説明

冠水路予測システム

【課題】冠水センサーのような検知手段を用いることなく、車両が進行する走行ルート上の冠水の発生を予測できる冠水路予測システムを提供する。
【解決手段】降雨時、車両のワイパーの拭き取り速度と動作時間をワイパー使用情報としてワイパー使用情報検出手段で検出する。検出されたワイパー使用情報に自車の現在位置データを付加して送受信機で送信しかつ他車からの現在位置データ付きワイパー使用情報を受信する。受信した現在位置データ付きワイパー使用情報の現在位置データから先行する他車が同一走行ルートを走行中であるかを判定手段で判定する。判定された他車のワイパー使用情報からワイパー使用情報をワイパー使用情報抽出手段で抽出し、このワイパー使用情報を基に走行ルート及びその周辺エリアの予測降雨量を降雨量算出手段で算出し、この予測降雨量を基に走行ルートに冠水が発生するか否かを冠水予測手段で予測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降雨に伴う車両走行路面の冠水を予測する冠水路の予測システムに関し、さらに詳しくは、少なくとも車両のワイパー使用状況から車両が進行する走行ルート上における冠水の発生を予測できるようにした冠水路予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガード下の道路のように路面が窪地状を呈する道路では、その路面が急激な降雨に伴う雨水の流入によって冠水されてしまい、車両の通行をできなくするほか、車両が冠水中に誤って侵入した場合には、車両の排気系統や電気系統などに雨水が浸入して車両故障を発生させ、走行不能になってしまう。その結果、交通渋滞などの種々の問題を生じさせる要因となっている。
【0003】
従来、このような問題を解決する技術として、特許文献1に示す道路交通情報システムが知られている。
この種の道路交通情報システムは、各車両に冠水センサーと、センターサーバとの間で通信可能なナビゲーションシステムを設置し、冠水センサーが路面の冠水を検知した際に、複数の車両から、ナビゲーションシステムが検出した位置情報と、冠水センサーで検知した冠水情報と、車高情報とをセンターサーバに送信する。そして、センターサーバで上述の各情報を基に冠水場所を推定するとともに冠水深さを算出し、この冠水場所と冠水深さの情報を他の車両に送信し、他の車両に対し該車両が冠水している道路を通らない迂回ルートを設定し、迂回ルートの案内を行うものである。
【0004】
また、従来の技術として、道路の近傍に冠水検知装置を設置し、この冠水検知装置を構成するアクティブ型RFID(Radio-Frequency Identification)から発信される電磁波を受信機で受信し、この電磁波の強度変化から道路上に冠水が生じたことを検知する冠水の検知方法が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−341795号公報
【特許文献2】特開2010−156672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来の道路交通情報システムでは、道路上の冠水を直接検出するための冠水センサーを車両に装備しておく必要があり、コストの面で不利となる。
また、特許文献2に示す冠水検知方法では、舗装道路のコンクリート層中にアクティブ型RFID(Radio-Frequency Identification)を埋設し、このアクティブ型RFIDから発信される電磁波を受信する受信機を道路脇に設置する必要があり、コストの面で不利となる。
【0007】
本発明は、上記のような点に鑑みなされたもので、冠水センサーのような検知手段を用いることなく、車両が進行する走行ルート上における冠水の発生を予測できる冠水路予測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明は、自車と該自車より先行する複数の他車を含む複数の車両が冠水発生場所を含む同一の走行ルート上を同一方向に走行している際の走行路面の冠水を予測する冠水路予測システムであって、前記各車両毎に設けられ、降雨時における当該車両のワイパーの拭き取り速度と動作時間をワイパー使用情報として検出するワイパー使用情報検出手段と、前記各車両毎に設けられ、少なくとも当該車両の走行ルート上における現在位置を自車の現在位置データとして検出するナビゲーション装置と、前記各車両毎に設けられ、自車の前記ワイパー使用情報検出手段で検出された前記ワイパー使用情報に自車の前記ナビゲーション装置で検出された現在位置データを付加して送信しかつ他車から送信されてくる現在位置データ付きのワイパー使用情報を受信する送受信機と、前記各車両毎に設けられ、前記送受信機で受信した他車の現在位置データ付きのワイパー使用情報の現在位置データから前記自車より先行する他車が前記同一走行ルートを走行中であるか否かを判定する判定手段と、前記各車両毎に設けられ、前記判定手段で同一走行ルートを走行中であると判定された他車の現在位置データ付きのワイパー使用情報からワイパー使用情報を抽出するワイパー使用情報抽出手段と、前記各車両毎に設けられ、前記ワイパー使用情報抽出手段で抽出されたワイパー使用情報を基に前記走行ルート及びその周辺エリアにおける予測降雨量を算出する降雨量算出手段と、前記各車両毎に設けられ、前記降雨量算出手段で算出された予測降雨量に基づいて前記走行ルート上の冠水発生場所に冠水が発生するか否かを予測する冠水予測手段と、前記各車両毎に設けられ、前記冠水予測手段の予測結果を前記他車より後方の自車に対し報知する報知手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の冠水路予測システムによれば、実際に走行する車両のワイパーの使用情報から冠水を予測するため、従来のように道路上に冠水センサーを設置したりすることなく、車両が進行する走行ルート上における冠水の発生を予測することができ、コスト面で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明にかかる冠水路予測システムを自車と該自車より先行する複数の他車が走行する走行ルートの冠水の発生予測に適用した場合のシステム全体の構成を示す概略図である。
【図2】本発明にかかる冠水路予測システムを搭載した自車の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明にかかる冠水路予測システムを搭載した他車の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明にかかる冠水路予測システムによる自車での予測処理手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明にかかる冠水路予測システムによる他車での予測処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
以下、本発明にかかる冠水路予測システムの実施の形態について、図1〜図3を参照して詳細に説明する。
図1において、符号12は各種の車両が走行する一般道路や高速道路等に相当する走行ルートである。この走行ルート12上には、ワイパー使用情報を受ける車両、すなわち自車14と、この自車14より、例えば500m〜1000m程度、先を走行する複数のワイパー使用情報送出用の車両、すなわち他車16が同一方向に走行されるようになっている。
また、走行ルート12には、急激な降雨や雨水の流入によって冠水が発生すると予測される道路形状から冠水発生場所18、例えばガード下の道路のように路面が窪地状を呈する道路が存在する。この冠水発生場所18のデータは走行ルート12の地図データに予め書き込まれている。
【0012】
自車14は、図2に示すように、ワイパー使用情報検出手段1402、ナビゲーション装置1404、送受信機1406、判定手段1408、ワイパー使用情報抽出手段1410、降雨量算出手段1412、冠水予測手段1414、報知手段1416、表示部1418、回避ルート検索手段1420などを含んで構成されている。そして、これらは、冠水路予測システムへの電源投入により動作モードに設定される。
【0013】
ワイパー使用情報検出手段1402は、降雨に伴い自車14のフロントガラスの降り注ぐ雨量に応じて駆動されるワイパー14Aの拭き取り速度v1と、この拭き取り速度v1で動作している動作時間t1との積を降雨量予測のためのワイパー使用情報として検出するものである。
上記ワイパー14Aの動作時間t1は、ワイパー14Aが中速から高速の拭き取り速度で動作開始した時点からの時間をタイマー1422で計数することで得られる。
【0014】
具体的には、ワイパー14Aを最小の拭き取り速度から最大の拭き取り速度に段階的に切り換えるワイパー切換手段14Bから出力される各切換信号を、自車14のフロンドガラスに降り注ぐ降雨量に応じて予め設定された降雨データとして数値化し、これら数値化した降雨データと各切換信号との関係を表すデータテーブルを作成しておき、このデータテーブルをワイパー切換手段14Bからの切換信号をポインタとして検索することにより、ワイパー14Aの拭き取り速度v1を求める。
【0015】
この場合、小雨のように降雨量が少なく、ワイパー14Aが間歇的なまたは低速な拭き取り速度で動作されている時は、走行ルート12の冠水発生場所18が冠水されることがないため、かかる拭き取り速度の切換信号に対する降雨データの数値化はしない。また、ワイパー14Aが中速から高速の拭き取り速度で動作される時に、走行ルート12の冠水発生場所18に冠水が生じることが多いため、中速から高速の拭き取り速度で動作される時の各切換信号を降雨データとして数値化したデータテーブルを用意しておけばよい。
したがって、本実施の形態におけるワイパー使用情報検出手段1402では、ワイパー14Aが間歇的なまたは低速な拭き取り速度に設定されて動作されている場合、その拭き取り速度の検出を無効にし、ワイパー14Aが中速から高速の拭き取り速度に設定されている時は有効として、データテーブルをワイパー切換手段14Bからの切換信号をポインタとして検索し、ワイパー14Aの拭き取り速度v1を求めるように構成されている。また、ワイパー使用情報検出手段1402は、ワイパー14Aが中速から高速の拭き取り速度で動作しているか否かを判定する判定機能を有している。
なお、ワイパー14Aが中速から高速の拭き取り速度で動作される時の1時間当たりの降雨量は、例えば10mm/時以上である。
【0016】
ナビゲーション装置1404は、少なくとも自車14の走行ルート12上における現在位置を自車14の現在位置データとして検出するものである。
このナビゲーション装置1404は、従来から公知の中央演算装置(CPU)、位置測定のためのGPS受信機、地図データベース、方位センサー、距離センサー、マンマシンインターフェースとしての入力部(いずれも図示せず)及び表示部1418を含んで構成されている。
また、ナビゲーション装置1404は、走行ルート12の天気情報を受信する受信機1404Aを有している。これにより、後述の降雨量算出手段1412は、受信機1404Aで受信した天気情報の降水データを予測降雨量の補正係数として取り込み、この補正係数と他車16からのワイパー使用情報とに基づいて走行ルート12及びその周辺エリアにおける予測降雨量を、更に正確に算出できるようになっている。
【0017】
送受信機1406は、自車14のワイパー使用情報検出手段1402で検出されたワイパー使用情報に、ナビゲーション装置1404で検出された自車14の現在位置データを付加して送信し、かつ他車16から送信されてくる現在位置データ付きのワイパー使用情報を受信するものである。
判定手段1408は、送受信機1406で受信した他車16の現在位置データ付きワイパー使用情報の現在位置データから自車14より先行する他車16が同一走行ルート12を走行中であるか否かを判定するものである。
【0018】
ワイパー使用情報抽出手段1410は、判定手段1408で同一走行ルート12を走行中であると判定された他車16の現在位置データ付きワイパー使用情報からワイパー使用情報を抽出するものである。
降雨量算出手段1412は、ワイパー使用情報抽出手段1410で抽出されたワイパー使用情報と上述した補正係数を基に走行ルート12及びその周辺エリアにおける予測降雨量を算出するものである。
【0019】
冠水予測手段1414は、降雨量算出手段1412で算出された予測降雨量に基づいて走行ルート12上に存在する冠水発生場所18に冠水が発生するか否かを予測するものである。
報知手段1416は、冠水発生場所18に冠水が発生するか否かの予測結果を他車16より後方に位置する自車14に対し報知するものである。
回避ルート検索手段1420は、冠水予測手段1414が冠水発生場所18に冠水が発生すると予測した際にナビゲーション装置1404からの地図データに基づいて、ガード下の道路のような窪地を回避できる別の道路、すなわち回避ルートを道路地図から検索するものである。
【0020】
なお、判定手段1408、ワイパー使用情報抽出手段1410、降雨量算出手段1412、冠水予測手段1414、回避ルート検索手段1420はマイクロコンピュータにより実現される。すなわち、マイクロコンピュータは、CPUと、バスラインを介して接続されたROM、RAM、インタフェースなどを含んで構成される。ROMはCPUが実行する処理または制御プログラム、及び降雨データと各切換信号との関係を表すデータテーブルなどを格納し、RAMはワーキングエリアを提供する。CPUが前記冠水予測処理または制御プログラムを実行することにより、判定手段1408、ワイパー使用情報抽出手段1410、降雨量算出手段1412、冠水予測手段1414、回避ルート検索手段1420が実現される。
【0021】
他車16は、図3に示すように、ワイパー使用情報検出手段1602、ナビゲーション装置1604、送受信機1606、判定手段1608、ワイパー使用情報抽出手段1610、降雨量算出手段1612、冠水予測手段1614、報知手段1616、表示部1618、回避ルート検索手段1620などを含んで構成されている。そして、これらは、冠水路予測システムへの電源投入により動作モードに設定される。
【0022】
ワイパー使用情報検出手段1602は、自車側のワイパー使用情報検出手段1402と同様に、降雨に伴い他車16のフロントガラスの降り注ぐ雨量に応じて駆動されるワイパー16Aの拭き取り速度v2と、この拭き取り速度v2で動作しているワイパー16Aの動作時間t2との積を降雨量予測のためのワイパー使用情報として検出するものである。
上記ワイパー16Aの動作時間t2は、ワイパー16Aが中速から高速の拭き取り速度で動作開始した時点からの時間をタイマー1622で計数することで得られる。
【0023】
具体的には、ワイパー14Aの場合と同様に、ワイパー16Aを最小の拭き取り速度から最大の拭き取り速度に段階的に切り換えるワイパー切換手段16Bからの各切換信号を、自車16のフロンドガラスに降り注ぐ降雨量に応じて予め設定された降雨データとして数値化し、これら数値化した降雨データと各切換信号との関係を表すデータテーブルを作成しておき、このデータテーブルをワイパー切換手段16Bからの切換信号をポインタとして検索することにより、ワイパー16Aの拭き取り速度v2を求める。
【0024】
ナビゲーション装置1604は、少なくとも他車16の走行ルート12上における現在位置を他車16の現在位置データとして検出するものである。
このナビゲーション装置1604は、従来から公知の中央演算装置(CPU)、位置測定のためのGPS受信機、地図データベース、方位センサー、距離センサー、マンマシンインターフェースとしての入力部(いずれも図示せず)及び表示部1618を含んで構成されている。
また、ナビゲーション装置1604は、走行ルート12の天気情報を受信する受信機1604Aを有している。これにより、後述の降雨量算出手段1612は、受信機1604Aで受信した天気情報の降水データを予測降雨量の補正係数として取り込み、この補正係数と他車16からのワイパー使用情報とに基づいて走行ルート12及びその周辺エリアにおける予測降雨量を、更に正確に算出できるようになっている。
【0025】
送受信機1606は、他車16のワイパー使用情報検出手段1602で検出されたワイパー使用情報に、ナビゲーション装置1604で検出された他車16の現在位置データを付加して送信し、さらに当該他車16より先行して走行する他車から送信されてくる現在位置データ付きのワイパー使用情報を受信するものである。
判定手段1608は、送受信機1606で受信した他車16より先行して走行する他の車両の現在位置データ付きワイパー使用情報の現在位置データから他車16より先行して走行する他の車両が同一走行ルート12を走行中であるか否かを判定するものである。
【0026】
ワイパー使用情報抽出手段1610は、判定手段1608で同一走行ルート12を走行中であると判定された他の車両の現在位置データ付きワイパー使用情報からワイパー使用情報を抽出するものである。
降雨量算出手段1612は、ワイパー使用情報抽出手段1610で抽出されたワイパー使用情報と上述した補正係数を基に走行ルート12及びその周辺エリアにおける予測降雨量を算出するものである。
【0027】
冠水予測手段1614は、降雨量算出手段1612で算出された予測降雨量に基づいて走行ルート12上に存在する冠水発生場所18に冠水が発生するか否かを予測するものである。
報知手段1616は、冠水発生場所18に冠水が発生するか否かの予測結果を上記当該他車16より後方に位置する車両に対し報知するものである。
回避ルート検索手段1620は、冠水予測手段1614が冠水発生場所18に冠水が発生すると予測した際にナビゲーション装置1604からの地図データに基づいて、ガード下の道路のような窪地を回避できる別の道路、すなわち回避ルートを道路地図から検索するものである。
【0028】
なお、判定手段1608、ワイパー使用情報抽出手段1610、降雨量算出手段1612、冠水予測手段1614、回避ルート検索手段1620はマイクロコンピュータにより実現される。すなわち、マイクロコンピュータは、CPUと、バスラインを介して接続されたROM、RAM、インタフェースなどを含んで構成される。ROMはCPUが実行する処理または制御プログラム、及び降雨データと各切換信号との関係を表すデータテーブルなどを格納し、RAMはワーキングエリアを提供する。CPUが前記冠水予測処理または制御プログラムを実行することにより、判定手段1608、ワイパー使用情報抽出手段1610、降雨量算出手段1612、冠水予測手段1614、回避ルート検索手段1620が実現される。
【0029】
次に、本実施の形態に示す冠水路予測システムの動作について、図4及び図5を参照して説明する。
図1に示すように、自車14及び他車16を含む複数の車両が走行ルート12に沿い走行している状態では、自車14及び他車16を含む各車両の冠水路予測システムは動作モードに設定されている。また、自車14及び他車16を含む複数の車両は降雨中の走行ルート12を走行されているものとする。
【0030】
まず、自車14側での予測処理について図4を参照して説明する。
自車14及び他車16を含む複数の車両が降雨中の走行ルート12を走行している状態において、自車14のワイパー使用情報検出手段1402が、自車14のワイパー14Aが中速から高速の拭き取り速度で動作しているか否かを、ワイパー切換手段14Bからの切換信号を基に判定する(ステップS11)。
ここで、自車14及び他車16を含む複数の車両が走行する走行ルートが晴れ、または冠水発生場所18に冠水が生じない程度の降雨の場合は、ワイパー14Aが中速から高速の拭き取り速度で動作していないと判定され、冠水予測処理が不要であるとして、その予測処理は終了する。また、ワイパー14Aが中速から高速の拭き取り速度で動作していると判定された場合は、ステップS12に移行する。
【0031】
ステップS12では、ワイパー使用情報検出手段1402において、ワイパー切換手段14Bからの切換信号をポインタとしてデータテーブルを検索することにより、ワイパー14Aが中速から高速で動作している時の拭き取り速度v1を検出し、この拭き取り速度v1を送受信機1406に送出する。さらに、ステップS13において、ワイパー14Aが中速から高速の拭き取り速度で動作開始した時点からの動作時間t1をタイマー1422で計数し、この動作時間t1を送受信機1406に送出する。そして、送受信機1406では、自車14のワイパー使用情報検出手段1402で検出された拭き取り速度v1と動作時間t1との積を降雨量予測のためのワイパー使用情報とし、このワイパー使用情報に、ナビゲーション装置1404で検出された自車14の現在位置データを付加して自車14以外の他の車両に向け発信する(ステップS14)。
【0032】
一方、自車14の送受信機1406では、降雨状態にある同一走行ルート12を自車14より先行または後続して走行する他の複数の車両から送信されてくる現在位置データ付きのワイパー使用情報を受信する(ステップS15)。
次のステップS16では、判定手段1408において、送受信機1406で受信した他の複数の車両からの現在位置データ付きワイパー使用情報の現在位置データから自車14より先行して同一走行ルート12を走行する他の車両からのワイパー使用情報であるか否かを、送受信機1406が現在位置データ付きのワイパー使用情報を受信する毎に繰り返し判定する。
【0033】
次のステップS17では、ワイパー使用情報抽出手段1410において、判定手段1408で同一走行ルート12を先行して走行中であると判定される毎に他車16の現在位置データ付きワイパー使用情報からワイパー使用情報を抽出する。
ここで、同一走行ルート12を先行して走行する複数の他車16のワイパー使用情報を抽出することにより、自車14が走行する走行ルート12上の降雨量の予測精度を上げることが可能になる。
【0034】
次のステップS18では、降雨量算出手段1412において、ワイパー使用情報抽出手段1410で抽出された複数のワイパー使用情報、すなわち中速から高速で駆動されるワイパーの拭き取り速度と、この拭き取り速度で動作しているワイパーの動作時間と、ナビゲーション装置1404の受信機1404Aで受信した走行ルート12の降雨データに対応した補正係数とに基づいて走行ルート12及びその周辺エリアにおける予測降雨量を算出する。
【0035】
次のステップS19では、冠水予測手段1414において、降雨量算出手段1412で算出された予測降雨量が走行ルート12上に存在する冠水発生場所18を冠水させることになるか否かを予測する。
ここで、降雨量算出手段1412で算出された予測降雨量が冠水発生場所18を冠水させるものでないと予測された場合はステップS15に移行し、ステップS15以降の処理を実行する。また、降雨量算出手段1412で算出された予測降雨量が冠水発生場所18を冠水させるものであると予測された場合は、ステップS20に移行し、報知手段1416において、冠水発生場所18に冠水が発生するか否かの予測結果を自車14の表示部1418に表示する。
【0036】
報知手段1416による予測結果の表示部1418への表示処理後は、次のステップS21に移行する。このステップS21では、回避ルート検索手段1420において、ナビゲーション装置1404からの地図データを基に、冠水すると予測された冠水発生場所18を回避できる別の道路、すなわち回避ルートを検索し、この回避ルートを表示部1418に表示された地図上に表示し、ルートの変更を通知する。
【0037】
次に、他車16側での予測処理について図5を参照して説明する。
他車16を含む複数の車両が降雨中の走行ルート12を走行している状態において、他車16のワイパー使用情報検出手段1602が、他車16のワイパー16Aが中速から高速の拭き取り速度で動作しているか否かを、ワイパー切換手段16Bからの切換信号を基に判定する(ステップS31)。
ここで、他車16を含む複数の車両が走行する走行ルートが晴れ、または冠水発生場所18に冠水が生じない程度の降雨の場合は、ワイパー16Aが中速から高速の拭き取り速度で動作していないと判定され、冠水予測処理が不要であるとして、その予測処理は終了する。また、ワイパー16Aが中速から高速の拭き取り速度で動作していると判定された場合は、ステップS32に移行する。
【0038】
ステップS32では、ワイパー使用情報検出手段1602において、ワイパー切換手段16Bからの切換信号をポインタとしてデータテーブルを検索することにより、ワイパー16Aが中速から高速で動作している時の拭き取り速度v2を検出し、この拭き取り速度v2を送受信機1606に送出する。さらに、ステップS33において、ワイパー16Aが中速から高速の拭き取り速度で動作開始した時点からの動作時間t2をタイマー1622で計数し、この動作時間t2を送受信機1606に送出する。そして、送受信機1606では、自車16のワイパー使用情報検出手段1602で検出された拭き取り速度v2と動作時間t2との積を降雨量予測のためのワイパー使用情報とし、このワイパー使用情報に、ナビゲーション装置1604で検出された他車16自身の現在位置データを付加して他車16以外の他の車両に向け発信する(ステップS34)。
【0039】
一方、他車16の送受信機1606では、降雨状態にある同一走行ルート12を他車16より先行及び後続して走行する他の複数の車両から送信されてくる現在位置データ付きのワイパー使用情報を受信する(ステップS35)。
次のステップS36では、判定手段1608において、送受信機1606で受信した他の複数の車両からの現在位置データ付きワイパー使用情報の現在位置データから他車16より先行して同一走行ルート12を走行する他の車両からのワイパー使用情報であるか否かを、送受信機1606が現在位置データ付きのワイパー使用情報を受信する毎に繰り返し判定する。
【0040】
次のステップS37では、ワイパー使用情報抽出手段1610において、判定手段1608で同一走行ルート12を先行して走行中であると判定される毎に他車16より先行して走行する他の車両の現在位置データ付きワイパー使用情報からワイパー使用情報を抽出する。
ここで、同一走行ルート12を先行して走行する複数の他の車両のワイパー使用情報を抽出することにより、他車16より先行する他の車両が走行する走行ルート12上の降雨量の予測精度を上げることが可能になる。
【0041】
次のステップS38では、降雨量算出手段1612において、ワイパー使用情報抽出手段1610で抽出された複数のワイパー使用情報、すなわち中速から高速で駆動されるワイパーの拭き取り速度と、この拭き取り速度で動作しているワイパーの動作時間と、ナビゲーション装置1604の受信機1604Aで受信した走行ルート12の降雨データに対応した補正係数とに基づいて走行ルート12及びその周辺エリアにおける予測降雨量を算出する。
【0042】
次のステップS39では、冠水予測手段1614において、降雨量算出手段1612で算出された予測降雨量が走行ルート12上に存在する冠水発生場所18を冠水させることになるか否かを予測する。
ここで、降雨量算出手段1612で算出された予測降雨量が冠水発生場所18を冠水させるものでないと予測された場合はステップS35に移行し、ステップS35以降の処理を実行する。また、降雨量算出手段1612で算出された予測降雨量が冠水発生場所18を冠水させるものであると予測された場合は、ステップS40に移行し、報知手段1616において、冠水発生場所18に冠水が発生するか否かの予測結果を他車16の表示部1618に表示する。
【0043】
報知手段1616による予測結果の表示部1618への表示処理後は、次のステップS41に移行する。このステップS41では、回避ルート検索手段1620において、ナビゲーション装置1604からの地図データを基に、冠水すると予測された冠水発生場所18を回避できる別の道路、すなわち回避ルートを検索し、この回避ルートを表示部1618に表示された地図上に表示し、ルートの変更を通知する。
【0044】
なお、上述した走行ルート12上における冠水路の予測処理は、上記自車14及び他車16においてのみ実行されるものではなく、同一走行ルート12上を走行する全ての車両で実行されるものである。
【0045】
このような本実施の形態に示す冠水路予測システムは、自車と自車より先行する複数の他車を含む複数の車両が同一の走行ルート12上を同一方向に走行している際の走行路面の冠水を予測するシステムにおいて、降雨時における車両のワイパーの拭き取り速度と動作時間をワイパー使用情報としてワイパー使用情報検出手段1402で検出し、検出されたワイパー使用情報に自車の現在位置データを付加して送受信機1406で送信し、かつ他車からの現在位置データ付きワイパー使用情報を受信する。そして、送受信機で受信した他車の現在位置データ付きワイパー使用情報の現在位置データから自車より先行する他車が同一走行ルートを走行中であるか否かを判定手段1408で判定する。さらに、判定手段1408で判定された他車の現在位置データ付きワイパー使用情報からワイパー使用情報をワイパー使用情報抽出手段1410で抽出し、抽出されたワイパー使用情報を基に走行ルート及びその周辺エリアにおける予測降雨量を降雨量算出手段1412で算出する。さらに、算出された予測降雨量に基づいて走行ルート上の冠水発生場所に冠水が発生するか否かを冠水予測手段1414で予測し、この冠水予測結果を他車より後方の自車に対し報知する構成にした。
したがって、本実施の形態によれば、従来のような冠水センサーが不要になり、冠水センサーを用いることなく、車両が進行する走行ルート上の冠水の発生を予測することができ、コスト面で有利となる。
【0046】
また、本実施の形態によれば、ワイパーが中速から高速の拭き取り速度に設定された時の拭き取り速度を利用して予測降雨量のパラメータとしているため、降雨量の予測を、ワイパーが備える既存の切換手段を利用して行うことができ、コスト面で有利となる。
また、本実施の形態によれば、先行する複数の他車から受信した複数のワイパー使用情報を基に記走行ルート及びその周辺エリアにおける降雨量を予測するため、降雨量の予測精度を向上できる。
【0047】
また、本実施の形態によれば、他車から受信したワイパー使用情報と走行ルート上の天気情報の降雨データとに基づいて走行ルート及びその周辺エリアにおける予測降雨量を算出測するようにしているため、予測降雨量の精度を向上できる。
さらに、本実施の形態によれば、走行ルートの冠水発生場所に冠水が発生すると予測された際に、地図データに基づいて回避ルートを検索し、この回避ルートを表示部に表示するとともに、回避ルートの変更を報知できるようにしたので、冠水した道路に車両が不用意に進入さされるのを防止でき、車両を含めたドライバーの安全性を確保することができる。
【0048】
なお、本発明の冠水路予測システムは、上記実施の形態に示す構成のものに限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲において、種々変更し変形することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
12…走行ルート、14…自車、14A…ワイパー、14B…ワイパー切換手段、16…他車、16A…ワイパー、16B…ワイパー切換手段、1402…ワイパー使用情報検出手段、1404…ナビゲーション装置、1404A…受信機、1406…送受信機、1408…判定手段、1410…ワイパー使用情報抽出手段、1412…降雨量算出手段、1414…冠水予測手段、1416…報知手段、1418…表示部、1420…回避ルート検索手段、1602…ワイパー使用情報検出手段、1604…ナビゲーション装置、1604A…受信機、1606…送受信機、1608…判定手段、1610…ワイパー使用情報抽出手段、1612…降雨量算出手段、1614…冠水予測手段、1616…報知手段、1618…表示部、1620…回避ルート検索手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車と該自車より先行する複数の他車を含む複数の車両が冠水発生場所を含む同一の走行ルート上を同一方向に走行している際の走行路面の冠水を予測する冠水路予測システムであって、
前記各車両毎に設けられ、降雨時における当該車両のワイパーの拭き取り速度と動作時間をワイパー使用情報として検出するワイパー使用情報検出手段と、
前記各車両毎に設けられ、少なくとも当該車両の走行ルート上における現在位置を自車の現在位置データとして検出するナビゲーション装置と、
前記各車両毎に設けられ、自車の前記ワイパー使用情報検出手段で検出された前記ワイパー使用情報に自車の前記ナビゲーション装置で検出された現在位置データを付加して送信しかつ他車から送信されてくる現在位置データ付きのワイパー使用情報を受信する送受信機と、
前記各車両毎に設けられ、前記送受信機で受信した他車の現在位置データ付きのワイパー使用情報の現在位置データから前記自車より先行する他車が前記同一走行ルートを走行中であるか否かを判定する判定手段と、
前記各車両毎に設けられ、前記判定手段で同一走行ルートを走行中であると判定された他車の現在位置データ付きのワイパー使用情報からワイパー使用情報を抽出するワイパー使用情報抽出手段と、
前記各車両毎に設けられ、前記ワイパー使用情報抽出手段で抽出されたワイパー使用情報を基に前記走行ルート及びその周辺エリアにおける予測降雨量を算出する降雨量算出手段と、
前記各車両毎に設けられ、前記降雨量算出手段で算出された予測降雨量に基づいて前記走行ルート上の冠水発生場所に冠水が発生するか否かを予測する冠水予測手段と、
前記各車両毎に設けられ、前記冠水予測手段の予測結果を前記他車より後方の自車に対し報知する報知手段と、
を備えることを特徴とする冠水路予測システム。
【請求項2】
前記ワイパー使用情報検出手段で検出されるワイパー使用情報のうち、該ワイパー使用情報のワイパー拭き取り速度はワイパーが中速から高速で動作された時の速度であることを特徴とする請求項1記載の冠水路予測システム。
【請求項3】
前記降雨量算出手段は、前記複数の他車から受信した複数のワイパー使用情報を基に前記走行ルート及びその周辺エリアにおける降雨量を予測することを特徴とする請求項1または2記載の冠水路予測システム。
【請求項4】
前記ナビゲーション装置は前記走行ルートの天気情報を受信する受信機を有し、前記降雨量算出手段は、前記受信機で受信した天気情報の降雨データと前記他車からのワイパー使用情報とに基づいて前記走行ルート及びその周辺エリアにおける降雨量を予測することを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の冠水路予測システム。
【請求項5】
前記ナビゲーション装置からの地図データに基づいて前記走行ルートを表示する表示部と、前記冠水予測手段が前記冠水発生場所に冠水が発生すると予測した際に前記ナビゲーション装置からの地図データに基づいて回避ルートを検索する回避ルート検索手段とを更に備え、前記表示部及び前記回避ルート検索手段は前記各車両毎に設けられ、前記回避ルート検索手段で検索された回避ルートは前記表示部に表示され、かつ前記回避ルートの変更が前記報知手段で報知されることを特徴とする請求項1乃至4に何れか1項記載の冠水路予測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−216103(P2012−216103A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81372(P2011−81372)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】