説明

冷凍装置のケーシング構造及びそのケーシングの製造方法

【課題】内側板と外側板と間の断熱層に、機器の取付けボルトが螺合するナットを設けられた冷凍装置のケーシングにおいて、ナットの固定力の安定化と製造工程の簡略化と製造時間の低減とを図ることである。
【解決手段】冷凍装置のケーシングの機器取付板(s1)は、内側板(2)と外側板(3)とウレタン等の断熱材が充填された断熱層(4)とを備えている。内側板(2)には、機器(16)を取り付けるための取付けボルト(30)を貫通させるための取付孔(31)が設けられ、断熱層(4)中には、取付孔(31)に対応して、ナット(40)と、凸部(43)及びナット(40)が溶接された座部(42)を備えたL字型片(41)が設けられている。L字型片は、座部(42)を内側板(2)に当接させ、凸部(43)を外側板(3)に向かって突出させて断熱層(4)中に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍装置のケーシング構造及びそのケーシングの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンテナのケーシング内に、食料品等の運搬物を貯蔵して冷却を行いながら運搬される冷凍コンテナが知られている。このような冷凍コンテナのケーシングは、庫内の気密性と、庫内と庫外との断熱性とを確保できる構造になっている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1の冷凍コンテナのケーシングは、金属製の庫外ケーシングと合成樹脂が一体形成されてなる庫内ケーシングとの間に発泡合成樹脂製の断熱層が形成されることにより、庫内の気密性及び断熱性が確保されている。
【特許文献1】特開平8−337285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の冷凍装置においては、庫内ケーシングに、庫内を冷却するための機器が取付られている。
【0005】
具体的に、図7に示すように、庫内ケーシング(2)には、機器(16)を取り付けるための取付けボルト(30)を貫通させる取付孔(31)が設けられ、断熱層(4)中には、この取付けボルト(30)が螺合するように、取付孔(31)に対応してナット(40)が設けられている。このナット(40)は、樹脂製の接着剤(100)を充填した型容器(101)を被せて、この接着剤(100)の接着力によって、内側板(2)に取付られている。そのため、接着剤(100)の接着力にばらつきがあると、取付けボルト(30)を挿入する際に、ナット(40)が外れて空回りするという問題点があった。
【0006】
また、このナット(40)が設けられたケーシングの製造方法としては、先ず、内側板(2)の取付孔周辺をサンディングして、サンディング面を有機溶剤で洗浄し、サンディング面にナット(40)を当接させて仮止めボルトで仮止めした後、樹脂製の接着剤(100)を調合して、この接着剤(100)を充填した型容器(101)をナット(40)に被せ、約12時間かけて接着剤(100)を硬化させることにより、ナット(40)を固定していた。そして、最終工程において、仮止めボルトを外して、ウレタンのような発泡性を有する断熱材を充填をして、断熱層(4)を形成していた。そのため、サンディング、洗浄、接着剤の混合等、加工工程が多くなると共に、接着剤の硬化に要する時間が長いために、製造時間が長くなるという問題点があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、内側板と外側板と間の断熱層に、機器の取付けボルトが螺合するナットを設けた冷凍装置のケーシングにおいて、ナットの固定力の安定化を図ると共に、このケーシングの製造工程の簡略化と製造時間の低減とを図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、外側板(3)と、内側板(2)と、該外側板(3)と内側板(2)との間に形成された断熱材からなる断熱層(4)とを備え、上記内側板(2)に機器(16)の取付けボルト(30)が貫通する取付孔(31)が形成された冷凍装置のケーシング構造であって、上記内側板(2)の取付孔(31)に対応して上記断熱層(4)に設けられ、上記取付けボルト(30)が螺合するナット(40)と、上記ナット(40)が取り付けられ、上記内側板(2)に当接する座部(42)及び、該座部(42)から上記外側板(3)に向かって突出する凸部(43)を有し、上記内側板(2)の取付孔(31)に対応して上記断熱層(4)に設けられた回り止め片(41)とを備えている。
【0009】
この第1の発明では、上記ナット(40)を上記回り止め片(41)に取り付けたために、上記回り止め片(41)の座部(42)によって、上記ナット(40)のみを上記内側板(2)に当接させるよりも、上記内側板(2)との接触面積を大きくできることと、上記回り止め片(41)が凸部(43)を備えていることとにより、上記座部(42)及び上記凸部(43)が断熱層(4)中で断熱材から受ける抵抗力を利用して、上記ナット(40)が取付孔(31)に対応する位置から落下することと、取付けボルト(30)を螺合する際に空回りすることとを防止する。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、上記回り止め片(41)の座部(42)は、取付けボルト(30)と直交方向に延びる平板に形成されている。
【0011】
この第2の発明では、上記座部(42)を、上記内側板(2)に確実に当接させて、上記ナット(40)の空回りと落下を防止する。
【0012】
第3の発明は、第2の発明において、上記回り止め片(41)の凸部(43)は、上記座部(42)の一辺から取付けボルト(30)の軸方向に折り曲げて形成されている。
【0013】
この第3の発明では、上記回り止め片(41)の凸部(43)が、上記内側板(2)と略垂直になるので、断熱層(4)において、上記凸部(43)に断熱材の抵抗力が確実に作用する。また、上記回り止め片(41)を、上記座部(42)に上記凸部(41)を、わざわざ取り付けることなく、座部(42)を折り曲げて形成し、回り止め片(41)を構成する部品点数の低減と加工の簡素化を図る。
【0014】
第4の発明は、第3の発明の例示であって、上記回り止め片(41)は、断面L字状に形成されたL字型片(41)である。
【0015】
第5の発明は、第1の発明において、上記回り止め片(41)の座部(42)には、上記取付けボルト(30)が貫通する貫通孔(42a)が設けられ、上記ナット(40)は、上記貫通孔(42a)に上記ナット(40)のネジ穴(40a)が対応するように、上記回り止め片(41)に溶接されている。
【0016】
この第5の発明では、上記ナット(40)と上記回り止め片(41)とを溶接して、確実に固定する。また、上記取付けボルト(30)が、上記回り止め片(41)の座部(42)を介して上記ナット(40)に螺合されるので、上記回り止め片(41)の座部(42)が上記ナット(40)の座金として機能する。
【0017】
第6の発明は、第1の発明において、上記回り止め片(41)の座部(42)には、上記ナット(40)を嵌め合わせて固定するための嵌合孔(42b)が設けられている。
【0018】
この第6の発明では、上記回り止め片(41)と上記ナット(40)とを、溶接することなく固定することができるので、上記回り止め片(41)に上記座部(42)を取り付ける工程が簡素化される。
【0019】
第7の発明は、第1の発明において、上記回り止め片(41)の凸部(43)には、断熱材の充填孔(43a)が形成されている。
【0020】
この第7の発明では、上記断熱材が充填される際に、断熱材が上記回り止め片(41)の凸部(43)を通って充填されるので、空隙がなく均一な断熱層を形成することができる。
【0021】
第8の発明は、外側板(3)と、内側板(2)と、該外側板(3)と内側板(2)との間に形成された断熱層(4)とを備え、上記内側板(2)に機器(16)の取付けボルト(30)が貫通する取付孔(31)が形成された冷凍装置のケーシングの製造方法であって、上記取付けボルト(30)が螺合するナット(40)が取り付けられた座部(42)と該座部(42)から取付けボルト(30)の軸方向に突出する凸部(43)とを有する回り止め片(41)とナット(40)とを上記外側板(3)と内側板(2)との間に位置させ、且つ上記内側板(2)に上記回り止め片(41)の座部(42)を当接させ、内側板(2)の取付孔を貫通する仮止めボルト(45)を上記ナットに螺合して内側板(2)に取り付ける仮止め工程と、次に、上記外側板と内側板との間に断熱材を充填して断熱層(4)を形成する断熱工程と、次いで、上記仮止めボルト(45)を取り外し、取付けボルト(30)をナット(40)に螺合して機器(16)を内側板(2)に取り付ける機器取付工程とを備えている。
【0022】
この第8の発明では、上記ナット(40)が、上記回り止め片(41)に取り付けられているために、上記ナット(40)を仮止め後に、上記断熱材を上記ナット(40)及び上記回り止め片(41)の周辺に隙間なく充填して断熱層(4)を形成し、該断熱層(4)中において、上記回り止め片(41)の座部(42)と凸部(43)に作用する抵抗力により上記ナット(40)を固定する。また、従来のように、接着剤を用いてナット(40)を取り付ける必要がないので、内側板(2)の取付孔(31)周辺の処理や、接着剤の混合等行う必要がなく製造工程が簡略化されると共に、接着剤を硬化させる必要がなくなるので、製造時間が短縮される。
【発明の効果】
【0023】
上記第1の発明によれば、上記ナット(40)を上記回り止め片(41)に取り付けたために、上記回り止め片(41)の座部(42)によって、上記ナット(40)のみを上記内側板(2)に当接させるよりも、上記内側板(2)との接触面積を大きくできることと、上記回り止め片(41)が凸部(43)を備えていることとにより、上記座部(42)及び上記凸部(43)が断熱層(4)中で断熱材から受ける抵抗力を利用して、上記ナット(40)が取付けボルト(30)を螺合する際に空回りすることと、取付孔(31)に対応する位置から落下することとを防止することができる。これにより、機器(16)の取付において、固定力が安定する。
【0024】
また、上記第2の発明によれば、第1の発明において、上記回り止め片(41)の座部(42)は、取付けボルト(30)と直交方向に延びる平板に形成したために、上記座部(42)を、上記内側板(2)に確実に当接させることができるので、上記ナット(40)の空回りと落下とを防止することができる。
【0025】
また、上記第3の発明によれば、第2の発明において、上記回り止め片(41)の凸部(43)は、上記座部(42)の一辺から取付けボルト(30)の軸方向に折り曲げて形成したために、上記回り止め片(41)の凸部(43)が、上記内側板(2)と略垂直になるので、断熱層(4)において、上記凸部(43)に断熱材の抵抗力を確実に作用させることができる。
【0026】
また、上記座部(42)に上記凸部(41)をわざわざ取り付けて回り止め片(41)を作る必要がないので、回り止め片(41)を構成する部品点数の低減と加工の簡素化とを図ることができる。
【0027】
また、上記第4の発明によれば、第3の発明の例示であって、上記回り止め片(41)は、断面L字状に形成されたL字型片(41)である。
【0028】
また、上記第5の発明によれば、第1の発明において、上記回り止め片(41)の座部(42)に、上記取付けボルト(30)が貫通する貫通孔(42a)を設け、上記ナット(40)は、上記貫通孔(42a)に上記ナット(40)のネジ穴(40a)が対応するように、上記回り止め片(41)に溶接したために、上記ナット(40)が上記回り止め片(41)に確実に固定される。
【0029】
また、上記取付けボルト(30)を上記回り止め片(41)の座部(42)を介して上記ナット(40)に螺合されるので、上記回り止め片(41)の座部(42)が上記ナット(40)の座金として機能し、上記ナット(40)と取付けボルト(30)との締め付け力の安定化を図ることができる。
【0030】
また、上記第6の発明によれば、上記回り止め片(41)の座部(42)の嵌合孔(42b)に、上記ナット(40)を嵌め合わせて固定するようにしたために、上記回り止め片(41)の座部(42)に上記ナット(40)を溶接等する必要がなくなるので、上記回り止め片(41)に上記座部(42)を取り付ける工程の簡素化を図ることができる。
【0031】
また、上記第7の発明によれば、第1の発明において、上記回り止め片(41)の凸部(43)には、断熱材の充填孔(43a)が形成されているために、上記断熱材が充填される際に、断熱材が上記回り止め片(41)の凸部(43)を通って充填される。これにより、断熱層(4)を空隙なく均一に形成することができる。また、上記凸部(43)の周辺においても、空隙なく断熱材が充填されるので、上記凸部(43)には、確実に断熱材の抵抗力が作用して、上記ナット(40)の空回り及び落下を防止することができる。
【0032】
また、上記第8の発明によれば、上記ナット(40)が、上記回り止め片(41)に取り付けられているために、上記ナット(40)を仮止め後に、上記断熱材を上記ナット(40)及び上記回り止め片(41)の周辺に隙間なく充填して断熱層(4)を形成し、該断熱層(4)中において上記回り止め片(41)の座部(42)と凸部(43)に作用する抵抗力を利用して、上記ナット(40)を固定することができる。
【0033】
また、従来のように、接着剤を用いてナット(40)を取り付ける必要がないので、内側板(2)の取付孔(31)周辺の処理や、接着剤の混合等行う必要がなく製造工程が簡略化することができると共に、接着剤を硬化させる必要がなくなるので、製造時間の短縮化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0035】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1は、図1に示す冷凍コンテナ(10)であって、ケーシング(11)を備え、該ケーシング(11)内に貯蔵された運搬物を冷却しながら、コンテナ船やコンテナ車によって運搬されるものである。
【0036】
上記ケーシング(11)は、図1に示すように、天板(t)と底板(b)と4枚の側面板(s1,s2,s3,s4)とを備え、略直方体に形成されている。図1における左手前側の側面板(s1)は、機器取付板(s1)であって、コンテナ内部の冷却を行う冷却機器が取り付けられている。
【0037】
図2は、上記機器取付板(s1)の図1におけるA−A線断面図である。上記ケーシングを構成する各板(t,b,s1,s2,…)は、図2に示すように、内側板(2)と、外側板(3)と、断熱層(4)とを備えている。上記内側板(3)は、合成樹脂材料から一体的に形成された板厚3mmの合成樹脂板であり、上記外側板(3)は、例えば、アルミ合金等の金属を板状に形成した板厚3mmの金属板である。上記断熱層(4)は、上記内側板(2)及び外側板(3)の間に介在して設けられ、上記内側板(2)及び外側板(3)の間にウレタン等の発泡性の断熱材を充填して形成されたものである。なお、上記機器取付板(s1)を除く各板(t,b,s2,s3,s4)は、扁平な板状に形成されている。
【0038】
上記機器取付板(s1)は、下部がコンテナ(10)庫内の方向に屈曲し、コンテナ(10)庫外においては、下部に凹部(5)が形成され、コンテナ(10)庫外においては、上部に凹部(6)が形成されている。上記機器取付板(s1)の庫外凹部(5)には、圧縮機(20)、凝縮器(14)、膨張機構(22)が設けられ、上記側面板の庫内凹部(6)には、蒸発器(16)が設けられ、これらが図示しない冷媒配管により順に接続されて蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒回路を構成している。さらに、上記機器取付板(s1)の庫外凹部(5)には、上記凝縮器(14)に庫外空気を送るためのファン(18)が設けられ、上記機器取付板(s1)の庫内凹部(6)には、上記蒸発器(16)に庫内空気をに送るための庫内ファン(19)が設けられている。
【0039】
次に、本発明の特徴である上記機器取付板(s1)の構成について、図3に示す蒸発器(16)の取付構造に基づいて、より詳細に説明する。
【0040】
図3(a)に示すように、機器取付板(s1)の内側板(2)は、取付孔(31)を備えている。該取付孔(31)は、機器を取り付けるための取付けボルト(30)を貫通させるためのものであって、上記内側板(2)に、庫内機器及び取付けボルト(30)の数に応じて、例えば約40個設けられている。
【0041】
上記断熱層(4)には、上記取付孔(31)に対応して、ナット(40)と、該ナット(40)が取り付けられたL字型片(41)とが設けられている。図3(a)及び(b)に示すように、上記L字型片(41)は、例えば、鉄や亜鉛めっき鋼板等からなる金属製の平板の一辺を、略垂直に折り曲げて形成したもので、座部(42)と、凸部(43)とを備えている。つまり、上記L字型片(41)の座部(42)は平板状に形成され、凸部(43)は、上記座部(42)から略垂直方向に突出し、上記L字型片(41)は、上記断熱層(4)中においてナット(40)の回転及び落下等を防止する回り止め片に構成されている。また、上記L字型片(41)の座部(42)は貫通孔(42a)を備える一方、上記凸部(43)は、断熱材の充填孔(43a)を備えている。上記座部(42)は、上記取付けボルト(30)を貫通させるためのものであり、上記充填孔(43a)は、発泡性を有する断熱材を充填する際に、断熱材が円滑に流れ、断熱層を隙間なく形成するためのものである。
【0042】
なお、本実施形態におけるL字型片(41)は、板厚1.2mm、一辺が40mmの正方形の金属平板の一辺を折り曲げて、突出高さ8mmの凸部(43)を形成させたものを用いるが、これらの寸法は特に限定されず、ナット(40)の大きさや、断熱材の種類等に応じて適した寸法のものを用いることが好ましい。
【0043】
上記ナット(40)は、該ナット(40)のネジ穴(40a)が上記L字型片(41)の座部(42)の貫通孔(42a)に対応し、且つ、上記座部(42)に対して、上記ナット(40)と上記凸部(43)とが同じ方向に位置するようにして、上記L字型片(41)の座部(42)に溶接されている。
【0044】
そして、上記L字型片(41)は、上記座部(42)の貫通孔(42a)が、内側板(2)の取付孔(31)に対応し、且つ上記凸部(43)が外側板(3)の方向に突出するように、上記内側板(2)に上記座部(42)を当接させている。これにより、上記断熱層(4)において、上記ナット(40)のネジ穴(40a)は、上記L字型片(41)の座部(42)の貫通孔(42a)を介して上記内側板(2)の取付孔(31)に対応している。
【0045】
このようにして、上記蒸発器(16)は、該蒸発器(16)のフランジ部等に設けられたボルト挿入孔(16a)に、上記取付けボルト(30)を貫通させ、さらに、該取付けボルト(30)を上記内側板(2)の取付孔(31)及び上記L字型片(41)の座部(42)の貫通孔(42a)を介して上記ナット(40)に螺合させることにより、機器取付板(s1)に取り付けられている。
【0046】
−運転動作−
次に、上記冷凍コンテナ(10)の運転動作について説明する。
【0047】
上記冷凍コンテナ(10)の運転を開始すると、庫外凹部(5)に設けられた圧縮機(20)から冷媒が吐出されて凝縮器(14)に導入される。冷媒は、上記凝縮器(14)において、上記庫外ファン(18)によって上記凝縮器(14)に送られた庫外空気に放熱して凝縮され、液冷媒となる。そして、該液冷媒は、上記膨張機構(22)を通って減圧され、上記庫内凹部(6)の蒸発器(16)に導入される。上記蒸発器(16)においては、冷媒が、上記庫内ファン(19)によって上記蒸発器(16)に送られた庫内空気から熱を奪って蒸発し、庫内空気を冷却する。そして、蒸発した冷媒は再び圧縮機(20)に吸入される。このようにして、冷凍コンテナ(10)の庫内は冷却される。
【0048】
−製造方法−
次に、上述したケーシング(11)の機器取付板(s1)の製造方法を、図4に基づいて説明する。
【0049】
まず、準備工程おいて、上記内側板(2)に取付孔(31)を設けた後、上記内側板(2)と外側板(3)とを対向させて配置する。
【0050】
次に、上記ナット(40)の仮止め工程に移る。該仮止め工程においては、先ず、仮止めボルト(45)を上記内側板(2)の取付孔(31)に、上記外側板(3)と反対側から貫通させ、上記ナット(40)を、該ナット(40)が溶接されているL字型片(41)の座部(42)の貫通孔(42a)を介して螺合させる。このようにして、上記内側板(2)に上記座部(42)が当接し、上記L字型片(41)の凸部(43)が上記外側板(3)に向かうように、上記ナット(40)とL字型片(42)とが仮止めされる。
【0051】
そして、上記外側板(3)と内側板(2)との間に断熱層(4)を形成する断熱工程に移る。上記断熱工程においては、ウレタン等の発泡性を有する断熱材を、上記外側板(3)と上記内側板(2)との間に充填する。この際、断熱材には、発泡助剤を混合させておく。上記断熱材は、充填開始時は液状であり、図4の矢印に示すように、上記外側板(3)と上記内側板(2)との間を任意の方向に流れ、上記ナット(4)及びL字型片(41)の取付部分に達すると、上記L字型片(41)の凸部(43)の充填孔(43a)を通って流れる。このようにして、上記内側板(3)及び外側板(4)の間には、断熱材が隙間なく充填されて発泡し、断熱層(4)が形成される。また、上記断熱材は、上記L字型片(41)の座部(42)と上記内側板(2)との間の狭い隙間(2a)にも少量流れ込む。
【0052】
発泡した断熱材が硬化したら、機器取付工程に移る。該機器取付工程では、先ず、上記仮止めボルト(45)を取り外す。ここで、ウレタン等の断熱材は液状で接着性を有するので、上記L字型片(41)は、該L字型片(41)の座部(42)と内側板(2)との隙間(2a)に流入した少量の断熱材により内側板(2)に接着されている。また、上記凸部(43)の周辺には、発泡硬化した断熱材が隙間なく充填されているので、上記凸部(43)が断熱層(4)中で断熱材の抵抗力を受けることから、上記ナット(40)は、上記仮止めボルト(45)を外す際に空回りしたり、外した後に断熱層(4)中を落下することなく、上記取付孔(31)に対応する位置に固定される。そして、取付けボルト(30)を上記蒸発器(16)等のボルト挿入孔(16a)に挿入し、内側板(2)の取付孔(31)及びL字型片(41)の座部(42)の貫通孔(42a)を介して上記ナット(40)に螺合させて内側板(2)に取り付ける。この際においても、上記L字型片(41)の凸部(43)及び座部(42)に、断熱層(4)中の断熱材が抵抗力として作用するので、上記ナット(41)が空回りすることがなく、取付けボルト(30)の固定力が安定する。
【0053】
なお、準備工程における内側板(2)と外側板(3)とを対向させて配置する工程は、少なくとも、断熱工程の前に行うようにすればよい。
【0054】
−実施形態1の効果−
本発明では、冷凍コンテナ(10)のケーシング(11)の機器取付板(s1)において、内側板(2)の取付孔(31)に対応するように、断熱層(4)中にナット(40)と該ナット(40)が溶接されたL字型片(41)を設けて、該L字型片(41)の凸部(43)を上記外側板(3)の方向に突出させたために、上記凸部(43)が断熱層(4)中の断熱材から受ける抵抗力を利用して、上記ナット(40)の移動を防止することができる。また、上記L字型片(41)の座部(42)を平板状にしたために、上記座部(42)を上記内側板(31)に確実に当接させることができるので、上記ナット(40)のみを上記内側板(2)に当接させるよりも上記内側板(2)との接触面積を確実に大きくすることができることから、上記内側板(2a)と上記L字型片(41)の座部(42)との間の隙間(2a)に少量存在する断熱材の接着力を大きく作用させてナット(40)を固定することができる。これにより、上記ナット(40)が取付孔(31)に対応する位置から落下することと、取付けボルト(30)が螺合する際に空回りすることとを防止することができるので、蒸発器(16)等の庫内機器の取付において、固定力が安定する。
【0055】
また、上記取付けボルト(30)は、上記L字型片(41)の座部(42)の貫通孔(42a)を貫通して、上記ナット(40)のネジ穴(40a)に螺合されるので、上記L字型片(41)の座部(42)が、座金としての機能を果たし、上記ナット(40)と取付けボルト(30)との締め付け力の安定化を図ることができる。
【0056】
また、上記機器取付板(40)は、仮止め工程と、断熱工程と、機器取付工程を経て製造されるので、従来のように、接着剤を用いてナット(40)を取り付ける必要がないので、内側板(2)の取付孔(31)周辺の処理や、接着剤の混合等の工程を行う必要がなく製造工程が簡素化を図ることができると共に、接着剤を硬化させる必要がないので、製造時間の短縮化を図ることができる。
【0057】
そして、L字型片(40)の凸部(43)には、断熱材の充填孔(43a)が形成したために、上記断熱工程において、断熱材が上記充填孔(43a)を通って空隙なく均一に充填される。これにより、上記凸部(43)の周辺においても、空隙なく断熱材が充填されるので、上記凸部(43)には、確実に断熱材の抵抗力が作用して、上記ナット(40)の空回り及び落下を防止することができる。また、コンテナ(10)の庫内と庫外との断熱を確実に図ることができる。
【0058】
《発明の実施形態2》
本実施形態は、上記実施形態1がL字型片(41)の座部(42)にボルトの貫通孔(42a)を設けたことに代わり、図5に示すように、ナット(40)を軸方向に嵌合させるための嵌合孔(42b)を設けたものである。
【0059】
具体的に、本実施形態のL字型片(41)の座部(42)には、上記ナット(40)が軸方向に嵌合される嵌合孔(42b)が設けられ、上記ナット(40)は、上記嵌合孔(42b)に嵌め合わせられることによって固定されている。そして、取付けボルト(30)は、内側板(2)の取付孔(31)を介して直接ナット(40)に螺合されている。
【0060】
本実施形態では、上記L字型片(41)の座部(42)の嵌合孔(42b)に、上記ナット(40)を嵌め合わせて固定することができるので、L字型片(41)の座部(42)に、上記ナット(40)を溶接する必要がなくなることから、L字型片(41)にナット(40)を取り付ける工程の簡素化を図ることができる。
【0061】
その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
【0062】
−実施形態2の変形例−
本実施形態は、図6に示すように、L字型片(41)の座部(42)に、上記実施形態1のように取付けボルト(30)の貫通孔(42a)を設けると共に、上記実施形態2のようにナット(40)の嵌合孔(42b)を設けたものである。
【0063】
具体的に、本実施形態のL字型片(41)の座部(42)には、図6に示すように、座部に孔部(42c)が貫通し、該孔部(42c)の内側板(2)側が貫通孔(42a)となり、外側板(3)側が嵌合孔(42b)となっている。上記ナット(40)は、上記L字型片(41)の座部(42)の貫通孔(42a)に嵌め合わせて固定されている。そして、上記取付けボルト(30)は、内側板(2)の取付孔(31)を貫通し、上記L字型片(41)の座部(42)の貫通孔(42a)を介して、ナット(40)に螺合されている。
【0064】
本実施形態では、上記L字型片(41)の座部(42)に取付けボルト(30)の貫通孔(42a)とナット(40)の嵌合孔(42b)とを設けたことにより、上記L字型片(41)の座部(42)に上記ナット(40)を溶接することなく固定することができると共に、上記座部(42)が上記ナット(40)の座金としての機能を果たし、上記ナット(40)の取付けボルト(30)の締め付け力の安定化を図ることができる。
【0065】
その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同じである。
【0066】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0067】
上記実施形態1では、回り止め片をL字型片(41)としたが、回り止め片は、座部(42)と凸部(43)とを備えていればよく、構成は特に限定されない。
【0068】
具体的に、上記実施形態1の回り止め片では、凸部(43)は1つであったが、複数設けられていてもよく、例えば、コの字型片であってもよい。また、上記実施形態1では、上記凸部(43)に断熱材の充填孔(43a)を設けたが、充填孔(43a)がなくてもよい。そして、凸部(43)を複数を設ける場合は、充填孔(43a)が設けられている凸部(43)と、充填孔(43a)が設けられていない凸部(43)とが含まれていてもよい。また、回りとめ片の凸部(43)は、座部(42)に溶接等して取り付けてもよい。
【0069】
また、上記実施形態1では、断熱層(4)の断熱材をウレタン等の発泡性の樹脂としたが、その他の断熱材であってもよい。ウレタンのような発泡性の樹脂を用いることにより、図4に示したように、例えば、L字型片(41)の座部(42)と内側板(2)との間の非常に小さな隙間にも行き渡り、ナット(40)及びL字型片(41)を確実に固定することができるが、その他の断熱材であっても、L字型片(41)の座部(42)及び凸部(43)の抵抗力によって、ナット(40)の空回りと落下とを防止することができる。
【0070】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上説明したように、本発明は、冷凍装置のケーシング構造及びケーシングの製造方法にについて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施形態1の冷凍コンテナの構成を示す斜視図である。
【図2】実施形態1の冷凍コンテナの機器取付板の図1におけるA−A線断面図である。
【図3】(a)は、実施形態1の庫内機器の取り付け構成を示す機器取付板の断面図であり、(b)は、L字型片と該L字型片に取り付けられたナットとの構成を示す斜視図である。
【図4】実施形態1の冷凍コンテナの機器取付板の製造工程を示す図である。。
【図5】実施形態2の庫内機器の取り付け構成を示す機器取付板の断面図である。
【図6】実施形態2の変形例の庫内機器の取り付け構成を示す機器取付板の断面図である。
【図7】従来技術を示すナットが内側板に接着剤で固定されたケーシングの断面図である。
【符号の説明】
【0073】
2 内側板
3 外側板
4 断熱層
10 冷凍装置
11 ケーシング
30 取付けボルト
31 取付孔
40 ナット
40a ネジ穴
41 L字型片(回り止め片)
42 座部
42a 貫通孔
42b 嵌合孔
43 凸部
43a 充填孔
45 仮止めボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側板(3)と、内側板(2)と、該外側板(3)と内側板(2)との間に形成された断熱材からなる断熱層(4)とを備え、
上記内側板(2)に機器(16)の取付けボルト(30)が貫通する取付孔(31)が形成された冷凍装置のケーシング構造であって、
上記内側板(2)の取付孔(31)に対応して上記断熱層(4)に設けられ、上記取付けボルト(30)が螺合するナット(40)と、
上記ナット(40)が取り付けられ、上記内側板(2)に当接する座部(42)及び、該座部(42)から上記外側板(3)に向かって突出する凸部(43)を有し、上記内側板(2)の取付孔(31)に対応して上記断熱層(4)に設けられた回り止め片(41)とを備えている
ことを特徴とする冷凍装置のケーシング構造。
【請求項2】
請求項1において、
上記回り止め片(41)の座部(42)は、取付けボルト(30)と直交方向に延びる平板に形成されている
ことを特徴とする冷凍装置のケーシング構造。
【請求項3】
請求項2において、
上記回り止め片(41)の凸部(43)は、上記座部(42)の一辺から取付けボルト(30)の軸方向に折り曲げて形成されている
ことを特徴とする冷凍装置のケーシング構造。
【請求項4】
請求項3において、
上記回り止め片(41)は、断面L字状に形成されたL字型片(41)である
ことを特徴とする冷凍装置のケーシング構造。
【請求項5】
請求項1において、
上記回り止め片(41)の座部(42)には、上記取付けボルト(30)が貫通する貫通孔(42a)が設けられ、
上記ナット(40)は、上記貫通孔(42a)に上記ナット(40)のネジ穴(40a)が対応するように、上記回り止め片(41)に溶接されている
ことを特徴とする冷凍装置のケーシング構造。
【請求項6】
請求項1において、
上記回り止め片(41)の座部(42)には、上記ナット(40)を嵌め合わせて固定するための嵌合孔(42b)が設けられている
ことを特徴とする冷凍装置のケーシング構造。
【請求項7】
請求項1において、
上記回り止め片(41)の凸部(43)には、断熱材の充填孔(43a)が形成されている
ことを特徴とする冷凍装置のケーシング構造。
【請求項8】
外側板(3)と、内側板(2)と、該外側板(3)と内側板(2)との間に形成された断熱層(4)とを備え、
上記内側板(2)に機器(16)の取付けボルト(30)が貫通する取付孔(31)が形成された冷凍装置のケーシングの製造方法であって、
上記取付けボルト(30)が螺合するナット(40)が取り付けられた座部(42)と該座部(42)から取付けボルト(30)の軸方向に突出する凸部(43)とを有する回り止め片(41)とナット(40)とを上記外側板(3)と内側板(2)との間に位置させ、且つ上記内側板(2)に上記回り止め片(41)の座部(42)を当接させ、内側板(2)の取付孔を貫通する仮止めボルト(45)を上記ナットに螺合して内側板(2)に取り付ける仮止め工程と、
次に、上記外側板(3)と内側板(2)との間に断熱材を充填して断熱層(4)を形成する断熱工程と、
次いで、上記仮止めボルト(45)を取り外し、取付けボルト(30)をナット(40)に螺合して機器(16)を内側板(2)に取り付ける機器取付工程とを備えている
ことを特徴とする冷凍装置のケーシングの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−100982(P2007−100982A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287496(P2005−287496)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】