説明

冷凍魚卵用処理剤および処理方法

【課題】冷凍魚卵を解凍した際に起こる歩留りの低下、弾力の低下、色調の劣化を抑制すると共に、解凍後の魚卵の保存性を改善することができる冷凍魚卵用処理剤および処理方法を提供すること。
【解決手段】クエン酸三ナトリウムおよび酸性ピロリン酸ナトリウムを含有する冷凍魚卵用処理剤および冷凍魚卵処理用水溶液を提供する。また、クエン酸三ナトリウムを0.05〜1.5重量%および酸性ピロリン酸ナトリウムを0.02〜1.5重量%含有し、且つpHが5.0〜6.8である冷凍魚卵処理用水溶液に冷凍魚卵を浸漬することを特徴とする冷凍魚卵の処理方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍魚卵の解凍工程で使用する冷凍魚卵用処理剤および処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
筋子やイクラの製造に用いられる鮭や鱒の卵巣は、通常、魚体から取り出し、水洗した後、鮮度を保つために冷凍保存されている。魚卵加工品の製造業者では、保存された冷凍魚卵を解凍し、調味液に浸漬して調味筋子や調味イクラを製造している。
【0003】
冷凍魚卵の解凍方法としては、静止水中解凍、流動水中解凍などの解凍方法が知られているが、静止水中解凍、流動水中解凍等の水を用いる解凍方法では、解凍後の魚卵において、歩留りの低下、弾力の低下、色調の劣化等の問題が発生していた。
【0004】
そこで、これらの問題点を解決するために、ピロリン酸塩、メタリン酸塩、ポリリン酸塩等の重合リン酸塩を含有する処理剤で魚卵を処理する方法が提案されている。
【0005】
特許文献1には、L−酒石酸水素カリウムおよび/またはリン酸二水素カルシウムを有効成分として含有する処理剤で魚卵を処理する品質改良方法が提案されている。かかる方法は魚卵の身締め効果を得ることを目的としており、卵粒を硬化させることが可能であるものの、歩留りや色調については改善効果が得られないか、または不明であると考えられる。
【0006】
特許文献2には、生又は冷凍の魚卵を、リン酸塩又は/およびタンニン酸を食塩水に少量溶解して成る処理液に浸漬処理することを特徴とする魚卵の改質法が提案されている。かかる方法においては、ドリップの発生、色つや、卵膜の弾力等において改善が見られるものの、評価の方法が定量的でなく、改善の程度については不明なままである。
【0007】
特許文献3には、魚卵をポリリン酸ナトリウムを含有する水溶液で処理する方法が提案されている。かかる方法においては、むら無く均一に解凍および血抜きを行うことができるが、解凍後の魚卵の歩留まりおよび色調についての具体的な改善の程度は定かではない。また、解凍後の魚卵の弾力については改善効果が得られないか、または不明であると考えられる。
【0008】
したがって、これら従来の方法によっても上記問題点、すなわち解凍後の魚卵における歩留りの低下、弾力の低下、色調の劣化等の問題について、十分な改善効果が得られていなかった。
【0009】
また、魚卵を解凍する際に発生する水(いわゆるドリップ)は、魚を解体して魚卵を取り出し、冷凍するまでの工程において魚卵に付着した細菌に汚染されていることが多く、通常、解凍に用いる水は細菌が増殖可能な温度であるため、ドリップに含まれる細菌が解凍中に増殖して解凍後の魚卵の保存性を悪化させることも問題となっていた。
【0010】
上記のような背景から、解凍後の魚卵の歩留り、弾力、色調および保存性を同時に改善する処理剤が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−299285号公報
【特許文献2】特開平6−181720号公報
【特許文献3】特開2006−101759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、冷凍魚卵を解凍した際に起こる歩留りの低下、弾力の低下、色調の劣化を抑制すると共に、解凍後の魚卵の保存性を改善することができる冷凍魚卵用処理剤および処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、特定の有機酸塩と特定のリン酸塩を含有する水溶液で冷凍魚卵を処理することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち本発明は、クエン酸三ナトリウムおよび酸性ピロリン酸ナトリウムを含有する冷凍魚卵用処理剤および冷凍魚卵処理用水溶液を提供する。
【0015】
又、本発明は、クエン酸三ナトリウムを0.05〜1.5重量%および酸性ピロリン酸ナトリウムを0.02〜1.5重量%含有し、且つpHが5.0〜6.5である冷凍魚卵処理用水溶液に冷凍魚卵を浸漬することを特徴とする冷凍魚卵の処理方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の冷凍魚卵用処理剤は、固形、例えば粉末の状態で提供されてもよく、濃水溶液として提供されてもよい。冷凍魚卵を処理する際には、該処理剤を水に溶解および/または希釈し、水溶液の状態において冷凍魚卵の処理に用いる(本明細書において、冷凍魚卵の処理に用いる水溶液を「冷凍魚卵処理用水溶液」と称する)。例えば、本発明の冷凍魚卵用処理剤は、冷凍魚卵の処理に用いる際に、クエン酸三ナトリウムを0.05〜1.5重量%含有する冷凍魚卵処理用水溶液が得られるよう溶解および/または希釈するのが好ましい。より具体的には、本発明の冷凍魚卵用処理剤は、クエン酸三ナトリウムを0.05〜1.5重量%および酸性ピロリン酸ナトリウムを0.02〜1.5重量%含有する冷凍魚卵処理用水溶液が得られるよう溶解および/または希釈するのが好ましく、クエン酸三ナトリウムを0.1〜1重量%および酸性ピロリン酸ナトリウムを0.06〜0.9重量%含有する冷凍魚卵処理用水溶液が得られるよう溶解および/または希釈するのがより好ましく、クエン酸三ナトリウムを0.5〜0.6重量%および酸性ピロリン酸ナトリウムを0.3〜0.5重量%含有する冷凍魚卵処理用水溶液が得られるよう溶解および/または希釈するのがさらに好ましい。冷凍魚卵処理用水溶液におけるクエン酸三ナトリウムの濃度が0.05重量%未満の場合、色調および歩留りの改善が不十分となる傾向があり、1.5重量%を超える場合、解凍後の魚卵の味質が損われる傾向がある。また、冷凍魚卵処理用水溶液における酸性ピロリン酸ナトリウムの濃度が0.02重量%未満の場合、保存効果の改善が不十分となる傾向があり、1.5重量%を超える場合、解凍後の魚卵の味質が損われる傾向がある。
【0017】
本発明の冷凍魚卵用処理剤がさらにグルコン酸ナトリウムを含む場合には、クエン酸三ナトリウムを0.05〜1.5重量%、酸性ピロリン酸ナトリウムを0.02〜1.5重量%およびグルコン酸ナトリウムを0.0005〜0.6重量%含有する冷凍魚卵処理用水溶液が得られるよう溶解および/または希釈するのが好ましく、クエン酸三ナトリウムを0.1〜1重量%、酸性ピロリン酸ナトリウムを0.06〜0.9重量%およびグルコン酸ナトリウムを0.01〜0.37重量%含有する冷凍魚卵処理用水溶液が得られるよう溶解および/または希釈するのがより好ましく、クエン酸三ナトリウムを0.5〜0.6重量%、酸性ピロリン酸ナトリウムを0.3〜0.5重量%およびグルコン酸ナトリウムを0.1〜0.2重量%含有する冷凍魚卵処理用水溶液が得られるよう溶解および/または希釈するのがさらに好ましい。冷凍魚卵処理用水溶液におけるグルコン酸ナトリウムの濃度が0.0005重量%未満の場合、色調改善効果が不十分となる傾向があり、0.6重量%を超える場合、解凍後の魚卵の味質が損われる傾向がある。
【0018】
本発明の冷凍魚卵用処理剤におけるクエン酸三ナトリウムの量は特に限定されないが、該処理剤を水に溶解および/または希釈して冷凍魚卵処理用水溶液を調製した場合に、該水溶液におけるクエン酸三ナトリウムの濃度が0.05〜1.5重量%となることが好ましい。
【0019】
本発明の冷凍魚卵用処理剤における酸性ピロリン酸ナトリウムの割合は、クエン酸三ナトリウム100重量部に対し、40〜100重量部が好ましく、60〜90重量部がより好ましく、65〜85重量部がさらに好ましい。酸性ピロリン酸ナトリウムの割合が40重量部未満の場合、歩留りおよび色調の改善効果が低下する傾向があり、100重量部を超える場合、歩留りの改善効果が低下する傾向がある。
【0020】
また、本発明の冷凍魚卵用処理剤は、さらにキレート作用を有する他の成分を含有するものが好ましい。本発明に使用し得るキレート作用を有する他の成分としては、グルコン酸アルカリ金属塩、クエン酸、ポリリン酸等が例示される。その中でも、グルコン酸アルカリ金属塩が好ましく、グルコン酸ナトリウムがより好ましい。本発明の冷凍魚卵用処理剤における、キレート作用を有する他の成分の割合は、採用する成分の種類によって異なるが、例えばグルコン酸ナトリウムを採用する場合、クエン酸三ナトリウム100重量部に対し、1〜40重量部が好ましく、10〜37重量部がより好ましく、20〜35重量部がさらに好ましい。グルコン酸ナトリウムの割合が1重量部未満の場合、魚卵の酸味が強くなる傾向があり、40重量部を超える場合、保存性の改善効果が不十分となる傾向がある。
【0021】
本発明の冷凍魚卵用処理剤の例としては、クエン酸三ナトリウム100重量部に対して、酸性ピロリン酸ナトリウム40〜100重量部を含有するものが好ましく、クエン酸三ナトリウム100重量部に対して、酸性ピロリン酸ナトリウム60〜90重量部を含有するものがより好ましく、クエン酸三ナトリウム100重量部に対して、酸性ピロリン酸ナトリウム65〜85重量部を含有するものがさらに好ましい。
【0022】
本発明の冷凍魚卵用処理剤のさらなる例としては、クエン酸三ナトリウム100重量部に対して、酸性ピロリン酸ナトリウム40〜100重量部、およびグルコン酸ナトリウム1〜40重量部を含有するものが好ましく、クエン酸三ナトリウム100重量部に対して、酸性ピロリン酸ナトリウム60〜90重量部、およびグルコン酸ナトリウム10〜37重量部を含有するものがより好ましい。より具体的には、クエン酸三ナトリウム100重量部に対し、酸性ピロリン酸ナトリウム65〜85重量部、およびグルコン酸ナトリウム20〜35重量部を含有するものが例示される。
【0023】
本発明の冷凍魚卵用処理剤には、本発明の処理剤の効果を損なわない範囲であれば、他の添加剤として、所望によりソルビトール等の糖類、グリシン等のアミノ酸、食塩、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの1種以上を含有させてもよい。これら他の添加剤を含有させる場合は、冷凍魚卵処理用水溶液における該添加剤の濃度が0.05〜10重量%程度となることが好ましく、0.1〜5重量%程度となることがより好ましい。また、これら添加剤は、冷凍魚卵の処理時に別途、冷凍魚卵処理用水溶液に投入することにより添加してもよい。
【0024】
本発明の冷凍魚卵の処理方法は、クエン酸三ナトリウムおよび酸性ピロリン酸ナトリウムを含有する冷凍魚卵処理用水溶液に冷凍魚卵を浸漬することを特徴とする。具体的には、クエン酸三ナトリウムを0.05〜1.5重量%および酸性ピロリン酸ナトリウムを0.02〜1.5重量%含有する冷凍魚卵処理用水溶液、好ましくはクエン酸三ナトリウムを0.1〜1重量%および酸性ピロリン酸ナトリウムを0.06〜0.9重量%含有する冷凍魚卵処理用水溶液、より好ましくはクエン酸三ナトリウムを0.5〜0.6重量%および酸性ピロリン酸ナトリウムを0.3〜0.5重量%含有する冷凍魚卵処理用水溶液に冷凍魚卵を浸漬する方法が挙げられる。
【0025】
本発明の冷凍魚卵の処理方法のさらなる例としては、クエン酸三ナトリウムを0.05〜1.5重量%、酸性ピロリン酸ナトリウムを0.02〜1.5重量%およびグルコン酸ナトリウムを0.0005〜0.6重量%含有する冷凍魚卵処理用水溶液、好ましくはクエン酸三ナトリウムを0.1〜1重量%、酸性ピロリン酸ナトリウムを0.06〜0.9重量%およびグルコン酸ナトリウムを0.01〜0.37重量%含有する冷凍魚卵処理用水溶液、より好ましくはクエン酸三ナトリウムを0.5〜0.6重量%、酸性ピロリン酸ナトリウムを0.3〜0.5重量%およびグルコン酸ナトリウムを0.1〜0.2重量%含有する冷凍魚卵処理用水溶液に冷凍魚卵を浸漬する方法が挙げられる。
【0026】
本発明の冷凍魚卵の処理方法において、「浸漬」とは、液体中に魚卵を浸すことをいい、魚卵全体が液面の下に収まる状態であればよい。本発明の冷凍魚卵の処理は、静止水中で行ってもよいし、撹拌等による流動水中で行ってもよい。さらに、解凍効率を良くするために、魚卵を浸漬している液に空気を送り込む「曝気」(いわゆるバブリング)を組み合わせることもできる。
【0027】
本発明の冷凍魚卵の処理方法において用いる冷凍魚卵処理用水溶液は、典型的には調製済みの本発明の冷凍魚卵用処理剤を水に溶解および/または希釈することによって得られるものであるが、使用前に、必要な成分を同時にまたは別々の時点で水に溶解および/または希釈することによって調製してもよい。また、冷凍魚卵処理用水溶液は、必要な成分が均一に分散する限り、水への魚卵の浸漬を開始した後に、該水に本発明の冷凍魚卵用処理剤または必要な成分を溶解および/または希釈することによって調製してもよい。
【0028】
冷凍魚卵処理用水溶液のpHは5.0〜6.8であればよく、pH5.5〜6.5が好ましく、pH5.8〜6.3がより好ましい。通常、本発明の冷凍魚卵用処理剤を水に溶解および/または希釈して冷凍魚卵処理用水溶液とすると、該水溶液のpHは5.0〜6.8の範囲となるが、冷凍魚卵処理用水溶液のpHは、食品添加物に指定されている有機酸、有機酸塩、リン酸、リン酸塩等のpH調整剤によって調整してもよい。冷凍魚卵処理用水溶液のpHが5.0未満の場合、魚卵の歩留りや弾力が低下する傾向があり、6.8を超える場合、保存効果が低下する傾向がある。
【0029】
また、冷凍魚卵を浸漬する際の冷凍魚卵処理用水溶液の液温は、5〜25℃が好ましく、8〜22℃がより好ましく、10〜20℃がさらに好ましい。冷凍魚卵処理用水溶液の温度は、温度調節装置によって一定に保持されることが好ましい。冷凍魚卵処理用水溶液の温度が5℃未満の場合、解凍時間が長時間化することにより、魚卵の歩留りが低下する傾向にあり、25℃を超える場合、解凍後の魚卵の保存性が低下する傾向がある。
【0030】
冷凍魚卵の浸漬時間は特に限定されず、冷凍魚卵処理用水溶液の液温、冷凍魚卵の量、冷凍保管時の温度等に応じて適宜定めればよい。例えば、液温15℃の冷凍魚卵処理用水溶液において、マイナス20℃で保管された冷凍魚卵約500gを浸漬する場合、0.5〜1.5時間程度浸漬すればよい。
【0031】
本発明の冷凍魚卵処理用水溶液および冷凍魚卵の処理方法によって処理可能な冷凍魚卵は、特に限定されないが、冷凍筋子、冷凍イクラ、冷凍タラコ等が挙げられる。その中でも、本発明の冷凍魚卵処理用水溶液および冷凍魚卵の処理方法は、解凍後の歩留りの低下、弾力の低下および色調の劣化が激しい冷凍筋子や冷凍イクラの処理に特に適する。
【0032】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0033】
実施例1〜4および比較例1〜8
冷凍魚卵用処理剤の製造および冷凍魚卵処理用水溶液の調製
表1に示す組成の冷凍魚卵用処理剤を、各成分を混合することによって調製した。さらに、当該調製した冷凍魚卵用処理剤を水に溶解させ、表2に示す組成の冷凍魚卵処理用水溶液を得た。比較例8の処理剤については、ピロリン酸カルシウムが水に溶解せず、目的の冷凍魚卵処理用水溶液が得られなかった。

【表1】


【表2】

【0034】
冷凍筋子の解凍および歩留りの測定
表2に示す組成の冷凍魚卵処理用水溶液を各9L調製し、20℃に設定した恒温槽に入れ、循環流動させた。次に、マイナス20℃で保管された冷凍筋子を適当な大きさに切り、恒温槽内の冷凍魚卵処理用水溶液中に浸漬し、解凍した(解凍時間約1時間)。解凍後の筋子を10℃の冷蔵庫内で保存し、24時間後の重量(解凍後筋子重量)を測定し、下記計算式により、歩留りを算出した。

歩留り(%)=(解凍後筋子重量)/(解凍前筋子重量)×100
【0035】
結果:解凍後の筋子についての歩留りを表3に示す。本発明の冷凍魚卵処理用水溶液で処理した筋子は、比較例1〜7の水溶液で処理した筋子よりも歩留りが高かった。

【表3】

【0036】
筋子の弾力強度および色調の測定
方法:上記解凍試験で得られた解凍後の筋子をレオメーター(NRM−2002J、株式会社レオテック製)を用いて弾力強度を測定した。測定にはφ5mmの平板プランジャーを用い、プランジャーを検体に接触した後、テーブルを10mm上昇した際の荷重を荷重レンジ0−200gの条件で測定した。また、解凍後の筋子の赤み(a値)を測色色差計(Color Meter ZE2000:日本電色工業株式会社製)にて測定した。
【0037】
結果:解凍後の筋子についての弾力強度および色調の測定結果を表3に示す。本発明の冷凍魚卵処理用水溶液で処理した筋子は適度な弾力があり、冷凍変性による軟化が抑制されていた。また、本発明の冷凍魚卵処理用水溶液で処理した筋子は、色差計において赤みを示すa値が比較例1〜7の水溶液で処理した筋子に比べて高く、鮮紅色を呈していた。
【0038】
筋子の保存試験
方法:上記解凍試験と同様の方法で解凍した筋子を約10gに切り分け、滅菌処理済みの細菌検査用ポリ袋に入れて密封した後、10℃の恒温器内で保存し、24時間後の大腸菌群(使用培地:デソキシコレート寒天培地)の菌数を計測した。
【0039】
結果:大腸菌群の計数結果を表3に示す。本発明の冷凍魚卵処理用水溶液で処理した筋子は、比較例1〜7の水溶液で処理した筋子に比べて大腸菌群の増殖が抑制されていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クエン酸三ナトリウムおよび酸性ピロリン酸ナトリウムを含有する冷凍魚卵用処理剤。
【請求項2】
クエン酸三ナトリウム100重量部に対し、酸性ピロリン酸ナトリウム40〜100重量部を含有する請求項1記載の冷凍魚卵用処理剤。
【請求項3】
さらにグルコン酸ナトリウムを含有する請求項1または2記載の冷凍魚卵用処理剤。
【請求項4】
グルコン酸ナトリウムの割合が、クエン酸三ナトリウム100重量部に対し、1〜40重量部である請求項3記載の冷凍魚卵用処理剤。
【請求項5】
クエン酸三ナトリウムを0.05〜1.5重量%および酸性ピロリン酸ナトリウムを0.02〜1.5重量%含有し、且つpHが5.0〜6.8である冷凍魚卵処理用水溶液。
【請求項6】
請求項5に記載の冷凍魚卵処理用水溶液に冷凍魚卵を浸漬することを特徴とする冷凍魚卵の処理方法。