説明

冷凍丼の素の製造方法

【課題】冷凍丼の素を効率的に製造する。
【解決手段】牛肉、豚肉又は鶏肉を含む冷凍丼の素の製造方法であって、牛肉、豚肉又は鶏肉をボイル処理してアクを除く工程、アク抜きされた牛肉、豚肉又は鶏肉を含む具材とつゆを袋詰めする工程、該袋を加熱して殺菌と調理を同時に行う工程を有する冷凍丼の素の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍丼の素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、牛丼などの冷凍丼の素は、牛丼のつゆに、牛肉や玉ねぎを入れて調理後取り出してからパウチ詰め冷凍して製造していた(特許文献1)。
【0003】
このような従来法では、牛肉を牛丼のつゆで調理しており、アクの発生により味が損なわれることになる。アクを濾すことにより取り除くことはできるが、作業が煩雑になる。
【0004】
また、牛肉、玉ねぎなどの具材を牛丼のつゆで調理し取り出す方法では、具材と仕込んだつゆとの量調整が難しく、具材もしくはつゆが最後まで使い切れずにロスが発生する問題もあった。
【0005】
さらに、牛肉をつゆで調理すると、牛肉由来の微生物でつゆが汚染される為、微生物危険性が増加し、加熱殺菌の温度を高くして殺菌を十分に行う必要が生じる。この場合、牛肉が過加熱の状態となり、脂身が過度に減少して味が落ちる不具合があった。
【0006】
上記課題は、牛丼と肉の種類、つゆの味付けは異なるが同等な製造方法を用いる、豚丼、鶏の照り焼き丼等他の丼の素メニューにも同様に当てはまる。
【特許文献1】特開2002−369669
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、牛丼、豚丼、鶏の照り焼き丼などの冷凍丼の素を肉の旨みを残しつつ効率的に製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的に鑑み検討を重ねた結果、牛肉、豚肉又は鶏肉をボイル処理してアク抜きと同時に微生物を減少させ、その後、これらの肉類をつゆで加熱調理することなく袋詰めし、加熱殺菌とつゆによる肉類の調理を同時に行い、冷却後凍結することで、作業効率に優れるだけでなく、肉類の過加熱を防止して脂身を残すことで、肉類の味を落とさず、かつ、脂身の溶出によるつゆ本来の色の低下をすることなく冷凍丼の素を製造できることを見出した。
【0009】
本発明は、以下の冷凍丼の素の製造方法を提供するものである。
項1. 牛肉、豚肉又は鶏肉を含む冷凍丼の素の製造方法であって、牛肉、豚肉又は鶏肉をボイル処理してアクを除く工程、アク抜きされた牛肉、豚肉又は鶏肉を含む具材とつゆを袋詰めする工程、該袋を加熱して殺菌と調理を同時に行う工程を有する冷凍丼の素の製造方法。
項2. 前記具材が玉ねぎを含む、項1に記載の方法。
項3. 殺菌と調理のための加熱を100℃以下の温度で行う、項1または2に記載の方法。
項4. 殺菌と調理のための加熱を、レトルト殺菌釜でおこなう、項1〜3のいずれかに記載の方法。
項5. 前記丼が、牛肉を含む牛丼である、項1〜4のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果を牛丼を例に取り説明すると:
牛肉等の具材、牛丼つゆを別々に前処理(調理)し、同時に袋詰めすることによる生産性の高い効率的な製造方法になる。
【0011】
つゆの残量を確認しながら牛肉を前処理することができ、原料ロスが発生しない。
【0012】
牛丼のつゆに牛肉を入れずに調理することでつゆが菌汚染されず、微生物的安全性が図れる。
【0013】
牛肉につゆが染み込んでいないので、つゆで袋の表面、シール面を汚すことがなく、ヒートシール時のシール不良による製品不良が起こりにくい。
【0014】
レトルト殺菌釜内で、袋詰めされた密封状態で調理兼殺菌を行うことにより菌汚染の危険性が無く、微生物的安全性が図れる。
【0015】
冷凍食品の菌基準は、食品衛生法の一般細菌数10000個/g以下、東京都指導基準のサルモネラ菌、黄色ブドウ球菌陰性であるが、この基準は100℃以下の軽い加熱でクリアできる。従って牛丼の風味、見た目の良さを最適にする調理兼殺菌条件を設定できる。また、レトルト殺菌釜を用いることで、加熱温度、加熱時間は自由に設定できるので、牛肉のサイズ、スライス厚、つゆ量等に応じた最適な調理兼殺菌を設定でき、味も見た目もよい牛丼の製造が可能になる。
【0016】
レトルト釜を用いることで、30℃以下程度までに製品品温を効率的に冷却することができ、後の凍結工程の負荷が軽減できる。
【0017】
同一ラインでレトルト食品、冷凍食品の生産が可能である。
【0018】
上記効果は、豚丼、鶏の照り焼き丼、すき焼き、肉じゃが、そぼろ丼等他の丼の素メニューにも同様に奏せられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明において、丼は、牛肉、豚肉又は鶏肉を使用した丼が挙げられ、例えば牛丼、豚丼、鶏の照り焼き丼などが挙げられ、特に、牛丼、豚丼が挙げられる。使用する肉類は、牛肉、豚肉ではバラ肉などのある程度脂身の多い肉が好ましく使用される。そぼろ肉ないし挽肉も使用できる。鶏肉では、もも肉、胸肉などが好ましく使用できる。これら以外に、鴨肉、猪肉もアクの発生や臭み、加熱時の脂身の溶出が問題になっており、本発明を好ましく適用できる。
【0020】
具材としては、肉以外に玉ねぎ、にんじん、ゴボウなどの根菜類、椎茸、ジャガイモ、しめじなどが挙げられ、特に玉ねぎが好ましい。
【0021】
つゆは、丼に通常用いられるものが広く使用できる。
【0022】
本発明では、牛肉、豚肉又は鶏肉をボイル処理し、アクを除くとともに、これらの肉に付着している微生物を除去して、後の加熱殺菌をマイルドな温度条件及び短い加熱時間で行うことを可能にする。ボイル処理の条件は、80〜90℃程度の温度で5秒から3分程度、好ましくは10秒から1分程度行う。
【0023】
牛肉、豚肉、鶏肉は、肉のボイル装置等にてボイル処理しアクの自動排除されたものを使うのがよい。
【0024】
肉類以外の具材は、必要に応じて加熱処理することができ、例えば玉ねぎの場合には80〜90℃程度の温度で3〜30分程度、好ましくは5〜20分程度加熱処理するのがよい。玉ねぎ以外の具材の加熱条件は、当業者であれば、適宜選択できる。具材は、後にボイル処理された肉、つゆとともに袋詰めして加熱処理された際に、十分な調理ができる程度に必要に応じて前処理される。なお、玉ねぎは、乳酸カルシウムの存在下に加熱してもよい。
【0025】
次に、肉類を含む具材は、つゆとともに、充填(袋詰め)される。充填される袋は、シールできる袋であれば特に限定されないが、レトルトパウチが好ましく例示される。丼のつゆは、注ぎ足し仕込みをせずに、バッチ単位で仕込んだものを使用し、バッチ単位で使い切りとするのが好ましい。
【0026】
具材とつゆは、袋に充填後、加熱処理により殺菌と調理を同時に行う。加熱条件は、90〜100℃程度の温度で5〜30分程度、好ましくは10〜25分程度加熱すればよい。具材の種類、形状によっては、充填袋にレトルトパウチを使用して110℃あるいは105℃などの高温高圧下でレトルト殺菌処理してもよい。牛丼や豚丼では、90〜100℃程度、好ましくは95〜100℃程度の常圧下、例えば熱湯による加熱処理を行うことで、肉類からの脂の溶出を少なくでき、具材の型くずれを防止し、肉類の脂身(特に牛脂)の臭みの発生を抑制することができる。加熱は、任意の容器で行ってもよいが、レトルト殺菌釜で加熱するのが、具材を静置して加熱殺菌するのに好ましい。
【0027】
本明細書において、「レトルト」とは、気密性容器に密封し、加圧加熱殺菌したものを意味し、気密性容器としては、缶・びん等の剛性容器、レトルトパウチのような耐熱性の柔軟性容器等が挙げられる。レトルト殺菌は、通常100℃〜130℃の高温で殺菌処理を行うことをいう。
【0028】
また、本明細書において、「レトルト殺菌釜」 とはレトルト食品を加圧加熱殺菌する製造装置のことを意味するが、レトルト殺菌釜の機構上100℃以下の任意の温度で殺菌処理を行うこともできる。
【0029】
本発明の方法では、袋内で具材が静置した状態で加熱されるため、具材が崩れることがなく、アクも発生しにくい。従来法では、肉類、玉ねぎなどの具材はつゆの中で攪拌されるため、ちぎれたりしてボリューム感が低下し、玉ねぎの場合には過加熱と攪拌のために溶けたりすることがあったが、本発明では玉ねぎの形状も保持されている。殺菌及び調理のための加熱後は、冷却、冷凍して冷凍丼の素を製造することができる。
【0030】
本発明では、レトルト殺菌釜を使用し、加熱温度を具材の種類、形状に適した任意の設定条件で殺菌兼調理を行うことにより、上述の具材安定性と伴に生産性と菌的安全性の両立を図ることができる。
【0031】
従来と本発明の製造法の違いを示す概略図を図1に示す。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例を図面に基づきより詳細に説明する。
実施例1
以下の手順に従い、本発明の冷凍牛丼の素を製造した。
(1)牛肉のボイル品(85℃、30秒)と玉ねぎ(85℃10分間熱処理)をパウチに充填
(2)規定量のつゆをポリプロピレン製レトルトパウチに充填
(3)レトルト殺菌釜(100℃)にて30分の殺菌兼調理
(4)レトルト殺菌釜(冷水)にて品温35℃未満まで冷却
(5)凍結
得られた冷凍牛丼の素について、アク、具材の形状、味などの観点から評価した。結果を表1に示す。
【0033】
なお、製品中の牛肉全体における脂身の量は40.6%であった。
比較例1
以下の手順に従い、冷凍丼の素を製造した。
(1)つゆを加熱し、牛肉と玉ねぎを入れて攪拌、調理
(2)つゆのアクを取る。
(3)つゆから牛肉、玉ねぎを取り出してレトルトパウチに充填
(4)規定量のつゆを充填する(上記(1)のもの)
(5)冷水にて品温35℃未満まで冷却
(6)凍結
得られた冷凍牛丼の素について、アク、具材の形状、味などの観点から評価した。結果を表1に示す。
【0034】
なお、製品中の牛肉全体における脂身の量は24.2%であった。
【0035】
【表1】

【0036】
実施例2
牛肉に代えて豚肉を使用した以外は、実施例1と同様な手順で冷凍豚丼の素を製造した。
【0037】
牛丼の場合と同様に、本発明の製造法を用いることで、豚肉からの豚脂の溶出が少なくなり、つゆにおけるアクや豚脂の臭みの発生が抑制され、豚肉はやわらかく、味も良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】従来と本発明の製造法の違いを示す概略図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
牛肉、豚肉又は鶏肉を含む冷凍丼の素の製造方法であって、牛肉、豚肉又は鶏肉をボイル処理してアクを除く工程、アク抜きされた牛肉、豚肉又は鶏肉を含む具材とつゆを袋詰めする工程、該袋を加熱して殺菌と調理を同時に行う工程を有する冷凍丼の素の製造方法。
【請求項2】
前記具材が玉ねぎを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
殺菌と調理のための加熱を100℃以下の温度で行う、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
殺菌と調理のための加熱を、レトルト殺菌釜でおこなう、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記丼が、牛丼、豚丼、鶏の照り焼き丼、肉じゃが、すき焼きからなる群から選ばれる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。

【図1】
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