説明

冷凍ドウの製造方法

本発明は、プルーフィングあるいは解凍ステップなしに、フリーザーからオーブンへ直接移すことができる冷凍ドウを製造する方法を提供する。そのプロセスは、ドウの材料を混合すること、気体核形成サイトを形成すること、前記ドウを圧力差のサイクルにかけることによってエクササイズさせること、且つそのドウを冷凍することを含む。前記冷凍ドウは、ベーキングのために、フリーザーからオーブンへ直接移されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に冷凍ドウ(frozen dough:冷凍生地)に関する。より詳細には、フリーザーからベーキング用のオーブンに直接移すことができる冷凍ドウを製造する方法に関する。前記冷凍ドウ製品は、通常のオーブン内において、または、対流式、マイクロ波、赤外線などといった形態の組み合わせを利用するコンビネーション・オーブンにおいて焼成することができる(ベーキング中に機械的なストレッチングがあってもなくてもよい)。
【背景技術】
【0002】
ベーキングの伝統的なプロセスは、材料を混合すること、ドウ(dough:生地)をこねること、ドウをより小さいポーションに分割すること、ドウ・ピースの形を整え、成形すること、それを特定のボリュームにプルーフすること(proofing)、および焼成すること(baking)を含む。このプロセスは、面倒で、時間がかかり、そして適切な設備と、焼き立てのパン特有の官能特性を有するパンを製造するための正規のパン職人を必要とする。パン焼きに関連する時間や問題をできるだけ少なくするために、完全にまたはほぼ焼かれたパンが導入された。しかしながら、そのような製品は焼き立てのパンの特性を欠く。準備時間を最小化し、さらに焼き立てのパンを提供するために、フードサービス、店内のベーカリーの他、ホームベーキングにおいても、冷凍ドウが人気を得た。
【0003】
製造方法に基づき、冷凍ドウは様々な形態−すなわち、化学膨張剤を使用し、あるいは使用せず、あらかじめプルーフされた(pre-proofed)、またはプルーフされていない(un-proofed)冷凍ドウ−、にて利用できる。あらかじめプルーフされた冷凍ドウのシステムは、冷凍前にドウのプルーフィングを含む(米国特許第6,660,311号)。このような製品は、輸送や処理の最中のダメージの影響を受けやすく、それゆえ、未プルーフの対応物と比較してより人気が低い。未プルーフ冷凍ドウのシステムでは、ドウはドウのピースに分けられ、その後冷凍される。得られた冷凍ドウは、より長い保存期間(華氏0〜5度にて100日以内かそれ以上)を有し、フードサービスおよび店内のベーカリーに凍結状態で出荷される。
【0004】
冷凍ドウ製品を利用する典型的なベーキング作業において、冷凍製品は、解凍のために、リターダ(retarder:解凍庫)または冷蔵庫(〜4-6℃)内に2〜16時間置かれ、その後プルーフィングのためにさらに1〜2時間、その後にベーキングが続く。これは、ベーカリーが、販売用に必要となる可能性のある製品の量を、ベーキングの少なくとも3時間前に推測しなければならないため、無駄が多くなる恐れがある。加えて、正規のパン職人は、さらに、プルーフィングをストップすべき時間、およびベーキングを開始すべき時間を特定する必要がある。本質的に、ベーカリーの経営は、冷凍ドウ製品を使用するために、設備(フリーザー、リターダ、プルーファー[Proofer]およびオーブンなど)に出資する必要があり、さらにそのフロアに正規のパン職人を置く必要があるだろう。皮肉なことに、冷凍ドウのシステムは、材料を混合しドウを捏ねることを含むパン作りと比べて、高価な提案である;しかしなお、その便利さおよび清潔さのため、魅力のある提案である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それ故、冷凍ドウの製造業者は、顧客のためにパンを焼くコストを削減し、且つ、なお焼き立ての品質をもつ冷凍ドウ製品を提供するという問題に対応するために、できればフリーザーからオーブンへ直接移すことができる製品を開発することを試みてきた。このようなフリーザー-トゥー-オーブン(freezer-to-oven)製品を得るためのある種のアプローチは、ラミネーションおよび/または化学膨張システムの使用を含む(米国特許第6,579,554号;米国特許第6,589,583号)。ラミネーションと化学膨張剤(chemical leavener)は、好ましいクロワッサンタイプあるいはクッキータイプの製品を提供するが、それらはパンに特有のフレーバーとクラム(crumb:パンの柔らかい部分,パンの身)構造を有するパン様の製品を提供しない。ベーキングのコストを削減するもう一つのアプローチは、冷凍製品がリターダ内で解凍され、プルーファー内でプルーフされ、その後オーブン内で焼成されるプロセスにおいて各ステップの時間を減らすこと、あるいはステップを削除することである。ある冷凍ドウのシステムでは、冷凍ドウは、ベーキングの前に従来型のプルーフィング(またはプルーファー)ステップを必要としない。前記冷凍ドウは、リターダ内で華氏33〜42度で少なくとも12時間解凍されるか、または華氏43〜85度の高温で少なくとも1時間解凍され、その後、焼成されて、良好な官能特性および少なくとも4cc/gの比体積を有する製品を与える(米国特許公開公報第2005/0202126号)。フリーザー-トゥー-オーブンのパンあるいはパン様の製品(米国特許第6,884,443号)のために望まれる本質的な組成の特性を知るためにこれまでに調査を実施してきたが、そのような製品を製造するための処方設計におけるプロセシングおよび正確な材料のバランスは今までのところ知られていない。
【0006】
Davis(1973)は、密封された容器に入った保存に安定したベーカリー製品であって、密封容器内で調理できる製品の調製方法の特許権を得た(米国特許第3,718,483号)。日本の特開2000−287607号は、発酵を低真空状態で実行し、ドウを加圧下で再混捏する冷凍ドウの製造方法を記載する。最終製品は、なし肌の発生の影響を受けにくく、パンの味が改良される。米国特許第6,025,001号は、プレ形成された、未凍結ドウのサイズを膨張し、減圧下で焼成するプロセスを記載する。減圧での冷凍ドウの解凍およびプルーフィングにかかる前記プロセスのため、ベーカリーでのパン焼きの全体的な時間は減らず、その製品はフリーザー-トゥー-オーブン製品とは見なされない。
【0007】
本願の明細書および請求の範囲に含まれる全てのパーセンテージは、特に表示のない限り、フラワーの重量を基礎とする重量%を表す。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、フリーザーからオーブンに直接入れて焼くことができ、品質が良好で、焼成後の比体積が4.0cc/g以上となる製品を与えることができる製品を製造するために、ドウから作られたパンを冷凍する前に圧力差にさらす、処理条件について説明する。
【0009】
本発明は、フリーザーからオーブンへ直接移すことができる冷凍ドウを製造する方法を提供する。前記ドウは、フラワー、脂質、水、膨張剤(一種または複数)、乳化剤および安定剤を含む。一実施形態において、前記膨張剤はイーストである。イーストは、華氏33〜140度の温度範囲で活性を有する一以上のイーストの従来量の3倍以下で存在すればよい。前記イーストは7〜14%の量で存在する。一実施形態において、前記イーストの含有量は8〜12%である。別の実施形態において、イーストの含有量は11%である。ドウのグルテン含有量は、フラワーの10〜20%(w/w)の範囲とすべきであり、グルテンのレベルが高いほど、一般的に、より良いガス保持能力を持つドウを与える。典型的には、「高グルテン」として販売されているフラワーは、一般的に約12.5〜15%のグルテンを含有する。しかしながら、グルテンのレベルは、製品ごとに、または季節により変動しうることが理解されるべきである。必要に応じて、高グルテン粉は、ドウ中の唯一のフラワーとして使用されてもよく、あるいは他のフラワーと併用されてもよい。
【0010】
前記のドウを調製する方法は、ドウ中に「気体核形成サイト(gas nucleation site)」を導入すること、続いてドウをエクササイズする(exercising)ことを含む。特定の理論に拘束されることを意図しないが、ドウをエクササイズすることは、気体核形成サイトに作用し、ドウの基質(dough matrix)の再構築をもたらすと考えられる。一実施形態において、ドウの基質は、一軸に沿って引き伸ばされ(stretched)、同じ軸においてゆるめられ(allowed to relax)、プレ-ベーキング、解凍、プルーフィングおよび他の処理なしに焼成することができ、良好なフレーバー、均一なクラム、一貫したクラスト(crust:パンの皮)形成、および少なくとも4.0cc/gの焼成比体積を有する焼成製品(ベークド製品:baked product)を得ることができるドウの基質を作り出す。本発明のドウは、ベーカリーやレストランで便利に使用されることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の冷凍ドウは、対流式-ラック型オーブンのような従来式オーブンで有利に焼成することができる。このため前記製品は、通常の設備を使用して製品を素早く焼く必要のある、ベーカリー、レストランおよび同様の場所で便利に使用することができる。本発明の冷凍ドウは、直火、加熱油、強制空気(forced air)、対流式、マイクロ波および/または赤外線などのような一以上の加熱様式の組み合わせを備えるオーブンで焼成されることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、ここに、本発明の特定の好ましい実施形態のために詳細に記述される。これらの実施形態が単に説明に役立つ実例として意図されており、本発明がそれに限定されるべきではないことが理解される。
【0013】
冷凍ドウ
本発明は、ベーキングの前に解凍およびプルーフィングを必要としない冷凍ドウに関する。本発明のドウは、冷凍前の必要な処理に耐えることができ、ベーキング中に所望のレオロジー特性を獲得できるほどの弾性を有するドウを実現するために、フラワー、水、イースト、および/または化学膨張剤、乳化剤および一以上のドウ安定剤を含む。
【0014】
ドウのグルテン含有量は、10〜20重量%の範囲内とすべきであり、一般にグルテンレベルが高いほどガス保持能力の良好なドウができる。ハードロールでは、グルテン含有量は12〜20%の範囲内である。
【0015】
典型的には、「高グルテン」として販売されているフラワーは、一般的に約12.5〜15%のグルテンを含有する。しかしながら、グルテンのレベルは、製品ごとに、または季節により変動しうることが理解されるべきである。必要に応じて、高グルテンフラワーは、ドウ中の唯一のフラワーとして使用されてもよく、あるいは他のフラワーと併用されてもよい。
【0016】
本発明のドウ中で使用できるフラワーには、小麦粉、ジャガイモ粉およびグルテン麦粉、またはそれらの組み合わせや混合物が含まれるが、これに限定されない。本発明のフラワーは強化フラワー(すなわち、連邦政府によって定められた量のフラワー、ナイアシン、硫酸第一鉄、リボフラビン、酵素、およびチアミン・モノニトレート・ホレートを含有するフラワー)であってもよい。他の種類のフラワーが、強化フラワーに代用されてもよく、または強化フラワーと併用されてもよい。
【0017】
本発明のドウは、追加のグルテンまたはグルテン加水分解物を含んでもよい。グルテンはグリアジンおよびグルテニンを含有することが知られている。したがって、これらの個々の成分またはその組み合わせをグルテンの代わりに使用してもよい。グリアジンは、アルファ-、ベータ-、ガンマ-、あるいはオメガ-グリアジンまたはその組み合わせでもよい。
【0018】
本発明のドウは、一以上の穀物(例えば、カラス麦、コーン、大麦、小麦、ライ麦など)に由来するフラワーを含んでもよい。前記ドウは、穀物に由来する粒子状物質(例えばクラッシュされた小麦粒子)を含んでもよい。さらに、ドウはホール・シードまたはクラッシュ・シードを含んでいてもよい。有用なシードは当技術分野において周知であり、ひまわりの種、キャラウェイシード、亜麻のシード、セサミシードなどが含まれる。このように、マルチグレイン製品は、味を改良しおよび/または栄養的価値を付加するために調製されることができる。
【0019】
所望のコンシステンシー(consistency)を達成するために、十分な水を本発明のドウに添加することができる。水の正確な量は、当業者に既知のファクター(使用されるイーストの種類、所望の最終製品、および他の材料の量と種類を含む)に依存する。水は、フラワーの重量ベースで約45重量%〜約75重量%の量で添加されることができる。
【0020】
本発明の冷凍ドウは、一種以上のイーストを含む。イーストは様々な形態で購入され、使用されることができる。一般に使用される最も乾燥したイースト(「インスタント」イーストと呼ばれることもある)は、3.5〜6.0%の水分を含有する。クリーム状のイーストは、約80〜85%の水分を含み;圧搾イーストは、約66〜73%の水分を含み;および活性ドライイーストは、約6〜8%の水分を含む。他の例として、パン酵母、保護活性ドライイースト、フローズンイーストなどが挙げられる。一般に、圧搾イーストを使用することができる。しかしながら、本発明は決して圧搾イーストに限定されない。所定の量の圧搾イーストに対し、当業者は「圧搾イーストの等価物」(すなわち、圧搾イーストと水和の度合いが異なるが、所定量の圧搾イーストと同じ量のイーストを含む他の形態のイーストの量)を容易に決定することができる。例えば、1%の圧搾イーストは約1.5〜1.8%のクリーム状イーストと等価であり、約0.375〜0.5%の活性ドライイーストと等価であり、約0.3125〜0.4%のインスタント・イーストと等価である。
【0021】
代わりに、または追加的に、化学膨張剤も使用することができる。化学膨張剤は、典型的には、膨張剤(例えば、リン酸ナトリウム(SAPP)またはリン酸ナトリウムアルミニウム(SALP))とベーキング・ソーダ、またはその組み合わせの使用を必要とする。
【0022】
気体核形成サイトは、ドウの中に形成されてもよく、また、さらなる実施形態では、気体核形成サイトは、何らかの手段によってドウの中に導入されてもよい。気体核形成サイト中のバブルは、なんらかの適切なガスまたはガスの組み合わせ(例えば、圧縮空気、二酸化炭素、窒素など)であってもよい。
【0023】
本発明のドウは、好ましくは塩を含む。塩は通常、混合をよりよく促進するため、香味料を強化するため、ドウ内の含水率をコントロールするため、および/またはイースト活性をコントロールするために添加される。市販のブレンドされた塩を使用してもよい。
【0024】
本発明のドウはまた、効果的なタイプおよび量の脂質源を含む。ある実施形態ではオイルが使用される。一般に、たいていの食用油が適するが、トランス脂肪のないことに加えて、味および潤滑性能の点で植物油が好ましい。本発明において使用されうる植物油の例として、大豆油、綿実油、ピーナッツ油、菜種油、トウモロコシ油、オリーブオイルおよびヒマワリ油が含まれるが、これに限定されない。前記本発明のオイルに加えて、あるいはその代わりとして、フレーバー・オイルを使用してもよい。フレーバー・オイルの限定されない例として、オリーブ、ゴマ、ジンジャー等が挙げられる。ある実施形態では、高い初期軟化点を伴うシャープな融点を有するファットまたはショートニングが使用される。
【0025】
脂質源には乳化油が含まれてもよい。このような乳化油の例として、ショートニング、バターまたはマーガリンが挙げられる。合成的に調製されたショートニングを含む、動物性または植物性のファットおよびオイル由来のグリセリド・ショートニングが、ここでの使用に好適である。前記グリセリドは一般に、トウモロコシ油、綿実油、大豆油、ココナッツ油、菜種油、ピーナッツ油、オリーブオイル、ヤシ油、パーム核油、ヒマワリ種子油、アラセイトウ油、ラード、獣脂などといった食用のオイルおよびファットから得られる炭素原子約12〜約22の飽和あるいは不飽和の長鎖アシル基を含み得る。本発明にかかる好ましいショートニングの例として、ベジタブル・ショートニング、大豆由来のショートニングあるいはオイル、水素化された大豆由来のショートニングあるいはオイル、トウモロコシ油、ヤシ油、水素化(硬化)ヤシ油、ラードおよびタロー・オイル(tallow oil)が挙げられる。
【0026】
調理したドウの外側にいくぶんかのクリスピネス(crispiness)を望む場合は、水素化ショートニングを使用してもよい。前記水素化ショートニングは、より優れた性質のクラスト、クリスピネスおよび、より優れたベークドボリュームを提供する。本発明に関して使用可能なベジタブル・ショートニングは、好ましくはショートニング・フレークの形態である。水素化ショートニングは、トランス脂肪に関連する問題を最小限にするために、低濃度で使用することが好ましい。
【0027】
脂質源の量と種類は、冷凍ドウの材料を含む様々なファクターに基づき、および所望の味や物理的特性(例えば一定の内部構造を維持する等)に基づき、当業者によって選択されればよい。
【0028】
本発明のドウは、0.05%〜0.5%の乳化剤、あるいはFDAガイドラインの下で許容される範囲でより多量の乳化剤を含む。好適な乳化剤として、レシチン、水酸化レシチン;脂肪酸のモノ-、ジ-、あるいはポリグリセリド(例えば、ステアリン及びパルミチン-モノ並びにジグリセリド、多価アルコールの脂肪酸エステルのポリオキシエチレンエーテル(例えば、ソルビタン・ジステアレートのポリオキシエチレンエーテル);多価アルコールの脂肪酸エステル(例えば、ソルビタン・モノステアレート);モノ並びにジグリセリドのポリグリセロールエステル(例えば、ヘキサグリセリル・ジステアレート);グリコールのモノ並びにジエステル(例えば、プロピレングリコール・モノステアレート、およびプロピレングリコール・モノパルミテート、サクシノイル化モノグリセリド);及びカルボン酸(例えば、乳酸、クエン酸、および酒石酸)と脂肪酸のモノ-並びにジグリセリド(例えば、グリセロール・ラクト・パルミテートやグリセロール・ラクト・ステアレート、およびカルシウムあるいはナトリウム・ステアロイル・ラクチレート[SSL])のエステルおよびその全ショ糖エステル群、全種類の脂肪酸のジアセチル酒石エステル、モノグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(「DATEMS」)並びに同等なもの、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0029】
本発明のドウは、一以上の安定剤(典型的には親水コロイド)を含む。これらは天然物(即ち植物性)であってもよく、あるいは合成ゴムであってもよく、並びに、例えばカラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、アルギネート、キサンタン・ガムおよびそれらと同等物または半合成のもの(例えば、メチルセルロース、カルボキシ-メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシ-プロピルメチルセルロース[METHOCEL F-50 HG]、および微結晶性セルロース)であってもよい。
一般的には、ガムあるいはガムの組み合わせは糖と共に用いられる(例えば、デキストロース・キャリア)。本製品におけるこれらの安定剤の量は、0.2〜1.6%の範囲、あるいはFDAガイドラインの下で許容される範囲でより多い量である。
【0030】
本発明のドウは、香味料(flavoring)および/または着色剤を含んでも良い。前記ドウは任意で、香味料および/または着色剤を適切な量、例えば0.01〜0.5%の量にて含有してもよい。香味料を用いる場合、ドウに使用される水と塩の量は、例えば、香味料に既に含まれている塩や水の量を考慮に入れて調節しなければならないかもしれない。ドウにおける塩や水の量の「微調整」は、当業者の能力の範囲内と考えられる。適切な香味料の一例は、バター・フレーバーおよび発酵フレーバーである。多くの異なる個々のフレーバーが、最も望ましいフレーバーを達成するために用いられることが、当業者に正しく理解されるであろう。
【0031】
必要に応じてビタミンやミネラル類もドウに添加されてよい。一般的にドウに添加されるビタミンとして、リボフラビンがある。ビタミン類とミネラル類は強化フラワーとして添加されてもよく、個々に添加されてもよい。さらに、吸収性または元素形態のカルシウムを添加してもよい。
【0032】
本発明のドウにテクスチャおよび/または風味(フレーバー)を加えるために、甘味料を添加することもできる。糖類などの甘味料は、イーストのためのエネルギー源を供給する付加的な目的のために添加されてもよい。ある実施形態では、デキストロースおよび/または他の糖類(ショ糖、結晶性フルクトース、高フルクトース・コーンシロップ[HFCS]あるいはこれらの糖類の組み合わせ)を使用することができる。その代わりとしてあるいは追加で、アルパルテーム、サッカリン、スクラロース、アリテーム、シクラメート等の人工甘味料を使用してもよい。
【0033】
本発明のドウは必要に応じて、アゾジカルボンアミド、ヨウ素酸カリウム等の酸化剤を含有してもよい。
【0034】
本発明の材料(成分)は、組み合わせて含まれてもよい。例えば、一以上の下記の成分を含むドウ・コンディショナー(dough conditioner)を使用することができる:酸化剤、酵素、乳化剤、安定剤、フラワーおよび油。このようなコンディショナーの限定されない例として、トレランス・プラス(Tolerance Plus)が挙げられる。ドウ・コンディショナーはまた、アスコルビン酸を含んでいてもよい(Tolerance Plus with AA)。他のドウ・コンディショナーとして、パノダン(Panodan)、臭素酸カリウム成分(PBRI)およびアゾジカーボンアミド(ADA)が挙げられる。ドウ・コンディショナーは、それらの存在と量のために焼成製品の比体積が4cc/gm未満とならない限りにおいて、幅広い重量パーセントで使用されることができる。たいていのコンディショナーの許容範囲は、0.3〜2フラワー重量%の範囲である。
【0035】
必要に応じて本発明のドウは、酵素を含んでもよい。前記酵素は、アミラーゼ、ヘミセルラーゼ、グルコース・オキシダーゼ、キシラナーゼなど(これらに限定されない)を含むグループから選択することができる。酵素の量や種類の決定は、当業者の範囲において周知である。酵素(例えばアミラーゼ)の使用は、それらが、冷凍ドウまたはその結果物であるロールパン、ブレッド等の老化を抑制し得るという点で好都合かもしれない。酵素はまたドウにおいて、その強度の増加、伸展性あるいは弾力性、安定性の向上、粘性の減少をもたらし、その結果、製造中の機械加工性の向上をもたらし得る。ドウにおける前記効果は、グルテン含有量の少ないフラワーを使用する場合に特に好都合かもしれない。改良された機械加工性は、工業的に加工されるドウに関して特に重要である。本発明における酵素の量と種類は、具体的に所望する結果物の性質に応じて、当業者によって決定されることができる。
【0036】
本発明のドウは、特に、オーブン内での流動性を高めるために、還元剤を含んでもよい。適切な還元剤には、L-システインおよびグルタチオンが含まれるが、これらに限定されない。還元剤は、グルテン含有量の高いドウが、より可鍛性となるのに寄与すると考えられる。
【0037】
全てあるいはいくつかの前記の成分を添加した後、ドウの混合が行われる。好ましくは、前記ドウは、冷凍される前に所望の形状、例えば、四角形状、他の多角形状、あるいは円形状、あるいはロール巻き形状等の所望の形状に成形される。例えば、ピザ用には、平らなドウ・ピースを麺棒で伸ばす。
【0038】
ドウの調製
第一のステップにおいて、ドウの成分は一緒に混合される。混合ステップでは、全ての成分を同時に混ぜ合わせてもよく、あるいは、最初に区別された組み合わせの成分を混ぜ合わせ、その後に全ての成分を一緒に合わせてもよい。例えば、ある実施形態では、一部の成分を合わせて予混合物(例えば、塩、安定剤および糖を含む)を形成する。その後、前記予混合物(pre-mix)を、フラワー、イースト、水および脂質源を含む残りの成分と合わせる。前記予混合物および/または最終混合物は、前述したような追加の成分を一以上含んでいてもよい。
【0039】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記混合ステップ(combining step)は全ての成分を混練すること(mixing)を含む。前記成分は、当該技術分野において一般的に知られている混練方法により互いに混練されることができる。
【0040】
前記成分を合わせた後、それらを続けて何らかの適切な混練装置、例えば、ホバート・ミキサー(Hobart mixer)などにより混練する(あるいは混練ステップがすでに行われている場合、さらに混練する)。一例として、前記成分は第一の速度(低)で約1〜約4分間混練され、その後、前記第一の速度より速い第二の速度(高)で約7〜約20分間混練される。好ましくは、前記成分は約2分間低速度で混練され、そして約8〜12分間高速度で混練される。
【0041】
前記ドウはその後、小ピースに分割され、選別されてもよい。ドウ調製後、ドウは1〜60分間「周囲条件(ambient condition)」中に置かれる。このステップは、ここでは「寝かせる(resting)」と称される。一実施形態では、ドウは周囲の湿度および温度より高い状態で保たれてもよい。好ましい実施形態では、ドウは周囲の湿度および温度にて5〜40分間、より好ましくは10〜15分間維持される。特定の理論に拘束されることを意図しないが、このステップ中に、ここでプレ-プルーフィング(pre-proofing)と称される、ドウ・ピース中の内部ストレス(internal stress)の緩和が生じ、発酵プロセスが部分的に起こり、ドウ基質中の気体核形成サイト(気泡(bubbles))の形成をもたらすと考えられる。1〜60分の指示時間(プレ-プルーフィング時間)は、焼成される製品の種類、プルーフィングの湿度と温度、および前記形成において使用されるイーストの種類と量に応じて選択される。
【0042】
寝かせた後、ドウ・ピースはエクササイズされる(exercised)。本明細書中におけるドウを「エクササイズする(Exercising)」とは、ドウの基質を再構築するために、ドウを機械的ストレス(mechanical stress)にかけることを意味する。そのような再構築には、エアセル(air cell)の数を減らすこと、および/またはエアセルのサイズ分布をより大きいエアセルのほうへシフトすることを含む。一実施形態において、前記ドウは、高圧力(第一圧力)および低圧力(第二圧力)間の圧力差が1〜20インチHgとなるような高低交互の圧力下に前記ドウを置くことによって、エクササイズされることができる。各種の実施形態において、第一および第二圧力間の圧力差は、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19 または20インチHgとすることができる。好ましい一実施形態では、10〜15インチHgである。別の実施形態では、約10インチHgである。一実施形態では、前記圧力差は陰圧および陽圧の交互サイクルによって達成されてもよい。このプロセスにおいて、圧力の周期的な増減が実施され、圧力は、機械的圧力、減圧、重力などのような(これらに限定されない)何らかの手段によって変更されることができる。圧力の変化は、様々なレートで生じさせることができる。例えば、5分の圧力サイクルが使用できる。圧力サイクルの始点は、気圧より低くてもよく(すなわち、減圧)、気圧(約30インチHg)でもよく、気圧より高くてもよい(すなわち、30インチHgより上)。各サイクルの持続時間および圧力(すなわち、次のサイクルと同時に増加または減少する)は、圧力の値によっておよび時間によって決定され、これはドウ・ピースのボリュームに必要な増加のために不可欠である。4オンスのロールパンに対し、一実施形態では、15インチの圧力差が用いられる。より大きいロールパン(7〜10オンス)に対しては、さらに10〜20インチHg大きい圧力差が必要となりうる。
【0043】
交互の高−低圧力が少なくとも一サイクル必要とされる。好ましい範囲は1〜10サイクルである。ブレッド製品の種類にもよるが、指示される圧力サイクルの数は、1〜10の範囲内で任意の値をとることができる(例えば、フレンチ・ブレッド・ロールでは、3〜5サイクルが好ましい)。過度のサイクリングは、しわの寄った表面をもたらすなど、ドウにダメージを与えると考えられる。圧力差とサイクル数の最適化は所定の実験によって行うことができる。圧力変化の速度は変えることができる。一般に、速度が遅いほど、ドウの完全性を保つのによい。一実施形態では、ドウは1〜200秒間で5〜20インチの圧力差を受ける。一つの好ましい実施形態では、ドウは10〜30秒間で10〜15インチHgの圧力差を受ける。別の実施形態では、1.5オンスのロールに対して、半サイクルは10〜20秒であり、全サイクルは20〜40秒であり、4.0オンスのロールに対して、半サイクルは20〜30秒とすることができる。より多量のドウは、全サイクルのために最大で1分を必要とするかもしれない。高圧力サイクルの期間に、ドウが低圧力で維持される時間は遅延時間としてここに定義される。本発明にとって遅延時間は必要とされないが、遅延時間は0〜5分の間で変化してもよい。遅延時間は、より多量のドウ(4オンス以上)にとって、その中心を適切な圧力差にさらすことを可能にするために有用かもしれない。代わりに、または加えて、より遅い速度の圧力変化も、中心を適切な圧力差にさらすことを可能にするだろう。
【0044】
圧力差は、ドウを容器の中に置くことおよびその容器の中で正または負の周囲圧力を与えることによって、ドウに適用することができる。陰圧は、典型的には所望のレベルの真空を作ることによって作り出され、陽圧は容器内に空気等の気体を注入することによって作り出すことができる。
【0045】
圧力の値、その変化の特徴および速度、ドウ・ピースのボリュームの増加の程度はまた、焼成される最終製品の種類に応じた様々なサイクルにより異なってもよい。圧力サイクリング(エクササイジング)後のボリュームは、約2〜2.2倍である。焼成製品の種類に応じて、最終焼成製品のボリュームの増加は総計で3〜5倍に達しうる(例えば、重量が1.5オンスのフレンチ・ブレッド・ロールでは、要求されるボリュームの増加は3.5倍である)。例えば、1.5オンスまたは4オンスのロールでは、生のドウのボリュームは典型的には0.9〜1.1であり;冷凍比体積(すなわち、ドウをエクササイズし冷凍した後)は2.0〜2.2であり、焼成後の最終比体積は4.5〜5.7である。従って、例え冷凍後の比体積が2.2以下(典型的に約2)であったとしても、本発明では高い最終比体積が達成される。ドウをエクササイズすることは、焼成後に高比体積を達成できるように、ドウ基質の再構築とエアセルの生成を可能にすると考えられる。
【0046】
ある実験において、1.5オンス製品では、処理の各段階後のドウの寸法は、以下のように観察された(寸法はインチ表示):丸めた後 高さ1.08,直径1.91;寝かせた後 高さ1.38,直径2.38;エクササイズ後 高さ1.47,直径2.63;オーバースプレー(overspray)および凍結後 高さ1.63,直径2.71。
【0047】
典型的なプレ-プルーフィング・ステップでは、比体積は最大で3.5であることが知られている。本発明におけるエクササイジング・ステップの利点は、少なくとも4(または一実施形態では、少なくとも5)の最終焼成比体積を達成するために、高い冷凍比体積を有することは必要でないということである。したがって、本発明において、冷凍ドウの比体積は2.2以下、好ましくは2以下であることが観察された。減少された冷凍ドウのボリューム(典型的なプレ-プルーフィング・ステップと比較して)は、典型的なプレ-プルーフ冷凍ドウより少ない貯蔵スペースを必要とし、結果的に、その冷凍ドウを典型的なプレ-プルーフ・ドウより長期間保存可能とする。さらに、本発明の冷凍ドウは、フリーザーからオーブンに直接移すことができ、典型的なプレ-プルーフ・ドウと同様の比体積を達成する。
【0048】
特定の理論に拘束されることを意図しないが、ドウをエクササイズすることは、少なくともある部分において、冷凍ドウのこれらの特性に寄与すると考えられる。さらに、ドウのエクササイズが、結果的により大きなサイズのセル数の増加および総エアセル数の減少をもたらすことが観察された。セルの真円度について著しい違いはなかった。
【0049】
プロセスの終わりには、ドウは気圧に戻される。その後、ドウ上にオーバースプレー(overspray)が施される。オーバースプレーは、ベーキング中に過度の温度にさらされることに起因する表面の糊化を妨げると考えられる。ドウ・ピースが、中心が適切な温度に達するようにオーブン内で加熱される場合、表面がしばしば乾燥する。このような状況では、オーバースプレーの適用が有益である。トランス脂肪無しの、高融点の脂質を含むオーバースプレーを用いることが好ましい。オーバースプレーでの使用に適切な脂質は、華氏90度〜130度の軟化点を有する。オーバースプレーのために適切な脂質の例には、菜種油、硬化(水素化)綿実油、半硬化大豆油、半硬化コーン油、大豆油、バター、および無水乳脂肪が含まれる。一実施形態では、エマルジョン様のCoffee RichおよびPAM等の上記脂質を含む剤形を使用することができる。硬化油は保存料としてクエン酸を有する。高融点のオーバースプレーを使用する利点は、トッピングがオーバースプレーの溶解物と混合され、トッピングがドウに固着するようになることである。結果として、製造および/または貯蔵の間に一般的に顕著な、トッピングの喪失が減少する。一般に、オーバースプレーの程度は1.5オンスのロールあたり0.1〜1gである。一実施形態では、好ましい程度は1.5オンスのロール(当該ロールは典型的に7cmの直径を有し、これは底面を含めず65sq cmの総表面積に相当する)に対し0.3〜0.6gである。
【0050】
ドウはその後、当該技術分野において既知の方法により凍結される。ドウを凍結する際、ドウ全体にわたる均一な冷却速度が望ましい。成形したドウを凍結する簡便な方法は、スパイラル・フリーザー(華氏−30度〜−62度)を使用することである。二酸化炭素または窒素は、必要に応じて漸進的な冷凍に使用できる(華氏0度〜−10度)。中心温度を華氏5度〜−10度の間で変えることは、焼成比体積に有意に作用しないことが観察された。さらに、急速冷凍も最終製品の焼成比体積に有意に作用しなかった。10,20および30分間にわたり急速冷凍されたドウは全て、4.6〜4.7ml/gの焼成比体積を有することが観察された。
【0051】
長期間の安定性のためには、前記冷凍ドウは華氏約−42度〜約−10度の範囲の温度で保存されることが好ましく、華氏約−20度〜−12度の範囲の温度がより好ましい。凍結状態において、前記ドウ・ピース(半仕上げのベーカリー製品を示す)は、所望の期間保存される。
【0052】
必要に応じて、前記成形されたドウは、冷凍する前に、一種類以上のトッピングおよび/または香味料でトッピングされる。これらの方法にて使用されうる適当なトッピングと香味料の限定されない例は、上述した通りである。
【0053】
この方法のプロセスは、結果的に比体積が1.5〜2.2cc/gの範囲内にある半仕上げのベーカリー製品(すなわち、冷凍ドウ)を生成する。この製品は、解凍やプルーフィングにさらに時間を消費することなく、ベーキングできる状態になっており、冷凍庫から取り出した後、直接ベーキングできる状態の、理想的な半仕上げ製品である。この場合、焼成製品は焼きたてのパンに特有の官能特性および4.0cc/g以上の比体積で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、焼成製品の比体積は5.0cc/g以上であった。
【0054】
ドウを作る方法において、ドウ・ピースの表面にスコア(score:切り込み線)が作られてもよい。スコアリング(scoring)は冷凍前、または急速冷凍後に行うことができる。冷凍前に行う場合、ドウ・ピースを圧力差のサイクルにかける前、サイクル中のいずれかの段階、またはエクササイジング・ステップ後であって冷凍前のいずれで行ってもよい。焼成されている製品の上昇のプロセスがなお続くものの、クラストがベーキングのプロセスの間に十分に速く形成される場合、最終製品に対しそれを行うことが都合がよい。表面スコアは、形成されたクラストの破裂を防ぎ、完成したブレッドの所要の外観を提供する。必要なスコアが冷凍ドウの製造中に作られなかった場合、それらはブレッドをベーキングする前に直接作られてもよい。スコアは典型的に3〜4mmの深さである。
【0055】
一実施形態では、エクササイジング、スコアリングおよびオーバースプレーを組み合わせて用いることができる。エクササイジングは、スコアリング等の表面処理と併用された場合、特に有利であることが観察された。一般にスコアされる製品には、ボリージョ(Bolillo)、フランスパン、イタリアパン、ホーギー(Hoagie)、サブロール(Sub roll)およびディナーロールが含まれる。別の実施形態では、エクササイジングはオーバースプレーと併用され得る。また別の実施形態では、エクササイジングはスコアリングおよびオーバースプレーと併用され得る(プレ-トッピングの有無にかかわらず)。
【0056】
ベーキングの方法
本発明の冷凍ドウは、例えばラックオーブン(rack oven)のような、従来式のオーブン内で焼くことができる。ある実施形態では、ベーキングは異なる加熱モードを組み合わせるオーブン内で行われる。例えば、解凍することができ、高い焼成比体積を提供するためにボリュームを増加させることができ、および実質的に短縮された時間にて望ましいクラストを持つ製品を焼成できるオーブンを使用することができる。このように、ベーキングは既知の方法(例えば、対流加熱によって、マイクロ波、赤外線または電波の照射を利用することによって、エレクトロ-コンタクト法もしくは他の適切な方法を使用することによって、またはこれらの方法を併用することによって)にしたがって行うことができる。ベーキングプロセスの間に減圧もしくは昇圧を利用することも可能であり、蒸気もしくは超音波との併用処理も可能である。さらに、いずれかの組み合わせにおいて、前記の処置を併用または連続使用することが可能である。例えば、マイクロ波と対流による加熱方法を交互に行いながら減圧下にてベーキングのプロセスを実施することが可能である。
【0057】
本発明の冷凍ドウは華氏0度〜5度で少なくとも3ヶ月保存することができる。本発明は凝固点降下剤の使用を必要としない。
【実施例1】
【0058】
本実施例は、プランスパンのドウのための成分レンジを提供する。
【表1】

【0059】
全ての成分をホバート・ミキサー(ニューヨーク州,バッファローのUrban Raiff & Sons社)を用いて一緒に混練した。前記ドウを分割し、球状に丸めた。個々のドウはその後プルーファー内でプレ-プルーフされた。プレ-プルーフしたロールをその後減圧サイクルにかけた。各圧力サイクル(最大圧力は17インチHgとし、その後気圧に戻す)に対して、ロールは当初のボリュームの3.5倍のボリュームまで増加した。3サイクルの圧力変化後、ドウをブラスト・フリーザーを用いて冷凍し、その後−20℃で24時間以上保存した。前記製品を使用するため、冷凍ロールを直接、華氏375度のラック・オーブン(rack oven)内に13分間置いた。この結果、キツネ色で、良好なクラスト(crust:パンの皮)およびクラム(crumb:パンの身)構造を有し、焼きたてのフレンチ・ブレッド・ロール特有のフレーバーをもつ、望ましい焼成製品が得られた。ロールの比体積は約4.8cc/gであった。
【実施例2】
【0060】
エアセルの数を、エクササイズしたドウで作られた1.5オンスのディナーロールおよびエクササイズしないドウで作られたディナーロールの両方について測定した。エクササイジングは、ドウに、周囲圧力で始まる10インチの圧力差を3サイクル(それぞれの半サイクルは約10〜12秒続く)受けさせることによって行われた。減圧-エクササイズされ(vacuum-exercised)、プレ-プルーフされた冷凍ドウの中心-横断面は鋭いナイフを使ってカットされた。冷凍ドウの切断横断面は、実体顕微鏡下で拡大率400Xにて観察された。冷たい外気温環境を用いて、サンプルが解凍しないよう注意が払われた。冷凍ドウの切断横断面上の3つの無作為の円形スポット(それぞれ直径1cm)の写真を高拡大率のデジタルカメラを使用して撮影した。写真は画像化ソフトウェア(Paxit)に転送された。エアセルは手動でマークされ、ソフトウェアを使用して面積と真円度に対して特性化された。結果はその後ヒストグラムの形で示された。この手順は、減圧-エクササイジングが行われなかったことを除き、同様の単位操作でドウに対して繰り返された。
【0061】
実験の結果(図1A,1B,2Aおよび2B)は、エクササイズした場合、より多数の大きいエアセルが観察されることを示す。ディナーロールに対して、エクササイジング無しのエアセルの総数は137であり、一方、エクササイジング有りのディナーロールのエアセルの総数は73であった。したがって、エアセルの数の減少は、小さなセルが大きなセルに合体したことが原因であると考えられる。さらに、エアセルのサイズの棒グラフは、ドウをエクササイズしなかった場合に比較して、大きなセルが観察されたことを示す。セルの真円度について有意な違いは観察されなかった。
【実施例3】
【0062】
本発明の焼成製品について、かみ応えおよびフレーバーに対する比較官能検査を行った。本発明の焼成製品を試験し、比較例と比較した。ドウの組成は表1の実施例に記載のとおりとした。しかしながら、2つのドウの処理は異なる。本発明のドウは、華氏95度・95%RHにて15分間プレ-プルーフされ、冷凍前に実施例2に記載した通りエクササイズされ、一方、比較例のドウは、プレ-プルーフも、冷凍前のエクササイズもされなかった。冷凍後、本発明のドウは焼成するためにオーブン内に直ちに置かれた。比較例のドウは一晩かけて解凍され、その後1時間のフロアータイムが続き、その後オーブンで焼成された。快不快尺度(1〜9点)の平均点は、50人のパネリストによって試験されたものであり、以下の通りであった。
【0063】
【表2】

【0064】
かみ応えのスコアは、より高いドウの弾力性の指標であると考えられる。より高いドウの弾力性はドウをエクササイズすることに起因すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1Aおよび図1Bは、エクササイジングを受けなかったドウ(1A)またはエクササイジングを受けたドウ(1B)中の、表示された面積を有するエアセルの数を表す。
【図2】図2Aおよび図2Bは、エクササイジングを受けなかったドウ(2A)またはエクササイジングを受けたドウ(2B)中のエアセル面積の関数として、全エアセルのパーセントとして表された、図1のエアセルを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プルーフィングまたは解凍のステップなしに、フリーザーからオーブンへ直接移すことができる冷凍ドウを製造する方法であって、
(a)10〜20%範囲内のグルテン含有量を有するフラワー、脂質源、水、0.05〜0.5%量の乳化剤、発酵手段および安定剤を混合することによって、ドウを調製すること;
(b)前記ドウに気体核形成サイトを形成すること;
(c)交互の第一および第二圧力にかけることによって、前記ドウをエクササイズすること:ここで、第一圧力は第二圧力より大きく、第一圧力と第二圧力の圧力差は1〜20インチHgの範囲内である;
(d)前記ドウに、華氏90度〜130度に軟化点を有する脂質成分をオーバースプレーすること;および
(e)ドウを凍らせること
を含む方法。
【請求項2】
前記の気体核形成サイトを形成するステップが、前記ドウを寝かせることによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一圧力と第二圧力間の圧力差が、10〜15インチHgの範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記のエクササイズするステップが、1〜10サイクルの圧力差で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
半サイクルそれぞれの持続時間が10〜30秒である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記のエクササイズするステップが、3〜5回行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
エクササイズする前に、前記ドウを周囲条件にて1〜60分間寝かせる、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
エクササイズする前に、前記ドウを周囲条件にて5〜40分間寝かせる、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
エクササイズする前に、前記ドウを周囲条件にて10〜15分間寝かせる、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記オーバースプレーが、菜種油、硬化綿実油、半硬化大豆油、半硬化コーン油、大豆油、バターおよび無水乳脂肪からなる群から選択される脂質を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
さらに、前記のドウを凍らせるステップの前に、または凍らせるステップの後に、前記ドウをスコアするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記発酵手段がイーストまたは化学膨張剤またはその組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記イーストが約7〜14%の範囲内で存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記イーストが約8〜12%の範囲内で存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ドウがホール・シードまたはクラッシュ・シードを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記化学膨張剤がベーキング・ソーダを伴ったSAPPまたはSALPである、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記脂質源が乳化油、植物油またはフレーバーオイルである、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記安定剤が、天然または合成のガムを0.2〜1.6%の量で含有する親水コロイドである、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記ドウがさらに香味料および/または着色剤を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
前記ドウがさらに甘味料あるいは人工甘味料を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項22】
前記ドウがさらに酸化剤および/または還元剤を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項23】
前記ドウがさらに酵素を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項24】
請求項1に記載の方法によって調製された冷凍ドウ。
【請求項25】
請求項1に記載の方法によって調製された冷凍ドウを得ること、オーブンに直接移し、前記ドウを焼成して、4cc/g以上の比体積を持つ焼成製品を得ることを含む、焼成製品の製造方法。
【請求項26】
前記ドウを焼成して、5cc/g以上の比体積を持つ焼成製品を得る、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
冷凍ドウから焼成製品を製造する方法であって、
(a)10〜20%範囲内のグルテン含有量を有するフラワー、脂質源、水、乳化剤、安定剤、および発酵手段を混合することによってドウを調製すること;
(b)前記ドウに気体核形成サイトを形成すること;
(c)交互の第一および第二圧力にかけることによって、前記ドウをエクササイズすること:ここで、第一圧力は第二圧力より大きく、第一圧力と第二圧力の圧力差は1〜20インチHgの範囲内である;
(d)前記ドウに、華氏90度〜130度に軟化点を有する脂質成分をオーバースプレーすること;および
(e)前記ドウを凍らせること:ここで当該冷凍ドウの比体積は2.2cc/g未満である;および
(f)前記冷凍ドウを焼成のために直接オーブンに移すこと:ここで、焼成製品の比体積は4cc/g以上である;
を含む方法。
【請求項28】
前記冷凍ドウの比体積が2cc/g未満であり、前記焼成製品の比体積が5cc/g以上である、請求項27に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−521217(P2009−521217A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547414(P2008−547414)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/048316
【国際公開番号】WO2007/075611
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(505411055)リッチ プロダクツ コーポレイション (10)
【Fターム(参考)】