冷凍装置の冷媒漏れ検出方法
【課題】 冷凍空調装置の冷却器に冷媒が流れている期間に相当する間の冷却器出口および、または入口の冷媒または冷媒に相当する温度により冷媒量を判定し、冷媒量の判定用演算に使用する温度データは、冷却器入口の電磁弁が開いている期間に相当する間の温度データとし、更に、冷却器入口の電磁弁の動作に対して遅延を持たせた期間の温度データとすることで、検出性能の向上を図ることが可能な冷凍装置の冷媒漏れ検出方法を提供する。
【解決手段】 冷却器に冷媒が流れている時の冷却器入口および、または出口の冷媒の温度を基に冷凍装置の冷媒量を判定することを特徴とする冷凍装置。
【解決手段】 冷却器に冷媒が流れている時の冷却器入口および、または出口の冷媒の温度を基に冷凍装置の冷媒量を判定することを特徴とする冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒回路内の冷媒量の不足を検出する冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図2は一般的な冷凍装置の冷媒回路図である。例えば冷凍装置の冷媒回路から冷媒が漏れた場合、冷凍を行いたい対象物は目標の温度まで下げることが出来なくなる。店舗などで使用されている冷凍ショーケースの場合、冷凍を行いたい対象物、すなわちショーケースの庫内温度が目標とする温度に到達しないことで異常を検出することになる。ショーケースの庫内温度が目標に到達しなくなる故障の原因としては、冷媒が漏れる以外にも複数存在するため、庫内温度の異常のみから冷媒の漏れを特定することは不可能である。しかし、冷媒の漏れが原因によりショーケースの庫内温度が目標温度に到達しない状況となる時点では、冷媒回路内の冷媒は殆ど漏れてしまっている状態である。それと同時に、庫内温度が目標に到達していないので、ショーケース内の商品の品質も低下してしまう。
【0003】
この対策として、冷媒漏れだけを特定して検出する方式を採用することが考えられる。そして、冷媒回路からの冷媒漏れを検出する従来の方式として、冷房装置(自動車の冷房装置)の冷媒量不足による冷媒圧縮機の破損を防止するために、蒸発器入口の冷媒温度を検出する第1の検出部材と、蒸発器出口の冷媒温度を検出する第2の検出部材で検出した冷媒温度が所定以上の差が生じた時動作する接点を有することを特徴とする冷房装置の冷媒量不足検出スイッチを設けるものがある。
その他のものとして、冷媒量不足機能を兼ね備え、冷却制御温度を検出してオン・オフ制御信号を発生する温度応答制御装置を有するものとして、蒸発器の入口と出口における冷媒温度をサーミスタで検出し、両サーミスタの出力の差が所定値以上になると検知信号を出力するものがある。更にその他のものとして、蒸発器(冷却器又はエバポレータとも言う。)の出口部分に圧力センサと温度センサを設置し、圧力センサで検出した冷媒圧力を冷媒の相当飽和温度に換算し、温度センサで検出した冷媒温度と冷媒相当飽和温度との差と予め設定した基準値とを比較して、冷媒量の不足を判定するものがある。
なお、上記したような本願発明に関連する公知技術として次の特許文献1〜3を挙げることが出来る。
【0004】
【特許文献1】実公昭55―023169号公報
【特許文献2】実開昭56−118365号公報
【特許文献3】特公平07−055617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の如く、従来技術に係る(特許文献1)の技術では、既存の冷凍設備に後付けで冷媒量不足検出装置を設置しようとする場合、冷媒温度の検出部材が冷媒に接するようにセンサを取り付ける必要がある。図2は冷凍装置の冷媒回路図であるが、本冷媒量不足検出装置の場合、蒸発器(冷却器又はエバポレータとも言う。)入口と蒸発器(冷却器又はエバポレータ)出口に、冷媒量不足検出装置(温度センサを冷却器の入口と出口の部分に、冷媒に温度センサが直接接するように)取り付け用の配管加工を施す必要があり、困難な作業となる。
【0006】
図3は冷却器の上流にある電磁弁が開閉する前後の蒸発器(冷却器又はエバポレータ)入口と蒸発器(冷却器又はエバポレータ)出口の冷媒温度変化を示す図である。図3から蒸発器(冷却器又はエバポレータ)入口と出口の間の温度差は冷媒が流れている条件(電磁弁が開いて冷媒が流れていると入口および出口温度が下がる状態)と流れていない条件(電磁弁が閉じていて冷媒が流れていないで入口および出口温度が高い状態)で大きく異なる(変化する)ことが分かる。冷媒が流れてない場合、入口と出口間の冷媒の温度差は大きく、冷媒が流れている場合の温度差は小さい。(特許文献2)の技術では、冷媒が流れているかいないかに係らず、蒸発器の入口と出口における冷媒温度をサーミスタで検出し、両サーミスタの出力の差が所定値以上になると検知信号を出力している。しかし、冷凍サイクル内の冷媒量が一定であっても、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)に冷媒が流れているタイミングと流れていないタイミングでは、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)の入口と出口の温度差は大きく変化するため、(特許文献2)の技術では冷媒量の誤判定を引き起こしてしまう。
【0007】
更に、(特許文献3)の技術では、圧力センサを使用する構成であるので、冷媒量不足を検出する構成としては部品点数およびシステム構成費用が高くなる。また、既存の冷凍設備に後付けで冷媒量不足検出装置を設置しようとする場合、前記温度センサと同様に圧力センサを取り付けるためには圧力取り出し用の配管加工を図2の蒸発器(冷却器又はエバポレータ)出口部分に施す必要があり、困難な作業となる。
【0008】
このため、実際に稼働中の図1に示すような大型店舗のショーケース等の冷凍装置において、従来同様ショーケースの庫内温度による冷媒漏れの判定を用いた場合は、冷媒回路内の冷媒は殆ど漏れてしまっていて、庫内温度が下がらず常温の状態であり、これに係る庫内の商品の損失は毎年莫大であり、大きな経済的な損失である。また、その他の従来技術を実行するためには、作業量が大きくなり費用が掛かること、また、方式によっては誤判定の可能性もあり、経済的損失が大きい。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、冷凍装置又は冷凍空調装置の冷却器に冷媒が流れている期間に相当する間の冷却器出口および、または入口の冷媒または冷媒に相当する温度により冷媒量を判定し、冷媒量の判定用演算に使用する温度データは、冷却器入口の電磁弁が開いている期間に相当する間の温度データとし、更に、冷却器入口の電磁弁の動作に対して遅延を持たせた期間の温度データとすることで、検出性能の向上を図ることが可能な冷凍装置の冷媒漏れ検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成する本発明は、(1)〜(7)により提供される。
【0011】
(1)圧縮機(コンプレッサとも言う。)、油分離器(オイルセパレータとも言う。)、凝縮器(コンデンサとも言う。)、レシーバタンク(受液器とも言う。)、第1の管継手(パイプジョイント、パイプフィッティングとも言う。)、電磁弁、膨張弁、蒸発器(冷却器又はエバポレータとも言う。)、第2の管継手(パイプジョイント、パイプフィッティングとも言う。)、液分離器(アキュムレータとも言う。)等の間を冷媒用配管で接続すると共に、前記レシーバタンク(受液器)と、前記液分離器(アキュムレータ)との間において、電磁弁、膨張弁、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)、とを冷媒配管を用いて直列に接続された冷媒経路を、第1及び第2の管継手(パイプジョイント、パイプフィッティング)とを介して、単独、または、並列に複数(図1の実施例では4系統の並列)設けられた冷媒経路を有する冷凍装置の冷媒回路において、第1の温度センサと第2の温度センサの電気的信号を演算器に入力し、冷却器に冷媒が流れている期間に相当する間の冷却器出口および、または冷却器入口の冷媒または冷媒に相当する温度により、冷凍装置の冷媒量を判定することを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法を提供することで、上記課題を解決する。
【0012】
(2)はまた、圧縮機(コンプレッサ)、油分離器(オイルセパレータ)、凝縮器(コンデンサ)、レシーバタンク(受液器)、管継手(パイプジョイント、パイプフィッティング)、電磁弁、膨張弁、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)、管継手(パイプジョイント、パイプフィッティング)、液分離器(アキュムレータ)等の間を冷媒用配管で接続すると共に、前記レシーバタンク(受液器)と、前記液分離器(アキュムレータ)との間において、電磁弁、膨張弁、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)、とを冷媒配管を用いて直列に接続された冷媒経路を、第1及び第2の管継手(パイプジョイント、パイプフィッティング)とを介して、単独、または、並列に複数(実施例では4系統の並列)設けられた冷媒経路を有する冷凍装置の冷媒回路において、第1の温度センサと第2の温度センサの電気的信号を演算器に入力し、冷却器に冷媒が流れている時の冷却器出口の冷媒または冷媒に相当する温度の最低温度を基に、冷凍装置の冷媒量を判定することを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法を提供することで上記課題を解決する。
【0013】
(3)はまた、圧縮機(コンプレッサとも言う。)、油分離器(オイルセパレータとも言う。)、凝縮器(コンデンサとも言う。)、レシーバタンク(受液器とも言う。)、第1の管継手(パイプジョイント、パイプフィッティングとも言う。)、電磁弁、膨張弁、蒸発器(冷却器又はエバポレータとも言う。)、第2の管継手(パイプジョイント、パイプフィッティングとも言う。)、液分離器(アキュムレータとも言う。)等の間を冷媒用配管で接続すると共に、前記レシーバタンク(受液器)と、前記液分離器(アキュムレータ)との間において、電磁弁、膨張弁、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)、とを冷媒配管を用いて直列に接続された冷媒経路を、第1及び第2の管継手(パイプジョイント、パイプフィッティング)とを介して、単独、または、並列に複数(実施例では4系統の並列)設けられた冷媒経路を有する冷凍装置の冷媒回路において、第1の温度センサと第2の温度センサの電気的信号を演算器に入力し、冷却器に冷媒が流れている時の冷却器出口の冷媒の平均温度を基に冷凍装置の冷媒量を判定することを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法を提供することで上記課題を解決する。
【0014】
(4)はまた、圧縮機(コンプレッサとも言う。)、油分離器(オイルセパレータとも言う。)、凝縮器(コンデンサとも言う。)、レシーバタンク(受液器とも言う。)、第1の管継手(パイプジョイント、パイプフィッティングとも言う。)、電磁弁、膨張弁、蒸発器(冷却器又はエバポレータとも言う。)、第2の管継手(パイプジョイント、パイプフィッティングとも言う。)、液分離器(アキュムレータとも言う。)等の間を冷媒用配管で接続すると共に、前記レシーバタンク(受液器)と、前記液分離器(アキュムレータ)との間において、電磁弁、膨張弁、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)、とを冷媒配管を用いて直列に接続された冷媒経路を、第1及び第2の管継手(パイプジョイント、パイプフィッティング)とを介して、単独、または、並列に複数(実施例では4系統の並列)設けられた冷媒経路を有する冷凍装置の冷媒回路において、第1の温度センサと第2の温度センサの電気的信号を演算器に入力し、冷却器に冷媒が流れている時の冷却器入口と出口の冷媒温度の差の平均値を基に冷凍装置の冷媒量を判定することを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法を提供することで上記課題を解決する。
【0015】
(5)はまた、前記(1)〜前記(4)記載の冷凍装置の冷媒(フロン)量の判定用演算に使用する温度データは、冷却器入口の電磁弁が開いている期間に相当する間の温度データとすることを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法を提供することで上記課題を解決する。
【0016】
(6)はまた、前記(1)〜前記(4)記載の冷凍装置の冷媒(フロン)量の判定用演算に使用する温度データは、冷却器入口の電磁弁の動作に対して遅延を持たせた期間の温度データとすることを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法を提供することで上記課題を解決する。
【0017】
(7)はまた、冷凍装置の冷媒(フロン)量の判定は、冷媒(フロン)が連続して流れている各期間毎に算出された前記(1)〜前記(4)記載の温度データに対して、平均化処理により外乱を除去した温度データを基に実施することを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法を提供することで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、冷凍装置からの冷媒漏れ検出を既存設備に後付け可能な装置であり、安価に実施可能である。しかも従来の温度センサのみによる冷媒検出方式よりもより検出感度が向上するため、早期検出が出来、冷媒(フロン)排出量の低減が図れる。
【0019】
[第1実施例の効果]
(請求項1関連)図4は、図1の演算器の中に記述されている演算プログラムのフローチャートである。図4の第1実施例のフローチャートのS1、2、7、8のように、冷却器内に冷媒が流れているということに相当する条件を冷却器入口と出口の温度の採用条件に入れた。このことにより、図5に示すように、冷却器内に冷媒が流れている期間のみの温度データにより冷媒漏れを判定出来ることとなる。図12は横軸に正常な冷媒(フロン)量からの冷媒(フロン)の減少量、縦軸に冷却器入口と出口の冷媒温度の差の平均値をプロットしたものである。プロットしてあるデータは、冷媒の流れに係らず全温度データを使用した場合の結果と、冷媒が流れている条件のみの温度データを使用した場合である。その結果から、冷媒が流れている条件のみの温度データの場合の方が、冷媒(フロン)の減少量に対する冷却器入口と出口の冷媒温度の差が大きくなっていることが分かる。この温度差がすなわち冷媒漏れの検出感度の向上分に相当する。
【0020】
(請求項2,3,4関連)圧縮機の運転は吸入側の圧力値により制御されている。したがって、圧縮機の低圧側の圧力の平均値は一定となる。図11は冷媒(フロン)量を変化させた場合の圧縮機の低圧側(吸入側)の圧力値である。それぞれの冷媒(フロン)量のデータを取得した日は異なるが、圧縮器の低圧側(吸入側)の圧力値は約0.21〜0.22MPaの値で一定となっている。(但し、圧縮機の設定によって、一定となる圧力値は異なる。)このことから、圧縮器の低圧側(吸入側)の圧力値は長時間経過してもほぼ一定であり、変化しないことがわかる。よって、冷凍サイクル成立中であれば、冷却器出口での過熱度からエンタルピーが一意に求まることとなる。よって、冷却器出口に係わる温度から冷媒量が推定できることとなる。このため、冷媒が流れている条件であれば、従来技術のような圧力センサで圧力を検出せずとも、安価な熱電対等の温度センサで冷媒温度に相当する温度を検出することのみで良いこととなる。
【0021】
そして、冷媒量の判定用の温度データとしては、図4の第1実施例のフローチャートのS6のように、冷媒(フロン)が流れている単一期間中の冷却器出口の冷媒最低温度、同じく冷却器出口の冷媒平均温度、同じく冷却器入口と出口の冷媒温度差または、それに相当する配管温度による。これにより、冷媒量判定用の温度データは請求項2〜4のいずれの方式も冷媒量に対して強い相関を持っている。図13に冷却器出口の冷媒最低温度、図14に冷却器出口冷媒平均温度、図15に冷却器入口と出口の冷媒温度差を、冷媒(フロン)漏れ量を横軸にしてそれぞれプロットしたデータを示す。冷媒(フロン)漏れに対するこの強い相関のため、たとえば、冷凍ショーケースの庫内温度が上昇しない範囲の冷媒漏れでも早期に検出できる性能をもっている。よって、たとえば生鮮食品のショーケースで冷媒漏れが発生した場合でも、ショーケースの庫内温度が上昇し商品が傷んでしまう前に冷媒漏れを検知し、漏れ箇所の修理を実施することも可能となる。さらに、冷凍装置のメンテナンス会社も冷媒漏れの早期検知が可能となるため、メンテナンス計画や補修部品の計画的発注が可能となり業務の効率化が図れる。また、熱電対等の温度センサでの冷媒温度相当の温度を検出する方法は、冷媒配管温度を測ることで達成出来るため、既存の設備に設置する場合であっても冷媒配管の後加工は不要であり、容易に設置できる。また、従来技術で用いられている圧力センサの費用に比べ、熱電対やサーミスタは安価であり、システム構成費用も低減できる。
【0022】
(請求項5関連)冷却器内の冷媒は冷却器上流の電磁弁が開くことにより流れ始める。よって、冷却器内に冷媒が流れているということに相当する条件は、図9に示す様に、冷却器前の電磁弁が開いているという条件に相当する。図4の第1実施例のフローチャートのS1、2、7、8のように、電磁弁が開らいているということに相当する条件を冷却器入口と出口の温度の採用条件に入れた。このことにより、冷却器内に冷媒が流れている条件のみの温度データにより冷媒漏れを判定できることとなる。これにより、冷媒が流れているか否かの判定を冷媒回路内に設けられている電磁弁の動作によって行うため、特別なセンサを後付けする必要はない。図1のように演算器に電磁弁の電気的信号を取込み、電磁弁の駆動信号を観察すること、または、電磁弁の駆動命令を演算している演算器内のプログラムを直接参照することにより達成できる。
【0023】
(請求項7関連)電磁弁が開き冷媒(フロン)が流れているタイミング毎に判定用データは算出されるが、周囲の温度変化や装置の動作ばらつきやノイズ(電気的)などの外乱により判定データは、各タイミング毎にある程度のばらつきを持つ。このため、図10および図4の第1実施例のフローチャートのS9に示すように、各判定用データに一次遅れやフィルターなどによる逐次平均化処理を施し、その結果を元に冷媒量を判定する。この冷媒量の判定は、一つ又は複数の判定用温度データ処理方法(請求項2〜4に記載の方法)の結果により実施する。これらの判定用温度データは、逐次平均化処理によりばらつきを低減されているため、特異なデータによる誤判定を生ずることがなくなり、より正確な冷媒量の推定を実施することが出来る。
【0024】
[第2実施例の効果]
(請求項5関連)
冷却器入口の電磁弁は、たとえば冷凍ショーケースの場合、庫内の温度データを基に開閉している。よって、図1の演算器に電磁弁の信号を直接入力しなくても、演算器中のプログラムは、図16の第2実施例のフローチャートのS14、15、21、22のように庫内の温度、すなわち、冷却対象物の温度によって冷媒を流すべき条件に達していると判断し、その間の冷却器出口等の冷媒温度により、冷媒量判定をするようにしてもよい。これにより、電磁弁の動作信号を取り出す等の機器の改造なしに、制御プログラム内で冷媒量判定用演算を完結することが出来るため、システム費用の低減が図れる。
【0025】
(請求項6関連)冷却器上流の電磁弁が開いた後、冷媒が冷却器内を通過し、冷凍サイクルが成立するまでに遅れ時間がある。図17に示すように冷媒量判定用の演算として採用する冷媒温度データはこの遅れ分を考慮し、電磁弁の開弁信号を検出してから所定の遅延間後の値を用いることとし、図16の第2実施例のフローチャートのS16のように所定時間の待機時間をもたせたものである。これにより、遅れを考慮すると、冷媒量に対する冷媒量判定用演算温度の感度が図18に示す様にさらに向上するため、誤判定が防げると共に、更なる冷媒漏れ検出の早期化が可能となる。
【0026】
[第3実施例の効果]
(請求項6関連)前記実施例2に対し、図1の演算器の中のプログラムに図19の第3実施例のフローチャートのS36のように遅れ時間を閉弁時にも設けたものである。図20に示す様に、電磁弁の開弁信号に対して所定時間(遅延時間)分だけ後の温度データを、冷媒漏れ判定用温度データ演算に使用する温度データとする。これにより、電磁弁の動作と温度データの時間関係を一律にずらせば良いため、演算器の中のプログラムの作成が容易となる。この場合、電磁弁が閉弁した後の温度データは、冷凍サイクルが成立していない状態での温度データとなるが、冷媒の温度上昇や圧力変化の時間に比べ遅延時間が短時間であるため、冷媒量の判定精度には影響しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
[第1の実施例]
図1に示すような、圧縮機(コンプレッサ)、油分離器(オイルセパレータ)、凝縮器(コンデンサ)、レシーバタンク(受液器)、管継手(パイプジョイント、パイプフィッティング)、電磁弁、膨張弁、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)、管継手(パイプジョイント、パイプフィッティング)、液分離器(アキュムレータ)等の間を冷媒用配管で接続すると共に、前記レシーバタンク(受液器)と、前記液分離器(アキュムレータ)との間において、電磁弁、膨張弁、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)、を経由する冷媒経路を単独、または、並列に複数(実施例では4系統の並列)設けた冷凍装置の冷媒回路において、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)の上流、かつ、膨張弁の下流の部分に第1の温度センサを取付ける。また、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)の下流、かつ、他の冷却経路との合流(第2の管継手)前の部分に第2の温度センサを取付ける。温度センサは、どの様な種類のものでも良いが、温度信号をマイコンなどの演算器で処理するため、熱電対やサーミスタなどの様になんらかの電気的出力信号が得られるものである必要がある。温度センサの取付けは、内部の冷媒に直接接するような取付け方であっても、冷媒配管に取付けることで冷媒の温度を間接的に検出するような方式であっても良い。ただし、冷媒配管に取付ける場合は、配管周囲の空気温度の影響を受けないようにするため、配管に取付けた温度センサの周囲は保温材などで覆い、極力冷媒温度と同一な温度となるような処置をする必要がある。第1の温度センサと第2の温度センサの出力は、電気的信号線により演算器に入力する。
【0029】
また、冷媒の蒸発器(冷却器又はエバポレータ)への流れ込みを制御している電磁弁の開閉の状態と相関がある電磁弁の駆動信号を取り出せるようにする。これは、電磁弁に対して開閉命令を直接指示しているコントローラ(演算器)内のソフト上の開閉命令信号であっても、電磁弁に掛かる電圧信号を電気的に取り出した信号であってもよい。電磁弁に掛かる電圧信号を用いる場合は、図1のように演算器に電磁弁の電気的信号線を入力する。
【0030】
図4は、上述の温度センサ信号と電磁弁の信号を使用した冷媒漏れ判定プログラムの第1の実施例である。本プログラムは、図1の演算器の中に記述され、所定の演算周期にてステップ的に実行される。まず、S1で電磁弁の駆動信号を読込み、電磁弁の駆動信号を監視する。S2で電磁弁が開弁しているか判定し、電磁弁が開弁していない場合は、開弁するまでその他の演算処理は無しに電磁弁の開弁の監視を継続するため、再びS1に戻る。電磁弁が開弁した場合、S3以降の処理が実施され、第1および第2の温度センサの信号処理が開始される。このことにより、図5に示すように蒸発器(冷却器又はエバポレータ)に冷媒が流れ、冷凍サイクルが成立している時点のデータのみで冷媒漏れの判定がなされこととなる。
【0031】
開弁が判定された場合、初回の開弁判定の時点で冷媒漏れ判定用温度データ演算結果データを入れるメモリーを図4のS3にて初期化する。これは、開弁期間毎に判定用温度データの算術平均値を算出する為である。また、この算術平均値算出用として、S4にて温度センサのデータ取得数のカウントを一つ進める。次にS5にて蒸発器(冷却器又はエバポレータ)部分の第1(入口)および第2(出口)の温度センサの信号を読み込む。そして、このセンサ信号を基に、冷媒漏れ判定用温度データ演算処理部分(S6)で、第2の温度センサによる蒸発器(冷却器又はエバポレータ)出口の冷媒温度の最低値の検出処理および、または第2の温度センサによる蒸発器(冷却器又はエバポレータ)出口の冷媒温度の積算処理および、または第2の温度センサによる蒸発器(冷却器又はエバポレータ)出口の冷媒温度と第1の温度センサによる蒸発器(冷却器又はエバポレータ)入口の冷媒温度との差を積算する処理を行う。
【0032】
冷媒漏れ判定用温度データ演算処理の後、図4のS7にて電磁弁の駆動信号を再び読み込む。そして、S8にて電磁弁が閉弁したかどうかの判定を行う。
【0033】
電磁弁が閉弁していない場合、すなわち開弁した状態のままである場合、S4に戻り、再び温度センサのデータ取得数のカウントを一つ進めた後、第1および第2の温度センサの信号を読み込み(S5)、冷媒漏れ判定用温度データ演算処理(S6)を行う。
【0034】
電磁弁が閉弁した場合(S8にてYesの判定がなされた場合)、第1および第2の温度センサの信号は読み込まず、S9にて第2の温度センサによる蒸発器(冷却器又はエバポレータ)出口の冷媒温度の積算値および、または第2の温度センサによる蒸発器(冷却器又はエバポレータ)出口の冷媒温度と第1の温度センサによる蒸発器(冷却器又はエバポレータ)入口の冷媒温度との差の積算値から開弁期間におけるそれぞれの平均値を算出する。このとき、平均値の算出は、それぞれの積算値を温度センサのデータ取得数のカウント値(S4でのカウント値)によって除することにより求める。
【0035】
こうして、図6に示す様な一回の開弁期間における、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)出口の冷媒温度の最低値および、または図7に示す様な蒸発器(冷却器又はエバポレータ)出口の冷媒温度平均値および、または図8に示す様な蒸発器(冷却器又はエバポレータ)出口と入口の冷媒温度差の平均値、すなわち、冷媒漏れ判定用温度データが算出される。
【0036】
開弁期間毎に算出された冷媒漏れ判定用温度データは、周囲の温度変化や装置の動作ばらつきやノイズ(電気的)などの外乱により、各タイミング毎にある程度のばらつきを持つ。このばらつきの影響を低減させるため、図10に示す様な開弁期間毎に算出された冷媒漏れ判定用温度データに一次遅れ処理などの逐次平均化処理を図4のS10にて施す。
【0037】
下の式(数1)は逐次平均化処理として用いる一次遅れ処理の例である。yは一次遅れ処理を行った平均値、uは一次遅れ処理前の冷媒漏れ判定用温度データ、Tsは温度センサの信号のサンプリング周期(演算器内のプログラムの演算タイミング)、Tは一次遅れ処理の重みすなわち時定数、添え字のkはサンプリング又は演算のタイミングを表す。すなわち、k-1は一回前の演算タイミングでの演算値または、一回前のサンプリングタイミングでの温度センサ信号のサンプリング値をあらわす。
【0038】
(数1)
yk=(uk−yk−1)(Ts/T)+yk−1
【0039】
(数1)は、図4のS10の逐次平均化処理にて使用される。
【0040】
その平均化処理が施された冷媒漏れ判定用温度データを冷媒もれ判定値と比較することにより、図4のS11にて異常判定を行う。異常判定がなされた場合はS12にて、冷媒漏れランプ点灯などの異常判定時処理を実施し、正常判定がなされた場合はS13にて、正常ランプ点灯などの正常判定処理を実施する。正常又は異常判定処理の終了後再びS1に戻り、電磁弁駆動信号を読み込み、上述の処理を繰り返す。
【0041】
[第2の実施例]
図16は、図1の演算器の中に記述される冷媒漏れ判定プログラムの第2の実施例である。図4の第1の実施例に対してS14、15、21、22の部分が異なっており、電磁弁の駆動信号の監視部分(図4S1、2、7、8)を冷却対象物の温度、例えば、冷凍ショーケースの庫内温度に置き換えたものである。冷凍ショーケースの場合、電磁弁の駆動は、庫内温度がある設定値を超えた場合、それをトリガーにして冷凍ショーケースの制御器が電磁弁の開弁命令を出すようにしている。従って、電磁弁の駆動命令または駆動電圧を用いなくても、庫内の温度等の冷却対象物温度読込値が所定値以上になった場合、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)に冷媒を流す命令が発せられたと判断し、第1の実施例と同様な演算処理を実施するものである。
【0042】
更に、冷却対象物の温度が所定温度以上、すなわち電磁弁が開弁状態であると判断された後、所定時間待機させる(図16のS16)。待機時間は、電磁弁が開いてから実際に冷媒が蒸発器(冷却器又はエバポレータ)を流れ始めるまでの遅れ時間に相当する。この冷媒の遅れ時間分の待機は、第1の実施例(図4)の様に電磁弁の動作を直接的に検出しているものに適用してもよい。その結果、図17に示す様に、電磁弁が開き始めてから遅延時間分経過した後の温度データのみを用いて冷媒漏れ判定用温度データの演算を行うこととなる。
【0043】
また、電磁弁が開弁してから所定時間経過した後の温度データを使用する方法としては、図16のS16のように所定時間待機する以外にも、第1および第2の温度センサの信号は読込むが、所定時間経過するまで、その読込み値を冷媒漏れ判定用温度データ演算用の温度として採用しない等の方法も考えられる。
【0044】
[第3の実施例]
図19は、図1の演算器の中に記述される冷媒漏れ判定プログラムの第3の実施例である。図16の第2の実施例に対して、S36にて所定時間経過するまでの第1および第2の温度センサの温度データを冷媒漏れ判定用温度データ演算用の温度として採用し続けることを特徴とするものである。この場合、図20に示す様に、電磁弁の開弁信号に対して所定時間(遅延時間)分だけ後の温度データを、冷媒漏れ判定用温度データ演算に使用する温度データとすることとなる。基本的に開弁後と閉弁後の所定時間は同一の長さの時間である。この場合のプログラムは、電磁弁の駆動信号自体をプログラム内で所定時間分遅延させ、その遅延させた電磁弁の駆動信号を基にS31〜S34を実行することとなる。この方式は、図16に示す第2の実施例のS14、15、21のように冷却対象物の温度を用いる場合に適用してもよい。
【0045】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の範囲は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、食料品等展示販売用の冷凍ショーケース用の冷凍空調設備、店舗・ビル・住宅等の空調設備、冷蔵庫・自動販売機などの冷蔵設備などの冷媒を使用している冷凍空調設備にて利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の適用した冷凍空調設備の一般的な構成図面である。
【図2】冷凍空調設備の一般的な構成図面にて、従来技術の問題点を説明した図である。
【図3】蒸発器(冷却器又はエバポレータ)入口と出口の冷媒(フロン)の温度の図である。
【図4】第1の実施例をフローチャートで表した図である。
【図5】請求項1に係る電磁弁の信号と冷却器入口と出口温度の時間的変化の図である。
【図6】請求項2に係る電磁弁の信号と冷却器入口と出口温度の時間的変化の図である。
【図7】請求項3に係る電磁弁の信号と冷却器入口と出口温度の時間的変化の図である。
【図8】請求項4に係る電磁弁の信号と冷却器入口と出口温度の時間的変化の図である。
【図9】請求項5に係る電磁弁の信号と冷却器入口と出口温度の時間的変化の図である。
【図10】実施例1に係る逐次平均化処理の実施方法を説明した図である。
【図11】冷媒量と圧縮機吸入側平均圧力の関係と冷媒量推定の方式を説明した図である。
【図12】請求項1,5に係る冷媒(フロン)量に対する冷媒温度の図である。
【図13】請求項2に係る冷媒(フロン)量に対する冷媒温度の図である。
【図14】請求項3に係る冷媒(フロン)量に対する冷媒温度の図である。
【図15】請求項4に係る冷媒(フロン)量に対する冷媒温度の図である。
【図16】第2の実施例をフローチャートで表した図である。
【図17】請求項6に係る電磁弁の信号と冷却器入口と出口温度の時間的変化の図である。
【図18】請求項6に係る冷媒(フロン)量に対する冷媒温度の図である。
【図19】第3の実施例をフローチャートで表した図である。
【図20】請求項6に係る冷媒(フロン)量に対する冷媒温度の図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒回路内の冷媒量の不足を検出する冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図2は一般的な冷凍装置の冷媒回路図である。例えば冷凍装置の冷媒回路から冷媒が漏れた場合、冷凍を行いたい対象物は目標の温度まで下げることが出来なくなる。店舗などで使用されている冷凍ショーケースの場合、冷凍を行いたい対象物、すなわちショーケースの庫内温度が目標とする温度に到達しないことで異常を検出することになる。ショーケースの庫内温度が目標に到達しなくなる故障の原因としては、冷媒が漏れる以外にも複数存在するため、庫内温度の異常のみから冷媒の漏れを特定することは不可能である。しかし、冷媒の漏れが原因によりショーケースの庫内温度が目標温度に到達しない状況となる時点では、冷媒回路内の冷媒は殆ど漏れてしまっている状態である。それと同時に、庫内温度が目標に到達していないので、ショーケース内の商品の品質も低下してしまう。
【0003】
この対策として、冷媒漏れだけを特定して検出する方式を採用することが考えられる。そして、冷媒回路からの冷媒漏れを検出する従来の方式として、冷房装置(自動車の冷房装置)の冷媒量不足による冷媒圧縮機の破損を防止するために、蒸発器入口の冷媒温度を検出する第1の検出部材と、蒸発器出口の冷媒温度を検出する第2の検出部材で検出した冷媒温度が所定以上の差が生じた時動作する接点を有することを特徴とする冷房装置の冷媒量不足検出スイッチを設けるものがある。
その他のものとして、冷媒量不足機能を兼ね備え、冷却制御温度を検出してオン・オフ制御信号を発生する温度応答制御装置を有するものとして、蒸発器の入口と出口における冷媒温度をサーミスタで検出し、両サーミスタの出力の差が所定値以上になると検知信号を出力するものがある。更にその他のものとして、蒸発器(冷却器又はエバポレータとも言う。)の出口部分に圧力センサと温度センサを設置し、圧力センサで検出した冷媒圧力を冷媒の相当飽和温度に換算し、温度センサで検出した冷媒温度と冷媒相当飽和温度との差と予め設定した基準値とを比較して、冷媒量の不足を判定するものがある。
なお、上記したような本願発明に関連する公知技術として次の特許文献1〜3を挙げることが出来る。
【0004】
【特許文献1】実公昭55―023169号公報
【特許文献2】実開昭56−118365号公報
【特許文献3】特公平07−055617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の如く、従来技術に係る(特許文献1)の技術では、既存の冷凍設備に後付けで冷媒量不足検出装置を設置しようとする場合、冷媒温度の検出部材が冷媒に接するようにセンサを取り付ける必要がある。図2は冷凍装置の冷媒回路図であるが、本冷媒量不足検出装置の場合、蒸発器(冷却器又はエバポレータとも言う。)入口と蒸発器(冷却器又はエバポレータ)出口に、冷媒量不足検出装置(温度センサを冷却器の入口と出口の部分に、冷媒に温度センサが直接接するように)取り付け用の配管加工を施す必要があり、困難な作業となる。
【0006】
図3は冷却器の上流にある電磁弁が開閉する前後の蒸発器(冷却器又はエバポレータ)入口と蒸発器(冷却器又はエバポレータ)出口の冷媒温度変化を示す図である。図3から蒸発器(冷却器又はエバポレータ)入口と出口の間の温度差は冷媒が流れている条件(電磁弁が開いて冷媒が流れていると入口および出口温度が下がる状態)と流れていない条件(電磁弁が閉じていて冷媒が流れていないで入口および出口温度が高い状態)で大きく異なる(変化する)ことが分かる。冷媒が流れてない場合、入口と出口間の冷媒の温度差は大きく、冷媒が流れている場合の温度差は小さい。(特許文献2)の技術では、冷媒が流れているかいないかに係らず、蒸発器の入口と出口における冷媒温度をサーミスタで検出し、両サーミスタの出力の差が所定値以上になると検知信号を出力している。しかし、冷凍サイクル内の冷媒量が一定であっても、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)に冷媒が流れているタイミングと流れていないタイミングでは、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)の入口と出口の温度差は大きく変化するため、(特許文献2)の技術では冷媒量の誤判定を引き起こしてしまう。
【0007】
更に、(特許文献3)の技術では、圧力センサを使用する構成であるので、冷媒量不足を検出する構成としては部品点数およびシステム構成費用が高くなる。また、既存の冷凍設備に後付けで冷媒量不足検出装置を設置しようとする場合、前記温度センサと同様に圧力センサを取り付けるためには圧力取り出し用の配管加工を図2の蒸発器(冷却器又はエバポレータ)出口部分に施す必要があり、困難な作業となる。
【0008】
このため、実際に稼働中の図1に示すような大型店舗のショーケース等の冷凍装置において、従来同様ショーケースの庫内温度による冷媒漏れの判定を用いた場合は、冷媒回路内の冷媒は殆ど漏れてしまっていて、庫内温度が下がらず常温の状態であり、これに係る庫内の商品の損失は毎年莫大であり、大きな経済的な損失である。また、その他の従来技術を実行するためには、作業量が大きくなり費用が掛かること、また、方式によっては誤判定の可能性もあり、経済的損失が大きい。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、冷凍装置又は冷凍空調装置の冷却器に冷媒が流れている期間に相当する間の冷却器出口および、または入口の冷媒または冷媒に相当する温度により冷媒量を判定し、冷媒量の判定用演算に使用する温度データは、冷却器入口の電磁弁が開いている期間に相当する間の温度データとし、更に、冷却器入口の電磁弁の動作に対して遅延を持たせた期間の温度データとすることで、検出性能の向上を図ることが可能な冷凍装置の冷媒漏れ検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成する本発明は、(1)〜(7)により提供される。
【0011】
(1)圧縮機(コンプレッサとも言う。)、油分離器(オイルセパレータとも言う。)、凝縮器(コンデンサとも言う。)、レシーバタンク(受液器とも言う。)、第1の管継手(パイプジョイント、パイプフィッティングとも言う。)、電磁弁、膨張弁、蒸発器(冷却器又はエバポレータとも言う。)、第2の管継手(パイプジョイント、パイプフィッティングとも言う。)、液分離器(アキュムレータとも言う。)等の間を冷媒用配管で接続すると共に、前記レシーバタンク(受液器)と、前記液分離器(アキュムレータ)との間において、電磁弁、膨張弁、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)、とを冷媒配管を用いて直列に接続された冷媒経路を、第1及び第2の管継手(パイプジョイント、パイプフィッティング)とを介して、単独、または、並列に複数(図1の実施例では4系統の並列)設けられた冷媒経路を有する冷凍装置の冷媒回路において、第1の温度センサと第2の温度センサの電気的信号を演算器に入力し、冷却器に冷媒が流れている期間に相当する間の冷却器出口および、または冷却器入口の冷媒または冷媒に相当する温度により、冷凍装置の冷媒量を判定することを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法を提供することで、上記課題を解決する。
【0012】
(2)はまた、圧縮機(コンプレッサ)、油分離器(オイルセパレータ)、凝縮器(コンデンサ)、レシーバタンク(受液器)、管継手(パイプジョイント、パイプフィッティング)、電磁弁、膨張弁、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)、管継手(パイプジョイント、パイプフィッティング)、液分離器(アキュムレータ)等の間を冷媒用配管で接続すると共に、前記レシーバタンク(受液器)と、前記液分離器(アキュムレータ)との間において、電磁弁、膨張弁、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)、とを冷媒配管を用いて直列に接続された冷媒経路を、第1及び第2の管継手(パイプジョイント、パイプフィッティング)とを介して、単独、または、並列に複数(実施例では4系統の並列)設けられた冷媒経路を有する冷凍装置の冷媒回路において、第1の温度センサと第2の温度センサの電気的信号を演算器に入力し、冷却器に冷媒が流れている時の冷却器出口の冷媒または冷媒に相当する温度の最低温度を基に、冷凍装置の冷媒量を判定することを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法を提供することで上記課題を解決する。
【0013】
(3)はまた、圧縮機(コンプレッサとも言う。)、油分離器(オイルセパレータとも言う。)、凝縮器(コンデンサとも言う。)、レシーバタンク(受液器とも言う。)、第1の管継手(パイプジョイント、パイプフィッティングとも言う。)、電磁弁、膨張弁、蒸発器(冷却器又はエバポレータとも言う。)、第2の管継手(パイプジョイント、パイプフィッティングとも言う。)、液分離器(アキュムレータとも言う。)等の間を冷媒用配管で接続すると共に、前記レシーバタンク(受液器)と、前記液分離器(アキュムレータ)との間において、電磁弁、膨張弁、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)、とを冷媒配管を用いて直列に接続された冷媒経路を、第1及び第2の管継手(パイプジョイント、パイプフィッティング)とを介して、単独、または、並列に複数(実施例では4系統の並列)設けられた冷媒経路を有する冷凍装置の冷媒回路において、第1の温度センサと第2の温度センサの電気的信号を演算器に入力し、冷却器に冷媒が流れている時の冷却器出口の冷媒の平均温度を基に冷凍装置の冷媒量を判定することを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法を提供することで上記課題を解決する。
【0014】
(4)はまた、圧縮機(コンプレッサとも言う。)、油分離器(オイルセパレータとも言う。)、凝縮器(コンデンサとも言う。)、レシーバタンク(受液器とも言う。)、第1の管継手(パイプジョイント、パイプフィッティングとも言う。)、電磁弁、膨張弁、蒸発器(冷却器又はエバポレータとも言う。)、第2の管継手(パイプジョイント、パイプフィッティングとも言う。)、液分離器(アキュムレータとも言う。)等の間を冷媒用配管で接続すると共に、前記レシーバタンク(受液器)と、前記液分離器(アキュムレータ)との間において、電磁弁、膨張弁、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)、とを冷媒配管を用いて直列に接続された冷媒経路を、第1及び第2の管継手(パイプジョイント、パイプフィッティング)とを介して、単独、または、並列に複数(実施例では4系統の並列)設けられた冷媒経路を有する冷凍装置の冷媒回路において、第1の温度センサと第2の温度センサの電気的信号を演算器に入力し、冷却器に冷媒が流れている時の冷却器入口と出口の冷媒温度の差の平均値を基に冷凍装置の冷媒量を判定することを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法を提供することで上記課題を解決する。
【0015】
(5)はまた、前記(1)〜前記(4)記載の冷凍装置の冷媒(フロン)量の判定用演算に使用する温度データは、冷却器入口の電磁弁が開いている期間に相当する間の温度データとすることを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法を提供することで上記課題を解決する。
【0016】
(6)はまた、前記(1)〜前記(4)記載の冷凍装置の冷媒(フロン)量の判定用演算に使用する温度データは、冷却器入口の電磁弁の動作に対して遅延を持たせた期間の温度データとすることを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法を提供することで上記課題を解決する。
【0017】
(7)はまた、冷凍装置の冷媒(フロン)量の判定は、冷媒(フロン)が連続して流れている各期間毎に算出された前記(1)〜前記(4)記載の温度データに対して、平均化処理により外乱を除去した温度データを基に実施することを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法を提供することで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、冷凍装置からの冷媒漏れ検出を既存設備に後付け可能な装置であり、安価に実施可能である。しかも従来の温度センサのみによる冷媒検出方式よりもより検出感度が向上するため、早期検出が出来、冷媒(フロン)排出量の低減が図れる。
【0019】
[第1実施例の効果]
(請求項1関連)図4は、図1の演算器の中に記述されている演算プログラムのフローチャートである。図4の第1実施例のフローチャートのS1、2、7、8のように、冷却器内に冷媒が流れているということに相当する条件を冷却器入口と出口の温度の採用条件に入れた。このことにより、図5に示すように、冷却器内に冷媒が流れている期間のみの温度データにより冷媒漏れを判定出来ることとなる。図12は横軸に正常な冷媒(フロン)量からの冷媒(フロン)の減少量、縦軸に冷却器入口と出口の冷媒温度の差の平均値をプロットしたものである。プロットしてあるデータは、冷媒の流れに係らず全温度データを使用した場合の結果と、冷媒が流れている条件のみの温度データを使用した場合である。その結果から、冷媒が流れている条件のみの温度データの場合の方が、冷媒(フロン)の減少量に対する冷却器入口と出口の冷媒温度の差が大きくなっていることが分かる。この温度差がすなわち冷媒漏れの検出感度の向上分に相当する。
【0020】
(請求項2,3,4関連)圧縮機の運転は吸入側の圧力値により制御されている。したがって、圧縮機の低圧側の圧力の平均値は一定となる。図11は冷媒(フロン)量を変化させた場合の圧縮機の低圧側(吸入側)の圧力値である。それぞれの冷媒(フロン)量のデータを取得した日は異なるが、圧縮器の低圧側(吸入側)の圧力値は約0.21〜0.22MPaの値で一定となっている。(但し、圧縮機の設定によって、一定となる圧力値は異なる。)このことから、圧縮器の低圧側(吸入側)の圧力値は長時間経過してもほぼ一定であり、変化しないことがわかる。よって、冷凍サイクル成立中であれば、冷却器出口での過熱度からエンタルピーが一意に求まることとなる。よって、冷却器出口に係わる温度から冷媒量が推定できることとなる。このため、冷媒が流れている条件であれば、従来技術のような圧力センサで圧力を検出せずとも、安価な熱電対等の温度センサで冷媒温度に相当する温度を検出することのみで良いこととなる。
【0021】
そして、冷媒量の判定用の温度データとしては、図4の第1実施例のフローチャートのS6のように、冷媒(フロン)が流れている単一期間中の冷却器出口の冷媒最低温度、同じく冷却器出口の冷媒平均温度、同じく冷却器入口と出口の冷媒温度差または、それに相当する配管温度による。これにより、冷媒量判定用の温度データは請求項2〜4のいずれの方式も冷媒量に対して強い相関を持っている。図13に冷却器出口の冷媒最低温度、図14に冷却器出口冷媒平均温度、図15に冷却器入口と出口の冷媒温度差を、冷媒(フロン)漏れ量を横軸にしてそれぞれプロットしたデータを示す。冷媒(フロン)漏れに対するこの強い相関のため、たとえば、冷凍ショーケースの庫内温度が上昇しない範囲の冷媒漏れでも早期に検出できる性能をもっている。よって、たとえば生鮮食品のショーケースで冷媒漏れが発生した場合でも、ショーケースの庫内温度が上昇し商品が傷んでしまう前に冷媒漏れを検知し、漏れ箇所の修理を実施することも可能となる。さらに、冷凍装置のメンテナンス会社も冷媒漏れの早期検知が可能となるため、メンテナンス計画や補修部品の計画的発注が可能となり業務の効率化が図れる。また、熱電対等の温度センサでの冷媒温度相当の温度を検出する方法は、冷媒配管温度を測ることで達成出来るため、既存の設備に設置する場合であっても冷媒配管の後加工は不要であり、容易に設置できる。また、従来技術で用いられている圧力センサの費用に比べ、熱電対やサーミスタは安価であり、システム構成費用も低減できる。
【0022】
(請求項5関連)冷却器内の冷媒は冷却器上流の電磁弁が開くことにより流れ始める。よって、冷却器内に冷媒が流れているということに相当する条件は、図9に示す様に、冷却器前の電磁弁が開いているという条件に相当する。図4の第1実施例のフローチャートのS1、2、7、8のように、電磁弁が開らいているということに相当する条件を冷却器入口と出口の温度の採用条件に入れた。このことにより、冷却器内に冷媒が流れている条件のみの温度データにより冷媒漏れを判定できることとなる。これにより、冷媒が流れているか否かの判定を冷媒回路内に設けられている電磁弁の動作によって行うため、特別なセンサを後付けする必要はない。図1のように演算器に電磁弁の電気的信号を取込み、電磁弁の駆動信号を観察すること、または、電磁弁の駆動命令を演算している演算器内のプログラムを直接参照することにより達成できる。
【0023】
(請求項7関連)電磁弁が開き冷媒(フロン)が流れているタイミング毎に判定用データは算出されるが、周囲の温度変化や装置の動作ばらつきやノイズ(電気的)などの外乱により判定データは、各タイミング毎にある程度のばらつきを持つ。このため、図10および図4の第1実施例のフローチャートのS9に示すように、各判定用データに一次遅れやフィルターなどによる逐次平均化処理を施し、その結果を元に冷媒量を判定する。この冷媒量の判定は、一つ又は複数の判定用温度データ処理方法(請求項2〜4に記載の方法)の結果により実施する。これらの判定用温度データは、逐次平均化処理によりばらつきを低減されているため、特異なデータによる誤判定を生ずることがなくなり、より正確な冷媒量の推定を実施することが出来る。
【0024】
[第2実施例の効果]
(請求項5関連)
冷却器入口の電磁弁は、たとえば冷凍ショーケースの場合、庫内の温度データを基に開閉している。よって、図1の演算器に電磁弁の信号を直接入力しなくても、演算器中のプログラムは、図16の第2実施例のフローチャートのS14、15、21、22のように庫内の温度、すなわち、冷却対象物の温度によって冷媒を流すべき条件に達していると判断し、その間の冷却器出口等の冷媒温度により、冷媒量判定をするようにしてもよい。これにより、電磁弁の動作信号を取り出す等の機器の改造なしに、制御プログラム内で冷媒量判定用演算を完結することが出来るため、システム費用の低減が図れる。
【0025】
(請求項6関連)冷却器上流の電磁弁が開いた後、冷媒が冷却器内を通過し、冷凍サイクルが成立するまでに遅れ時間がある。図17に示すように冷媒量判定用の演算として採用する冷媒温度データはこの遅れ分を考慮し、電磁弁の開弁信号を検出してから所定の遅延間後の値を用いることとし、図16の第2実施例のフローチャートのS16のように所定時間の待機時間をもたせたものである。これにより、遅れを考慮すると、冷媒量に対する冷媒量判定用演算温度の感度が図18に示す様にさらに向上するため、誤判定が防げると共に、更なる冷媒漏れ検出の早期化が可能となる。
【0026】
[第3実施例の効果]
(請求項6関連)前記実施例2に対し、図1の演算器の中のプログラムに図19の第3実施例のフローチャートのS36のように遅れ時間を閉弁時にも設けたものである。図20に示す様に、電磁弁の開弁信号に対して所定時間(遅延時間)分だけ後の温度データを、冷媒漏れ判定用温度データ演算に使用する温度データとする。これにより、電磁弁の動作と温度データの時間関係を一律にずらせば良いため、演算器の中のプログラムの作成が容易となる。この場合、電磁弁が閉弁した後の温度データは、冷凍サイクルが成立していない状態での温度データとなるが、冷媒の温度上昇や圧力変化の時間に比べ遅延時間が短時間であるため、冷媒量の判定精度には影響しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
[第1の実施例]
図1に示すような、圧縮機(コンプレッサ)、油分離器(オイルセパレータ)、凝縮器(コンデンサ)、レシーバタンク(受液器)、管継手(パイプジョイント、パイプフィッティング)、電磁弁、膨張弁、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)、管継手(パイプジョイント、パイプフィッティング)、液分離器(アキュムレータ)等の間を冷媒用配管で接続すると共に、前記レシーバタンク(受液器)と、前記液分離器(アキュムレータ)との間において、電磁弁、膨張弁、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)、を経由する冷媒経路を単独、または、並列に複数(実施例では4系統の並列)設けた冷凍装置の冷媒回路において、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)の上流、かつ、膨張弁の下流の部分に第1の温度センサを取付ける。また、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)の下流、かつ、他の冷却経路との合流(第2の管継手)前の部分に第2の温度センサを取付ける。温度センサは、どの様な種類のものでも良いが、温度信号をマイコンなどの演算器で処理するため、熱電対やサーミスタなどの様になんらかの電気的出力信号が得られるものである必要がある。温度センサの取付けは、内部の冷媒に直接接するような取付け方であっても、冷媒配管に取付けることで冷媒の温度を間接的に検出するような方式であっても良い。ただし、冷媒配管に取付ける場合は、配管周囲の空気温度の影響を受けないようにするため、配管に取付けた温度センサの周囲は保温材などで覆い、極力冷媒温度と同一な温度となるような処置をする必要がある。第1の温度センサと第2の温度センサの出力は、電気的信号線により演算器に入力する。
【0029】
また、冷媒の蒸発器(冷却器又はエバポレータ)への流れ込みを制御している電磁弁の開閉の状態と相関がある電磁弁の駆動信号を取り出せるようにする。これは、電磁弁に対して開閉命令を直接指示しているコントローラ(演算器)内のソフト上の開閉命令信号であっても、電磁弁に掛かる電圧信号を電気的に取り出した信号であってもよい。電磁弁に掛かる電圧信号を用いる場合は、図1のように演算器に電磁弁の電気的信号線を入力する。
【0030】
図4は、上述の温度センサ信号と電磁弁の信号を使用した冷媒漏れ判定プログラムの第1の実施例である。本プログラムは、図1の演算器の中に記述され、所定の演算周期にてステップ的に実行される。まず、S1で電磁弁の駆動信号を読込み、電磁弁の駆動信号を監視する。S2で電磁弁が開弁しているか判定し、電磁弁が開弁していない場合は、開弁するまでその他の演算処理は無しに電磁弁の開弁の監視を継続するため、再びS1に戻る。電磁弁が開弁した場合、S3以降の処理が実施され、第1および第2の温度センサの信号処理が開始される。このことにより、図5に示すように蒸発器(冷却器又はエバポレータ)に冷媒が流れ、冷凍サイクルが成立している時点のデータのみで冷媒漏れの判定がなされこととなる。
【0031】
開弁が判定された場合、初回の開弁判定の時点で冷媒漏れ判定用温度データ演算結果データを入れるメモリーを図4のS3にて初期化する。これは、開弁期間毎に判定用温度データの算術平均値を算出する為である。また、この算術平均値算出用として、S4にて温度センサのデータ取得数のカウントを一つ進める。次にS5にて蒸発器(冷却器又はエバポレータ)部分の第1(入口)および第2(出口)の温度センサの信号を読み込む。そして、このセンサ信号を基に、冷媒漏れ判定用温度データ演算処理部分(S6)で、第2の温度センサによる蒸発器(冷却器又はエバポレータ)出口の冷媒温度の最低値の検出処理および、または第2の温度センサによる蒸発器(冷却器又はエバポレータ)出口の冷媒温度の積算処理および、または第2の温度センサによる蒸発器(冷却器又はエバポレータ)出口の冷媒温度と第1の温度センサによる蒸発器(冷却器又はエバポレータ)入口の冷媒温度との差を積算する処理を行う。
【0032】
冷媒漏れ判定用温度データ演算処理の後、図4のS7にて電磁弁の駆動信号を再び読み込む。そして、S8にて電磁弁が閉弁したかどうかの判定を行う。
【0033】
電磁弁が閉弁していない場合、すなわち開弁した状態のままである場合、S4に戻り、再び温度センサのデータ取得数のカウントを一つ進めた後、第1および第2の温度センサの信号を読み込み(S5)、冷媒漏れ判定用温度データ演算処理(S6)を行う。
【0034】
電磁弁が閉弁した場合(S8にてYesの判定がなされた場合)、第1および第2の温度センサの信号は読み込まず、S9にて第2の温度センサによる蒸発器(冷却器又はエバポレータ)出口の冷媒温度の積算値および、または第2の温度センサによる蒸発器(冷却器又はエバポレータ)出口の冷媒温度と第1の温度センサによる蒸発器(冷却器又はエバポレータ)入口の冷媒温度との差の積算値から開弁期間におけるそれぞれの平均値を算出する。このとき、平均値の算出は、それぞれの積算値を温度センサのデータ取得数のカウント値(S4でのカウント値)によって除することにより求める。
【0035】
こうして、図6に示す様な一回の開弁期間における、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)出口の冷媒温度の最低値および、または図7に示す様な蒸発器(冷却器又はエバポレータ)出口の冷媒温度平均値および、または図8に示す様な蒸発器(冷却器又はエバポレータ)出口と入口の冷媒温度差の平均値、すなわち、冷媒漏れ判定用温度データが算出される。
【0036】
開弁期間毎に算出された冷媒漏れ判定用温度データは、周囲の温度変化や装置の動作ばらつきやノイズ(電気的)などの外乱により、各タイミング毎にある程度のばらつきを持つ。このばらつきの影響を低減させるため、図10に示す様な開弁期間毎に算出された冷媒漏れ判定用温度データに一次遅れ処理などの逐次平均化処理を図4のS10にて施す。
【0037】
下の式(数1)は逐次平均化処理として用いる一次遅れ処理の例である。yは一次遅れ処理を行った平均値、uは一次遅れ処理前の冷媒漏れ判定用温度データ、Tsは温度センサの信号のサンプリング周期(演算器内のプログラムの演算タイミング)、Tは一次遅れ処理の重みすなわち時定数、添え字のkはサンプリング又は演算のタイミングを表す。すなわち、k-1は一回前の演算タイミングでの演算値または、一回前のサンプリングタイミングでの温度センサ信号のサンプリング値をあらわす。
【0038】
(数1)
yk=(uk−yk−1)(Ts/T)+yk−1
【0039】
(数1)は、図4のS10の逐次平均化処理にて使用される。
【0040】
その平均化処理が施された冷媒漏れ判定用温度データを冷媒もれ判定値と比較することにより、図4のS11にて異常判定を行う。異常判定がなされた場合はS12にて、冷媒漏れランプ点灯などの異常判定時処理を実施し、正常判定がなされた場合はS13にて、正常ランプ点灯などの正常判定処理を実施する。正常又は異常判定処理の終了後再びS1に戻り、電磁弁駆動信号を読み込み、上述の処理を繰り返す。
【0041】
[第2の実施例]
図16は、図1の演算器の中に記述される冷媒漏れ判定プログラムの第2の実施例である。図4の第1の実施例に対してS14、15、21、22の部分が異なっており、電磁弁の駆動信号の監視部分(図4S1、2、7、8)を冷却対象物の温度、例えば、冷凍ショーケースの庫内温度に置き換えたものである。冷凍ショーケースの場合、電磁弁の駆動は、庫内温度がある設定値を超えた場合、それをトリガーにして冷凍ショーケースの制御器が電磁弁の開弁命令を出すようにしている。従って、電磁弁の駆動命令または駆動電圧を用いなくても、庫内の温度等の冷却対象物温度読込値が所定値以上になった場合、蒸発器(冷却器又はエバポレータ)に冷媒を流す命令が発せられたと判断し、第1の実施例と同様な演算処理を実施するものである。
【0042】
更に、冷却対象物の温度が所定温度以上、すなわち電磁弁が開弁状態であると判断された後、所定時間待機させる(図16のS16)。待機時間は、電磁弁が開いてから実際に冷媒が蒸発器(冷却器又はエバポレータ)を流れ始めるまでの遅れ時間に相当する。この冷媒の遅れ時間分の待機は、第1の実施例(図4)の様に電磁弁の動作を直接的に検出しているものに適用してもよい。その結果、図17に示す様に、電磁弁が開き始めてから遅延時間分経過した後の温度データのみを用いて冷媒漏れ判定用温度データの演算を行うこととなる。
【0043】
また、電磁弁が開弁してから所定時間経過した後の温度データを使用する方法としては、図16のS16のように所定時間待機する以外にも、第1および第2の温度センサの信号は読込むが、所定時間経過するまで、その読込み値を冷媒漏れ判定用温度データ演算用の温度として採用しない等の方法も考えられる。
【0044】
[第3の実施例]
図19は、図1の演算器の中に記述される冷媒漏れ判定プログラムの第3の実施例である。図16の第2の実施例に対して、S36にて所定時間経過するまでの第1および第2の温度センサの温度データを冷媒漏れ判定用温度データ演算用の温度として採用し続けることを特徴とするものである。この場合、図20に示す様に、電磁弁の開弁信号に対して所定時間(遅延時間)分だけ後の温度データを、冷媒漏れ判定用温度データ演算に使用する温度データとすることとなる。基本的に開弁後と閉弁後の所定時間は同一の長さの時間である。この場合のプログラムは、電磁弁の駆動信号自体をプログラム内で所定時間分遅延させ、その遅延させた電磁弁の駆動信号を基にS31〜S34を実行することとなる。この方式は、図16に示す第2の実施例のS14、15、21のように冷却対象物の温度を用いる場合に適用してもよい。
【0045】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の範囲は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、食料品等展示販売用の冷凍ショーケース用の冷凍空調設備、店舗・ビル・住宅等の空調設備、冷蔵庫・自動販売機などの冷蔵設備などの冷媒を使用している冷凍空調設備にて利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の適用した冷凍空調設備の一般的な構成図面である。
【図2】冷凍空調設備の一般的な構成図面にて、従来技術の問題点を説明した図である。
【図3】蒸発器(冷却器又はエバポレータ)入口と出口の冷媒(フロン)の温度の図である。
【図4】第1の実施例をフローチャートで表した図である。
【図5】請求項1に係る電磁弁の信号と冷却器入口と出口温度の時間的変化の図である。
【図6】請求項2に係る電磁弁の信号と冷却器入口と出口温度の時間的変化の図である。
【図7】請求項3に係る電磁弁の信号と冷却器入口と出口温度の時間的変化の図である。
【図8】請求項4に係る電磁弁の信号と冷却器入口と出口温度の時間的変化の図である。
【図9】請求項5に係る電磁弁の信号と冷却器入口と出口温度の時間的変化の図である。
【図10】実施例1に係る逐次平均化処理の実施方法を説明した図である。
【図11】冷媒量と圧縮機吸入側平均圧力の関係と冷媒量推定の方式を説明した図である。
【図12】請求項1,5に係る冷媒(フロン)量に対する冷媒温度の図である。
【図13】請求項2に係る冷媒(フロン)量に対する冷媒温度の図である。
【図14】請求項3に係る冷媒(フロン)量に対する冷媒温度の図である。
【図15】請求項4に係る冷媒(フロン)量に対する冷媒温度の図である。
【図16】第2の実施例をフローチャートで表した図である。
【図17】請求項6に係る電磁弁の信号と冷却器入口と出口温度の時間的変化の図である。
【図18】請求項6に係る冷媒(フロン)量に対する冷媒温度の図である。
【図19】第3の実施例をフローチャートで表した図である。
【図20】請求項6に係る冷媒(フロン)量に対する冷媒温度の図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却器に冷媒が流れている期間に相当する間の冷却器出口および、または入口の冷媒または冷媒に相当する温度により冷凍装置の冷媒量を判定することを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法。
【請求項2】
冷却器に冷媒が流れている時の冷却器出口の冷媒または冷媒に相当する温度の最低温度を基に冷凍装置の冷媒量を判定することを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法。
【請求項3】
冷却器に冷媒が流れている時の冷却器出口の冷媒の平均温度を基に冷凍装置の冷媒量を判定することを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法。
【請求項4】
冷却器に冷媒が流れている時の冷却器入口と出口の冷媒温度の差の平均値を基に冷凍装置の冷媒量を判定することを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法。
【請求項5】
請求項1〜4に記載された冷凍装置の冷媒量の判定用演算に使用する温度データは、冷却器入口の電磁弁が開いている期間に相当する間の温度データとすることを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法。
【請求項6】
請求項1〜4に記載された冷凍装置の冷媒量の判定用演算に使用する温度データは、冷却器入口の電磁弁の動作に対して遅延を持たせた期間の温度データとすることを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法。
【請求項7】
冷凍装置の冷媒量の判定は、冷媒が連続して流れている各期間毎に算出された請求項1〜4に記載された温度データに対して、平均化処理により外乱を除去した温度データを基に実施することを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法。
【請求項1】
冷却器に冷媒が流れている期間に相当する間の冷却器出口および、または入口の冷媒または冷媒に相当する温度により冷凍装置の冷媒量を判定することを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法。
【請求項2】
冷却器に冷媒が流れている時の冷却器出口の冷媒または冷媒に相当する温度の最低温度を基に冷凍装置の冷媒量を判定することを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法。
【請求項3】
冷却器に冷媒が流れている時の冷却器出口の冷媒の平均温度を基に冷凍装置の冷媒量を判定することを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法。
【請求項4】
冷却器に冷媒が流れている時の冷却器入口と出口の冷媒温度の差の平均値を基に冷凍装置の冷媒量を判定することを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法。
【請求項5】
請求項1〜4に記載された冷凍装置の冷媒量の判定用演算に使用する温度データは、冷却器入口の電磁弁が開いている期間に相当する間の温度データとすることを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法。
【請求項6】
請求項1〜4に記載された冷凍装置の冷媒量の判定用演算に使用する温度データは、冷却器入口の電磁弁の動作に対して遅延を持たせた期間の温度データとすることを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法。
【請求項7】
冷凍装置の冷媒量の判定は、冷媒が連続して流れている各期間毎に算出された請求項1〜4に記載された温度データに対して、平均化処理により外乱を除去した温度データを基に実施することを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2008−249226(P2008−249226A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90231(P2007−90231)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(591032703)群馬県 (144)
【出願人】(305026013)細谷工業株式会社 (4)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(591032703)群馬県 (144)
【出願人】(305026013)細谷工業株式会社 (4)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
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