説明

冷凍空調機用油の補充装置

【課題】保守時に、スクリュー型の圧縮機に冷凍空調機用油を補充することができるとともに、その圧縮機の冷凍空調機用油を交換することもできる冷凍空調機用油の補充装置を提供する。
【解決手段】補充装置10は、圧縮機を含む冷凍空調機から回収する廃油を収容する廃油室12と、廃油室12と連通管16を介して連通し、冷凍空調機へ補充する補充油を収容する補充油室14と、廃油室12の上方領域に接続されるとともに、圧縮機の高圧側に接続可能な高圧バルブ18と、補充油室14の底部に接続されるとともに、圧縮機の低圧側に接続可能な低圧バルブ24とを有する。そして、連通管16は、廃油室12と補充油室14の頂部にそれぞれ接続される。このような構成により、圧縮機に油を補充することができるとともに、その圧縮機の油を交換することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍空調機の保守時に、圧縮機に冷凍空調機用油を補充する可搬式の補充装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、冷媒回路を有し、この回路で冷媒を循環させて、対象空間を冷却する冷凍機又は空調機などの冷凍空調機が知られている。この冷凍空調機の構成の一例について図6を用いて説明する。
【0003】
冷凍空調機110は、冷媒が循環する冷媒回路112を有する。冷媒回路112には、圧縮機114と凝縮器116と、膨張弁118と、冷却器120と、アキュムレータ122とが順に並んで配置される。
【0004】
圧縮機114は、流入する低圧の気体冷媒を圧縮して高圧の気体冷媒にする。凝縮器116は、圧縮機114により高圧状態にされた気体冷媒から熱を奪って液化させる。膨張弁118は、凝縮器116からの高圧の液体冷媒を膨張させて低圧の液体冷媒にする。
【0005】
冷却器120は、膨張弁118により低圧状態にされた液体冷媒を気化させる。この気化の際の吸熱作用により、周囲の空気を冷却する。冷却器120に設けられる送風機124が、この冷却された空気を環境試験室に送り出す。
【0006】
アキュムレータ122は、冷却器120で気化しなかった液体冷媒を貯める容器である。アキュムレータ122は、気体冷媒に混合する液体冷媒を除去して貯めることで、圧縮機114への液体冷媒の流入を防ぎ、圧縮機114の故障を防止する。
【0007】
このように構成される冷凍空調機110においては、冷媒回路112を循環する冷媒が、冷却器120で対象空間内の熱を奪い、その熱を凝縮器116で、例えば外部に放熱することで、対称空間内の冷却を行なうことができる。
【0008】
一般的に、圧縮機には、この内部を潤滑する潤滑油として、冷凍空調機用油が充填されている。この油は、例えばエステル油であり、冷媒(R−407C,R−404Aなど)に溶け込みやすい特性を有している。この特性により、油が冷媒とともに冷媒回路内に供給されてしまい、圧縮機内における潤滑性が低下してしまうという問題がある。そこで、作業員が、保守時に、可搬式の油補充装置により圧縮機に油を補充している。
【0009】
下記特許文献1には、圧縮機の持つ高圧と低圧の差圧を利用して、圧縮機のクランク室に油を補充する冷凍機油の補充装置が記載されている。この補充装置は、ケース本体と、ケース本体内を気体室と液体室とに隔絶するとともにそれらの室の容積を可変するシリンダー部とを有する。気体室が、ホースを介して圧縮機の高圧側に接続され、補充用の油で満たされた液体室が、ホースを介して圧縮機の低圧側に接続される。
【0010】
このような構成で、両室と圧縮機をそれぞれ連通させることにより、両室の圧力が均衡するまでシリンダー部が液体室側へと移動する。このシリンダー部の移動により液体室の容積が小さくなるので、ポンプ等の動力を使用しなくとも、その液体室内の油が押し出されて圧縮機のクランク室に補充される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4015457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1のような冷凍機油の補充装置においては、圧縮機に油を補充することができる。しかしながら、圧縮機内の油が劣化して交換を必要とするとき、その補充装置だけでは、圧縮機内の油を交換することができない。このため、油の交換作業には、補充装置のほかに、圧縮機内の油を回収する回収装置が必要になってしまう。そうすると、油の交換作業では、作業場所まで、2つの装置を搬送しなければならず、手間がかかってしまう。また、油の交換作業では、圧縮機と各装置との着脱が少なくとも計2回必要となり、作業時間がかかってしまうという問題がある。特に、圧縮機内にオイルパンが設けられていない、スクリュー型の圧縮機においては、レシプロ型の圧縮機のようにオイルパンから容易に油を抜くことができず、油の交換作業に手間がかかってしまうという問題がある。
【0013】
本発明の目的は、保守時に、スクリュー型の圧縮機に冷凍空調機用油を補充することができるとともに、その圧縮機の冷凍空調機用油を交換することもできる冷凍空調機用油の補充装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の冷凍空調機用油の補充装置は、スクリュー型圧縮機を含む冷凍空調機から回収する廃油を収容する廃油室と、廃油室と連通管を介して連通し、冷凍空調機へ補充する補充油を収容する補充油室と、廃油室の上方領域に接続されるとともに、前記圧縮機の高圧側に接続可能な高圧バルブと、補充油室の底部に接続されるとともに、前記圧縮機の低圧側に接続可能な低圧バルブと、を有し、連通管は、廃油室と補充油室の頂部にそれぞれ接続されることを特徴とする。
【0015】
また、高圧バルブに接続する廃油室の空間と、連通管に接続する廃油室の空間とを隔てるように設けられ、補充油室側への廃油の通過を防止するデミスタを有することができる。
【0016】
また、補充油室に接続されるとともに、補充油の供給源に接続可能な供給バルブを有することができる。
【0017】
また、補充油室の頂部または連通管のいずれかに接続されるとともに、各室内の気体を吸引する吸引源に接続可能な吸引バルブを有することができる。
【0018】
また、吸引バルブとの接続部より廃油室側の連通管には、この連通管を開閉可能な開閉バルブが設けられることが好適である。
【0019】
また、連通管における開閉バルブより補充油室側に、圧力計が設けられることが好適である。
【0020】
また、廃油室の底部に接続されるとともに、廃油室の廃油を回収する回収源に接続可能な回収バルブを有することができる。
【0021】
また、廃油室と補充油室とは同じ形状であるとともに、これらの室の底部が同一の水平面に位置するように設けられ、廃油室と補充油室に油面計が設けられることが好適である。
【0022】
また、補充油室には、油面の位置を計測するフロートが設けられることが好適である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の冷凍空調機用油の補充装置によれば、保守時に、スクリュー型の圧縮機に冷凍空調機用油を補充することができるとともに、その圧縮機の冷凍空調機用油を交換することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態に係る冷凍空調機用油の補充装置の構成を示す図である。
【図2】冷凍空調機用油を補充する補充作業手順を示す表である。
【図3】図2のステップCにおける状態を示す図である。
【図4】冷凍空調機用油を交換する交換作業手順を示す表である。
【図5】図4のステップEにおける状態を示す図である。
【図6】冷凍空調機の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る冷凍空調機用油の補充装置の実施形態について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る冷凍空調機用油の補充装置の構成を示す図である。
【0026】
冷凍空調機用油の補充装置(以下、単に「補充装置」と記す)10は、保守時に、冷凍空調機のスクリュー型圧縮機(以下、単に「圧縮機」と記す)に冷凍空調機用油を補充する装置であるとともに、その圧縮機の冷凍空調機用油を交換する装置としても使用可能である。冷凍空調機用油(以降、単に「油」と記す)は、例えばエステル油であり、冷凍空調機の冷媒回路に使用される冷媒(R−407C,R−404Aなど)に溶け込みやすい特性を有している。
【0027】
補充装置10は、冷凍空調機(図示せず)から回収する油を収容する廃油室12と、冷凍空調機へ補充する油を収容する補充油室14とを有する。廃油室12と補充油室14は、連通管16を介して連通する。冷凍空調機から回収する油は、回収後に廃棄する油であるので、この油を以降、廃油と記す。一方、冷凍空調機に補充する油を、廃油と区別すべく以降、補充油と記す。
【0028】
廃油室12は、ボンベなどの耐圧力容器であり、所定の正圧又は負圧にも耐え得る容器である。廃油室12には、廃油の油面の位置が目視可能な油面計12aが設けられる。この油面計12aは、ガラス、アクリルなどの透明度の高い材質からなり、廃油室12に回収された廃油量が視認できる。油面計12aは、少なくとも、廃油室12の廃油の油面が最も高いレベル、すなわち満油レベルを視認可能に設けられることが好適である。
【0029】
廃油室12には、これの上方領域に、圧縮機の高圧側(図示せず)に接続可能な高圧バルブ18が接続される。上方領域とは、満油レベルより上方の領域のことである。高圧バルブ18と廃油室12との間の流路には、廃油に含まれる水分を除去する水分除去装置19が配置される。高圧バルブ18と圧縮機の高圧側とはホースを介して接続されるので、高圧バルブ18の端部に、そのホースとの着脱が容易な接続用ポートが設けられることが好適である。
【0030】
また、廃油室12には、これの底部に、廃油室12の廃油を回収する回収源(図示せず)に接続可能な回収バルブ20が接続される。回収源は、密閉可能なタンクからなる廃油容器である。回収バルブ20と廃油室12との間の流路には、この流路を流れる廃油の状況が目視可能な油面計22が設けられる。この油面計22は、ガラス、アクリルなどの透明度の高い材質からなり、回収源に回収される廃油の状況が視認できる。回収バルブ20と回収源とはホースを介して接続されるので、回収バルブ20の端部に、そのホースとの着脱が容易な接続用ポートが設けられることが好適である。なお、本実施形態においては、廃油室12に回収バルブ20が接続される場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、廃油室12が回収源を兼ねるのであれば、回収バルブ20を設けなくてもよい。
【0031】
さらに、廃油室12には、冷媒などの気体は通過させるが、廃油の通過を防止するフィルターであるデミスタ23が設けられる。デミスタ23は、高圧バルブ18に接続する廃油室12の空間と、連通管16に接続する廃油室12の空間とを隔てるように設けられる。この構成により、補充油室14側への廃油の通過を防止することができる。具体的には、デミスタ23は、圧縮機の高圧側から高圧バルブ18を介して廃油室12に廃油が流入する空間と、連通管16に接続する空間とを隔てているので、廃油室12に流入した廃油が連通管16を通って補充室14側へ流れ込むことを防止することができる。なお、本実施形態においては、廃油室12にデミスタ23を設ける場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、交換作業において、廃油の一部が補充油に混合してしまうことが許容可能であれば、デミスタ23を設けなくてもよい。
【0032】
補充油室14は、廃油室12と同様に、ボンベなどの耐圧力容器であり、所定の正圧又は負圧にも耐え得る容器である。補充油室14には、補充油の油面の位置が目視可能な油面計14aが設けられる。この油面計14aは、ガラス、アクリルなどの透明度の高い材質からなり、廃油室12に回収された廃油量が視認できる。油面計14aは、少なくとも、補充油室14の補充油の油面が最も高いレベル、すなわち満油レベルを視認可能に設けられることが好適である。また、補充油室14には、補充油の油面の位置を計測するフロート14bが設けられる。このフロート14bは、補充油室14内の補充油の油面が最も低いレベル、すなわち減油レベルを計測する。
【0033】
補充油室14には、これの底部に、圧縮機の低圧側(図示せず)に接続可能な低圧バルブ24が接続される。低圧バルブ24と補充油室14との間の流路には、この流路を流れる補充油の状況が目視可能な油面計26が設けられる。この油面計26は、ガラス、アクリルなどの透明度の高い材質からなり、回収源に回収される廃油の状況が視認できる。低圧バルブ24と圧縮機の低圧側とはホースを介して接続されるので、低圧バルブ24の端部に、そのホースとの着脱が容易な接続用ポートが設けられることが好適である。
【0034】
また、補充油室14には、補充油の供給源(図示せず)に接続可能な供給バルブ28が接続される。供給源は、密閉可能なタンクからなる補充油容器である。供給バルブ28と供給源とはホースを介して接続されるので、供給バルブ28の端部に、そのホースとの着脱が容易な接続用ポートが設けられることが好適である。また、供給バルブ28と補充油室14との間の流路は、図1に示されるように、低圧バルブ24と補充油室14との間の流路を共用することも可能である。この構成により、油面計26も共用することができ、部品点数を削減することができる。なお、本発明はこの構成に限定されず、供給バルブ28が単独の流路を介して補充油室14に接続されてもよく、その接続領域は、補充油室14の底部の限らず、さらに上方であってもよい。なお、本実施形態においては、補充油室14に供給バルブ28が接続される場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、補充油室14が供給源を兼ねるのであれば、供給バルブ28を設けなくてもよい。
【0035】
廃油室12と補充油室14とは、同じ形状であるとともに、これらの室12,14の底部が同一の水平面に位置するように設けられることが好適である。このように構成されることにより、油面計12a,14aを介して、互いの室12,14の油面を目視するだけで、室12,14内の各油量を容易に比較することができる。
【0036】
連通管16は、廃油室12と補充油室14の頂部にそれぞれ接続される。この構成により、廃油室12が廃油を収容する容積と、補充油室14が補充油を収容する容積とを、ともに最大限に確保することができる。このとき、廃油容量の確保のため、廃油室12内のデミスタ23が、廃油室12の頂部付近に設けられることが好適である。
【0037】
連通管16には、この連通管16を開閉可能な開閉バルブ30と、この開閉バルブ30より補充油室14側に、この管内と補充油室14内の圧力を計測する圧力計32とが設けられる。なお、圧力計32の位置は一例であって、補充油室14内の圧力が計測可能であれば、その位置はどこでもよく、直接に補充油室14に設けられてもよい。なお、本実施形態においては、開閉バルブ30が連通管16に設けられる場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、廃油室12と補充油室14を仕切る必要がなければ、開閉バルブ30を設けなくてもよい。
【0038】
また、連通管16には、開閉バルブ30より補充油室14側に、各室12,14内の気体を吸引する吸引源(図示せず)に接続可能な吸引バルブ34が接続される。吸引源は、真空ポンプと冷媒回収装置である。吸引バルブ34と吸引源とはホースを介して接続されるので、吸引バルブ34の端部に、そのホースとの着脱が容易な接続用ポートが設けられることが好適である。なお、吸引バルブ34の位置は一例であって、開閉バルブ30より補充油室14側であれば、その位置はどこでもよく、直接に補充油室14に接続されてもよい。補充作業においては、後述のように、この吸引バルブ34と圧縮機の高圧側とを接続することもできる。なお、本実施形態においては、吸引バルブ34が設けられる場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、補充油室14が供給源と冷媒回収装置とを兼ねるのであれば、吸引バルブ34を設けなくてもよい。
【0039】
次に、このように構成される補充装置10に用いた、油を補充する補充作業手順の一例について、図2,3を用いて説明する。図2は、冷凍空調機用油を補充する補充作業手順を示す表であり、図3は、図2のステップCにおける状態を示す図である。なお、この補充作業手順においては、低圧バルブ24が圧縮機の低圧側に接続され、供給バルブ28が補充油容器に接続され、そして吸引バルブ34が真空ポンプに接続された状態で、全てのバルブ18,20,24,28,30,34が全閉である状態をスタートの時点とする。そして、このときの廃油室12と補充油室14はともに空である。
【0040】
まず、ステップAにおいて、吸引バルブ34を開き、真空ポンプを動作させて、補充油室14を真空引きする。そして、ステップBで、供給バルブ28を開き、補充油容器から補充油室14へ補充油を供給する。このとき、真空ポンプの動作により、補充油室14は減圧されているので、圧力差により、スムーズに補充油が供給される。そして、ステップCで、油面計14aからの目視により、補充油が所定量供給されたことを確認する(例えば図3に示される状態)と、吸引バルブ34と供給バルブ28と閉じて、真空引きと補充油の供給を停止する。
【0041】
ステップCからステップDの間に、吸引バルブ34と圧縮機の高圧側とを接続する。そして、ステップDにおいて、吸引バルブ34を開き、圧縮機の高圧側から供給される冷媒により補充油室14が加圧される。そして、ステップEで低圧バルブ24を開く。そうすると、圧縮機の高圧側と同じ圧力まで加圧された補充室14と、圧縮機の低圧側との圧力差により、補充油室14の補充油が圧縮機の低圧側へ流れ、その低圧側に補充油を補充する。そして、フロート14bの動作により、所定量の補充油が圧縮機に補充されたことを確認すると、ステップFでは、吸引バルブ34を閉じて、補充油室14への加圧を停止し、ステップGで、圧縮機への補充油の補充を停止する。
【0042】
ステップGからステップHの間に、吸引バルブ34と冷媒回収装置とを接続する。そして、ステップHにおいて、吸引バルブ34を開き、冷媒回収装置により補充油室14内の冷媒を回収し、ステップIにおいて、吸引バルブ34を閉じ、冷媒回収を停止して、作業が終了する。
【0043】
このように、本実施形態の補充装置10によれば、圧縮機の高圧側と吸引バルブ34との着脱、および圧縮機の低圧側と低圧バルブ24との着脱行為は、従来の補充作業と同様に1回のみで、冷凍空調機に油を補充することができる。
【0044】
次に、上述のように構成される補充装置10に用いた、油を交換する交換作業手順の一例について、図4,5を用いて説明する。図4は、冷凍空調機用油を交換する交換作業手順を示す表であり、図5は、図4のステップEにおける状態を示す図である。なお、この交換作業手順においては、高圧バルブ18が圧縮機の高圧側に接続され、回収バルブ20が廃油容器に接続され、低圧バルブ24が圧縮機の低圧側に接続され、供給バルブ28が補充油容器に接続され、そして吸引バルブ34が真空ポンプに接続された状態で、全てのバルブ18,20,24,28,30,34が全閉である状態をスタートの時点とする。そして、このときの廃油室12と補充油室14はともに空である。
【0045】
まず、ステップAにおいて、開閉バルブ30と吸引バルブ34を開き、真空ポンプを動作させて、廃油室12と補充油室14を真空引きする。そして、ステップBで、供給バルブ28を開き、補充油容器から補充油室14へ補充油を供給する。このとき、真空ポンプの動作により、補充油室14などは減圧されているので、圧力差により、スムーズに補充油が補充油室14に供給される。そして、ステップCで、油面計14aからの目視により、補充油が所定量供給されたことを確認すると、吸引バルブ34と供給バルブ28と閉じて、真空引きと補充油の供給を停止する。このステップCの後、後述するステップJまでの間に、吸引バルブ34と冷媒回収装置とを接続する。
【0046】
ステップDにおいて、低圧バルブ24を開き、圧縮機の低圧側から供給される冷媒により廃油室12と補充油室14を加圧する。そして、ステップEでは、高圧バルブ18を開き、圧縮機の高圧側から廃油室12に廃油が供給されるとともに、圧縮機の高圧側から廃油室12に供給される冷媒により廃油室12が加圧される。さらに、その冷媒により、連通管16を介して、補充油室14も加圧される。そうすると、圧縮機の高圧側と同じ圧力まで加圧された補充室14と、圧縮機の低圧側との圧力差により、補充油室14の補充油が圧縮機の低圧側へ流れ、その低圧側に補充油を補充する(例えば図5に示される状態)。
【0047】
そして、油面計12aからの目視により、廃油が所定量回収されたことを確認すると、ステップFでは、高圧バルブ18と吸引バルブ34を閉じて、圧縮機からの廃油の回収を停止するとともに、補充油室14への加圧も停止するので、補充油室14の圧力を低下させる。そして、ステップGで、低圧バルブ24を閉じ、圧縮機への補充油の補充を停止する。回収される廃油の所定量は、通常、ステップCにおける補充油の所定量と同等であるので、これらの所定量は、油面計12a,14aから視認される油面により容易に確認できる。
【0048】
そして、ステップHにおいて、回収バルブ20を開き、廃油容器に、廃油室12の廃油を回収する。そして、ステップIで、油面計22からの目視により、廃油が流路を流れていないことを確認すると、回収バルブ20を閉じて、廃油回収を停止する。
【0049】
そして、ステップJにおいて、吸引バルブ34を開き、冷媒回収装置により廃油室12と補充油室14内の冷媒を回収し、ステップKにおいて、開閉バルブ30と吸引バルブ34を閉じ、冷媒回収を停止して、作業が終了する。
【0050】
このように、本実施形態の補充装置10によれば、圧縮機の高圧側と高圧バルブ18との着脱、および圧縮機の低圧側と低圧バルブ24との着脱行為は、補充作業と同様に単に1回のみで、冷凍空調機に油を交換することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 冷凍空調機用油の補充装置、12 廃油室、14 補充油室、16 連通管、18 高圧バルブ、20 回収バルブ、22,26 油面計、23 デミスタ、24 低圧バルブ、28 供給バルブ、30 開閉バルブ、32 圧力計、34 吸引バルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリュー型圧縮機を含む冷凍空調機から回収する廃油を収容する廃油室と、
廃油室と連通管を介して連通し、冷凍空調機へ補充する補充油を収容する補充油室と、
廃油室の上方領域に接続されるとともに、前記圧縮機の高圧側に接続可能な高圧バルブと、
補充油室の底部に接続されるとともに、前記圧縮機の低圧側に接続可能な低圧バルブと、
を有し、
連通管は、廃油室と補充油室の頂部にそれぞれ接続される、
ことを特徴とする冷凍空調機用油の補充装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷凍空調機用油の補充装置において、
高圧バルブに接続する廃油室の空間と、連通管に接続する廃油室の空間とを隔てるように設けられ、補充油室側への廃油の通過を防止するデミスタを有する、
ことを特徴とする冷凍空調機用油の補充装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の冷凍空調機用油の補充装置において、
補充油室に接続されるとともに、補充油の供給源に接続可能な供給バルブを有する、
ことを特徴とする冷凍空調機用油の補充装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の冷凍空調機用油の補充装置において、
補充油室の頂部または連通管のいずれかに接続されるとともに、各室内の気体を吸引する吸引源に接続可能な吸引バルブを有する、
ことを特徴とする冷凍空調機用油の補充装置。
【請求項5】
請求項4に記載の冷凍空調機用油の補充装置において、
吸引バルブとの接続部より廃油室側の連通管には、この連通管を開閉可能な開閉バルブが設けられる、
ことを特徴とする冷凍空調機用油の補充装置。
【請求項6】
請求項5に記載の冷凍空調機用油の補充装置において、
連通管における開閉バルブより補充油室側に、圧力計が設けられる、
ことを特徴とする冷凍空調機用油の補充装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の冷凍空調機用油の補充装置において、
廃油室の底部に接続されるとともに、廃油室の廃油を回収する回収源に接続可能な回収バルブを有する、
ことを特徴とする冷凍空調機用油の補充装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の冷凍空調機用油の補充装置において、
廃油室と補充油室とは同じ形状であるとともに、これらの室の底部が同一の水平面に位置するように設けられ、
廃油室と補充油室に油面計が設けられる、
ことを特徴とする冷凍空調機用油の補充装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の冷凍空調機用油の補充装置において、
補充油室には、油面の位置を計測するフロートが設けられる、
ことを特徴とする冷凍空調機用油の補充装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−184904(P2012−184904A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49883(P2011−49883)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)