説明

冷凍寿司の解凍方法と輸送用解凍容器

【課題】冷凍寿司を解凍した際に、寿司のご飯部分のパサつきを防止し、寿司の種部分が煮えることなく新鮮な状態を保った寿司を提供する。
【解決手段】冷凍寿司の輸送用解凍容器10は、蓋部20と器部30とから構成される本体容器12、スポンジ状の中敷14および中容器16により構成される。蓋部20の上面部22および側面部24の内側には、解凍機たる電子レンジのマイクロ波を遮断する遮蔽部28が形成されている。中容器16に配置された水を含んだスポンジ状の中敷14の上に適宜の数の寿司が配置され、急速冷凍された寿司および該中敷14を含む中容器16が、本体容器12の内部に配置される。該輸送用解凍容器10を電子レンジで解凍処理すると、マイクロ波は、本体容器12の器部30における底部34からのみ照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷凍寿司の解凍方法と輸送用解凍容器に関し、特にたとえば、冷凍寿司を解凍した際の寿司のご飯部分のパサつきを防止する冷凍寿司の解凍方法と輸送用解凍容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の冷凍寿司の解凍方法として、寿司の種の部分に対し、電子レンジによるマイクロ波の透過を遮蔽または減衰させる材料によってカバーした状態で、冷凍した寿司を電子レンジの中に置き、電子レンジをONとすることによって、握りご飯部分を10℃〜40℃とした後、電子レンジをOFFとすることによって該加熱を中止し、握りご飯部分の余熱によって寿司の種部分の解凍を行なうとした方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、上述した解凍方法を実現するために使用される解凍容器として、電子レンジの作動によって発生するマイクロ波の透過を遮蔽または減衰させる物質を素材とし、寿司の種の部分または寿司の種部分もしくは握りご飯部分の双方を収容する底部および側部を有する寿司の解凍に使用する容器からなる解凍容器が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平5−184314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された冷凍寿司の解凍方法では、電子レンジによって加熱した握りご飯部分の余熱によって、寿司の種部分の解凍を行うと、実際に寿司を食べるのに時間を要するといった問題がある。また、特許文献1に記載された冷凍寿司の解凍容器では、解凍時におけるシャリのパサつき感を防止する手段が全く採られていないといった問題がある。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、冷凍された寿司を電子レンジで解凍した際に、寿司のシャリ(寿司のご飯部)をほんのり暖かくみずみずしく湿気を帯びた状態に解凍し、ネタ(寿司の種部)は煮えることも無く新鮮な刺身のような状態で、且つみずみずしく解凍するための冷凍寿司の解凍方法と輸送用解凍容器を提供することである。
さらに、生ものの寿司をいつでもすぐに食することができ、また、そのような寿司を数ヶ月間冷凍庫保存が利くとした冷凍寿司の解凍方法と輸送用解凍容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる請求項1に記載の発明は、種部およびご飯部を有する冷凍寿司を輸送し、解凍するための輸送用解凍容器であって、上面を有する蓋部と、冷凍寿司を配置するための有底収容部を有する器部とを含み、器部の収容部には、水分を含むことが可能な中敷と、中敷を配置させるための中容器とが配置され、蓋部の上面の内側および蓋部または器部の側面の内側において、解凍機からのマイクロ波の透過を遮蔽させる素材が全面に設けられることで、器部に配置された冷凍寿司のご飯部の位置する方向からのみマイクロ波を照射し、冷凍寿司のご飯部および中敷を解凍することを特徴とする、冷凍寿司の輸送用解凍容器である。
【0008】
また、この発明にかかる請求項2に記載の発明は、輸送用解凍容器の平面視形状は、六角形以上の多角形または略円形状であることが好ましい。
さらに、この発明にかかる請求項3に記載の発明は、輸送用解凍容器の蓋部および器部は、板紙により形成されることが好ましい。
【0009】
この発明にかかる請求項4に記載の発明は、中容器の中に水分を含んだスポンジ状の中敷を配置するステップと、中敷の上に寿司を配置するステップと、寿司を急速冷凍したものを中敷とともに輸送用解凍容器の収容部に配置するステップと、解凍機からのマイクロ波の透過を上面側および側面側において遮蔽される状態とした輸送用解凍容器を準備するステップと、準備された輸送用解凍容器を解凍機の中に配置するステップと、解凍機からのマイクロ波が、輸送用解凍容器における底面方向からのみ照射され、マイクロ波により冷凍された寿司を解凍するステップとからなる、冷凍寿司の解凍方法である。
【発明の効果】
【0010】
この発明にかかる冷凍寿司の輸送用解凍容器によれば、電子レンジの中に当該輸送用解凍容器を配置したときに、マイクロ波が底部からしか照射されないことから、寿司の種部が煮えることもなく、寿司のご飯部のみを中敷に含まれている水分とともに温めることができる。
【0011】
また、この発明にかかる冷凍寿司の輸送用解凍容器の平面視形状が、六角形以上の多角形または略円形状であることから、底部からの電子レンジのマイクロ波が満遍なく冷凍寿司のご飯部付近を照射することが可能となる。
さらに、この発明にかかる冷凍寿司の輸送用解凍容器は、板紙といった安価な材料により形成されるので、使い捨ての容器として使用することができる。加えて、冷凍寿司の輸送に使用した場合でも、十分な強度でもって冷凍寿司を維持し輸送することができる。
【0012】
また、この発明にかかる冷凍寿司の解凍方法によれば、冷凍寿司のご飯部をほんのり暖かく、かつ湿気を帯びてしっとりとなるように解凍することができ、冷凍寿司の種部が少し冷たく新鮮さを保った状態で解凍することが短時間でできることから、冷凍寿司を最適な状態でかつ短時間で食することができる。
【0013】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための最良の形態の説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
まず、本願発明にかかる冷凍寿司の輸送用解凍容器について説明する。
図1は、本願発明にかかる冷凍寿司の輸送用解凍容器を示す図解図である。また、図2は、本願発明にかかる輸送用解凍容器に冷凍寿司を配置したときの斜視図解図である。図3は、本願発明にかかる輸送用解凍容器に冷凍寿司を配置したときの断面図である。
輸送用解凍容器10は、本体容器12、中敷14および中容器16により構成される。
【0015】
該本体容器12は、蓋部20と器部30とからなる。
本体容器12の平面視形状は、解凍機たる電子レンジの中で回転できるようにするため、たとえば、平面視略正六角形の形状とした容器が使用される。
本体容器12の蓋部20は、上面部22と側面部24とにより構成され、下方向に開口部をもった平面視略六角形としたものである。蓋部20を形成するための外側部26における上面部22および側面部24の内側には、図3に示すように、解凍機たる電子レンジから照射されるマイクロ波を遮断または減衰させる遮蔽部28が、たとえば、アルミ箔が、塗布または貼り付けられることによって形成されている。本願発明にかかる本体容器12の蓋部20は、たとえば、該蓋部20における内側の全面に、アルミ箔等がPETフィルムで重ね合わされることによって貼着されることにより作製される。
【0016】
本体容器12の器部30は、蓋部20と相似形の平面であり、一回り小さく形成されている。本体容器12の器部30は、底面部32と側面部34とにより構成され、上方向に開口部を有する平面視略六角形としたものである。本体容器12の蓋部20が、器部30の開口部から嵌合される。
本体容器12の器部30は、たとえば、ボール紙(板紙)により作製される。
すなわち、蓋部20および器部30により構成された本体容器12は、該本体容器12の蓋部20に形成されている遮蔽部28により、上面部22および側面部24からは解凍機たる電子レンジにより照射されるマイクロ波が遮断され、本体容器12の底面部32からのみ、マイクロ波が照射される構造となっている。
【0017】
該本体容器12の高さは、たとえば、40mmで作製されることで、冷凍寿司40の上面より、少なくとも5mm確保されている。また、本体容器12の直径は、電子レンジの中に入れたときに、回転できる大きさが確保されるように作製される。すなわち、冷凍寿司20の個数によって、サイズの大小は問わない。
本体容器12は、使い捨て容器とするため、たとえば、ボール紙(板紙)といった安価な材料を使用するのが望ましい。
作製された六角形の本体容器12の器部30の中には、スポンジ状の中敷14と共に、たとえば、PPF(ポリプロピレン)製による電子レンジ対応の中容器16が配置される。
【0018】
中容器16には、解凍機たる電子レンジより照射されるマイクロ波の影響を受けない性質で、且つ安価な材料が使用される。たとえば、直径200mm、側面高さ26mmの丸皿が使用される。そして、該中容器16の中には、たとえば、スポンジウレタンフォーム製の中敷14が一面に敷きつめられる。たとえば、直径177mm、厚さ4mmの中敷が使用される。
略平面視円形に形成された本体容器12が解凍機たる電子レンジの中で回転することで、本体容器12の器部30における底部32から透過されたマイクロ波が、冷凍された中敷14および冷凍寿司40のご飯部44に対して満遍なく照射される。
【0019】
なお、本願発明にかかる冷凍寿司の輸送用解凍容器の形状は、平面視略六角形として製作したが、それに限られるものではなく、少なくとも六角形以上の多角形でもかまわないし、円形でもかまわない。また、遮蔽部28は、本体容器12の蓋部20の側面の内側に形成するものとしたが、それに限られるものではなく、本体容器12の器部30の側面の内側に形成されてもかまわない。
【0020】
また、本願発明にかかる冷凍寿司の輸送用解凍容器、特に本体容器12は、ボール紙(板紙)により作製されたものを使用するとしたが、それに限られるものではなく、たとえば、プラスチックの容器を使用してもよい。その場合には、該プラスチックの容器のたとえば、蓋部20の内側に対して、遮蔽部28としてアルミ箔等を貼り付けることにより作製されたプラスチックの容器を準備し、使用することとなる。
【0021】
次に、上述した輸送用解凍容器を用いた冷凍寿司の製造方法について説明する。
冷凍寿司40を製造するためには、中敷14、中容器16および適宜の数の寿司が予め準備される。中敷14には、雫が垂れない程度の水分を含ませた状態にしておく。そして、該中敷14を中容器16の中に配置し、該中敷14の上に、冷凍する前の適宜な数の寿司が盛り込まれる。
寿司は、種部とご飯部とにより構成される一般的なにぎり寿司が使用される。
並べ方は、放射状に並べられてもよいし、列ごとに並べるようにして配置してもかまわないが、寿司と寿司との間隔は、まったく開けることなく隙間無く並べて置くのが望ましく、たとえば、一列当たり4つずつ、合計8個のにぎり寿司を並べて置くのが望ましい。
続いて、上述した方法により該中容器16に盛り込まれた寿司が急速冷凍されることで、冷凍寿司40が製造される。このとき、冷凍寿司40が製造されると同時に、中敷14も該中敷14に含まれた水分とともに冷凍される。
【0022】
次に、上述した方法により製造された冷凍寿司の解凍方法について説明する。
中容器16の中に中敷14とともに配置された冷凍寿司40は、本体容器12の器部30の内部に配置されたうえ、器部30は、本体容器10の蓋部20により蓋がされる。
上述の方法により準備された冷凍寿司の輸送用解凍容器を電子レンジの中に配置させた上、該電子レンジの温め機能を利用することで、たとえば、500ワットの電子レンジの場合、3分から3分15秒の時間、600ワットの電子レンジの場合、2分45秒から3分の時間、700ワットの電子レンジの場合、2分15秒から2分30秒の時間、1200ワットの電子レンジの場合、約2分の時間、該輸送用解凍容器10の底部よりマイクロ波を照射することにより加熱が行われる。
そうすると、電子レンジのマイクロ波により温める処理を行うとき、該本体容器12の蓋部20の上面部22および側面部24の内側全面には、マイクロ波を遮断するように機能する遮蔽部28としてアルミ箔がPETフィルムで重ね合わされることによって貼着されていることにより形成されているため、本体容器の上面および側面の方向からのマイクロ波は照射されることなく遮断される。結果、電子レンジによるマイクロ波は、該本体容器12の器部30における底部32からの方向のみ照射され、中敷14に含まれた冷凍された水と該中敷14の上に盛り込まれた冷凍寿司40のご飯部44とが解凍される。
【0023】
その結果、冷凍寿司40のご飯部44が温まると同時に、中敷14に含まれた水が、マイクロ波により温められることで解凍され、湿気を発生させることから、乾燥したパサパサの状態となることはなく、湿気を帯びてしっとりとなるようにご飯部44を解凍することができる。
また、温められたご飯部44の熱と器部30の底部32から照射される中敷14およびご飯部44等により減衰されたマイクロ波によって、冷凍寿司40の種部42が解凍されるので、煮えることも無く新鮮な刺身状態で、且つみずみずしく、該種部42を解凍することができる。
【0024】
本願発明にかかる冷凍寿司の輸送用解凍容器によると、電子レンジの中に冷凍寿司の輸送用解凍容器10を配置したときに、マイクロ波が本体容器12の器部30における底部32からのみ照射されることから、冷凍寿司40の種部42に直接マイクロ波が照射されることがないため、該種部42は煮えることなく、冷凍寿司40のご飯部44および中敷14に含まれている水を温めることができる。
【0025】
また、本願発明にかかる冷凍寿司の輸送用解凍容器によると、本体容器12の平面視形状が六角形以上の多角形または略円形状に形成されることから、器部30の底部32からの電子レンジのマイクロ波が満遍なく冷凍寿司40のご飯部44を照射することが可能となる。
さらに、この発明にかかる冷凍寿司の輸送用解凍容器によると、本体容器12は、板紙といった安価な材料により形成されるので、使い捨ての容器として使用することができる。
【0026】
本願発明にかかる冷凍寿司の解凍方法によると、解凍された冷凍寿司40のご飯部44は、ほんのり暖かく湿気を帯びてしっとりとしており、解凍された冷凍寿司40の種部42は、少し冷たく新鮮さを保った状態であることから、にぎりたての感覚とした寿司を提供することができる。
【0027】
また、本願発明にかかる冷凍寿司の解凍方法によると、冷凍寿司40を短時間で解凍することが可能であり、さらに、上述したような状態の寿司を確保することが可能であることから、効率的に冷凍寿司を食することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態にかかる冷凍寿司の輸送用解凍容器の分解斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる冷凍寿司の輸送用解凍容器の斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる冷凍寿司の輸送用解凍容器の断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 輸送用解凍容器
12 本体容器
14 中敷
16 中容器
20 蓋部
22 上側部
24 側面部
26 外側部
28 遮蔽部
30 器部
32 底部
34 側面部
40 冷凍寿司
42 種部
44 ご飯部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種部およびご飯部を有する冷凍寿司を輸送し、解凍するための輸送用解凍容器であって、
上面を有する蓋部と、
前記冷凍寿司を配置するための有底収容部を有する器部とを含み、
前記器部の収容部には、
水分を含むことが可能な中敷と、
前記中敷を配置させるための中容器とが配置され、
前記蓋部の上面の内側および前記蓋部または前記器部の側面の内側において、解凍機からのマイクロ波の透過を遮蔽させる素材が全面に設けられることで、前記器部に配置された冷凍寿司のご飯部の位置する方向からのみマイクロ波を照射し、前記冷凍寿司のご飯部および前記中敷を解凍することを特徴とする、冷凍寿司の輸送用解凍容器。
【請求項2】
前記輸送用解凍容器の平面視形状は、
六角形以上の多角形または略円形状であることを特徴とする、請求項1に記載の冷凍寿司の輸送用解凍容器。
【請求項3】
前記輸送用解凍容器の蓋部および器部は、板紙により形成されることを特徴とする、請求項1および2に記載の冷凍寿司の輸送用解凍容器。
【請求項4】
中容器の中に水分を含んだスポンジ状の中敷を配置するステップと、
中敷の上に寿司を配置するステップと、
寿司を急速冷凍したものを中敷とともに輸送用解凍容器の収容部に配置するステップと、
解凍機からのマイクロ波の透過を上面側および側面側において遮蔽される状態とした前記輸送用解凍容器を準備するステップと、
前記準備された輸送用解凍容器を解凍機の中に配置するステップと、
前記解凍機からのマイクロ波が、前記輸送用解凍容器における底面方向からのみ照射され、前記マイクロ波により前記冷凍された寿司を解凍するステップとからなる、冷凍寿司の解凍方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−137493(P2007−137493A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336236(P2005−336236)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【出願人】(506304255)
【Fターム(参考)】