説明

写真基材原料のための支持基材およびコート紙の製造方法

特に写真基材紙として有用なコート紙であって、その少なくとも片面に顔料コーティングを有し、顔料コーティングは、霰石沈降炭酸カルシウム、中空球状顔料、および付加的に、アスペクト比約50〜100である高アスペクト比クレイおよびこれらの混合物からなる。また、粗度が3μm以下のコート紙の製造方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮出願第60/479119号の「SMOOTH BASE STOCK COMPOSED OF NONSTANDARD FIBER(非標準繊維からなる平滑な基材原料)」および米国仮出願第60/479118号の「BINDER SELECTION FOR COATED PHOTOGRAPHIC BASE STOCK(コート写真基材原料のためのバインダー選択)」に関連する2003年6月17日出願の米国仮出願第60/478991号の効果を主張する。参考までに、これら仮出願を開示する。
【0002】
本願は、同時出願した米国出願第 号の「SMOOTH BASE STOCK COMPOSED OF NONSTANDARD FIBER(非標準繊維からなる平滑な基材原料)」と、米国出願第 号の「BINDER SELECTION FOR COATED PHOTOGRAPHIC BASE STOCK(コート写真基材原料のためのバインダー選択)」に関連する。参考までに、これら出願を開示する。
【0003】
本発明は、写真基材原料に係り、特に、優れた滑らかさを有する顔料コーティングからなる写真基材原料に関する。
【背景技術】
【0004】
現在、写真画像を形成する幾つかの方法が知られている。ハロゲン化銀写真法およびインクジェット印刷は最もよく採用される二大写真画像形成方法である。これらの方法は、表面に機能的コーティングがなされ高度に平滑化された基材紙に依拠している。ハロゲン化銀写真法の場合、基材紙は、感光コーティング層で覆われたプラスチックフィルムで覆われている。インクジェット写真製品の場合は、高品質のインクジェット受容コーティングが平滑な基材紙の表面に設けられている。基材紙の滑らかさは最終製品、すなわち写真画像製品の滑らかさに重大な影響を及ぼす。
【特許文献1】米国特許第6482581号
【特許文献2】米国特許公報2001/0026869号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
米国特許第6482581号には、クレイおよび/または他の顔料からなる顔料コーティングを少なくとも上面に設けて表面粗度を1μm以下とした写真印刷紙が開示されている。最終製品シートを所望の白色度に維持するため、クレイの使用量は3.3g/m未満に限定されている。
【0006】
米国特許公報2001/0026869号には、小粒径の顔料を使用して記録材料用の支持材料の平滑度を向上させることが開示されている。その目的は、一定量のコーティング(コート重量)にて基材シートの粗さをカバーすることである。小粒径顔料の潜在的な利点は、増大したコートのバルクにあり、与えられたコート重量においてカバー範囲が向上する。しかしながら、この利点は、減量系全体が狭い粒度分布を有する場合に限られる。従来のクレイや炭酸塩を小粒径の顔料と共に用いた場合、顔料全体の粒度分布はもはや狭くなくなり、利点は失われてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施態様によれば、コート紙は少なくとも一方の面に顔料コーティングを有し、その顔料コーティングは霰石沈降炭酸カルシウムおよび中空球状ポリスチレン顔料からなる。顔料コーティングはまた、アスペクト比が約50〜約100の範囲という高アスペクト比のクレイを含有している。顔料コーティングはコート重量約4〜約15lb/3300ftで用いられ、特に約8〜10lb/3300ftで用いられる。
【0008】
本発明の具体的実施形態による顔料コーティングは、霰石沈降炭酸カルシウムと中空球状ポリスチレン顔料とが混合されてなり、中空球状ポリスチレン顔料は全顔料重量の乾燥重量に対して約5〜25部(約5〜25%)の量で用いられ、特に15〜20部(約15〜20%)用いられる。本発明の他の実施態様によれば、顔料コーティングはアスペクト比が約50〜約100の範囲という高アスペクト比のクレイと霰石沈降炭酸カルシウムとが混合されてなり、高アスペクト比クレイは全顔料重量の乾燥重量に対して約5〜25部(約5〜25%)の量で用いられ、特に10〜15部(約10〜15%)用いられる。さらに具体的に、本発明の所定の実施形態では、顔料コーティングは中空球状ポリスチレン顔料、高アスペクト比クレイ、および霰石沈降炭酸カルシウムからなり、中空球状ポリスチレン顔料は約5〜25部(約5〜25%)の量で用いられ、特に20部(約20%)用いられ、高アスペクト比クレイは約5〜25部(約5〜25%)の量で用いられ、特に約12部(約12%)用いられ、霰石沈降炭酸カルシウムは約50〜90部(約50〜90%)の量で用いられ、特に約68部(約68%)用いられる。いずれも全顔料重量に対する乾燥重量である。本発明の他の実施態様によれば、顔料コーティングで実質的にクレイを含まないものもある。
【0009】
顔料コーティングは、顔料コーティング組成物中に、乾燥後のコーティング重量に対して約8〜約30重量%のバインダーを含んでいる。顔料とバインダーの比は約100:15〜約100:40であり、特に、約100:20〜約100:30である。本発明の所定の実施態様によれば、バインダーとしてはアクリルバインダーを含む。アクリルバインダーは、アクリルエステル、変性アクリルエステル、アクリルエステル共重合体、変性アクリルエステル共重合体、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0010】
記録材料を形成するために用いるコート紙の製造方法も開示されている。その方法は、基材原料を調製する段階と、基材原料の少なくとも片面に霰石沈降炭酸カルシウム、中空球状ポリスチレン顔料および付加的に高アスペクト比のクレイ(アスペクト比:約50〜約100)からなる顔料コーティング組成物を塗布する段階を含む。コート紙はさらに平滑化処理を施され、粗度が約1.5μmRa以下のコート紙が供給される。
【0011】
画像形成システムの支持物質をも提供することができる。支持物質は基材原料を含み、基材原料は、少なくともその片面に霰石沈降炭酸カルシウム、中空球状ポリスチレン顔料および付加的に高アスペクト比のクレイ(アスペクト比:約50〜約100)からなる顔料コーティングを有し、コート紙の少なくとも片面に画像形成/画像受容コーティング層を有し、さらに、画像形成/画像受容コーティングは、感光エマルジョン、インクジェット受容コーティング、熱染料記録層、および顔料系インク受容層からなる群から選択される。
【0012】
本発明の所定の実施形態によれば、支持材料はさらに、コート紙表面の顔料コーティングと、支持材料の片面または両面の画像形成/画像受容コーティング層との間に設けられたポリマーコーティング層からなる。本発明の所定の実施態様によれば、ポリマーコーティング層はポリオレフィンまたはポリエステルコーティング層である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
引用される全ての文献は、関連のある部分において参照される。全ての引用が本発明に関しての従来技術であると認定している訳ではない。
【0014】
写真基材紙用コーティングは、通常、他のタイプの紙のコーティングと比較して高いバインダー濃度を有する必要がある。なぜなら、ハロゲン化銀写真現像過程やインクジェット印刷画像形成のいずれにおいても、大量の流体がシートと接触するからである。典型的なバインダーレベルに最適化され、オフセット印刷紙に使用される顔料は、写真基材紙で用いられる高いバインダーレベルにおいては良好ではない。
【0015】
本発明の一実施態様は、高度に平滑化された写真画像用基材原料の製造方法に関するものであり、基材原料の平滑度を向上させるのに特に有用な一種類以上の顔料を含むコーティングを設けることによってなされる。本発明において有用な顔料の例は、針状霰石沈降炭酸カルシウムといった異方性粒子、高アスペクト比クレイ、中空球状ポリスチレン顔料といった低バルク密度顔料、およびこれらの組み合わせを含むが、これらのみに限定されない。本発明のさらに具体的な実施態様によれば、これらの顔料の組み合わせからなる所定の顔料処方が提供される。針状沈降炭酸カルシウム、中空球状ポリスチレン顔料および高アスペクト比クレイの具体的な濃度範囲を提供することによって、塗布後の写真基材紙の粗度は最小化される。本発明の具体的な実施形態によれば、全顔料重量に対して約10〜約14%の高アスペクト比クレイ、約18〜約22%の中空球状ポリスチレン顔料および約65〜約75%の霰石沈降炭酸カルシウムを含む顔料コーティングが、表面粗度を最小化するのに用いられる。本発明は、従来技術によっては到達できなかった粗度レベルを提供する。
【0016】
本発明で用いられる中空球状顔料は、合成有機ポリマーや、ガラスやケイ酸ナトリウム等の無機のシェル形成物質から作られた顔料粒子を含む。通常、そのような微小球体は約0.3〜15μm、好ましくは約1μmの直径を有する。そのような中空合成有機顔料粒子は当該分野では公知であり、Rohm&Haas社によって商業的に利用可能である。本発明で有用である商業的に利用可能な中空球状顔料の一例として、Rohm&Haas社から製品番号HP−1055として販売されている。Dow社から販売されている製品番号HS2000NAの多孔性中空プラスチック顔料もまた、本発明の微小球体として有用であると思われる。本発明において有用な中空ポリマー粒子は、米国特許第3784391号、4798691号、4908271号、4910229号、4972000号、日本国特開昭60−223873号公報、特開昭61−62510号公報、特開昭61−66710号公報、特開昭61−86941号公報、特開昭62−127336号公報、特開昭62−156387号公報、特開平1−185311号公報、特開平2−140272号公報、米国特許第4427836号、4469825号、4594363号、および4880842号に記載の方法によって作製することができ、その特性も開示されている。
【0017】
本発明で有用な高アスペクト比クレイは、直径と厚さのアスペクト比が約50〜約100であるクレイを含む。特に有用なクレイとして、カオリンクレイや、Imersys社から販売されているContour1500が挙げられる。
【0018】
沈降炭酸カルシウムは一般的に、カルサイト、霰石(アラゴナイト)またはバテライトの結晶型を有する。本発明で用いられる無機顔料としては、最終的に基材原料により高い平滑度を与えることができる観点から、霰石結晶型を有する沈降炭酸カルシウムが好ましい。霰石は、長さ/幅比(以下、「アスペクト比」)が1:1〜100:1で典型アスペクト比が10である結晶を形成し、長くて薄い針状物を形成する。よって、以下、高アスペクト比を有する霰石は「針状霰石」を意味する。
【0019】
本発明において有用な針状霰石沈降炭酸カルシウムとしては、Specialty Minerals社から販売されているものを含む。米国特許第5861209号に記載されている霰石沈降炭酸カルシウム顔料もまた本発明に有用である。
【0020】
本発明の顔料コーティング組成物はさらに、顔料コーティングにおいて当業者がよく用いるバインダーおよび他の顔料をも含む。顔料組成物に含まれる顔料の例としては、他の炭酸カルシウム顔料、クレイ、二酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、タルク、サチンホワイト、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、水酸化亜鉛等を用いることができるが、これらのみに限定されない。
【0021】
顔料組成物に含まれるバインダーの例としては、スチレン−ブタジエンポリマー、アクリルポリマー、スチレン−アクリルポリマー、酢酸ビニル、およびエチレン酢酸ビニルポリマーが挙げられるが、これらのみに限定されない。
【0022】
本発明の一実施態様によれば、コーティングで用いられるバインダーはアクリルラテックスである。アクリルラテックスの例としては、アクリルエステル、変性アクリルエステル、アクリルエステル共重合体、および変性アクリルエステル共重合体が挙げられるが、これらのみに限定されない。有用なバインダーの例としては、Rhoplex B−15P、Rhoplex P−554、およびRhoplex 60−Aが挙げられる。特に好ましいアクリルラテックスは、Rohm&Haas社から販売されているRhoplex B15Pである。バインダーは通常、コーティングの全固形分重量に対して約8重量%〜約30重量%で用いられ、好ましくは約15重量%〜約25重量%で用いられる。本発明の具体的な実施形態によれば、コーティング組成物は、同時係属出願番号 の「BINDER SELECTION FOR COATED PHOTOGRAPHIC BASE STOCK(コート写真基材原料のためのバインダー選択)」に記載のバインダーを含む。
【0023】
本発明の基材原料は、高画質を提供するために滑らかな基材シートが要求される任意の画像形成システムに用いることができる。実施例によれば、それは感光エマルジョン、水/顔料系インク受容層、熱染料記録層、または与えられた画像形成方法にふさわしい他の特殊なコーティングと共に用いられる。より具体的には、本発明によって製造される基材原料は、写真製品として変更を加えたり、写真インクジェット製品を製造するのに用いられる。
【0024】
高品質な画像を作製する紙用の基材原料には、特別に平滑な表面が要求される。このような紙の製造において用いられる繊維は一般的には天然のセルロース繊維であるが、合成繊維を用いることもできる。基材原料は、長網抄紙機や円網抄紙機で製造することができる。本発明の一実施態様によれば、原料基材シートは、同時係属出願番号 の「SMOOTH BASE STOCK COMPOSED OF NONSTANDARD FIBERS(非標準繊維からなる平滑な基材原料)」に開示されているように、繊維を用いて形成することができる。基材原料を作製する際は、従来の任意のサイズ剤および結合剤を使用することができる。原料紙は、クレイ、炭酸カルシウムまたは二酸化チタン等の顔料および充填剤、さらには消泡剤、蛍光増白剤および着色剤といった付加的な補助基材を含む。原料基材紙の秤量は通常、約50〜約250g/mであり、特に、約100〜約200g/mである。
【0025】
以上記述した顔料コーティングは、従来の任意の塗布装置、例えばゲートロールコーター、ビルブレードコーター、エアナイフコーター等を用いて未塗装の基材原料上に塗布される。顔料コーティングは通常コート重量で約4〜15lb/3300ft設けられ、特に、約8〜10lb/3300ftである。
【0026】
製紙機において形成および乾燥後に織布を形成するかまたは基材原料に顔料コーティングを適用した後、基材原料またはコート紙の最終的な平滑化は一般的に、織布またはコート紙を各種の平滑化処理に送って達成される。有用な方法の一例として、互いに積み重ねられた複数のロールの隙間(挟持部分)に紙織布を通して圧力を加えて平滑化を図るカレンダー法として知られる緻密化処理がある。一般的に、圧縮段階は4個またはそれ以上の金属ロールをスタック(積み重ね)としたものによって達成される(米国特許第5060565号)。このようなスタックでは、ロールの重量または付加的な荷重によって、挟み荷重および圧縮力は連続する挟みにおいて下から増加する。米国特許第5200258号においては、異種の材料からなる2個のロール(例えば、金属ロールとポリマー樹脂カバーロール)で挟み、続いて2個の金属ロールで挟む過程が開示されている。この過程は、標準的な基材原料を製造するために用いられる方法でもある。本発明の所定の実施態様によれば、ポリマー樹脂カバーロールおよび金属ロールか、または2つの金属ロールによって連続して紙を挟んで圧縮する。ポリマーカバーロールと金属ロールで織布を挟んだ場合、ポリマーカーバーロールと接していた方の織布の表面が、微細なスケールにおいてより平滑化されることは、カレンダリングの分野では知られている。2つの金属ロールで挟んだ場合は、紙形成時に関連した粗度、すなわち大スケールから中スケールの粗度の平滑化を行うことができる。本発明の具体的な実施形態によれば、平滑化過程は、紙織布またはコート紙をカレンダースタックに通して複数箇所で挟ませ、金属ロールとそれに隣接したポリマーカバーロールによって最初の挟持部分を形成し、最後の2つの挟持部分は、対をなした隣接する金属ロールによって形成する。ゆえに、微小スケールの平滑度は最初に向上し、最後の2つの挟持部分で大スケールおよび中スケールの平滑度が向上する。カレンダーロールの重量および荷重圧力のみが個々の挟持圧力を決定する因子とならないよう、挟持圧力を調整する手段が採用される。以上述べたカレンダリング手順によれば、複数の金属ロールによるカレンダー時に起こりやすいロール焼け効果を起こすことなく、高いレベルの平滑度を達成することができる。
【0027】
本発明によるコート紙は、上述の顔料コーティング組成物を使用することによって平滑度が向上しており、有用である。ほとんどの画像形成過程においては、より滑らかな紙によってより高い品質の画像を提供することができる。写真基材紙の平滑度は、高品質画像を形成する際に特に重要である。基材原料またはコート紙の表面粗度またはRaは、相対的に微細な紙表面の不規則さの指標である。Raは、基材原料または処理後の紙のセンタラインの粗度を表している。表面粗度の測定は、紙表面全体に渡るばらつきの最大値を指し示している。Ra値が低いとより滑らかな基材原料またはコート紙であることを示している。
【0028】
本発明の一実施態様によれば、粗度が約1.2μmRa〜約1.5μmRaの基材原料またはコート紙を供給するために、紙は平滑化過程へ送られる。所望の平滑度を有する基材原料またはコート紙を得るために、カレンダの荷重は通常約1000pli〜約1500pliである。Raは好ましくは3.0μm以下であり、より好ましくは2.0μm以下であり、最も好ましくは1.5μm以下である。
【0029】
本発明の他の実施形態によれば、コート紙は、顔料コーティングの乾燥重量に対して約20〜約30%のアクリルバインダー、約40〜約80%の霰石沈降炭酸カルシウム、および約15〜25%の中空球状ポリスチレン顔料を含む顔料コーティング有する形で提供される。
【0030】
本発明の所定の実施形態によれば、顔料コート紙はさらに、片面または両面にてポリマー樹脂層によってコーティングされる。ポリマーフィルムは通常、押出または積層工程によってコート紙上に設けられるが、他の任意の方法によってポリマーフィルムを基材原料上にコートして平滑な表面を提供することもできる。一または二以上のポリマーコート層を紙上に設けることもできる。本発明の本実施態様において有用なポリマーは、紙基材原料上に押出、積層、塗布して提供されるが、それらのみに限定されない。
【0031】
通常ポリオレフィン樹脂は、感光エマルジョンを設けるための写真支持材を作製するのに用いられる。ポリオレフィン樹脂層を形成するのに有用なポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンのホモポリマー、2種類以上のオレフィンの共重合体、およびこれらの混合物が含まれる。様々な密度およびメルトインデックスのポリマーを使用することができる。ポリエステル樹脂やフィルムもまた、写真支持材を作製するのに使用することができる。ポリマー樹脂層には、さらに、顔料、アミド、脂肪酸金属塩、抗酸化剤、光沢剤、紫外線吸収剤等の他の添加剤を加えることができる。二酸化チタンは、鮮明さおよび画像解像度を向上させるためにポリマー樹脂層に添加されることが多い。Unoらによる米国特許第4994357号には、多種のポリオレフィンコーティング組成物および写真支持材の作製時における該組成物の使用について開示している。
【0032】
ポリマー層は、乾燥コート重量で約5〜約30lb/3300ft、特に約15〜25lb/ft設けられる。ポリマー層は単層として押出されるか、複層として同時押出しされる。
【0033】
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0034】
3種類の炭酸カルシウム顔料を比較した。第1のものは、90%の粒子が直径2μm未満である微細粉末炭酸カルシウムである(商品名:Hydrocarb90、Omya社製)。第2の顔料は、小粒径炭酸カルシウムである(商品名:CovercarbHP、Omya社製)。第3の顔料は、針状霰石沈降炭酸カルシウムである(商品名:OpacarbA40、Specialty Minerals社製)。これら顔料の未コート写真基材シートの粗度低減能力を比較することを目的としている。炭酸カルシウム顔料85部、中空球状ポリスチレン顔料15部、およびアクリル系ラテックスバインダーを各15、25、35部とした処方を行った。(これは、全顔料コーティングに対して炭酸カルシウム顔料約74〜63%、中空球状ポリスチレン顔料13〜11%、およびアクリル系ラテックスバインダー13〜26%に相当する)。コーティングは、鋼鉄−鋼鉄カレンダーを施した写真基材紙に112lb/3300ftで設けた。ベントブレードコーター設備が用いられた。コーティングは、コート重量で約7lb/3300ftで設けた。図1は、スーパーカレンダーを行わずにコートを施した紙について粗度を試験した結果を示す。粗度は、Mahr−Feinpruf光学表面形状測定装置をS8Pプロセッサと共に用いて測定した。カットオフ長は1mmを採用した。未コート基材シートの粗度値は、1.8μmであった。図1から明らかなように、顔料の比較性能は、コーティングのバインダーレベルに大幅に依存している。バインダーレベルが最低のものでは、顔料間の性能差異は認められるが非常に小さい。25部(全顔料コーティングの約20%)のバインダーでは、顔料間の性能差異はより明確に認められる。小粒径炭酸カルシウムは、微細粉末炭酸カルシウムよりも小さい表面粗度のものを作製することができた。霰石沈降炭酸カルシウムは、これら両炭酸カルシウムより良好な結果であった。バインダーレベルが最高のもの、すなわち液体浸透を防止するのに通常採用されるバインダーレベルでは、霰石炭酸カルシウムは明らかの他の二者よりもはるかに良好であった。この場合、小粒径顔料は、標準的な粉末炭酸カルシウムよりも性能は良くなかった。これらのコートシートにスーパーカレンダーを実施すると(図2)、粗度の差異は減少するが、35部(全顔料コーティングの26%)のバインダーでは、顔料の相対的性能は明らかである。
【実施例2】
【0035】
霰石沈降炭酸カルシウムと共に用いてコート後の写真基材紙の粗度を最小化するため、中空球状ポリスチレン顔料および高アスペクト比クレイのレベルを最適化するための実験を行った。高アスペクト比クレイは、直径と厚さのアスペクト比が約80であった。コーティングは未コートの写真基材紙に設けられた。顔料は、アクリルラテックスバインダー25部(約20%)および澱粉3部(約2%)と混合された。粗度は、Mahr−Feinpruf光学表面形状測定装置をS8Pプロセッサと共に用いて測定した。カットオフ長は1mmを採用した。試験データは、ECHIP統計モデルソフトウェアを用いて、顔料0部と25部(約20%)との間の中空球状顔料および高アスペクト比クレイの全てのレベルを含む描画空間の数学的モデルを生成した。残りの顔料成分は霰石沈降炭酸カルシウム50〜100部(約40〜80%)である。部分的に3次元の数学的方程式を用いて、データのモデル化を行った。未スーパーカレンダー時の粗度の3次元表示モデルを図3に示す。X軸は、中空球状顔料レベルの0〜25部(約20%)を表す。Y軸は、高アスペクト比クレイレベル0〜25部(約20%)を表す。Z軸は、測定された表面粗度をμm単位で表す。グラフによれば、ある程度までは高アスペクト比クレイまたは中空球状顔料が増加するにしたがって粗度は減少している。グラフは、粗度を最小化するための最適な顔料の組み合わせを示しており、それによれば、約12部(約9%)の高アスペクト比クレイ、20部(約16%)の中空球状顔料および68部(約53%)の霰石沈降炭酸カルシウムである。スーパーカレンダー後の粗度では(図4)、ほぼ同様の顔料割合において粗度の最小値が達成されている。「部」は、顔料100部あたりで示してあり、「%」は顔料コーティングの乾燥重量に対する割合で示している。
【0036】
以上、本発明の様々な態様および実施形態、およびその利点を説明したが、当業者にとっては、本願クレームに示された技術思想および範囲内において本発明のあらゆる改良、置換、および修正をすることができると認識される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】顔料タイプおよびバインダーレベルによる未カレンダー時の平均粗度を示すグラフである。
【図2】顔料タイプおよびバインダーレベルによるスーパーカレンダー時の平均粗度を示すグラフである。
【図3】高アスペクト比クレイおよび中空球状プラスチック顔料レベルによるによる未カレンダー時の粗度(Ra)を示すグラフである。
【図4】高アスペクト比クレイおよび中空球状プラスチック顔料レベルによるスーパーカレンダー時の粗度(Ra)を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材料を形成するためのコート紙の製造方法であって、
基材原料を調製し、
上記基材原料の少なくとも片面に、霰石沈降炭酸カルシウム、中空球状顔料およびバインダーからなる顔料コーティング組成物を塗布することを特徴とするコート紙の製造方法。
【請求項2】
前記コート紙は、さらに、アスペクト比が約50〜約100の高アスペクト比クレイを含むことを特徴とする請求項1に記載のコート紙の製造方法。
【請求項3】
上記顔料コーティングのコート重量は、約4〜約15lb/3300ftであることを特徴とする請求項1に記載のコート紙の製造方法。
【請求項4】
前記顔料コーティングは、全顔料コーティングの乾燥重量の約40〜約80%の霰石沈降炭酸カルシウムおよび約15〜約25%の中空球状顔料を含むことを特徴とする請求項1に記載のコート紙の製造方法。
【請求項5】
前記顔料コーティングは、さらに、全顔料コーティングの約20〜約30%のアクリルバインダーを含むことを特徴とする請求項4に記載のコート紙の製造方法。
【請求項6】
前記バインダーは、スチレン−アクリルバインダーであることを特徴とする請求項5に記載のコート紙の製造方法。
【請求項7】
前記顔料コーティングは、実質的にクレイを含まないことを特徴とする請求項1に記載のコート紙の製造方法。
【請求項8】
前記バインダーは、顔料コーティング組成物中に、顔料コーティング乾燥重量の約8〜約30重量%含まれていることを特徴とする請求項1に記載のコート紙の製造方法。
【請求項9】
顔料とバインダーの比は、約100:15〜約100:40であることを特徴とする請求項8に記載のコート紙の製造方法。
【請求項10】
前記顔料コーティングは、アクリルエステル、変性アクリルエステル、アクリルエステル共重合体、変性アクリルエステル共重合体およびこれらの混合物からなる群から選択されたアクリルバインダーを含むことを特徴とする請求項8に記載のコート紙の製造方法。
【請求項11】
前記コート紙は、約2.0μmRa以下の表面粗度であることを特徴とする請求項1に記載のコート紙の製造方法。
【請求項12】
前記中空球状顔料は、中空球状ポリスチレン顔料からなることを特徴とする請求項1に記載のコート紙の製造方法。
【請求項13】
さらに、コート後の基材原料に平滑化処理を行って粗度を約2.0μmRa以下としたコート紙を提供することを特徴とする請求項1に記載のコート紙の製造方法。
【請求項14】
前記平滑化処理は、コート後の基材原料を複数の挟持部分に通して約1000〜約1500pliの荷重をかけて行うことを特徴とする請求項13に記載のコート紙の製造方法。
【請求項15】
前記顔料コーティングは、全顔料コーティングに対して約20〜約30%のバインダー、約15〜約25%の中空球状顔料、および約40〜約80%の霰石沈降炭酸カルシウムを含むことを特徴とする請求項13に記載のコート紙の製造方法。
【請求項16】
前記バインダーは、アクリルエステル、変性アクリルエステル、アクリルエステル共重合体、変性アクリルエステル共重合体およびこれらの混合物からなる群から選択されたアクリルバインダーを含むことを特徴とする請求項13に記載のコート紙の製造方法。
【請求項17】
コート紙からなる画像形成システム用の支持材料であって、
上記コート紙は、
少なくとも片面に顔料コーティングが施された基材紙と、
コート紙の少なくとも片面に施された画像形成/画像受容コーティングとからなり、
さらに、上記顔料コーティングは、霰石沈降炭酸カルシウムおよび中空球状顔料からなり、上記画像形成/画像受容コーティングは、感光エマルジョン、インクジェット受容コーティング、熱染料記録層、および顔料系インク受容層からなる群から選択されたものであることを特徴とする支持材料。
【請求項18】
前記支持材料は、さらに、前記コート紙に設けられた顔料コーティングと、前記支持材料の片面あるいは両面に設けられた画像形成/画像受容コーティングとの間にさらにポリマーコーティング層を備えたことを特徴とする請求項17に記載の支持材料。
【請求項19】
前記ポリマーコーティング層は、ポリオレフィンまたはポリエステルコーティング層からなることを特徴とする請求項18に記載の支持材料。
【請求項20】
前記顔料コーティングのコート重量は、約4〜約15lb/3300ftであることを特徴とする請求項18に記載の支持材料。
【請求項21】
前記顔料コーティングは、全顔料コーティングの乾燥重量に対して約40〜約80%の霰石沈降炭酸カルシウムおよび約15〜25%の中空球状顔料を含むことを特徴とする請求項20に記載の支持材料。
【請求項22】
前記顔料コーティングはさらに、全顔料コーティングに対して約20〜約30%のアクリルバインダーを含むことを特徴とする請求項21に記載の支持材料。
【請求項23】
前記顔料コーティングは、全顔料重量に対して約10〜約14%の高アスペクト比クレイ、約18〜約22%の中空球状ポリスチレン顔料および約65〜約75%の霰石沈降炭酸カルシウムからなることを特徴とする請求項22に記載の支持材料。
【請求項24】
前記顔料コーティングは、実質的にクレイを含まないことを特徴とする請求項21に記載の支持材料。
【請求項25】
前記顔料コーティングはさらに、顔料コーティング組成物中に、顔料コーティング乾燥重量の約8〜約30重量%のバインダーを含んでいることを特徴とする請求項20に記載の支持材料。
【請求項26】
前記顔料とバインダーの比は、約100:15〜約100:40であることを特徴とする請求項25に記載の支持材料。
【請求項27】
前記顔料コーティングは、アクリルエステル、変性アクリルエステル、アクリルエステル共重合体、変性アクリルエステル共重合体およびこれらの混合物からなる群から選択されたアクリルバインダーを含むことを特徴とする請求項25に記載の支持材料。
【請求項28】
前記支持材料は、約2.0μmRa以下の表面粗度であることを特徴とする請求項20に記載の支持材料。
【請求項29】
前記顔料コーティングは、全顔料重量に対して約10〜約14%の高アスペクト比クレイ、約18〜約22%の中空球状ポリスチレン顔料、および約65〜約75%の霰石沈降炭酸カルシウムを含み、さらに、乾燥顔料コーティング重量に対して約15〜約25%のアクリルバインダーを含むことを特徴とする請求項28に記載の支持材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−524006(P2007−524006A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517358(P2006−517358)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/019405
【国際公開番号】WO2004/114014
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(505468978)ニューページ コーポレーション (5)
【Fターム(参考)】