説明

冷凍装置

【課題】 冷凍装置の冷凍能力を抑える際に圧縮機の信頼性を向上させる。
【解決手段】 冷凍装置は、冷媒回路1とバイパス回路19と冷媒状態検知手段32とバイパス弁制御手段33とを備える。バイパス回路19は、冷媒回路1に含まれる圧縮機10の吐出側と蒸発器17の入口側とを結ぶ。冷媒状態検知手段32は、圧縮機10の吸入口における冷媒の圧力及び温度を検知する。バイパス弁制御手段33は、冷媒状態検知手段32により冷媒の圧力低下または温度低下を検知するとバイパス回路19のバイパス弁20を開ける。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冷凍装置、特に冷凍運転とチルド運転とが可能な冷凍装置に関する。
【0002】
【従来の技術】コンテナなどに用いられる冷凍装置は、冷凍運転だけでなく摂氏零度より高温のいわゆるチルド運転が可能であるものがある。
【0003】この種の冷凍装置では、十分な冷凍能力により冷凍運転を行うために圧縮機として大きな能力が必要とされる。一方、チルド運転時には、外気と庫内の温度差が小さくなるために、圧縮機の能力としては冷凍運転時ほどは要求されない。そこで、チルド運転時には、圧縮機の運転を止めて冷凍装置の能力を抑えることが行われている。
【0004】しかし、この方法によりチルド運転時の冷凍装置の能力を抑える場合、庫内の温度制御を行うために圧縮機の運転・停止を頻繁に行うことになり、その結果として圧縮機の寿命を短くする要因となる。また、圧縮機の運転・停止による温度制御では、温度制御の誤差が大きくなるため、定温維持を求められる冷凍装置には好ましくない。
【0005】このため、できるだけ圧縮機を連続運転しながら冷凍装置の冷凍能力を抑えることが望ましい。よって、以下の手段を用いることがある。すなわち、冷媒回路において圧縮機の吸入側に吸入比例弁を設置し、この吸入比例弁を閉じることにより圧縮機への冷媒供給量を抑える。すると、圧縮機における冷媒量が減少し、冷凍装置の冷凍能力が低下する。これにより、冷凍装置の冷凍能力を抑えながら圧縮機の連続運転を行うことができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、吸入比例弁を用いて冷媒の供給量を減らした場合に、循環する冷媒の量が極めて少なくなる場合があり得る。循環冷媒量が減少すると、圧縮機の吸入口における圧力が低下する。よって圧縮機は希薄な気体の冷媒を圧縮することになる。この際に、圧縮機の潤滑油の劣化が生じるため、圧縮機の焼き付きが生じる場合がある。
【0007】さらに冷媒の温度が低下していると液体状態の冷媒が圧縮機に流入することがある。液体状態の冷媒は圧縮を行えないため、圧縮機の内部で異常に高い圧力になる。これにより、圧縮機が破損する可能性がある。
【0008】本発明の課題は、冷凍装置の冷凍能力を抑える際に圧縮機の信頼性を向上させることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の冷凍装置は、冷媒回路とバイパス回路と冷媒状態検知手段とバイパス弁制御手段とを備える。冷媒回路は、圧縮機と凝縮器と膨張弁と蒸発器と吸入比例弁とが順次接続されてなる。バイパス回路は、圧縮機の吐出側と蒸発器の入口側とを結ぶ。冷媒状態検知手段は、圧縮機の吸入口における冷媒の状態を検知する。バイパス弁制御手段は、冷媒状態検知手段により冷媒の圧力低下または温度低下を検知するとバイパス回路のバイパス弁を開ける。
【0010】この装置では、チルド運転の際に吸入比例弁が絞られると、蒸発器から吸入比例弁への配管などに冷媒が溜められて冷凍機の能力が抑えられる。この際に、圧縮機の吸入口における冷媒の圧力または温度が低くなり、圧縮機が損傷する場合がある。
【0011】そこで、本発明の装置では、圧縮機の吸入口における冷媒の圧力または温度が所定の値より低くなったことを冷媒状態検知手段により検知すると、バイパス弁制御装置がバイパス弁を開ける。このとき、蒸発器に高圧高温の気体状態の冷媒(ホットガス)が流入する。これにより、冷凍装置に逆負荷が作用し、さらに圧縮機の吸入口における冷媒の圧力が上昇する。よって、圧縮機の吸入口における冷媒の圧力・温度が上げられ、圧縮機の損傷が避けられる。これにより、圧縮機の信頼性が向上する。
【0012】請求項2に記載の冷凍装置は、請求項1に記載の冷凍装置であって、膨張弁は電子膨張弁である。前述のように、制御手段により吸入比例弁が絞られると、蒸発器の出口側に湿り飽和状態の冷媒が溜められる。これにより、冷媒回路を循環する冷媒量が減少するため、冷凍装置の冷凍能力が抑制される。
【0013】なお、膨張弁として従来のように感温膨張弁を用いた場合、この膨張弁は蒸発器の出口付近が加熱蒸気の状態になるように調節されるために、蒸発器内部の温度分布が不均一になる。しかし、ここでは電子膨張弁が用いられているため、蒸発器内全体に湿り飽和状態の冷媒を充満させることができる。蒸発器の内部は等圧であるため、湿り飽和状態の冷媒は一定温度である。これにより、蒸発器の温度が均一になり、冷凍能力を抑えて冷凍運転を行っている際に温度ムラが生じにくくなる。
【0014】請求項3に記載の冷凍装置は、請求項1または2に記載の冷凍装置であって、冷媒状態検知手段は、圧縮機の吐出側に設けられ冷媒の圧力及び温度を検知するセンサを有し、センサの検知結果から圧縮機の吸入口における冷媒の圧力及び温度を推測することにより検知する。
【0015】冷凍能力を抑えて運転を行っている際には、圧縮機の吸入口付近における圧力が非常に低い。このため、低圧用の圧力センサを用いても十分な感度を得られないため、冷媒の状態が不正確になる。
【0016】ここでは、冷媒状態検知手段によりセンサの検知結果から圧縮機の吸入口における冷媒の圧力及び温度が推測される。これにより、圧縮機の吸入口における冷媒の状態をより正確に知ることができる。よって、適切な時期にバイパス弁を開閉して、圧縮機の吸入口における冷媒の状態を適切にすることができる。
【0017】請求項4に記載の冷凍装置は、請求項1または2に記載の冷凍装置であって、冷媒状態検知手段は、圧縮機の油温を検知する油温センサを有し、油温センサの検知結果から圧縮機の吸入口における冷媒の湿り度を推測することにより検知する。
【0018】冷凍能力を抑えて運転を行っている際には、圧縮機の吸入口付近における圧力が非常に低い。このため、低圧用の圧力センサを用いても十分な感度を得られないため、冷媒の状態が不正確になる。
【0019】ここでは、冷媒状態検知手段によりセンサの検知結果から圧縮機の吸入口における冷媒の湿り度が推測される。これにより、圧縮機の吸入口における冷媒の状態をより正確に知ることができる。よって、適切な時期にバイパス弁を開閉して、圧縮機の吸入口における冷媒の状態を適切にすることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】<全体の構成>本発明に係る冷凍装置の模式図を図1に示す。
【0021】本発明に係る冷凍装置は、冷媒回路1を有し、さらに図2に示すように、制御部2と、入力部3と、庫内温度センサ4とを備えている。冷媒回路1は、圧縮機10、凝縮器11、電子膨張弁13、蒸発器17、及び吸入比例弁21からなり、配管により順次接続されている。また、圧縮機10の吐出側と蒸発器17の入口側との間にバイパス回路19が設けられており、このバイパス回路19にはバイパス弁20が設けられている。
【0022】圧縮機10は気体状態の冷媒の圧縮を行うものであり、この圧縮機10には、その内部に油温センサ5が設けられ、その吐出側に圧力温度センサ6が設けられている。油温センサ5は、圧縮機10の潤滑油の油温を検知するセンサである。
【0023】凝縮器11は、冷媒から熱を奪い、その奪った熱を放熱するものであり、圧縮機10の吐出側に三方切換弁12を介して接続されている。また、電子膨張弁13は、通過する冷媒を膨張させて冷媒の圧力及び温度を低下させるものであり、凝縮器11の出口側に設けられている。なお、凝縮器11と電子膨張弁13との間には、レシーバ14、補助熱交換器15、開閉弁16等が設けられている。
【0024】蒸発器17は、冷凍装置内部からの熱を吸熱して冷媒に熱を与えるものであり、電子膨張弁13の出口側に設けられている。この蒸発器17と電子膨張弁13との間には分流器18が設けられている。なお、蒸発器17は、メイン蒸発器17aとサブ蒸発器17bとからなり、サブ蒸発器17bは電子膨張弁13と凝縮器11との間に設けられている。
【0025】バイパス回路19は、高温高圧の冷媒を蒸発器に供給するための回路であり、バイパス弁20の開閉により冷媒供給を調節するものである。吸入比例弁21は、冷媒の循環量を調節するものであり、圧縮機10の吸入側に設けられている。
【0026】図2に冷凍装置の制御ブロック図を示す。冷凍装置は、マイクロコンピュータである制御部2を有しており、これにより、制御手段30と冷媒状態検知手段32とバイパス弁制御手段33とが構成されている。制御手段30は、入力部3などからの入力を受けて、冷凍装置の制御を行う。冷媒状態検知手段32は、油温センサ5及び圧力温度センサ6により圧縮機10の吸入口における冷媒の圧力と温度とを検知する。バイパス弁制御手段33は、バイパス弁20の制御を行う。
【0027】そして、制御手段30には、冷凍装置の庫内の温度設定などを行う入力部3と、庫内の温度を検知する庫内温度センサ4と、油温センサ5と、圧力温度センサ6とが接続されている。また、制御手段30には、圧縮機10と、電子膨張弁13と、バイパス弁20と、吸入比例弁21とが接続されている。
【0028】<動作>冷凍装置は、制御手段30により庫内温度の制御が行われる。まず、冷凍装置の冷却について示す。
【0029】(冷凍運転)冷凍装置は、冷媒回路1に冷媒が循環することにより庫内の熱を奪い外部へ放出するものである。冷媒回路1における冷媒の循環について以下に説明する。
【0030】まず冷媒は、蒸発器17により庫内の熱を吸熱する。吸熱した冷媒は、吸入比例弁21を経て圧縮機10に導かれる。圧縮機10において冷媒は高温高圧の気体に圧縮されて凝縮器11へ送られる。冷媒は、凝縮器11において外部へ熱を放熱し、温度を下げられる。これにより、冷媒は、蒸発器17で吸熱した熱を凝縮器11で放熱したことになる。さらに冷媒は、凝縮器11から電子膨張弁13に送られて膨張され、蒸発器17に戻される。
【0031】制御手段30は、圧縮機10、電子膨張弁13、吸入比例弁21、及びバイパス弁20を制御することにより、冷媒回路1における冷媒の循環量などを制御して庫内温度の制御を行う。冷凍運転を行う場合には、冷媒の循環量を多くして庫内が入力部3における設定温度になるよう庫内の熱を外部へ廃熱する。
【0032】(チルド運転)一方、チルド運転を行う場合には、庫内の温度を摂氏零度より高温にするため、冷凍装置の冷凍能力を抑えて運転を行う。以下で冷凍能力を抑える手段を示す。
【0033】冷凍能力を抑えるためには、まず吸入比例弁21を絞る。これにより、冷媒を吸入比例弁21までの配管などに湿り飽和状態で溜めることが可能となり、冷媒回路1を循環する冷媒の量が抑えられる。さらに、この状態で、電子膨張弁13を開けて調節することにより、蒸発器17の出口においても冷媒が湿り飽和状態になる。これにより、蒸発器17の出口から吸入比例弁21までの配管に冷媒を湿り飽和状態で溜めることができるため、冷媒回路1を循環する冷媒の量を十分に減少させることができる。
【0034】また、電子膨張弁13をさらに開けることにより、蒸発器17の内部全体に湿り飽和状態の冷媒を溜めることができる。このとき、蒸発器17の内部における冷媒の圧力は一定であるため、蒸発器17に溜められている湿り飽和状態の冷媒の温度は一定になる。冷媒の温度が一定になるため、蒸発器における庫内からの吸熱が均一になる。よって、庫内における温度ムラが抑えられる。
【0035】(チルド運転時における圧縮機の保護)冷凍運転を行っているときの圧縮機の吸入口における冷媒の状態は、加熱蒸気になっている。
【0036】しかし、冷凍能力を抑えてチルド運転を行うと、圧縮機の吸入口における冷媒の状態が湿り飽和状態になることがある。湿り飽和状態の冷媒は、液体状態の冷媒を含む。液体は気体と異なり非圧縮であるため、圧縮機10が冷媒を圧縮する際に液体状態の冷媒が多いと、圧縮機10の内部に耐圧以上の高圧が生じて損傷が生じるおそれがある。さらに、液体状態の冷媒が圧縮機10の潤滑油を外部へ運ぶこともある。このことが原因で、潤滑油の量が減少して、圧縮機10が焼き付きをおこす可能性がある。
【0037】ここで、バイパス弁制御手段33によりバイパス弁20を開けると、蒸発器に高温高圧の気体状態の冷媒(ホットガス)が流入するため、冷凍装置全体に逆負荷が掛けられる。それに伴い圧縮機10の吸入口における冷媒の圧力・温度が上昇されるため、圧縮機10へ液体状態の冷媒の流入を防ぐことができる。
【0038】(圧縮機吸入口における温度)圧縮機10の吸入口における冷媒の状態は、冷媒の圧力と温度とから知ることができる。しかし、チルド運転を行っていると、冷媒の循環量が少ないため、圧縮機10の吸入口における圧力が非常に低く、通常の圧力センサでは不正確となり、状態が不明確になる。
【0039】そこで、冷媒状態検知手段32により、油温センサ5及び圧力温度センサ6の検知結果から圧縮機10の吸入口における圧力及び温度を推測する。圧力温度センサ6により圧縮機吐出側における冷媒の加熱度が明らかになる。この加熱度により、圧縮機10の吸入口における冷媒の湿り度を知ることができる。さらに、油温センサ5の結果により、冷媒の湿り度が推測できるため、より正確な判断が可能である。これらにより、制御手段30により圧縮機10の損傷を避けるように冷凍能力の制御を行うことができる。
【0040】
【発明の効果】請求項1に記載の冷凍装置では、圧縮機の吸入口における冷媒の圧力または温度が低くなると、バイパス弁を開けて、圧縮機の吸入口における冷媒の圧力または温度が上げられる。このことにより、圧縮機の損傷が避けられる。
【0041】請求項2に記載の冷凍装置では、電子膨張弁が用いられているため、蒸発器内全体に湿り飽和状態の冷媒を充満させることができるので、蒸発器の温度が均一になり、蒸発器の温度ムラが生じにくくなる。
【0042】請求項3に記載の冷凍装置では、センサの検知結果により圧縮機の吸入口における冷媒の圧力及び温度が推測される。請求項4に記載の冷凍装置では、油温センサの検知結果により圧縮機の吸入口における冷媒の湿り度が推測される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る冷凍装置の模式図。
【図2】実施形態に係る冷凍装置の制御ブロック図。
【符号の説明】
1 冷媒回路
2 制御部
5 油温センサ
6 圧力温度センサ
10 圧縮機
11 凝縮器
13 電子膨張弁
17 蒸発器
20 バイパス弁
21 吸入比例弁
30 制御手段
32 冷媒状態検知手段
33 バイパス弁制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】圧縮機(10)と凝縮器(11)と膨張弁(13)と蒸発器(17)と吸入比例弁(21)とが順次接続されてなる冷媒回路(1)と、前記圧縮機(10)の吐出側と前記蒸発器(17)の入口側とを結ぶバイパス回路(19)と、圧縮機(10)の吸入口における冷媒の状態を検知する冷媒状態検知手段(32)と、前記冷媒状態検知手段(32)により冷媒の圧力低下または温度低下を検知すると前記バイパス回路(19)のバイパス弁(20)を開けるバイパス弁制御手段(33)と、を備える冷凍装置。
【請求項2】前記膨張弁(13)は電子膨張弁(13)である、請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】前記冷媒状態検知手段(32)は、前記圧縮機(10)の吐出側に設けられ冷媒の圧力及び温度を検知するセンサ(6)を有し、前記センサ(6)の検知結果から前記圧縮機(10)の吸入口における冷媒の圧力及び温度を推測することにより検知する、請求項1または2に記載の冷凍装置。
【請求項4】前記冷媒状態検知手段(32)は、前記圧縮機(10)の油温を検知する油温センサ(5)を有し、前記油温センサ(5)の検知結果から前記圧縮機(10)の吸入口における冷媒の湿り度を推測することにより検知する、請求項1または2に記載の冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2002−327963(P2002−327963A)
【公開日】平成14年11月15日(2002.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−134056(P2001−134056)
【出願日】平成13年5月1日(2001.5.1)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)