説明

冷凍おしぼり

【課題】使い捨て可能で、使用時に爽快な冷涼感を味わうことのできる不織布製の冷凍おしぼりを提供する。
【解決手段】上記課題を解決すべく、本発明は、1.0〜2.0デニールの繊維で構成された50〜100g/m2の目付けを有する不織布と、前記不織布に含侵された水分と、を含むこと、を特徴とする冷凍おしぼりを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用時に爽快な冷涼感を味わうことのできる冷凍おしぼりに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カフェ、喫茶店及びレストランなどの飲食店では、布製のおしぼりや不織布製のおしぼりが使用されている。
【0003】
これら布製のおしぼり及び不織布製のおしぼりは、夏の暑い季節には、冷蔵庫などによって冷却されて冷たい状態で顧客に配られ、その他の季節には、常温の状態か、又は、保温庫などで加温されて温かい状態で顧客に配られることが多い。
【0004】
しかしながら、夏場の暑い季節に、これら布製のおしぼり及び不織布製のおしぼりが冷たい状態で顧客に配られても、そのままテーブルの上に置かれると温度が上がってしまい、使用時の冷涼感が低下してしまうという問題がある。
【0005】
特に昨今の夏場の気温の上昇は激しく、屋外から飲食店に入った直後の顧客は、噴き出すように汗をかいており、手や顔だけではなく、更に首筋を拭くことも多く、多くの箇所を拭いてもなお冷涼感を持つおしぼりが望まれていた。
【0006】
ここで、例えば特許文献1(実用新案登録第3169351号公報)においては、布材の形状に制約が無く、簡便、且つ、瞬時に冷凍おしぼりを得ることが可能であり、携帯性に優れたおしぼり瞬間冷凍具セットが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3169351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載のおしぼり瞬間冷凍具セットは、布製のおしぼりを対象とするものであり、特許文献1において使い捨て可能な不織布製のおしぼりを用いる場合については特に触れられていない。
【0009】
本発明は、以上の従来の問題に鑑みて創作されたものであり、使い捨て可能で、使用時に爽快な冷涼感を味わうことのできる不織布製の冷凍おしぼりに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、
1.0〜2.0デニールの繊維で構成された50〜100g/m2の目付けを有する不織布と、前記不織布に含侵された水分と、を含むこと、
を特徴とする冷凍おしぼりを提供する。
【0011】
本発明者は、上記の問題を解決すべく実験をし始めたところ、不織布製のおしぼりに水を含浸させて折り畳んで冷凍した場合、不織布と不織布が互いに接触する面で凍り付いてしまうことから、使用時に折り畳み部分を開こうとすると不織布が破れてしまい、おしぼりとして心地よく使用できないという問題に直面した。
【0012】
これに対し、本発明者は、主として不織布を構成する繊維の太さ及び不織布の目付けに着目するとともに、不織布を構成する繊維間に保持され得る水分の量に着目し、これらを最適化すれば、折り畳まれて凍り付いた不織布をより確実に開くことができるのではないかと考え、鋭意実験を繰返し、本発明を完成するに至った。
【0013】
具体的には、本発明者は、1.0〜2.0デニールの繊維で構成された50〜100g/m2の目付けを有する不織布に水を含侵させて凍らせば、上記のような問題を有しない冷凍おしぼりを実現し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、かかる構成を有する本発明の冷凍おしぼりによれば、使い捨て可能で、使用時に破れることなく開くことができ、爽快な冷涼感を味わうことができる。
【0014】
上記本発明の冷凍おしぼりにおいては、前記不織布を構成する前記繊維が、レーヨン繊維とポリエステル繊維の混合物であること、が好ましい。
【0015】
また、上記本発明の冷凍おしぼりにおいては、前記不織布がクロスレイヤー方式で形成されたものであること、が好ましい。
【0016】
これらのような構成によれば、使い捨て可能で、使用時に破れることなく開くことができ、爽快な冷涼感を味わうことができる冷凍おしぼりを、より確実に得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の冷凍おしぼりは、使い捨て可能で、使用時に破れることなく開くことができ、爽快な冷涼感を味わうことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の冷凍おしぼりは、1.0〜2.0デニールの繊維で構成された50〜100g/m2の目付けを有する不織布と、前記不織布に含侵された水分と、を含んで構成されている。以下に、この本発明の冷凍おしぼりの一実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0019】
なお、デニールは以下のように測定すればよい。例えば、20℃、相対湿度65%雰囲気下で繊維の試料を無緊張かつ無荷重で直線状に静置し24時間放置し放縮させ、その後、試料を900mmの長さで切断したものを10本合わせて秤量し、9000mあたりの重量に換算し、その値をデニールとすることができる。
【0020】
また、不織布の目付けは以下のように測定すればよい。まず、不織布を所定の大きさに裁断し、これを測定片とする。電子天秤(メーカー問わず)に、この測定片を載置する。この状態での重量を測定し、その重量を面積で割ることにより、目付(g/m2)とすることができる。
【0021】
上記不織布を構成する繊維は、化学繊維及び天然繊維のいずれであってもよく、これらの混合物であってもよい。また、複数種の化学繊維を用いても、複数種の天然繊維を用いてもよい。
【0022】
化学繊維としては、例えば、レーヨン及びキュプラなどの再生セルロース繊維などの再生繊維;例えば、アセテート及びトリアセテートなどのセルロース系繊維などの半合成繊維;ならびに、例えば、ナイロン及びアラミドなどのポリアミド系繊維、ポリエステルなどのポリエステル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリエチレン系繊維、ならびにポリプロピレン系繊維などの合成繊維;が挙げられる。
【0023】
また、天然繊維としては、例えば、綿、リネン及び麻などの植物繊維、ならびに、例えば、絹、羊毛、カシミア、モヘア、らくだ(キャメル)及びアルパカなどの動物繊維が挙げられる。
【0024】
なかでも、風合いがよく、水分を保持し易く、かつ、冷凍及び解凍しても破損しにくいという観点から、化学繊維を用いるのが好ましい。また、吸湿性、吸水性及び親水性に優れるという観点から、レーヨンなどの再生セルロース繊維などの再生繊維を用いるのが好ましく、また、疎水性で、濡れても強度及び耐摩耗性に優れるという観点から、ポリエステルなどのポリエステル系繊維などの合成繊維を用いるのが好ましい。さらには、これらの作用効果をいずれも得られるという観点から、レーヨンなどの再生セルロース繊維などの再生繊維とポリエステルなどのポリエステル系繊維などの合成繊維とを混合して用いることも好ましい。
【0025】
次に、本発明の冷凍おしぼりを構成する不織布は、1.0〜2.0デニールの繊維で構成され、かつ、50〜100g/m2の目付けを有する。
【0026】
繊度が1.0デニール未満の繊維の場合、繊維が細すぎ、繊維間の隙間を十分には確保できず、十分な量の水分を不織布に含浸させることができないため、爽快な冷涼感を味わうことができる冷凍おしぼりが得られにくい。
【0027】
また、繊度が2.0デニールを超える繊維の場合、繊維が太すぎ、繊維間の隙間が大きくなる傾向にあり、不織布がごわつき、また、不織布に含浸される水分の量が多すぎて、冷凍おしぼりがガチガチに凍ってしまい、使用感に劣る。
【0028】
さらには、上記不織布は、1.2〜1.7デニールの繊維で構成されているのが好ましい。この範囲であれば、より確実に、十分な量の水分を不織布に含浸させることができ、爽快な冷涼感を味わうことができる冷凍おしぼりが得られ、また、不織布がごわつくことなく、また、不織布に含浸される水分の量が適度で、使用感に優れた冷凍おしぼりが得られる。
【0029】
また、レーヨンなどの再生セルロース繊維などの再生繊維と、ポリエステルなどのポリエステル系繊維などの合成繊維と、を混合して用いる場合、再生繊維の繊度は合成繊維の繊度よりも大きいのが好ましい。これにより、上記した再生繊維の作用効果と合成繊維の作用効果をバランスよく発揮させて、本発明の冷凍おしぼりの作用効果をより確実に得ることができる。
【0030】
上記不織布の目付けが50g/m2未満の場合、繊維どうしの緻密な重なりの程度が低くなってしまい、この繊維で構成された不織布の地合い(形態保持性)が低下するので、好ましくない。
【0031】
また、上記不織布の目付けが100g/m2を超える場合、繊維どうしが三次元的に十分に交絡せず、全体としての一体性に劣る傾向にあるため、好ましくない。
【0032】
さらには、上記不織布の目付けは70〜90g/m2(特に80g/m2)であるのが好ましい。この範囲であれば、繊維どうしの緻密な重なりの程度が高く、不織布の地合い(形態保持性)も高い。また、繊維どうしが三次元的に十分に交絡しており、全体としての一体性に優れる。
【0033】
本発明の冷凍おしぼりは、折り畳まれた状態の上記不織布に水分が含浸されて、構成されている。より具体的には、水分が凍った状態で上記不織布の少なくとも内部(繊維間の隙間)に存在している。この凍った水分は、上記不織布の表面にも位置していてもよい。
【0034】
このように凍った水分を含む上記不織布が、本発明の冷凍おしぼりを構成するが、さらに、ポリエチレンやポリ塩化ビニルなどの従来公知の包装フィルムによって包装されていてもよい。
【0035】
ここで、本発明の冷凍おしぼりの代表的な製造方法について説明する。
【0036】
上記不織布は、従来公知の方法によって製造することが可能であるが、例えば再生繊維と合成繊維とを用いた不織布を製造する場合は、再生繊維/合成繊維=60/40〜30/70(重量%)の割合で混繊し、例えばカード機により解繊することにより不織ウエブを形成する。
【0037】
両繊維を混繊する際に、合成繊維と再生繊維との上記割合の範囲を外れると、疎水性で、濡れても強度及び耐摩耗性に優れるという合成繊維の作用効果と、吸湿性、吸水性及び親水性という再生繊維の作用効果と、のバランスが崩れ、本発明の冷凍おしぼりの作用効果が損なわれる傾向にある。
【0038】
カード機により形成される不織ウエブとしては、繊維の配列が機械方向に一様なパラレルカード機を使用してパラレルカードウエブ、クロスレイヤー又はパラレルカード機とクロスレイヤーとの両方を使用して繊維の配列を機械方向に対し横直交する方向に積層したクロスレイドウエブ、このクロスレイドウエブをドラフターを用い繊維縦/横の配列を変更したウエブ、セミランダムカード機を用いたセミランダムウエブ、及びランダムカード機による繊維の配列が一様性のないランダムカードウエブなどが挙げられる。なかでも、クロスレイドウエブが好ましい。
【0039】
また、これらのカード機を複数組み合わせたり、同種のカード機を複数台用いたりすることにより、不織布の機械的性能の向上、操業性、生産性の向上を行うことができる。
【0040】
次いで、得られた不織ウエブに高圧液体流処理(高圧液体流を噴出して不織ウエブに衝突させ、不織ウエブの構成繊維どうしを交絡させる処理)を施すことにより、構成繊維相互間に三次元交絡を形成して形態を保持させ、その後乾燥処理を施し、不織布を得る。不織ウエブに高圧液体流による三次元交絡を施すに際しては、従来公知の技術を用いればよい。
【0041】
高圧液体流処理を施した後乾燥処理を施すが、この際、まず処理後の不織ウエブから過剰水分を除去する。この過剰水分の除去には、従来公知の方法を採用することができ、例えばマングルロール等の絞り装置を用いて過剰水分をある程度機械的に除去する。そして、引き続き連続熱風乾燥機等の乾燥装置を用いて残余の水分を除去し、三次元交絡により形態保持された不織布を得る。
【0042】
次に、上記のようにして得た不織布に、水分を含浸させる。この水分は水道水、純水、蒸留水、精製水のいずれであってもよい。また、抗菌剤やメントールなどの清涼剤などを含んでいてもよい。
【0043】
このように水分を含浸させた不織布を、常法によって包装フィルムに包装し、その後、通常の冷凍庫などに保管すれば、本発明の冷凍おしぼりを得ることができる。
【実施例】
【0044】
≪実施例1≫
1.5デニール及び38mmのサイズを有するレーヨン繊維と、1.4デニール及び38mmのサイズを有するポリエステル繊維と、を用い、クロスレイヤー方式で、メッシュタイプの不織布を製造した。このとき、不織布の目付けは80g/m2とし、寸法は、185mm×250mmとした。ついで、上記不織布を折り畳んでこれに生成水を含浸させ、その後、包装フィルムで包装し、得られた包装体を冷凍庫に数時間保管し、本発明の冷凍おしぼりを得た。
【0045】
得られた本発明の冷凍おしぼりの使用感を調べるため、折り畳まれた不織布を、包装フィルムを開封して取り出し、折り畳んだ部分を開いたところ、不織布どうしが接触している部分が綺麗に剥がれ、使用時に破れたりすることなく開くことができた(剥がれ性)。また、十分な量の凍った水分が含まれており、爽快な冷涼感を味わうことができた(冷涼感)。
【0046】
なお、剥がれ性の評価においては、不織布どうしが接触している部分が綺麗に剥がれ、使用時に破れたりして破損することなく開くことができ場合を◎、少し剥がしにくかったが綺麗に開くことができた場合を○、不織布が少し破損した場合を△、不織布が大きく破損した場合を×とした。結果を表1に示した。
【0047】
また、冷涼感の評価においては、十分な量の凍った水分が保持されており冷涼感に優れる場合を◎、ある程度の量の凍った水分が保持されており冷涼感に問題が無い場合を○、十分な量の水分が保持されておらず冷涼感に乏しい場合を△、水分があまり保持されておらず冷涼感に著しく乏しい場合を×とした。結果を表1に示した。
【0048】
≪実施例2〜4及び比較例1〜4≫
レーヨン繊維、ポリエステル繊維、及び不織布の仕様を、表1に示す値に変更した以外は実施例1と同様にして、冷凍おしぼりを製造し、実施例1と同様にして使用感を調べた。すべての実施例及び比較例の結果を表1に示した。
【0049】
【表1】

【0050】
表1から、本発明の冷凍おしぼりは剥がれ性及び冷涼感に優れ、使い捨て可能で、使用時に破れることなく開くことができ、爽快な冷涼感を味わうことができることがわかった。
【0051】
以上、本発明の冷凍おしぼりについて説明してきたが本発明はこれに限定されるものではなく特許請求の範囲及び明細書等に記載の精神や教示を逸脱しない範囲で他の変形例、改良例が得られることを当業者であれば容易に理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.0〜2.0デニールの繊維で構成された50〜100g/m2の目付けを有する不織布と、前記不織布に含侵された水分と、を含むこと、
を特徴とする冷凍おしぼり。
【請求項2】
前記繊維が、レーヨン繊維とポリエステル繊維の混合物であること、
を特徴とする請求項1に記載の冷凍おしぼり。
【請求項3】
前記不織布がクロスレイヤー方式で形成されたものであること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の冷凍おしぼり。

【公開番号】特開2013−106859(P2013−106859A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255537(P2011−255537)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(506352913)カネヨシ商事株式会社 (2)
【Fターム(参考)】