説明

冷凍装置

【課題】複数のインバータ圧縮機システムを組み合わせた冷凍装置において、コモンモードノイズの低減を図る。
【解決手段】各インバータ圧縮機システム(101,102)には、圧縮機(30)のフレーム(33)又はモータ(31)のステータコア(31a)をノイズフィルタ(11)に接続する圧縮機用アース配線(50)を設ける。各圧縮機用アース配線(50)のインピーダンス(Z4,Z5)は、圧縮機(30)の配管(35)及び筐体(60)を含む伝播経路(P1)のインピーダンス(Z1,Z3)よりも小さくする。少なくとも(n-1)台のインバータ圧縮機システム(101,102)には、コンデンサ(11a)とアース端子(E)との間にインピーダンス素子(103)を設け、各インピーダンス素子(103)のインピーダンス(Z6,Z7)は、圧縮機用アース配線(50)のインピーダンス(Z4,Z5)よりも大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチングにより電力変換を行う電力変換回路から電力供給される電動式圧縮機を有した冷凍装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和機などの冷凍装置では、アース線から電源系統へ流出する高周波電流は雑音端子電圧として規制されている。この高周波電流を引き起こす最も大きな要因には、インバータ回路と電動式圧縮機を挙げられる。そのため、インバータ回路と電動式圧縮機を備えた空気調和機等では、雑音端子電圧の対策を行うためにノイズフィルタ等のノイズ対策部品が設けられている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−346477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷凍装置(例えば空気調和装置)には、インバータ回路と電動圧縮機のシステム構成(以下、インバータ圧縮機システムという)を複数組み合わせて構成されたものがある。このような冷凍装置では、あるインバータ圧縮機システムにおけるインバータ回路(ここでは第1インバータ回路と呼ぶ)で発生したコモンモード電流が、別のインバータ圧縮機システムのインバータ回路(ここでは第2インバータ回路と呼ぶ)に流れることが想定される。もし、第2インバータ回路のノイズフィルタに使用しているコモンモードチョーク(以下、CMCとも呼ぶ)の飽和磁束密度がぎりぎりで設計されていた場合に、第1インバータ回路のノイズが第2インバータ回路のノイズフィルタに流入すると、第2インバータ回路のCMCが磁気飽和してしまう可能性がある。CMCが磁気飽和してしまうと、ノイズフィルタで十分にノイズを低減できない可能性がある。
【0005】
本発明は前記の問題に着目してなされたものであり、複数のインバータ圧縮機システムを組み合わせた冷凍装置において、コモンモードノイズの低減を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため、第1の発明は、
モータ(31)で駆動される圧縮機(30)と、ノイズフィルタ(11)と、前記ノイズフィルタ(11)を介して入力された交流をスイッチング素子(14a)のスイッチング動作によって電力変換して前記モータ(31)に供給する電力変換回路(105)とを有したインバータ圧縮機システム(101,102)をn台(n:2以上の自然数)備えた冷凍装置において、
前記ノイズフィルタ(11)は、前記圧縮機(30)を収容する筐体(60)に設けられたアース端子(E)と交流電源線(A,B)との間に設けられたコンデンサ(11a)と、コモンモードコイル(11b)とを有し、
それぞれのインバータ圧縮機システム(101,102)は、前記圧縮機(30)のフレーム(33)又は前記モータ(31)のステータコア(31a)を、前記ノイズフィルタ(11)に接続する圧縮機用アース配線(50)を有し、
それぞれの圧縮機用アース配線(50)のインピーダンス(Z4,Z5)は、前記圧縮機(30)の配管(35)及び前記筐体(60)を含む伝播経路(P1)のインピーダンス(Z1,Z3)よりも小さく、
少なくとも(n-1)台のインバータ圧縮機システム(101,102)は、前記コンデンサ(11a)と前記アース端子(E)との間にインピーダンス素子(103)を有し、
それぞれのインピーダンス素子(103)のインピーダンス(Z6,Z7)は、前記圧縮機用アース配線(50)のインピーダンス(Z4,Z5)よりも大きいことを特徴とする。
【0007】
この構成では、前記伝播経路(P1)に加え、圧縮機用アース配線(50)もコモンモードノイズの伝播経路として機能する。圧縮機用アース配線(50)のインピーダンス(Z4,Z5)は、前記圧縮機(30)の配管(35)及び前記筐体(60)を含む伝播経路(P1)のインピーダンス(Z1,Z3)よりも小さいので、それぞれのインバータ圧縮機システムで発生したコモンモードノイズは、配管(35)や筐体(60)ではなく、主に圧縮機用アース配線(50)を流れる。それぞれのインピーダンス素子(103)のインピーダンス(Z6,Z7)は、前記圧縮機用アース配線(50)のインピーダンス(Z4,Z5)よりも大きいので、伝播経路(P1)に流れ込んだコモンモードノイズは、インピーダンス素子(103)を通って別のインバータ圧縮機システム(101,102)に流出することなく、コモンモードノイズ発生源のインバータ圧縮機システム(101,102)のノイズフィルタ(11)に戻る。
【0008】
また、第2の発明は、
第1の発明の冷凍装置において、
前記インピーダンス素子(103)は、フェライトコア(103)を用いて形成されていることを特徴とする。
【0009】
この構成では、フェライトコア(103)が所定のインピーダンスを生じさせる。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、あるインバータ圧縮機システムから、別のインバータ圧縮機システムのノイズフィルタ(11)(より具体的には、コモンモードコイル(11b))に流れ込むコモンモードノイズを、低減させることが可能になる。これにより、複数のインバータ圧縮機システムを組み合わせた冷凍装置において、コモンモードノイズの低減を図ることが可能になる。
【0011】
また、第2の発明で用いたフェライトコア(103)は、主回路に用いるコモンモードチョークコイルやフェライトコアに比べて小さくできる。これは、主回路では相の数だけ線を巻く必要があるからであり、主回路電流(電源ラインから供給され、電力変換回路(105)通り、モータ(31)を駆動する電流)が大きいため配線が太くなるからである。すなわち、第2の発明によれば、比較的小さなフェライトコアを用いてインピーダンス素子(103)を構成でき、主回路電流を流すCMCの材料を飽和しにくい磁性材料にするのと比べ、低コストでノイズ対策の実現を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る冷凍装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、1台のインバータ圧縮機システムの構成の模式図である。
【図3】図3は、電気回路の主要部分を示すブロック図である。
【図4】図4は、端子台の圧縮機フレームへの取り付け例を示す図であり、(A)が平面図、(B)が側面図である。
【図5】図5は、冷凍装置における電流の経路を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0014】
《本実施形態の構成》
図1は、本発明の実施形態に係る冷凍装置(1)の構成を示すブロック図である。冷凍装置(1)は、例えば、蒸気圧縮式冷凍サイクルにより冷房運転や暖房運転を行う空気調和機などに適用するものである。この冷凍装置(1)は、冷媒回路(104)と、第1、及び第2インバータ圧縮機システム(101,102)とを備えている。
【0015】
〈各インバータ圧縮機システムの構成〉
第1、及び第2インバータ圧縮機システム(101,102)は、同じ構成を有している。図2は、インバータ圧縮機システム(101,102)の構成の模式図であり、代表で一方のインバータ圧縮機システム(第1インバータ圧縮機システム(101))を記載してある。図2に示すように、それぞれのインバータ圧縮機システム(101,102)は、電気回路(10)と電動式圧縮機(30)とを備えている。これらのインバータ圧縮機システム(101,102)は、鉄などの金属板(板金)により箱状に構成された、共通の筐体(60)に収められている。この筐体(60)には、該筐体(60)を接地させるためのアース端子(E)が設けられている。
【0016】
電気回路(10)は、モータ(31)への電力供給や回転数制御などを行う回路である。図3は、電気回路(10)の主要部分を示すブロック図である。図3に示した例では、電気回路(10)は、ノイズフィルタ(11)と、電力変換回路(105)を備え、これらはプリント基板(16)上に形成されている(図2を参照)。プリント基板(16)は、電装品箱(図示は省略)に収容され、該電装品箱が前記筐体(60)に収容されている。電気回路(10)には、単相の交流電源(20)が接続されて交流電力が供給されている。この例では、交流電源(20)は、商用交流電源(例えばAC100V)である。なお、この交流電源(20)の出力には、直列接続されたコンデンサ(C1,C2)が接続され、2つのコンデンサ(C1,C2)間の中性点は、アース端子(E)に接続されている。
【0017】
ノイズフィルタ(11)は、前記交流電源(20)に接続され、ノイズ(後述のコモンモードノイズ)を低減させるようになっている。本実施形態のノイズフィルタ(11)は、図3に示すように、Yコンデンサ(11a)、コモンモードコイル(11b)、及びノーマルモードコイル(11d)を備えている。Yコンデンサ(11a)は、交流電源線(A,B)とアース線(17)との間に設けられたコンデンサである。コモンモードコイル(11b)は、前記交流電源線(A,B)のそれぞれに接続された一対のコイルである。ノーマルモードコイル(11d)は、ノーマルモードノイズを低減させるためのコイルである。
【0018】
電力変換回路(105)は、コンバータ回路(12)、直流リンク部(13)、インバータ回路(14)、及びインピーダンス素子(103)を備えている。
【0019】
コンバータ回路(12)は、前記ノイズフィルタ(11)を介して前記交流電源(20)から交流が入力され、該交流を整流する。本実施形態のコンバータ回路(12)は、ダイオード(12a)がブリッジ状に結線されたダイオードブリッジ回路である。また、直流リンク部(13)は、リアクトル(13a)と、平滑コンデンサ(13b)を備え、コンバータ回路(12)の出力を平滑化してインバータ回路(14)に出力する。
【0020】
インバータ回路(14)は、複数のスイッチング素子(14a)と、複数の還流ダイオード(14b)とを備えている。このインバータ回路(14)は、前記直流リンク部(13)を介して、コンバータ回路(12)から直流電力の供給を受け、その直流電力を前記スイッチング素子(14a)でスイッチングして目標の交流電力を生成する。この例では、インバータ回路(14)が生成する交流電力は、三相の交流電力である。インバータ回路(14)が生成した三相交流電力は、モータ(31)に供給される。
【0021】
本実施形態のインバータ回路(14)は、図示は省略するが、複数のスイッチング素子(14a)がブリッジ結線されて構成されている。このインバータ回路(14)は、三相交流を生成するので、6個のスイッチング素子(14a)を備えている。それぞれのスイッチング素子(14a)には、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を採用できる。インバータ回路(14)は、詳しくは、2つのスイッチング素子を互いに直列接続してなる3つのスイッチングレグを備え、各スイッチングレグにおける、上アームのスイッチング素子(14a)と下アームのスイッチング素子(14a)との中点が、それぞれモータ(31)のコイル(図示は省略)に接続されている。また、各スイッチング素子(14a)には、還流ダイオード(14b)が逆並列に接続されている。
【0022】
そして、これらのスイッチング素子(14a)や還流ダイオード(14b)は、該インバータ回路(14)を構成する他の部品とともに1つのパッケージに収められている。スイッチング素子(14a)はスイッチング動作にともなって発熱するので、このパッケージには、スイッチング素子(14a)等のパッケージ内の部品を冷却するヒートシンク(15)が取り付けられている(図2を参照)。
【0023】
それぞれの電動式圧縮機(30)(以下、単に圧縮機ともいう)は、冷媒回路(104)に接続されて、冷媒を圧縮するようになっている。それぞれの圧縮機(30)は、モータ(31)、圧縮機構(32)、及びフレーム(33)(以下、圧縮機フレームともいう)を備えている。圧縮機フレーム(33)は、圧縮機構(32)とモータ(31)とを収容するケーシングであり、この例では円筒状の密閉容器である。すなわち、圧縮機(30)は、いわゆる密閉型の圧縮機である。本実施形態では、圧縮機構(32)の構成は特には限定されないが、例えば、ロータリー式圧縮機構など種々の圧縮機構を採用できる。この圧縮機構(32)には、冷媒を吸入する冷媒配管(35)や吐出する冷媒配管(35)が接続されている。冷媒配管(35)は、冷媒回路(104)に接続されている。なお、この冷媒回路(104)には、蒸発器、凝縮器、膨張弁などを含んでいる(何れも図示を省略)。
【0024】
モータ(31)は、三相の交流モータであり、ステータコア(31a)、ロータ(31b)、及び駆動軸(31c)を備えている。ロータ(31b)には駆動軸(31c)が取り付けられ、該駆動軸(31c)が圧縮機構(32)を回転駆動するようになっている。ステータコア(31a)は、圧縮機フレーム(33)の内周面に固定され、該ステータコア(31a)には、コイル(図示は省略)が巻回されている。また、前記圧縮機フレーム(33)の外面には、ガラス端子(34)が設けられ、前記ステータコア(31a)のコイルには、当該ガラス端子(34)を介して、前記インバータ回路(14)の出力(三相交流(U,V,W))が供給されている。
【0025】
また、圧縮機フレーム(33)には、ガラス端子(34)とは別に、端子台(40)がねじ止めされている。図4は、端子台(40)の圧縮機フレーム(33)への取り付け例を示す図であり、(A)が平面図、(B)が側面図である。この端子台(40)は、圧縮機フレーム(33)と接続された、該圧縮機フレーム(33)と同電位のフレーム側アース端子(40a)を備え、このフレーム側アース端子(40a)には、配線をねじ止めできるようになっている。この例では、モータ(31)のステータコア(31a)も圧縮機フレーム(33)と同電位になり、その結果、端子台(40)のフレーム側アース端子(40a)とステータコア(31a)とは同電位となる。そして、端子台(40)のフレーム側アース端子(40a)には、例えば被覆電線で構成された圧縮機用アース配線(50)の一端が接続(この例では、ねじ止め)され、該圧縮機用アース配線(50)の他端は、Yコンデンサ(11a)のアース側のノードに接続されている。
【0026】
図5は、冷凍装置(1)における電流の経路を模式的に示す図である。なお、図5では、モータ(31)をコンデンサでモデル化してある。また、図5中のZ1,…Z7は、各経路や素子(例えば圧縮機用アース配線(50)やインピーダンス素子(103))のインピーダンスを示している。また、第1インバータ圧縮機システム(101)側と第2インバータ圧縮機システム(102)の構成要素を識別するため、構成要素の符号には枝番を付してある。具体的には、第1インバータ圧縮機システム(101)側には、枝番の1を付し、第2インバータ圧縮機システム(102)側には枝番の2を付してある。また、図5におけるLISNはノイズ測定用の装置である。図5に示すように、例えば第1インバータ圧縮機システム(101)では、圧縮機(30)から冷媒配管(35)及び筐体(60)(板金)を経由して、アース端子(E)に到る電流の経路(伝播経路(P1))が形成される(図3も参照)。
【0027】
第1インバータ圧縮機システム(101)における圧縮機用アース配線(50)のインピーダンス(Z4)は、伝播経路(P1)のインピーダンスよりも小さく構成されている。この例では、第1インバータ圧縮機システム(101)側の伝播経路(P1)は、冷媒配管(35)部分のインピーダンスがZ1、筐体(60)部分のインピーダンスがZ3であり、Z4<Z1+Z3である。なお、図3では、筐体(60)部分等のインピーダンスをインダクタンスと抵抗で図示している。
【0028】
同様に、第2インバータ圧縮機システム(102)でも、前記伝播経路(P1)がある。ただし、伝播経路(P1)の筐体(60)部分は、第1インバータ圧縮機システム(101)と共通である(すなわち、インピーダンスはZ3である)。第2インバータ圧縮機システム(102)でも、圧縮機用アース配線(50)のインピーダンス(Z5)は、伝播経路(P1)のインピーダンスよりも小さく構成されている。すなわち、Z5<Z2+Z3である。
【0029】
インピーダンス素子(103)は、Yコンデンサ(11a)のアース側のノードと、アース端子(E)との間に設けられている。この例では、インピーダンス素子(103)は、この例ではフェライトコアを用いて構成されている。より具体的には、Yコンデンサ(11a)のアース側のノードと、アース端子(E)との間を配線で繋ぎ、この配線をフェライトコア(103)に巻回することで、所定のインピーダンスを生じさせている。第1インバータ圧縮機システム(101)側のインピーダンス素子(103)のインピーダンス(Z6)は、第1インバータ圧縮機システム(101)側の圧縮機用アース配線(50)のインピーダンス(Z4)よりも大きく構成されている。同様に、第2インバータ圧縮機システム(102)のインピーダンス素子(103)のインピーダンス(Z7)は、第2インバータ圧縮機システム(102)側の圧縮機用アース配線(50)のインピーダンス(Z5)よりも大きく構成されている。
【0030】
《冷凍装置(1)におけるコモンモードノイズの伝播》
冷凍装置(1)において、各インバータ圧縮機システム(101,102)が動作状態になると、それぞれのインバータ回路(14)のスイッチング素子(14a)がスイッチング動作を行う。このスイッチング動作により、モータ(31)において高周波電流(コモンモードノイズ)が発生する。
【0031】
例えば、圧縮機用アース配線(50)が無く、且つYコンデンサ(11a)が直接接地されているとすれば、第1インバータ圧縮機システム(101)で発生したコモンモードノイズは、主に、伝播経路(P1)からノイズフィルタ(11)(より詳しくは、Yコンデンサ(11a))に流れるとともに、図5に示した破線の経路を流れる。すなわち、第2インバータ圧縮機システム(102)側のコモンモードコイル(11b)には、第2インバータ圧縮機システム(102)側で発生したコモンモードノイズに加え、第1インバータ圧縮機システム(101)側で発生したコモンモードノイズも流れることになる。第2インバータ圧縮機システム(102)側のコモンモードコイル(11b)に、両方のインバータ圧縮機システム(101,102)からのコモンモードノイズが流れると、第2インバータ圧縮機システム(102)側のコモンモードコイル(11b)が磁気飽和してしまう可能性がある。
【0032】
しかしながら、本実施形態では、圧縮機用アース配線(50)を設けてあるので、この圧縮機用アース配線(50)もコモンモードノイズの伝播経路として機能する。そして、インピーダンス素子(103)を設けて、伝播経路の各部のインピーダンスの関係を、Z4<Z1+Z3,Z5<Z2+Z3,Z6>Z4,Z7>Z5としてある。第1インバータ圧縮機システム(101)側で発生したコモンモードノイズは、伝播経路(P1)(冷媒配管(35)や筐体(60))ではなく、主に圧縮機用アース配線(50)を流れやすい(図5において実線で示した経路)。そして、Z6を設けているので、圧縮機用アース配線(50)に流れ込んだコモンモードノイズは、インピーダンス素子(103)を通って筐体を経由して第2インバータ圧縮機システム側に流出することなく、第1インバータ圧縮機システム(101)、すなわちコモンモードノイズの発生源のノイズフィルタ(11)に戻るのである。同様のことは、第2インバータ圧縮機システム(102)側で発生したコモンモードノイズについても言える。
【0033】
《本実施形態における効果》
以上のように、本実施形態によれば、あるインバータ圧縮機システムから、別のインバータ圧縮機システムのノイズフィルタ(11)(より具体的には、コモンモードコイル(11b))に流れ込むコモンモードノイズを、低減させることが可能になる。
【0034】
コモンモードコイルにおける磁気飽和を防止するには、例えば、CMCの材料を飽和しにくい磁性材料に変更する等の対策を施すことが考えられる。しかしながら、これでは大きなコスト増加を招いてしまう。これに対し、インピーダンス素子(103)として追加したフェライトコアは、CMCの材料を飽和しにくい磁性材料にするのと比べ、低コストでのコモンモードノイズの対策の実現を期待できる。同様に、圧縮機用アース配線(50)の追加も大きなコスト増加はない。すなわち、本実施形態では、CMCの材料を飽和しにくい磁性材料に変更する等のコストが大きく増加する対策を施すことなく、コモンモードノイズの対策が可能になる。
【0035】
《その他の実施形態》
なお、インバータ圧縮機システムの台数は例示である。例えば、3台以上のインバータ圧縮機システムを用いて冷凍装置(1)を構成することも可能である。
【0036】
また、インピーダンス素子として用いたフェライトコアは例示である。インピーダンスが圧縮機用アース配線(50)のインピーダンスよりも大きければ、他の素子を用いて構成してもよい。
【0037】
また、インピーダンス素子(103)は、全てのインバータ圧縮機システムに設ける必要はない。n台(n:自然数)のインバータ圧縮機システムからなる冷凍装置では、1台に限りインピーダンス素子(103)を省略することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、スイッチングにより電力変換を行う電力変換回路から電力供給される電動式圧縮機を有した冷凍装置として有用である。
【符号の説明】
【0039】
1 冷凍装置
11 ノイズフィルタ
11a ノイズフィルタ
11b コモンモードコイル
14a スイッチング素子
30 圧縮機
31 モータ
31a ステータコア
33 圧縮機フレーム(フレーム)
35 冷媒配管(配管)
50 圧縮機用アース配線
60 筐体
101 第1インバータ圧縮機システム
102 第2インバータ圧縮機システム
103 フェライトコア(インピーダンス素子)
105 電力変換回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ(31)で駆動される圧縮機(30)と、ノイズフィルタ(11)と、前記ノイズフィルタ(11)を介して入力された交流をスイッチング素子(14a)のスイッチング動作によって電力変換して前記モータ(31)に供給する電力変換回路(105)とを有したインバータ圧縮機システム(101,102)をn台(n:2以上の自然数)備えた冷凍装置において、
前記ノイズフィルタ(11)は、前記圧縮機(30)を収容する筐体(60)に設けられたアース端子(E)と交流電源線(A,B)との間に設けられたコンデンサ(11a)と、コモンモードコイル(11b)とを有し、
それぞれのインバータ圧縮機システム(101,102)は、前記圧縮機(30)のフレーム(33)又は前記モータ(31)のステータコア(31a)を、前記ノイズフィルタ(11)に接続する圧縮機用アース配線(50)を有し、
それぞれの圧縮機用アース配線(50)のインピーダンス(Z4,Z5)は、前記圧縮機(30)の配管(35)及び前記筐体(60)を含む伝播経路(P1)のインピーダンス(Z1,Z3)よりも小さく、
少なくとも(n-1)台のインバータ圧縮機システム(101,102)は、前記コンデンサ(11a)と前記アース端子(E)との間にインピーダンス素子(103)を有し、
それぞれのインピーダンス素子(103)のインピーダンス(Z6,Z7)は、前記圧縮機用アース配線(50)のインピーダンス(Z4,Z5)よりも大きいことを特徴とする冷凍装置。
【請求項2】
請求項1の冷凍装置において、
前記インピーダンス素子(103)は、フェライトコア(103)を用いて形成されていることを特徴とする冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−124985(P2012−124985A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271372(P2010−271372)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】