説明

冷凍装置の運転制御装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複数の蒸発器を備えた冷凍装置の運転制御装置に係り、特に、除霜運転効率の向上対策に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、例えば特開昭63―180050号公報に開示される如く、冷媒回路中に複数の蒸発器を互いに並列に接続してなる冷凍装置において、各蒸発器に供給される液冷媒の減圧を行う電動膨張弁の開度を蒸発器出口における冷媒の過熱度がその制御目標値に収束するよう制御することにより、冷媒状態を適性に保持しながら、要求能力に応じた各蒸発器の能力を確保しようとするものは、公知の技術である。
【0003】また、例えば特開平2―78873号公報に開示される如く、冷媒回路の吸入圧力等の蒸発器の温度に関連する冷媒状態量から蒸発器の着霜状態を検出し、蒸発器が着霜したときには蒸発器にホットガスを導入する除霜運転を行い、蒸発器の着霜が融解すると、除霜運転を終了して通常運転に復帰するように制御するようにした冷凍装置の運転制御装置は公知の技術である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、複数の蒸発器を備えた冷凍装置において、上記後方のうち後者のものを適用すると、一つの蒸発器が着霜状態になった時でも、他の蒸発器がまだ着霜していないことがある。すなわち、着霜は主として通常運転中における積分能力に依存するので、各蒸発器の積分能力が異なれば着霜時期は異なる。
【0005】特に、室外ユニットに複数の熱源側熱交換器を組み込んで、暖房運転時に蒸発器となる各熱源側熱交換器から冷風を室外に吹出すようにした空気調和装置においても、通常はいずれの熱源側熱交換器の積分能力もほぼ等しいはずであるが、周囲の建物との関係等でファンの送風に偏流をきたすことがある。このような原因等で各熱源側熱交換器間の積分能力に差がある場合、一つの熱源側熱交換器が着霜しても、他の熱源側熱交換器ではまだ着霜していない。したがって、そのまま除霜運転を開始すると、冷凍装置全体の運転効率が悪化する一方、他の熱源側熱交換器も着霜するまで通常運転を続行すると、先に着霜を生じた熱源側熱交換器の着霜が過大になり、信頼性を損ねたり、除霜運転時間が余りに長くなってその間空調等の冷凍装置の機能が犠牲になる虞れがあった。
【0006】本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、除霜運転の開始前又は除霜運転中において、各蒸発器の着霜状態に応じて、各蒸発器の減圧弁となる電動膨張弁の開度を適度に制御する手段を講ずることにより、各蒸発器の着霜量や着霜の融解状態を可及的に均一化し、もって、冷凍装置の運転効率の向上を図ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の解決手段は、各蒸発器の着霜状態に応じて電動膨張弁の開度を変更させ、蒸発器能力を調節することにより、着霜量の均一化を図ることにある。
【0008】具体的に請求項1の発明の講じた手段は、図1に示すように(破線部分は含まず)、圧縮機(1)及び凝縮器が接続される主冷媒配管(11)に対して、各々蒸発器(6)と電動膨張弁(8)とが直列に接続される複数の分岐配管(11a),(11b)を互いに並列に接続してなる閉回路の冷媒回路(14)を備えた冷凍装置を前提とする。
【0009】そして、冷凍装置の運転制御装置として、上記各蒸発器(6a),(6b)の温度又はこれに関連する冷媒状態量から蒸発器(6a),(6b)の着霜状態を個別に検出する着霜状態検出手段(Th21 ),(Th22)と、上記冷凍装置の運転中、上記各着霜状態検出手段(Th21 ),(Th22 )の出力を受け、各蒸発器(6a),(6b)の着霜状態に応じて、上記蒸発器(6a),(6b)の除霜運転をするよう制御する除霜運転制御手段(51)とを設ける。
【0010】さらに、冷凍装置の運転中、上記各着霜状態検出手段(Th21),(Th22 )の出力を受け、いずれかの蒸発器(6a又は6b)の温度が着霜開始温度に達したとき、当該蒸発器(6a又は6b)の電動膨張弁(8a又は8b)の開度を絞るよう開度にするよう制御する除霜前開度低減手段(52)を設ける構成としたものである。
【0011】請求項2の発明の講じた手段は、上記請求項1の発明において、除霜運転制御手段(51)を、いずれか一つの蒸発器(6a又は6b)の温度が所定の着霜量に対応する除霜開始温度に達すると、すべての蒸発器(6a),(6b)の除霜運転を開始するように構成したことにある。
【0012】請求項3の発明の講じた手段は、上記請求項1又は2の発明における冷媒回路(14)をサイクルの切換え可能に構成し、除霜運転制御手段(51)を逆サイクル除霜運転を行うものとする。
【0013】さらに、除霜運転中、各着霜状態検出手段(Th21 ),(Th22 )の出力を受け、いずれかの蒸発器(6a又は6b)の温度が着霜の融解温度に達したとき、当該蒸発器(6a又は6b)の電動膨張弁(8a又は8b)の開度を絞るよう制御する除霜中開度低減手段(53)を設ける構成としたものである。
【0014】請求項4の発明の講じた手段は、上記請求項1,2,又は3の発明において、除霜運転制御手段(51)を、すべての蒸発器(6a),(6b)の温度が着霜の融解温度に達した時に除霜運転を終了するように構成したものである。
【0015】
【作用】以上の構成により、請求項1の発明では、冷凍装置の運転中、各着霜状態検出手段(Th21 ),(Th22 )により、蒸発器の温度又はこれに関連する冷媒状態量から各蒸発器(6a),(6b)の着霜状態が検出されると、その着霜状態に応じ、除霜運転制御手段(51)により、除霜運転を行うよう制御される。
【0016】そして、除霜運転開始前において、各着霜状態検出手段(Th21 ),(Th22)により検出されるいずれかの蒸発器(例えば6a)の温度が着霜開始温度に達すると、除霜前開度低減手段(52)により、当該蒸発器(6a)の電動膨張弁(8a)の開度が絞られるので、当該蒸発器(6a)の能力が低減し、除霜運転開始直前における各蒸発器(6a),(6b)の積算能力が可及的に均一化される。したがって、各蒸発器(6a),(6b)の着霜を融解するための除霜運転が効率よく行われ、冷凍装置全体の運転効率が向上することになる。
【0017】請求項2の発明では、上記請求項1の発明において、除霜運転制御手段(51)により、いずれか一方の蒸発器(例えば6a)の着霜量が所定量となる除霜開始温度に達すると除霜運転が行われるので、上記請求項1の発明の作用と相俟って、いずれかの蒸発器(例えば6b)の着霜量が過大になることなく、効率のよい除霜運転が行われる。
【0018】請求項3の発明では、除霜運転制御手段(51)による除霜運転中、いずれかの蒸発器(例えば6b)の温度が融解温度に達すると、除霜中開度低減手段(53)により、当該蒸発器(6b)の電動膨張弁(8b)の開度が絞られるので、当該蒸発器(6b)への冷媒循環量が減少し、その分他の蒸発器(6a)への冷媒循環量が増大して着霜の融解が促進される。したがって、各蒸発器(6a),(6b)の着霜の融解度合いが可及的に均一化され、除霜運転時間が短縮されるので、冷凍装置の運転効率が向上することになる。
【0019】請求項4の発明では、除霜運転制御手段(51)により、すべての蒸発器(6a),(6b)の着霜が融解したときに除霜運転を終了して通常運転に復帰するように制御されるので、冷凍装置の運転効率を良好に維持しながら、各蒸発器(6a),(6b)の着霜が確実に融解されることになる。
【0020】
【実施例】以下、本発明の実施例について、図2以下の図面に基づき説明する。
【0021】図2は本発明の実施例に係るマルチ型空気調和装置の冷媒配管系統を示し、一台の室外ユニット(A)に対して複数の室内ユニット(図示せず)が並列に接続されている。上記室外ユニット(A)の内部には、出力周波数を30〜70Hzの範囲で10Hz 毎に可変に切換えられるインバ―タ(2a )により容量が調整される第1圧縮機(1a )と、パイロット圧の高低で差動するアンロ―ダ(2b)により容量がフルロ―ド(100%)およびアンロ―ド(50%)状態の2段階に調整される第2圧縮機(1b )とを逆止弁(2c)を介して並列に接続して構成される容量可変な圧縮機(1)と、該圧縮機(1)から吐出されるガス中の油を分離する油分離器(4)と、冷房運転時には図中実線の如く切換わり暖房運転時には図中破線の如く切換わる四路切換弁(5)と、冷房運転時に凝縮器、暖房運転時に蒸発器となる2台の熱源側熱交換器(6a),(6b)と、冷房運転時には冷媒流量を調節し、暖房運転時には冷媒の絞り作用を行う2台の室外電動膨張弁(8a),(8b)と、液化した冷媒を貯蔵するレシ―バ(9)と、アキュムレ―タ(10)とが主要機器として配設されている。
【0022】そして、上記圧縮機(1)、レシ―バ(9)及びアキュムレ―タ(10)は主冷媒配管(11)により順次直列に接続され、上記各熱源側熱交換器(6a),(6b)及び各室外電動膨張弁(8a),(8b)はそれぞれ2つの分岐配管(11a),(11b)により直列に接続されるとともに、各分岐配管(11a),(11b)は主冷媒配管(11)に対して互いに並列に接続されていて、冷媒が循環する閉回路の冷媒回路(14)が構成されている。
【0023】ここで、上記室外ユニット(A)の各機器は一つのケ―シング(図示せず)内に収納されており、上記各熱源側熱交換器(6a),(6b)のうち一方の熱源側熱交換器(6a)は、高風量と低風量とに切換え可能な第1ファン(31a)及び定風量の第2ファン(31b)の通風路に設置され、他方の熱源側熱交換器(6b)には、高風量と定風量とに切換え可能な第3ファン(31c)の通風路に設置されている。そして、各熱源側熱交換器(6a),(6b)に対応して2つの空気吹出口が設けられ、個別に室外空気との熱交換を行うようにしたいわゆる二面熱交換器に構成されている。
【0024】次に、吐出管と液管側とを吐出ガス(ホットガス)のバイパス可能に接続する暖房過負荷制御用バイパス路(41)が設けられている。該バイパス路(41)は2つの熱源側熱交換器(6a),(6b)に対応する2つの分岐路(41a),(41b)に分岐しており、これらは互いに同一の構成されているので、一方の分岐路(41a)についてのみ説明するに、該分岐路(41a)には、熱源側熱交換器(6a)と共通の空気通路に設置された補助熱交換器(42a)と、キャピラリチュ―ブ(43a)とが順次直列に接続されている。上記構成はもう一方の分岐路(41b)についても同様である。そして、暖房過負荷制御用バイパス路(41)の合流部に、冷媒の高圧時に開作動する電磁開閉弁(44)が介設されている。
【0025】ここで、冷房運転時には常時上記電磁開閉弁(44)がオンつまり開状態になって、吐出ガスの一部を主冷媒回路(14)から暖房過負荷制御用バイパス路(41)にバイパスすることにより、吐出ガスの一部を補助熱交換器(42a),(42b)で凝縮させて熱源側熱交換器(6a),(6b)の能力を補助するとともに、各キャピラリチュ―ブ(43a),(43b)で熱源側熱交換器(6a),(6b)側の圧力損失とのバランスを取るようにしている。また、暖房運転時には、高圧が過上昇したときに、ただちに上記電磁開閉弁(44)を開くのではなく、まず、圧縮機(1)の容量を低下させ、それでも高圧側圧力の過上昇が続行すると、一方の室外電動膨張弁(8a)を全閉にすることにより、蒸発能力を下げて、室内側の低能力状態に対応させるようにしている。そして、上記室外電動膨張弁(8a)の全閉制御によっても、過負荷状態が解消しないときのみ、電磁開閉弁(44)を開いて、吐出ガスの一部を各補助熱交換器(42a),(42b)で凝縮させて熱源側熱交換器(6b)の蒸発能力とのバランスを取るようになされている。
【0026】さらに、(51)は主冷媒回路(14)の液ラインと各圧縮機(1a),(1b)の吸入側との間を接続し、冷暖房運転時に吸入ガスの過熱度を調節するためのリキッドインジェクションバイパス路であって、該各バイパス路(51)は途中で二つの分岐路(51a),(51b)に分岐し、分岐路(51a),(51b)には、各圧縮機(1a),(1b)のオン・オフと連動して開閉するインジェクション用電磁弁(52a),(52b)と、キャピラリチュ―ブ(53a),(53b)とがそれぞれ介設されている。
【0027】また、(15)は、吸入管中の吸入冷媒と液管中の液冷媒との熱交換により吸入冷媒を冷却させて、連絡配管における冷媒の過熱度の上昇を補償するための吸入管熱交換器である。
【0028】なお、上記各主要機器以外に補助用の諸機器が設けられている。(7a),(7b)は各熱源側熱交換器(6a),(6b)の液側入口に設けられた過冷却器、(21)は第2圧縮機(1b )のバイパス路(20)に介設されて、第2圧縮機(1b )の停止時およびアンロ―ド状態時に「開」となり、フルロ―ド状態で「閉」となるアンロ―ダ用電磁弁、(22)は上記バイパス路(20)に介設されたキャピラリチュ―ブ、(24)は吐出管と吸入管とを接続する均圧ホットガスバイパス路(23)に介設されて、サ―モオフ状態等による圧縮機(1)の停止時、再起動前に一定時間開作動する均圧用電磁弁、(25)はキャピラリチュ―ブ(26)を介して上記油分離器(4)から各圧縮機(1a),(1b)に油を戻すための油戻し管、(27)はキャピラリチュ―ブ(28)を介して各圧縮機(1a),(1b)のド―ム間を接続する均油管である。
【0029】さらに、空気調和装置にはセンサ類が配置されていて、(Th1)は室外ユニット(A)のケ―シング外面に設置され、室外空気の温度T1を検出する外気サ―ミスタ、(Th21 ),(Th22 )はそれぞれ各熱源側熱交換器(6a),(6B)の液管側に配設され、熱源側熱交換器(6a),(6b)が蒸発器となる暖房運転時には各熱源側熱交換器(6a),(6b)の温度を個別に検出する第1,第2ディアイサ、(Th31 ),(Th32 )はそれぞれ各圧縮機(1a),(1b)の吐出管に配置され、吐出冷媒の温度を検出する吐出管サ―ミスタ、(Th41),(Th42 )はそれぞれ各分岐配管(11a),(11b)のガス側つまり暖房運転時に吸入ラインとなる部位に配置され、吸入される過熱冷媒の温度を検出する吸入管サ―ミスタ、(P1)は吐出ラインに配置され、高圧側圧力を検出する高圧圧力センサ、(P2)は吸入ラインに配置され、低圧側圧力を検出する低圧圧力センサである。なお、空気調和装置の暖房運転時、上記各吸入管サ―ミスタ(Th41 ),(Th42 )で検出される過熱冷媒温度T4 と、各ディアイサ(Th21 ),(Th22 )で検出される蒸発温度T2n(n =1,2)との温度差から冷媒の過熱度Sh を検出するようになされている。
【0030】上記各センサは、空気調和装置の運転を制御するコントロ―ラ(図示せず)に信号線で接続されており、コントロ―ラにより、各センサで検出される冷媒等の状態に応じて、各機器の作動を制御するようになされている。
【0031】空気調和装置の暖房運転時、四路切換弁(5)の接続状態が図中破線側に切換わり、圧縮機(1)から吐出されるガス冷媒が室内ユニットで室内空気との熱交換により凝縮,液化され、液冷媒となってレシ―バ(9)に貯溜された後、各分岐配管(11a),(11b)に分岐して流れ、各室外電動膨張弁(8a),(8b)で減圧され、各熱源側熱交換器(6a),(6b)で蒸発して圧縮機(1)に吸入されるように循環する。また、冷房運転時には、四路切換弁(5)が図中実線側に切換わり、冷媒の循環方向は上記冷房運転時とは逆向きとなって、吐出冷媒が各分岐配管(11a),(11b)に分岐して流れ、各熱源側熱交換器(6a),(6b)で室外空気との熱交換により凝縮,液化され、レシ―バ(9)に貯溜された後、室内ユニットで室内空気との熱交換によりガス冷媒となって圧縮機(1)に戻るように循環する。
【0032】次に、コントロ―ラの制御内容について、図3及び図4のフロ―チャ―トに基づき説明する。
【0033】図3は空気調和装置の運転制御の内容を示し、ステップST1で、暖房要求か否かを判別し、暖房要求であれば、ステップST2で、運転中か否かを判別し、運転中であれば、ステップST3で、各ディアイサ(Th21 ),(Th22 )で検出される各熱源側熱交換器(6a),(6b)の温度T2n(n =1,2)(ディアイサ温度)について、式 T2n<0.5×T1 −5が成立するか否かを判別し、いずれかのディアイサ温度T2nについてこの関係が成立すると、当該熱源側熱交換器(6a又は6b)の着霜が開始したと判断し、ステップST4に進んで、当該熱源側熱交換器(6a又は6b)側の警報フラグDEFST1 を「1」に設定する。
【0034】さらに、ステップST5で、各ディアイサ温度T2nについて、式 T2n<0.5×T1 −10が成立するか否か判別し、この関係が成立すると、いずれかの熱源側熱交換器(6a又は6b)の着霜量が所定量に達したため除霜運転を行う必要があると判断し、ステップST6で、待機制御用5分タイマ(図示せず)のカウントを開始して、ステップST7で、5分タイマがカウントアップするまで上記制御を繰り返す。そして、5分タイマがカウントアップすると、ステップST8で警報フラグDEFST1 を「0」にした後、ステップST9で除霜フラグDEFST2 を「1」に設定して、後述の除霜運転を開始する。一方、5分タイマのカウント中に、上記ステップST5の判別で、式 T2n<0.5×T1 −10が成立しないときには、ディアイサ(Th21 又はTh22 )の誤検知の可能性があると判断し、ステップST10に移行して、5分タイマをリセットした後、ステップST1に戻って、上記制御を繰り返す。
【0035】なお、上記ステップST1,ST2,ST3の制御で、それぞれ暖房要求でないとき,運転中のとき,又は式 T2n<0.5×T1 −5が成立しないときには、ステップST11に移行して、警報フラグDEFST1 及び除霜フラグDEFST2 をいずれも「0」に設定する。
【0036】次に、図4は各室外電動膨張弁(8a又は8b)の開度制御の内容を示し、ステップSR1で暖房要求か否かを判別し、暖房要求であれば、ステップSR2で運転中か否かを判別して、運転中でなければ、ステップSR3に進んで、弁開度を全閉にする。次に、ステップSR4で、上記図3の制御で設定される除霜フラグDEFST2 が「1」か否かを判別し、除霜フラグDEFST2 が「1」でなければ、ステップSR5で、さらに警報フラグDEFST1 が「1」か否かを判別する。そして、警報フラグDEFST1 が「1」でなければ、ステップSR6に進んで過熱度の制御目標値Shsを標準的な値5(℃)に設定する一方、警報フラグDEFST1 が「1」であれば、ステップSR7に移行して、着霜が開始した熱源側熱交換器(6a又は6b)の着霜の進行を抑制すべく過熱度の制御目標値Shsを20(℃)と高く変更することにより、弁開度を絞り、当該熱源側熱交換器(6a又は6b)の蒸発能力を低下させる。また、上記ステップSR4の判別で、DEFST2=1のときには、後述の除霜運転中の開度制御に移行する(図7参照)。
【0037】なお、ステップSR1の判別で暖房要求でないときには、ステップSR9に移行し、運転中か否かを判別して、運転中であれば、ステップSR10に進んで弁開度を全開(2000パルス)にし、運転中でなければ、ステップSR11に移行して弁開度を200パルスと低開度に設定するようにしている。
【0038】次に、除霜運転時における制御内容について、図5〜図7に基づき説明する。図5は除霜運転時におけるディアイサ(Th21 ),(Th22 )の代表値T2 を決定するための制御の内容を示し、ステップSP1で、各ディアイサ(Th21 ),(Th22 )側で検出されるディアイサ温度T21,T22同士の高低を比較し、T21>T22であれば、ステップSP2でT2 =T22とし、T21<T22であれば、ステップSP3でT2 =T21とする。つまり、各ディアイサ(Th21 ),(Th22 )の検出値T21,T21のうち、低いほうを代表値T2 として決定する。
【0039】また、図6は除霜運転中の制御内容を示し、ステップST21で、四路切換弁(5)を冷房サイクル側に切換えて逆サイクルによる除霜運転を開始すると同時に、除霜運転時間の上限を10分間とするための10分タイマ(図示せず)のカウントを開始し、ステップST22で、上記の制御で決定されたディアイサ温度の代表値T2 が所定温度12.5(℃)よりも高くなると、ステップST23で10分タイマがカウントアップするまで除霜運転を行い、10分タイマがカウントアップすると、いずれの熱源側熱交換器(6a),(6b)の着霜も融解したと判断し、ステップST24で通常暖房運転に復帰する。
【0040】また、図7は除霜運転中における室外電動膨張弁(8a),(8b)の開度の制御内容を示し、ステップSR21で、各熱源側熱交換器(6a),(6b)のディアイサ温度T21(又はT22)と着霜の融解温度12.5(℃)とを比較して、T21>12.5(℃)か否かを判別し、T21(又はT22)>12.5(℃)でなければ、ステップSR22で弁開度を全開とする一方、T21(又はT22)>12.5(℃)であれば、ステップSR23に進んで弁開度を半開1000パルスに設定する。
【0041】上記各フロ―チャ―トにおいて、ステップST21〜ST23の制御により、請求項1の発明にいう除霜運転制御手段51が構成され、ステップSR7の制御により、除霜前開度低減手段(52)が構成されている。また、ステップSR23の制御により、除霜中開度低減手段(53)が構成されている。
【0042】したがって、上記実施例の請求項1の発明に対応する制御では、空気調和装置の暖房運転中、各ディアイサ(着霜状態検出手段)(Th21 ),(Th22 )により、蒸発器温度つまり熱源側熱交換器(6a),(6b)の温度T21,T22又はこれに関連する冷媒状態量から熱源側熱交換器(6a),(6b)の着霜状態が検出されると、その着霜状態に応じ、除霜運転制御手段(51)により、除霜運転(上記実施例では逆サイクルによる除霜運転)を行うよう制御される。
【0043】そのとき、除霜運転前において、上記実施例のように各熱源側熱交換器(蒸発器)(6a),(6b)が同一ケ―シングに収納されている場合にも、各ファン(31a)〜(31c)の偏流等によって、各熱源側熱交換器(6a),(6b)の着霜状態は均一ではなく、いずれか一方の熱源側熱交換器(例えば6a)の積算能力が特に大きくて先に着霜することがある。したがって、従来のもののように、各蒸発器の着霜条件の相違を考慮せずに暖房運転を続行すると、他方の熱源側熱交換器(6b)の着霜が除霜運転開始条件まで達していないのにも拘らず除霜運転を行うことにより空気調和装置の効率の悪化を招いたり、両熱源側熱交換器(6a),(6b)の除霜運転開始条件が成立するまで暖房運転を続行することにより過度の着霜を生ぜしめ、信頼性を損ねたりする等の不具合が生じる。
【0044】それに対し、上記実施例では、除霜運転開始前において、各ディアイサ(着霜状態検出手段)(Th21 ),(Th22 )により検出されるいずれかの蒸発器温度つまり熱源側熱交換器(例えば6a)の温度T21が着霜開始温度に達すると、除霜前開度低減手段(52)により、当該熱源側熱交換器(6a)の減圧弁である室外電動膨張弁(8a)の開度が絞られるので、当該熱源側熱交換器(6a)の能力が低減し、除霜運転開始前における各熱源側熱交換器(6a),(6b)の積算能力が可及的に均一化される。したがって、各熱源側熱交換器(6a),(6b)の着霜を融解するための除霜運転が効率よく行われ、空気調和装置全体の運転効率が向上することになる。
【0045】なお、上記実施例では、いわゆるヒ―トポンプ回路を有する空気調和装置の室外ユニット(A)のケ―シング内に2つの熱源側熱交換器(6a),(6b)を配設したいわゆる2面熱交の場合について説明したが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではなく、例えば多数の蒸発器を冷媒回路に配設した冷凍機についても適用しうる。ただし、上記実施例のような2面熱交形の室外ユニット(A)を有する空気調和装置では、ビルの屋上に室外ユニット(A)を設置した場合に、周囲の状況によって一方の熱源側熱交換器への送風が隣接するビルによって遮られる等送風の偏流を生じることが多いので、特に本発明による効果が大きい。
【0046】また、上記実施例では、各室外電動膨張弁(8a),(8b)の開度が過熱度制御される場合について説明したが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではなく、例えば複数の蒸発器を配置した冷凍機において、各庫内の要求能力に応じた能力制御を行うような運転制御装置に対しても適用しうる。
【0047】さらに、上記実施例では、着霜が生じた熱源側熱交換器(例えば6a)の室外電動膨張弁(8a)の開度を目標過熱度の値を高く変更することにより絞るようにしたが、室外電動膨張弁(8a)の開度の絞り制御は斯かる実施例に限定されるものではなく、例えば一律に半開(1000パルス)や全閉にするような制御を行ってもよい。
【0048】また、請求項1の発明において、除霜運転制御手段(51)による除霜運転は上記実施例のような逆サイクルによるものだけでなく、例えばホットガスバイパスによる除霜運転であってもよいことはいうまでもない。
【0049】次に、上記実施例では、請求項2の発明に対応して、除霜運転制御手段(51)により、いずれか一方の熱源側熱交換器(例えば6a)の着霜量が所定量となる除霜開始温度に達すると除霜運転を行うようにしたが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではなく、例えば両熱源側熱交換器(6a),(6b)の温度が除霜開始温度に達したときに除霜運転を行うようにしてもよい。ただし、請求項2の発明のごとく、いずれか一方の熱源側熱交換器(例えば6a)の温度が除霜開始温度に達したときに除霜運転を行うようにした場合、いずれか一方の熱源側熱交換器(例えば6b)の着霜量が過大になることが確実に防止され、上記請求項1の発明の作用と相俟って、確実にしかも効率のよい除霜運転を行うことができるという利点がある。
【0050】次に、上記実施例における請求項3の発明に対応する部分では、除霜運転制御手段(51)による除霜運転中、いずれかの熱源側熱交換器(例えば6b)の温度T22が融解温度に達すると、除霜中開度低減手段(53)により、当該熱源側熱交換器(6b)の室外電動膨張弁(8b)の開度が絞られるので、当該熱源側熱交換器(6b)への冷媒循環量が減少し、その分他の熱源側熱交換器(6a)への冷媒循環量が増大する。したがって、各熱源側熱交換器(6a),(6b)の着霜の融解度合いが可及的に均一化され、除霜運転時間が短縮されるので、空気調和装置の運転効率が向上することになる。
【0051】なお、上記実施例では、請求項4の発明に対応して、除霜運転の終了の判断時を両熱源側熱交換器(6a),(6b)の着霜が融解したときとしたが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではなく、例えば各熱源側熱交換器(6a),(6b)の平均的な温度が所定値に達したときに除霜運転を終了するような制御(例えば上記実施例における低圧圧力センサ(P2)の検出値が所定値に達したときに通常運転に復帰するような制御)も可能である。ただし、請求項4の発明のように両熱源側熱交換器(6a),(6b)の温度が着霜の融解温度に達したときに除霜運転を終了して通常運転に復帰するよう制御することにより、各熱源側熱交換器(6a),(6b)の着霜が確実に融解される。したがって、上記請求項3の発明による効果と相俟って、空気調和装置の運転効率を良好に維持しながら、確実に除霜を行いうる利点がある。
【0052】また、上記実施例では、熱源側熱交換器(6a),(6b)の着霜状態を液管に配置されたディアイサ(Th21 ),(Th22 )で検出したが、例えば各吸入管センサ(Th41 ),(Th42 )で検出される吸入冷媒温度や、吸入管センサ(Th41 ),(Th42 )の代わりに圧力センサにより検出される蒸発圧力相当飽和温度、つまり蒸発器温度に関連する冷媒状態量から着霜状態を検出しても同様の効果を得ることができる。
【0053】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明によれば、複数個の蒸発器と電動膨張弁とを冷媒回路内に互いに並列に配置してなる冷媒回路を備えた冷凍装置の運転制御装置として、各蒸発器の温度から検出される各蒸発器の着霜状態に応じて除霜運転を行うとともに、いずれかの蒸発器が着霜すると、当該蒸発器の電動膨張弁の開度を絞るようにしたので、当該蒸発器の能力低下により霜運転開始直前における各蒸発器の積算能力を可及的に均一化することができ、よって、冷凍装置全体の運転効率の向上を図ることができる。
【0054】請求項2の発明によれば、上記請求項1の発明において、冷凍装置の運転中にいずれか一方の蒸発器の温度が所定の着霜量に対応する除霜開始温度に達すると除霜運転を行うようにしたので、上記請求項1の発明の効果に加えて、確実に除霜を行うことができる。
【0055】請求項3の発明によれば、上記請求項1又は2の発明において、除霜運転中、いずれかの蒸発器の温度が着霜の融解温度に達すると、当該蒸発器の電動膨張弁の開度を絞るようにしたので、他の蒸発器への冷媒循環量を増大させることにより、各蒸発器の着霜の融解度合いを可及的に均一化することができ、よって、除霜運転時間の短縮を図り冷凍装置の運転効率の向上を図ることができる。
【0056】請求項4の発明によれば、上記請求項1,2又は3の発明において、除霜運転中、すべての蒸発器の着霜が融解したときに除霜運転を終了して通常運転に復帰するようにしたので、冷凍装置の運転効率を良好に維持しながら、各蒸発器の着霜を確実に融解させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の構成を示すブロック図である。
【図2】実施例に係る空気調和装置の冷媒配管系統図である。
【図3】除霜運転前における運転制御の内容を示すフロ―チャ―ト図である。
【図4】除霜運転前における電動膨張弁の開度制御の内容を示すフロ―チャ―ト図である。
【図5】除霜運転中におけるディアイサの代表値決定制御の内容を示すフロ―チャ―ト図である。
【図6】除霜運転中における運転制御の内容を示すフロ―チャ―ト図である。
【図7】除霜運転中における電動膨張弁の開度制御の内容を示すフロ―チャ―ト図である。
【符号の説明】
1 圧縮機
6a,6b 熱源側熱交換器(蒸発器)
8a,8b 室外電動膨張弁
11 主冷媒配管
11a,11b 分岐配管
14 主冷媒回路
51 除霜運転制御手段
52 除霜前開度低減手段
53 除霜中開度低減手段
Th21 ,Th22 ディアイサ(着霜状態検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 圧縮機(1)及び凝縮器が接続される主冷媒配管(11)に対して、各々蒸発器(6)と電動膨張弁(8)とが直列に接続される複数の分岐配管(11a),(11b)を互いに並列に接続してなる閉回路の冷媒回路(14)を備えた冷凍装置において、上記各蒸発器(6a),(6b)の温度又はこれに関連する冷媒状態量から蒸発器(6a),(6b)の着霜状態を個別に検出する着霜状態検出手段(Th21),(Th22 )と、上記冷凍装置の運転中、上記各着霜状態検出手段(Th21 ),(Th22 )の出力を受け、各蒸発器(6a),(6b)の着霜状態に応じて、上記蒸発器(6a),(6b)の除霜運転をするよう制御する除霜運転制御手段(51)とを備えるとともに、冷凍装置の運転中、上記各着霜状態検出手段(Th21 ),(Th22 )の出力を受け、いずれかの蒸発器(6a又は6b)の温度が着霜開始温度に達したとき、当該蒸発器(6a又は6b)の電動膨張弁(8a又は8b)の開度を絞るよう制御する除霜前開度低減手段(52)を備えたことを特徴とする冷凍装置の運転制御装置。
【請求項2】 請求項1記載の冷凍装置の運転制御装置において、除霜運転制御手段(51)は、いずれか一つの蒸発器(6a又は6b)の温度が所定の着霜量に対応する除霜開始温度に達すると、すべての蒸発器(6a),(6b)の除霜運転を開始するものであることを特徴とする冷凍装置の運転制御装置。
【請求項3】 請求項1又は2記載の冷凍装置の運転制御装置において、冷媒回路(14)はサイクルの切換え可能に構成され、除霜運転制御手段(51)は逆サイクル除霜運転を行うものであるとともに、除霜運転中、各着霜状態検出手段(Th21 ),(Th22 )の出力を受け、いずれかの蒸発器(6a又は6b)の温度が着霜の融解温度に達したとき、当該蒸発器(6a又は6b)の電動膨張弁(8a又は8b)の開度を絞るよう制御する除霜中開度低減手段(53)を備えたことを特徴とする冷凍装置の運転制御装置。
【請求項4】 請求項1,2,又は3記載の冷凍装置の運転制御装置において、除霜運転制御手段(51)は、すべての蒸発器(6a),(6b)の温度が着霜の融解温度に達した時に除霜運転を終了するものであることを特徴とする冷凍装置の運転制御装置。

【図5】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【特許番号】第2500707号
【登録日】平成8年(1996)3月13日
【発行日】平成8年(1996)5月29日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−112912
【出願日】平成3年(1991)5月17日
【公開番号】特開平4−344084
【公開日】平成4年(1992)11月30日
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【参考文献】
【文献】特開昭62−17551(JP,A)
【文献】特開昭58−150761(JP,A)
【文献】特開昭64−70659(JP,A)
【文献】実開昭57−145958(JP,U)