説明

再配置可能なチップを備えるマルチチャンネルピペット

手持ちサイズのマルチチャンネルピペットは、様々な中心線間隔のためのピペットチップを再配置するために、電子制御されたモータを有する。各々の再配置可能なチップフィッティングアセンブリは、モータによって駆動するローラドラム内のカム従動ピンによって駆動される。多数の吸引シリンダ用の固定ポートは、再配置可能なピペットチップフィッティングアセンブリに至る可撓性チューブの操作を容易にするために、戦略的に配される。ピペットは、ピペットチップを再配置するために、片手で便利良く操作可能なユーザインターフェースを有する。ピペットは正弦曲線のストリッパバーを備えるピペットチップ取り外し機構を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手持ちサイズのマルチチャンネル電子ピペットに関し、特に、使い捨てのピペットチップのためのチップフィッティングまたは取り付けシャフトを有する電子ピペットに関する。
【背景技術】
【0002】
手持ちサイズのマルチチャンネルピペットは、実験室の研究者が、複数のサンプルまたは試薬を、1つの容器群から別の容器群へと、マイクロタイタープレート中の1つの列のウェルから別のマイクロタイタープレート中の別の列のウェルへなどと、移動させることができるように設計されている。マルチチャンネルピペットのなかには、吸引または分注のための手動のピストン運動に依存しているものもある一方で、多くのピペットは、吸引または分注のためのピストン運動を制御するために、電子制御されたステッピングモータを使用する。実験室では、行と列の配列で24、96、384、または、1536のウェルを備える、マイクロタイタープレートまたはウェルプレートを有するのが、極めて一般的である。典型的には、常にそうあるわけではないが、ウェル間の中心線の間隔は、9mmまたはその分数またはその倍数である。したがって、ピペットチップの取り付けシャフト間の中心間間隔は、往々にしてマルチチャンネルピペットで固定され、例えば、9mmまたは4.5mmの間隔である。
【0003】
他方で、幾つかのマルチチャンネル電子ピペットによって、ユーザがチップフィッティングの間の中心間間隔手動で調節することが可能となる。この特性によって、実験室の研究者は、1つの中心線間隔を有する容器群から、異なる中心線間隔を有する別の容器群へと、液体の複数のサンプルを移動させることが可能になる。言い換えれば、市場に出回っている手持ちサイズのピペットによっては、ユーザはピペットチップを再配置することが可能となり、その結果、サンプルまたは試薬を、第1の中心線間隔(例えば、4.5mm)を有するウェル、チューブ、または他の容器群からマルチプルピペットチップに吸引することができ、その後、異なる間隔(例えば、9mm)を有するウェル、チューブ、または他の容器群へと分注することが可能である。例えば、特許文献1は、チップフィッティングの中心線間隔がピペット外部のロッドを引っ張ることによって作動するはさみ機構により手動で制御される、マルチチャンネルピペットを開示している。ピペットチップの取り付けシャフトまたはフィッティングは、ピペットチップを再配置するために必要に応じて拡大または縮小するはさみ機構に取り付けられる。個々のフィッティングは、下方のマルチチャンネルアセンブリ用のハウジング内にある溝が刻まれたトラックによって規定される経路に沿ってスライドする。この設計では、はさみ機構の複雑さによって、その中心を外れた駆動点と同じように、個々のチップフィッティングに関する中心間間隔に不正確さが生じかねない。このようなユニットは同様に2つの手動操作を要求する。1つはユニットを手動で維持する操作であり、もう1つは間隔変化機構(change-in-mechanism)である。
【0004】
手持ちサイズのピペットとは対照的に、自動固定式ピペットシステムは、第1の容器またはウェル群からの吸引と、異なる中心線間隔を有する第2の容器またはウェル群への分注を促進するために、ピペットチップの取り付けシャフト間の中心間間隔を調整すべく、かつてはカムトラックを備えたローラドラムを用いてきた。このようなシステムは、特許文献2に開示されている。当然のことながら、大きさと規模に関しては、固定の実験室設備の設計上の制約は、手持ちサイズのピペットに比べれば決定的なものではない。手持ちサイズのピペットについては、設計がコンパクトであり、重量が最小に維持されることが重要である。下方のマルチチャンネルアセンブリの前部から後部までの幅が細長く維持されることも、ユーザに取り付けられたピペットチップを見やすくするためには、特に重要である。さらに、人間工学および制御を最適にするために、ピペットの全体的な高さを最小に維持することが重要である。加えて、手持ちサイズの電子ピペットは、正確なチップ間隔と同様に正確なピペット機能を提供するだけでなく、最小の電力を使用する円滑な操作メカニズムを提供し、1つの手動操作を可能にし、直観的な制御システムを採用することも重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,235,244号
【特許文献2】米国特許第4,830,832号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の如く、本発明は、再配置可能なチップフィッティングアセンブリを有する手持ちサイズのマルチチャンネル電子ピペットの改善に関連する。好適な実施形態において、ピペットは、ユーザの掌で握られるのに適しているハンドルアセンブリ、複数の吸引シリンダを備えたシリンダブロックを有する下方のマルチチャンネルアセンブリ、マルチピストンアセンブリ、および、複数の再配置可能なチップフィッティングアセンブリを備える。各々の再配置可能なチップフィッティングアセンブリは、下方に延出するピペットチップの取り付けシャフトを有する。1つの態様において、本発明は、ピペットチップの取り付けシャフト間の中心間間隔を調節するために、チップフィッティングアセンブリの動きの制御及びチップフィッティングアセンブリの再配置のために設けられたモータを用いることに関する。このモータは、ユーザによってプログラムされ操作されるソフトウェアによって好適に制御され、吸引および分注のためにピストンを駆動させるべく、通常ステッピングモータを操作するためのソフトウェアの修正バージョンであるピペットに入れられるが、ピペットチップの中心間間隔を再配置するための追加的なモータをさらに制御するために修正される。ソフトウェアによって、ユーザが2または3の位置設定をすることが可能になるのが好ましく、この位置設定は、ピペットのユーザインターフェースのボタンを押すことによって、信頼できる従来の方法で再現可能な方式で容易に操作することができる。好適な実施形態において、吸引と分注をするためにピストンの移動を制御するステッピングモータは、当該技術分野で知られているように、上方のハンドルアセンブリに配される。中心間間隔を再配置するためにピストンの取り付けシャフトを移動させる第2モータは、下方のマルチチャンネルアセンブリに配されるのが好ましい。
【0007】
好適な下方マルチチャンネルアセンブリは、モータが取り付けられるシャーシを有し、モータの出力シャフトからローラドラムまで垂直に下方に電力を伝達するために、縦方向に積み重なった歯車を含む。縦方向に積み重なった歯車は、ローラドラム上にモータを配するだけでなく、下方マルチチャンネルアセンブリが細長い外形を維持するのを可能にする。ローラドラムは、滑らかな材料で作られ、その外表面がカムトラックで機械加工されるのが好ましい。再配置可能なチップフィッティングアセンブリの本体は、ローラドラムの下にあるとともにローラドラムと並行する少なくとも1つ、好適には2つのガイドロッド上に摺動自在に取り付けられる。再配置可能なチップフィッティングアセンブリは、シリンダブロックからの可撓性チューブを収容するポートと、下方に延出するピペットチップの取り付けシャフトと、および、上方に延出するカム従動ピン(cam following pin)とを備える。ピペットが組み立てられると、カム従動ピンはローラドラム上の関連しているカムトラック内にある。各々のカムトラックのピッチは、ローラドラムが回転する際に、隣接するピペットチップの取り付けシャフト間の中心間間隔が均一に変化するように、選択される。好ましくは、各々のカムトラックの経路全体の一巻き(total path wrap)は、ローラドラムの1回分の完全な回転数に満たない。下方マルチチャンネルアセンブリのモータの操作は、縦方向に積み重ねた歯車を回転させることによって(これが順にローラドラムを回転させ)、ピペットチップの取り付けシャフト間の中心間間隔を調節し、カムトラックは、ピペットチップの取り付けシャフト間が依存している再配置可能なチップフィッティングアセンブリの線形運動へと、その回転運動を変換する。好適なモータは小型のDC歯車モータであり、このDC歯車モータは、縦方向に積み重ねた歯車とローラドラムを介して回転出力速度を減少させるために、クラスター歯車を用いる。1つの実施形態において、ローラドラムの配置、つまり、再配置可能なチップフィッティングアセンブリの配置に関するフィードバックを提供するために、反射型光検出器を用いて、クラスター歯車の1つと同期して回転するフラグの回転数を数える。代替的に、および、おそらく好適に、光検出器を用いて、通過する歯車の歯を直接数えることもできる。
【0008】
カムトラックを備えるローラドラムを用いることが、再配置可能なチップフィッティングアセンブリを移動させるための好適な手段である一方で、本発明の多くの態様は、ローラドラムを用いることなく実装することができる。例えば、再配置可能なチップフィッティングアセンブリは、当該技術分野で知られている機械式はさみ機構、カムプレートなどの他のタイプの機械式カム機構、機械式ねじを用いて、または、反発する磁石を用いてさえ、動かすことができる。
【0009】
本発明の別の態様は、吸引シリンダ用の固定出力ポートと再配置可能なチップフィッティングアセンブリに対する入力ポートとの間の可撓性チューブの取り扱いに関する。夫々の再配置可能なチップフィッティングアセンブリに至る可撓性チューブを取り付けるのが好ましい位置を固定するために、シリンダブロックの出力ポートからの剛性チューブを用いることが好ましいことが分かっている。下方アセンブリに細長い設計を提供するためには、剛性チューブの排出口がシリンダブロックの前面から戻る、もっと端的に言えば、ドラムの前面から戻るのが好ましい。同様に、可撓性チューブの量を減らすことが可能で、それによって、最も外側のチャンネルの剛性チューブ排出口が、最も外側の再配置可能なチップフィッティングアセンブリの可動域の中心にまたはその近傍に配される際に、チューブの取り扱いが容易になり、空間の要件を減らすことになる。それゆえ、剛性チューブがシリンダブロックから出る際に、最も外側の再配置可能なフィッティング用の剛性チューブを後方に移動させ、その後、シリンダブロックの外面を超えて外側にチューブを曲げることが好ましいと明らかになった。加えて、再配置可能なチップフィッティングアセンブリのポートは、可撓性チューブに必要とされるシリンダブロックの前の空きスペースを減らすために、上方に角度を付けて、好ましくは、約40°またはローラドラムに接するように向けられるのが好ましい。
【0010】
本発明の別の態様において、マルチチャンネルピペットは、効果的かつ人間工学的なチップの取り外しを容易にするための幾つかの特徴を有する、改良型の取り外し機構を提供する。好適な取り外し装置機構は、同時に係属している特許出願(発明の名称「Pipette Tip Ejection Mechanism」、出願番号:11/856,193、出願人:Gregory Mathus and Richard Cote、出願日:2007年9月17日)で開示されるのと似たような(修正されているが)方法で、ロッカーアームだけでなく、加速器部分と減速器部分とを有する取り外し装置のプッシュバーを備え、この文献は本出願の譲受人に譲渡され、参照することにより本明細書に組み込まれる。取り外し装置ボタンのストロークの開始中に、取り外し装置のプッシュバーの減速器部分はロッカーアームと係合し、このロッカーアームは次に下方マルチシリンダアセンブリ内の取り外し機構と係合する。ロッカーアームのてこ装置は、取り外し装置ボタンのストロークの開始中に、取り外し力を高める機械効率を提供する。取り外し装置ボタンのストロークの底の方に向かって、プッシュバーの加速器部分は下方マルチチャンネルアセンブリ内の取り外し機構と係合し、それによって、ピペットチップのすべての取り外しを確実に行うのに十分なストロークを提供する。下方アセンブリ用の取り外し機構は、他の特徴のなかでも特に、絶えず変化するストリッパの高さ、好ましくは、ピペットチップの中心および最も外側の位置で最大の高さを有する、正弦曲線に変化するストリッパの高さを備える下方ストリッパバーを含む。この方式において、マルチプルピペットチップは1つのペアで取り外され、各々のペアは他のペアとわずかに異なる瞬間で取り外され、それによって、必要とされる最大の取り外し力を減らす。
【0011】
本ピペットの他の特徴および利益は、以下の図およびその記載を検討すれば、当業者にとって容易に明白となるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】再配置可能なピペットチップを有するとともに本発明の好適な実施形態に対応して構成された、手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペットの斜視図である。
【図2】ピペットの様々な内部構成要素を例示するために、上方および下方ハウジングが除去された(透視して示された)、図1に記載のピペットの図である。
【図3】図1および図2に示す、ピペットの下方部分の前面正面図である。
【図4】ピペットからのマルチピペットチップの取り外しを概略的に例示する、図3に類似の図である。
【図5A】ピペットの内部構成要素を例示するために、切り離されたハウジングの下方部分を備える、図1乃至4に例示されたピペットの側面図である。
【図5B】図5Aで示す図と類似するが、ピペットからのピペットチップの取り外しを概略的に示す図である。
【図6】内部構成要素を示すために、除去された下方ハウジングの前部分を備える、図1乃至5に図示されたピペットの下方部分の斜視図である。
【図7】図6に示すピペットの下方部分の内部構成要素の大部分を描いたアセンブリである。
【図8A】図1乃至7に示すピペットの下方部分の正面図であり、完全に開いているピペットチップフィッティングアセンブリを概略的に示す。
【図8B】図1乃至7に示すピペットの下方部分の正面図であり、中間位置にあるピペットチップフィッティングアセンブリを概略的に示す。
【図8C】図1乃至7に示すピペットの下方部分の正面図であり、閉じられた位置にあるピペットチップフィッティングアセンブリを概略的に示す。
【図9】吸引および分注サイクル間の取り付けシャフト間の中心線間隔を調節するために、ピペットチップフィッティングアセンブリを移動させるモータまたは歯車の詳細図である。
【図10】図9における線10−10に沿って描かれた図である。
【図11】図9における線11−11に沿って描かれた図である。
【図12】図8Aにおける線12−12に沿って描かれた断面図である。
【図13】図1乃至12に示されるピペットの下方部分で用いられる吸引シリンダブロックの下方の斜視図である。
【図14】吸引シリンダからの排出ポートが図13に示されるシリンダブロックから出る際に通る面に沿って描かれた断面図である。
【図15A】ピペットチップの再配置をプログラムおよび実行するために、図1乃至14に示されるピペット上に表示される、ユーザインターフェーススクリーンを例示する。
【図15B】ピペットチップの再配置をプログラムおよび実行するために、図1乃至14に示されるピペット上に表示される、ユーザインターフェーススクリーンを例示する。
【図15C】ピペットチップの再配置をプログラムおよび実行するために、図1乃至14に示されるピペット上に表示される、ユーザインターフェーススクリーンを例示する。
【図15D】ピペットチップの再配置をプログラムおよび実行するために、図1乃至14に示されるピペット上に表示される、ユーザインターフェーススクリーンを例示する。
【図15E】ピペットチップの再配置をプログラムおよび実行するために、図1乃至14に示されるピペット上に表示される、ユーザインターフェーススクリーンを例示する。
【図15F】ピペットチップの再配置をプログラムおよび実行するために、図1乃至14に示されるピペット上に表示される、ユーザインターフェーススクリーンを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、再配置可能なピペットチップ(12)を有するとともに本発明の好適な実施形態に対応して構成された手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペット(10)を例示する。図1に記載のピペットは、他の図と同様に、8チャンネルピペットを例示しているが、本発明は8つのチャンネルを有するピペットに限定されない。例えば、12チャンネルまたは幾つかの他の数のチャンネルを有するピペットは一般的であり、本発明の範囲内のものとして検討される。
【0014】
マルチチャンネルピペット(10)は、上方ハンドルアセンブリ(14)と下方マルチチャンネルアセンブリ(16)を備える。ピペットチップ(12)は、ピペットチップフィッティングまたは取り付けシャフト(18)に取り付けられる。取り付けシャフトは図1では隠れているが、他の図と同じように、図6で明確に示されている。ピペットチップ(12)は取り付け時、ピペット(10)が垂直に保たれている場合は、一般的には垂直面にあるが、チップ(12)間の中心間間隔を変えるために、垂直面の範囲内で再配置可能である。上方ハンドルアセンブリ(14)は、ユーザの掌で握られるよう設計されているハウジング(19)を含む。上方ハンドルアセンブリ(14)内部に含まれる内部構成要素は、以下に議論されるように、電子制御ステッピングモータ(20)(図2参照)を含み、このモータが吸引および分注のために出力シャフトを上げ下げする。下方マルチチャンネルアセンブリ(16)は、主要なピストンドライブシャフト(22)(図7参照)を含み、このシャフトはステッピングモータ(20)用の出力シャフトに接続されるとともにこの出力シャフトによって駆動される。主要なピストンドライブシャフト(22)は、ピストンドライブプレート(26)と、このピストンドライブプレート(26)から下方に延出する複数のピストン(24)(図7参照)とを連続的に駆動させることで、多数の再配置可能なピペットチップ(12)を介して吸引及び分注する。
【0015】
好適な実施形態において、マルチチャンネルピペット(10)は、本特許出願の譲受人に譲渡される同時に係属している特許出願で議論される多くの特徴を有し、この文献は、参照することにより本明細書に組み込まれる。上方ハンドルアセンブリ(14)の内部構成要素に関しては、好適な実施形態におけるその操作が、同時に係属している特許出願(発明の名称「Electronic Pipettor Assembly」、出願番号:第11/856,231号、Gary E. Nelson、George P. Kalmakis、R. Laurence Keene、Joel Novak、Kenneth Steiner、Jonathan Finger、Gregory Mathus、および、Richard Coteによる。出願日:2007年9月17日。本出願の譲受人に譲渡され、参照することにより本明細書に組み込まれる)、および、同時に係属している特許出願(発明の名称「Pipettor Software Interface」、出願番号:第11/856,232号、George Kalmakis、Gary Nelson、Gregory Mathus、Terrence Kelly、Joel Novak、Kenneth Steiner、および、Jonathan Fingerによる。出願日2007年9月17日。本出願の譲受人に譲渡され、参照することにより本明細書に組み込まれる)で、一般的には記載される。ピペットチップおよびピペットチップの取り付けシャフトに好適な構成は、同時に係属している特許出願(発明の名称「Locking Pipette Tip and Mounting Shaft」、出願番号第11/552,384号、Gregory Mathus、Terrence Kelly、および、Richard Coteによる。出願日:2006年10月24日。本出願の譲受人に譲渡され、参照することにより本明細書に組み込まれる)、および、CIP出願番号第11/934,381号(発明の名称「Locking Pipette Tip and Mounting Shaft」、Gregory Mathus、Terrence Kelly、および、Richard Coteによる。出願日:2007年11月2日。本出願の譲受人に譲渡され、参照することにより本明細書に組み込まれる)で開示されている。マルチチャンネルピペット(10)用の好適な取り外し機構の多くの態様は、同時に係属している特許出願(発明の名称「Pipette Tip Ejection Mechanism」、出願番号:第11/856,193号、Gregory MathusおよびRichard Coteによる。出願日2007年9月17日。本出願の譲受人に譲渡され、参照することにより本明細書に組み込まれる)で開示されている。本明細書の好適な実施形態の取り外し機構の違いがここで議論される。
【0016】
図2を参照すると、上方ハンドルアセンブリ(14)と下方マルチチャンネルアセンブリ(16)用のハウジングは、ピペット(10)の特定の内部構成要素を表示するために除去された。上記のとおり、上方ハンドルアセンブリは、電子制御ステッピングモータ(20)を有し、このモータは、下方マルチチャンネルアセンブリ(16)内のピストン(24)の移動を制御するために上下動する出力シャフトを駆動させる。ピペット(10)は第2モータ(28)、好ましくは、小型のDC歯車モータを有し、このモータは、チップフィッティング(18)間の中心線間隔を調節するために、再配置可能なチップフィッティングアセンブリ(32)をスライドさせるべく牽引されるローラドラム(30)を駆動させる。図3、4、および、5A、5Bに記載されるように、図2は取り外し機構の特定の構成要素を示し、この構成要素には、上方ハンドルアセンブリ(14)に一般的に配される取り外し装置ボタン(34)、取り外し装置プッシュバー(36)、および、ロッカーアーム(38)だけでなく、下方マルチチャンネルアセンブリ(16)内の分岐した取り外し環部(ejection collar)(52)を有し、この下方マルチチャンネルアセンブリは、チップフィッティングの取り付けシャフト(18)からピペットチップ(12)を取り外す下方ストリッパアセンブリ(42)に接続されている。
【0017】
図3、4、および、5A、5Bを参照すると、上記のように、好適な取り外し機構は、同時に係属しておりかつ組み込まれている米国特許出願第11/856, 193号(発明の名称「Pipette Tip Ejection Mechanism」で開示された好適な構成と類似する構成を有する取り外し装置プッシュバー(36)とロッカーアーム(38)を用いる。好適な構成はわずかに修正されているが、以下に議論されるように、取り外し装置プッシュバー(36)は、減速器部分(44)と加速器部分(46)とを備える(図5Aと図5Bを参照)。ロッカーアーム(38)は、上方ハンドルアセンブリ(14)内の内部フレームに枢動可能に取り付けられるとともに、下方マルチチャンネルアセンブリ(16)内の環部(48)と係合する下向きの面を有する。ユーザが矢印(50)(図5B)の方向に取り外し装置底部(34)を押すと、取り外し装置プッシュバー(36)は下方に移動し、その下方へのストロークが開始される間、減速器部分(44)はロッカーアーム(38)と係合し、このロッカーアーム(38)が次に環部(48)と係合することによって、下方マルチチャンネルアセンブリ(16)内の取り外し機構に下方運動を与える。好ましくは、下方マルチチャンネルアセンブリ(16)内の環部(48)は、一体型の分岐した取り外し環部部材(52)の一部である。分岐した取り外し環部は、下方に延出するタブ(40)を有し、このタブは、下方マルチチャンネルアセンブリ(16)のいずれかの側で、下方ストリッパアセンブリに接続される。環部(48)は、2つの上方に延出する台座(54)を有し、この台座は、図5Aおよび5Bに示すように、ロッカーアーム(38)が環部(48)と係合する位置にある。いくつかの点で、取り外し装置プッシュバー(36)上の加速器部分(46)は、分岐した取り外し環部(52)上のシート部(56)(図2)と直接係合する。シート部(56)は、台座(54)の高さより下に配されることで、ピペット(10)の全体的な高さが抑えられる。ばね(60)は分岐した取り外し環部(52)を付勢し、同様に、全体の取り外し機構を上方に付勢する。組み込まれる同時に係属している特許出願番号第11/856,193号に記載されているように、下方マルチチャンネルアセンブリ(16)に伝達された取り外し力は、取り外しボタン(34)のストロークの最初の位置へのロッカーアーム(38)のてこの作用による機械効率を介して取り外し装置ボタン(34)に加えられる力の量を超えて増加する。取り外し装置ボタン(34)のストロークの下方位置を超えて、加速器部分(46)は、分岐した取り外し環部(52)内のシート部(56)と直接係合し、伝達される取り外し力は機械効率を介しては増加しないが、下方マルチチャンネルアセンブリ(16)内の取り外しアセンブリに関するストロークはさらに減らされることはなく、これによって安定したチップの取り外しを確実に行う。
【0018】
下方ストリッパアセンブリ(42)は、好ましくは、細長いスロット(66)(図1)を有する基部(62)を有する、一体的に成形されたプラスチック部品であり、このスロットを通って、ピペットチップの取り付けシャフト(18)が延出する。基部(62)は、細長いスロット(66)(図1)を包囲するストリッパバー(64)を備える。スロットは、ピペットチップ間の好ましくは99mmの最大全長を収容するために、99mmよりわずかに長いのが好ましい。ストリッパバー(64)は、好ましくは、例えば、アルミニウムから機械加工され、基部(62)に取り付けられる。ストリッパバー(64)の下面は正弦形状で、一方の突端が細長いスロット(66)の中心に沿って配される、もう一方の突端が細長いスロット(66)の端部に配される。正弦的な取り外し表面の突端とくぼみの間の高さの好適な差は、2mmである。正弦的な取り外し表面は、図4に図示されるように、ピペットチップ(12)が取り外されるのに間に合うように、必要とされる取り外し力を分配する。図4は、完全に切り離されたピペットチップ(12)を示すが、チップの取り付けシャフト(18)が完全に締め付けられているか、または、中間位置にある際でも、正弦ストリッパバー(64)がチップ(12)間で、時間内に、必要とされる取り外し力を分配することを理解されたい。
【0019】
基部(62)上で、下方ストリッパアセンブリ(42)は、下方スリーブ(68)と上方伸張パネル(70)を備える。下方スリーブ部分(68)と伸張パネル(70)は、下方アセンブリ(16)のハウジング内に含まれるが、一方で、基部(62)は、外部にさらされる。図では明確に示されていないが、分岐した取り外し環部(52)上の下方に延出するタブ(40)は、好ましくはスナップフィッティングを備え、このフィッティングは伸張パネル(70)の1つに、対応するスナップフィッティングと係合する。このようなやりかたで、分岐した取り外し環部(52)と下方ストリッパアセンブリ(42)(機械式ストリッパバー(64)だけでなく、一体的に成形された伸張パネル(70)、下方スリーブ(68)、および、基部(62)を備える)は、単一部材として上下動する。
【0020】
ピペット(10)の各々の側で、伸張パネル(70)は垂直ガイドスロットを含む。好ましくは、スロット(72)は、上方に拡大した溝部(74)と下方に拡大した溝部(76)を有する。これらの上方に拡大した溝部(74)と下方に拡大した溝部(76)は、それぞれ、タブ(78,80)を収容するよう設計され、ハウジング(16)の内部側壁から延出している。これはピペット(10)の両側で起こる。タブ(78、80)が、同様に、シリンダブロック(82)内で戻り止め(77、79)に収容されることで、シリンダブロック(82)をピペット(10)に固定する。図3は、通常の操作位置にあるピペット(10)を示すとともに、上方タブ(78)が拡大溝部(74)の下壁と係合し、下方タブ(76)が拡大溝部(80)の下壁と係合していることを示す。一方、図4は、取り外しストロークの端部で完全に下の位置にある取り外し機構を例示している。上方タブ(78)は、拡大溝部(74)の上壁と係合せず、下方タブ(80)も拡大溝部(76)の上壁と係合しないのが好ましい。拡大溝部(74、76)における上壁と下壁との間の距離は、下方アセンブリ(16)での全体的なストロークの長さと等しいか、または、それより長くなければならない。矢印(50)で示されている、ユーザによって動作される取り外し装置ボタン(34)のストロークが、矢印(50A)で示されている、下方アセンブリ(16)に対する取り外し機構のストロークよりも長いということに注視されたい。
【0021】
図6および図7を参照すると、下方アセンブリ(16)における主要なピストンドライブシャフト(22)は、その下端部で、ピストンドライブプレート(83)に取り付けられ、好ましくはねじを用いて取り付けられる。複数のピストン(24)は、例えば、スナップリング(84)を用いて、ドライブプレート(83)に取り付けられる。ばね支持部(86)は、吸引シリンダブロック(82)から上方に延出する。図には示されていないが、ばねは、ばね支持部(86)と分岐した取り外し環部(52)の環部部分の底面との間の主要なピストンドライブシャフト(22)の周辺に配される。ばね支持部(86)の脚部は、ピストンドライブプレート(83)内の開口部を通る。主要なピストンドライブシャフト(22)は、ばね支持部(86)用の上方プレート内の開口部を通る。主要なピストンドライブシャフト(22)の上方端部は、上方ハンドルアセンブリ(14)内のステッピングモータ(20)によって駆動される出力シャフトに接続される。下方アセンブリ(16)内の内部構成要素は除去可能ではあるが、主要なピストンドライブシャフト(22)は、任意の適切な方法を用いて上方ハンドルアセンブリ(14)から出力シャフトに取り付けられるのが好ましい。図7は、主要なピストンドライブシャフト(22)内のソケット(88)を示す。図に示されてはいないが、上方アセンブリ(14)内のステッピングモータ(20)によって駆動される出力シャフトの遠位端部にボールがあるのが好ましい。このボールは、ソケット(88)の側から得られるのが好ましく、プランジャーはソケット(88)の内部にボールを固定するために用いられるのが好ましい。
【0022】
シリンダブロック/ピストンアセンブリは、好ましくは、シール部押下プレート(a seal hold down plate)(90)を備え、このプレートは、ピストン(24)用の複数の開口部を有する。シール部(152)とT型スリーブ(150)(図12)は、各々のピストン(24)用の、シール部押下プレート(90)と吸引シリンダ(82)の上面との間に配される。シール部押下プレート(90)は、その間に挟まれた夫々のシール部とワッシャに関して、シリンダブロック(82)の上部表面に取り付けられる。シリンダブロック(82)は、他の材料でも適切ではあるが、好ましくは、アルミニウムまたはアセタールから機械加工される。ピストン(24)と主要なピストンドライブシャフト(22)は、プレート(84、90)と同様に、当該技術分野でも知られているステンレス鋼で作られるのが好ましく、シール部も同様に、当該技術分野で知られているエラストマー材料で作られるのが好ましいが、他の材料も同様に用いることが可能である。図に示される実施形態は、固定のシール部(152)を例示するが、容積がもっと大きいものに対しては、カップ型シール部がピストンに取り付けられる滑りシール部装置を用いるのが好ましい。加えて、他の適切なシール部装置を、必要に応じて、本発明と対応するように用いてもよい。
【0023】
好ましくは金属薄板から作られる金属シャーシ(92)は、下方アセンブリ(16)用の後部ハウジングに取り付けられる。特に、シャーシ(92)は、後部ハウジング(94)にシャーシ(92)をねじで留めるための一組のねじ挿入口(96)を備える。シリンダブロック(82)は、凹部(77、70)に適合するハウジングタブ(78、80)によって、下方アセンブリ(16)用のハウジングに対して固定される。後部ハウジング(94)および下方アセンブリ(16)用の前部ハウジングは、ハウジング部材でグロメット(99)を通るねじを用いて互いに接続される。図13および図14に関連して以下に記載されるように、シリンダブロック(82)の下方部分は、シリンダブロック(82)内部の多数の吸引シリンダの各々に対する一体型マニホルドポートを備える。マニホルドはシリンダブロック(82)と一体型であることが好ましいが、本発明を実施するために必要であるというわけではない。複数の可撓性チューブ(98)は、吸引シリンダからのポートを、再配置可能なチップフィッティングアセンブリ(32)上のポート(100)に接続する。チューブ(98)は、以下に記載の如く、好ましくは、シリコンまたはPVC(1/16のID)で作られ、各々の再配置可能なチップフィッティングアセンブリ(32)の可動域に合わせるために適切な様々な長さを有している。チューブ(98)と、シリンダブロック(82)からのポートとの間のだけでなく、さらには、再配置可能なフィッティング(32)上のポート(100)との間のシール部は、固定されるとともに気密性を有することが重要である。
【0024】
複数のチップフィッティングアセンブリ(32)用のガイドロッドアセンブリ(102)が、シャーシ(92)に取り付けられる。ガイドロッドアセンブリ(102)は、好ましくは、ステンレス鋼で作られた2つの平行ロッド(104、106)を有する。平行するガイドロッド(104、106)は、剛性カプラーまたはスペーサ(108、110)を用いて、両方の端部に取り付けられる。剛性スペーサ(108、110)は、ピペット(10)の組み立ておよび操作中、正確に間を配して、ガイドロッド(104、106)を維持する。組み立ての間、再配置可能なチップフィッティングアセンブリ(32)は、2つの平行するロッド(104、106)に摺動自在に取り付けられ、その後、剛性スペーサ(108、110)によって定位置に取り付けられ、ガイドロッドアセンブリ(102)は、図7に示すように、ねじ(112)を用いて、シャーシ(92)の下方部分に固定される。この構成において、再配置可能なフィッティング(32)を、ロッド(104、106)に沿って移動させることができることで、各々のチップの取り付けシャフト(18)用の下方ポート(114)が、ロッド(104、106)と平行な線に沿って移動する可動域を有するようになる。この手法において、チップの取り付けシャフト(18)の各々は、シャフト(18)に取り付けられたピペットチップ(12)と同様に、共通した移動面の範囲内に並べられたままであり、取り付けられたピペットチップ(12)内の下部開口部は線に沿って並べられることで、多数の線状に配された容器またはウェルからの液体の吸引および分注を容易にする。牽引されるローラドラム(30)はシャーシ(92)上にも取り付けられ、ガイドロッド(104、106)と平行になる。ローラドラム(30)は、好ましくはアセタールで作られており、外側の牽引される表面(tracked surface)(115)を有し、好ましくは、鋼またはアルミニウムで作られた内部補強軸(31)(図12)の上で回転する。図12に関してさらに詳細に議論されるように、各々の再配置可能なフィッティング(32)は、垂直に延出するカム従動ピン(118)を備え、このピンはローラドラム(30)上で夫々のトラック(120)の1つの内部に密閉される。
【0025】
平歯車(122)はローラドラム(30)の1つの端部に取り付けられる。ローラドラム(30)上の平歯車(122)は、垂直配向した遊び歯車(124)とDCモータ出力歯車(126)によって駆動される。平歯車(124)は、軸受支柱(128)を用いてシャーシ(92)上に取り付けられ、軸受支柱は遊び歯車(124)の配置を維持するために、比較的大きなヘッドを有する。図には示されていないが、シャーシ(94)は、DCモータ出力歯車(126)を適切な位置で支持するのに役立つ部分軸を有する。好ましくは、歯車(126、124、および、122)は、下方アセンブリ(16)が細長い外形を維持することが可能となるように、垂直に配向している。好ましくはないが、ベルト駆動機構を垂直な歯車列の代わりに用いることができる。
【0026】
図8A乃至8Cを参照すると、下方アセンブリ(16)における小型のDCモータ(28)は、歯車(126、124、および、122)を駆動させることで、ローラドラム(30)を回転させ、それによって、ピペットチップの取り付けシャフト(18)の間の中心間間隔を調節するために、再配置可能なチップフィッティングアセンブリ(32)を再配置する。図8Aにおいて、フィッティングアセンブリ(32)は完全に広がっており、8チャンネルピペットの14.14mmの中心間間隔に相当するのが好ましい。図8Bは、歯車(126、124、および、122)が配されるピペット(10)の側から見て時計回り方向に、モータ(28)がローラドラム(30)を回転させた後に生じる、フィッティングアセンブリ(32)用の中間位置を示す。図8Cは、完全に締め付けられた位置にあるフィッティングを示し、チップの取り付けシャフト(18)間の中心間間隔は、好ましくは4.5mm(または、特定の実施形態によっては、9mm)である。本発明の好適な実施形態において、ローラドラム(30)がその間隔を狭めるかまたはその間隔を広げるために回転する際に、すべてのフィッティングアセンブリ(32)は移動する。しかしながら、フィッティングアセンブリ(32)間の相対的な間隔は均一に変化する。これは、フィッティングアセンブリ(32)の直線運動がドラム(30)の回転に比例するように、トラック(120)を設計することにより達成される。可撓性チューブ(100)の長さは各々のチャンネルに対して最小化されるのが望ましい。いずれかの端部の2つの最も外部にあるチャンネル、すなわち、図8Bで32A、32Bと付されたフィッティングアセンブリに関して、夫々の吸引シリンダからのポート(128A、128B)は、フィッティングアセンブリ(32A、32B)のための移動範囲に沿って中心に置かれる。図8A、8B、および、8cは、最も左側の再配置可能なフィッティングアセンブリ(32A)用の移動範囲の中心点を定義する破線を示す。図8Aの矢印(132)によって表される距離は、好ましくは、図8Cの矢印(134)によって表される距離と等しい。
【0027】
図9を参照すると、下方アセンブリ(16)の小型のDC歯車モータ(28)は、ブラケット(141)に取り付けられ、このブラケットは次いでねじ(140)を用いてシャーシ(92)に取り付けられる。専用プロセッサ(142)(すなわち、ドーターマイクロプロセッサ(a daughter microprocessor))は、回路基板(138)(ブラケット(141)に取り付けられる)に取り付けられるとともに、ハンドルアセンブリ(14)におけるメインマイクロプロセッサからの指令に応答してモータ(28)の操作を制御する。モータ(28)はワイヤ(139)からの電力を受信し、このワイヤは、好ましくは、回路基板(138)を通って延出するとともに、さらなる構造的な安定性を提供するためにモータ(28)にはんだ付けされる。ワイヤ(134)は、上方ハンドルアセンブリ(14)の中に入るリボンケーブル(図示されず)から電力を受信する。リボンケーブルは上方ハンドル部分に配されたバッテリーからの電力を運び、ドーターボード(142)に制御信号も提供する。
【0028】
エンコーダ検出器(144)(図11にて最もよく示される)もまた、回路基板(138)に取り付けられ、フラグ(146)の回転を検出し、これにより、ローラドラム(30)の位置についての間接的なフィードバックを提供する。小型歯車モータ(28)のRPM出力がクラスター歯車(148)を介して減少され、出力シャフトが、シャーシ(92)により部分的に支持される駆動歯車(126)に提供される。図10は、駆動歯車(126)が遊び歯車(124)及びローラドラム(30)の端部の平歯車(122)に対して縦方向に配列されることを示す。モータ(28)がコンパクトな方法で、ローラドラム(30)の上に取り付けられることが可能であるため、この構成は、特に有益であることに注意されたい。図11は、ボード(138)上でのエンコーダ検出器(144)及びエンコーダフラグ(146)の好適な配置を示す。
【0029】
次に図9及び図11を参照すると、小型DC歯車モータは、ビデオカセットレコーダに使用される種類のような、クラスター歯車(148)を介した歯車減速の後、約150RPMの出力速度を有する、好ましくは2.4ボルトから5ボルトまでのモータである。モータ(28)上の出力シャフト自体は、14000から15000rpmの範囲で回転し、クラスター歯車(148)は著しい速度減少を提供する。適切な速度減速は、好ましくは、クラスター歯車の3から4のセットで行なわれる。エンコーダフラグ(146)は、図9及び図11に示される中間のクラスター歯車に取り付けられる。図9及び図11において、フラグ(146)は、回転のために第2クラスター歯車に取り付けられる。この歯車減速にて、フラグ(146)は、ローラドラム(30)の全長につき、51から53回転する。エンコーダセンサ(144)は好適にはLED放出器/検出器、フォトマイクロ検出器である。より具体的には、好適な放出器/検出器は、反射型フォトマイクロ検出器、Omron社のEE−SY125であり、該検出器は1mmの検知距離である。好適には、フラグ(146)は、非反射長手方向側部(147)及び反射端部(149)を有する。いくつかの状況において、長手方向側部(147)は非反射的であることを必要としない。なぜなら、長手方向側部は放出器/受信器(144)の範囲の外側にあるからである。さらに、長手方向側部(147)及びその端部(149)の形状は、必要であれば、凹面あるいは凸面でつくられ、これにより、必要であれば、検出器及びフラグの対の正確性を促進する。検出器(144)は、回転ごとに、2つの反射端部(149)を数え、従って(好適な実施形態において)ローラドラム(30)の全長あたり、ほぼ102から106の回転数となる。ピペットチップの最小の中心間配置は、図8Cに示すように、4.5mmであり、8チャンネルピペットの31mm(7×4.5)及び12チャンネルピペット(11×4.5)の49.5mmと相関する。図8Aに示すように、最大幅は総計99mmであり、8チャンネルピペットでの14.14mmの中心間配置及び12チャンネルピペットでの9mmの中心間配置と相関する。従って、エンコーダ(144)(146)の決定は、8チャンネルピペットでは約.3mmであり、12チャンネルピペットでは約.25mmである。
【0030】
別の実施形態において、フラグ(146)を用いずに、フォト検出器(144)は、歯車の歯の進行を直接検知する。エンコーダ(144)(146)を使用することは、再配置可能なチップフィッティング(32)の位置を検知するための好適なメカニズムであるが、他の方法もまた可能である。例えば、機械式係止部が内側及び外側の配置に設定される、あるいは、電気的切換が用いられることで、ユーザの設定可能な配置を検知するのに用いられる。また、必要とする場合、ピペットは、ピペットチップの配置のための視覚的目盛を含むことが可能である。
【0031】
図12は、下方アセンブリ(16)におけるチャンネルでの空気の流路の1つに沿った横断面を示す。図示されるチャンネルにおいて、図12は、ピストン(24)がピストン駆動プレート(83)に従属していることを示し、該ピストンがシリンダーブロック(82)における吸引シリンダー(154)へと延伸することを示している。ワッシャ(150)及びシール部部(152)は、上述したように、シール部押下プレート(90)により押下される。上述したように、好ましくはアルミニウム又はアセタールにより機械で加工されるシリンダーブロック(82)は、L型チャンネル(156)を各シリンダー(154)の下方端部に含む。各チャンネル(156)は、剛性チューブ(158)を受け止めるのに適した円の直径を有する。図12に示すように剛性チューブ(158)は、前方に延伸し、可撓性チューブ(98)のポートを形成する。可撓性チューブ(98)の一方の端部は、シリンダー(154)のためのポート(158)の上に取り付けられ、可撓性チューブのもう一方の端部は、再配置可能なフィッティング(32)上のポート(100)に取り付けられる。チューブの他の種類を使用することも可能であるが、上述したように、可撓性チューブ(98)は、好ましくは、シリコン可撓性チューブあるいは公称内径1/16を有するPVCである。
【0032】
再配置可能なチップフィッティングアセンブリ(32)は好ましくは、いくつかの部品、即ち、本体(160)、空気輸送チューブ(162)、カム従動ピン(118)及びピペットチップの取り付けシャフト(18)を備える。再配置可能なチップフィッティングアセンブリ(32)は、好ましくは、PTFEのような潤滑剤で満たされたアセタール(ポリテトラフルオロエチレン)で成形される。カム従動ピン(118)が主要本体(160)から上方へと延伸することで、ガイドロッド(104)(106)の開口部は、フィッティング本体(160)と一体的に成形される。さらに、輸送チューブ(162)が主要本体(160)内で挿入成型され、ガイドロッド(104)と(106)の開口部の間を通過する。ガイドロッド(104)と(106)の開口部での許容誤差は、チップフィッティングアセンブリ(32)のスムーズな再配置に重要であるため、通常は必要ないが開口部を機械で加工することが望ましい。さらに、例えば図8Cに示すように、チップフィッティングアセンブリ(32)の本体(160)の幅は、好ましくは、できるだけ幅広く選択され、これにより、横方向の適切な安定性を提供するが、ピペットチップの取り付けシャフト(18)の中心間距離の選択された最小値よりも幅広くはない。すなわち、図に示される好適な実施形態において4.5mm(あるいは、他の実施形態において好ましくは9mm)である。8チャンネルピペットを示す好適な実施形態において、チップフィッティングアセンブリ(32)の本体部(160)の幅は、好適には4.5mmである。当業者は、8チャンネルピペットは、9mmなどの他の幅を有することを理解する。ガイドロッド(104)の開口部は、ガイドロッド(106)の開口部よりも前方かつ低い位置に配置される。好適に示されるように、取り付けシャフト(18)は、ガイドロッド(104)及び(106)の開口部との間を通過する縦軸に沿って本体(160)に取り付けられる。カム従動ピン(118)はまた、好適には、この軸上に位置される。輸送チューブ(162)は、好ましくは40°で屈曲され、これにより、アセンブリ(32)上のポート(100)は、可撓性のチューブ(98)を受け止めるのに好都合な角度で上方に延伸する。より具体的には、ポート(100)は、例えば40°などで、ローラドラム表面(30)に対して接する又はほぼ接する配向にある。輸送チューブ(162)は、好ましくは、40°ではあるが、前方向を向いている。輸送チューブ(162)は、好ましくは、1/16のODを有するステンレススチールのチューブなどの対溶剤性材質でできている。いくつかの状況において接着剤を用いる必要があるが、取り付けシャフト(18)は、好ましくは、機械加工された、又は成型された金属又はポリマー(例えばPEEK)でできていて、屈曲輸送チューブ(162)の下方に延伸する脚部の上に、好ましくは圧入を介して取り付けられる。
【0033】
ピペット取り付けシャフト(18)の好適な構成は、同時に係属している特許出願第11/552,384号に開示され、該出願は、Gregory Mathus、Terrence Kelly及びRichard Coteによる、2006年10月24日出願の「Locking Pipette Tip And Mounting Shaft」というタイトルが付され、本出願の譲受人に対して譲渡されていて、参照することにより本明細書に組み込まれるものとする。また、ピペット取り付けシャフト(18)の好適な構成は、特許出願第11/934,384号に開示され、該出願は、Gregory Mathus、Terrence Kelly及びRichard Coteによる、2007年11月2日出願の「Locking Pipette Tip And Mounting Shaft」というタイトルが付され、本出願の譲受人に対して譲渡されていて、参照することにより本明細書に組み込まれるものとする。
【0034】
ローラドラム(30)は、剛性軸(31)上に取り付けられている。軸(31)は、好ましくは、スチール又はアルミニウムのロッドであり、アセタールなどのプラスチックで製造されている。軸(31)は、固定されていて、図7に示すように、螺子(95)を用いて、シャーシ(92)に取り付けられる。ローラドラム(30)は、好ましくは、上述したようにアセタール等の潤滑剤のロッドから機械で加工され、これにより、溝(120)及び中心穴の他に、好ましくは平歯車(122)に対して六角形フィッティングを提供する。平歯車(122)は、機械加工された六角形フィッティングに圧入され、これにより、ローラドラム(30)は、平歯車(122)と同時に回転する。ローラドラム(30)への穴により、固定された支持軸(31)の周囲にわずかな隙間を提供することが望ましい。好ましくは、穴の各端部は、また真鍮のブッシング(図示せず)の圧入を受け入れるために、機械で加工されたわずかな陥凹を有し、これにより、ローラドラム(30)の耐久性を拡大する。溝(120)は、また、一定の深さで機械加工されることにより、再配置可能なチップフィッティングアセンブリ(32)上のカム従動ピン(118)の上表面に対するわずかな隙間を提供する。この方法において、チップフィッティングアセンブリ(32)の位置を調整及び再調整する際に、アセタール成分の潤滑剤は、スムーズで、比較的摩擦のない運動を提供する。しかしながら、ユーザが、取り付けシャフト(18)での押し上げ力により、ピペットチップを取り付ける際、ガイドロッド(104)(106)は、上方への少しの移動の後、固定軸(31)により、補強される。従って、ガイドロッド(104)及び(106)は、永久歪みから保護され、ピペットチップを取り付けるのに必要な剛性が提供される。
【0035】
次に図13及び図14を参照すると、シリンダーブロック(82)から可撓性チューブ(98)へのマニホルドは、シリンダーブロック(82)における機械加工された出口通路(156)の他に剛性ステンレススチールのチューブ(158A)(158B)(158C)(158D)からなる。剛性チューブ(158A)(158B)(158C)(158D)は、上述のように、可撓性チューブ(98)の全体の必要な長さを減少させ、再配置可能な部品アセンブリ(32)の全配置に対する可撓性チューブ(98)の配向を調整及び整理する。この点において、図8Bでの外側の取り付けシャフト及びフィッティング(32A)(32B)に対するポート(158A)(158B)を、図8Aから図8Cにて上述したように、チップフィッティングアセンブリ(32A)(32B)の中心又は中心近くの移動範囲に、配置することが好ましい。外側取り付けシャフト及びフィッティング(32A)(32B)に対する剛性チューブ(158A)(158B)は、図13及び図14に示すように、ピペット後部に向かって、シリンダーブロック(82)から出て、剛性チューブ(158A)(158B)(158C)(158D)又は可撓性チューブ(98)との間で交差なく、可撓性チューブ(98)の取り付け位置の所望の幅を提供する。シリンダーブロック(82)の下部の外形は、剛性チューブ(158A)(158B)(158C)(158D)の適切な隙間の他に、剛性チューブ(98)、特に剛性チューブ(158C)(158D)を取り付ける隙間を提供するために、機械加工される。チューブ(158A)(158B)の出口は、好ましくは、垂直的に前方を向き、その一方、剛性チューブ(158C)(158D)の出口は、好ましくは僅かに外側を向いている。剛性チューブ(158A)(158B)(158C)(158D)に対する外側出口の全ては、図12から図14に示すように好ましくは水平平面に存在する。再配置可能なフィッティングアセンブリ(32)上のポート(100)の40°又は接する配向に沿ったこの配向は、ピンチ部材及び過剰なチューブ(98)を用いずに、可撓性チューブ(98)のそれぞれの効果的且つ管理可能な取り付けを提供する。図8Bの中間位置にて多数の束を生成することなく、例えば、外側フィッティングアセンブリ(32A)(32B)に対するチューブ(98)は、図8Aの一番外側の位置と、図8Cの一番内側の位置との間に容易に達するのに十分な長さである。一方、チューブ(158C)(158D)は、チューブ(158A)(158B)に対する出口(156)を妨げることなく前方に延伸するために、一定の角度で取り付けられなければならない。内側フィッティング(32C)(32D)に対するチューブ(98)は、より短いため、剛性チューブ(158C)(158D)の出口が、前方へと真っ直ぐに向ける必要がない。上述のように、可撓性チューブ(98)は、障害なく移動するが、可撓性チューブ(98)は、ドラム(30)の極端な前方あるいはドラム(30)を超えて延伸しないことが望ましい。従って、剛性チューブ(158A)(158B)(158C)(158D)の出口が、シリンダーブロック(82)の前表面の後方に適切に配されることにより、可撓性チューブ(98)に空間を提供し、筐体の領域内で、取り付けられ、自然な屈曲を提供する。図13及び図14に示される剛性チューブ(158A)(158B)(158C)(158D)の構成は、このような利点を提供する。
【0036】
次に図15A乃至図15Fを参照すると、ピペット(10)は好適には、メニューで動かす、ユーザによりプログラムされるソフトウェアを用いて操作を行い、該ソフトウェアは、「Pipettor Software Interface」というタイトルが付された、同時に係属しており、本明細書に組み込まれる米国特許出願第11/856,232号に記載されるシステムにほぼ基づいている。しかしながら、メニューで動かすソフトウェアは、図15Aから図15Fについて示すように以下の記載に基づき、好適に修正され、ピペットに再配置可能なチップフィッティングアセンブリ(32)を収容する。ピペット及びプログラム可能なインターフェースの全体の操作に対し、上述の同時係属中の特許出願の他に、「Electronic Pipettor Assembly」というタイトルが付された、同時に係属しており、本明細書に組み込まれる特許出願第11/856,231号も参照される必要がある。要約すると、図1を参照すると、好適な実施形態において、ピペット(10)の前方は、タッチパッド制御部(170)実行ボタン(172)及びユーザインターフェースディスプレイ(174)を含む。タッチパッド制御部(170)及び実行ボタン(172)は、便利にユーザの親指で操作され、これにより、ピペット(10)をプログラムするとともに操作する。一般的に、ユーザインターフェースディスプレイ(174)に表示されるメニューは、タッチパッド制御部(170)を用いて、ナビゲートされ、該制御部は、指又は親指の相対的な回転運動をディスプレイ画面(174)上のスクロール運動に変換する能力を含み、そして、左右のナビゲーションボタン(171)(173)、「除去」ボタン(175)、「戻る」ボタン(177)及び中央の実行又は「OK」ボタン(179)を提供し、これらは、全て「Pipettor Software Interface」というタイトルが付された上述の同時に係属している特許出願第11/856,232号に記載されている。
【0037】
図15Aは、好適なメインメニュー画面(180)を示し、該画面は、チップ間隔をプログラムするための追加的なメニュー選択(182)を提供するために修正されている。ユーザが、チップ間隔(182)をメインメニュー(180)から選択すると、図15におけるチップ間隔プログラム画面(184B)がユーザインターフェースディスプレイ(174)に現れる。図15Bにおけるチップ間隔画面(184B)は、いくつかのプロンプトを有し、第1は、参照番号(186)に示される位置の数を示す。好適には、ソフトウェアにより、ユーザは、2位置又は3位置のいずれかの中心間間隔のプログラム設定を行うかどうかを選択することが可能である。ユーザが第1中心間間隔、例えば4.5mmを有する連続的な容器から吸引し、9mmなどの第2中心間間隔を有する連続的な容器に分注する場合、2つの位置、すなわち「第1」及び「最後」が、一般的に選択される。好適には、ユーザが第1及び最後の位置とは異なる位置で、吸引、分注又はチップの取り付けあるいは取り外しを行う状況において、第3位置、即ち「中間」が提供される。位置の数が3であることをユーザが選択し、画面が第1、中間及び最後の位置のプロンプトを示すことを図15Bは示し、該第1、中間及び最後の位置のプロンプトは、参照番号(188)(190)及び(192)で表わされる。参照番号(194)により指し示される「位置」とラベルされたプロンプトは、現在の中心間距離を表示する。図15Cを参照すると、チップ間隔画面(184C)は、2つの位置をプログラムするよう選択したことを示し、該プログラムは、位置の数を示すプロンプト(186)に隣接する反転表示されたボックスにて、番号2として示される。ユーザが第1及び最後の位置の距離のプログラムに満足すると、ユーザは、アイコン(196)により指し示されるタッチパッド制御部上の右ナビゲーションボタン(171)を押すことで、これらの距離が保存される。別の方法として、ユーザはタッチパッド制御部を用いて、図15Dに示されるメニューをナビゲートすることができる。図15Dにおいて、ユーザは、第1位置プロンプト(188)を反転表示し、位置プロンプト(194)に隣接して値として指し示されるように、位置を4.9mmに調整する。「開放」アイコン(198)は、ユーザがタッチパッド制御部上の右ナビゲーションボタン(171)を用いて、プログラムされた位置距離を増加することが可能であることを示す。一方、「閉鎖」アイコン(200)は、ユーザがタッチパッド制御部上の左ナビゲーションボタン(173)を用いることにより、中心間距離を減少させることが可能であることを示す。図15Eに示されるチップ間隔プログラムメニュー(184E)は、ユーザが第1位置プロンプト(188)に隣接して、距離を再プログラムしたことを示す。上述したように、保存プロンプト(196)に指し示されるように、タッチパッド制御部上の右ナビゲーションボタン(171)を押すことで、この設定を保存することができる。最後の距離は、上述と同じ方法でプログラムされ、3つの位置が選択された場合、中間の距離も同様にしてプログラムされる。チップは、開放及び閉鎖ボタン(198)(200)が押されると、物理的に移動する。このような特徴により、操作者は、肉眼で所望の間隔を測定することが可能である。同時に、正確な間隔距離が画面に表示される。
【0038】
図15Fでは、「Pipettor Software Interface」というタイトルが付された上述の特許出願第11/856,232号に示されるように、再配置可能なピペットチップ取り付けシャフトを有する本明細書に開示されるピペット(10)上において、ピペット処理「ピペット」を実行する実行メニュー(202)を示す。図15Fに示されるように、この処理において、1つの中心間距離、つまり第1のプログラムされた距離(188)、すなわちこの例では4.9mmで吸引を行い、最後のプログラムされた距離(192)、すなわちこの例において示される14.1mmで、分注を行うには好ましい。吸引するために、ユーザがタッチパッド制御部上の実行ボタン(172)を押す前に、ユーザは、タッチパッド制御部上の左ナビゲーションボタン(173)を押し、4.5mmの中心間距離になるように、ピペットチップを再配置する。吸引後、ユーザはタッチパッド制御部上の右ナビゲーションボタン(171)を押し、次の工程で分注を行うために実行ボタン(172)を押す前に、14.1mmの間隔になるように、ピペットチップを再配置する。図15Fにおいて、処理の次の工程は、125.0μLで吸引することであり、4.9mmの距離である第1距離が画面の底部に反転表示される。操作者は、4.9mmの第1位置で吸引を行いたいために、ユーザは、サンプルウェルにおいて、ピペットチップを吸引するために設置する。吸引後、操作者は、右ナビゲーションボタン(171)を押し、分注工程の前に、最後の位置である14.1mmでピペットチップを再配置する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペットであって、
前記ピペットは、
多数の吸引シリンダと、
各々がピペットチップの取り付けシャフトを有する、複数の再配置可能なピペットチップフィッティングアセンブリと、
前記多数の吸引シリンダ内部でピストンの動きを制御する第1モータと、
前記取り付けシャフト間の中心線間隔を調節するために、前記再配置可能なピペットチップフィッティングアセンブリを移動させる第2モータとを備えることを特徴とするピペット。
【請求項2】
ハンドル部分と、
下方部分とを備え、
前記第2モータが前記下方部分にあること特徴とする、請求項1記載の手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペット。
【請求項3】
前記第1モータがハンドル部分にあること特徴とする、請求項1記載の手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペット。
【請求項4】
各々の再配置可能なピペットチップフィッティングアセンブリがカム従動ピンを有するとともに、前記下方部分に及ぶ少なくとも1つのロッド上に摺動自在に取り付けられ、前記下方部分は、前記ロッドと平行に延出するとともに各々のカム従動ピン用の個々のカムトラックを有するローラドラムをさらに備え、
各々のカムトラックのピッチは、前記ローラドラムが前記第2モータによって回転する際に、隣接するピペットチップの取り付けシャフト間の中心線間隔が変化するように、選択されることを特徴とする、請求項1記載の手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペット。
【請求項5】
前記下方部分が、前記第2モータからの電力を前記ローラドラムに伝達する歯車をさらに備えることが特徴とする請求項4記載の手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペット。
【請求項6】
前記再配置可能なピペットチップフィッティングアセンブリに関する信号を、前記ピペット内部のマイクロプロセッサに提供するエンコーダをさらに備えることを特徴とする請求項1記載の手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペット。
【請求項7】
手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペットであって、
前記ピペットは、
線に沿って配向する下方ポートと前記線に沿った可動域を各々が有するピペットチップの取り付けシャフトを備える、複数の再配置可能なピペットチップフィッティングアセンブリを備え、
前記線は、前記ピペットが吸引または分注のために用いられる際はほぼ水平であり、
前記ピペットは、
多数の吸引シリンダと、前記吸引シリンダの各々内におよび前記吸引シリンダの各々から空気が吸引される際に介する、関連する固定ポートとを備え、
各々の最も外側のポートは、前記それぞれのピペットチップの取り付けシャフトのための前記可動域の中心点近傍に配され、
前記ピペットは、
複数の可撓性チューブを備え、
各々の可撓性チューブは、前記吸引シリンダの1つの固定ポートから、前記再配置可能なピペットチップフィッティングアセンブリの1つのポートまで実質的に延出することを特徴とするピペット。
【請求項8】
各々の再配置可能なピペットチップフィッティングアセンブリが、前記下方部分に及ぶロッド上に摺動自在に取り付けられるとともにカム従動ピンを有し、前記下方部分が、前記ロッドに平行に延出するとともに各々のカム従動ピン用の個々のカムトラックを有するローラドラムをさらに備えることを特徴とする、請求項7記載の手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペット。
【請求項9】
各々の固定ポートが前記ドラムの近辺に配されるとともに、前記ドラムの外表面に実質的に接する方向に面しており、さらに、
前記関連する可撓性チューブが、前記ドラム周辺の前記固定ポートから前記再配置可能なピペットチップフィッティングアセンブリ上のポートまで、180度未満覆うことを特徴とする請求項8記載の手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペット。
【請求項10】
前記固定ポートが、シリンダブロック内の前記吸引シリンダへのポートおよび前記吸引シリンダからのポートであるとともに、前記シリンダブロックへ接続された剛性チューブであり、各々の剛性チューブは前記ピペットの同じ側に面する排出口を有することを特徴とする請求項7記載の手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペット。
【請求項11】
手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペットであって、
前記ピペットは、
ユーザの手で握られるのに適した上方ハンドル部分と、
前記ピペットの前面に配されたユーザインターフェースディスプレイと、
多数の吸引シリンダと、各々がピペットチップの取り付けシャフトを備える、複数の再配置可能なピペットチップフィッティングアセンブリとを有する下方部分と、
前記チップの取り付けシャフト間の中心線間隔を調節するために、前記再配置可能なピペットチップフィッティングアセンブリを移動させるモータと、
前記モータを制御するマイクロプロセッサと、および、
前記モータを制御し、前記再配置可能なピペットチップフィッティングアセンブリを位置づけるとともに再配置するために、前記マイクロプロセッサをプログラムするメニュー方式のソフトウェアとを備えることを特徴とするピペット。
【請求項12】
前記メニュー方式のソフトウェアは、ユーザが少なくとも2つの所望の設定に対するチップ間隔を選択することを可能にする、チップ間隔プログラミングスクリーンを備えることを特徴とする請求項11記載の手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペット。
【請求項13】
前記メニュー方式のソフトウェアにおける前記チップ間隔プログラミングスクリーンは、ユーザが2つまたは3つのみの位置の設定でチップ間隔を選択することを可能にすることを特徴とする請求項12記載の手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペット。
【請求項14】
前記ピペットは、前記ユーザインターフェースの一部として、少なくとも1つのナビゲーションボタンをさらに備え、前記メニュー方式のソフトウェアは、適切なナビゲーションボタンまたは複数の適切なナビゲーションボタンの指示を含む実行画面を備え、前記ユーザは、少なくとも2つの選択されたチップ間隔の各々への前記ピペットチップを調節するために、前記ナビゲーションボタンを作動させなければならないことを特徴とする請求項12記載の手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペット。
【請求項15】
現在のチップ間隔設定が前記ユーザインターフェースディスプレイ上で強調表示されることを特徴とする請求項12記載の手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペット。
【請求項16】
手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペットであって、
前記ピペットは、
ピペットの取り付けシャフト、カム従動ピン、および、空気の通路を各々が備える、複数の再配置可能なピペットチップフィッティングアセンブリを備え、
各々のチップフィッティングアセンブリは、少なくとも1つのロッドに沿って摺動自在に取り付けられるとともに、前記ロッドの一部に沿った可動域を有し、
前記ピペットは、
前記ロッドに平行に延出するとともに、前記夫々のカム従動ピン用のカムトラックを有する、ローラドラムを備え、
各々のカムトラックのピッチは、前記ローラドラムが回転する際に、隣接するピペットチップの取り付けシャフト間の中心線間隔が変化するように選択され、
前記ピペットは、
多数の吸引シリンダと、前記吸引シリンダの各々内におよび前記吸引シリンダの各々から空気が吸引される際に介する関連する固定ポートと、
前記吸引シリンダの1つの固定ポートから、前記再配置可能なピペットチップフィッティングアセンブリの1つのポートまで実質的に延出する複数の可撓性チューブとを備えることを特徴とするピペット。
【請求項17】
前記ローラドラムが各々の再配置可能なピペットチップフィッティングアセンブリ用の個々のカムトラックを有し、各々のカムトラックの経路全体の一巻きは、前記ローラドラムの1回分の回転数に満たないことを特徴とする請求項16記載の手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペット。
【請求項18】
各々の再配置可能なチップフィッティングアセンブリの本体が、滑らかな材料から成形されることを特徴とする請求項16記載の手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペット。
【請求項19】
前記空気の通路を形成する耐食金属チューブは、各々の再配置可能なピペットチップフィッティングアセンブリの前記本体に挿入成形されることを特徴とする請求項18記載の手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペット。
【請求項20】
前記下方部分は、前記再配置可能なピペットチップフィッティングアセンブリが摺動自在に取り付けられる2つの平行したロッドをさらに備え、
前記ピペットが、ほぼ水平な前記平行ロッドと垂直配向にある際に、第1ロッドは前記第2ロッドの前方かつ下方に配され、さらに、
各々の再配置可能なピペットチップフィッティングアセンブリは、(1)前記ピペットが垂直配向にある際に、前記ピペットの取り付けシャフトが前記フィッティングアセンブリの本体から下方にまっすぐ延出するように、(2)各々のチップフィッティングアセンブリに対する前記空気の通路用の前記ポートが前方方向に角度的に上方に延出するように、および、(3)前記チップフィッティングアセンブリの前記本体を通る前記空気の通路が前記2つのロッドを曲げるとともに前記ロッドを間を通るように、成形されることを特徴とする請求項16記載の手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペット。
【請求項21】
各々の固定ポートが、前記ドラムの周辺に配されるとともに、前記ドラムの外表面に実質的に接する方向に面しており、さらに、
前記関連する可撓性チューブが、前記ドラム周囲の前記固定ポートから前記再配置可能なチップフィッティングアセンブリ上の前記ポートまで、180度未満覆うことを特徴とする請求項16記載の手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペット。
【請求項22】
前記ピペットが垂直配向にある際に、各々の再配置可能なチップフィッティングアセンブリ用の前記カム従動ピンが、前記フィッティングアセンブリから上方にまっすぐ延出することを特徴とする請求項16記載の手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペット。
【請求項23】
前記再配置可能なチップフィッティングアセンブリの少なくとも1つが、前記ピペットに固定されることを特徴とする請求項16記載の手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペット。
【請求項24】
手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペットであって、
前記ピペットは、
線に沿って配向するとともに前記線に沿った可動域を各々が有するピペットチップの取り付けシャフトを備える、複数の再配置可能なチップフィッティングアセンブリを備え、
前記線は、前記ピペットが吸引または分注のために用いられる際にほぼ水平であり、
前記ピペットは、
多数の吸引シリンダと、前記シリンダの各々内にまたは前記シリンダの各々から空気が吸引される際に介する、関連する固定ポートと、
各々が前記吸引シリンダの1つの固定ポートから、前記再配置可能なチップフィッティングアセンブリの1つのポートまで実質的に延出する、複数の可撓性チューブと、
隣接するピペットチップの取り付けシャフト間の中心線間隔を調節するために、前記再配置可能なチップフィッティングアセンブリを移動させる手段とを備え、
隣接するピペットチップの取り付けシャフト間の前記間隔は均一に変化し、前記ピペットの中心からのフィッティングアセンブリは、徐々に大きくなる可動域を有することを特徴とするピペット。
【請求項25】
絶えず変化するストリッパの高さを備えるストリッパバーを有する取り外し機構をさらに備えることを特徴とする請求項24記載の手持ちサイズの電子マルチチャンネルピペット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図15E】
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【図15F】
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【公表番号】特表2011−524244(P2011−524244A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508539(P2011−508539)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/040446
【国際公開番号】WO2009/137235
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(510003612)インテグラ バイオサイエンシーズ コーポレーション (4)
【Fターム(参考)】