説明

冷凍食品

【課題】簡便であり、かつ、食感、風味にすぐれた冷凍食品、特に、冷凍茶漬けの具、漬物、おにぎりの具、スープの具を提供することを課題とする。
【解決手段】少なくとも縦・横・高さのいずれかひとつは1cm以下であり、残りの2つが4cm以下の大きさの具材を集合させた食品であって、具全体の塩分が5〜10湿重量%であり、具全体の重量が5〜30gであり、全体の重量に対して0.3〜1.5%の増粘成分を添加して、一体に凍結したことを特徴とする、湯又は茶をかけて解凍し、その湯又は茶と一緒に食することができる冷凍食品の製造方法である。増粘成分が澱粉、又は澱粉及びゼラチンであるものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小さいサイズの具材を集合させた塩分の高い食品を一体に冷凍した食品に関する。特に、本発明は、そのままご飯のうえに載せてお湯またはお茶などをかけるだけでお茶漬けになるお茶漬けの具と調味成分を含有する茶漬けの具の冷凍品、自然解凍で食せる漬物、おにぎりの具の冷凍品である。特に、一膳分ほどのご飯にちょうど良い量ずつ小分けにして冷凍された食品である。
【背景技術】
【0002】
茶漬けは、一般に米飯の上に焼いた鮭、鯛等の魚介類、漬物類、海苔などの海藻類、わさびなどの香辛料をのせ、湯または茶をかけて食するものである。簡単に食することができるよう、例えば乾燥化またはソボロ状にした魚介類と粉末化した風味調整成分を混合した茶漬けの素が一般に市販されている。
特許文献1には、ゼラチンゲルで被覆した生の魚介類が入った茶漬け組成物が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特許3771655号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、簡便であり、かつ、食感、風味にすぐれたお茶漬けの具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは、茶漬けの具の冷凍食品を提供することを思いつき、種々試みたが、各種具材の細片を集合させた茶漬けの具は、塩分が高めであるため凍結しにくく、凍結がゆるいために全体を一体に保持することができなかった。1膳分ずつの茶漬けの具が一塊に冷凍されていれば、それをご飯の上に載せて湯か茶をかけるだけで、茶漬けができるが、具材が1膳分ずつ一体にならず、ばらけると、複数個のお茶漬けの具をひとつの包装体にいれた場合は、混ざり合ってしまうし、1膳分を袋にいれたとしても、具材の細片が袋にくっつき、きれいに取り出すことができないなどの不具合が生じる。
【0006】
本発明は、(1)〜(6)の冷凍食品の製造方法を要旨とする。
(1)少なくとも縦・横・高さのいずれかひとつは1cm以下であり、残りの2つが4cm以下の大きさの具材を集合させた食品であって、具全体の塩分が5〜10湿重量%であり、具全体の重量が5〜30gであり、全体の重量に対して0.3〜1.5%の増粘成分を添加して、一体に凍結したことを特徴とする、湯又は茶をかけて解凍し、その湯又は茶と一緒に食することができる冷凍食品の製造方法。
(2)食品が茶漬けの具、漬物、又はスープ具材のいずれかである(1)の冷凍食品の製造方法。
(3)2種類以上の具材の混合物である(1)又は(2)の冷凍食品の製造方法。
(4)具材が、調味した野菜類、魚介類、海藻類、漬物類のいずれか1種類以上を含むものである(1)、(2)又は(3)の冷凍食品の製造方法。
(5)さらに、粉末茶、昆布茶、出汁粉末を添加したものである(1)ないし(4)いずれかの冷凍食品の製造方法。
(6)増粘成分が澱粉、又は、澱粉及びゼラチンである(1)ないし(5)いずれかの冷凍食品の製造方法。
【0007】
本発明は、(1)ないし(6)いずれかの方法で製造した冷凍食品を切り離しができる複数の収納部を有するトレーの各収納部にひとつずつ充填した冷凍食品の包装体も要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の冷凍食品は、冷凍中、具材が一体に保持されるので、細かい具材が包装袋にくっついて取れにくくなることもなく、複数個の茶漬けの具が混ざり合ってしまうこともない。したがって、包装容器から1膳分を1塊として取り出しやすく、茶漬けの具の場合、ご飯に載せて湯や茶をかけるだけで茶漬けができる。切り離しができる複数の収納部を有するトレーに充填した場合、収納部間で具材が交じり合うこともなく、異なる種類の製品をひとつのトレーに収納した場合にも、互いに混ざり合って、外観が悪くなったりしない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、「少なくとも縦・横・高さのいずれかひとつは1cm以下であり、残りの2つが4cm以下の大きさの具材」とは、裁断された各種食材のひとつの細片の大きさである。本発明の冷凍食品は、茶漬けの具、漬物、おにぎりの具、又はスープ具材である。お茶漬けの具を例に説明する。茶漬けの具として通常用いられる野菜類、魚介類、漬物類、海藻類などを上記の大きさに裁断したものを用いる。冷凍し、そのままご飯に載せて湯か茶をかけて解凍することから、あまり大きな塊は解凍に時間がかかるため好ましくない。速やかに解凍できる小さめの細片にする。薄いものであれば大きめでも良いし、厚みの厚いものは小さめに切るのが好ましい。野菜類の漬物の場合、縦・横・高さのいずれもが1cm以下、好ましくは、5−8mmの賽の目切りや、茎のものであれば、0.5−1cm程度の幅で小口切りするなどしたものである。梅干のように味の濃いものは3−5mmくらいの小さめに切るのもよい。野沢菜の漬物のように細いものであれば、長さは3cm程度であっても、解凍時間には影響がないので長くてもよい。具体的には、野沢菜の漬物、高菜の漬物、梅干など漬物が好ましいが、茹でた青菜、根菜類などを調味したものも、他の具材との組み合わせによっては好ましい。魚介類では、例えば塩鮭のほぐし身、ちりめんじゃこ、かつおのほぐし身、鰹節などが例示される。海藻類の例としては、昆布、わかめ他の佃煮、海苔などが好ましい。その他の具材としては、油揚げ、ゴマ、しょうが、わさびなど、茶漬けの具に少量添加して味が引き立つものであれば何をいれてもかまわない。
漬物の場合は、もともと味がついているので、そのまま、お茶漬けの具と同じような大きさに切ったものを用いる。おにぎりの具もお茶漬けと同じである。具をたくさん含む味噌汁を代表とするスープ類もお茶漬けの具と同様に、スープに適する調理した具を裁断し、味噌などのスープの調味料を一緒に凍結する。
【0010】
上記の具材はそれぞれ固有の塩分濃度があるので、茶漬けの具として1膳のご飯に載せて湯又は茶をかけたときに全体として好ましい味付けになるよう調節する必要がある。1膳のご飯は通常100〜180gであり、湯又は茶の量が100〜180mlであるとすれば、具全体の重量が5〜30gの場合、塩分濃度は具全体で1〜10湿重量%が好ましい。特に好ましくは、具の重量が5−15gで塩分濃度が5−8湿重量%程度である。このような塩分濃度に調節することで、1膳のご飯にちょうど合う味付けとなる。おにぎりの具の場合も同程度の塩分でよい。塩分濃度さえこの範囲に納まるよう調整すれば、旨味、甘みの調味料は具材の種類に応じて好みの味付けにすることができる。旨味成分としては昆布、かつおぶしなどのエキス、粉末、あるいは、グルタミン酸ナトリウムを含む調味料などが使用できる。その他、調味料、香辛料は何を使用してもよい。
【0011】
上記の各種具材を好ましい割合で混合し、凍結するがその際に、全体の重量に対して0.3〜1.5%の増粘成分を添加し、撹拌して、これら増粘成分が溶けたところで、型または包装容器にいれて、一体に凍結する。塩分が高い具材は、凍結しても具材がばらけやすいが、この増粘成分により一体に凍結することができる。特に、茶漬けの場合は、澱粉又は、澱粉及びゼラチンを用いるのが好ましく、この濃度範囲で添加すれば、湯または茶をかけたときにどろどろしたり、濁ったりせず、違和感のない仕上がりになる。場合によっては、その他の各種増粘多糖類を用いることもできるが、他のガム類に代表される増粘多糖類では、添加量が少なくてすむ利点があるものの、食感に影響があったり、濁りがでたりするためあまりは好ましくない。本発明に利用する増粘成分は特に喫食時の食感が重要であり、食品の食感に影響を与えないことが重要となる。一般に澱粉は、その種類や化工方法によって性質が大きく異なるものの、本発明が規定する程度の添加量であれば、食感への影響は少なく、どの種類の澱粉も使用できる。同様に耐塩性の有無も大きく影響しない。また、おにぎりの具などでは、濁りなどは問題にならないし、具材によってはそれらの影響がそれほど問題にならないので、他の増粘多糖類を添加するのはかまわない。増粘成分は粉末を添加してもよいし、溶液を添加、噴霧するのでもよい。澱粉単独でも有効であるが、ゼラチンを併用することにより、澱粉の老化しやすい点をカバーするのでより好ましい。
澱粉、ゼラチンは市販のものを用いることができる。澱粉としては馬鈴薯澱粉、タピオカでんぷんなどが、ゼラチンとしては豚ゼラチンなどが例示される。
【0012】
本発明の食品はお茶漬けの具、おにぎりの具、スープの具では2種類以上の具材を混合したものが味、風味、外観の点から好ましい。1杯の茶漬けのために、複数の具を自分でそろえるのは面倒なものであるが、複数の具材を組み合わせた本発明の具であれば、大変手軽においしい茶漬けをつくることができる。おにぎりの具でも同様である。
上述のとおり、茶漬け、おにぎりなどに適するものであれば具材は何でもよいが、茶漬けの具材として定番の、調味した野菜類、魚介類、海藻類、漬物類のいずれか1種類以上を含むものが茶漬けの具として好ましい。さらに、好みにより、粉末茶、昆布茶、だし粉末等を添加することもできる。
上述のような冷凍食品を切り離しができる複数の収納部を有するトレーの各収納部にひとつずつ充填した冷凍食品の包装体として、提供することにより、消費者はちょっとお茶漬けを食べたいというようなときに1人前ずつトレイを切り離して解凍して用いることができ、手軽に本格的なお茶漬けを作ることができる。
【0013】
次に本発明の茶漬けの具の製造方法について詳細に説明する。
上述した、野菜の漬物、海藻の佃煮、魚介類のほぐし身などを適宜「少なくとも縦・横・高さのいずれかひとつは1cm以下であり、残りの2つが4cm以下の大きさの具材」を満たす大きさに裁断し、これら具材とその他調味料を全体の塩分量が5〜10湿重量%になるよう加熱混合する。多くの具材は調理されているので、必ずしも加熱の必要はないが、微生物的な安全性の面から一定の温度に加熱するのが好ましい。こうしてできた具を冷却後、5〜30g毎、トレーにいれて凍結する。(トレーにつめる際は若干各具材が接する様に押し付ける。)
【実施例】
【0014】
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
実施例1:茶漬けの具(かつお梅)
加熱した植物油1.15kgに、茹でた鰹肉のほぐし身20kg、水戻しした乾燥わかめ3.75kg、調味料(醤油7kg、上砂糖2.3kg、馬鈴薯澱粉0.4kg、ゼラチンPSV0.2kg、醸造調味料1.85kg、おろし生姜0.75kg、こんぶエキス0.25kg、液体鰹出汁0.6kg、グルタミン酸ナトリウム1.4kg、食塩1.5kg、粉末茶0.2kg)を添加し、加熱下、撹拌する。さらに、刻み梅干8.5kgを添加撹拌し、47.5kgの茶漬けの具(かつお梅)(Brix31.5)を得た。
真空冷却機にて冷却し、6つの収納部を有する切り離し用の切り目がついたトレーに13gずつ詰め、凍結した。凍結した具は一体性を保持し、多少の衝撃では具材の再片がばらけることはなかった。冷却後の時点での塩分は8.9%であった。
100gのご飯に上記凍結した茶漬けの具1つを載せ、100mlの熱湯をかけて食したところ、塩味もちょうどよく、鰹、梅の風味、食感に優れたお茶漬けとして食することができた。
【0015】
実施例2:茶漬けの具(紅鮭高菜)
加熱した植物油1.45kgに、刻み高菜漬物28.5kg、紅鮭ほぐし身11.5kg、調味料(醤油2.75kg、馬鈴薯澱粉0.15kg、醸造調味料0.5kg、こんぶエキス0.25kg、いりゴマ0.7kg、一味トウガラシ0.075kg、グルタミン酸ナトリウム1.05kg、食塩2.35kg、粉末茶0.35kg)を添加し、加熱下、撹拌し、46.2kgの茶漬けの具(紅鮭高菜)を得た。
真空冷却機にて冷却し、6つの収納部を有する切り離し用の切り目がついたトレーに13gずつ詰め、凍結した。凍結した具は一体性を保持し、多少の衝撃では具材の再片がばらけることはなかった。冷却後の時点での塩分は9.3%であった。
100gのご飯に上記凍結した茶漬けの具1つを載せ、100mlの熱湯をかけて食したところ、塩味もちょうどよく、鮭、高菜の風味、食感に優れたお茶漬けとして食することができた。
【0016】
実施例3:茶漬けの具(野沢菜ちりめん)
加熱した植物油1.1kgに、ちりめんじゃこ4.35kg、刻み油揚げ4kg、刻み野沢菜漬物32kg、調味料(醤油2.75kg、馬鈴薯澱粉0.15kg、醸造調味料0.5kg、こんぶエキス0.25kg、いりゴマ0.7kg、一味トウガラシ0.075kg、グルタミン酸ナトリウム1.05kg、食塩2.35kg、粉末茶0.35kg)を添加し、加熱下、撹拌し、46.2kgの茶漬けの具(紅鮭高菜)を得た。
真空冷却機にて冷却し(冷却後の時点での塩分は9.2%であった)、6つの収納部を有する切り離し用の切り目がついたトレーに実施例1、2、3の具をそれぞれ2箇所ずつに13gずつ詰め、凍結した。トレーを包装袋にいれ、上下逆さにする、ゆするなど、通常の流通で取り扱われるような衝撃を与えてみたが、凍結した具は一体性を保持し、多少の衝撃では具材の再片がばらけることはなく、違う種類の具剤が他の種類の具の収納部に入るようなこともなかった。
【産業上の利用可能性】
【0017】
調理する時間がないときや食後に軽くご飯を食したいときに簡便であり、かつ、食感、風味に優れた茶漬け等を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも縦・横・高さのいずれかひとつは1cm以下であり、残りの2つが4cm以下の大きさの具材を集合させた食品であって、具全体の塩分が5〜10湿重量%であり、具全体の重量が5〜30gであり、全体の重量に対して0.3〜1.5%の増粘成分を添加して、一体に凍結したことを特徴とする、湯又は茶をかけて解凍し、その湯又は茶と一緒に食することができる冷凍食品の製造方法。
【請求項2】
食品が茶漬けの具、漬物、又はスープ具材のいずれかである請求項1の冷凍食品の製造方法。
【請求項3】
2種類以上の具材の混合物である請求項1又は2の冷凍食品の製造方法。
【請求項4】
具材が、調味した野菜類、魚介類、海藻類、漬物類のいずれか1種類以上を含むものである請求項1、2又は3の冷凍食品の製造方法。
【請求項5】
さらに、粉末茶、昆布茶、出汁粉末を添加したものである請求項1ないし4いずれかの冷凍食品の製造方法。
【請求項6】
増粘成分が澱粉、又は、澱粉及びゼラチンである請求項1ないし5いずれかの冷凍食品の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれかの方法で製造した冷凍食品を切り離しができる複数の収納部を有するトレーの各収納部にひとつずつ充填した冷凍食品の包装体。

【公開番号】特開2012−34709(P2012−34709A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255097(P2011−255097)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【分割の表示】特願2007−12673(P2007−12673)の分割
【原出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000004189)日本水産株式会社 (119)
【Fターム(参考)】