説明

冷凍装置および冷凍システム

【課題】冷凍装置内の熱交換器の冷却量の低下や着霜量を検知し、それに基づいて除霜開始の要否を判断し、除霜開始のタイミングを適正化する。
【解決手段】熱交換器27と、熱交換器27に冷熱を供給する冷媒回路と、熱交換器27に付着した霜を除霜するヒータ40と、冷却運転における熱交換器27の冷却能力または冷却能力の低下を推定する冷却能力推定手段(マイコン43などに含有)、冷却能力推定手段の推定結果に基づいてヒータ40の動作開始を許可する除霜許可手段(マイコン43などに含有)とを有し、ヒータ40は、除霜許可手段がその動作開始を許可した場合、装置の内部のまたは外部からの除霜実行信号と同期して熱交換器27の除霜を行うことを特徴とする冷凍装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ショーケースなどの低温機器に関し、特にそこで使用されている熱交換器に付着する霜の除霜に関連するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の冷凍装置においては、6時間または12時間といった一定時間毎に設定された外部タイマーの信号で除霜を開始していた。
【0003】
また、従来の冷凍装置は、熱交換器の吸入温度計測手段と、吹出温度計測手段と、吸入温度計測手段の計測値または吹出温度計測手段の計測値の少なくとも一方を利用して除霜運転の開始を判断する制御手段と、を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、従来の冷凍装置は、内部タイマーあるいは外部からの除霜信号のいずれかの信号によって除霜を開始し、除霜信号が外部から入力された場合は、これ以降の除霜信号の出力は、内部タイマーからの除霜信号を無視して外部からの除霜信号によってのみ行い、除霜の終了は、庫内温度あるいは除霜経過時間のいずれかの除霜終了条件によって行うものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−183987号公報(図1、図2)
【特許文献2】特許第3045384号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の冷凍装置では、冷却能力の低下や着霜量を検知せず、一定時間毎に除霜運転を開始するため、負荷状態によっては過剰着霜状態になり規定の性能が発揮できていなかったり、着霜量が少ない状態で冷却能力も落ちていない状態で除霜運転に入り無駄なエネルギーを投入していたという問題点があった。
【0007】
また、熱交換器は風路の中央部での着霜が多い場合や風路の風下側での着霜量が多い場合など、負荷状態によって着霜の仕方が異なり、これによって冷却性能の低下を捉えるための特徴量が異なるため、保存温度帯や種類が様々ある冷凍装置に対し、同一のアルゴリズムで冷却能力の低下を把握することが困難であるという問題点があった。
【0008】
また、スーパーマーケットなどにおいては、昼間と夜間とではショーケースなどの冷凍装置の負荷条件が異なり、負荷の大小によって熱交換器への着霜速度が異なるため、常時、冷却能力の低下や着霜量を検出し、その時の検出値に応じて除霜開始を判断しないと、適切な除霜がなされないという問題点があった。
【0009】
また、隣り合ったショーケースにおいて、一方のショーケースが除霜運転に入り、他方が冷却運転を行っていると、壁を通した熱侵入がおき、無駄なエネルギーが使われることがあるという問題点があった。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、冷凍装置内の熱交換器の冷却量の低下や着霜量を検知し、それに基づいて除霜開始の要否を判断し、除霜開始のタイミングを適正化することにより、無駄なエネルギーの投入を避け、省エネとなる冷凍装置を得ることを主たる目的とする。
【0011】
併せて、保存温度帯や種類が様々ある冷凍装置に対し、同一の汎用的なアルゴリズムで冷却能力の低下を把握でき、確実に省エネにできる冷凍装置を得ることも目的とする。
【0012】
さらに、隣接した冷凍装置のグルーピングを考慮して除霜開始を判断し、同一グループのショーケースが同時に除霜を開始するようにすることにより、無駄なエネルギーの投入を防ぎ省エネとなる冷凍システムを得ることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係る冷凍装置は、熱交換器と、前記熱交換器に冷熱を供給する冷却運転手段と、前記熱交換器に付着した霜を除霜する除霜運転手段と、前記冷却運転における前記熱交換器の冷却能力または冷却能力の低下を推定する冷却能力推定手段と、前記冷却能力推定手段の推定結果に基づいて前記除霜運転手段の動作開始を許可する除霜許可手段とを有し、前記除霜運転手段は、前記除霜許可手段が前記動作開始を許可した場合、装置の内部のまたは外部からの除霜実行信号と同期して前記熱交換器の除霜を行うようにしたものである。
【0014】
また、この発明に係る冷凍システムは、熱交換器と、前記熱交換器に冷熱を供給する冷却運転手段と、前記熱交換器に付着した霜を除霜する除霜運転手段と、前記冷却運転における前記熱交換器の冷却能力または冷却能力の低下を推定する冷却能力推定手段または着霜量を推定する着霜量推定手段と、前記冷却能力推定手段または前記着霜量推定手段の推定結果に基づいて除霜を許可する除霜許可手段と、前記除霜許可手段による除霜許可判断結果を外部に出力する通信手段と、複数の冷凍装置と有線または無線にて接続される外部コントローラとを備え、前記外部コントローラは、前記外部コントローラに接続された冷凍装置のうち、どれか一つの冷凍装置において除霜が許可された場合に、前記外部コントローラに接続されたすべての冷凍装置に対して前記除霜運転手段の除霜運転を開始させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明の冷凍装置は、熱交換器への着霜量が多すぎて規定の性能が発揮できない状態を防ぎ、かつ着霜量が少なすぎる状態で除霜に入って無駄なエネルギーを投入することをなくし、適切な着霜量にて除霜を開始して省エネをはかることができる。
【0016】
また、この発明の冷凍システムは、複数設置されているショーケース間でばらばらに除霜され、無駄なエネルギーが投入されるのを防ぐことができ、省エネとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1の構成について図1を用いて説明する。図1は、実施の形態1の冷凍装置をコンビニエンスストアやスーパーマーケットなどの店舗へ設置した状態を示す説明図である。図1において、店舗14内には冷蔵用または冷凍用ショーケース13が複数台配置され、それら冷蔵用または冷凍用ショーケース13は、冷蔵用または冷凍用冷凍機11に接続されて、食品や飲料を常時冷蔵あるいは冷凍している。従って、冷蔵用または冷凍用冷凍機11、冷蔵用または冷凍用ショーケース13、およびそれらを接続する冷媒回路が冷凍装置を構成している。
一方これとは別に、店舗14内には空調用室内機12が配置され、空調用室内機12は空調用室外機10に接続され、外気温度に応じて室内を冷房あるいは暖房している。従って、空調用室外機10、空調用室内機12、およびそれらを接続する冷媒回路が空調装置を構成している。
【0018】
図2は、この発明の実施の形態1の冷凍装置の冷媒回路図である。図2において、この発明の実施の形態1に係る冷凍装置は、室外機としての冷蔵用または冷凍用冷凍機11と、室内機としての冷蔵用または冷凍用ショーケース13を有している。冷蔵用または冷凍用冷凍機11は、圧縮機21、室外熱交換器22、室外熱交換器用ファン23、余剰冷媒をためる液溜24などを備えている。また、冷蔵用または冷凍用ショーケース13(単にショーケース13ともいう)、電磁弁などの開閉弁25、膨張弁などの膨張手段26、ショーケース熱交換器27、ショーケース熱交換器用ファン28などを備えている。なお、ショーケース熱交換器27およびショーケース熱交換器用ファン28を除いたこの冷媒回路図は、ショーケース熱交換器27に冷熱を供給する冷却運転手段として作用している。
【0019】
次に、この発明の冷凍装置の概要動作について説明する。圧縮機21により圧縮され高温高圧になった冷媒は、室外熱交換器22にて室外熱交換器用ファン23の作用により凝縮された後、余剰冷媒を溜める液溜24を経て、冷凍機11から出てショーケース13に流入する。ショーケース13に入った冷媒は、開閉弁25を経て、膨張手段26にて膨張されて低温低圧冷媒になり、ショーケース熱交換器27にてショーケース用ファン28の作用によって蒸発した後、ショーケース13を出て再び冷凍機11の圧縮機21へ戻る。
【0020】
ショーケース13が冷蔵用である場合、ショーケースの庫内空気温度は約0℃、冷媒の蒸発温度は約−10℃である。また、ショーケース13が冷凍用である場合、ショーケースの庫内空気温度は約−18℃であり、冷媒の蒸発温度は約−30℃である。ショーケースが冷蔵用および冷凍用のいずれの場合であっても、蒸発器すなわちショーケース熱交換器27の配管およびフィンの表面温度は0℃以下であり、周囲空気温度よりも温度が低いため、空気中の水蒸気がショーケース熱交換器27の周囲に霜となって堆積、すなわち着霜する。冷蔵用ショーケースにおいては、ショーケース熱交換器27の周囲空気が0℃以上の場合は、空気中の水蒸気がショーケース熱交換器27に水滴として結露した後、凝固して霜となる。一方、冷凍用ショーケースにおいては、ショーケース熱交換器27の周囲空気が0℃以下のため、空気中の水蒸気が昇華しショーケース熱交換器27の周囲に直接霜として堆積する。
【0021】
このように冷蔵用ショーケースと冷凍用ショーケースでは着霜に至る過程は異なるが、いずれの場合においても、その熱交換器への着霜は、冷媒と空気との熱交換の妨げとなる。着霜量が増加して熱交換性能の低下が激しくなると、規定の冷却能力を維持することができなくなり、ショーケースの庫内温度が上昇してしまう。ショーケースの庫内温度が上昇すると、食品の品質保持面での問題があるため、ショーケースには除霜手段が設けられており、通常はショーケースを一定時間運転すると除霜手段により霜を溶かす除霜運転を行うようにタイマーで設定されている。
除霜手段には、一般的にヒータが用いられるが、その他にも、開閉弁25により霜が溶けるまで冷媒の流れを停止するオフサイクルデフロストや、圧縮機21の出口側の高温高圧の冷媒をショーケース熱交換器27に導入するホットガスデフロストが用いられる場合もある。
【0022】
図3は、この発明の実施形態1に係る冷凍装置のショーケース13の内部構成図である。図3に示すように、ショーケース熱交換器27の風上側にはショーケース熱交換器吸込空気温度センサ31(単に吸込空気温度センサ31ともいう)が設けられ、ショーケース熱交換器27の風上側および側面には、除霜運転手段(または除霜手段)としてのヒータ40が設けられている。ヒータ40はショーケース熱交換器27へ流入する空気を暖めて熱交換器27に付着した霜を溶かすためのものである。ヒータ40の駆動信号は、ショーケース13に内蔵したタイマーもしくは外部に設置されたタイマー41から送信される。
タイマー41はヒータ40の動作間隔(除霜間隔)を設定できるようになっている。タイマー41およびヒータ40はショーケース13に内蔵されているショーケース内制御基板42に接続され、タイマー41から該制御基板42に除霜信号(除霜実行信号)が入力されると、ショーケース内制御基板42は、開閉弁25を閉にして冷媒流路を閉じ、ヒータ40を動作させ、除霜運転を開始させる。
除霜運転はショーケース熱交換器吹出空気温度センサ32(単に吹出空気温度センサ32ともいう、ここでは32Aと32Bの2個が設置されている)の検出温度が規定値を上回ったところで終了し、再び通常の冷却運転に戻る。吹出空気温度センサ32は1つまたは複数設けられ、複数設置されている場合はそれらの吹出空気温度センサ32による検出温度の平均値または最小値が規定値を上回ったところで完了させる。吹出空気温度センサ32の検出温度の代わりに、ショーケース熱交換器冷媒入口温度センサ30(単に冷媒入口温度センサ30ともいう)などによる冷媒配管温度を利用して、除霜運転を完了させてもよい。また、一定時間経過したら除霜運転を終了させるようにする場合もある。
また、図3において、符号43で示したものは、本実施の形態の冷凍装置が備えるショーケース熱交換器27の冷却能力または着霜量の推定手段と除霜許可手段としての機能を果たす機器であり、ここではマイクロコンピュータから構成されている。マイクロコンピュータ43は、上記の各種温度センサ30,31,32等と接続され、後述する図5、図6に示すような、ショーケース熱交換器27の冷却能力または着霜量の推定をし、その推定結果に基づいて、ヒータ40の動作を開始させても良いという除霜許可信号を発するようにプログラムされている。なお、この冷却能力または着霜量の推定/除霜許可手段は、ショーケース13と別体に備えられていてもよい。また、冷却能力または着霜量の推定手段と除霜許可手段とをそれぞれ別体の機器から構成してもよい。
また、除霜運転手段は、ヒータ40に限られるものではなく、熱交換器に付着した霜を溶かすことができるものであれば何でもよく、例えば、圧縮空気を霜に吹き付けるものや別の熱源の排熱であってもよい。また、特別な物を設けなくても、冷凍サイクル中の冷媒を逆方向に循環させられる構成とすれば、圧縮機の排熱等で冷媒を加熱し、霜を溶かすことができ、同様の効果を奏することができる。
【0023】
通常の除霜運転は以上のように行われるが、各ショーケース熱交換器27の着霜量は、冷却運転時間が同じであっても、店舗14内の空気の温度・湿度、ショーケース13内の食品負荷、冷凍機11が設置されている場所の外気の温度、冷凍機11とショーケース13の容量比などによって異なるため、除霜開始時に各ショーケースの着霜量が必ずしも限界に至っているとは限らない。除霜運転時はヒータ40の電力が消費され、かつ除霜終了時にはショーケース13を再度冷やし込む必要があるため、1日あたりの除霜運転の回数が少ない方が、省エネになる。また、除霜はショーケース13の庫内温度を上昇させるため、食品の品質面でもあまり望ましくなく、除霜回数が少ない方が望ましい。しかし、ショーケース熱交換器27の着霜量が多くなりすぎると、熱交換器27の熱交換性能が低下し規定の冷却能力を保つことができなくなり、ショーケース13の庫内温度が上昇してしまう。従って、ショーケース熱交換器27の着霜量が多くもなく少なくもない適切な着霜量の状態のときに、除霜を開始するのが望ましい。そのためにはショーケース熱交換器27の着霜量の増加または着霜量の増加に伴う冷却能力の低下を推定(検知、検出をも含む)して、それを基に除霜の制御を行うのが望ましい。
【0024】
次に、熱交換器の着霜量の増加及び着霜量の増加に伴う冷却能力低下の検出方法について説明する。ショーケース熱交換器27の着霜量が十分に多くなると、該熱交換器27内の空気が流通する断面積が低下するため、空気が該熱交換器27内を通る際の圧力損失が増加し、ショーケース熱交換器用ファン28の特性からファン28が送出できる風量が低下し、ショーケース熱交換器27内を通る空気の風速が低下する。空気の風速が低下すると、ショーケース熱交換器27内を流れる冷媒と空気とが熱交換を行う時間が増加するため、図4に示すように、吹出空気温度センサ32により検出される吹出空気温度が冷媒蒸発温度に近づき低下する。冷媒蒸発温度は配管内での冷媒の圧力損失があまり大きくなければ、冷媒入口温度センサ30の検出値とほぼ等しい。また、ショーケース13の庫内の熱負荷は変わらないため、ショーケース熱交換器用ファン28の送出風量低下により、吸込空気温度センサ31により検出される吸込空気温度は上昇する。よって、ショーケース熱交換器27の着霜量が十分に多くなると、着霜量が小さい時に対し、該熱交換器27の吸込空気温度と吹出空気温度との温度差が大きくなる((1)式)。
【0025】
熱交換器の吸込空気温度−熱交換器の吹出空気温度 → 増加 (1)
【0026】
また、ショーケース熱交換器27の吸込空気温度と吹出空気温度との温度差は大きくなるが、ケースの種類によっては、該熱交換器27の特性により、かなり着霜が増加しないと蒸発温度がほとんど変化せず、吸込空気温度と吹出空気温度との温度差を吸込空気温度と冷媒蒸発温度との温度差で除した値である温度効率が増加する((2−A)式)。一般的に、風速が小さくなると温度効率は上昇する。
逆に、ケースによっては、着霜とともに蒸発温度が低下し、温度効率が低下する場合がある。この場合は温度効率の逆数((2−B)式)が増加する。温度効率をとるか温度効率の逆数をとるかは、機器の特性に合わせて選択する必要がある。
【0027】
温度効率=(熱交換器の吸込空気温度−熱交換器の吹出空気温度)/(熱交換器の吸込
空気温度−熱交換器の冷媒蒸発温度)
≒(熱交換器の吸込空気温度−熱交換器の吹出空気温度)/(熱交換器の吸込
空気温度−熱交換器の冷媒入口温度) → 増加 (2−A)
1/温度効率=(熱交換器の吸込空気温度−熱交換器の冷媒蒸発温度)/(熱交換器の
吸込空気温度−熱交換器の吹出空気温度)
≒(熱交換器の吸込空気温度−熱交換器の冷媒入口温度)/(熱交換器の
吸込空気温度−熱交換器の吹出空気温度) → 増加 (2−B)
【0028】
また、ショーケース13の庫内温度は吸込空気温度と吹出空気温度の平均温度として与えられる((3)式)。実際は、ショーケース熱交換器27の吹出空気温度ではなく、風路の先である庫内の吹出空気温度を用いるべきであるが、熱侵入が少なければ同程度の値となる。
【0029】
庫内温度=(熱交換器の吸込空気温度+庫内の吹出空気温度)/2
≒(熱交換器の吸込空気温度+熱交換器の吹出空気温度)/2 (3)
【0030】
商品の取出口に扉の付いていないオープンショーケースにおいては、吹出風とショーケース周囲空気とがある程度入れ替わっており、これがショーケースの冷却負荷の大部分を占めている。この入れ替わりを少なくするため、吹出風によりエアーカーテンを作っているが、ショーケース熱交換器27への着霜が進み、風速が小さくなるとエアーカーテンの風速も小さくなるため、吹出風とショーケース周囲空気との入れ替わり率が増加し、吸込空気温度および庫内温度が上昇する。ショーケース13は庫内温度を一定にするように制御されているため、庫内温度が上昇すると、開閉弁25が開になっている時間を増やし、庫内温度を下げる。従って、着霜がかなり進むまでは吸込空気温度は上昇しても庫内温度は上昇しない。しかし、着霜量がさらに進むと制御し切れなくなり、庫内温度が上昇する((4)式)。
【0031】
庫内温度 → 上昇 (4)
【0032】
なお、先の(2−A)式は、分母の吸込空気温度を庫内温度に代えた、次の(5−A)式を用いてもよい。
温度効率=(熱交換器の吸込空気温度−熱交換器の吹出空気温度)/(庫内温度−熱交換器の冷媒入口温度) → 増加 (5−A)
先の(2−B)式は、分子の吸込空気温度を庫内温度に代えた、次の(5−B)式を用いてもよい。
1/温度効率=(庫内温度−熱交換器の冷媒入口温度)/(熱交換器の吸込空気温度−熱交換器の吹出空気温度) → 増加 (5−B)
【0033】
また、先に述べた通り、着霜が進むと吸込空気温度は上昇し、吸込空気温度と冷媒蒸発温度との温度差も増加する((6)式)。
【0034】
熱交換器の吸込空気温度−熱交換器の冷媒蒸発温度 → 増加 (6)
【0035】
また、同様に庫内温度と冷媒蒸発温度との温度差も着霜の増加に従い増加する((7)式)。
庫内温度−熱交換器の冷媒蒸発温度 → 増加 (7)
よって、(6)式と(7)式の和も増加する((8)式)。
【0036】
(熱交換器の吸込空気温度−熱交換器の冷媒蒸発温度)+(庫内温度−熱交換器の冷媒蒸発温度) → 増加 (8)
【0037】
すなわち、ショーケース熱交換器27の着霜量が増えると、今まで示した複数の特徴量に変化が生じる。そこで、それらの特徴量の1つだけを見るのではなく、例えば、(1)式、(2)式、(4)式および(8)式など、複数の特徴量の変化を観察することにより、より正確に着霜量の増加を捉えることが可能となる。
【0038】
なお、図3に示すように、吹出空気温度センサが32A,32B,33のように複数設置されている場合には、これら全てまたはこれらのうちから抽出された複数のセンサの平均値を吹出空気温度として利用するか、あるいはこれらのうちの1つを吹出空気温度として利用するのがよい。
【0039】
ところで、スーパーマーケットにおいては、朝から夜、例えば9:00〜22:00、が営業時間で、それ以外が営業時間外となっている場合がある。営業時間内は、客が商品を選んで購入する時間帯であり、この時間帯に除霜運転が入ると、庫内温度が上昇してしまう。除霜運転により商品そのものの温度上昇はあまりないものの、庫内温度が上がっているのは、店のイメージ面ではいいことではなく、また場合によっては再び冷えるまでに商品に結露が生じる可能性もあり、できる限り除霜運転は営業時間外に行った方が望ましい。従って、従来は、タイマーによって制御し、営業時間外あるいは比較的客や商品の少ない時間帯に除霜運転が入るようにセットされていた。
【0040】
そのため、上記のような特徴量によって、ショーケース熱交換器27への着霜量の増加を検知し、除霜運転を行うべき時期を検出できたとしても、すぐに除霜運転を行うのではなく、従来と同じように、営業時間外あるいは比較的客や商品の少ない時間帯に除霜運転を行うべきであり、タイマーまたはそれに準じた手段からの除霜実行信号と同期した除霜運転が必要になる。
【0041】
しかし、従来のタイマーだけによって除霜運転を行う方式では、着霜量が少なく除霜を行わなくてもよい状態でも除霜運転に入ってしまい、エネルギーの無駄が生じる場合が多かった。そこで、前述のような方法にて、着霜量の増加による温度効率の上昇、または冷却能力の低下による庫内温度上昇などを検知し、除霜が必要になった場合にタイマーと同期させて除霜運転を行うのが望ましい。
【0042】
一方、着霜量が増加しすぎると、次のタイマーによる除霜タイミングまで、冷却能力を維持できない可能性がある。従って、ショーケース熱交換器27への着霜量の増加を早期に検出することが重要となる。
【0043】
そこで、ここでは、ショーケース熱交換器27への着霜量を早期に検出するため、先に述べたような複数の特徴量を用い、それらの特徴量に対し、2つの異なった判定ルール則にて判定を行う。本実施の形態では、この判定ルール則に、「限界値」と「予兆値」という2つの概念を用いる。
各特徴量は、運転中に一定値となるものではなく、着霜量が少なくても常に変動している。従って、着霜量または冷却能力の低下を正確に検知するためには、各特徴量の閾値を大きめに設定する必要がある。しかし、大きめに設定しすぎると、次の除霜タイミングまで冷却能力を維持できなくなる。そのため、そのような冷却能力を維持できなくなる境界値またはその近傍の値を限界値として設定し利用する。一方で、なるべく早期に着霜量または冷却能力の低下を検知するためには、各特徴量の閾値をなるべく小さくする必要がある。ただし、小さくしすぎると、閾値が通常の変動範囲に入ってしまい誤検知が生じ易くなる。そこで、限界値に至る手前の値、すなわち限界値より小さい値であって、通常の変動範囲からは十分外れて誤検知を生じさせない値である予兆値を併せて設定し利用する。
例えば、特徴量1、特徴量2、特徴量3の3つの特徴量を用いた場合には、例えば以下のようなルール則にて除霜運転開始の判定を行う。
【0044】
特徴量1>限界値1 or 特徴量2>限界値2 or 特徴量3>限界値3の時には除霜運転を開始 (9)
特徴量1>予兆値1 and 特徴量2>予兆値2 and 特徴量3>予兆値3の時には除霜運転を開始 (10)
【0045】
限界値と予兆値は各特徴量毎に設定される値であり、ここでは以下のように設定する。
予兆値=α×(特徴量の最大値−特徴量の平均値)+特徴量の平均値 (11)
限界値=β×(特徴量の最大値−特徴量の平均値)+特徴量の平均値 (12)
α、βに関しては、各特徴量毎に最適な値に設定する。例えば、上記(1)式の「熱交換器の吸込空気温度−熱交換器の吹出空気温度」の特徴量の場合は、α=0.2、β=0.7のように設定する。また、上記(2)式で定義される特徴量の場合は、α=0.2、β=0.6程度が最適である。
【0046】
なお、特徴量を2つ用いる場合や特徴量を4つ以上用いる場合にも、特徴量の個数に応じて、上記の式(9)および式(10)と同様の判定ルール則を適用する。
【0047】
予兆値と限界値は冷却運転中のデータを基に設定し、記憶する。ここで、予兆値と限界値の設定方法を、図5のフローチャートに従い説明する。図5は、実施の形態1における冷却能力または着霜量の推定/除霜許可手段による予兆値、限界値を設定するフローチャートである。
除霜運転が終了し、冷却運転が開始されると、冷却能力または着霜量の推定/除霜許可手段は、図5の予兆値および限界値の設定動作に入る。図5において、まず学習済フラグが0か否かを判断する(ST1)。初期は学習済フラグは0である。初期学習を行っていなければ(学習済フラグが0であれば)、次いで、庫内温度が庫内目標温度+k以下か否かを判断する(ST2)。除霜開始後の冷却初期は庫内温度が高くなっており、庫内温度がある程度低くなってから学習を開始する必要があるためである。そして庫内温度が目標温度近辺にまで冷えていたら(例えば目標温度+5℃以下だったら)、利用予定の特徴量のデータを測定または取得し、各特徴量のデータの平均値および最大値を算出し、学習する(ST3)。特徴量の平均値および最大値は、学習時間中、逐次更新する。ただし、極端に値の離れたノイズと思われる特徴量データについては、除外するものとする。そして、学習した特徴量のデータ数がある程度の数、例えば30個、になるか、学習時間が一定時間、例えば2時間、過ぎたら、学習を完了し(ST4)、学習済フラグを1にセットする(ST5)。そして、(11)式、(12)式に従い、各特徴量毎に、予兆値および限界値をセットする(ST6)。なお、予兆値は限界値に至る前の限界値よりも小さい値であり、従ってαはβよりも小さい値に設定される。
【0048】
特徴量データを学習するデータ数としては、データのばらつきから考えて、20個から30個くらいが望ましいが、それに限るものではない。また、ここでは予兆値および限界値を、最大値と平均値との差に定数を掛けたものに平均値を加えて求めているが、それに限られるものではなく、ショーケース熱交換器27の冷却能力または着霜量の限界値および予兆値が設定できる他のどんな式を利用してもよい。
【0049】
学習が終了し、各特徴量毎の予兆値および限界値が設定されたら、冷却能力または着霜量の推定/除霜許可手段は、着霜量または冷却能力低下判定(推定)に入る。次に、図6を用いてその判定動作を説明する。図6は、実施の形態1における冷却能力または着霜量の推定/除霜許可手段による熱交換器の冷却能力または着霜量の推定の一例を示すフローチャートである。なお、この例では、特徴量が3つの場合を例に説明を行っているが、特徴量の数はこれに限られるものではない。
まず、学習済フラグが1か否かを見て初期学習が完了しているかを判断する(ST11)。初期学習が完了していれば次に移り、特徴量1が限界値1を超えているか(ST12)、特徴量2が限界値2を超えているか(ST13)、特徴量3が限界値3を超えているか(ST14)、特徴量1が予兆値を超えていてかつ特徴量2が予兆値2を超えていてかつ特徴量3が予兆値3を超えているか(ST15)、のいずれかが成り立った場合、着霜量が増加しているまたは冷却能力が低下していると推定し、除霜を行う必要があると判断して、除霜フラグを1にセットする(ST16)。すなわち、各特徴量全部が予兆値を超えたら着霜限界と判断し、各特徴量のいずれかが限界値を超えたら着霜限界と判断して、ヒータ40の動作開始許可の信号(除霜フラグ)を発する。このように、同一の特徴量を用いて、異なる判断ロジックによって判断することにより、早期かつ確実に着霜量限界による冷却能力低下を検知することができる。
【0050】
ただし、以上により除霜フラグがセットされても(ヒータ40の動作開始許可の信号が出されても)、すぐに除霜を行うわけではなく、次のタイマーでの設定時刻になるまで待ち、タイマーと同期させて除霜運転を行う。次に図7を用いてその動作を説明する。図7は、ショーケース内制御基板42による、動作開始許可信号と除霜実行信号とに基づくヒータ40の除霜運転制御の一例を示すフローチャートである。図7において、除霜フラグが1にセットされているか否かを判断し(ST21)、除霜フラグがセットされていた場合は、除霜タイマーが指定時刻になったか否かを判断し(ST22)、指定時刻になっていたら、学習済フラグと除霜フラグをクリアし(ST23)、除霜運転を行う(ST24)。すなわち、除霜フラグがセットされていても、除霜タイマーが指定時刻にならない限りは除霜は行わないようになっている。
【0051】
なお、除霜タイマーはショーケース13内に内蔵されていても構わないし、ショーケースの外部に設置されていても構わない。また、除霜タイマーと同じ機能の手段が、ショーケース内制御基板42に組み込まれていても構わない。また、除霜タイマーは、通常の時計式の時刻を設定できるものでもよいし、経過時間のみを設定できるものでもよく、アナログ式のものでもデジタル式のものでも構わない。また、除霜タイマーは、一定時間毎または指定時刻にショーケース内制御基板42に信号を送出できるものであればよい。すなわち、除霜タイマーとしては、タイマーとして機能するものであれば何でもよく、タイマーの他、例えばパソコンやその他外部機器からの指令などであっても構わない。
【0052】
なお、ショーケース13の冷凍サイクル内を循環する冷媒は、どんなものでもよく、二酸化炭素、炭化水素、ヘリウムのような自然冷媒、HFC410A、HFC407Cなどの代替冷媒など塩素を含まない冷媒、もしくは既存の製品に使用されているR22、R134aなどのフロン系冷媒のいずれでもよい。
【0053】
また、圧縮機11は、レシプロ、ロータリー、スクロール、スクリューなどの各種タイプのいずれのものを用いてもよく、回転数可変可能のものでも、回転数固定のものでも構わない。
【0054】
また、ここでは冷媒の蒸発温度を検出する温度センサが熱交換器の入口側に設置されている場合を例に説明を行ったが、冷媒の蒸発温度が検出できる位置であればどこでもよく、熱交換器の中央付近に設置してもよい。また、冷媒の圧力を測定する圧力センサを圧縮機の吸入から膨張手段に至る流路のいずれかに設置し、これを蒸発温度に換算するようにすれば冷媒温度センサは設置しなくてもよい。
【0055】
また、ここでは、除霜運転の開始を判断する特徴量として、空気温度と冷媒温度から演算される値を用いたが、これに限るものではなく、冷却能力または冷却能力の低下を判断できるものであればどんなものでもよい。例えば、冷媒の流量が分かっていれば、圧力と温度を測定して、熱交換器の入口冷媒エンタルピーと出口冷媒エンタルピーを演算することにより、冷却能力を直接演算、把握することができ、除霜要否の判断に使用することができる。
【0056】
また、ここでは、冷凍機11にショーケース13が2台接続されている場合を例に説明を行ったが、これに限るものではなく、1台でも構わないし、3台以上接続されていても構わない。
【0057】
また、冷凍機11に液溜24が内蔵されている場合を例に説明を行ったが、当然、液溜24がない構成でもよく、何ら作用効果が変わるわけではない。
【0058】
また、冷凍機11内に、圧縮機21、室外熱交換器22、室外熱交換器用ファン23、液溜24が内蔵されている場合を例に説明を行ったが、これに限るものではなく、室外熱交換器22および室外熱交換器用ファン23が圧縮機21とは別体に置かれているリモートコンデンサ方式のものであっても構わない。
【0059】
また、冷凍装置が扉のないオープンショーケースである場合を例に説明を行ったが、扉が付いているリーチインショーケース、冷蔵・冷凍倉庫に用いられるユニットクーラ、その他何でも構わない。類似の構成のものであれば、ルームエアコンやパッケージエアコンなどの空調機でも同様の効果を奏する。
【0060】
また、冷凍機11とショーケース13が別体になっている別置型のショーケースを例に説明を行ったが、ショーケース13内に圧縮機21、室外熱交換器22などを内蔵した内蔵型のショーケースであってもよく、同様の効果を奏する。
【0061】
さらに、上記実施の形態における着霜量推定手段または冷却能力推定手段として、ショーケース熱交換器27の着霜量またはそれに準ずるものを直接測定する構成を採用してもよく、同様の効果を奏する。例えば、図8に示すように、LEDなどの光センサの発光部47aと受光部47bとからなる光学式着霜センサ47を、熱交換器27のフィン27a近辺に配置し、霜の厚さによる反射率(発光量に対する受光量の比)の変化を測定し、その変化を光量判定制御部48で着霜量に換算するようにしてもよい。また、霜に触れる位置に電極を配置し、霜と空気の静電容量の違いから霜の厚さを測定するようにしてもよい。また、サーモパイルなどにより非接触で対象物の温度を測定する放射温度センサなどにより、霜の表面温度を測定するようにしてもよい。霜は成長に従い、表面温度が上がって空気温度に近づいてくるため、霜の表面温度を測定し、霜の厚さに換算し、着霜量を把握することも可能である。
【0062】
以上のように本実施の形態の冷凍装置は、熱交換器への着霜量または冷却能力の低下を検出して除霜運転を行うことにより、無駄なエネルギーの投入を防いで省エネにすることができ、タイマーと同期させて除霜運転を行うことにより、店の閉店時間などの客の少ない時間帯に合わせて除霜運転を行うことができ、店の運用を阻害せず、省エネにすることができる。
【0063】
実施の形態2.
実施の形態1では、複数のショーケースが別々に動作する場合について説明を行ったが、実際には複数のショーケースが連動して制御される場合もある。本実施の形態2では、図9を用いて、これについて説明する。なお、実施の形態1と同一の部分に付いては説明を省略する。
【0064】
図9において、ショーケースは、グループ1(ショーケース13a〜13c)、グループ2(ショーケース13d〜13h)、グループ3(ショーケース13i〜13k)の3つのグループに分けられて、店舗14内に複数隣接して設置されている。このような場合に、それぞれの隣接したショーケースにおいてばらばらに除霜運転を行うと、ショーケースの壁面を通じて除霜時の熱が隣接するショーケースに伝わるため、余計な冷却エネルギーが発生し消費電力が増大する。また、隣接するショーケースの除霜熱の影響で、ショーケース庫内の壁面近辺の食品の温度が上がり、品質面でも問題がある。そこで、隣接する複数のショーケースをグループとしてまとめ、除霜運転はグループ単位で行うように設定する。そして、これらのショーケースのグループ管理は、統合コントローラ15により行っている。統合コントローラ15は、各ショーケース13a〜13kにあるショーケース内制御基板42(図3参照)と接続される。
【0065】
すなわち、除霜開始の要否の最終判定は各ショーケース13a〜13k内の制御基板42で行い、除霜が必要と判断した場合は、各ショーケース毎に除霜フラグを立てる。そして、統合コントローラ15は各ショーケース内各制御基板42から除霜フラグの値を通信で取得し、各グループのショーケースのうち1台でも除霜フラグが立っていれば、そのグループの全ショーケースに対し、次の除霜タイマーでの指定時刻と同期させて除霜運転を行うように信号を出す。また、グループ内のどのショーケースの除霜フラグも立っていなければ、統合コントローラ15はそのグループのショーケースに対しては除霜信号(除霜実行信号)を出さず、除霜運転をスキップさせ、次のタイマーでの指定時刻まで除霜運転を行わないようにしている。このようにすることにより、ランダムなショーケースの除霜運転に起因する、壁を通しての無駄なエネルギーの侵入を防いで、確実な省エネがはかれる。
【0066】
なお、複数のグループのショーケースを1つの統合コントローラに接続するようにしてもよいし、各グループ毎に別々の統合コントローラに接続するようにしてもよい。
【0067】
また、上記除霜タイマーは、統合コントローラ15に接続されていてもよいし、各ショーケース内制御基板42に接続されていても構わない。統合コントローラ15に接続した場合は、タイマーが一つでよく安価に構成できる利点がある。一方、ショーケース内制御基板42に接続した場合は、統合コントローラ15は、ショーケース内制御基板42間から受信した1か0かの信号を加算し、これが1以上か否かで除霜の有無を判断することができ、統合コントローラ15に複雑な演算手段を持たせる必要がないという利点がある。
【0068】
また、統合コントローラ15と各ショーケース内制御基板42間の通信は、1か0かのデジタル信号、アナログ電圧信号、無電圧接点信号、文字列を通信する方式など、どんな通信方式を用いても構わない。
【0069】
また、統合コントローラ15と各ショーケース内制御基板42の接続は、信号やデータの送受信が可能になっていればどんな方式でもよく、有線、無線あるいはその他の通信手段であっても構わない。
【0070】
また、統合コントローラ15を複数設置した場合は、それぞれの統合コントローラ同士で信号のやり取りを行い、これらを連携させて制御するようにしても構わない。
【0071】
また、統合コントローラ15は、冷凍装置13の近くに設置してもよいし、インターネットや電話回線を介して遠隔に設置してもよい。冷凍装置の近くに設置すると、制御速度を向上させることができ、安定性のよい制御システムを得ることができるし、遠隔に設置すると、現地のコントローラ設置スペースの削減になる。
【0072】
以上のように本実施の形態の冷凍システムは、隣接したショーケースでの除霜タイミングを一致させることにより、ショーケースの壁を通しての無駄なエネルギーの侵入を防ぎ、確実に省エネにできる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】この発明の実施の形態1に係る冷凍装置の店舗への設置を示す説明図。
【図2】この発明の実施の形態1に係る冷凍装置の冷媒回路図。
【図3】この発明の実施の形態1に係る冷凍装置のショーケースの内部構成図。
【図4】冷凍装置の熱交換器内での空気温度の変化を示す図。
【図5】実施の形態1における冷却能力または着霜量の推定/除霜許可手段による予兆値、限界値を設定するフローチャート。
【図6】実施の形態1における冷却能力または着霜量の推定/除霜許可手段による熱交換器の冷却能力または着霜量の推定および除霜許可設定のフローチャート。
【図7】実施の形態1における動作開始許可信号と除霜実行信号とに基づく除霜運転制御のフローチャート。
【図8】光学式着霜検知方法の一例を示す説明図。
【図9】この発明の実施の形態2を示す冷凍システムの店舗への接続図の詳細図。
【符号の説明】
【0074】
1 空調用室外機、11 冷蔵用または冷凍用冷凍機、12 空調用室内機、13 冷蔵用または冷凍用ショーケース、14 店舗、15 統合コントローラ、21 圧縮機、22 室外熱交換器、23 室外熱交換器用ファン、24 液溜、25 開閉弁、26 膨張手段、27 ショーケース熱交換器、28 ショーケース熱交換器用ファン、30 ショーケース熱交換器冷媒入口温度センサ、31 ショーケース熱交換器吸込空気温度センサ、32A,32B ショーケース熱交換器吹出空気温度センサ、40 ヒータまたは他の除霜手段、41 タイマー、42 ショーケース内制御基板、43 マイクロコンピュータ(冷却能力または着霜量の推定/除霜許可手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器と、前記熱交換器に冷熱を供給する冷却運転手段と、前記熱交換器に付着した霜を除霜する除霜運転手段と、前記冷却運転における前記熱交換器の冷却能力または冷却能力の低下を推定する冷却能力推定手段と、前記冷却能力推定手段の推定結果に基づいて前記除霜運転手段の動作開始を許可する除霜許可手段とを有し、
前記除霜運転手段は、前記除霜許可手段が前記動作開始を許可した場合、装置の内部の又は外部からの除霜実行信号と同期して前記熱交換器の除霜を行うことを特徴とする冷凍装置。
【請求項2】
熱交換器と、前記熱交換器に冷熱を供給する冷却運転手段と、前記熱交換器に付着した霜を除霜する除霜運転手段と、前記冷却運転における前記熱交換器の冷却能力または冷却能力の低下を推定する冷却能力推定手段と、前記冷却能力推定手段の推定結果に基づいて前記除霜運転手段の動作開始を許可する除霜許可手段とを有し、
前記除霜運転手段は、前記除霜許可手段が前記動作開始を許可していない場合、装置の内部のまたは外部からの除霜実行信号が入っても前記熱交換器の除霜を行わず、次の除霜タイミングまで除霜開始を延長することを特徴とする冷凍装置。
【請求項3】
前記冷却能力推定手段は、前記熱交換器の冷却能力を表す複数の特徴量に関して設定した限界値と該限界値に至る前の予兆値とを用い、同一の特徴量を異なる判断ロジックを利用して推定を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷凍装置。
【請求項4】
熱交換器と、前記熱交換器に冷熱を供給する冷却運転手段と、前記熱交換器に付着した霜を除霜する除霜運転手段と、前記冷却運転における前記熱交換器の冷却能力または冷却能力の低下を推定する冷却能力推定手段と、前記冷却能力推定手段の推定結果に基づいて前記除霜運転手段の動作開始を許可する除霜許可手段とを有し、
前記冷却能力推定手段は、前記熱交換器の冷却能力を表す複数の特徴量に関して設定した限界値と該限界値に至る前の予兆値とを用い、同一の特徴量を異なる判断ロジックを利用して推定を行うことを特徴とする冷凍装置。
【請求項5】
前記複数の特徴量は、
(前記熱交換器の吸込空気温度−前記熱交換器の吹出空気温度)、
(前記熱交換器の吸込空気温度−前記熱交換器の吹出空気温度)/(前記熱交換器の吸込空気温度−前記熱交換器の冷媒蒸発温度)、
庫内温度=(前記熱交換器の吸込空気温度+庫内の吹出空気温度)/2
≒(前記熱交換器の吸込空気温度+前記熱交換器の吹出空気温度)/2、
(前記熱交換器の吸込空気温度−前記熱交換器の吹出空気温度)/(前記庫内温度−前記熱交換器の冷媒入口温度)、
(前記熱交換器の吸込空気温度−前記熱交換器の冷媒蒸発温度)、
(前記庫内温度−前記熱交換器の冷媒蒸発温度)、および
(前記熱交換器の吸込空気温度−前記熱交換器の冷媒蒸発温度)+(前記庫内温度−前記熱交換器の冷媒蒸発温度)、
の各量のうちの少なくとも2つであることを特徴とする請求項3または請求項4のいずれかに記載の冷凍装置。
【請求項6】
前記複数の特徴量は、
(前記熱交換器の吸込空気温度−前記熱交換器の吹出空気温度)、
(前記熱交換器の吸込空気温度−前記熱交換器の冷媒蒸発温度)/(前記熱交換器の吸込空気温度−前記熱交換器の吹出空気温度)、
庫内温度=(前記熱交換器の吸込空気温度+庫内の吹出空気温度)/2
≒(前記熱交換器の吸込空気温度+前記熱交換器の吹出空気温度)/2、
(前記庫内温度−前記熱交換器の冷媒入口温度)/(前記熱交換器の吸込空気温度−前記熱交換器の吹出空気温度)、
(前記熱交換器の吸込空気温度−前記熱交換器の冷媒蒸発温度)、
(前記庫内温度−前記熱交換器の冷媒蒸発温度)、および
(前記熱交換器の吸込空気温度−前記熱交換器の冷媒蒸発温度)+(前記庫内温度−前記熱交換器の冷媒蒸発温度)、
の各量のうちの少なくとも2つであることを特徴とする請求項3または請求項4のいずれかに記載の冷凍装置。
【請求項7】
前記熱交換器の入口側の風路に設置され吸込空気温度を検出する吸込空気温度検出手段と、前記熱交換器の出口側の風路に設置され吹出空気温度を検出する1個以上の吹出空気温度検出手段と、前記熱交換器の入口側あるいは熱交換器内の冷媒流路のいずれかの位置に設置され冷媒の飽和温度を検出する冷媒温度検出手段または冷媒の飽和温度を算出するための冷媒圧力検出手段とを備えたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の冷凍装置。
【請求項8】
前記吹出空気温度検出手段が複数設置されている場合は、それらの平均温度またはそれらのうちの1つを吹出空気温度として使用することを特徴とする請求項7に記載の冷凍装置。
【請求項9】
熱交換器と、前記熱交換器に冷熱を供給する冷却運転手段と、前記熱交換器に付着した霜を除霜する除霜運転手段と、前記熱交換器の着霜量を推定する着霜量推定手段と、前記着霜量推定手段の推定結果に基づいて前記除霜運転手段の動作開始を許可する除霜許可手段とを有し、
前記除霜運転手段は、前記除霜許可手段が前記動作開始を許可した場合、装置の内部のまたは外部からの除霜実行信号と同期して前記熱交換器の除霜を行うことを特徴とする冷凍装置。
【請求項10】
冷媒回路に接続された熱交換器と、前記熱交換器に冷熱を供給する冷却運転手段と、前記熱交換器に付着した霜を除霜する除霜運転手段と、前記熱交換器の着霜量を推定する着霜量推定手段と、前記着霜量推定手段の推定結果に基づいて前記除霜運転手段の動作開始を許可する除霜許可手段とを有し、
前記除霜運転手段は、前記除霜許可手段が前記動作開始を許可していない場合、装置の内部のまたは外部からの除霜実行信号が入っても前記熱交換器の除霜を行わず、次の除霜タイミングまで除霜開始を延長することを特徴とする冷凍装置。
【請求項11】
熱交換器と、前記熱交換器に冷熱を供給する冷却運転手段と、前記熱交換器に付着した霜を除霜する除霜運転手段と、前記熱交換器の着霜量を推定する着霜量推定手段と、前記着霜量推定手段の推定結果に基づいて前記除霜運転手段の動作開始を許可する除霜許可手段とを有し、
前記着霜量推定手段は、前記熱交換器の着霜量を表す複数の特徴量に関して設定した限界値と該限界値に至る前の予兆値とを用い、同一の特徴量を異なる判断ロジックを利用して推定を行うことを特徴とする冷凍装置。
【請求項12】
初期冷却運転中の一定時間における前記特徴量の平均値および最大値に基づいて、前記予兆値および前記限界値を設定することを特徴とする請求項3、請求項4または請求項11に記載の冷凍装置。
【請求項13】
熱交換器と、前記熱交換器に冷熱を供給する冷却運転手段と、前記熱交換器に付着した霜を除霜する除霜運転手段と、前記冷却運転における前記熱交換器の冷却能力または冷却能力の低下を推定する冷却能力推定手段または着霜量を推定する着霜量推定手段と、前記冷却能力推定手段または前記着霜量推定手段の推定結果に基づいて除霜を許可する除霜許可手段と、前記除霜許可手段による除霜許可判断結果を外部に出力する通信手段と、複数の冷凍装置と有線または無線にて接続される外部コントローラとを備え、
前記外部コントローラは、前記外部コントローラに接続された冷凍装置のうち、どれか一つの冷凍装置において除霜が許可された場合に、前記外部コントローラに接続されたすべての冷凍装置に対して前記除霜運転手段の運転を行わせることを特徴とする冷凍システム。
【請求項14】
熱交換器と、前記熱交換器に冷熱を供給する冷却運転手段と、前記熱交換器に付着した霜を除霜する除霜運転手段と、前記冷却運転における前記熱交換器の冷却能力または冷却能力の低下を推定する冷却能力推定手段または着霜量を推定する着霜量推定手段と、前記冷却能力推定手段または前記着霜量推定手段の推定結果に基づいて除霜を許可する除霜許可手段と、前記除霜許可手段による除霜許可判断結果を外部に出力する通信手段と、複数の冷凍装置と有線または無線にて接続される外部コントローラとを備え、
前記外部コントローラは、接続された冷凍装置を1つまたは複数のグループに分類して、同一グループに分類された冷凍装置のうち、どれか一つの冷凍装置において除霜が許可された場合に、前記同一グループに分類されたすべての冷凍装置に対して前記除霜運転手段の除霜運転を行わせることを特徴とする冷凍システム。
【請求項15】
前記外部コントローラの除霜実行信号または前記冷凍装置の外部からの除霜実行信号と同期して、前記外部コントローラに接続されたすべての冷凍装置に対し除霜運転を行わせることを特徴とする請求項13記載の冷凍システム。
【請求項16】
前記外部コントローラの除霜実行信号または前記冷凍装置の外部からの除霜実行信号と同期して、前記同一グループに分類されたすべての冷凍装置に対し除霜運転を行わせることを特徴とする請求項14記載の冷凍システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−215798(P2008−215798A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270181(P2007−270181)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000004422)日本建鐵株式会社 (152)
【Fターム(参考)】