説明

冷凍装置

【課題】電磁誘導加熱ユニットを備える冷凍装置において冷媒の加熱効率を向上させる。
【解決手段】空気調和装置1は、冷媒回路10を構成する冷媒配管を備える。ここでは、冷媒配管の戻り配管3Fに電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2が取り付けられている。戻り配管3Fは、電磁誘導加熱ユニット6A1が取り付けられた直管部3F1と電磁誘導加熱ユニット6A2が取り付けられた直管部3F3とを有している。さらに、戻り配管3Fは、これら2本の直管部3F1,3F3の間に、湾曲管部3F2を有している。そして、直管部3F1,3F3において、電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2により冷媒の加熱が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒を循環させる冷凍装置に関し、特に循環する冷媒を電磁誘導加熱により加熱する冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍装置には、冷凍サイクルにおいて冷媒の熱を放出させる放熱器や、冷媒に対して熱を与える加熱器などが備えられている。一般的な蒸気圧縮冷凍サイクルでは、冷媒は、例えば暖房のために屋外に設けられた加熱器においては屋外の空気との間で熱交換を行って熱を得ており、冷房のために室内に設けられた加熱器において室内空気との間で熱交換を行って熱を得ている。
【0003】
ところで、特許文献1(特開平11‐211195号公報)には、室内や屋外の空気から熱を得る蒸気圧縮冷凍サイクルの加熱器とは別に設けられた石油冷媒加熱機によって、冷媒が熱を得るシステムが提案されている。この石油冷媒加熱機では、石油を燃焼して、石油冷媒加熱機内に流れる冷媒を加熱する。このような大気中の空気が持つ熱エネルギー以外のエネルギーの供給を受ける石油冷媒加熱機やガスバーナなどの加熱ユニットを採用すると、冷媒が熱を必要とする場合に室内や屋外の気温等の制約を受けることなく、冷媒を加熱することが可能になる。また、加熱ユニットとしては、電気的なエネルギーの供給を受ける電磁誘導加熱方式を冷媒の加熱に採用することもできる。このように、大気の熱エネルギー以外のエネルギー供給を受ける加熱ユニットでは、エネルギーの投入量を増やせば急速な加熱も容易になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような電磁誘導加熱方式により加熱する加熱ユニットを、冷凍装置において採用すると、パイプ内を流れる冷媒を加熱しなければならなくなり、例えば特許文献2(特開平8‐326997号公報)に記載されているように電磁誘導加熱により加熱された部材を加熱対象である冷媒に熱的に接触させて加熱しなければならない。
【0005】
ところが、冷凍装置の場合には、特許文献2に記載されている化学プラントなどに電磁誘導加熱方式を適用する場合と異なり、冷凍回路における圧力損失などに制限があるため、特許文献2に記載されているような複雑な部材で攪拌しながら冷媒を当該部材に熱的に接触させて加熱するということが難しい。
【0006】
また、冷凍装置で用いる冷媒の場合には、加熱されることにより液冷媒からガス冷媒に変化することが多いが、一般に液冷媒に比べてガス冷媒の熱伝導率が低いため、加熱されてガス冷媒の割合が多くなるに従って加熱効率が低下する傾向がある。
【0007】
本発明の課題は、電磁誘導加熱ユニットを備える冷凍装置において冷媒の加熱効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る冷凍装置は、冷媒配管と電磁誘導加熱ユニットとを備えている。冷媒配管は、冷媒の入口と出口とを持っていて入口と出口の間が湾曲している湾曲管部、湾曲管部の入口から伸びる第1延伸部および湾曲管部の出口から伸びる第2延伸部を有している。電磁誘導加熱ユニットは、少なくとも第1延伸部および第2延伸部を通過する冷媒に熱的接触をする部材を電磁誘導により直接的または間接的に加熱する。
【0009】
本発明によれば、冷媒配管の第1延伸部で加熱されてガス冷媒となって熱的接触をする部材との界面でガス冷媒の含有率が高くなっているものを、ガス冷媒と液冷媒の密度差を利用して湾曲管部の湾曲で攪拌して、冷媒配管の第2延伸部において冷媒と熱的に接触する部材で再び加熱することで第2延伸部において冷媒を効率的に加熱することができる。
【0010】
第2発明に係る冷凍装置は、第1発明の冷凍装置であって、熱的接触をする部材が冷媒配管である。
【0011】
本発明によれば、冷媒配管から熱を受けて冷媒がガス化することで、冷媒配管の第1延伸部の管内面周辺の空間に存在するガス冷媒の割合が増加して液冷媒の割合が減少する。湾曲管部で冷媒を攪拌することで、第2延伸部の管内面周辺の空間のガス冷媒の割合と液冷媒の割合について、液冷媒の割合を増す方向に改善され、第2延伸部からの熱伝達の効率が改善される。この場合、第1延伸部および第2延伸部に冷媒の流れを阻害するような圧力損失を生じさせるような部材がないため、冷凍回路の性能の低下を防止できる。
【0012】
第3発明に係る冷凍装置は、第1発明または第2発明の冷凍装置であって、冷媒配管は、第1延伸部が第1直管部を含み、第2延伸部が第2直管部を含み、湾曲管部が少なくとも一つのU字状部分を含む。
【0013】
本発明によれば、冷媒の流速が遅くならない直線状の第1直管部と第2直管部から、その間の湾曲管部のU字状部分に冷媒を導くことで、急激に冷媒の速度と進行方向が変更されることになって効率的に攪拌できる。
【0014】
第4発明に係る冷凍装置は、第1発明から第3発明のいずれかの冷凍装置であって、湾曲管部は、内部の湾曲している部分に冷媒を攪拌するための攪拌部材を有する。
【0015】
本発明によれば、湾曲管部におけるガス冷媒と液冷媒の密度差を利用した攪拌効果に加え、攪拌部材による攪拌効果という異質の攪拌効果を組み合わせるため、より高い攪拌効果を得ることができる。
【0016】
第5発明に係る冷凍装置は、第1発明から第4発明のいずれかの冷凍装置であって、第1延伸部と第2延伸部は並行して延びている。また、電磁誘導加熱ユニットが有する電磁誘導コイルは、第1延伸部および第2延伸部が伸びる方向に沿って引き抜いて冷媒配管から分離可能に取り付けられている。
【0017】
本発明によれば、一つのコイルで第1延伸部と第2延伸部の加熱ができることによりコイルの数を減らすことができる。また、電磁誘導加熱ユニットを引き抜いて冷媒配管から分離した状態でメンテナンスができるようになる。
【0018】
第6発明に係る冷凍装置は、第1発明から第4発明のいずれかの冷凍装置であって、電磁誘導加熱ユニットは、少なくとも2つの電磁誘導コイルを有する。少なくとも2つの電磁誘導コイルは、第1延伸部および第2延伸部を含む面を貫く方向に、第1延伸部および第2延伸部を挟んで対向して配置される。
【0019】
本発明によれば、一組のコイルで第1延伸部と第2延伸部の加熱ができるためコストの上昇を抑えながら、取外しが容易な一組のコイルで電磁誘導加熱ユニットを構成することができる。
【0020】
第7発明に係る冷凍装置は、第1発明から第6発明のいずれかの冷凍装置であって、冷媒配管は、第2延伸部よりも湾曲管部が下に配置されている。
【0021】
本発明によれば、冷媒の液体層が気体層よりも密度が高く、第1延伸部から湾曲管部を通って第2延伸部へと冷媒が上方に向かって流れるため液体層が下に溜まり易く、下に溜まった液体層の熱伝導率が高いことから第1延伸部で液体層が加熱されて加熱効率が向上する。同様に、第2延伸部から上方に冷媒が流れる場合には、第2延伸部でも加熱効率が向上する。
【発明の効果】
【0022】
第1発明に係る冷凍装置では、第2延伸部の加熱効率と第1延伸部の加熱効率の差を改善することで、電磁誘導加熱を安定的に精度よく制御することができる。
【0023】
第2発明に係る冷凍装置では、冷媒回路の性能を低下させることなく、第2延伸部の加熱効率の改善ができる。
【0024】
第3発明に係る冷凍装置では、湾曲管部における攪拌機能を改善し、第2延伸部の加熱効率の改善効果を向上させることができる。
【0025】
第4発明に係る冷凍装置では、湾曲管部と攪拌部材とによる攪拌の相乗効果により攪拌機能を改善し、第2延伸部の加熱効率の改善効果を向上させることができる。
【0026】
第5発明に係る冷凍装置では、電磁誘導加熱ユニットの構造の簡素化とメンテナンス性の向上によってコストを削減する効果がある。
【0027】
第6発明に係る冷凍装置では、電磁誘導加熱ユニットのメンテナンス性を向上させることができる。
【0028】
第7発明に係る冷凍装置では、少なくとも第1延伸部で加熱効率が改善され、加熱に要する消費エネルギーの漏洩を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1実施形態の冷凍装置を構成する冷媒回路を示す概略図。
【図2】電磁誘導加熱ユニットの一例の外観を示す斜視図。
【図3】図2の電磁誘導加熱ユニットの断面図。
【図4】電磁誘導加熱ユニットへの電力供給を説明するための概念図。
【図5】冷媒回路の制御部の構成を示すブロック図。
【図6】第2実施形態の冷凍装置の電磁誘導加熱ユニット周辺を示す概念図。
【図7】第3実施形態の冷凍装置の電磁誘導加熱ユニット周辺を示す概念図。
【図8】第4実施形態の冷凍装置の電磁誘導加熱ユニット周辺を示す概念図。
【図9】第4実施形態の冷凍装置の電磁誘導加熱ユニット周辺を示す断面図。
【図10】第5実施形態の冷凍装置の電磁誘導加熱ユニット周辺を示す概念図。
【図11】(a)第6実施形態の湾曲管部の側面断面図。(b)図11(a)のX-X線断面図。(c)湾曲管部の他の例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
〔第1実施形態〕
〔空気調和装置の概要〕
本発明の第1実施形態に係る空気調和装置の構成の概要について図1を用いて説明する。図1は、空気調和装置1の冷媒回路10を示す冷媒回路図である。空気調和装置1は、室外機2と室内機4とが冷媒配管によって接続された冷媒回路10を備えており、熱源側装置の室外機2から供給される熱エネルギーを使って、利用側装置の室内機4が配置された空間の空気調和を行うものである。
【0031】
空気調和装置1は、室外機2内に収容されている圧縮機21、四路切換弁22、室外熱交換器23、室外電動膨張弁24、アキュムレータ25、室外ファン26、ホットガスバイパス弁27、キャピラリーチューブ28および電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2などや、室内機4内に収容されている室内熱交換器41および室内ファン42などの各種の機器を備えている。
【0032】
圧縮機21は、圧縮機モータ(図示省略)により回転駆動される。圧縮機モータには、インバータを介して商用電源から電力が供給されている。その際、商用電源からインバータによって所望の周波数の交流に変換される。そして、圧縮機21は、供給する交流の周波数を変更することによって圧縮機モータの回転数が変更され、これによって圧縮機21の吐出量が変更されるよう構成されている。
【0033】
図1の空気調和装置1においては、上述の各種の機器を接続するため、吐出管3A、室内側ガス管3B、室内側液管3C、室外側液管3D,室外側ガス管3E、戻り配管3F,吸入管3Gおよびホットガスバイパス回路3Hを冷媒回路10が有している。冷媒を通過させるこれら配管のうち、室内側ガス管3Bおよび室外側ガス管3Eは、ガス状態のガス冷媒が多く通過するものであるが、通過する冷媒をガス冷媒に限っているものではない。また、室内側液管3Cおよび室外側液管3Dは、液状態の液冷媒が多く通過するものではあるが、通過する冷媒を液冷媒に限っているものではない。
【0034】
上述の配管による冷媒回路10の各機器の接続について説明する。吐出管3Aは、圧縮機21の吐出口と四路切換弁22の第1ポートを接続する。室内側ガス管3Bは、四路切換弁22の第2ポートと室内熱交換器41の一端とを接続する。室内側液管3Cは、室内熱交換器41の他端と室外電動膨張弁24の一端とを接続する。室外側液管3Dは、室外電動膨張弁24の他端と室外熱交換器23の一端とを接続する。室外側ガス管3Eは、室外熱交換器23の他端と四路切換弁22の第3ポートを接続する。戻り配管3Fは、四路切換弁22の第4ポートとアキュムレータ25の流入口とを接続する。吸入管3Gは、アキュムレータ25の流出口と圧縮機21の吸入口とを接続する。ホットガスバイパス回路3Hは、吐出管3Aの途中に設けられた分岐点A1と室外側液管3Dの途中に設けられた分岐点D1とを接続する。ホットガスバイパス回路3Hには、その途中に、冷媒の通過を許容する状態と許容しない状態とを切り換えるためのホットガスバイパス弁27が配置されている。
【0035】
戻り配管3Fは、直管部3F1と、直管部3F1に続くU字状の湾曲管部3F2と、湾曲管部3F2に続く直管部3F3とからなる。直管部3F1には、第1の電磁誘導加熱ユニット6A1が取り付けられており、直管部3F3には第2の電磁誘導加熱ユニット6A2が取り付けられている。また、直管部3F3には、電磁誘導加熱ユニット6A2の下流側に戻り配管温度センサ39が取り付けられている。
【0036】
空気調和装置1は、四路切換弁22により、冷房運転サイクルと暖房運転サイクルとを切り換えることができる。図1では、暖房運転を行う際の接続状態を実線で示し、冷房運転を行う際の接続状態を点線で示している。即ち、暖房運転時には、四路切換弁22の第ポートと第2ポートの間および第3ポートと第4ポートの間に冷媒が通り、室内熱交換器41が冷媒の冷却器(凝縮器)として機能し、室外熱交換器23が冷媒の加熱器(蒸発器)として機能する。一方、冷房運転時には、四路切換弁22の第1ポートと第3ポートの間および第2ポートと第4ポートの間に冷媒が通り、室外熱交換器23が冷媒の冷却器(凝縮器)として機能し、室内熱交換器41が冷媒の加熱器(蒸発器)として機能する。
【0037】
空気調和装置1には、その制御を行うための制御部11が備わっている。制御部11は、通信線11aによって接続された室外制御部12と室内制御部13とで構成され、室外制御部12が室外機2内に配置される機器を制御し、室内制御部13が室内機4内に配置される機器を制御する。制御部11を含む制御系統については後述する。
【0038】
〔電磁誘導加熱ユニットの構成〕
図2は電磁誘導加熱ユニットの外観を示す斜視図であり、図3は電磁誘導加熱ユニットの構成を示す断面図である。電磁誘導加熱ユニット6A1と電磁誘導加熱ユニット6A2は同一の構成であるため、以下の説明は電磁誘導加熱ユニット6A1について行う。電磁誘導加熱ユニット6A1が取り付けられているところの戻り配管3Fの直管部3F1は、内側の銅管3Faと外側の磁性体からなるSUS(Stainless Used Steel)管Coとを有する二重管構造となっている。電磁誘導加熱ユニット6A1の電磁誘導コイル68は、直管部3F1の部分に巻回され、SUS管Coの部分を径方向外側から覆うように配置されている。SUS管Coは、磁性体であり、電磁誘導加熱の際に磁束がその内部に集中するので、SUS管Coを通過する磁束を包むように渦電流が発生してSUS管Coが発熱する。SUS管Coの外側には電流の流れる部材がないため、SUS管Coが被加熱部材になる。ここで、被加熱部材とは、電磁誘導によって流れる電流で直接加熱される部材をいう。このとき、加熱量P(W)は、渦電流I(A)とSUS管Co自体の抵抗値R(Ω)により、P=RI2で与えられる。磁性を有するSUS管Coは、例えばフェライト系ステンレス鋼やマルテンサイト系ステンレス鋼などで形成される。
【0039】
電磁誘導加熱ユニット6A1は、第1六角ナット61、第2六角ナット66、第1ボビン蓋63、第2ボビン蓋64、ボビン本体65、第1フェライトケース71、第2フェライトケース72、第3フェライトケース73、第4フェライトケース74、第1フェライト98、第2フェライト99、電磁誘導コイル68、遮蔽カバー75、サーミスタ(図示省略)およびヒューズ(図示省略)を備えている。第1六角ナット61は、樹脂製であって、電磁誘導加熱ユニット6A1を直管部3F1に対して電磁誘導加熱ユニット6A1の上端近傍で固定する。第2六角ナット66は、樹脂製であって、電磁誘導加熱ユニット6A1を直管部3F1に対して電磁誘導加熱ユニット6A1の下端近傍で固定する。
【0040】
第1ボビン蓋63は、樹脂製であって、電磁誘導加熱ユニット6において直管部3F1と電磁誘導コイル68との相対位置を決める部材の1つであり、電磁誘導加熱ユニット6A1の上方でSUS管Coを周囲から覆う。第2ボビン蓋64は、樹脂製であって、第1ボビン蓋63と同一形状であって、電磁誘導加熱ユニット6A1の下方でSUS管Coを周囲から覆う。
【0041】
第1ボビン蓋63は、直管部3F1を貫通させつつ、第1六角ナット61と協同して直管部3F1と電磁誘導加熱ユニット6A1とを固定させるための配管用筒状部63cを有している。第1ボビン蓋63は、コイル第1部分68bおよびコイル第2部分68cを通過させつつ保持するために、外周部分から内側に向けて形成された略T字状のフック形状部63aを有している。第1ボビン蓋63は、ボビン本体65とSUS管Coとの間に滞留している熱を外部に放出させるために上下方向に貫通した放熱開口63bを複数有している。
【0042】
第1ボビン蓋63には、第1〜第4フェライトケース71〜74がネジ69で螺着されている。第1ボビン蓋63からは、サーミスタおよびヒューズが差し込めるようになっている。サーミスタは、SUS管Coの外表面に対して直接接触するように取り付けられ、SUS管Coの外表面の温度に応じた抵抗値を示す。ヒューズは、SUS管Coの外表面に対して直接接触するように取り付けられ、SUS管Coの表面温度が所定値を超えると電磁誘導加熱を停止させるため導通を遮断する。
【0043】
第1ボビン蓋63の下面側には、ボビン本体65の上端円筒部の内側に位置することでボビン本体65と嵌り合うボビン用筒上部63gが下方に延びている。このボビン用筒上部63gは、上述した放熱開口63bなど必要な開口の貫通状態を閉ざすことないように、各開口の外縁に沿った部分から貫通方向に延びて形成されている。
【0044】
なお、第1ボビン蓋63が有している開口や形状は、第2ボビン蓋64についても同様であり、第1ボビン蓋63における63番台の各部材番号は第2ボビン蓋64における64番台の部材番号にそれぞれ対応させて示し、説明は省略する。
【0045】
ボビン本体65は、図3に示すように、電磁誘導コイル68が巻き付けられる円筒状の円筒部65aを有している。また、ボビン本体65は、上端からわずかに下がった部分で径方向に突出して形成される第1巻き止め部65sと、下端からわずかに上がった部分で径方向に突出して形成される第2巻き止め部65tとを有している。第1巻き止め部65sは、コイル第1部分68bを挟み込むために径方向内側に窪んで形成されたコイル保持溝(図示省略)と、コイル第2部分68cを挟み込むために径方向内側に窪んで形成されたコイル保持溝(図示省略)とを有している。ボビン本体65の内側には、SUS管Coとの間に空間が形成されている。
【0046】
電磁誘導コイル68が有しているコイル巻き付け部分68a(図4参照)には、ボビン本体65の外側において直管部3F1の延びる方向を軸方向として螺旋状に巻き付けられている。コイル第1部分68bは、コイル巻き付け部分68aに対して電磁誘導コイル68の一端側に延び、コイル第2部分68cは電磁誘導コイル68の一端側とは反対側である他端側に延びている。
【0047】
コイル第1部分68bおよびコイル第2部分68cは、図4に示すように、制御用プリント基板18と接続されている。この制御用プリント基板18は、例えば周波数が数十kHz程度、出力が数kW程度の高周波電源から供給を受ける。電磁誘導コイル68は、この制御用プリント基板18から高周波電流の供給を受ける。そして、制御用プリント基板18は、制御部11によって制御されている。
【0048】
第1フェライトケース71、第2フェライトケース72、第3フェライトケース73および第4フェライトケース74は、平面視において外側4方向から覆う位置に配置されかつSUS管Coの延びている方向に沿って延びるように配置され、SUS管Coの延びる方向で第1ボビン蓋63と第2ボビン蓋64とを挟み込む。第1フェライトケース71は、第1フェライト98および第2フェライト99を収容する部分を有している。第2フェライトケース72、第3フェライトケース73、第4フェライトケース74についても、第1フェライトケース71と同様である。
【0049】
この電磁誘導コイル68は、第1〜第4フェライトケース71〜74の内側に位置している。これら第1〜第4フェライトケース71〜74の第1フェライト98は、透磁率の高い素材であるフェライトによって磁束の通り道を形成しており、電磁誘導コイル68に電流を流した際に、SUS管Coおよび電磁誘導コイル68の外側を通る磁束が集中する。この第1フェライト98は、特に、電磁誘導加熱ユニット6の上端近傍および下端近傍の第1〜第4フェライトケース71〜74の収容部に収容される。第2フェライト99についても、配置位置および形状以外は上記第1フェライト98と同様であり、第1〜第4フェライトケース71〜74の収容部のうちボビン本体65の外側近傍の位置に配置される。電磁誘導加熱ユニット6A1では、電磁誘導コイル68の外側に第1フェライト98および第2フェライト99が設けられているために、電磁誘導コイル68の外側を回る磁束の多くが流れので、漏れ磁束を低減させることができている。
【0050】
電磁誘導コイル68が制御用プリント基板18から高周波電流の供給を受けると、コイル巻き付け部分68aで磁束を生じる。具体的には、コイル巻き付け部分68aの内側においては、磁束の大部分が強磁性体であるSUS管Coの中を通り、コイル巻き付け部分68aの外側においては、磁束の大部分が第1フェライト98、第2フェライト99および遮蔽カバー75の中を通る。そして、SUS管Coから出て第1フェライト98、第2フェライト99および遮蔽カバー75を通り再びSUS管Coに戻る磁束は、SUS管Coと第1フェライト98および遮蔽カバー75が近接している空気中を通る。例えば、図3に示すような第1フェライトケース71および第3フェライトケース73を含む断面で見ると、SUS管Coから出て左右に広がった磁束は、空気中を横切って先ず第1ボビン蓋63側の第1フェライト98に入り、第1フェライト98から第2フェライト99を通って第2ボビン蓋64側の第1フェライト98から空気中に出る。第2ボビン蓋64側の第1フェライト98から空気中に出た磁束の大部分は再びSUS管Coの中を通って第1ボビン蓋63の方に向かう。図3の平面において略楕円形状となるように閉じた磁束が生じる。このようにして生じた磁束によって、SUS管Coには、電磁誘導による電流(渦電流)が生じ、SUS管Coの表面近くで多く発熱が生じ、熱伝導性の高いSUS管Coおよび銅管3Fb1内を流れる冷媒に熱が伝達される。
【0051】
遮蔽カバー75は、電磁誘導加熱ユニット6A1の最外周部分に配置されており、第1フェライト98および第2フェライト99だけでは呼び込みきれない磁束を集める。図2に示すように、遮蔽カバー75は、第1フェライトケース71に対して、ネジ70a、70b、70c、70dを介して螺着されることで固定されている。これにより、電磁誘導加熱ユニット6A1においては、この遮蔽カバー75の外側にはほとんど漏れ磁束が生じず、周囲への磁気の影響を防止することができる。
【0052】
〔制御系統〕
図5は制御系統の構成の概略を示すブロック図である。制御部11の室外制御部12と室内制御部13は、通信線11aで接続されており(図1参照)、互いにデータの送受信を行っている。これら室外制御部12や室内制御部13は、各種センサの検出結果を受けて空気調和装置1の状態や周囲の状況や設定条件に応じて室外機2や室内機4を構成する機器に対して種々の指令を出力するために、マイクロコンピュータ(図示省略)やメモリ(図示省略)を内蔵している。
【0053】
制御部11の室外制御部12には、吸入側圧力センサ31、吐出側圧力センサ32、吸入側温度センサ33、吐出側温度センサ34、熱交温度センサ35、液側温度センサ36、室外温度センサ37および戻り配管温度センサ39など各種のセンサが接続され、各センサにおける検出結果が入力される。
【0054】
吸入側圧力センサ31は、圧縮機21の吸入側の冷媒の圧力を検出する。吐出側圧力センサ32は、圧縮機21の吐出側の冷媒の圧力を検出する。吸入側温度センサ33は、圧縮機21の吸入側の冷媒の温度を検出する。吐出側温度センサ34は、圧縮機21の吐出側の冷媒の温度を検出する。熱交温度センサ35は、室外熱交換器23内を流れる冷媒の温度を検出する。液側温度センサ36は、室外熱交換器23と室外電動膨張弁24との間にあって、室外熱交換器23の液側において冷媒の温度を検出する。室外温度センサ37は、室外機2のユニットの吸入口側に設けられ、ユニット内に流入した外気の温度を検出する。戻り配管温度センサ39は、直管部3F3の電磁誘導加熱ユニット6A2よりも下流側に設けられ、直管部3F3の冷媒の温度を検出する。
【0055】
また、室外制御部12には、2つの制御用プリント基板18、圧縮機21、四路切換弁22、室外電動膨張弁24、室外ファン26などの機器あるいは機器の制御端末が接続され、室外機2の各種の機器が室外制御部12の制御の下で動作する。
【0056】
室外制御部12から制御用プリント基板18には、電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2の出力を指示する信号が与えられ、室外制御部12の指示に応じて制御用プリント基板18から電磁誘導コイル68に供給される高周波電流が増減する。それにより、SUS管Coで発生する渦電流が増減して直管部3F1,3F3に流れる冷媒の加熱量が制御される。このとき、2台の電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2の加熱量を同じにする必要はない。例えば、上流側の直管部3F1を通る冷媒の方が液冷媒の割合が多いことから加熱され易いため、電磁誘導加熱ユニット6A1の方の加熱量を多くすることができる。また、直管部3F1,3F3において電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2により加熱される区間長を同じにする必要はない。例えば、下流側の直管部3F1を通る冷媒の方がガス冷媒の割合が多くなることから加熱され難くなるため、電磁誘導加熱ユニット6A2の加熱区間の方を長く設定することができる。また、冷媒の流速により、湾曲管部3F2での攪拌効果が異なるため、例えば、冷媒循環量に応じて電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2の加熱量の割合を変えることができる。これらの制御部11における設定は予め加熱量を変えながら実機でのデータを取得して、最適な設定を求めておくことにより行うことができる。
【0057】
室外制御部12にはインバータ回路(図示省略)が設けられており、インバータ回路の出力の周波数によって圧縮機21や室外ファン26の回転数が制御される。四路切換弁22は駆動部を有しており、室外制御部12は、暖房運転と冷房運転との切り換えにおいて四路切換弁22の接続を切り換えるときに四路切換弁22の駆動部に対して切換の指令を出力する。また、室外制御部12は、室外電動膨張弁24の弁の開度を調整するため、開度を指示する制御信号を出力する。
【0058】
室内制御部13には、液側温度センサ43、ガス側温度センサ44および室内温度センサ45が接続され、各センサにおける検出結果が入力される。液側温度センサ43は、室内熱交換器41の他端側に設けられ、室内熱交換器41の液側において冷媒の温度を検出する。ガス側温度センサ44は、室内熱交換器41の一端側に設けられ、室内熱交換器41のガス側において冷媒の温度を検出する。室内温度センサ45は、室内機4のユニットの吸入口側に設けられ、ユニット内に流入した室内空気の温度を検出する。
【0059】
また、室内制御部13には、室内ファン42、風向調節機構46および表示部47などが接続され、室内機4の各種の機器が室内制御部13の制御の下で動作する。室内制御部13にはインバータ回路(図示省略)が設けられており、インバータ回路の出力の周波数によって室内ファン42の回転数が制御される。風向調節機構46が室内機4に設けられたルーバー(図示省略)などの角度を変更することにより室内に吹き出す風の向きを調節することから、室内制御部13はルーバーの角度や動作などの制御信号を出力する。室内制御部13は、各種の表示を行うため表示部47に対して表示を指示する信号を出力する。例えば、表示部47に電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2の状態を表示させることもできる。
【0060】
〔冷媒回路の動作の概要〕
(暖房運転)
暖房運転時は、四路切換弁22が図1の実線で示される状態になる。即ち、圧縮機21の吐出側から吐出された冷媒は、順次、四路切換弁22、室内熱交換器41、室外電動膨張弁24、室外熱交換器23、四路切換弁22、アキュムレータ25を廻り、圧縮機21の吸入側から吸入される。このとき、戻り配管3Fを通る冷媒は、直管部3F1,3F3において、電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2による加熱を受ける。冷媒回路10を循環する冷媒は、例えば二酸化炭素やHFCやHCFCなどである。
【0061】
まず、圧縮機21で圧縮された高温高圧のガス冷媒は、四路切換弁22を経由して、室内熱交換器41に送られる。このとき、圧縮機21の吸入側では、吸入側圧力センサ31により吸入される冷媒の圧力が検知され、吐出側では、吐出側圧力センサ32により吐出される冷媒の圧力が検知される。このとき同時に、圧縮機21の吸入側では、吸入側温度センサ33により吸入される冷媒の温度が検知され、吐出側では、吐出側温度センサ34により吐出される冷媒の温度が検知される。
【0062】
効率の良い暖房を行うため、圧縮機21の回転数は、例えばリモートコントローラなどによる設定温度と室内温度との差を暖房負荷として求め、あるいは圧縮機21から吐出される冷媒の温度と室内熱交換器41の冷媒の温度とを用いるなどして暖房負荷を求め、暖房負荷に応じて制御される。また、空気調和装置1の故障などを防ぐために、吸入側圧力センサ31および吐出側圧力センサ32の検知結果に基づき、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力は所定低圧圧力よりも高く、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力は所定高圧圧力よりも低い範囲に入るように制御される。所定高圧圧力を超えた場合には、圧縮機21の回転数を落として圧縮機21の吐出圧力を低下させる。同様の理由から、圧縮機21から吐出される冷媒の温度が所定高温より高くらないよう吐出側温度センサ34によりモニターされている。このように温度や圧力が十分に管理されなければならないことから、電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2により精度よく安定して加熱を行うことによって前述の圧力や温度の制御が行い易くなることは、効率の良い暖房や空気調和装置1の故障の防止に良い影響を与える。特に、運転開始時には、電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2の加熱量による温度上昇が主体的になるため、応答速度が速く、安定的で、精度の高い加熱量の制御が可能な電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2を用いると有利である。
【0063】
室内熱交換器41に入る前に、ガス側温度センサ44により圧縮機21から吐出された高温高圧のガス冷媒の入口温度が検出される。そして、室内熱交換器41で冷媒と室内空気との間の熱交換が行われて冷媒は冷却される。例えば、冷媒がHFCなどの場合、ガス冷媒から気液二相の状態または液冷媒に変化する。このとき室内熱交換器41は凝縮器として機能しており、室内ファン42の回転数を制御することで、室内熱交換器41における冷媒の熱交換の状況が変わる。室内熱交換器41を出る冷媒の温度は、液側温度センサ43で検出されている。
【0064】
室内熱交換器41を出た冷媒は、室外電動膨張弁24で減圧される。暖房負荷に応じて室外電動膨張弁24の開度が調整され、また減圧された冷媒が所定の過熱度を有するように、室外電動膨張弁24の開度が調整される。冷媒の過熱度は、例えば熱交温度センサ35により検出される室外熱交換器23の冷媒の温度と、吸入側温度センサ33により検出される圧縮機21に吸入される冷媒の温度との差に基づいて求められる。
【0065】
室外電動膨張弁24で減圧されて気液二相状態になった冷媒は、室外熱交換器23に送られる。室外熱交換器23では、室外空気との間の熱交換により冷媒が加熱されてガス冷媒となる。このとき室外熱交換器23が蒸発器として機能しており、室外ファン26により室外空気の気流を発生して室外空気と冷媒との間の熱交換が促進されるが、室外ファン26の回転数はCOPが高くなるような熱交換が行えるように制御される。
【0066】
室外熱交換器23では、冷媒の蒸発温度が0℃以下になると着霜を生じる可能性があるので、液側温度センサ36と室外温度センサ37で検出した室外熱交換器23の流入冷媒温度と外気温に基づいて着霜の有無を判断する。着霜があると熱交換の効率が低下して消費電力の増加や快適性の低下を招くので、着霜があるときには除霜運転を行う。
【0067】
室外熱交換器23で蒸発したガス冷媒は、四路切換弁22を経由してアキュムレータ25に送られる。そして、アキュムレータ25の入る前の戻り配管3Fにおいて、冷媒は、順次直管部3F1、湾曲管部3F2および直管部3F3を通過する。直管部3F1の電磁誘導加熱ユニット6A1で加熱された冷媒は、ガス冷媒の密度が小さく液冷媒の密度が高いため湾曲管部3F2で攪拌され、さらに直管部3F3の電磁誘導加熱ユニット6A2で加熱される。そのため、直管部3F3において管内面の熱伝達を受ける部分にガス冷媒が集中するのを避けることができ、直管部3F1に比べて大幅に加熱効率が低下するのを防止できる。この電磁誘導加熱ユニット6A2で加熱された後の冷媒の温度は、戻り配管温度センサ39により検出される。電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2における加熱量の制御は、戻り配管温度センサ39により検出される温度が目標温度になるように、電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2の出力によってフィードバック制御される。例えば、冷媒循環量と戻り配管温度センサ39の検出温度と目標温度について、電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2の最適な加熱量の組み合わせを制御部11に予め記憶させておくことによって、エネルギー消費を抑えた効率的な加熱が行える。
【0068】
戻り配管3Fを通過してアキュムレータ25に流入した冷媒は、アキュムレータ25において気液分離されて、圧縮機21に液冷媒が戻らないようになっている。それにより、圧縮機21で液圧縮が起こって圧縮機21が故障するのを防いでいる。
【0069】
(冷房運転)
冷房運転時は、四路切換弁22が図1の点線で示される状態になる。即ち、圧縮機1の吐出側から吐出された冷媒は、順次、四路切換弁22、室外熱交換器23、室外電動膨張弁24、室内熱交換器41、四路切換弁22、アキュムレータ25を廻り、圧縮機1の吸入側から吸入される。
【0070】
冷房運転の場合には、室外熱交換器23が凝縮器として機能し、室内熱交換器41が蒸発器として機能する。このように冷房運転の場合は、暖房運転に対して室外熱交換器23と室内熱交換器41の機能が入れ替わった状態になる。
【0071】
まず、圧縮機21で圧縮された高温高圧のガス冷媒は、四路切換弁22を経由して、室外熱交換器23に送られる。このとき、圧縮機21の吸入側では、吸入側圧力センサ31により吸入される冷媒の圧力が検知され、吐出側では、吐出側圧力センサ32により吐出される冷媒の圧力が検知される。このとき同時に、圧縮機21の吸入側では、吸入側温度センサ33により吸入される冷媒の温度が検知され、吐出側では、吐出側温度センサ34により吐出される冷媒の温度が検知される。
【0072】
例えばリモートコントローラなどによる設定温度と室内温度との差を冷房負荷として求め、あるいは圧縮機21から吐出される冷媒の温度と室外熱交換器23の冷媒の温度とを用いるなどして冷房負荷を求め、冷房負荷に応じて圧縮機21の回転数が制御される。また、空気調和装置1の故障を防止するため、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力や温度が制限されるのは暖房運転の場合と同様である。
【0073】
室外熱交換器23において、冷媒と室外空気との間の熱交換が行われて冷媒が冷却される。例えば冷媒がHFCの場合には、ガス冷媒から気液二相の状態または液冷媒に変化する。このとき、熱交温度センサ35により室外熱交換器23の内部を流れる冷媒の温度が検出される。また、室外ファン26の回転数を制御することで、室外熱交換器23における冷媒の熱交換の状況が変わる。そして、室外熱交換器23から室外電動膨張弁24に送られる冷媒の温度が液側温度センサ36により検出される。
【0074】
室外熱交換器23から送られてきた冷媒は、室外電動膨張弁24で減圧される。このとき、冷房負荷に応じて室外電動膨張弁24の開度が調整され、また減圧された冷媒が所定の過熱度を有するように、室外電動膨張弁24の開度が調整される。冷媒の過熱度は、例えば熱交温度センサ35により検出される室外熱交換器23の冷媒の温度と、吸入側温度センサ33により検出される圧縮機21に吸入される冷媒の温度との差に基づいて求められる。
【0075】
室外電動膨張弁24で減圧されて気液二相状態になった冷媒は、室内熱交換器41に送られる。室内熱交換器41では、室内空気との間の熱交換により冷媒が加熱されてガス冷媒となる。室内ファン42により室内空気の気流を発生して室内空気と冷媒との間の熱交換が促進される。
【0076】
室内熱交換器41で蒸発したガス冷媒は、四路切換弁22を経由してアキュムレータ25に送られる。そして、アキュムレータ25の入る前の戻り配管3Fにおいて、電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2により加熱されるのは暖房運転の場合と同様である。戻り配管3Fを通過してアキュムレータ25に流入した冷媒は、アキュムレータ25において気液分離されて、圧縮機21に液冷媒が戻らないようになっている。それにより、圧縮機21で液圧縮が起こって圧縮機21が故障するのを防いでいる。
【0077】
冷房においては、熱を室外に放出するような運転を行うため、電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2から空気調和のための熱を供給する必要はない。しかし、空気調和装置1の故障を防止するなど目的で液バックの防止や冷媒循環量の確保を行うため、正確で安定した加熱が要求される場面がある。
【0078】
(除霜運転)
暖房運転時において、外気温度が低下すると室外熱交換器23に着霜を生じる場合が出てくる。室外熱交換器23に着霜すると、室外熱交換器23における熱交換の効率が低下するため除霜運転が必要になる。そこで、暖房運転時において、例えば、室外熱交換器23の温度を熱交温度センサ35により検出し、検出された温度が所定温度以下になって着霜を生じていると判断されたときには、通常の暖房運転から除霜運転に切り換える。
【0079】
加熱ユニットを持たない冷凍装置では、例えば室外熱交換器23を凝縮器として機能させ、圧縮機21から高温高圧のガス冷媒を室外熱交換器23に供給することにより、室外熱交換器23を加熱して除霜を行う。加熱ユニットを持つ場合にも、同様に、室外熱交換器23を凝縮器として機能させるように四路切換弁22を切り換え、電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2を補助的に用いて室内熱交換器41において室内空気と冷媒との間の熱交換能力を抑えつつ、凝縮器である室外熱交換器23を加熱することもできる。
【0080】
電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2を補助的に用いて除霜を行う場合には、冷房運転時と同様に、四路切換弁22の点線の接続で冷媒が供給される。圧縮機21から吐出された高温高圧のガス冷媒は、室外熱交換器23に入り、室外熱交換器23に付着した霜との間で熱交換を行って冷却される。室外電動膨張弁24で減圧された冷媒が室内熱交換器41に入るが、暖房運転時に行う除霜運転では、室内を冷却しない方が好ましいため、室内熱交換器41での熱交換量が小さくなるように、室外電動膨張弁24の開度と圧縮機21の回転数が調整され、室内ファン42の回転数も下げられる。圧縮機21の吸入側で所定の過熱度を持つように、冷房運転時に比べて室内熱交換器41における熱交換量が低下した分だけ電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2における加熱量を上げる。このとき、電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2が戻り配管3Fに分流された冷媒を加熱するため、加熱量の制御性と応答性が高く、室外熱交換器23を凝縮器として機能させる暖房運転時の除霜運転に十分に対応することができる。
【0081】
また、電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2の加熱能力が十分に大きい場合には、暖房運転を行いながら室外熱交換器23の除霜を行うこともできる。暖房を行いながらの除霜運転の場合には、四路切換弁22が実線の経路に切り換えられる。また、ホットガスバイパス弁27を開いてホットガスバイパス回路3Hが開通されると共に室外電動膨張弁24が絞られて、室内熱交換器41から戻った冷媒と圧縮機21から吐出された高温高圧のガス冷媒との混合冷媒が室外熱交換器23に供給される。それにより、室外熱交換器23についた霜を溶かすことができる。一方、分岐点A1で分岐して室内熱交換器41に流れた高温高圧のガス冷媒によって、通常の暖房運転と同様に室内機4では暖房が行われる。
【0082】
このとき、室外熱交換器23は蒸発器としては機能しないため、室外熱交換器23および室内熱交換器41で消費される熱量は電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2から供給される。このときも、戻り配管温度センサ39が所定温度になるように、電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2の加熱量が調整される。
【0083】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態に係る空気調和装置も、図1に示す第1実施形態の空気調和装置1の構成と概略同じ構成を有しており、第2実施形態の空気調和装置が第1実施形態の空気調和装置と異なる点は、電磁誘導加熱ユニットの構成である。
【0084】
図6は、第2実施形態の電磁誘導加熱ユニット6Bの構成を説明するための概念図である。図6に示す戻り配管3Fは、図1に示す戻り配管3Fと同じ構成を有している。そして、第2実施形態でも第1実施形態と同様に、戻り配管3Fに電磁誘導加熱ユニット6Bが設けられている。しかし、第1実施形態では2台の電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2を設けたのに対し、第2実施形態では、戻り配管3Fに設けられる電磁誘導加熱ユニット6Bは一台である。
【0085】
戻り配管3Fの中の2つの直管部3F1,3F3とU字状の湾曲管部3F2とからなる部分の全体に対して、電磁誘導加熱ユニット6Bが矢印Dir1の方向に抜差し可能に装着されている。そのため、電磁誘導加熱ユニット6Bは、平面視で略楕円状の開口部CAを備える磁性体Co1と、磁性体Co1の周囲に巻回された電磁誘導コイル68とを備えている。この電磁誘導加熱ユニット6Bは高周波電源Soから電力の供給を受ける。このように、電磁誘導加熱ユニット6Bの電磁誘導コイル68が戻り配管3Fに対して抜差し可能に装着できるため、メンテナンスが容易に行える。また、磁性体Co1も電磁誘導コイル68と一緒に抜差しできるため一層メンテナンスし易くなっている。
【0086】
図6の電磁誘導加熱ユニット6Bにおいて、磁性体Co1が加熱されることから磁性体Co1が戻り配管3Fの2本の直管部3F1,3F3に熱的に接するように設けられている。熱伝導の効果を上げるには、磁性体Co1と直管部3F1,3F3の接触面積が大きい方が好ましいため、開口部CAは直管部3F1,3F3に外接するように形成されて配置されている。なお、熱伝導の効率を上げるため、磁性体Co1の開口部CAに熱伝導率の高い金属などを嵌め込んでもよい。
【0087】
電磁誘導加熱ユニット6Bで加熱された冷媒の温度について、戻り配管温度センサ39による検知結果が、目標温度範囲に対し、目標温度範囲以下または目標温度範囲以上となった場合には高周波電源Soの出力を制御部11により制御するのは、第1実施形態と同様である。第2実施形態の電磁誘導加熱ユニット6Bでは、1台で2本の直管部3F1,3F3を加熱するため、第1実施形態のように直管部3F1,3F3ごとに加熱量を調整することはできない。しかし、電磁誘導加熱ユニット6Bが一つ省けるため、コストを削減することができる。なお、直管部3F1,3F3ごとに磁性体Co1との接触面積を異ならせることで、2本の直管部3F1,3F3の加熱量を異ならせることができる。
【0088】
この戻り配管3Fを流れる冷媒は、矢印Flに示すように、左から流れてきて直管部3F1の入口から下に向かって直管部3F1を流れる。そして、湾曲管部3F2で急激にUターンして上に向かって流れる。この湾曲管部3F2で流れの向きが変わるときに、ガス冷媒と液冷媒の密度差により冷媒の攪拌が起こる。それにより、直管部3F3の管内面に接触する液冷媒の割合が減少するのを抑制して、直管部3F3において直管部3F1よりも熱伝達の効率が低下するのを防止できる。
【0089】
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態に係る空気調和装置も、電磁誘導加熱ユニットの周辺を除いて、図1に示す第1実施形態の空気調和装置1の構成と同じ構成を有している。まず、第3実施形態の空気調和装置が第1実施形態の空気調和装置と異なる点は、電磁誘導加熱ユニットの構成であり、第3実施形態の空気調和装置は第2実施形態の空気調和装置と同じ電磁誘導加熱ユニット6Bを用いている。また、第3実施形態と第1実施形態とが相違する点は戻り配管3Fの形状である。
【0090】
図7は、第3実施形態の電磁誘導加熱ユニット6Bとその周辺構造を示す概念図である。図7において、図の上方が空気調和装置の上方と一致している。つまり、図7の戻り配管3Fは、水平に配置された直管部3F4,3F6と、上下に並んだ2本の直管部3F4,3F6を上下に繋ぐU字状の湾曲管部3F5とを有している。
【0091】
戻り配管3Fの中の2つの直管部3F4,3F6とU字状の湾曲管部3F5とからなる部分の全体に対して、電磁誘導加熱ユニット6Bが矢印Dir2の方向(水平方向)に抜差し可能に装着されている。そのため、電磁誘導加熱ユニット6Bは、平面視で略楕円状の開口部CAを備える磁性体Co1と磁性体Co1の周囲に巻回された電磁誘導コイル68とを備え、高周波電源Soから電力の供給を受ける点およびそれによる効果も第2実施形態で説明した通りである。
【0092】
図7の電磁誘導加熱ユニット6Bにおいて、磁性体Co1が加熱されることから磁性体Co1が戻り配管3Fの2本の直管部3F4,3F6に熱的に接するように設けられているのは第2実施形態と同様である。熱伝導の効果を上げるためには、磁性体Co1と直管部3F4,3F6の接触面積が大きい方が好ましいため、磁性体Co1は直管部3F4,3F6に外接するように形成されて取り付けられている。
【0093】
この戻り配管3Fを流れる冷媒は、矢印Flに示すように、上から下に直管部3F4の入口に向かって流れ、直管部3F4で水平方向へ流れの向きを変える。そして、直管部3F4から湾曲管部3F5に向かって上向きに冷媒が流れる。このとき、直管部3F4では液体層(液冷媒)は下に形成され、加熱された気体層(ガス冷媒)は上部に流れるようになり、円滑な流れを構成することができる。また、直管部3F4の管内面に熱的に接触して加熱されることによりガス化した冷媒は、湾曲管部3F5で液冷媒と攪拌されるため、直管部3F6の管内面に熱的に接触する部分にガス冷媒が多く偏在するのを防げ、直管部3F6における加熱効率が直管部3F4に比べ大幅に低下するのを防止できる。
【0094】
〔第4実施形態〕
本発明の第4実施形態に係る空気調和装置も、図1に示す第1実施形態の空気調和装置1の構成と概略同じ構成を有しており、第4実施形態の空気調和装置が第1実施形態の空気調和装置と異なる点は、電磁誘導加熱ユニットの構成である。
【0095】
図8および図9は、第4実施形態の電磁誘導加熱ユニット6Cと戻り配管3Fの構成を説明するための概念図である。図8および図9に示す戻り配管3Fは、図1に示す配管と同じ配管である。そして、第4実施形態でも第1実施形態と同様に、戻り配管3Fに電磁誘導加熱ユニット6Cが設けられている。しかし、第1実施形態では2台の電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2を設けたのに対し、第4実施形態では、戻り配管3Fに設けられる電磁誘導加熱ユニット6Cは1台である。
【0096】
電磁誘導加熱ユニット6Cは、分割可能な磁性体Co2、Co3と、磁性体Co2,Co3を挟んで配置された2つの電磁誘導コイル68C1,68C2とを備えている。戻り配管3Fの中の2つの直管部3F7,3F9とU字状の湾曲管部3F8とからなる部分の全体に対して、電磁誘導加熱ユニット6Cのコイルが矢印Dir3の方向に抜差し可能に装着されている。矢印Dir3の方向は、直管部3F7,3F9と湾曲管部3F8を含む平面に沿う方向である。一方、磁性体Co2,Co3は、電磁誘導コイル68C1,68C2を引き抜いた後に、矢印Dir4,Dir5の方向に分割して戻り配管3Fから取り外すことができる。なお、直管部3F7,3F9は支持部材SPで空気調和装置に支持されており、磁性体Co2,Co3を取り外しても空気調和装置における位置は変わらない。高周波電源Soから電力の供給を受ける点およびそれによる効果も第2実施形態で説明した通りである。
【0097】
図7および図8の電磁誘導加熱ユニット6Cにおいて、磁性体Co2,Co3が加熱されることから磁性体Co2,Co3が戻り配管3Fの2本の直管部3F7,3F9に熱的に接するように設けられている。熱伝導の効果を上げるためには、磁性体Co2,Co3と直管部3F7,3F9の接触面積が大きい方が好ましいため、磁性体Co2,Co3は、直管部3F7,3F9を覆い接するように形成されて取り付けられている。そのため、磁性体Co2,Co3は、図8に示すように、平面視において、平行に配置されている直管部3F7,3F9の間隔に直管部3F7,3F9の直径を加えたよりも大きな幅を有している。また、磁性体Co2,Co3は、図9に示すように、断面視において、磁束密度が高くなる直管部3F7,3F9の間だけでなく、磁性体Co2,Co3の近接部から遠い表面まで延びている。これは、磁性体Co2,Co3を伝わって直管部3F7,3F9の表面全体に熱を伝えるのに適した構造である。発熱量が同じであれば、直管部3F7,3F9の局部を高熱にするよりも、配管全体を同じ温度にする方が冷媒への熱伝達が行い易くなるからである。
【0098】
電磁誘導加熱ユニット6Cで加熱された冷媒の温度について、戻り配管温度センサ39による検知結果が、目標温度範囲に対し、目標温度範囲以下または目標温度範囲以上となった場合には高周波電源Soの出力を制御部11により制御するのは、第2実施形態と同様である。なお、直管部3F7,3F9ごとに磁性体Co2,Co3との接触面積を異ならせることで、2本の直管部3F7,3F9の加熱量を異ならせることができるのは、第2実施形態と同様である。
【0099】
この戻り配管3Fを流れる冷媒が、湾曲管部3F8で攪拌されるのは第2実施形態と同様である。また、戻り配管3Fを第3実施形態のように直管部が水平になるように配置することができ、そのように戻り配管3Fを形成した場合の効果は第3実施形態と同様になる。
【0100】
〔第5実施形態〕
本発明の第5実施形態に係る空気調和装置も、電磁誘導加熱ユニットの周辺を除いて、図1に示す第1実施形態の空気調和装置1の構成と同じ構成を有している。基本的には、第5実施形態では、第4実施形態と同じ構成の電磁誘導加熱ユニット6Dを用いている。また、第5実施形態と第1実施形態の相違点には戻り配管3Fの形状がある。
【0101】
図10は、第5実施形態の電磁誘導加熱ユニットDBとその周辺構造を示す概念図である。図10に示すように、図10の戻り配管3Fは、3つの直管部3F10,3F12,3F14と、それらを繋ぐ2つのU字状の湾曲管部3F11,3F13からなっている。そのため、磁性体Co4は、図10に示すように、平面視において、平行な3本の直管部3F10,3F12,3F14に渡る幅を有している。この磁性体Co4は、直管部3F10,3F12,3F14の3箇所で加熱するため、高温まで加熱し易くなっている。また、2つの湾曲管部3F11,3F13の2箇所で攪拌されるため、1箇所で攪拌する場合に比べて、冷媒の加熱ムラが少なくなる。また、戻り配管3Fを第3実施形態のように直管部が水平になるように配置することができ、そのように戻り配管3Fを形成した場合の効果は第3実施形態と同様になる。
【0102】
〔第6実施形態〕
本発明の第6実施形態に係る空気調和装置は、戻り配管の湾曲管部の内部構造を除いて、第1実施形態乃至第5実施形態のいずれかの空気調和装置と同様の構成を有している。上記各実施形態では、湾曲管部3F2,3F5,3F8,3F11,3F13の内周面は、凹凸のない滑らかな面になっている。第6実施形態では、図11(a)および図11(b)に示すように、湾曲管部3F15に凸部101を設けて、凸部101を攪拌部材として用いている。図11(a)は湾曲管部3F15の側面断面図であり、図11(b)は図11(a)のX-X線断面図である。図11(a)の湾曲管部3F15には、攪拌部材として凸部101を一箇所設けた場合を示しているが、設ける箇所は複数であってもよい。また、攪拌部材を設ける場所も、曲率半径の大きい湾曲管部3F15の外側の中間部分に限られず、例えば曲率半径の小さい側であってもよい。また、複数の攪拌部材を設けうる場合に、例えば凸部を千鳥に配置するなど、内周面に沿って流れる層流がいずれかの場所で攪拌されるように、全体に渡って設けることが好ましい。また、攪拌部材は、凸部に限られず、凹部であってもよく、また、凸部101のように湾曲管部3F15の内壁と一体をなすものではなく、図11(c)に示す網102のような別部材であってもよいが、網102のように、冷媒の圧力損失が少ないものが好ましい。
【0103】
<変形例>
(a)
上記第1実施形態乃至第6実施形態においては、戻り配管3Fに電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2,6B,6C,6Dが設けられ、戻り配管3Fにおいて冷媒を電磁誘導により加熱する場合について説明したが、電磁誘導により過熱する箇所は、冷凍回路の戻り配管3Fのある場所に限られるものではなく、他の箇所であってもよい。他の箇所で電磁誘導により加熱する場合には、その箇所に電磁誘導加熱ユニットを取り付けるための湾曲管部や直管部が設けられる。
【0104】
(b)第1実施形態乃至第6実施形態においては、湾曲管部3F2,3F5,3F8,3F11,3F13がU字状の場合について説明した。製造も容易であって攪拌効果も高いのでU字管が好ましいが、湾曲管部の形状はU字状に限られるものではない。例えばL字状でもよく、L字状を組み合わせてコ字状にしてもよい。また、例えば直管部3F1,3F4,3F7,3F10と、直管部3F3,3F6,3F9,3F12,3F14がねじれの位置に配置されるように湾曲管部3F2,3F5,3F8,3F11,3F13が湾曲していてもよい。
【0105】
<特徴>
(1)
空気調和装置1(冷凍装置)は、戻り配管3F(冷媒配管)に直管部3F1,3F4,3F7,3F10(第1延伸部)、直管部3F3,3F6,3F9,3F12,3F14(第2延伸部)および湾曲管部3F2,3F5,3F8,3F11,3F13と電磁誘導加熱ユニット6A1,6A2,6B,6C,6Dとを備えている。例えば、湾曲管部3F2では、直管部3F1との境界が湾曲管部3F2の入口になり、直管部3F3との境界が湾曲管部3F2の出口になる。ここで境界とは、直管部3F1,3F3の終わりであって、管が曲がり始めるところである。
【0106】
例えば、第2実施形態の電磁誘導加熱ユニット6Bは、直管部3F1(第1延伸部)および直管部3F3(第2延伸部)を通過する冷媒に熱的に接触する部材である直管部3F1および直管部3F3を、磁性体Co1を介して間接的に加熱している。この場合に、磁性体Co1を取り除いて、直管部3F1,3F3を磁性体で構成すれば、直管部3F1,3F3が電磁誘導加熱ユニットにより直接的に加熱される部材になる。ここで、第1延伸部および第2延伸部は、直管部である場合が示されおり、直線状に延びていることが性能やコストや取り扱いなどの点で好ましいが、必ずしも直線状に延びていることが必須の要件ではない。
【0107】
例えば、直管部3F1(第1延伸部)で加熱されてガス冷媒となった冷媒がそのまま直管部3F3(第2延伸部)の管壁に沿って流れたのでは、直管部3F3における熱伝達率が低下して加熱効率が低下することになる。そこで、直管部3F1で加熱されて、管内周面でガス冷媒の含有率が高くなっている層流を、ガス冷媒と液冷媒の密度差を利用して湾曲管部3F2の湾曲で攪拌する。それにより、直管部3F3(第2延伸部)においては、攪拌された冷媒に直管部3F3を熱的に接触させて再び加熱することで冷媒を効率的に加熱する。
【0108】
このように、例えば、直管部3F1で加熱されてから、湾曲管部3F2を経由して、再び直管部3F3で加熱されるのであるが、この間に一度加熱された冷媒が攪拌されてサイド加熱されるという作用を受けている。しかし、この作用を及ぼしているものが、直管部3F1,3F2や湾曲管部3F2などの配管であるため、冷媒の流れを阻害するような圧力損失を生じさせるようなことがないため、冷凍回路の性能の低下を防止できる。
【0109】
配管だけで攪拌しようとする場合には、湾曲管部で冷媒の流れが急激な変更を受けることが攪拌効果を高める上で好ましい。そのためには、直管部、湾曲管部、直管部の繋がりにおいて、湾曲管部がU字状部分を持つことが好ましい。U字状部分では、入ってくる冷媒と出て行く冷媒の流れの向きが全く逆になるように変化するからである。
【0110】
また、戻り配管3Fの上下左右の配置は任意に行いえるが、湾曲管部3F2,3F5,3F8,3F11,3F13を直管部3F3,3F6,3F9,3F12,3F14(第2延伸部)よりも下に配置する場合には、冷媒の液体層が気体層よりも下に溜まり易いことから、下に溜まった液体層を加熱できるようになるため加熱効率がよい。
【0111】
(2)
第6実施形態に示したように、湾曲管部3F15は、冷媒を攪拌するための凸部101(攪拌部材)を備えている。この凸部101(攪拌部材)は、湾曲管部3F15の冷媒の流れを乱すことにより冷媒の攪拌を促進するものであるから、ガス冷媒と液冷媒に密度差を使って攪拌する湾曲管部3F15の攪拌とは異質のものである。そのため、異質の攪拌効果を組み合わせるため、より高い攪拌効果を得ることができる。
【0112】
(3)
第2実施形態及び第3実施形態の電磁誘導加熱ユニット6Bの電磁誘導コイル68は、並行に延びている直管部3F1,3F4(第1延伸部)と、直管部3F3,3F6(第2延伸部)とから、これらが伸びる方向に沿って引き抜いて分離することができる。そのため、こられは、一つの電磁誘導コイル68で直管部3F1,3F4(第1延伸部)と、直管部3F3,3F6(第2延伸部)の複数個所の加熱ができることによりコイルの数や高周波電源Soを減らすことができ、コストを削減できる。また、電磁誘導加熱ユニット6Bを引き抜いて戻り配管3Fから分離した状態でメンテナンスができるようになる。
【0113】
また、第4実施形態及び第5実施形態の電磁誘導加熱ユニット6C,6Dの電磁誘導コイル68C1,68C2,68D1などは、直管部3F7,3F9,3F10,3F12,3F14を含む面を挟んで配置される。また、一組の電磁誘導コイル68C1,68C2や一組の電磁誘導コイル68D1などは、この面を貫く方向に対向している。そのため、取り外しが容易でメンテナンスが容易になる。また、一つの高周波電源Soで複数個所の加熱を行えるのでコストを削減できる。
【符号の説明】
【0114】
2 室外機
4 室内機
6A1,6A2,6B,6C,6D 電磁誘導加熱ユニット
10 冷媒回路
11 制御部
21 圧縮機
3F 戻り配管
3F1,3F4,3F7,3F10 直管部(第1延伸部)
3F3,3F6,3F9,3F12,3F14 直管部(第2延伸部)
3F2,3F5,3F8,3F11,3F13 湾曲管部
68,68C1,68C2,68D1 電磁誘導コイル
101,102 攪拌部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0115】
【特許文献1】特開平11‐211195号公報
【特許文献2】特開平8‐326997号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒の入口と出口とを持っていて前記入口と前記出口の間が湾曲している湾曲管部(3F2,3F5,3F8,3F11,3F13)、前記湾曲管部の前記入口から伸びる第1延伸部(3F1,3F4,3F7,3F10)および前記湾曲管部の前記出口から伸びる第2延伸部(3F3,3F6,3F9,3F12,3F14)を有する冷媒配管(3F)と、
少なくとも前記第1延伸部および前記第2延伸部を通過する冷媒に熱的接触をする部材を電磁誘導により直接的または間接的に加熱する電磁誘導加熱ユニット(6A1,6A2,6B,6C,6D)と
を備える冷凍装置。
【請求項2】
前記熱的接触をする部材は前記冷媒配管(3F)である、請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
前記冷媒配管は、前記第1延伸部が第1直管部(3F1,3F4,3F7,3F10)を含み、前記第2延伸部が第2直管部(3F3,3F6,3F9,3F12,3F14)を含み、前記湾曲管部が少なくとも一つのU字状部分を含む、請求項1または請求項2に記載の冷凍装置。
【請求項4】
前記湾曲管部は、内部の湾曲している部分に冷媒を攪拌するための攪拌部材(101,102)を有する、請求項1から3のいずれかに記載の冷凍装置。
【請求項5】
前記第1延伸部と前記第2延伸部は並行して延びており、
前記電磁誘導加熱ユニットは、前記第1延伸部および前記第2延伸部が伸びる方向に沿って引き抜いて前記冷媒配管から分離可能に取り付けられている電磁誘導コイル(68,68C1,68C2,68D1)を有する、請求項1から4のいずれかに記載の冷凍装置。
【請求項6】
前記電磁誘導加熱ユニットは、前記第1延伸部および前記第2延伸部を含む面を貫く方向に、前記第1延伸部および前記第2延伸部を挟んで対向して配置された、少なくとも2つの電磁誘導コイル(68C1,68C2,68D1)を有する、請求項1から4のいずれかに記載の冷凍装置。
【請求項7】
前記冷媒配管は、前記第2延伸部よりも前記湾曲管部が下に配置されている、請求項1から6のいずれかに記載の冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−2190(P2011−2190A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146830(P2009−146830)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】