説明

冷凍空調用圧縮機及び冷凍空調装置

【課題】冷媒としてジフルオロメタン(HFC32)を用いた冷凍空調用圧縮機の耐摩耗性を向上して長期信頼性を高めるとともに、この圧縮機を用いた冷凍空調機器の高効率化を実現する。
【解決手段】摺動部を有する冷媒圧縮部を備え、冷媒であるジフルオロメタンと、冷凍機油とを封入した冷凍空調用圧縮機であって、前記冷凍機油は、40℃における動粘度が40〜100mm/sであり、前記冷凍機油が環状ケタール化合物もしくは環状アセタール化合物であり、冷媒と冷凍機油との低温側臨界溶解温度を−10℃以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプサイクルを用いた冷凍空調用圧縮機及び冷凍空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍空調機器分野においては、地球環境対策のためにオゾン層破壊物質冷媒や断熱材に用いられていたCFC(Chlorofluorocarbons)や、HCFC(Hydrochlorofluorocarbons)の代替、並びに、地球温暖化対策としての高効率化や、冷媒に用いられているHFC(Hydrofluorocarbons)の代替が積極的に進められてきた。
【0003】
オゾン層破壊物質であるCFCやHCFCの代替としては、オゾン層を破壊しないこと、毒性や燃焼性が低いこと、及び効率を確保できることを主眼として、冷媒及び断熱材の選定並びに機器開発が進められた。その結果、冷蔵庫の断熱材においては、CFC11をHCFC141b、シクロペンタンの順に発泡剤を代替していき、現在は、真空断熱材との併用に移行している。
【0004】
冷媒としては、冷蔵庫やカーエアコンにおいてCFC12CをHFC134a(GWP(Global Warming Potential)=1430)の順に代替し、ルームエアコンやパッケージエアコンにおいてHCFC22をR410A(HFC32/HFC125(50/50重量%)混合物:GWP=2088)に代替した。
【0005】
しかし、1997年に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で、HFC排出量が温室効果ガスとしてCO換算されて規制対象となったため、HFCの削減が進められることとなった。
【0006】
そこで、家庭用冷蔵庫においては、冷媒封入量が少なく、可燃性冷媒も製造上使用可能と判断され、HFC134aを可燃性のR600a(イソブタン:GWP=3)へと代替した。さらに、世論の高まりにより、現在は、カーエアコン用のHFC134a並びにルームエアコン及びパッケージエアコン用のR410Aにも目が向けられている。また、業務用冷蔵庫においては、冷媒封入量が多く、可燃性冷媒を封入した場合のリスクから、現在でもHFC134aが使用されている。
【0007】
現実には、2001年に施行された家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)や、2003年施行の自動車リサイクル法(使用済自動車の再資源化等に関する法律)により機器のリサイクルが義務化され、冷媒として用いられているHFC等が回収され処理されているため、HFC等の直接的な大気放出量は削減されている。しかし、EU(欧州連合)は、2006年指令(Directive 2006/40/EC)において、2011年1月出荷から、カーエアコンに用いる冷媒としてGWP>150の冷媒の使用を禁じた。これを受けて、カーエアコン業界では様々な動きをみせており、ルームエアコンでもR410Aがいずれは規制されるのではないかという懸念が生じている。前記EU指令に基づき、2011年に定置型エアコンを含めた規制見直しの可能性もあり、代替冷媒の検討が加速している。
【0008】
これらの代替冷媒としては、HFC134aと同等の熱物性を有し、低GWP、低毒性、低可燃性などの理由から、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234yf(Hydrofluoroolefine)(GWP=4)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234ze)(GWP=10)、若しくはジフルオロメタン(HFC32)の単独冷媒、又はこれらの混合冷媒が候補とされている。2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと混合する冷媒としては、ジフルオロメタン(HFC32)が主である。
【0009】
さらに、低燃焼性のために許容されるGWPによっては、HFC134aやHFC125を混合することも考えられる。
【0010】
その他の冷媒としては、プロパン、プロピレンなどのハイドロカーボン、及びフルオロエタン(HFC161)、ジフルオロエタン(HFC152a)などの低GWPのハイドロフルオロカーボンが挙げられている。これらの冷媒候補の中で、可燃性、冷暖房能力、非共沸冷媒温度勾配による機器効率低下、取り扱い易さ、冷媒コスト、さらに前記冷媒物性に基づく機器の変更(開発)などを考慮すると、ジフルオロメタン(HFC32)が最も良いと思われ、本冷媒を用いたルームエアコン、パッケージエアコンの開発が急務である。
ジフルオロメタン冷媒用の冷凍機油として、特許文献1及び特許文献2に、ジフルオロメタンに対して相溶性を示すポリオールエステル油が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−235960号公報
【特許文献2】特開2002−129178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
パッケージエアコンやマルチタイプエアコンでは、サイクルを構成する配管が長く、一台当たりの冷媒の封入量が多いため、可燃性が高い冷媒を用いることが困難であると考えられる。また、配管が長いため、冷媒との相溶性に優れる冷凍機油を用いる必要がある。
また、冷凍機油は、密閉型電動圧縮機に使用され、その摺動部の潤滑、密封、冷却等の役割を果たすものである。冷凍空調用冷凍機油で最も重要な特性は、冷媒との相溶性であり、室外機に配置される圧縮機内で液冷媒と冷凍機油の二層分離が発生すると、各摺動部に分離した液冷媒が供給されてしまい、潤滑不良を起こす懸念がある。さらに、圧縮機運転中に機械的な作用により冷凍機油がミスト状となってサイクル側に吐出されるが、相溶性が劣ると、サイクルの低温部で冷凍機油が滞留してしまい、圧縮機への油戻り量が減少する。特に、パッケージエアコンやマルチタイプエアコンでは、サイクルを構成する配管が長いため、冷媒との相溶性に優れる冷凍機油を用いる必要がある。
【0013】
特許文献1,2には、冷凍機油として、ジフルオロメタンに対して相溶性を示すポリオールエステル油が示されているが、冷凍空調用圧縮機の長期信頼性及び油戻り特性を確保するためには、ジフルオロメタンに対しての相溶性がまだ十分ではなく、より相溶性に優れた冷凍機油を用いることが求められる。
【0014】
このように従来の冷凍機油では、ジフルオロメタンに対しての相溶性が十分ではないため、潤滑不良を起こす懸念があり、特に、サイクルを構成する配管が長いパッケージエアコンやマルチタイプエアコンには適していない。
【0015】
本発明の目的は、冷媒としてジフルオロメタン(HFC32)を用いた冷凍空調用圧縮機の耐摩耗性を向上して長期信頼性を高めるとともに、この圧縮機を用いた冷凍空調機器の高効率化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、摺動部を有する冷媒圧縮部を備え、冷媒であるジフルオロメタンと、冷凍機油とを封入した冷凍空調用圧縮機において、
前記冷凍機油は、40℃における動粘度が40〜100mm/s(秒)であり、下記化学式(1)で表わされる化合物(式中、R〜R2は、水素もしくは炭素数1〜3のアルキル基を表す。)を基油とすることを特徴とする。
【0017】
【化1】

本発明は、摺動部を有する冷媒圧縮部を備え、冷媒であるジフルオロメタンと、冷凍機油とを封入した冷凍空調用圧縮機において、
前記冷凍機油は、下記化学式(1)で表される40℃における動粘度が40〜100mm/sの化合物(式中、R〜R2は、水素もしくは炭素数1〜3のアルキル基を表す。)からなる基油と、下記化学式(2)で表される添加ポリオールエステル油(式中、Rは炭素数7〜9のアルキル基を表す。)を含み、前記添加ポリオールエステル油の組成が1〜10重量%であることを特徴とする。
【0018】
【化2】

【0019】
【化3】

また、上記に記載の冷凍空調用圧縮機において、前記冷媒と冷凍機油との低温側臨界溶解温度が−10℃以下であることを特徴とする。
【0020】
本発明は、摺動部を有する冷媒圧縮部を備え、冷媒であるジフルオロメタンと、冷凍機油とを封入した冷凍空調用圧縮機において、前記冷凍機油は、40℃における動粘度が40〜100mm/sであり、前記冷凍機油が環状ケタール化合物もしくは環状アセタール化合物であり、冷媒と冷凍機油との低温側臨界溶解温度を−10℃以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、冷媒としてジフルオロメタンを用いた冷凍空調用圧縮機の長期信頼性及び油戻り特性を確保しつつ、環境に配慮した冷凍空調装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ルームエアコンの構成を示す概略図である。
【図2】ルームエアコン用のスクロール式密閉型圧縮機を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る冷凍空調用圧縮機及びこれを用いた冷凍空調装置について説明する。
【0024】
前記冷凍空調用圧縮機は、摺動部を有する冷媒圧縮部を備え、冷媒であるジフルオロメタンと、冷凍機油とを封入したものである。ここで、冷凍機油は、40℃における動粘度が40〜100mm/sであり、冷媒と冷凍機油との低温側臨界溶解温度は−10℃以下である。因みに、空調機用の冷凍機サイクルの蒸発器においては、冷房温度で−10℃以下が要求される。
【0025】
前記冷凍空調用圧縮機において、冷凍機油は、環状ケタール化合物もしくは環状アセタール化合物である。
【0026】
前記冷凍空調用圧縮機において、冷凍機油は、下記化学式(1)で表される化合物(式中、R〜R2は、水素もしくは炭素数1〜3のアルキル基を表す。)からなる群から選択される少なくとも一種類を基油として含む。
【0027】
【化4】

前記冷凍空調装置は、前記冷凍空調用圧縮機を用いたものである。前記冷凍空調用圧縮機は、モータが内蔵されたスクロール式もしくはロータリー式密閉型圧縮機であり、冷凍機油の40℃における動粘度が40〜100mm/s以下である。
【0028】
以下、実施例を用いて詳細に説明する。
【0029】
実施例は、ジフルオロメタンを用いた圧縮機及びこれを用いた冷凍空調装置について開示するものである。
【0030】
実施例の冷媒は、ジフルオロメタンであり、冷凍機油は、環状ケタール化合物もしくは環状アセタール化合物であり、これらは多価アルコールとケトンもしくはアルデヒドとの縮合反応によって得られる。原料となる多価アルコールとケトンもしくはアルデヒドは、反応生成物として得られる動粘度、引火点、沸点、純度、冷媒との相溶性、電気絶縁性などから決めることが望ましい。多価アルコールは、4〜8価が好ましく、炭素数4〜10程度が良い。 具体的には、エリスリトール、ジグリセリン、アラビノース、リボース、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、イディトール、タリトール、アリトール、4,7-ジオキサデカン-1,2,9,10-テトラオール、5-メチル-4,7- ジオキサデカン-1,2,9,10-テトラオール、4,7,10- トリオキサトリデカン-1,2,12,13- テトラオール、1,6-ジメトキシヘキサン-2,3,4,5- テトラオール、3,4-ジエトキシヘキサン-1,2,5,6- テトラオール等の多価アルコールや、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、2,9-ジエチル-2,9- ジヒドロキシメチル-4,7- ジオキサデカン-1,10-ジオール、2,12- ジエチル-2,12-ジヒドロキシメチル-5,8-ジメチル-4,7,10-トリオキサトリデカン-1,13-ジオール等のヒンダードアルコールであり、飽和脂肪族アルコールが好ましい。
ケトンやアルデヒドは、炭素数2〜6が良く、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、2-メチルブチルアルデヒド等があげられる。
次に、添加ポリオールエステル油は、下記化学式(2)で表される化合物(式中、Rは炭素数7〜9のアルキル基を表す。)であり、多価アルコールと一価の脂肪酸との縮合反応により得られる熱安定性に優れるヒンダードタイプが好ましい。
【0031】
【化5】

原料となる多価アルコールとして好ましいものは、ジペンタエリスリトールである。ジペンタエリスリトール中には、不純物としてペンタエリスリトールやトリペンタエリスリトールが多く含まれている。
【0032】
また、原料となる一価の脂肪酸としては、2−エチルヘキサン酸、3、5、5−トリメチルヘキサン酸等があり、これらを単独又は2種類以上を混合して用いる。
【0033】
添加ポリオールエステル油として、コンプレックスタイプのポリオールエステル油(コンプレックスエステル油)でも良く、これは多価アルコールと二価の脂肪酸と一価の脂肪酸とが結合したエステル化合物である。
【0034】
ここで、原料となる多価アルコールとして好ましいものは、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールである。また、原料となる一価の脂肪酸としては、n−ペンタン酸、n−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、2−メチルブタン酸、2−メチルペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、イソオクタン酸、3、5、5−トリメチルヘキサン酸等があり、これらを単独又は2種類以上を混合して用いる。さらに、原料となる二価の脂肪酸としては、プロパン二酸、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸等があり、これらを単独又は2種類以上を混合して用いる。
【0035】
実施例の空調装置及び冷凍機に用いる冷凍機油の粘度グレードは、圧縮機の種類により異なるが、スクロール式圧縮機においては、40℃における動粘度が40〜100mm/sの範囲であることが好ましい。また、ロータリー式圧縮機においては、40℃における動粘度が40〜70mm/sの範囲であることが好ましい。ちなみに、40℃における粘度が40mm/s以下であると、油膜形成性およびシール性が悪くなり、粘度が100mm/sを超えると粘性抵抗、摩擦抵抗等で機械損失が増大し、圧縮機抵抗を低下させる。従って、40℃における動粘度が40〜100mm/sの範囲の冷凍機油であれば、上記諸条件を満足することができる。
【0036】
電気絶縁の耐熱クラスは、電気絶縁の耐熱クラス及び耐熱性評価JEC−6147(電気学会電気規格調査標準規格)で規定されており、冷凍空調機用圧縮機に採用されている絶縁材料も前記規格の耐熱種により選定される。しかし、冷凍空調機器用の有機絶縁材料の場合、冷媒雰囲気中という特殊な環境で使用されるため、温度以外にも圧力による変形・変性を抑制すること、更には冷媒や冷凍機油といった有極性化合物にも接触するため、耐溶剤性、耐抽出性、熱的・化学的・機械的安定性、耐冷媒性(クレージング(皮膜にストレスを与えた後、冷媒に浸漬すると発生する微細な蛇腹状クラック)、ブリスタ(皮膜に吸収された冷媒が、温度上昇によって引き起こされる皮膜の気泡))等も考慮しなくてはいけない。
【0037】
特に、HFC32では断熱指数が小さいことから吐出される冷媒温度が高い。このため、高い耐熱クラス(E種120℃以上)の絶縁材料を使用する必要がある。
【0038】
圧縮機内で最も多く使用される絶縁材料は、PET(ポリエチレンテレフタレート)である。用途としては、分布巻モータの鉄心とのコイル絶縁にフィルム材が用いられ、コイルの縛り糸、モータの口出し線の被覆材に繊維状のPETが使用されている。これ以外の絶縁フィルムとしては、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PI(ポリイミド)、PA(ポリアミド)などが挙げられる。また、コイルの主絶縁被覆材料には、THEIC変性ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエステルアミドイミド等が使用され、ポリエステルイミド−アミドイミドのダブルコートを施した二重被覆銅線が好ましく使用される。
【0039】
本発明においては、前記した冷凍機油に潤滑性向上剤(トリクレジルホスフェートなどの極圧添加剤も含む)、酸化防止剤、酸捕捉剤、消泡剤、金属不活性剤等を添加しても全く問題はない。特に、ポリオールエステル油は、水分共存下で加水分解に起因する劣化が生じるため、酸化防止剤及び酸捕捉剤の配合は必須である。
【0040】
酸化防止剤としては、フェノール系であるDBPC(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)が好ましい。
【0041】
酸捕捉剤としては、一般に、エポキシ環を有する化合物である脂肪族のエポキシ系化合物やカルボジイミド系化合物が使用される。特に、カルボジイミド系化合物は、脂肪酸との反応性が極めて高く、脂肪酸から解離した水素イオンを捕捉することから、ポリオールエステル油の加水分解反応が抑制される効果が非常に大きい。カルボジイミド系化合物としては、ビス(2,6−イソプロピルフェニル)カルボジイミドが挙げられる。酸捕捉剤の配合量は、冷凍機油に対して0.05〜1.0重量%とすることが好ましい。また、環状ケタール化合物もしくは環状アセタール化合物は、耐摩耗性が劣るため、潤滑性向上剤としてトリクレジルホスフェートに代表される第三級ホスフェートなどを配合することが望ましい。
【0042】
(実施例1及び比較例1〜8)
(冷媒との相溶性評価)
冷凍空調用圧縮機に封入される冷媒及び冷凍機油の相溶性は、前述したように冷凍サイクルから圧縮機への油戻り(圧縮機内部の油量を確保)あるいは熱交換効率の維持等、圧縮機の信頼性を保証する面で重要な特性の一つである。
【0043】
ジフルオロメタンと冷凍機油との相溶性評価は、JIS K 2211に準じて測定した。
【0044】
任意の量の油(冷凍機油)と冷媒とを混合して調製した混合物を耐圧ガラス容器に封入し、温度を変化させた状態における内容物の観察を行った。内容物が白濁していれば二層分離、透明であれば溶解と判定した。
【0045】
一般に、上記の混合物の温度が十分に高温度であれば、二層分離せずに溶解するが、この混合物の温度を徐々に低下させていくと二層分離するようになる。ここで行った相溶性評価においては、混合物の温度を20℃から徐々に低下させて測定を行った。このため、溶解する温度(溶解温度)が20℃以上の場合のデータは求めていない。20℃以上で溶解する油は、冷凍空調用の圧縮機に用いる油としては不適当である。
【0046】
相溶性評価においては、冷媒に混合した油の濃度(油濃度)を横軸とし、溶解温度を縦軸としたグラフを作成した。このグラフは、一般に、二層に分離する温度の油濃度依存性を示すものであり、極大値を有する曲線となる。この極大値を低温側臨界溶解温度と定義する。
【0047】
用いた冷凍機油は、下記の通りである。ここで、40℃粘度は、40℃における冷凍機油の動粘度である。
【0048】
(A)ソルビトール1モルとメチルエチルケトン3モルから得られる環状ケタール化合物:40℃粘度63.1mm/s
(B)ヒンダードタイプポリオールエステル油(H−POE)(ペンタエリスリトール系の2−エチルヘキサン酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸の混合脂肪酸エステル油):40℃粘度64.9mm/s
(C)ヒンダードタイプポリオールエステル油(H−POE)(トリメチロールプロパン系の3,5,5−トリメチルヘキサン酸の脂肪酸エステル油):40℃粘度51.6mm/s
(D)ポリビニルエーテル油(PVE)(アルコキシビニルの重合体であり、アルコキシ基がエチルオキシ基及びイソブチルオキシ基である共重合体エーテル油):40℃粘度64.9mm/s
(E)ポリビニルエーテル油(PVE)(アルコキシビニルの重合体であり、アルコキシ基がエチルオキシ基であるエーテル油):40℃粘度67.8mm/s
(F)ナフテン系鉱油:40℃粘度54.1mm/s
(G)ヒンダードタイプポリオールエステル油(H−POE)(ネオペンチルグリコール系の2−エチルヘキサン酸の脂肪酸エステル油):40℃粘度7.5mm/s
表1は、冷媒であるジフルオロメタン(HFC32)と冷凍機油との相溶性評価の結果を示したものである。本表において、現在の冷媒R410Aを用いた冷凍空調装置に主に使用されている冷凍機油の相溶性評価の結果は、比較例7及び8として示してある。
【0049】
【表1】

本表より、冷媒であるHFC32と冷凍機油との相溶性の度合いである低温側臨界溶解温度が冷凍機油の種類によって大きく異なっていることがわかる。本表により、HFC32と相溶する冷凍機油を選定することができる。
【0050】
実施例1に示す冷媒と冷凍機油との組み合わせにおいては、低温側臨界溶解温度が−10℃以下となっている。
【0051】
冷凍機油(B)、(D)を用いてHFC32に対する相溶性を評価した結果を比較例1及び3に示したが、低温側臨界溶解温度が+20℃以上となってと相溶性が劣ってしまう。
【0052】
このほか、比較例2で示すように、ポリオールエステル油の動粘度を変化させても相溶性が改善されないことがわかる。
【0053】
比較例6で示すように、HFC32に対して相溶性に優れる油もあるが、動粘度が40mm/s以下であり、空調装置で適用することは困難である。
【0054】
さらに、比較例5は、異なる油種における相溶性の評価結果を示したものであるが、低温側臨界溶解温度が+20℃以上であるため、相溶性が劣り使用することは難しい。
【0055】
これらに対して、実施例1においては、HFC32との相溶性に優れており、低温側臨界溶解温度が−10℃以下であるため、冷凍空調装置に適用することが可能である。
【0056】
(実施例2〜6)
(鉄系材料への吸着性評価)
冷凍機油として重要特性である相溶性が得られた実施例1の化合物において、潤滑性を得るため、下記化学式(2)で表される添加ポリオールエステル油(式中、Rは炭素数7〜9のアルキル基を表す。)を前記化合物に対して1〜10重量%配合することで冷凍空調用圧縮機及び装置の信頼性が大幅に向上する。
【0057】
【化6】

添加ポリオールエステル油は、多価アルコールと一価の脂肪酸との縮合反応により得られる熱安定性に優れるヒンダードタイプが好ましい。
【0058】
原料となる多価アルコールとして好ましいものは、ジペンタエリスリトールである。ジペンタエリスリトール中には、不純物としてペンタエリスリトールやトリペンタエリスリトールが多く含まれている。
【0059】
また、原料となる一価の脂肪酸としては、2−エチルヘキサン酸、3、5、5−トリメチルヘキサン酸等があり、これらを単独又は2種類以上を混合して用いる。
【0060】
添加ポリオールエステル油として、コンプレックスタイプのポリオールエステル油(コンプレックスエステル油)でも良く、多価アルコールと二価の脂肪酸と一価の脂肪酸とが結合したエステル化合物である。
【0061】
ここで、原料となる多価アルコールとして好ましいものは、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールである。また、原料となる一価の脂肪酸としては、n−ペンタン酸、n−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、2−メチルブタン酸、2−メチルペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、イソオクタン酸、3、5、5−トリメチルヘキサン酸等があり、これらを単独又は2種類以上を混合して用いる。さらに、原料となる二価の脂肪酸としては、プロパン二酸、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸等があり、これらを単独又は2種類以上を混合して用いる。
【0062】
冷凍機油主剤である環状ケタール化合物、もしくは環状アセタール化合物の40℃における動粘度が40mm/sから100mm/s以下であり、添加ポリオールエステル油の40℃における動粘度が180mm/s以上であることが望ましい。
【0063】
前記冷凍空調用圧縮機は、鉄系材料で形成された摺動部を含み、摺動部における接触面圧が10MPa以上である。
【0064】
前記冷凍空調用圧縮機において、添加ポリオールエステル油は、鉄系材料に対する吸着能力が冷凍機油主剤より10倍以上高く、冷凍機油主剤の潤滑性が劣ると圧縮機摺動部における油膜強度が低下してしまうため摩耗が進行し、冷凍空調装置の信頼性も低下してしまう。このため、冷凍機油成分の摺動部に対する吸着性が重要なパラメータとなる。摺動部は鉄系材料で構成されている部位が多く、その表面には酸化鉄が形成されている。本明細書における冷凍機油の鉄系材料への吸着能力は、実質的に冷凍機油の酸化鉄への吸着能力と考える。
【0065】
この考え方に基づいて、本実施例においては、平均粒径1μmのFe(四三酸化鉄)の粉末(比表面積1.57m/g)を用いて冷凍機油の吸着能力の評価を行った。
【0066】
溶媒に希釈した冷凍機油成分の吸着前後の濃度を核磁気共鳴分析(NMR)により定量し、酸化鉄粉に吸着した量を算出した。溶媒にはヘキサンを用い、各冷凍機油成分が0.3mol−ppmとなるように調整した。20mlスクリュー管に酸化鉄粉を3g採取後、冷凍機油成分の溶液を10g入れ、超音波洗浄器において30分間分散させて48時間放置後の上澄み液の1H−NMR分析を行った。
【0067】
ここで、mol−ppmは、モル基準のppm(parts per million)である。すなわち、溶液(溶媒及び溶質の混合物)のモル数を分母とし、溶質のモル数を分子として算出した百万分率である。
【0068】
供試した化合物として(A)(B)(D)(F)並びに、(H)ヒンダードタイプポリオールエステル油(POE)(ジペンタエリスリトール系の2−エチルヘキサン酸/3、5、5−トリメチルヘキサン酸の混合脂肪酸エステル油):40℃粘度217mm/s
を用いて前記吸着性の評価を実施した。その評価結果として、酸化鉄粉に対する化合物の吸着量を測定した結果を表2に示す。
【0069】
【表2】

各化合物により酸化鉄粉に対する吸着量(吸着能力)が異なっており、有極性化合物の方が鉄系材料に吸着し易いことがわかる。有極性化合物においても、分子構造中にエステル基が多く存在する化合物(H)が吸着量が多いことがわかる。すなわち、(H)は、鉄系材料(酸化鉄)に対する吸着能力が、他の冷凍機油成分(A)(B)(D)(F)に比べて4.0倍以上高いことがわかる。特に、本発明の環状ケタール化合物(A)と比較すると、10倍以上高くなる。このことから、冷凍機油成分(A)は、(H)を添加することで圧縮機摺動部において潤滑膜を形成しやすいことが考えられる。
【0070】
これは、次の理由によると考えられる。
エステル基に含まれるカルボニル(C=O)の酸素は負に帯電する傾向がある。これに対して、酸化鉄表面は一般に水和され、水酸基になっている。このため、酸化鉄表面の水酸基に存在する水素とエステル基の酸素との間にクーロン力による引力が生じ、吸着しやすくなると考えられる。
【0071】
この結果から、(H)を本発明における添加ポリオールエステル油として用いることとした。
【0072】
(実施例7〜10及び比較例9〜11)
(潤滑性評価)
実施例で吸着性が確認された冷凍機油の潤滑性を評価した。シェル式四球摩擦摩耗試験機を用い、冷凍機油の潤滑性を評価した。1/2インチSUJ2鋼球を試験片とし、荷重:280N、温度:120℃、回転速度:1200/min、時間:10minで試験した後の固定試験片の摩耗痕径(3個平均)と摩擦係数を測定した。冷凍機油主剤として、(A)を用い、そこに(H)添加ポリオールエステル油を配合したものを評価した。また、(A)にTCP:トリクレジルホスフェートを配合された冷凍機油を評価した。比較例9〜11として、(A)単独、(A)に対して(H)の配合量を1.0重量%未満の冷凍機油、および10重量%を超える冷凍機油を評価した。
各冷凍機油の潤滑性を評価した結果を表3に示す。
【0073】
【表3】

比較例9で示すように、(A)単独で試験を行ったものについては、摩耗痕径が大きく、摩擦係数が高い。これに対して、実施例7〜9で示す(H)添加ポリオールエステル油を1〜10重量%配合した冷凍機油は、(A)単独と比べて、摩耗痕径と摩擦係数が抑制されており、潤滑性の向上効果が得られた。これは添加ポリオールエステル油の鉄系材料に対する吸着能力が冷凍機油主剤よりも大きいことから、摩擦面が低表面エネルギー化され、耐摩耗性と摩擦係数の低減効果が得られたことによる。
【0074】
また、実施例10で示すように一般的な潤滑性向上剤であるTCPを(A)に配合したものについても、大幅に摩耗痕径と摩擦係数が抑制されており、潤滑性の向上効果が得られた。添加ポリオールエステル油においては、比較例10で示すように配合量が少ないと、十分な潤滑性向上効果が得られないことがわかる。また、比較例11で示すように配合量が多いと、潤滑性向上効果は得られるが、動粘度が高くなり、さらには相溶性が低下してしまう問題が生じるため10重量%以下とした方が良い。
【0075】
(実施例11、12及び比較例12〜16)
(空調実機評価)
図1は、本実施例で用いた冷暖房兼用のルームエアコンの概略を示したものである。
【0076】
ルームエアコン50は、室内機51と室外機52とで構成されている。室内機51には、室内熱交換器5が内蔵されている。また、室外機52には、圧縮機100、四方弁2、室外熱交換器3及び膨張手段4(膨張部)が内蔵されている。圧縮機100は、摺動部を有する冷媒圧縮部を備えたものである。
【0077】
室内を冷房する場合、圧縮機100にて断熱的に圧縮された高温高圧の冷媒ガスが、吐出パイプ及び四方弁2を通って室外熱交換器3(凝縮手段として使用される。)で冷却され、高圧の液冷媒となる。この冷媒は、膨張手段4(例えば、キャピラリーチューブや温度式膨張弁など)で膨張し、僅かにガスを含む低温低圧液となって室内熱交換器5(蒸発手段として使用される。)に至り、室内の空気から熱を得て低温ガスの状態で再び四方弁2を通って圧縮機1に至る。室内を暖房する場合は、四方弁2によって冷媒の流れが逆方向に変えられ、逆作用となる。圧縮機100としては、スクロール式圧縮機を用いている。
【0078】
図2は、上記のスクロール式圧縮機の概略構造を示したものである。
【0079】
圧縮機100は、端板7に垂直に設けられた渦巻状ラップ8を有する固定スクロール部材6と、この固定スクロール部材6と実質的に同一形状のラップ10を有する旋回スクロール部材9と、旋回スクロール部材9を支持するフレーム14と、旋回スクロール部材9を旋回運動させるクランクシャフト11と、電動モータ17と、これらを内蔵する圧力容器15とを含む。渦巻状ラップ8とラップ10とは、互いに向い合わせにして噛み合わせ、圧縮機構部を形成してある。
【0080】
旋回スクロール部材9は、クランクシャフト11によって旋回運動させると、固定スクロール部材6と旋回スクロール部材9との間に形成される圧縮室12(12a、12b等)のうち、最も外側に位置している圧縮室12が旋回運動に伴って容積を次第に縮小しながら、固定スクロール部材6及び旋回スクロール部材9の中心部に向かって移動していく。圧縮室12が固定スクロール部材6及び旋回スクロール部材9の中心部近傍に達すると、圧縮室12が吐出口13と連通し、圧縮室12の内部の圧縮ガスが吐出パイプ16から圧縮機100の外部に吐出される。
【0081】
圧縮機100においては、一定速、あるいは図示していないインバータによって制御された電圧に応じた回転速度でクランクシャフト11が回転し、圧縮動作を行う。また、電動モータ17の下方には、油溜め部20が設けられており、油溜め部20の油は、圧力差によってクランクシャフト11に設けられた油孔19を通って、旋回スクロール部材9とクランクシャフト11との摺動部、滑り軸受け18等の潤滑に供される。
【0082】
実施例11、12及び比較例12〜16においては、図1に示すルームエアコンを用い、室内機を恒温室(室温35℃、湿度75%)に設置して、2160時間運転する実機試験を行った。モータの鉄心とコイルとの絶縁には、耐熱PETフィルム(B種130℃)を用い、コイルの主絶縁には、ポリエステルイミド−アミドイミドのダブルコートを施した二重被覆銅線を用いた。
【0083】
ルームエアコンの評価においては、スクロール式圧縮機の摩耗状態に着眼し、実機試験の前後におけるフレーム〜シャフト間の摩耗による隙間増加量を測定した。フレーム〜シャフト間の隙間増加量が増えるほど摩耗量が大きいことを示しており、一般に、隙間増加量が増えるに伴って振動や騒音が大きくなる。
【0084】
冷媒としては、ジフルオロメタン(HFC32)を用いた。ジフルオロメタンの利点は、現在のR410A機の冷凍空調サイクルがほぼそのままで使用できることにある。冷凍空調サイクルにおいては、冷媒と冷凍機油との相溶性が圧縮機への油戻り量を確保するための重要な特性であり、冷媒と同様に冷凍機油も循環することが必要である。相溶性が劣ると、圧縮機から機械的要素により吐出された冷凍機油が循環せず、特に低温部で分離した油が滞留するため、圧縮機の油量が少なくなり、摺動部の潤滑に支障をきたす。このため、サイクル中における運転条件温度範囲で冷媒と冷凍機油とが溶解していることが好ましい。
【0085】
本実施例においては、ジフルオロメタンに対して相溶性を有し、潤滑性向上効果が確認された実施例8と実施例10の冷凍機油を取り上げた。比較例としては、ジフルオロメタンに対する相溶性が劣る(B)及び(D)を評価した。また、現行の冷媒であるR410Aを用いた(B)及び(D)についても比較評価を行なった。
【0086】
本試験において好適とされる圧縮機の状態は、試験後のフレーム〜シャフト間の摩耗による隙間増加量(滑り軸受け隙間増加量)が10μm以下であること、及び圧縮機の残油量が確保されていることである。
【0087】
表4は、実施例11、12及び比較例12〜16の結果を示したものである。
【0088】
【表4】

本表において、比較例15及び16に示すように、現行のR410A機は、圧縮機のフレーム〜シャフト間の隙間増加量も少なく、圧縮機内の冷凍機油残油量も十分に確保されている。しかし、比較例12及び13で示すように、ジフルオロメタンと相溶性の劣る組み合わせで実施した場合には、圧縮機の冷凍機油残量が減少しており、十分な油膜が確保されないことから、フレーム〜シャフト間の隙間増加量が大きくなっている。ジフルオロメタンに対する相溶性が優れていても比較例14のように十分な潤滑性が得られない場合には、圧縮機の冷凍機油残量が確保されていても、必要な油膜厚さが得られないことから、フレーム〜シャフト間の隙間増加量が大きくなってしまう。
【0089】
これらに対して、実施例11、12に示す冷凍空調装置は、フレーム〜シャフト間の隙間増加量を大幅に低減でき、かつ圧縮機の冷凍機油残油量を確保できていることから、冷凍空調装置において高い信頼性が得られる。
【0090】
以上の実施例の結果から、本発明の冷凍空調装置は、圧縮機の摩耗を抑制することができ、長期絶縁信頼性を十分に確保することができる。
【0091】
このほか、ロータリー式圧縮機、ツインロータリー式圧縮機、2段圧縮ロータリー式圧縮機、及びローラとベーンが一体化されたスイング式圧縮機においても、同様の効果が得られることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、冷凍空調用圧縮機及び冷凍空調装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
100:圧縮機、2:四方弁、3:室外熱交換器、4:膨張手段、5:室内熱交換器、6:固定スクロール部材、7:端板、8:渦巻状ラップ、9:旋回スクロール部材、10:ラップ、11:クランクシャフト、12、12a、12b:圧縮室、13:吐出口、14:フレーム、15:圧力容器、16:吐出パイプ、17:電動モータ、18:滑り軸受け、19:油孔、20:油溜め部、50:ルームエアコン、51:室内機、52:室外機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
摺動部を有する冷媒圧縮部を備え、冷媒であるジフルオロメタンと、冷凍機油とを封入した冷凍空調用圧縮機において、
前記冷凍機油は、40℃における動粘度が40〜100mm/sであり、下記化学式(1)で表わされる化合物(式中、R〜R2は、水素もしくは炭素数1〜3のアルキル基を表す。)を基油とすることを特徴とする冷凍空調用圧縮機。
【化1】

【請求項2】
摺動部を有する冷媒圧縮部を備え、冷媒であるジフルオロメタンと、冷凍機油とを封入した冷凍空調用圧縮機において、
前記冷凍機油は、下記化学式(1)で表される40℃における動粘度が40〜100mm/sの化合物(式中、R〜R2は、水素もしくは炭素数1〜3のアルキル基を表す。)からなる基油と、下記化学式(2)で表される添加ポリオールエステル油(式中、Rは炭素数7〜9のアルキル基を表す。)を含み、前記添加ポリオールエステル油の組成が1〜10重量%であることを特徴とする冷凍空調用圧縮機。
【化2】

【化3】

【請求項3】
請求項1または2に記載の冷凍空調用圧縮機において、
前記冷凍機油は、環状ケタール化合物もしくは環状アセタール化合物であることを特徴とする冷凍空調用圧縮機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の冷凍空調用圧縮機において、
前記冷媒と冷凍機油との低温側臨界溶解温度が−10℃以下であることを特徴とする冷凍空調用圧縮機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の冷凍空調用圧縮機を用いたことを特徴とする冷凍空調装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−76533(P2013−76533A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217497(P2011−217497)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】