタキセル)の約350mg/kg、300mg/kg、250mg/kg、200mg/kg、150mg/kg、100mg/kg、50mg/kg、25mg/kg、20mg/kg、10mg/kg、7.5mg/kg、6.5mg/kg、5mg/kg、3.5mg/kg、2.5mg/kgまたは1mg/kg未満のいずれかが挙げられる。
【0109】
例示的な投薬頻度としては限定はしないが、中断なしの毎週;4週のうち3週の週ごと;3週ごとに1回;2週ごとに1回;3週に2週の週ごとが挙げられる。ある実施形態では、この組成物は、およそ2週ごとに1回、3週ごとに1回、4週ごとに1回、6週ごとに1回、または8週ごとに1回投与される。ある実施形態では、この組成物は、1週に少なくともほぼ1×、2×、3×、4×、5×、6×、または7×(すなわち毎日)のいずれかで投与される。ある実施形態では、各々の投与の間の間隔は、およそ6カ月、3カ月、1カ月、20日、15日、12日、10日、9日、8日、7日、6日、5日、4日、3日、2日または1日未満のいずれかである。ある実施形態では、各々の投与の間の間隔は、ほぼ1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、8カ月または12カ月のいずれかを超える。ある実施形態では、投薬スケジュールに中断は無い。ある実施形態では、各々の投与の間の間隔は、約1週以下である。
【0110】
この組成物の投与は、長期間にわたって、例えば、ほぼ1カ月から最大ほぼ7年まで延長され得る。ある実施形態では、この組成物は、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30、36、48、60、72または84カ月のいずれかの期間にわたって投与される。ある実施形態では、タキサン(例えば、パクリタキセル)またはその誘導体は、少なくとも1カ月の期間にまたがって投与され、ここで各々の投与の間の間隔は、約1週以下であり、タキサン(例えば、パクリタキセル)の用量は各々の投与で約0.25mg/m〜約75mg/m、例えば、約0.25mg/m〜約25mg/m、または約25mg/m〜約50mg/mである。
【0111】
ある実施形態では、ナノ粒子組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の薬用量は、3週のスケジュールで投与される場合5〜400mg/mの範囲であっても、または毎週のスケジュールで投与される場合5〜250mg/mの範囲であってもよい。例えば、タキサン(例えば、パクリタキセル)の量は、約60〜約300mg/m(例えば、約260mg/m)である。
【0112】
ナノ粒子組成物(例えば、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物)の投与のための他の例示的な投薬スケジュールとしては、限定はしないが、100mg/m、中断なしの週ごと;75mg/mを4週のうち3週の週ごと;100mg/mを4週のうち3週の週ごと;125mg/mを4週のうち3週の週ごと;125mg/mを3週のうち2週の週ごと;130mg/mを中断なしの週ごと;175mg/mを2週ごとに1回;260mg/mを2週ごとに1回;260mg/mを3週ごとに1回;180〜300mg/mを3週ごと;60〜175mg/mを中断なしの週ごと;20〜150mg/mを1週に2回;および150〜250mg/mを1週に2回が挙げられる。この組成物の投薬頻度は、投与する医師の判定に基づいて処置の経過にまたがって調節され得る。
【0113】
ある実施形態では、この個体は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10回の処置サイクルのいずれかで処置される。
【0114】
本明細書に記載される組成物は、約24時間より短い注入(インフュージョン)時間にわたる個体へのこの組成物の注入を可能にする。例えば、ある実施形態では、この組成物は、約24時間、12時間、8時間、5時間、3時間、2時間、1時間、30分、20分または10分のいずれか未満の注入期間にわたって投与される。ある実施形態では、この組成物は、約30分の注入期間にわたって投与される。
【0115】
ある実施形態では、本発明は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミンなどのアルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量を個体(例えば、ヒト)に非経口的に投与することによって、この個体のガンを処置する方法を提供する。本発明はまた、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミンなどのアルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量を個体(例えば、ヒト)に静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、吸入、経口、腹腔内、経鼻または気管内投与することによって、この個体のガンを処置する方法を提供する。ある実施形態では、投与の経路は、腹腔内である。ある実施形態では、投与の経路は静脈内、動脈内、筋肉内、または皮下である。種々の実施形態では、1用量あたり、タキサン(例えば、パクリタキセル)またはその誘導体の約5mg〜約500mg、例えば、約30mg〜約300mg、または約50〜約500mgが投与される。ある実施形態では、このタキサン(例えば、パクリタキセル)またはその誘導体は、その組成物中に含まれるガンの処置のための唯一の薬学的に活性な作用物質である。ある実施形態では、この方法はタキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミンなどのアルブミン)を含むナノ粒子を含んでいる組成物を、約60mg/m、80mg/m、100mg/m、125mg/m、および150mg/mのいずれかの用量で、腹腔内投与する工程を包含する。
【0116】
本明細書に記載される任意の組成物は、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、肺内、経口、吸入、膀胱内、筋肉内、気管内、皮下、眼内、くも膜下腔内、経粘膜および経皮を含む種々の経路を介して個体(例えば、ヒト)に投与され得る。ある実施形態では、この組成物の徐放性遊離処方物が用いられてもよい。本発明のあるバリエーションでは、本発明の化合物のナノ粒子(例えば、アルブミンナノ粒子)は、インヘイラーまたは他の風媒性送達システムなどを通じて、限定はしないが経口、筋肉内、経皮的、静脈内を含む任意の受容可能な経路によって投与され得る。
【0117】
ある実施形態では、パクリタキセル含有ナノ粒子組成物は、第二の治療化合物および/または第二の治療で投与され得る。パクリタキセル含有ナノ粒子組成物および第二の化合物の投与頻度は、投与医師の判定に基づいて処置の経過にわたって調節され得る。ある実施形態では、この第一および第二の治療剤は、同時に、連続して、または一緒に投与される。別々に投与される場合、タキサン(例えば、パクリタキセル)含有ナノ粒子組成物および第二の化合物は、種々の投与頻度または間隔で投与され得る。例えば、タキサン(例えば、パクリタキセル)含有ナノ粒子組成物は、毎週投与されてもよいが、第二の化合物は、さらに頻繁に投与されてもよい。ある実施形態では、タキサン(例えば、パクリタキセル)含有ナノ粒子組成物および/または第二の化合物の徐放性遊離処方物が用いられ得る。徐放性を達成するための種々の処方物およびデバイスは、当該分野で公知である。本明細書に記載される投与の構成の組み合わせが用いられ得る。
【0118】
タキサンナノ粒子組成物が別の化学療法剤と組み合わせて投与される場合、ナノ粒子組成物および他の化学療法剤は、同じ投与経路を用いて投与されても、または異なる投与経路を用いて投与されてもよい。ある実施形態では(同時投与および連続投与の両方について)、ナノ粒子組成物および他の化学療法剤中のタキサンは所定の比で投与される。例えば、ある実施形態では、ナノ粒子組成物および他の化学療法剤中のタキサンの重量比は約1〜1である。ある実施形態では、この重量比は約0.001〜約1と約1000〜約1との間であっても、または約0.01〜約1と約100〜約1との間であってもよい。ある実施形態では、ナノ粒子組成物中のタキサンおよび他の化学療法剤の重量比は、約100:1、50:1、30:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、および1:1未満のいずれかである ある実施形態では、ナノ粒子中のタキサンおよび他の化学療法剤の重量比は、約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、30:1、50:1、100:1を超えるいずれかである。他の比が考慮される。
【0119】
タキサンおよび/または他の化学療法剤に必要な用量は、各々の作用物質が単独で投与される時に正常に必要な用量よりも低い場合がある(ただし必ずではない)。従って、ある実施形態では、薬物の治療量以下の量がナノ粒子中でおよび/または他の化学療法剤が投与される。「治療量以下の量」または「治療量以下のレベル」とは、治療量未満である量、すなわち、ナノ粒子組成物中の薬物および/または他の化学療法剤が単独で投与されるときに正常に用いられる量未満である。この減少は、所定の投与で投与される量および/または所定の期間にわたって投与される量に関して反映され得る(頻度の減少)。
【0120】
ある実施形態では、同じ程度の処置を発揮するのに必要なナノ粒子組成物中の薬物の正常な用量の減少を少なくとも約5%、10%、20%、30%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれより多くのいずれかで可能にするために、十分な化学療法剤が投与される。ある実施形態では、同じ程度の処置を発揮するのに必要な他の化学療法剤の正常な用量の減少を少なくとも約5%、10%、20%、30%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれより多くのいずれかで可能にするために、ナノ粒子組成物中で十分な薬物が投与される。
【0121】
ある実施形態では、ナノ粒子組成物中のタキサンおよび他の化学療法剤の両方の用量は、各々が単独で投与されるときの対応する正常な用量に比較して減少される。ある実施形態では、ナノ粒子組成物中のタキサンおよび他の化学療法剤は、治療量未満で、すなわち減少したレベルで投与される。ある実施形態では、ナノ粒子組成物および/または他の化学療法剤の用量は実質的に、確立された最大中毒量(MTD)未満である。例えば、ナノ粒子組成物および/または他の化学療法剤の用量は、MTDの約50%、40%、30%、20%または10%よりも少ない。
【0122】
メトロノミック・テラピー・レジメン
本発明はまた、本明細書に記載される任意の処置方法および投与方法についてメトロノミック・テラピー・レジメン(metronomic therapy regime)を提供する。例示的なメトロノミック・テラピー・レジメンおよびメトロノミック・テラピー・レジメン使用のための実施形態は、下に考察され、かつその全体が参照によって本明細書に援用される米国特許出願公開第2006/0263434号として公開された2006年2月21日出願の米国特許出願第11/359,286号に開示される(段落[0138]〜[0157]に記載されるものなど)。ある実施形態では、このナノ粒子組成物は、少なくとも1カ月の期間にわたって投与され、ここで各々の投与の間隔は、約1週以下であり、かつタキサン(例えば、パクリタキセル)の用量は各々の投与で、伝統的な投薬レジメンに従ってその最大耐量の約0.25%〜約25%である。ある実施形態では、このナノ粒子組成物は、少なくとも2カ月の期間にわたって投与され、ここで各々の投与の間の間隔は約1週間以下であって、かつタキサン(例えば、パクリタキセル)の用量は各々の投与で、伝統的な投薬レジメンに従ってその最大耐量の約1%〜約20%である。ある実施形態では、1投与あたりのタキサン(例えば、パクリタキセル)の用量は最大耐量の約25%、24%、23%、22%、20%、18%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%のいずれか未満である。ある実施形態では、任意のナノ粒子組成物が、1週に少なくともほぼ1×、2×、3×、4×、5×、6×、または7×(すなわち毎日)のいずれかで投与される。ある実施形態では、各々の投与の間の間隔は、およそ6カ月、3カ月、1カ月、20日、15日、12日、10日、9日、8日、7日、6日、5日、4日、3日、2日または1日未満のいずれかである。ある実施形態では、各々の投与の間の間隔は、ほぼ1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、8カ月または12カ月のいずれか未満である。ある実施形態では、この組成物は、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30、36、48、60、72または84カ月のいずれかの期間にわたって投与される。
【0123】
キャリアタンパク質
本発明にはまた、本明細書に記載される処置方法、投与方法および投薬レジメンでの使用のためのタキサンおよびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含んでいる組成物も提供される。ある実施形態では、このキャリアタンパク質はアルブミンである。ある実施形態では、このキャリアタンパク質はヒト血清アルブミンである。
【0124】
適切なキャリアタンパク質の例としては、血液または血漿中で正常に見出されるタンパク質が挙げられ、これには限定はしないが、アルブミン、免疫グロブリン、例えば、IgA、リポタンパク質、アポリポタンパク質B、α酸糖タンパク質、β2マクログロブリン、サイログロブリン、トランスフェリン、フィブロネクチン、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子などが挙げられる。ある実施形態では、キャリアタンパク質は、非血液タンパク質、例えば、カゼイン、αラクトアルブミン、またはβラクトアルブミンである。このキャリアタンパク質はもともと天然であっても合成的に調製されてもよい。ある実施形態では、この薬学的に受容可能なキャリアは、アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)を含む。HSAはM65Kの極めて溶解性の球状タンパク質であって、585個のアミノ酸からなる。HSAは血漿中で最も豊富なタンパク質であって、ヒト血漿のコロイド浸透圧の70〜80%を占める。HSAのアミノ酸配列は、全部で17個のジスルフィド架橋、1つの遊離のチオール(Cys34)および単一のトリプトファン(Trp214)を含む。他のアルブミン、例えば、ウシ血清アルブミンが考慮される。このような非ヒトアルブミンの使用は、例えば、家畜(家庭用ペットおよび畜産動物を含む)などの非ヒト動物におけるこれらの組成物の使用の状況では、適切であり得る。
【0125】
ヒト血清アルブミン(HSA)は複数の疎水性結合部位(全部で脂肪酸について8つ、HSAの内因性リガンド)を有し、かつ多様な薬物に、特に中性および負に荷電された疎水性化合物を結合する(Goodmanら,The Pharmacological Basis of Therapeutics,第9版、McGraw−Hill New York(1996))。2つの高度に親和性の結合部位は、極性のリガンド特徴について結合ポイントとして機能する表面付近に荷電されたリジンおよびアルギニン残基を有する高度に伸長された疎水性ポケットであるHSAのサブドメインIIAおよびIIIAで提唱されている(例えば、以下を参照のこと:
【数4】

【0126】
組成物中のキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)は一般に、タキサン(例えば、パクリタキセル)またはその誘導体のキャリアとして働く、すなわち、組成物中のキャリアタンパク質によって、タキサン(例えば、パクリタキセル)またはその誘導体は、水性培地中でさらに容易に懸濁可能になるか、またはキャリアタンパク質を含まない組成物に比較して懸濁を維持することを補助するようになる。これは、タキサン(例えば、パクリタキセル)の可溶化のための毒性溶媒の使用を回避し得、それによって個体(例えば、ヒト)へのタキサン(例えば、パクリタキセル)の投与の1つ以上の副作用を軽減し得る。ある実施形態では、この組成物は実質的に、有機溶媒もサーファクタントも含まない(例えば、含まない)。組成物は、その組成物が個体に投与されるとき、その組成物中の有機溶媒またはサーファクタントの量がその個体において1つ以上の副作用(単数または複数)を生じるのに十分でない場合、「実質的に有機溶媒を含まない」か、または「実質的にサーファクタントを含まない」。ある実施形態では、この組成物中のナノ粒子は固体コアを有する。ある実施形態では、この組成物中のナノ粒子は、水性でないコア(すなわち、水性コア以外)を有する。ある実施形態では、この組成物のナノ粒子は、ポリマーマトリックスを欠く。ある実施形態では、この組成物のナノ粒子は、ろ過滅菌可能である。ある実施形態では、この組成物中のナノ粒子は、少なくとも1つの架橋されたキャリアタンパク質を含む。ある実施形態では、この組成物中のナノ粒子は、少なくとも10%の架橋されているキャリアタンパク質を含む。
【0127】
タキサン(例えば、パクリタキセル)は、それが長期間にわたって、例えば、少なくとも約0.1、0.2、0.25、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、24、36、48、60または72時間のいずれかにわたって、水性媒体中に懸濁されたままである(例えば、視認できる沈殿物も沈殿作用もない)場合に水性懸濁物中で「安定化」されている。この懸濁物は一般には、ただし、必須ではないが、個体(例えば、ヒト)に対する投与に適切である。懸濁物の安定性は一般には(ただし、必須ではないが)保管温度で、例えば、室温(例えば、20〜25℃)、または冷蔵条件(例えば、4℃)で評価される。例えば、懸濁物は、懸濁物の調製後約15分で、裸眼でまたは1000倍で顕微鏡下で見たとき、可視の凝結も粒子凝集も示さない場合、貯蔵温度で安定である。安定性はまた、加速試験の条件下で、例えば約40℃より高い温度で評価してもよい。
【0128】
ある実施形態では、この組成物は、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質を含む(種々の実施形態では本質的にそれらからなる)ナノ粒子を含む。タキサン(例えば、パクリタキセル)が液体型である場合、その粒子またはナノ粒子はまた、液滴またはナノドロップレット(nanodroplet)とも呼ばれる。ある実施形態では、タキサンはキャリアタンパク質でコーティングされる。水溶性が劣る薬剤の粒子(例えば、ナノ粒子)は、例えば、米国特許第5,916,596号;同第6,506,405号;および6,537,579号、また米国特許出願公開第2005/0004002号A1にも開示されている。
【0129】
本明細書に記載される組成物中のキャリアタンパク質の量は、その組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)またはその誘導体、および他の組成物に依存して変化する。ある実施形態では、この組成物は、水性懸濁物中でタキサン(例えば、パクリタキセル)を安定化するのに十分である量で、例えば、安定なコロイド懸濁物(例えば、ナノ粒子の安定な懸濁物)の形態でキャリアタンパク質を含む。ある実施形態では、このキャリアタンパク質は、水性媒体中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の沈降速度を減じる量である。このキャリアタンパク質の量はまた、タキサン(例えば、パクリタキセル)の粒子の大きさおよび密度にも依存する。
【0130】
本発明の任意の局面のある実施形態では、ナノ粒子中のタキサンは、キャリアタンパク質で、例えば、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)でコーティングされる。ある実施形態では、タキサンはパクリタキセルである。種々の実施形態では、この組成物は、ナノ粒子形態中に約50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%のいずれかより多くのタキサンまたはその誘導体を含む。ある実施形態では、タキサンまたはその誘導体は、ナノ粒子のうち重量として約50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%のいずれかより多くを構成する。ある実施形態では、ナノ粒子は実質的にポリマーコア物質を含まない。ある実施形態では、ナノ粒子中のタキサンはアモルファスである。ある実施形態では、ナノ粒子組成物を作製するために用いられるタキサンは、無水型である。ある実施形態では、タキサンナノ粒子組成物中のキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)対タキサンの重量比は、約18:1以下、15:1以下、14:1以下、13:1以下、12:1以下、11:1以下、10:1以下、9:1以下、8:1以下、7.5:1以下、7:1以下、6:1以下、5:1以下、4:1以下、または3:1以下のいずれかである。ある実施形態では、アルブミン対タキサンの重量比は約18:1〜1:18、10:1〜1:10、9:1〜1:1、8:1〜1:1、7.5:1〜1.1、7:1〜1:1、6:1〜1:1、5:1〜1:1、4:1〜1:1、または3:1〜1:1のいずれかである。ある実施形態では、この組成物は、タキサンおよびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン、例えば、アルブミンでコーティングされたパクリタキセルの粒子)を含む粒子(例えば、ナノ粒子)の安定な水性懸濁液を含む。
【0131】
ある実施形態では、この組成物は、約1000ナノメートル(nm)以下、例えば、約900nm、800nm、700nm、600nm、500nm、400nm、300nm、200nm、100nm、90nm、80nm、70nm、60nm、または50nmのいずれか以下という平均(averageまたはmean)直径を有する任意の形状(例えば、球状または非球状)のナノ粒子を含む。ある実施形態では、この粒子の平均直径は、約200nm以下である。ある実施形態では、この組成物は無菌ろ過可能である。ある実施形態では、この組成物は無菌濾過される。ある実施形態では、この粒子の平均直径は約100nm以下である。ある実施形態では、この粒子の平均直径は約20〜約400nmである。ある実施形態では、この粒子の平均直径は約40〜約200nmである。ある実施形態では、この粒子は無菌ろ過可能である。ある実施形態では、この組成物は、約1000nm、900nm、800nm、700nm、600nm、500nm、400nm、300nm、200nm、100nm、90nm、80nm、70nm、60nm、または50nmのいずれかの直径を有するナノ粒子を含む。ある実施形態では、この組成物は、ほぼ50nm〜150nm、50nm〜75nm、50nm〜100nm、75nm〜100nm、100nm〜125nm、125nm〜150nm、100nm〜150nm、150nm〜175nm、または175nm〜200nmのいずれかの直径を有するナノ粒子を含む。ある実施形態では、ナノ粒子のうちほぼ50%以上、65%以上、75%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、または99.9%以上のいずれかの直径が特定される範囲内に包含され得る。ナノ粒子の平均直径は、当該分野で公知の方法、例えば、レーザー光散乱によって決定され得る。
【0132】
本明細書に記載されるナノ粒子は、乾燥処方物(例えば、凍結乾燥組成物)中に存在してもよいし、または生体適合性の媒体に懸濁されてもよい。適切な生体適合性の媒体としては限定はしないが、水、緩衝化水性媒体、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、アミノ酸類の必要に応じて緩衝化された溶液、タンパク質類の必要に応じて緩衝化された溶液、糖類の必要に応じて緩衝化された溶液、ビタミン類の必要に応じて緩衝化された溶液、合成ポリマー類の必要に応じて緩衝化された溶液、脂質含有エマルジョンなどが挙げられる。
【0133】
ある実施形態では、このナノ粒子は、血液不溶性のガスを含まず、ガスの充填したマイクロバブルも含まない。
【0134】
ある実施形態では、このキャリアタンパク質は、キャリアタンパク質なしの組成物に比較してヒトに対するタキサンの投与に関連する1つ以上の副作用を軽減するのに有効な量で存在する。これらの副作用としては限定はしないが、骨髄抑制、神経毒性、過敏症、炎症、静脈刺激、静脈炎、疼痛、皮膚刺激、好中球減少症性発熱、アナフィラキシー反応、血液毒性および脳または神経学的毒性、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。ある実施形態では、タキサン(例えば、パクリタキセル)の投与に関連する過敏症反応、例えば、重篤な皮膚発疹、じんましん、紅潮、呼吸困難、頻脈、肺性高血圧(例えば、リンパ腫);胸痛;黒いタール状の便;病的な全身感覚;息切れ;肥大した腺;体重減少;黄色い肌および眼、腹痛;原因不明の不安感;血尿または混濁尿;骨痛;悪寒;錯乱;痙攣(てんかん発作);咳;尿意切迫感の減少;速い、遅いまたは不規則な心拍;熱;高頻度の尿意切迫感;口渇増大;食欲不振;腰痛または側部痛;情緒の変調;筋肉痛または生理痛;悪心または嘔吐;口唇、手または足の周囲の知覚麻痺または刺痛;排尿が有痛または困難;発疹;咽頭炎;口唇または口内の痛みまたは白斑;手、かかと、足または下腿の腫れ;肥大した腺;呼吸困難;異常出血またはブラッシング;異常な疲労感または衰弱;脚の衰弱または重さ、皮膚の潰瘍または痛み、体重増加、座瘡;便秘;下痢;運動障害;頭痛;エネルギー減退または衰弱;筋肉の痛みまたは凝り;疼痛;振盪または震え;睡眠障害;鼻血;ならびに/あるいは顔面腫脹を軽減する方法が提供される。しかし、これらの副作用は、単に例示であって、タキサン(例えば、パクリタキセル)に関連する他の副作用または副作用の組み合わせが軽減され得る。この副作用は、即時型であっても遅延型(例えば、処置開始後、数日、数週、数ヶ月、または数年生じない)であってもよい。
【0135】
組成物中の抗菌剤
ある実施形態では、本発明の組成物はまた、抗菌剤(例えば、タキサン(例えば、パクリタキセル)に追加の作用物質)を、処置の方法、投与の方法、および本明細書に記載の投薬レジメンでの使用のための組成物中で微生物増殖を有意に阻害する(例えば、遅延する、低減する、遅らせる、および/または予防する)ために十分な量で含む。例示的な微生物剤および微生物剤の使用についてのバリエーションは、2006年8月30日出願、米国特許出願第11/514,030号に開示される(例えば、段落[0036]〜[0058]に記載されるものなど)。ある実施形態では、この抗菌剤は、キレート剤、例えば、EDTA、エデト酸塩、クエン酸塩、ペンテト酸塩、トロメタミン、ソルベート、アスコルビン酸塩、その誘導体またはその混合物である。ある実施形態では、この抗菌剤は、多座のキレート剤である。ある実施形態では、この抗菌剤は非キレート剤であり、例えば、亜硫酸塩、安息香酸、ベンジルアルコール、クロロブタノールおよびパラベンのいずれかである。ある実施形態では、上記で考察されたタキサン以外の抗菌剤は、本明細書に記載される処置方法、投与方法および投薬レジメンでは含まれず、用いられもしない。
【0136】
糖含有組成物
ある実施形態では、本発明の組成物は、本明細書に記載の処置方法での使用のための糖を包含する。ある実施形態では、本発明の組成物は、本明細書に記載される処置の方法における使用のための糖および抗菌剤の両方を含む。例示的な糖類および糖類の使用についてのバリエーションは、2006年8月30日出願、米国特許出願第11/514,030号に開示される(例えば、段落[0084]〜[0090]に記載されるものなど)。ある実施形態では、この糖類は、凍結乾燥された組成物がその糖類なしで溶解するよりも急速にその凍結乾燥組成物を水および/または水性溶液中で溶解または懸濁させる再構成の促進因子として機能する。ある実施形態では、この組成物は、乾燥組成物を再構成または再懸濁することによって得られる液体(例えば、水性)組成物である。ある実施形態では、この組成物中の糖の濃度は、約50mg/mlを超える。ある実施形態では、この糖は、その糖がない組成物に比較してその組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)またはその誘導体の安定性を向上するのに有効である量である。ある実施形態では、その糖は、その糖がない組成物に比較してその組成物中のろ過性を改善するのに有効である量である。
【0137】
本明細書に記載される糖含有組成物は、1つ以上の抗菌剤、例えば、本明細書に、または2006年8月30日出願、米国特許出願第11/514,030号に記載される抗菌剤をさらに含み得る。さらに、1つ以上の糖、他の再構成促進因子(例えば、その全体が参照によって本明細書に援用される、米国特許出願公開第2005/0152979号に記載されるもの)もこの組成物に添加されてもよい。ある実施形態では、糖は、本明細書に記載される処置方法、投与方法および投薬レジメンでは含まれず、用いられもしない。
【0138】
組成物中の安定化剤
ある実施形態では、本発明の組成物はまた、本明細書に記載される処置方法、投与方法および投薬レジメンでの使用のための安定化剤を含む。ある実施形態では、本発明の組成物は、本明細書に記載される処置方法、投与方法および投薬レジメンでの使用のための抗菌剤および/または糖および/または安定化剤を含む。例示的な安定化剤および安定化剤の使用のためのバリエーションは、2006年8月30日出願、米国特許出願第11/513,756号に開示される(例えば、段落[0038]〜[0083]および[0107]〜[0114]に記載されるものなど)。本発明は、別のバリエーションにおいて、所望の治療効果を保持しており、かつ長期の保管、温度上昇、または非経口投与のための希釈などの特定の条件に曝された際に物理的および/または化学的に安定なままである、タキサン(例えば、パクリタキセル)の組成物およびその調製の方法を提供する。安定化剤としては、例えば、キレート剤(例えば、クエン酸塩、リンゴ酸、エデト酸塩またはペンテト酸塩)、ピロリン酸ナトリウムおよびグルコン酸ナトリウムが挙げられる。ある実施形態では、本発明は、クエン酸、ピロリン酸ナトリウム、EDTA、グルコン酸ナトリウム、クエン酸塩および塩化ナトリウムなどを含むタキサン(例えば、パクリタキセル)の薬学的処方物を提供する。別のバリエーションでは、本発明は、処方物を調製するために用いられるタキサン(例えば、パクリタキセル)が組成物へ組み込まれる前に無水型である、タキサンの組成物を提供する。
【0139】
ある実施形態では、安定化剤は、本明細書に記載される処置方法、投与方法および投薬レジメンでは含まれず、用いられもしない。
【0140】
薬学的組成物および処方物
本明細書に記載される組成物は、記載されるナノ粒子組成物(単数または複数)と、本明細書に記載される処置方法、投与方法および投薬レジメンでの使用について当該分野で公知である、薬学的に受容可能な担体、賦形剤、安定化剤または他の作用物質とを組み合わせることによって、処方物、例えば、薬学的処方物の調製に用いられ得る。ナノ粒子の負のゼータ電位を増大することによって安定性を増大するために、特定の負に荷電された成分を添加してもよい。このような負に荷電された成分としては限定はしないが、胆汁酸塩、胆汁酸、グリコール酸、コール酸、ケノデオキシコール酸、タウロコール酸、グリコケノデオキシコール酸、タウロケノデオキシコール酸、リトコール酸、ウルソデオキシコール酸、デヒドロコール酸など;リン脂質類、例えば、以下のホスファチジルコリン類を含む、レシチン(卵黄)ベースのリン脂質類:パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、パルミトイルリノレオイルホスファチジルコリン、ステアロイルリノレオイルホスファチジルコリン、ステアロイルオレオイルホスファチジルコリン、ステアロイルアラキドイルホスファチジルコリンおよびジパルミトイルホスファチジルコリン。他のリン脂質としては、L−α−ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、水素化ダイズホスファチジルコリン(HSPC)および他の関連の化合物が挙げられる。負に荷電されたサーファクタントまたは乳化剤、例えば、コレステリル硫酸ナトリウムなども添加物として適切である。
【0141】
ある実施形態では、この組成物は、ヒトへの投与に適切である。本発明の組成物の広範な種々の適切な処方物がある(例えば、その全体が参照によって本明細書に援用される、米国特許第5,916,596号および米国特許第6,096,331号を参照のこと)。以下の処方物および方法は、単なる例示であって、決して限定ではない。経口投与のために適切な処方物は、(a)溶液、例えば、希釈液、例えば、水、生理食塩水またはオレンジジュースに溶解された有効量の化合物、(b)固体または顆粒として活性成分の所定の量を各々が含有する、カプセル、子袋(sachets)または錠剤、(c)適切な液体中の懸濁物、(d)適切なエマルジョン、および(e)粉末を含み得る。錠剤型としては、1つ以上のラクトース、マンニトール、コーン・スターチ、ジャガイモデンプン、微結晶性セルロース、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、および他の賦形剤、着色剤、希釈物、緩衝剤、湿潤剤、防腐剤、香味料および薬理学的に適合する賦形剤を挙げることができる。トローチ剤(lozenge)型は、活性成分を香料、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカント中に、ならびに不活性基剤、例えば、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシア、エマルジョン、ゲルなどの中に活性成分を含んでいる芳香錠(pastilles)を含み得、これは活性成分に加えて、当該分野で公知の賦形剤などを含む。
【0142】
非経口投与のために適切な処方物としては、水性および非水性の、等張性の無菌注射液が挙げられ、これは、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤および意図するレシピエントの血液と処方物を適合させる溶液、ならびに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤および防腐剤を含み得る水性および非水性の無菌懸濁液を含み得る。この処方物は、単位用量または複数用量のシールされた容器、例えば、アンプルおよびバイアル中に保存されてもよく、そしてフリーズ・ドライ(凍結乾燥)条件で保存可能であり、注射について本明細書に記載された処置方法、投与方法および投薬レジメンには、使用の直前に無菌液賦形剤の添加しか必要でない。即時的注射液および懸濁液は、以前に記載された種類の無菌の粉末、顆粒および錠剤から調製され得る。注射可能な処方物が好ましい。
【0143】
本発明はまた、タキサン(例えば、パクリタキセル)またはその誘導体および本発明の方法における使用のための吸入による投与に適切なキャリアを含むナノ粒子組成物の処方物を含む。エアロゾル投与に適切な処方物は、本発明の組成物を含み、水性および非水性の等張性の無菌液を含み、これは、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤および溶質、ならびに水性および非水性の無菌懸濁液を含んでもよく、これは、懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤および防腐剤を、単独でまたは他の適切な成分と組み合わせて含んでもよく、これは、吸入を介して投与されるべきエアロゾル処方物中に作製され得る。これらのエアロゾル処方物は、加圧された受容可能な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの中に入れられてもよい。それらはまた、ネブライザーまたは噴霧器におけるような、非加圧調製物のための薬剤として処方されてもよい。
【0144】
ある実施形態では、この組成物は、約4.5〜約9.0、例えば、約5.0〜約8.0、約6.5〜約7.5、および約6.5〜約7.0などの任意の範囲のpHを有するように処方する。ある実施形態では、この組成物のpHは、約6以上、例えば、6.5、7または8(例えば、約8)のいずれか以上などに処方される。この組成物はまた、グリセロールなどの、適切な等張化剤の添加によって血液と等張にされ得る。
【0145】
本発明のナノ粒子は、ハードカプセルまたはソフトカプセルに封入されてもよいし、錠剤に圧縮されてもよいし、または飲料もしくは食物と組み合されてもよいし、また食餌に組み込まれてもよい。カプセルは、ナノ粒子と不活性薬物希釈液とを混合すること、および適切なサイズのハードゼラチンカプセルにこの混合物を挿入することによって処方され得る。ソフトカプセルが所望される場合、受容可能な植物油、軽質石油または他の不活性油とのナノ粒子のスラリーを、ゼラチンカプセル中に機械によってカプセル化してもよい。
【0146】
またこの組成物および本明細書に記載の処方物を含む単位剤形も提供される。これらの単位剤形は、単一または複数の単位剤形中の適切なパッケージング中に貯蔵されてもよく、またさらに滅菌およびシールされてもよい。例えば、薬学的組成物(例えば、薬学的組成物の用量または単位剤形)としては、(i)タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質を含むナノ粒子、ならびに(ii)薬学的に受容可能なキャリアを挙げることができる。ある実施形態では、この薬学的組成物はまた、ガンを処置するために有用な1つ以上の他の化合物(またはその薬学的に受容可能な塩)を包含する。種々の実施形態では、組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の量は、以下の任意の範囲に含まれる:約5〜約50mg、約20〜約50mg、約50〜約100mg、約100〜約125mg、約125〜約150mg、約150〜約175mg、約175〜200約mg、約200〜約225mg、約225〜約250mg、約250〜約300mg、約300〜約350mg、約350〜約400mg、約400〜約450mg、または約450〜約500mg。ある実施形態では、組成物(例えば、投薬量または単位剤形)中のタキサン(例えば、パクリタキセル)またはその誘導体の量は、約5mg〜約500mgの範囲、例えば、約30mg〜約300mgまたは約50mg〜約200mgのタキサン(例えば、パクリタキセル)またはその誘導体の範囲内である。ある実施形態では、そのキャリアは、非経口投与(例えば、静脈内投与)のために適切である。ある実施形態では、タキサン(例えば、パクリタキセル)またはその誘導体は、組成物中に含まれるガンの処置のための唯一の薬学的に受容可能な作用物質である。
【0147】
ある実施形態では、本発明は、ガンの処置のための剤形(例えば、単位剤形)であって(i)キャリアタンパク質およびタキサン(例えば、パクリタキセル)またはその誘導体の量が単位剤形中で約5mg〜約500mgの範囲であるタキサン(例えば、パクリタキセル)を含むナノ粒子と、(ii)薬学的に受容可能なキャリアとを含む剤形を特徴とする。ある実施形態では、単位剤形中のタキサン(例えば、パクリタキセル)またはその誘導体の量は、約30mg〜約300mgを含む。
【0148】
また、本明細書に記載の処置方法、投与方法および投薬レジメンにおける使用のための適切なパッケージングにおける、本明細書に記載の組成物、処方物および単位剤形を含む製品も提供される。本明細書に記載される組成物のための適切なパッケージングは当該分野で公知であり、例えば、バイアル(例えば、密閉バイアル)、容器(例えば、密閉容器)、アンプル、ボトル、ジャー、可塑性容器(例えば、密閉マイラー(Mylar)バッグまたはプラスチックバッグ)などが挙げられる。これらの製品はさらに滅菌および/または密閉され得る。
【0149】
キット
本発明はまた、処置の方法、投与の方法、および本明細書に記載の投薬レジメンにおける使用のための、本明細書に記載される組成物、処方物、剤形および製品を備えるキットを提供する。本発明のキットは、タキサン(例えば、パクリタキセル)含有ナノ粒子組成物(処方物または単位剤形および/または製品)を備える1つ以上の容器を備え、ある実施形態では、本明細書に記載の任意の処置の方法による使用のための説明書をさらに備える。ある実施形態では、このキットは、i)タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子組成物を含んでいる組成物と、ii)ガンの処置のために、ナノ粒子および他の化学療法剤を同時におよび/または連続して投与するための説明書とを備える。種々の実施形態では、キット中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の量は、以下の範囲のいずれかに含まれる:約5mg〜約20mg、約20mg〜約50mg、約50mg〜約100mg、約100mg〜約125mg、約125mg〜約150mg、約150mg〜約175mg、約175mg〜約200mg、約200mg〜約225mg、約225mg〜約250mg、約250mg〜約300mg、約300mg〜約350mg、約350mg〜約400mg、約400mg〜約450mg、または約450mg〜約500mg。ある実施形態では、キット中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の量は、約5mg〜約500mg、例えば、約30mg〜約300mg、または約50mg〜約200mgの範囲である。ある実施形態では、このキットは、ガンに有用である、1つ以上の他の化合物(すなわち、タキサン以外の1つ以上の化合物)を含む。
【0150】
本発明のキットにおいて提供される説明書は代表的には、表示または添付文書上の記載された説明書(例えば、キットに備えられた紙のシート)であるが、機械読み取り可能な説明書(例えば、磁気または光学記録ディスクに保持される説明)も利用可能である。ナノ粒子の使用に関する説明書は一般に、意図する処置のための投薬、投与スケジュール、および投与経路に関する情報を包含する。このキットはさらに、処置に適切な個体を選択する説明書を備えてもよい。
【0151】
本発明はまた、本明細書に記載される組成物(または、単位剤形および/または製品)を備えるキットを提供し、さらに組成物を用いる方法、例えば、本明細書にさらに記載の使用に対する説明書(単数または複数)を備えてもよい。ある実施形態では、本発明のキットは、上記のパッケージングを備える。他の実施形態では、本発明のキットは、上記のパッケージングおよび緩衝液を含む第二のパッケージングを備える。商業的観点および使用者の観点から所望される他の材料もさらに包含されてもよく、これには他の緩衝液、希釈液、フィルター、ニードル、シリンジおよび本明細書に記載の任意の方法を行うための説明のある添付文書を含む。
【0152】
本発明の併用療法については、キットは、ガンの有効な処置のために同時および/または連続して第一および第二の治療剤を投与するための説明書を備え得る。第一および第二の治療剤は、別の容器に存在しても、単一の容器に存在してもよい。キットは1つの別個の組成物を備えてもよいし、または2つ以上の組成物(1つの組成物が第一の治療剤を含み、かつ1つの組成物が第二の治療剤を含む)を備えてもよいことが理解される。
【0153】
長期間、例えば、1週、2週、3週、4週、6週、8週、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月またはそれより長くのいずれかにわたって有効な処置を個体に提供するために本明細書に開示のとおりタキサン(例えば、パクリタキセル)の十分な投薬量を備えるキットも提供され得る。キットはまた、タキサン(例えば、パクリタキセル)組成物、薬学的組成物および本明細書に記載の処方物の複数単位用量、ならびに使用説明書を備えてもよく、薬局、例えば、病院の薬局および調剤薬局における保管および使用に十分な量でパッケージングし得る。ある実施形態では、このキットは、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびアルブミン(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、パクリタキセル))を含むナノ粒子の適切な水性懸濁物を一般に形成する、再構成、再懸濁または再水和され得る乾燥(例えば、凍結乾燥)組成物を備える。
【0154】
本発明のキットは、適切なパッケージングである。適切なパッケージングとしては、限定はしないが、バイアル、ボトル、ジャー、可塑性パッケージング(例えば、密閉マイラーバッグまたはプラスチックバッグ)などが挙げられる。キットは必要に応じて追加の成分、例えば、緩衝液および解釈する情報を備えてもよい。
【0155】
組成物の作製方法
キャリアタンパク質および水溶性に乏しい薬剤を含む組成物を作製する方法は、当該分野で公知である。例えば、水溶性の乏しい薬剤およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子は、高剪断力(例えば、超音波、高圧ホモジナイゼーションなど)の条件下で調製され得る。これらの方法は、例えば、米国特許第5,916,596号;同第6,506,405号;および同第6,537,579号に開示されており、またその全体が参照によって本明細書に各々援用される米国特許出願公開第2005/0004002号A1にも開示される。
【0156】
要するに、タキサン(例えば、パクリタキセル)は、有機溶媒に溶解される。適切な有機溶媒としては、例えば、ケトン、エステル、エーテル、塩素系溶媒および当該分野で公知の他の溶媒が挙げられる。例えば、有機溶媒は、塩化メチレン、クロロホルム/エタノール、またはクロロホルム/t−ブタノール(例えば、ほぼ1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1もしくは9:1のいずれかの比、または約3:7、5:7、4:6、5:5、6:5、8:5、9:5、9.5:5、5:3、7:3、6:4または9.5:0.5のいずれかの比を有する)であってもよい。その溶液をキャリアタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)に添加する。この混合物を高圧ホモジナイゼーションに供する(例えば、Avestin,APV Gaulin,Microfluidizer(商標)、例えば、Microfluidics,StanstedのMicrofluidizer(商標)Processor M−110EHまたはUlrta Turraxホモジナイザー)。このエマルジョンを、約2〜約100サイクル、例えば、約5〜約50サイクル、または約8〜約20サイクル(例えば、およそ8、10、12、14、16、18または20サイクルのいずれか)の間、高圧ホモジナイザーを通じてサイクルしてもよい。次いで、その有機溶媒を、バッチ方式または連続操作で作動され得る、限定はしないが、ロータリーエバポレーター、流下膜式蒸発器、ワイプド・フィルム・エバポレーター、スプレー乾燥器などを含むこの目的に公知の適切な装置を利用するエバポレーションによって除去してもよい。この溶媒は、減圧下(例えば、約25mmHg、30mmHg、40mmHg、50mmHg、100mmHg、200mmHg、または300mmHgのいずれか)で除去し得る。減圧下で溶媒を除去するために用いられる時間は、処方物の容積に基づいて調整されてもよい。例えば、300mLのスケールで作製した処方物については、その溶媒は、約5〜約60分(例えば、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、18、20、25または30分のいずれか)にわたって、約1〜約300mmHg(例えば、約5〜100mmHg、10〜50mmHg、20〜40mmHg、または25mmHgのいずれか)で除去されてもよい。
【0157】
所望の場合、ヒトアルブミン溶液を分散液に添加して、分散液中のタキサン(例えば、パクリタキセル)に対するヒト血清アルブミンの比を調節するか、またはタキサン(例えば、パクリタキセル)の濃度を調節してもよい。例えば、ヒト血清アルブミン溶液(例えば、25%w/v)を添加して、ヒト血清アルブミン対タキサン(例えば、パクリタキセル)の比を、ほぼ18:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7.5:1、7:1、6:1、5:1、4:1または3:1のいずれかに調節してもよい。例えば、ヒト血清アルブミン溶液(例えば、25%w/v)または別の溶液を添加して、分散液中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の濃度を、約0.5mg/ml、1.3mg/ml、1.5mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、40mg/mlまたは50mg/mlのいずれかに調節する。この分散液を複数のフィルター、例えば、1.2μmおよび0.8/0.2μmのフィルターの組み合わせ;1.2μm、0.8μm、0.45μmおよび0.22μmのフィルターの組み合わせ;または当該分野で公知の任意の他のフィルターの組み合わせを通して連続的にろ過してもよい。得られた分散液をさらに凍結乾燥してもよい。ナノ粒子組成物は、バッチプロセスまたは連続プロセスを用いて作製してもよい(例えば、大規模での組成物の作製)。
【0158】
所望の場合、第二の治療(例えば、ガンを処置するのに有用な1つ以上の化合物)、抗菌剤、糖、および/または安定化剤もこの組成物に含んでもよい。この追加の作用物質は、タキサン(例えば、パクリタキセル)/キャリアタンパク質組成物の調製の間、タキサン(例えば、パクリタキセル)および/またはキャリアタンパク質とともに混合されてもよいし、またはタキサン(例えば、パクリタキセル)/キャリアタンパク質組成物の調製の後に添加されてもよい。ある実施形態では、この作用物質は、凍結乾燥の前にタキサン(例えば、パクリタキセル)/キャリアタンパク質組成物と混合される。ある実施形態では、この作用物質は、凍結乾燥された薬剤/キャリアタンパク質組成物に添加される。ある実施形態では、作用物質の添加によって、組成物のpHを変化させるとき、組成物中のpHは一般に(ただし必須ではないが)所望のpHに調節される。組成物の例示的なpH値としては、例えば、約5〜約8.5の範囲が挙げられる。ある実施形態では、組成物のpHは、約6以上に、例えば、約6.5、7、または8(例えば、約8)のいずれか以上などに調節される。
【0159】
他に定義しない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語および科学用語の意味は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解される意味である。本明細書に記載されるものに類似のまたは等価の任意の方法および材料も本発明を実施または試験するために用いてもよいことも当業者には理解される。
【0160】
以下の実施例は、本発明を例示するものであって限定するものではない。
【実施例】
【0161】
本実施例は、本発明の純粋な例示を意図しており、従って、本発明を限定するとは決してみなされるべきではなく、また上記で考察される本発明の局面およびバリエーションを記載および説明する。用いる数(例えば、量、温度など)に関しては正確性を保証する労力を払っているが、ある程度の実験誤差および偏差が見込まれるべきである。他に示さない限り、部分は重量部分であり、分子量は平均分子量であり、温度はセ氏温度であり、かつ圧力は大気圧またはその付近である。
【0162】
(実施例1:パクリタキセルおよびアルブミンでのナノ粒子組成物の処方のための例示的方法)
本実施例はパクリタキセル/アルブミンの処方物を提供する。この組成物は、米国特許第5,439,686号および同第5,916,596号に記載されるように本質的に調製した。要するに、パクリタキセルを有機溶媒(例えば、塩化メチレンまたはクロロホルム/エタノール混合物)に溶解して、その溶液をヒト血清アルブミン溶液に添加した。その混合物を低RPMで5分間ホモジナイズして、粗エマルジョンを形成し、次いで高圧ホモジナイザーに移した。この乳化は9000〜40,000psiで行ったが、このエマルジョンを少なくとも5サイクルの間、リサイクリングした。得られた系をロータリーエバポレーターに移して、有機溶媒を40℃、減圧下(30mmHg)に20〜30分間で急速に取り出した。次いで分散液をさらに48時間凍結乾燥した。必要に応じて追加の抗菌剤(単数または複数)を含んでもよい無菌の水または生理食塩水の添加によって、得られたケーキをもとの分散液に再構成した。
【0163】
(実施例2:再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌を有する白金感受性患者を処置するのにおけるナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル(Nab−パクリタキセル)の有効性の評価)
本研究の主な目的は、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌を有する白金感受性患者における客観的な応答率を決定することであった。本研究はまた、処置の間の無増悪生存、全生存、クオリティー・オブ・ライフ、ならびにこの患者集団における処置の安全性および毒性を評価した。
【0164】
評価した患者集団
患者は、以下の基準の全てを満たす場合、本研究への包含に適格であった:卵巣、卵管または腹膜の上皮癌を組織学的または細胞学的に確認し(任意のステージ、ステージ1であればグレード2〜3)、測定可能な疾患なしにおいてRECISTまたはCA−125の増大(>70)によって測定可能な疾患を有し、事前の白金ベースの化学療法を受けており、白金感受性とみなされ(すなわち、白金ベースの化学療法の完了から6ヶ月を超える無処置期間がある)、ECOGパフォーマンス・ステータス(Performance Status)(PS)0〜2を有し、グレード1以下の既存の末梢神経障害があり、かつ施設内倫理委員会(Institutional Review Board)の承認したインフォームド・コンセントのサインがあった。患者は、以下の基準のいずれかを満たす場合、本研究から除外した:以前の未処置のステージ1、グレード1の疾患を有した、化学療法にナイーブであった、2つ以上の以前のレジメンまたは白金ベースでない以前のレジメンを受けており、非上皮性疾患を有し、70以下のCA−125を有する測定不能疾患を有し、登録の6ヶ月内のタキサン、またはNab−パクリタキセルでの任意の以前の処置を受けていた。
【0165】
処置スケジュール
前投薬は処置医師の裁量で投与した。患者は、各々の21日サイクルの1日目に30分間、260mg/mのNab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標))をIV投与された。3週ごとに連続的サイクルを開始して、疾患増悪、容認できない毒性が証明されるか、または6サイクルまで続けた。疾患の測定がCA−125の上昇のみであった患者では、処置の3サイクルまでは、応答を評価する前に処置医師の判定で投与すべきであった。CRを達成した患者では、処置医師の裁量でさらに2サイクルを与えてもよく、従って、CR患者は、最大8サイクルを受けることが適格であった。
【0166】
評価(アセスメント)
ベースライン:完全な病歴および身体的所見、ECOG・パフォーマンス・ステータスおよび末梢神経障害の評価、CBC、CMP、CA−125、妊娠検査(必要な場合)、疾患の部位の臨床的および放射線学的評価、検尿、ECGおよび完了FACT−Oクオリティー・オブ・ライフのアンケートを確認した。
【0167】
処置の間(各々のサイクルの開始前):簡易な病歴および身体的所見、ECOG・パフォーマンス・ステータスおよび末梢神経障害の評価、CBC、CMP、CA−125、妊娠テスト(必要な場合)、腫瘍応答の臨床的および放射線学的評価、疾患の他の部位の評価、毒性評価、ならびに完了FACT−Oクオリティー・オブ・ライフのアンケート。これらの同じ評価を、患者が研究処置を中止した時点および最後の投与の後3ヶ月ごとに全部で18ヶ月行った。応答は、RECIST基準、CA−125基準またはその両方で評価した。Therasse Pら、J.NCI 95:205〜16(2000)を参照のこと。RECISTを用いる応答評価は、通常適用される定義に従った。
【0168】
CA−125を用いて、完全寛解を、前処置値から少なくとも28日間の正常な値の範囲までの復帰として定義した。Rustinら、Clin.Cancer Res.10(11):3919〜26(2004)を参照のこと。部分反応とは、前処置値から持続して50%を超える減少として規定した。安定な疾患とは、治療の十分なトライアル後、なんら新規な臨床測定可能な疾患なしに28日にわたって持続してCA−125の50%を超える増大と規定した。進行性の疾患は、治療の十分なトライアル後、CA−125の持続的な50%を超える増大または新規の臨床的に評価可能な疾患の発達として規定した。増大は、底(nadir)(登録以来最低のCA−125値)から測定した。
【0169】
有害事象、PD、ノンコンプライアンスなどに起因して中断した患者は、生存、追加の治療、再発または進行の部位および日数のみ追跡した。有害事象のデータは、最終用量の後に、30日間収集した。
【0170】
患者の特徴
ほとんどの登録患者が事前の白金ベースの化学療法以来、12ヶ月を超える疾患再発があった。
【表1】


ステータス
【表2】

【0171】
処置に対する応答
全奏功率は、RECISTもしくはCA−125のいずれか、または両方を用いて計算し、ORR(CP+PR)は63.2%であった。3例の患者は評価不能であり、2例は処置の開始後に不適格であることが見出され、1例の患者は全く処置されなかった。全生存および無増悪生存は、それぞれ生存の割合または進行しなかった割合(y軸)に対する月数(x軸)に関してプロットした。図1aおよび図1bを参照のこと。
【表3】


【表4】

【0172】
処置関連の毒性>グレード3
56例の患者を処置した。グレード3の神経障害が患者の8.7%で生じた。
【表5】


【表6】

【0173】
推定のクオリティー・オブ・ライフ
クオリティー・オブ・ライフ(FACT−O)のアンケートは、ベースラインでおよび各々のサイクルの前に完了した。測定した全クオリティー・オブ・ライフは、治療の開始時点でベースラインから減少した。アンケートによって測定した場合、クオリティー・オブ・ライフにおける最初の減退に対する主な寄与因子は、機能的、社会的および身体的な健康評価であった。全ての測定値が治療の完了時に改善し、ベースラインに戻った。
【0174】
結論
Nab−パクリタキセルは、白金感受性の再発性の卵巣、腹膜または卵管癌を有する患者において単剤として極めて活性であった。ORRは64%であって、臨床的利益の率は、77%であった。毒性は、耐容性であってかつ管理可能であった。
【0175】
(実施例3:再発性の白金感受性の卵巣または原発性の腹膜癌を有する患者を処置するのにおけるNab−パクリタキセルに加えてカルボプラチンの有効性の評価)
この非盲検、非無作為化研究をデザインして、白金ベースの化学療法後の転移性の卵巣癌または原発性の腹膜癌を有する患者でのnab−パクリタキセル(130nmのアルブミン結合粒子型のパクリタキセル)に加えてカルボプラチンの有効性および安全性を決定した。
【0176】
方法
適格な患者は、測定可能な疾患(RECIST基準に基づく)があるかまたは処置前のCA−125値が測定可能な疾患なしの正常の上限の2倍を超えるかのいずれかである必要があった。患者はまた、良好なパフォーマンス・ステータス、十分な肝臓/腎臓機能、末梢神経障害<グレード1、および平均余命>6カ月を有する必要があった。患者は、タキサン含有レジメンを含む卵巣癌の事前の化学療法を受けていてもよく、ただしその処置は登録の少なくとも6カ月前に終了した。Nab−パクリタキセル100mg/mは、28日ごとに1、8および15日目に30分にわたってIV投与した。カルボプラチンAUC6を、28日ごとに1日目に1〜2時間にわたってIV投与した。処置は、6サイクル間(または耐容できない毒性のないときはより長期)継続した。計画されたサンプルサイズは43例の患者であった(39例は評価可能)。有効性は、測定可能な疾患を有する患者については腫瘍サイズの変化、または測定不能な疾患を有する患者についてはCA−125レベルにおける変化によって決定した。
【0177】
結果
現在まで、10例の患者が登録されており、そのうちの2例は2サイクルの処置を完了した;両方の患者がその疾患の50%が減少していた(部分反応)。1例の患者がグレード4の好中球減少症を有し;グレード3の血液学的事象は好中球減少(2例の患者)、血小板減少症(3)、および貧血(1)であった。重篤な頭痛および重篤な悪心が、2例の患者各々で報告され;4つの事象全てが投薬を必要とした。
【0178】
結論
予備的な結果によって、nab−パクリタキセル100mg/mに加えてカルボプラチンAUC6は、再発性の白金感受性の卵巣または原発性の腹膜癌を有する患者の抗癌活性を有すること、および処置が十分耐容されると思われることが示された。
【0179】
(実施例3B:再発性の白金感受性卵巣癌または原発性の腹膜癌を有する患者でのAbraxane(登録商標)に加えてカルボプラチン:応答および生存および無増悪生存の評価)
本研究の国的は、再発性の白金感受性の卵巣癌または原発性の腹膜癌を有する患者の処置におけるAbraxane(登録商標)に加えてカルボプラチンの有効性を評価することであった。
【0180】
方法
疾患の測定可能なまたは生物学的な証拠を有する、再発性の白金感受性の卵巣癌または原発性の腹膜癌を有する患者には、28日ごとに、静脈内に6サイクルの間、1、8および15日目にAbraxane(登録商標)100mg/mを、1日目にカルボプラチンAUC5を与えた。進行性の卵巣癌を有する患者のこの研究では、処置のうち6サイクルが完了した43例の患者のうち最初の29例で暫定のデータ分析を行った。患者は、静脈内Abraxane(登録商標)に加えてカルボプラチンの安全性、耐容性および抗腫瘍効果に関して評価した。有効性は、処置の間、および研究後、RECIST基準を用いるCTによって測定した腫瘍サイズのベースラインからの変化、生存、無増悪生存、および再発なし生存として測定した。安全性および耐容性は、有害事象および臨床の実験評価を通じて、ならびに研究薬物投薬の間の健康診断を通じてモニターした。
【0181】
結果
29例の患者のうち26例は、6サイクルの化学療法を完了した。完全寛解が、29例のうち20例の患者(68.9%)で得られた。CT評価に基づいた部分反応は、29例の患者のうち4例(13.8%)で得られた。29例の患者のうち1例(3.4%)では、腫瘍の大きさは、第二のサイクル後に増大し、次いで減少した。29例の患者のうち2例(6.8%)が進行して、処置を中止した:1例(1/29、3.4%)がカルボプラチン毒性に対して二次的に処置を中止して、他の患者(1/29、3.4%)は、重篤な血小板減少症に対して二次的に処置を中断した。Abraxane(登録商標)に加えてカルボプラチンは、再発性の白金感受性の卵巣または原発性の腹膜癌を有効に処置するのに用いられ得る。
【0182】
(実施例4:静脈内および腹腔内の薬物動態の比較)
本研究の目的は、Nab−パクリタキセルの静脈内投与および腹腔内投与の薬物動態を比較することであった。静脈内投与のために、20匹のラットに50mg/kgのAbraxane(登録商標)を投与した。10mg/kgの投与容積は、尾静脈を介して静脈内に送達した。血液は、パクリタキセルのLC/MS/MS分析のために以下の間隔で採取した:0.0、0.083、0.25、0.5、1、2、4、8、24、48、72時間。腹腔内投与については、3匹のラットは、50mg/kgのAbraxane(登録商標)を投与された。10mg/kgの投与容積を腹腔内に送達した。血液は、パクリタキセルのLC/MS/MS分析のために以下の間隔で採取した:0.0、0.083、0.25、0.5、1、2、4、8、24、48、72時間。
【0183】
結果
パクリタキセルの血漿レベルは、LC/MS/MS分析によって測定した(図2および図3)。表7に示されるとおり、腹腔内送達によって、循環へのパクリタキセルの緩徐な吸収が生じ、ここではtmaxが約3時間で生じる。腹腔内にまたは静脈内に投与される場合、パクリタキセルの終末半減期はほぼ同じであった。IP投与後の全身曝露はIVの約50%であり(72時間にわたる)このことは、特に投与後早期(0〜4時間)の薬物の実質的な局所腹腔内曝露を示していた。72時間を超える持続的な曝露がある場合があり;しかし、この研究は72時間で終了した。
【表7】

【0184】
(実施例5:再発性のミューラー癌のAbraxane(登録商標)の腹腔内投与)
再発性疾患のための腹腔内治療は、さらなる研究を要する領域である。本研究の目的は、腹腔内に投与された場合のNab−パクリタキセルの安全、有効および最大耐容用量を決定することである。
【0185】
方法
第I相用量漸増トライアルを1コホートについて6患者で行い、十分な薬物動態学的データポイントを得る。4週ごとに投薬量を漸増させ、その結果毎週の処置の累積毒性を評価してもよい。MTDが達成されるとき、さらに10例の患者を処置して、この用量で耐容性についてのさらなる情報を連続して(または3/4週)、ならびに有効性に関する予備的情報を得る。
【0186】
Abraxane(登録商標)の腹腔内投与は、60mg/mで開始する。用量は、以下のとおり漸増する:用量レベル1:60mg/m、用量レベル2:80mg/m、用量レベル3:100mg/m、用量レベル4:125mg/m、および用量レベル5:150mg/m。10例の患者は、DLTで添加し、その研究は、約30〜40例の患者を得ることが期待される。
【0187】
患者の集団
患者は、以下の基準を満たす場合、研究に包含される:再発性のミューラー癌(卵巣、腹膜、卵管、悪性混合ミューラー腫瘍、漿液性エンド(serous endo))を有する、CT/MRIまたはSLOによる1cm未満の疾患を有する、適切なヘム/肝臓/腎臓の機能を示す、およびPS0−1。患者は、以下の基準を満たすことに基づいて除外される:腸閉塞症(または切迫)を有する、腹腔内感染が存在する、IPポート配置に対する重大な被包化/癒着または他の禁忌を有する、神経障害>グレード1が存在する、腹膜外疾患を有する、またはIVパクリタキセルおよびドセタキセルに耐容不能を示す、タキサンアレルギーの示唆。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体において、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌を処置する方法であって、タキサンおよびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量を該個体に投与することを包含する、方法。
【請求項2】
前記再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌が白金感受性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記個体が事前の白金ベースの化学療法を受けており、かつ該白金ベースの化学療法の完了から約12カ月を超える無処置間隔がある、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
タキサンおよびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含んでいる前記組成物が単独で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記タキサンがパクリタキセルである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記キャリアタンパク質がアルブミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物中の前記ナノ粒子が、約200nm未満の平均(averageまたはmean)直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
タキサンおよびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含んでいる前記組成物がNab−パクリタキセルである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記個体が、事前の化学療法を受けており、かつ前記処置の開始の前に約6カ月を超える無処置間隔がある、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記個体が、前記処置の開始の前に過敏症の症状を示さない、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記個体が前記処置の完了の際に前記再発性癌から生じる症状を示さない、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記個体は、前記処置の完了の際にCA−125レベルが低下している、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
個体において、再発性の卵巣癌、腹膜癌または卵管癌を処置する方法であって、該個体に対して:a)タキサンおよびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含んでいる組成物の有効量と、b)白金ベースの作用物質の有効量とを投与することを包含する方法。
【請求項14】
ナノ粒子および前記白金ベースの作用物質を含んでいる前記組成物が一緒に投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記白金ベースの作用物質がカルボプラチンである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記個体が、事前の白金ベースの化学療法を受けており、かつ該白金ベースの化学療法の完了から約12カ月を超える無処置間隔がある、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記タキサンがパクリタキセルである、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記キャリアタンパク質がアルブミンである、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物中の前記ナノ粒子が、約200nm未満の平均(averageまたはmean)直径を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
タキサンおよびキャリアタンパク質を含むナノ粒子を含んでいる前記組成物がNab−パクリタキセルである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記個体が、事前の化学療法を受けており、かつ前記処置の開始の前に約6カ月を超える無処置間隔がある、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記個体が、前記処置の開始の前に過敏症の症状を示さない、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記個体が前記処置の完了の際に前記再発性癌から生じる症状を示さない、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
前記個体は、前記処置の完了の際にCA−125レベルが低下している、請求項13に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−529025(P2010−529025A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510376(P2010−510376)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/007024
【国際公開番号】WO2008/150532
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(508061974)アブラクシス バイオサイエンス, エルエルシー (18)
【Fターム(参考)】