説明

冠水監視装置及び冠水監視システム

【課題】冠水監視装置及び冠水監視システムに関し、冠水の検出精度を向上させつつコストパフォーマンスを向上させる。
【解決手段】複数のレーダー反射体9が設置された所定領域に向けて電波を照射するとともにレーダー反射体9からの反射波を受信する受信手段1と、レーダー反射体9の水没時における反射波の強度に対応する基準値を複数のレーダー反射体毎に記憶する記憶手段3とを設ける。
また、受信手段1で受信した反射波の強度と記憶手段3に記憶された基準値との比較により、水没したレーダー反射体9を冠水反射体として特定する特定手段4と、特定手段4で特定された冠水反射体の設置点が冠水している旨の情報を出力する出力手段5,6とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、路面の冠水状態を監視する冠水監視装置及び冠水監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水位計を用いて車両通行用の道路や低海抜地域への浸水状態を検出する技術が開発されている。すなわち、豪雨や河川の氾濫による路面の冠水や、津波,越波等による沿岸地域への浸水の発生を早期に把握し、これを交通規制や避難誘導に活用するものである。近年では、都市部を中心とした各地において、鉄道路線や車両用道路の交差部分にアンダーパス構造が適用されており、冠水に伴う交通障害の発生が懸念されている。
【0003】
冠水の水位を検出するための手法としては、水面に浮かぶフロートの位置を検出するものや、感圧素子に作用する水圧に基づいて水深を把握するもの、水面に照射された超音波の反射波を利用して水面までの距離を計測するもの等が知られている。また、舗装路面に対して照射された電磁波の反射強度に基づいて路面の凍結状態や冠水状態を把握する技術や、反射波が検出されるまでの所要時間に基づいて反射面までの距離を算出する技術も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−325193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来の技術では、浸水状態を把握したい各々の地点に水位を検出するためのセンサー類を設ける必要がある。例えば、特許文献1に記載されたように、水面に対して垂直方向に進行する反射波を受信するものにあっては、鉛直下方の距離しか検出することができない。したがって、アンダーパス構造のように監視対象となる路面の延長距離が数十メートルから数百メートルに及ぶ場合には、複数台のセンサー装置を設置しなければならず、費用対効果が低いという課題がある。
【0006】
また、この種の水位検出装置には、豪雨や河川の氾濫といった不可測の事態が発生した時に活用されることから、高度な堅牢性,動作信頼性が要求される。つまり、複数のセンサー装置を設置した場合には、それぞれのセンサー装置への給電ラインを確保しつつ、各センサー装置を振動や衝撃,泥水の浸入等から適切に保護しなければならず、メンテナンスや維持管理に係るランニングコストが高騰するおそれがある。
一方、センサー装置の設置数を減らすことでコストを削減することも可能ではあるものの、設置箇所の減少に伴い冠水の発生領域に関する検出分解能が低下し、すなわち冠水の検出精度が低下する。
【0007】
本件の目的の一つは、これらのような課題に鑑み創案されたものであり、冠水の検出精度を向上させつつコストパフォーマンスを向上させることである。
なお、前記目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の冠水監視装置は、複数のレーダー反射体が設置された所定領域に向けて電波を照射するとともに前記複数のレーダー反射体からの反射波を受信する受信手段と、前記レーダー反射体の水没時における反射波の強度に対応する基準値を前記複数のレーダー反射体毎に記憶する記憶手段とを備える。
また、前記受信手段で受信した前記反射波の強度と前記記憶手段に記憶された前記基準値との比較により、水没した前記レーダー反射体を冠水反射体として特定する特定手段と、前記特定手段で特定された前記冠水反射体の設置点が冠水している旨の情報を出力する出力手段とを備える。
【0009】
また、開示の冠水監視システムは、路面の冠水状態を監視する冠水監視システムであって、前記路面上の所定領域に設置された複数のレーダー反射体と、前記所定領域に向けて電波を照射するとともに前記複数のレーダー反射体からの第一反射波及び前記路面を走行する車両からの第二反射波を受信するレーダー装置とを備える。
この場合、前記レーダー装置は、識別手段,記憶手段,特定手段及び出力手段を備える。前記識別手段は、前記第一反射波と前記第二反射波とを識別し、前記記憶手段は、前記レーダー反射体の水没時における反射波の強度に対応する基準値を前記複数のレーダー反射体毎に記憶する。また、前記特定手段は、前記第一反射波の強度と前記第二反射波と前記記憶手段に記憶された前記基準値との比較により、水没した前記レーダー反射体を冠水反射体として特定する。さらに、前記出力手段は、前記特定手段で特定された前記冠水反射体の設置点が冠水している旨の情報を道路管理者に伝達する。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術によれば、複数のレーダー反射体からの反射波の反射強度と基準値とを比較することで、簡素な構成でレーダー反射体が水没した位置を正確に特定することができ、低コストで所定領域内における冠水の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る冠水監視システムの適用対象を例示する図であり、(a)は本システムが適用されるアンダーパス構造を透視して示す模式図、(b)は(a)のアンダーパス構造の模式的な断面図である。
【図2】本冠水監視システムのレーダー反射体を説明するための図であり、(a)はレーダー反射体の正面,側面図、(b)はレーダー反射体の反射特性を例示するグラフである。
【図3】本冠水監視システムに係る冠水監視装置のシステム構成図である。
【図4】本冠水監視装置で検出される反射波をグラフ化したものであり、反射波の検出位置とその経時変動を例示するものである。
【図5】本冠水監視装置で検出される反射波の強度の経時変動を例示するグラフである。
【図6】本冠水監視装置による故障判定を説明するためのグラフであり、(a),(b)は冠水監視装置の故障時における反射波の検出強度の経時変動を示し、(c)はレーダー反射体の破損時における反射波の検出強度の経時変動を示す。
【図7】本冠水監視装置での冠水判定に関するフローチャートである。
【図8】本冠水監視装置による出力内容の選択に関するフローチャートである。
【図9】本冠水監視装置での故障検知に関するフローチャートである。
【図10】変形例に係る冠水監視装置を説明するための斜視図である。
【図11】変形例に係る冠水監視装置の説明するための斜視図である。
【図12】変形例に係る冠水監視装置による故障判定を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本冠水監視装置に係る実施の形態を説明する。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも例示に過ぎず、以下に示す実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。すなわち、本実施形態を、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(実施形態及び各変形例を組み合わせる等)して実施することができる。
【0013】
[1.装置構成]
図1(a)は、アンダーパス構造の車両用道路に対して本冠水監視システムに係る冠水監視装置10を適用した例を示すものである。アンダーパス構造とは、鉄道路線や幹線道路の交差部分で一方の路線,道路を他方の下に潜らせた構造を意味する。以下、このような交差部分で下方を通過する道路のことをアンダーパス11と呼び、アンダーパス11内の通行車両のことを車両14と呼ぶ。
【0014】
一般的なアンダーパス11の路線形状は交差部分で最も標高が低く、路線の延在方向の垂直断面で下に凸の形状である。そのため、アンダーパス11の内部には、降雪,降雨によって水が流入したときに水たまりができないように排水溝や揚水ポンプといった排水設備が設けられる。一方、豪雨や河川の氾濫等によって交差部分に水が大量に流入した場合、水の流入速度が排水速度を上回ると路面が冠水し、車両14の通行に支障を来しかねない。
【0015】
そこで、本冠水監視システムでは、アンダーパス11の交差部分をレーダーで常時監視することにより、冠水の発生時にその旨の情報を運転者や道路管理者等に報知する。図1(a)中の電光掲示板12は、このような情報を車両14の運転者に報知するための表示装置であり、車両14の進行方向を基準として、例えば交差部分よりも手前側に設置される。以下、アンダーパス11の交差部分のことを、低所11aとも呼ぶ。
【0016】
本冠水監視システムには、レーダー装置としての機能を持つ冠水監視装置10と、複数のレーダー反射体9とが用いられる。
冠水監視装置10は、ミリ波帯の電波(波長が1〜10[mm]程度であって周波数が30〜300[GHz]程度の電磁波)を予め設定された所定の監視対象領域に照射し、その反射波に基づいて監視対象領域の冠水状態やアンダーパス11の内部での交通量の情報,平均通行速度,渋滞情報等を検出するものである。ミリ波帯の電波は、耐環境性に優れ、直進性が高い(散乱しにくい)ため、他の周波数帯の電波を用いた場合と比較して安定した検知性能を有する。冠水監視装置10による最大検出距離は、電波の出力にも依るものの、市場品のレベルで数百[m]に達する。
【0017】
この冠水監視装置10は、少なくともアンダーパス11の低所11aに電波を直接(又は間接的に)照射できる位置に固定される。図1(a)では、アンダーパス11を通行する車両14の進行方向を基準として低所11aよりも奥側に冠水監視装置10が配置されている。
【0018】
本実施形態では、少なくとも一以上の走行レーンとこれに隣接する路側が監視対象領域に設定されているものとする。なお、車両14の進行方向を基準として低所11aよりも手前側に冠水監視装置10を配置してもよい。また、既存の道路交通情報通信システムで使用されているレーダー装置(交通量を計測するもの)を流用し、本実施形態の冠水監視装置10として機能させてもよい。
【0019】
レーダー反射体9は、冠水監視装置10から照射される電波を効率よく反射するためのリフレクターである。このレーダー反射体9は、アンダーパス11の低所11aの各所に、アンダーパス11の延設方向に沿って車両14の進行の妨げにならない路側に固設される。レーダー反射体9が固定される高さは、路面に近い高さとされる。
【0020】
本実施形態では、図1(b)に示すように、三つのレーダー反射体9a,9b,9cが冠水監視装置10から距離L1,L2,L3の位置に設けられ、それぞれの標高がH1,H2,H3に設定される。距離L1,L2,L3の大小関係はL1<L2<L3であり、標高H1,H2,H3の大小関係はH2<H1<H3である。以下、これらのレーダー反射体9を個々に区別する際には、冠水監視装置10からの距離が近い順に、第一反射体9a,第二反射体9b、第三反射体9cとも呼ぶ。なお、第二反射体9bの設置点は、アンダーパス11の低所11a内で最も標高の低い位置(最も窪んだ冠水しやすい位置)である。
【0021】
レーダー反射体9での電波の反射方向は、そのレーダー反射体9から見て少なくとも冠水監視装置10が存在する方向を含むものとする。なお、コーナーリフレクター(レトロリフレクター)や球状の金属リフレクターを用いれば、レーダー反射体9の向きの取り付け精度に関わらず、冠水監視装置10に対して比較的安定した反射強度の反射波を反射することが期待できる。
【0022】
本実施形態では、図2(a)に示すような形状のレーダー反射体9を使用した場合について説明する。このレーダー反射体9には、電波を反射するリフレクター部91と、このリフレクター部91を路面に対して固定するための台座部92とが設けられる。リフレクター部91は、直角二等辺三角形状に切断加工された三枚の金属板の短辺同士を接合してなる三角錐状の部位であり、錐面の内側に入射した電波を入射方向と平行な逆方向に反射する。前述のレーダー反射体9の標高Hは、リフレクター部91の頂点の位置を基準として設定される。
【0023】
冠水時におけるレーダー反射体9の反射特性グラフを、図2(b)に例示する。このグラフは、レーダー反射体9を路面に固定した状態で水平方向からミリ波帯の電波を照射し、その電波の強度を一定に維持しつつ、レーダー反射体9を徐々に冠水させたときの反射波の強度ER(反射強度)の変化を示すものである。グラフの横軸は路面からの水面の高さ(台座部92の下端からの水位)に対応する。なお、値X1はリフレクター部91の下端の高さ、値X2はリフレクター部91の頂点の高さである。ここでは、リフレクター部91の下端から頂点までの標高差X2-X1を数[cm](例えば、5[cm]程度)に設定した。
【0024】
水位がリフレクター部91の下端よりも下方に位置するときには、所定の反射強度ERAが得られる。一方、水位がリフレクター部91の下端に達すると、反射面積の減少に伴って反射強度ERが急激に低下し、リフレクター部91の頂点が完全に水没すると反射強度ERはほぼゼロとなる。このように、ミリ波帯の電波は水中に吸収されやすいため、リフレクター部91からの反射強度ERが著しく低下したことを以てレーダー反射体9が水没したものと判断することが可能である。
【0025】
例えば、図2(b)中に示すように、非水没時の反射強度ERAよりも小さい所定の閾値ERTHを予め設定しておき、任意のレーダー反射体9からの反射強度ERが閾値ERTHを下回ったときに、そのレーダー反射体9が設けられた位置で冠水が発生した(少なくとも路面の冠水深さがX1になった)ものとみなすことができる。さらに、閾値ERTHよりも小さい検出限界レベルの下限閾値ERMINを設定しておき、任意のレーダー反射体9からの反射強度ERが下限閾値ERMINを下回ったときに、そのレーダー反射体9が設けられた位置で、路面の冠水深さがX2になったものとみなしてもよい。
【0026】
なお、レーダー反射体9の非水没時の反射強度ERAは、そのレーダー反射体9と冠水監視装置10との距離が遠いほど小さい。そこで、本実施形態では、三つのレーダー反射体9a〜9cのそれぞれについて、距離L1〜L3に応じた大きさの閾値ERTH1〜ERTH3が設定されている。
【0027】
[2.制御構成]
[2−1.概要]
冠水監視装置10は、上記のレーダー反射体9やアンダーパス11上を通行する車両14,物体等の対象物を検出するレーダー装置であり、例えばアンテナ,送受信回路モジュール,演算回路モジュール等を内蔵したものである。ここに内蔵される電子回路モジュールは、例えばマイクロプロセッサやROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)等を集積したLSI(Large Scale Integration)デバイスとして製造されたものであってもよい。
【0028】
図3は、冠水監視装置10の機能を模式的に表現したシステム構成図である。冠水監視装置10は、ネットワーク7を介してアンダーパス11の管理者である交通管制センター8aや、警察当局8b,救助センター8cといった第三者機関と通信可能に接続される。ネットワーク7は、例えば携帯電話機用の無線通信網やインターネットを利用して形成された有線又は無線通信網である。
【0029】
この冠水監視装置10には、レーダー部1,信号処理部2,記憶部3,判定部4,表示部5及び通信部6が設けられる。これらのレーダー部1,信号処理部2,記憶部3,判定部4,表示部5及び通信部6の各機能は、電子回路(ハードウェア)で実現してもよく、ソフトウェアとしてプログラミングされたものとしてもよいし、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
【0030】
[2−2.入力に係る要素]
レーダー部1(受信手段)は、ミリ波帯の電波を送受信するための部位であり、図示しないアンテナから送信波を照射するとともに、その反射波を受信するものである。電波が照射される領域(監視対象領域)は、少なくとも上記のレーダー反射体9が設けられた各地点を含む領域とする。したがって、レーダー反射体9が破損,冠水しない限り、レーダー反射体9からの反射波がレーダー部1で受信される。また、電波の照射領域内を通行する車両14が存在する場合には、その車両14からの反射波がレーダー部1に到達する。ここで送受信された送信波及び反射波の情報は、信号処理部2に伝達される。
【0031】
なお、物体の測定方式は、例えばFM-CW方式(Frequency Modulated Continuous Wave)とする。レーダー部1は、周波数を徐々に変化させながら電波を送信し、送信波と反射波との周波数差(ビード周波数)に基づいて、送信波を反射した物体までの距離及び相対速度を検出する。本実施形態では、冠水監視装置10の位置が路面に対して固定されているため、レーダー反射体9までの距離は一定であり、相対速度は常にゼロである。
【0032】
信号処理部2は、レーダー部1からの伝達情報に信号処理を施すものである。ここでは、レーダー部1から伝達された反射波と送信波とをミキシングしたビード信号が生成されるとともにビード信号の周波数が演算され、このビード信号の周波数に基づいて、反射波を反射した対象物までの距離L及び対象物の速度Vが演算される。また、ここでは対象物からの反射波の強度ERが検出される。これらの対象物に関する距離L,速度V及び強度ERの情報は、判定部4に伝達される。なお、ここでいう対象物には、上記のレーダー反射体9だけでなくアンダーパス11上を通行する車両14も含まれる。
【0033】
記憶部3(記憶手段)は、前述の三つのレーダー反射体9a〜9cのそれぞれについての閾値ERTH1〜ERTH3、すなわち、距離L1〜L3に応じた大きさの閾値ERTH1〜ERTH3を記憶するものである。これらの閾値ERTH1〜ERTH3は、三つのレーダー反射体9a〜9cのそれぞれが水没したか否かを判断するための指標となる。三つの閾値ERTH1〜ERTH3の大小関係は、距離L1〜L3の大小関係とは逆に、ERTH3<ERTH2<ERTH1である。
【0034】
[2−3.判定に係る要素]
判定部4(特定手段,識別手段)は、信号処理部2から伝達された対象物の情報に基づいて、主に三種類の判定を実施する。第一の判定は、対象物がレーダー反射体9であるか、それとも車両14であるかの判定である。第二の判定は、レーダー反射体9が水没したか否かの判定(すなわち、冠水判定)である。そして第三の判定は、レーダー反射体9及び冠水監視装置10自身の故障判定である。判定部4での判定結果は、表示部5及び通信部6に伝達される。
【0035】
[2−3−1.対象の識別]
第一の判定に関して、判定部4は、対象物の情報をレーダー反射体9の情報と車両14の情報とに識別するとともに、冠水したレーダー反射体9に対応する情報を特定する。ここでは、冠水監視装置10から距離Lnの位置で検出された対象物の速度Vが所定速度V0未満であるとき、その対象物が距離Lnの位置に設けられたレーダー反射体9であると判断される。ここでいう所定速度V0とは、例えばゼロに近い微小な値である。つまり、距離L1〜L3で移動しない対象物が、それぞれレーダー反射体9a〜9cとして識別される。
【0036】
一方、これら以外の対象物は全て車両14であると判断される。すなわち、対象物までの距離Lが距離L1〜L3以外であるか、又は、対象物の速度Vが所定速度V0以上である場合には、その反射波を車両14からの反射波(第二反射波)とみなし、その対象物を車両14として識別する。
【0037】
信号処理部2から伝達される対象物の位置情報の経時変化をプロットすると、図4に示すようなグラフが得られる。三つのレーダー反射体9はそれぞれ距離L1〜L3の位置に固定されているため、それに対応するグラフは距離L1〜L3の位置で時間軸に平行な直線状(太実線)となる。
【0038】
対象物が車両14であれば、それに対応するグラフは走行速度に応じた勾配を持つ。冠水監視装置10を監視対象領域よりも車両14の前方に配置した場合、車両14は監視対象領域内において時間の経過とともに冠水監視装置10に接近するため、車両14に対応するグラフの勾配は右肩下がりとなる(細実線)。また、図4中に示すように、走行速度が遅いほど減少勾配が小さくなり、車両14が停止するとグラフの勾配はゼロとなる。
【0039】
[2−3−2.冠水の判定]
第二の判定に関して、判定部4は距離L1〜L3に位置するレーダー反射体9のそれぞれについての反射強度ERを閾値ERTHと比較し、反射強度ERが閾値ERTH以上であるときに、そのレーダー反射体9が水没していないと判断する。本実施形態では、各々の距離L1〜L3での閾値ERTH1〜ERTH3が設定されているため、第一反射体9aが水没したと判断されたときの反射強度ERの大きさは、第二反射体9bが水没したと判断されたときの反射強度ERの大きさとは相違する。例えば、第一反射体9aが水没していないと判断されるための条件は『第一反射体9aからの反射強度ERが閾値ERTH1以上であること』であり、第二反射体9bが水没していないと判断されるための条件は『第二反射体9bからの反射強度ERが閾値ERTH2以上であること』である。
【0040】
第一反射体9aからの反射強度ERが閾値ERTH1未満であるときには、第一反射体9aが水没し、第一反射体9aの設置点で冠水が発生したものと判断される。また、このときの冠水水位は、第一反射体9aが取り付けられた標高H1であるものと判断される。同様に、第二反射体9b,第三反射体9cの場合にはそれぞれ、反射強度ERが閾値ERTH2,ERTH3と比較され、それぞれの設置点での冠水の有無及び冠水水位が判断される。
【0041】
レーダー反射体9a〜9cの反射強度ERが閾値ERTH1〜ERTH3未満になった冠水時刻をそれぞれt1,t2,t3とおくと、これらの時刻t1〜t3は、図4に示すグラフでレーダー反射体9a〜9cに対応する直線のグラフが消失する時刻に対応する。例えば、アンダーパス11の冠水時に水深が徐々に増加した場合、時刻t1〜t3の前後関係は古い順にt2,t1,t3となる。
【0042】
図5は、信号処理部2から伝達される対象物の情報のうち、反射強度ERの経時変化をグラフ上にプロットしたものである。レーダー反射体9からの反射強度ERは、一般的に反射波の進行距離に応じて減少するため、レーダー反射体9が水没していない通常時には、第一反射体9aからの反射強度ERが最も大きくなり、第三反射体9cからの反射強度ERが最も小さくなる。
一方、冠水の発生時には、標高が低い順に反射強度ERが低下し始める。したがって、第二反射体9bの反射強度ERが最初に低下し、続いて第一反射体9a,第三反射体9cの順に反射強度ERが低下する。
【0043】
また、一般に、車両14からの反射強度ERは車両14が冠水監視装置10に接近するほど増大する。そのため、図5中の車両14に対応するグラフの勾配は右肩上がりとなり、図4中の車両14に対応するグラフを上下方向に反転させたような形状となる。このように、移動している物体の反射強度ERは一定にはならず、その変化量は移動速度に応じたものとなる。したがって、このような特性を利用してレーダー反射体9と車両14とを識別してもよい。
【0044】
[2−3−2.故障の判定]
第三の判定に関して、判定部4は第一の判定で識別された車両14からの反射強度ERを用いてレーダー反射体9の破損や冠水監視装置10自身の故障を判定する。判定部4は、全てのレーダー反射体9の反射強度ERについて、それぞれの反射強度ERが閾値ERTH(閾値ERTH1,ERTH2,ERTH3)未満であり、かつ、車両14からの反射強度ERが所定強度ERB未満であるときに、冠水監視装置10が故障したと判定する。この場合、冠水監視装置10のレーダー機能(レーダー部1やアンテナ等)が故障したものと判断される。
例えば、図6(a)に示すように、所定の時刻t4以降に監視対象領域からの電波の反射強度ERが全体的に低下した場合には、この現象の原因が冠水監視装置10の機能低下に由来するものとみなされる。
【0045】
一方、全てのレーダー反射体9の反射強度ERが閾値ERTH未満であり、かつ、車両14からの反射強度ERが所定強度ERB以上である場合には、レーダー機能が維持されていることから、判定部4は冠水監視装置10の本体の向きが変化したと判定する。この場合、冠水監視装置10のレーダー機能が故障した訳ではないものの、アンダーパス11内の冠水を監視する機能を十分に果たすことができないことから、判定部4は冠水監視装置10に広義の故障が発生したものと判断する。
例えば、図6(b)に示すように、所定の時刻t5以降に全てのレーダー反射体9の反射強度ERが低下したにも関わらず、車両14からの反射強度ERに変化が見られない場合には、この現象の原因が監視対象領域の移動に由来するものとみなされる。
【0046】
また、各レーダー反射体9について、反射強度ERが閾値ERTH未満である状態での経過時間が所定時間以上であり、かつ、アンダーパス11内を通行する車両14の速度Vが所定速度V1以上である場合に、そのレーダー反射体9が故障した(例えば、レーダー反射体9の一部又は全部が破損したか、リフレクター部91の向きが変化した)と判定する。ここでいうレーダー反射体9の故障には、レーダー反射体9の一部又は全部が破損したことや、リフレクター部91の向きが変化したこと等によって、リフレクター部91に入射した電波を十分な強度で反射することができなくなった状態が含まれる。
【0047】
つまり、レーダー反射体9からの反射強度ERが一時的に低下したような場合(レーダー反射体9が所定時間の間に冠水監視装置10から見えたり見えなくなったりする場合)には、冠水監視装置10とレーダー反射体9との間を何らかの障害物が通過したもの捉え、レーダー反射体9の故障ではないと判断する。また、反射強度ERが長時間低下したとしても、通行する車両14の速度Vが所定速度V1未満であれば、冠水によって車両14が徐行しているものと捉え、レーダー反射体9の故障ではないと判断する。
例えば、図6(c)に示すように、第二反射体9bの反射強度ERが所定の時刻t6から時刻t7までの短い時間で低下した場合には、第二反射体9bが故障していないものとみなされる。また、反射強度ERが低下していない第一反射体9a及び第三反射体9cについても、故障していないものとみなされる。
【0048】
一方、反射強度ERが長時間低下しているにも関わらず、車両14の速度Vが所定速度V1以上であれば、レーダー反射体9のリフレクター機能が低下した(例えば、リフレクター部91の破損によって電波の反射方向が変化した)ものと捉え、レーダー反射体9の故障であると判断する。
図6(c)中の時刻t8以降では、第二反射体9bの反射強度ERが長時間にわたって低下している。反射強度ERのみを参照したのでは、この反射強度ERの低下がリフレクター部91の水没に起因するものなのか、それとも水没以外のリフレクター機能の低下に起因するものなのかを区別することが難しい。しかし、第二反射体9bのリフレクター部91が実際に水没しているのであれば、路面の冠水によってアンダーパス11を通行する車両14の速度Vが低下し、図6(c)に示すように、車両14に対応するグラフの勾配が小さくなるはずである。そこで本実施形態では、反射強度ERが長時間低下し、かつ、速度Vが所定速度V1以上であれば、レーダー反射体9が故障したものと判断する。
【0049】
[2−4.出力に係る要素]
表示部5(出力手段,報知手段,警報手段)は、判定部4での判定結果に応じた情報を電光掲示板12に出力するものである。ここでは、判定部4でアンダーパス11内に冠水が発生したものと判断されたとき、冠水水位を表示させる制御信号が電光掲示板12に出力され、冠水水位が車両14の運転者に報知される。例えば、第一反射体9aの設置点が冠水したときには電光掲示板12に『冠水水位X2cm』と表示させる。
【0050】
また、冠水の発生位置が第二反射体9bの設置点のみである場合、すなわち、最も標高の低いレーダー反射体9のみが水没している場合(例えば、冠水の深さが路面から数[cm]程度の場合)には、車両14の通行に支障がないものと判断され、電光掲示板12に『通行注意』等と表示させる制御信号が出力される。
【0051】
一方、冠水が少なくとも第一反射体9a及び第二反射体9bの双方で発生している場合、すなわち、冠水水位が標高H2以上である場合(例えば、冠水の深さが路面から数十[cm]に達した場合)には、車両14の通行に支障を来すものと判断され、電光掲示板12に『通行禁止』等と表示させる制御信号が出力される。
さらに、冠水の発生中にアンダーパス11内に進入しようとする車両14が存在する場合(交通量を計測するレーダー機能で車両14の存在を検知した場合)には、上記の制御信号に加えて、電光掲示板12に『冠水中』,『速度をおとせ』等と表示させる制御信号が出力される。
【0052】
通信部6(出力手段,救助手段)は、判定部4での判定結果に応じた情報を交通管制センター8a,警察当局8b及び救助センター8cに伝達する信号を出力するものである。ここでは、判定部4でアンダーパス11内に冠水が発生したものと判断されたとき、冠水水位を交通管制センター8aに伝達するための伝達信号が出力される。
また、冠水が少なくとも第一反射体9a及び第二反射体9bの双方で発生している場合、すなわち、冠水水位が標高H2以上である場合には、アンダーパス11内を車両14が通行できない状態になったものと判断し、警察当局8b宛にアンダーパス11での交通整理を依頼する伝達信号が出力される。
【0053】
さらに、冠水が少なくとも第一反射体9a及び第二反射体9bの双方で発生した状態で、かつ、アンダーパス11内の車両14の速度Vが所定の通行速度V2未満である場合には、冠水によってアンダーパス11内に車両14がスタックしたものと判断し、救助センター8c宛に救助を要請する伝達信号が出力される。なお、車両14のスタックが発生したとき、図4中で車両14に対応するグラフの勾配はほぼゼロとなる。したがって、速度Vの代わりに距離Lの情報を用いて車両14のスタックを検出してもよい。
【0054】
[3.フローチャート]
図7〜図9は、冠水監視装置10で実施される制御の手順を例示するフローチャートである。これらのフローチャートに示される一連の制御は、それぞれが互いに独立して冠水監視装置10の内部で繰り返し実施される。
図7は冠水の判定に関するフローであり、図8は出力に関するフローであり、図9は故障判定に関するフローである。なお、図7中に記載された変数kは、三つのレーダー反射体9を区別するための変数である。この変数kの初期値はk=0であり、レーダー反射体9の設置数に応じた整数値をとるものとする。
【0055】
[3−1.冠水の判定]
図7のフローチャートの各ステップは、おもにレーダー部1,信号処理部2及び判定部4で実施される。ステップA10では、監視対象領域内に存在する対象物が検出される。すなわち、レーダー部1に到達した反射波の情報が信号処理部2に伝達され、反射波を反射した対象物までの距離L及び対象物の速度Vが演算されるとともに、反射波の強度ERが検出される。
【0056】
ステップA20では、検出された対象物がレーダー反射体9であるか、それとも車両14であるかが識別される。判定部4では、検出された全ての対象物の中から距離L1〜L3で移動しない対象物が抽出され、これらがそれぞれ第一反射体9a,第二反射体9b,第三反射体9cとして識別される。また、これ以外の対象物は全て車両14として識別される。ここで識別されたレーダー反射体9及び車両14に関する情報は、図示しない記憶装置に記録される。
【0057】
ステップA30では、変数kがk=3であるか否かが判定される。変数kの初期値はk=0であり、最初はステップA40へ進む。また、続くステップA40では変数kに値k+1が代入されてステップA50へ進む。
ステップA50では、第k反射体の反射強度ERが閾値ERTHk以上であるか否かが判定される。変数kがk=1のとき、第一反射体9aの反射強度ERと閾値ERTH1とが比較され、ER≧ERTH1のときにステップA60へ進む。一方、ER<ERTH1のときにはステップA70へ進む。
【0058】
ステップA60では、第k反射体についての監視カウンター値CkがCk=0に設定されてステップA80へ進む。一方、ステップA70では、第k反射体についての監視カウンター値Ckに値Ck+1が代入されてステップA80へ進む。ここでいう監視カウンター値Ckとは、第k反射体が連続して水没したものと判断された回数(第k反射体が水没した可能性の高さであって、検出誤差や水面の変動等の影響が考慮されたもの)に対応する変数であり、レーダー反射体9毎に設定される。
【0059】
ステップA80では、第k反射体についての監視カウンター値Ckが所定の閾値回数CkTH以上であるか否かが判定される。ここで、Ck≧CkTHである場合にはステップA90へ進み、第k反射体が確実に水没したものと判定されてステップA30へ進む。一方、ステップA80でCk<CkTHである場合には、ステップA100へ進み、第k反射体が水没していないものと判断されてステップA30へ進む。
【0060】
ステップA30〜A100のフローは、レーダー反射体9の設置数に応じて繰り返し実施される。全てのレーダー反射体9についての水没判定が一巡すると、制御がステップA20からステップA110へ進む。
【0061】
ステップA110では、変数kがk=0に設定されるとともに、ステップA20で車両14として識別された全ての対象物に関する情報が車両通行情報として追跡される。例えば、個々の対象物の速度Vの情報に基づき、次回の演算周期で検出されうる距離Lの予測値が演算される。また、前回の演算周期で演算された車両14の距離Lの予測値が存在する場合には、これと今回演算周期で得られた距離Lとが照合され、同一の車両14であるか否かが検定される。
【0062】
このフローチャートでは、レーダー反射体9からの反射強度ERが閾値ERTHk未満である状態が繰り返し検出され、その回数が閾値回数CkTH以上に達して初めてレーダー反射体9が水没したものと判定される。また、反射強度ERが回復すれば直ちに判定が覆され、レーダー反射体9が水没していないものと判定される。これにより、検出誤差や冠水面の変動(さざ波)の影響が取り除かれ、レーダー反射体9の設置点での冠水状態が精度よく把握される。
【0063】
[3−2.出力]
図8のフローチャートの各ステップは、おもに表示部5及び通信部6で実施される。ステップB10では、第三反射体9cの設置点が冠水しているか否かが判定される。ここで第三反射体9cが水没しているときにはステップB40へ進み、水没していないときにはステップB20へ進む。また、ステップB20では、第一反射体9aの設置点が冠水しているか否かが判定される。ここで第一反射体9aが水没しているときにはステップB50へ進み、水没していないときにはステップB30へ進む。
【0064】
同様に、ステップB30では、第二反射体9bの設置点が冠水しているか否かが判定される。ここで第二反射体9bが水没しているときにはステップB60へ進み、水没していないときにはそのままこのフローを終了する。
【0065】
制御がステップB40に進むのは、三つのレーダー反射体9のうち標高が最も高い第三反射体9cが水没しており、すなわち全てのレーダー反射体9が水没しているときである。したがって、ステップB40では表示部5から電光掲示板12に制御信号が出力され、電光掲示板12に『通行禁止』と表示されるとともに、第三反射体9cの設置点の標高H3に対応する冠水水位が表示されて、ステップB70へ進む。
【0066】
また、ステップB20からステップB50に進んだ場合には、三つのレーダー反射体9のうち第一反射体9a及び第二反射体9bが水没している。したがって、電光掲示板12に通行禁止である旨の警告と第一反射体9aの設置点の標高H1に対応する冠水水位とが表示され、ステップB70へ進む。
【0067】
ステップB70では、通信部6から警察当局8b宛に伝達信号が出力されてアンダーパス11での交通整理が依頼される。また、これに続くステップB80では、アンダーパス11内で停止した車両14(スタック車両)が存在するか否かが判定される。ここで所定の通行速度V2未満の車両14が存在する場合にはステップB90へ進み、存在しない場合にはステップB100へ進む。
【0068】
なお、アンダーパス11の中で最も標高が低い位置は冠水監視装置10からの距離LがL2の位置である。つまり、冠水監視装置10からの距離LがL2未満の位置で検出された車両14は、冠水した路面の最深部をスタックすることなく通過した車両14である。したがって、冠水監視装置10からの距離LがL2以上の位置で検出された車両14のみを対象として、車両14のスタックを検知する構成としてもよい。
あるいは、冠水した領域(すなわち、冠水した領域と冠水していない領域との境界位置に対応する二箇所の距離L)を演算し、その領域内で検出された車両14のみをスタックの検知対象としてもよい。
【0069】
ステップB90では、通信部6から救助センター8c宛に伝達信号が出力され、スタックした車両14の救助が要請されてステップB100へ進む。
なお、ステップB30からステップB60に進んだ場合には、第二反射体9bのみが水没しているため、電光掲示板12に『通行注意』と表示されるとともに、第二反射体9bの設置点の標高H1に対応する冠水水位が表示され、ステップB100へ進む。ステップB100では、アンダーパス11内に進入しようとする車両14が存在するか否かが判定される。この条件が成立する場合にはステップB110へ進み、条件が非成立の場合にはステップB120へ進む。
【0070】
ステップB110では、表示部5から電光掲示板12に制御信号が出力され、電光掲示板12に『冠水中』と表示されてステップB120へ進む。続くステップB120では、通信部6から交通管制センター8a宛に伝達信号が出力され、電光掲示板12に出力された冠水水位や交通案内表示の内容が通知される。また、警察当局8bや救助センター8cに伝達信号が出力された場合には、それらの情報も併せて交通管制センター8aに通知される。
【0071】
[3−3.故障判定]
図9のフローチャートの各ステップは、おもに判定部4で実施される。ステップC10では、全てのレーダー反射体9についてそれぞれの反射強度ERが閾値ERTH未満であるか否かが判定される。ここで、第一反射体9aの反射強度ERが閾値ERTH1未満であり、かつ、第二反射体9bの反射強度ERが閾値ERTH2未満であり、かつ、第三反射体9cの反射強度ERが閾値ERTH3未満である場合にはステップC20へ進み、この条件が成立しない場合にはステップC50へ進む。全てのレーダー反射体9からの反射強度ERがほぼ同時(所定時間の間)に減少したか否かを判定する構成としてもよい。
【0072】
ステップC20では、車両14からの反射強度ERが所定強度ERB以上であるか否かが判定され、この条件の成立時にはステップC30へ進み、冠水監視装置10の本体の向きが変化したものと判定される。この判定は、例えば冠水監視装置10のアンテナの向きが変化して、レーダー反射体9が冠水監視装置10から見えなくなった場合や、監視対象領域が隣接する走行レーン側に移動してしまった場合に相当する。
一方、ステップC20の条件が成立しない時にはステップC40へ進み、冠水監視装置10が故障したものと判定される。この判定は、例えば冠水監視装置10のレーダー機能が低下したような場合に相当する。
【0073】
ステップC30,C40に続くステップC50では、少なくとも何れか一つのレーダー反射体9の反射強度ERが閾値ERTH未満であるか否かが判定され、この条件の成立時にステップC60へ進む。一方、この条件の非成立時にはステップC90へ進み、レーダー反射体9は何れも破損していないものと判定されてこのフローを終了する。
【0074】
ステップC60では、アンダーパス11を通行する車両14の速度Vが所定速度V1以上であるか否かが判定され、この条件の成立時にステップC70へ進む。また、この条件の非成立時にはステップC90へ進み、レーダー反射体9は何れも破損していないものと判定されてこのフローを終了する。
【0075】
ステップC70では、ステップC50で反射強度ERが低下したと判断されたレーダー反射体9に関して、反射強度ERが低下してからの経過時間が所定時間以上であるか否かが判定される。この条件が成立するとステップC80へ進み、そのレーダー反射体9は破損しているものと判定される。一方、この条件の非成立時にはステップC90へ進み、レーダー反射体9は何れも破損していないものと判定されてこのフローを終了する。
なお、上述の図9に示す故障判定に係るフローは、図8に示す出力に関するフローに組み込むことも可能である。例えば、図8中のステップB40,B50及びB60をそれぞれ実施する前に、故障判定に係るフローを実施してもよい。
【0076】
[4.作用,効果]
(1)水没したレーダー反射体9からの反射波の強度ERは冠水状態に応じて変化し、水没後の反射強度ERは水没前の反射強度ERと比較して著しく低下する。このような反射強度ERの変化特性を踏まえて、上述の実施形態では、監視対象領域内の各所に固設されたレーダー反射体9のそれぞれに反射強度ERの閾値ERTHを設定し、記憶部3に記憶させている。この閾値ERTHは、冠水監視装置10との距離Lに応じて予め設定されたものであり、三つのレーダー反射体9a〜9cのそれぞれが異なる大きさの閾値ERTH1〜ERTH3を持つ。
【0077】
上記の冠水監視システムでは、各レーダー反射体9a〜9cに固有な大きさの閾値ERTH1〜ERTH3と反射強度ERとが比較され、反射強度ERがそれぞれの閾値ERTH1〜ERTH3未満になったときに、その反射波の発生源であるレーダー反射体9の設置点で冠水が発生したものと判断される。また、反射強度ERがそれぞれの閾値ERTH1〜ERTH3以上まで回復したときには、その反射波の発生源であるレーダー反射体9の設置点で冠水が解消されたものと判断される。
【0078】
このように、レーダー反射体9の大きさが数[cm]程度の小さなものであっても、車両14や道路構造物と比較してその水没を精度よく検知することができる。さらに、各レーダー反射体9a〜9cに固有の閾値ERTH1〜ERTH3と反射強度ERとを比較することで、それぞれのレーダー反射体9a〜9cの水没の度合いを精度よく把握することもできる。これに基づいて路面の水没の程度と水たまりの発生位置とを正確に特定することができる。したがって、アンダーパス11内における冠水の検出精度を向上させることができる。
【0079】
特に、上記の冠水監視システムは、各レーダー反射体9a〜9cの反射強度ERを検出するものであって、冠水した水面自体を検出するものではないため、仮に水面が波立っている場合であっても計測精度が劣化しない。つまり、上記の冠水監視システムは、水面の状態に依らずに水位を計測することができ、環境変化に強く、外乱の影響を受けにくいという利点がある。
【0080】
また、冠水監視システムで用いられるレーダー反射体9は、シンプルな構造のリフレクターであって、水没や冠水を検出するための電力,動力が不要であるにも関わらず、安定した一定量の反射強度ERを期待することができ、コストパフォーマンスを向上させることができる。
【0081】
なお、水たまりが発生しうる監視対象領域には、水分や塵埃,汚泥等への耐性が高くほとんど故障する心配のない金属リフレクターが設けられる一方、所定の防水性能が要求される冠水監視装置10は監視対象領域から離れた高所に設置される。したがって、冠水監視システムの耐用年数やメンテナンスのインターバルを長く設定することができ、この点でもコストパフォーマンスを高めることができる。
【0082】
(2)また、上記の冠水監視システムでは、三つのレーダー反射体9a,9b,9cが冠水監視装置10から距離L1,L2,L3の位置に設けられている。これにより、反射波に含まれる距離Lの情報のみからその反射波の発生源の位置を一意に特定することが可能となり、受信した反射波が三つのレーダー反射体9a,9b,9cのうちの何れからの反射波であるかを容易に特定することができる。
【0083】
つまり、反射波の発生源の位置及び方向の識別が不要となり、レーダー部1での演算構成を簡素化することができ、冠水監視装置10のコストを低減することができるとともに、演算速度を向上させることができる。
また、レーダー部1から照射する電波の照射方向を制御する必要がないため、レーダー装置自体の構成をより簡素にすることが可能であり、大幅にコストを削減することができる。また、既存の道路交通情報通信システムで使用されているレーダー装置の転用,併用が容易であり、コスト的に有利である。
【0084】
(3)また、上記の冠水監視システムでは、三つのレーダー反射体9a,9b,9cが互いに相違する標高H1,H2,H3に設けられる。これにより、冠水水位を精度よく把握することができ、アンダーパス11内における冠水の発生領域やその広さを精度よく推定することができる。
【0085】
なお、一般的なアンダーパス11の路線形状は低所11aで最も標高が低く、下に凸の形状であるため、たとえレーダー反射体9の形状が同一であったとしても、異なる位置に配置するだけでそれぞれの標高Hを相違させることが容易である。逆にいえば、上記の冠水監視装置10をアンダーパス11に適用する際には、レーダー反射体9の標高Hを相違させるべく台座部92の形状を変更する必要がなく、さらなるコスト削減を図ることができる。
【0086】
(4)また、上記の冠水監視システムでは、レーダー反射体9からの反射波だけでなく、アンダーパス11を通行中の車両14からの反射波を検出し、車両14の位置情報や速度情報を利用した制御が実施される。これにより、通常時にはアンダーパス11内の交通量や渋滞状況を観測しながら、突発的に発生しうる冠水を常時監視することができる。
【0087】
(5)また、上記の冠水監視システムでは、アンダーパス11内に冠水が発生した状態で新たな車両14が進入してきたときには、電光掲示板12に『冠水中』と表示される。このように、冠水の発生を車両14の運転者に対して積極的に報知する制御を実施することで徐行運転を促すことができ、アンダーパス11内のトラフィック量を適切にコントロールすることができる。また、車両14の運転者が冠水に遭遇するよりも前に予め情報を提供することができ、利便性を向上させることができる。
【0088】
(6)また、上記の冠水監視システムでは、アンダーパス11内の冠水水位に応じて車両14の進入が禁止される。例えば、冠水水位が比較的低く第二反射体9bのみが水没している場合には、電光掲示板12に『通行注意』と表示されるのに対し、第一反射体9a及び第二反射体9bがともに水没した場合には、電光掲示板12に『通行注意』と表示される。このように、冠水水位に応じて車両14の進入を制限することで、冠水に起因するアンダーパス11内での車両スタックを未然に防ぐことができる。
【0089】
(7)一方、冠水水位が標高H2以上であるときに車両14のスタックが検出された場合には、スタック車両の救助が救助センター8cに要請される。したがって、アンダーパス11内の交通障害を早期に解消することができる。
なお、車両14のスタックの検出に関して、冠水した領域内で検出された車両14のみを対象としてスタックを検知する構成とした場合には、アンダーパス11内で停止した車両14のうち、冠水によって自走できなくなった車両14を正確に把握することができる。例えば、車体が水没してスタックした車両14と、その車両14の手前で急停止した自走可能な車両14とを識別することができ、救助が必要な車両14の台数を正確に計数することができる。
【0090】
(8)また、上記の冠水監視システムでは、レーダー反射体9の反射強度ERと車両14からの反射強度ERとを識別し、車両14からの反射強度ERを用いて冠水監視装置10の故障判定を実施している。これにより、万が一、冠水監視装置10に故障が発生した場合であっても、通常の運用状態でその故障を迅速に発見することができ、早期にメンテナンスを行うことができる。また、冠水監視装置10の故障が早期に解決することから、冠水に関する誤検知や誤報を抑制することができ、冠水の検出精度をさらに向上させることができるとともに、制御の信頼性を向上させることができる。
【0091】
(9)さらに、上記の冠水監視システムでは、それぞれのレーダー反射体9からの反射強度ERに加えて車両14の速度Vを参照し、レーダー反射体9の破損を判定している。つまり、冠水監視装置10だけでなく、レーダー反射体9についても、通常の運用状態でその故障,破損を迅速に発見することができ、早期にメンテナンスを行うことができる。したがって、冠水に関する誤検知や誤報を抑制することができ、冠水の検出精度をさらに向上させることができるとともに、制御の信頼性を向上させることができる。
【0092】
(10)また、上記の冠水監視システムでは、図7に示すように、それぞれのレーダー反射体9についての監視カウンター値Ckが設定されており、検出誤差や水面の変動等の影響を考慮しながら確実に水没判定を実施している。例えば、レーダー反射体9の周りに小さな水たまりが発生したときに、水面のさざ波によって反射強度ERが一回だけ偶然に低下したような場合には、そのレーダー反射体9が水没したものとは判断されない。このように、反射強度ERと閾値ERTHとの比較だけでなく、反射強度ERが閾値ERTHを下回った回数を利用してレーダー反射体9が水没したか否かの判定を慎重に実施することで、冠水の検出精度をさらに向上させることができる。
【0093】
[5.変形例]
[5−1.判定条件]
上述の実施形態における各種の判定条件は、適宜変更することが考えられる。
例えば、判定部4における第一の判定に関して、上述の実施形態では、対象物の距離L及び速度Vに基づいてレーダー反射体9と車両14とを識別するものを例示したが、このような手法に代えて、あるいは加えて、推定される対象物の移動軌跡に基づいてレーダー反射体9と車両14とを識別してもよいし、図4や図5に示すようなグラフの形状に基づいてレーダー反射体9と車両14とを識別してもよい。これらの複数の手法を用いることで、判定の精度(正確さ)を変化させることができ、あるいは精度をさらに高めることができる。
【0094】
第二の判定に関しても同様であり、反射強度ERと単一の閾値ERTHとを比較する代わりに、複数の閾値と比較する構成としてもよい。例えば、図2(b)に示すように、反射強度ERが所定の時間をかけて連続的に減少した場合にそのレーダー反射体9が水没したと判定し、瞬間的に急激に減少した場合にはレーダー反射体9の破損や冠水監視装置10の故障を疑うこととしてもよい。反射強度ERの変化勾配を観察することで、より正確にレーダー反射体9の水没状態を判定することができる。
【0095】
また、第三の判定に関して、設置点の標高Hを考慮して冠水監視装置10の故障やレーダー反射体9の破損等を判定してもよい。例えば標高が最も低い第二反射体9bが水没したと判定されるよりも前に、第三反射体9cが水没したものと判定され、その判定が長時間維持されたような場合には、冠水監視装置10が故障したか、レーダー反射体9が破損したものと判断することが考えられる。
【0096】
また、上述の実施形態では、反射強度ERに基づいて冠水監視装置10の故障を判定するものを例示したが、これに加えて、あるいは代えて、測定された物体の距離Lに基づいて冠水監視装置10の故障を判定する構成としてもよい。すなわち、冠水監視装置10から照射される電波の出力が低下した場合や反射波の受信感度が低下した場合には、冠水監視装置10で検出することのできる最大距離が減少する。
【0097】
このような出力低下や受信感度の低下が徐々に進行した場合、冠水監視装置10で検出される対象物までの距離が徐々に減少し、図12に示すように、遠方に存在するものから順に対象を検出できなくなる。この図では、図4と同様に、冠水監視装置10で検出された対象物までの距離Lが縦軸に描かれ、横軸が時間を示している。したがって、観測された対象物のうち、最も遠方に位置する物体までの距離(検出可能距離)が極端に小さくなったときに、冠水監視装置10が故障したものと判定する構成としてもよい。
【0098】
[5−2.出力内容]
上述の実施形態の表示部5や通信部6によって制御される出力の具体的な内容は種々考えられる。
例えば、表示部5が電光掲示板12に表示させる情報の種類としては、冠水の報知や警報だけでなく、迂回路の提示や進入可能と推定される車高や車種の提示,アンダーパス11内に流入する水の流入速度や排水速度の報知等が考えられる。正確な情報を遅滞なく公表することで、車両14の運転者に冷静かつ適切な運転を促すことができるとともに、本冠水監視システムに対する信頼性を向上させることができる。
【0099】
また、上述の実施形態では、通信部6からの情報の出力先が交通管制センター8a,警察当局8b及び救助センター8cであるものを例示したが、具体的な情報の出力先はこれに限定されない。例えば、既存の道路交通情報通信システムや、アンダーパス11に接続された近傍道路の路車間通信網に対して情報を出力し、アンダーパス11で冠水が発生したことを広く知らしめてもよい。これにより、冠水による交通障害の発生をより回避しやすくすることができ、利便性を高めることができる。
【0100】
また、上述の実施形態では、冠水水位が標高H2以上である場合に車両14の進入を制限するための警報表示が表示部5から出力されるものを例示したが、冠水水位に応じて警報表示の内容を変更してもよい。例えば、冠水水位が比較的低いときには軽自動車の通行のみを禁止し、冠水水位がさらに上昇したときに全ての車両の通行を禁止するといった表示をすることも考えられる。交通障害の原因となり得る車両種別毎のリスクを考慮したうえで警報内容を変更することで、利便性をさらに向上させることができる。
【0101】
また、上述の実施形態では、アンダーパス11を通行する車両14が存在しない場合であっても、冠水の発生時には冠水水位が電光掲示板12に表示される構成となっているが、少なくとも車両14が冠水した領域に進入しようとしているときにこのような表示がなされればよい。
【0102】
また、上述の実施形態では、冠水監視システムがレスキューを要請するか否かを判定する主体として機能するものを例示したが、このような構成に代えて、冠水や車両14のスタックの通報を受けた管理者が別途に気象情報等を入手した上で、レスキューを要請すべきか否かを判定するようにしてもよい。
【0103】
[5−3.適用対象]
上述の実施形態では、アンダーパス構造の車両用道路に冠水監視システムを適用したものを例示したが、冠水監視システムの適用対象はこれに限定されない。例えば、図10に示すように、河岸堤防に上記の冠水監視システムを適用することで、河川の水位を監視するシステムを構築することができる。この場合、堤防の河川20に面した側面21に複数のレーダー反射体9を固定することで、水位を正確に検知することができ、河川の氾濫を事前に把握することができる。
【0104】
また、図11に示すように、海岸沿いの防波堤や防潮堤に上記の冠水監視システムを適用することで、台風や暴風雨等による越波を監視するシステムを構築することができる。この場合、防波堤22の高さよりも標高が高い位置に複数のレーダー反射体9を固定することで、防波堤22を超えて堤内の道路23に浸入する高波を正確に検知することができる。
【0105】
防波堤22に複数のレーダー反射体9を固定する場合には、それぞれのレーダー反射体9の固定高さを相違させてもよいが、図11中に破線で示すように、同一の高さに設置してもよい。少なくとも、冠水監視装置10までの距離が相違する位置に各レーダー反射体9を設けることで、越波が発生した位置を精度よく特定することができる。
あるいは、防波堤22の海側の側面にレーダー反射体9を固定するとともに、海面側からそれらのレーダー反射体9を監視する構成としてもよい。この場合、防波堤22に衝突する波の高さを検出することが可能となり、すなわち防波堤22を超えるまでには至らない波や波浪を精度よく検知することができる。
【0106】
なお、路面の冠水や河川の氾濫の場合はレーダー反射体9が水面下に水没しうるのに対して、越波の場合にはレーダー反射体9が必ずしも水面下に水没せず、レーダー反射体9が被水した数秒間の間にのみ反射波の反射強度ERが低下する。したがって、レーダー反射体9が被水したものと判定するための条件を『所定時間の間に反射強度ERが閾値ERTH1以下となった回数が所定回数以上であること』とし、この条件が成立したときに、高波が防波堤22を超えたものと判断してもよい。
【符号の説明】
【0107】
1 レーダー部(受信手段)
2 信号処理部
3 記憶部(記憶手段)
4 判定部(特定手段,識別手段)
5 表示部(出力手段,報知手段,警報手段)
6 通信部(出力手段,救助手段)
9 レーダー反射体
10 冠水監視装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレーダー反射体が設置された所定領域に向けて電波を照射するとともに前記複数のレーダー反射体からの反射波を受信する受信手段と、
前記レーダー反射体の水没時における反射波の強度に対応する基準値を前記複数のレーダー反射体毎に記憶する記憶手段と、
前記受信手段で受信した前記反射波の強度と前記記憶手段に記憶された前記基準値との比較により、水没した前記レーダー反射体を冠水反射体として特定する特定手段と、
前記特定手段で特定された前記冠水反射体の設置点が冠水している旨の情報を出力する出力手段と
を備えたことを特徴とする、冠水監視装置。
【請求項2】
前記複数のレーダー反射体が、前記受信手段に対して互いに異なる距離となる位置に設置される
ことを特徴とする、請求項1記載の冠水監視装置。
【請求項3】
前記複数のレーダー反射体が、互いに異なる標高となる位置に設置される
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の冠水監視装置。
【請求項4】
前記受信手段が、前記所定領域を走行する車両からの第二反射波を受信するとともに、
前記特定手段が、前記受信手段で受信した前記第二反射波に基づき、前記車両の位置及び速度を検出する
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の冠水監視装置。
【請求項5】
前記出力手段が、前記受信手段で前記第二反射波を受信し、かつ、前記特定手段で前記冠水反射体が特定されたときに、前記冠水の発生を前記車両に対して報知する報知手段を有する
ことを特徴とする、請求項4記載の冠水監視装置。
【請求項6】
前記出力手段が、前記特定手段で特定された前記冠水反射体の設置点よりも低所で前記車両が停止したときに救助信号を出力する救助手段を有する
ことを特徴とする、請求項4又は5記載の冠水監視装置。
【請求項7】
前記特定手段が、前記冠水反射体の設置点の高さに基づき、前記所定領域内の冠水水位を特定するとともに、
前記出力手段が、前記特定手段で特定された前記冠水水位に応じて、前記所定領域への車両進入を制限するための警報表示を出力する警報手段を有する
ことを特徴とする、請求項4〜6の何れか1項に記載の冠水監視装置。
【請求項8】
前記特定手段が、前記受信手段で受信した前記反射波の強度の経時変化と前記第二反射波の強度の経時変化との比較により、前記受信手段の故障を検知する
ことを特徴とする、請求項4〜7の何れか1項に記載の冠水監視装置。
【請求項9】
前記特定手段が、前記受信手段で受信した前記反射波の強度の経時変化と前記車両の速度とに基づき、前記レーダー反射体の破損を検知する
ことを特徴とする、請求項4〜8の何れか1項に記載の冠水監視装置。
【請求項10】
前記特定手段が、前記受信手段で受信した前記反射波の強度が前記記憶手段に記憶された前記基準値を下回った時間及び回数に基づき、前記冠水反射体を特定する
ことを特徴とする、請求項1〜9の何れか1項に記載の冠水監視装置。
【請求項11】
路面の冠水状態を監視する冠水監視システムであって、
前記路面上の所定領域に設置された複数のレーダー反射体と、
前記所定領域に向けて電波を照射するとともに前記複数のレーダー反射体からの第一反射波及び前記路面を走行する車両からの第二反射波を受信するレーダー装置とを備え、
前記レーダー装置が、
前記第一反射波と前記第二反射波とを識別する識別手段と、
前記レーダー反射体の水没時における反射波の強度に対応する基準値を前記複数のレーダー反射体毎に記憶する記憶手段と、
前記第一反射波の強度と前記第二反射波と前記記憶手段に記憶された前記基準値との比較により、水没した前記レーダー反射体を冠水反射体として特定する特定手段と、
前記特定手段で特定された前記冠水反射体の設置点が冠水している旨の情報を道路管理者に伝達する出力手段と、を有する
ことを特徴とする、冠水監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−32999(P2013−32999A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169833(P2011−169833)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】