説明

冷凍の米パン生地及び米パンの製造方法

【課題】 冷凍されている米パン生地を解凍し、その後、成型、発酵、及び焼き上げることで日持ちが良い食パンとなる冷凍米パン生地の提供。
【解決手段】 バター又はマーガリン、米粉、天然酵母、及び水を混合して捏ね、これを室温で容積が約2倍まで発酵した後に冷蔵庫で保管して作った元種を使用し、この元種、米粉、アルファー粉、砂糖、デンプンから作られて水を吸収する粉であるトレハロース、脱脂粉乳、増粘剤、天然塩、イースト、酵素入り調味料、卵白、マーガリン又はバター、そして水を混合して捏ねて生地を作り、これを冷凍する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米を主原料とする米粉を使用した米パンの冷凍生地、及び米パンの製造方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、パンは小麦粉を主原料として作られるのがほとんどであり、小麦粉にイースト菌、塩、砂糖、ミルク、水を混ぜ合わせて捏ね上げる。暫く待ってイースト菌が繁殖して生地が膨れ上がって(1次発酵)から一定の大きさに分割し、もう一度捏ねる。さらに、再度発酵(2発酵)させてから型に入れて焼き上げる。1時発酵及び2次発酵は条件により変わるが、25℃前後で約1時間かかる。
【0003】
近年では、従来の小麦粉を主原料としたパンに限らず、米粉を主原料とした米パンが一部で愛用されている。例えば、特開平6−7071号に係る「米粉を用いたパンの製造法」が知られている。このパン製造方法とは、「パン特有の食味と、米の食味を得られるパンの製造法であり、加水操作を行った浸漬米をロール製粉機で粗粉砕し、さらに気流粉砕機で微粉砕して米粉を作る。米粉と、グルテンと、水を捏ねて生地を作り、生地をねかせた後、前記生地にイースト菌を加えて本捏ねし、本捏ねした生地を発酵させ、焼いてパンを製造する。」
しかし、従来のパンは小麦粉に含まれているグルテンというタンパク質の作用によりふっくらとした食感を生み出しているが、米粉を原料としたパンは小麦粉の代わりに米粉を使用することでグルテンが不足し、パン本来のふっくらとした食感を生み出すことが難しく、硬いパンとなってしまう。勿論、グルテンは小麦の種類によっても異なることから、小麦粉を原料とし場合であっても、ふっくらとした食感のパンにならないこともある。
【0004】
そこで、グルテンを含まない米粉を主原料としても米粉を膨らます作用を持つトレハロースを多く含むパン用酵母を加えることで、小麦粉を主原料として製造したパンと同様にふっくらと柔らかい食感の米パン及びその製造方法として、特開2004−350562号に係る「米パンの製造方法」がある。
【0005】
上記特開2004−350562号に係る「米パンの製造方法」は、米粉と小麦粉をそれぞれ50%ずつの配合率で配合した原料にトレハロースを多く含むパン用酵母である白神こだま酵母を使用して、原料の70%を仕込む中種生地製造工程、残りの30%と共にその他の材料を仕込む本仕込み工程、分割作業の工程、ベンチタイムの工程、成形の工程、発酵の工程、焼き上げの工程の各工程から成っている。
【特許文献1】特開平6−7071号に係る「米粉を用いたパンの製造法」
【特許文献2】特開2004−350562号に係る「米パンの製造方法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来においても米パンは知られているが、バサツキ感やしっとり感は小麦粉を原料としたパンに比較して劣っている。特開2004−350562号に係る「米パンの製造方法」にて作られた米パンであっても満足のいく食感は得られない。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、従来の米パンに比較して日持ちが良く、バサツキ感がなくてしっとり感が長時間にわたって持続する食感の良い米パン及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る米パンは、元種を最初に作り、この元種を本捏ねの段階で加えて作られる。元種はショートニング(バター又はマーガリン)を3、15%のグルテンを含む酵素入り米粉を約30±5%、天然酵母を約2±5%、及び水を約25.5±5%の重量割合で混合して捏ね機で捏ね、室温約18℃で容積の約2倍まで発酵させ、ラップをかけて冷蔵庫でねかせて作る。ここで、約5℃の冷蔵庫では発酵も止まる。
【0008】
このようにして作った元種を使用して本捏ねを行うが、本捏ねに先立って米粉及びその他の添加材を捏ね機に入れて別に捏ね、その後、上記元種を加えて捏ね上げる。ここで、パンの種類にて添加材及びその他の材料の混入割合が違っている。そして、マーガリン又はバターを加えて捏ね、生地の硬さ具合を見た上で、水を加えてさらに捏ねる。このようにして出来た生地は分割され、一旦冷凍される。
【0009】
冷凍生地はそのままの状態で遠方のパン工房へ搬送され、該パン工房にて解凍することが出来る。解凍された生地は本捏ねが完了したと同じ状態となり、これを成型し、所定の時間をおいて発酵させてから焼き上げる。勿論、冷凍することなく、成型、発酵、焼き上げを行うこともある。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る米パンはその材料のほぼ100%を米粉としている。しかし、従来の米パンに比較して日持ちが良く、バサツキ感はなくてしっとり感のある米パンとなる。これは天然酵母を使用している為である。そして、本発明では生地の状態で冷凍することが出来、その為に遠方へ送ることが可能となり、この冷凍生地を購入したパン工房では、何時でも解凍して焼き上げることで、バサツキ感のないしっとりした食感の米パンが出来上がる。
【実施例】
【0011】
図1は本発明に係る米パンの製造工程を示したものであり、第1工程から第8工程で構成している。即ち、(1)元種製造工程→(2)本捏ね工程→(3)分割作業→(4)冷凍→(5)解凍→(6)成型→(7)発酵→(8)焼き上げの各工程を経て製造される。ここで、冷凍しない場合には(4)冷凍工程と(5)解凍工程は省略することが出来る。

本発明である米パンの製造工程では、まず元種を製造し、(2)本捏ね工程において元種を加えて捏ねる。図2は元種の材料及びその割合を表している。ここで、元種材料のショートニングとはバター又はマーガリンであり、これら材料全部を捏ね機に入れて約5分間捏ね、硬い場合にはさらに3〜4分間捏ねる。そして、室温(約18℃)で体積が約2倍になるまで発酵させる。その後、ラップをかけて冷蔵庫で約24時間保管する。約5℃の冷蔵庫では発酵が停止する。
【0012】
本発明では上記元種を用いて食パン、フランスパン、ロールパンを作ることが出来る。食パン、フランスパン、及びロールパンを製造する工程は同じであるが、パンの種類によって材料が多少違ってくる。すなわち、上記元種は共通して使用されるが、その他の材料は各パンによってそれぞれ違ってくる。
【0013】
図3は食パンを製造する場合に配合する材料、及びその比率を表している。配合材料としては、別に作った上記元種、米粉、アルファー粉(ご飯を乾燥して粉にしたもの)、砂糖、トレハロース(水を吸収する粉でデンプンから作られている)、ホエパウダー(脱脂粉乳)、増粘剤(キサンタンガム)、天然塩、イースト、酵素入り調味料、卵白、ショートニング(マーガリン又はバター)、及び水が使用される。ここで、上記酵素入り調味料は発酵調味液と印番エキスで構成することが出来、この場合には、発酵調味液0.08〜0.2%、印番エキスが2〜5%としている。
【0014】
ところで、上記食パンを製造する場合の(2)本捏ね工程は、図3に表記した材料の中で、元種とショートニングを除く2〜11、13を捏ね機に入れて約1分間捏ねる。その後、1の元種を混合して約3分間捏ねる。そして、12のマーガリンを加えて約4分間捏ねる。生地の硬さ具合を見て、適当に水を加えて約4分間捏ねる。さらに、約2分間捏ねて捏ね機から生地を取り出す。
【0015】
図4はフランスパンを製造する場合に配合する材料、及びその比率を表している。配合される材料としては、別に作った上記元種、米粉、アルファー粉(ご飯を乾燥して粉にしたもの)、増粘剤(キサンタンガム)、イースト、天然塩、酵素入り調味料、卵白、ショートニング(マーガリン又はバター)、及び水が使用される。ここで、上記酵素入り調味料は発酵調味液と印番エキスで構成することが出来、この場合には、発酵調味液0.08〜0.2%、印番エキスが2〜3%としている。
【0016】
ところで、上記フランスパンを製造する場合の(2)本捏ね工程は、図4に表記した材料の中で、元種とショートニングを除く2〜8、10を捏ね機に入れて約1分間捏ねる。その後、1の元種を混合して約3分間捏ねる。そして、9のマーガリンを加えて約4分間捏ねる。生地の硬さ具合を見て、適当に水を加えて約4分間捏ねる。さらに、約2分間捏ねて捏ね機から生地を取り出す。
【0017】
図5はバターロール(ロールパン)を製造する場合に配合する材料、及びその比率を表している。配合材料としては、別に作った上記元種、米粉、アルファー粉(ご飯を乾燥して粉にしたもの)、砂糖、トレハロース(水を吸収する粉でデンプンから作られている)、ホエパウダー(脱脂粉乳)、増粘剤(キサンタンガム)、天然塩、イースト、酵素入り調味料、全卵、ホテルフレッシュ(マーガリン又はバター)、及び水が使用される。ここで、上記酵素入り調味料は発酵調味液と印番エキスで構成することが出来、この場合には、発酵調味液0.08〜0.2%、印番エキスが2〜5%としている。
【0018】
ところで、上記ロールパンを製造する場合の(2)本捏ね工程は、図5に表記した材料の中で、元種とホテルフレッシュ(マーガリン)を除く2〜11、13を捏ね機に入れて約1分間捏ねる。その後、1の元種を混合して約3分間捏ねる。そして、12のホテルフレッシュ(マーガリン)を加えて約4分間捏ねる。生地の硬さ具合を見て、適当に水を加えて約4分間捏ねる。さらに、約2分間捏ねて捏ね機から生地を取り出す。
【0019】
上記本捏ね工程が完了したならば、生地は所定の大きさに分割され、冷凍することが出来る。冷凍することで長期保存が可能となり、冷凍された生地は遠方まで送ることが可能と成る。該冷凍生地を購入したパン職人は、これを解凍してパンを作ることが可能と成る。
【0020】
解凍された生地は所定の形状に成型され、そして発酵し、その後、焼き上げられてパンが出来上がる。ここで、生地を冷凍しない場合には、分割した後に成型、発酵、焼き上げ工程が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る米パンの製造工程。
【図2】元種の配合表。
【図3】食パンの配合表。
【図4】フランスパンの配合表。
【図5】ロールパンの配合表。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍されている米パン生地を解凍し、その後、成型、発酵、及び焼き上げることで食パンとなる冷凍米パン生地において、バター又はマーガリンを3±5%、米粉を30±5%、天然酵母を2±5%、及び水を25.5±5%の重量比率で混合して捏ね、これを室温で容積が約2倍まで発酵した後に冷蔵庫で保管して作った元種を使用し、この元種を25〜35、米粉を70〜80、アルファー粉を2〜1、砂糖を2.5〜3.5、デンプンから作られて水を吸収する粉であるトレハロースを2.5〜3.5、脱脂粉乳を2〜5、増粘剤を0.3〜0.6、天然塩を1.8〜2、イーストを2〜4、酵素入り調味料を2.08〜5.2、卵白を4〜6、マーガリン又はバターを2、そして水を55〜60の重量割合で混合して捏ねて生地を作り、これを冷凍したことを特徴とする食パン用の冷凍米パン生地。
【請求項2】
捏ねて作った米パン生地を、分割、成型、発酵、及び焼き上げることで食パンとなる米パンの製造方法において、バター又はマーガリンを3±5%、米粉を30±5%、天然酵母を2±5%、及び水を25.5±5%の重量比率で混合して約5分〜10分間捏ね、これを室温で容積が約2倍まで発酵した後に冷蔵庫で1日〜2日間保管して元種を作り、米粉を70〜80、アルファー粉を2〜1、砂糖を2.5〜3.5、デンプンから作られて水を吸収する粉であるトレハロースを2.5〜3.5、脱脂粉乳を2〜5、増粘剤を0.3〜0.6、天然塩を1.8〜2、イーストを2〜4、酵素入り調味料を2.08〜5.2、卵白を4〜6、そして水を55〜60の重量割合で混合して捏ね機に入れて約1分間捏ね、そして上記元種を25〜35の重量割合で入れて約3分間捏ね、マーガリン又はバターを2の割合で混合して約4分間捏ね、さらに適量の水を加えると共に24℃以下の温度で約4分間捏ね、最後に約2分間捏ねて生地を作り、これを分割、成型し、発酵させ、そして焼き上げることを特徴とする食パン用の米パン製造方法。
【請求項3】
上記分割後に冷凍し、必要に応じて解凍して使用することを特徴とする請求項2記載の食パン用の米パンの製造方法。
【請求項4】
冷凍されている米パン生地を解凍し、その後、成型、発酵、及び焼き上げることでフランスパンとなる冷凍米パン生地において、バター又はマーガリンを3±5%、米粉を30±5%、天然酵母を2±5%、及び水を25.5±5%の重量比率で混合して捏ね、これを室温で容積が約2倍まで発酵した後に冷蔵庫で保管して作った元種を使用し、この元種を25〜35、米粉を70〜80、アルファー粉を2〜1、増粘剤を0.5〜0.8、天然塩を1.5〜2.5、イーストを3、酵素入り調味料を3.2〜2.08、卵白を4〜6、マーガリン又はバターを2、そして水を55〜60の重量割合で混合して捏ねて作られた生地を、冷凍したことを特徴とするフランスパン用の冷凍米パン生地。
【請求項5】
捏ねて作った米パン生地を、分割、成型、発酵、及び焼き上げることでフランスパンとなる米パンの製造方法において、バター又はマーガリンを3±5%、米粉を30±5%、天然酵母を2±5%、及び水を25.5±5%の重量比率で混合して約5分〜10分間捏ね、これを室温で容積が約2倍まで発酵した後に冷蔵庫で1日〜2日間保管して元種を作り、米粉を70〜80、アルファー粉を2〜1、増粘剤を0.5〜0.8、天然塩を1.5〜2.5、イーストを3、酵素入り調味料を3.2〜2.08、卵白を4〜6、そして水を55〜60の重量割合で混合して捏ね機に入れて約1分間捏ね、そして上記元種を25〜35の重量割合で入れて約3分間捏ね、マーガリン又はバターを2の重量割合で混合して約4分間捏ね、さらに適量の水を加えると共に24℃以下の温度で約4分間捏ね、最後に約2分間捏ねて生地を作り、これを分割、成型し、発酵させ、そして焼き上げることを特徴とする食パン用の米パン製造方法。
【請求項6】
上記分割後に冷凍し、必要に応じて解凍して使用することを特徴とする請求項5記載のフランスパン用の米パンの製造方法。
【請求項7】
冷凍されている米パン生地を解凍し、その後、成型、発酵、及び焼き上げることでロールパンとなる冷凍米パン生地において、バター又はマーガリンを3±5%、米粉を30±5%、天然酵母を2±5%、及び水を25.5±5%の重量比率で混合して捏ね、これを室温で容積が約2倍まで発酵した後に冷蔵庫で保管して作った元種を使用し、この元種を25〜35、米粉を70〜80、アルファー粉を2〜1、砂糖を2.5〜3.5、デンプンから作られて水を吸収する粉であるトレハロースを2〜4、脱脂粉乳を2〜5、増粘剤を0.3〜0.6、天然塩を1.8〜2、イーストを2〜4、酵素入り調味料を2.08〜5.2、全卵を8〜12、マーガリン又はバターを2、そして水を43〜50の重量割合で混合して捏ねて作られた生地を、冷凍したことを特徴とするロールパン用の冷凍米パン生地。
【請求項8】
捏ねて作った米パン生地を、分割、成型、発酵、及び焼き上げることでロールパンとなる米パンの製造方法において、バター又はマーガリンを3±5%、米粉を30±5%、天然酵母を2±5%、及び水を25.5±5%の重量比率で混合して約5分〜10分間捏ね、これを室温で容積が約2倍まで発酵した後に冷蔵庫で1日〜2日間保管して元種を作り、米粉を70〜80、アルファー粉を2〜1、砂糖を2.5〜3.5、デンプンから作られて水を吸収する粉であるトレハロースを2〜4、脱脂粉乳を2〜5、増粘剤を0.3〜0.6、天然塩を1.8〜2、イーストを2〜4、酵素入り調味料を2.08〜5.2、全卵を8〜12、そして水を43〜50の重量割合で混合して捏ね機に入れて約1分間捏ね、そして上記元種を25〜35の重量割合で入れて約3分間捏ね、マーガリン又はバターを2の割合で混合して約4分間捏ね、さらに適量の水を加えると共に24℃以下の温度で約4分間捏ね、最後に約2分間捏ねて生地を作り、これを分割、成型し、発酵させ、そして焼き上げることを特徴とするロールパン用の米パン製造方法。
【請求項9】
上記分割後に冷凍し、必要に応じて解凍して使用することを特徴とする請求項2記載のロールパン用の米パンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−79547(P2008−79547A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263868(P2006−263868)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(506328480)
【Fターム(参考)】