説明

冷却システムとその制御方法

【課題】部分負荷運転であっても冷却対象を好適に冷却できる冷却システムとその制御方法を提供することを課題とする。
【解決手段】冷媒CLが気化して高温排気AHを冷却する蒸発器21a、21bと、蒸発器21a、21bに供給される冷媒CLの流量を調節する冷媒流量制御バルブ26a、26bと、冷媒CLを冷水で冷却して凝縮する凝縮器10と、凝縮器10に供給される冷水の流量を調節する三方弁14を備え、凝縮した冷媒CLを加圧して蒸発器21a、21bに供給する冷却システム1とする。そして、三方弁14は、凝縮した冷媒CLの温度が冷媒液目標温度となるように凝縮器10に供給される冷水の流量を調節し、冷媒流量制御バルブ26a、26bは、高温排気AHが蒸発器21a、21bで冷却された低温空気ALの温度が冷却目標温度となるように蒸発器21a、21bに供給される冷媒CLの流量を調節することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒を循環して冷却対象を冷却する冷却システムとその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、潜熱輸送による熱搬送効率の向上や、冷水を循環させることなく冷却対象を冷却することを目的として、1次側に備わる凝縮器で冷水と冷媒を熱交換して冷媒を凝縮し、凝縮した冷媒を2次側に備わる蒸発器に供給して冷却対象(空気等)と熱交換させて冷却対象を冷却する冷却システムが採用される。このような冷却システムでは、蒸発器で気化(蒸発)する冷媒の気化熱を利用して冷却対象(空気)を冷却するため、蒸発器に流入する冷媒の流量を所定量に調節すること、蒸発器における蒸発圧力を所定値以下に維持すること、が要求される。
【0003】
このような冷却システムの技術として、例えば特許文献1に記載される技術が開示されている。特許文献1に開示される技術では、蒸発器の近傍に冷媒の流量を調節する流量調節用バルブを備え、負荷の変動に応じて冷媒の流量を調節することによって、蒸発器に流入する冷媒の流量を好適に維持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−514121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される技術では、部分負荷運転時に冷媒の循環量が減少すると系内の冷媒圧力が低下して蒸発器における冷媒の蒸発温度が低下し、冷却対象(空気)が過剰に冷却される場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、部分負荷運転であっても冷却対象を好適に冷却できる冷却システムとその制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明は、冷却対象との熱交換によって冷媒を気化するとともに当該冷却対象を冷却する1つ以上の蒸発器と、前記蒸発器に供給される前記冷媒の流量を前記蒸発器ごとに調節する冷媒供給量調節装置と、前記冷媒との熱交換で冷却された前記冷却対象の温度を前記蒸発器ごとに計測する冷却後温度計測装置と、前記蒸発器で気化した前記冷媒を冷水との熱交換で冷却して凝縮する凝縮器と、前記凝縮器で凝縮した前記冷媒の温度を計測する冷媒温度計測装置と、前記凝縮器に供給される前記冷水の流量を調節する冷水流量調節装置と、を備え、前記凝縮器で凝縮した前記冷媒を加圧して全ての前記蒸発器に供給する冷却システムとその制御方法とする。そして、前記冷水流量調節装置は、凝縮した前記冷媒の温度が所定の冷媒液目標温度となるように前記凝縮器に供給される前記冷水の流量を調節し、前記冷媒供給量調節装置は、冷却された前記冷却対象の前記蒸発器ごとの温度が所定の冷却目標温度となるように、前記蒸発器のそれぞれに供給される前記冷媒の流量を当該蒸発器ごとに調節すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、部分負荷運転であっても冷却対象を好適に冷却できる冷却システムとその制御方法を提供できる。そして、部分負荷運転のときの過剰な冷却運転を抑制でき、負荷に応じた省エネルギ性の高い冷却システムとその制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る冷却システムの構成例を示す図である。
【図2】データセンタに露点温度計が備わる構成を示す図である。
【図3】(a)は差圧計が備わる構成を示す図、(b)は出側圧力計と凝縮器冷媒液温度センサからなる圧力差計測装置を備える構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。
本実施形態に係る冷却システム1は、図1に示すように、冷媒CLが循環して冷却対象を予め設定される目標温度(冷却目標温度)まで冷却する構成であり、冷媒CLが冷却されて凝縮する1次側1aと、冷媒CLが冷却対象の熱を奪って気化(蒸発)する2次側1bと、を含んでなる。
以下、必要に応じて、気化したガス状の冷媒CLを冷媒ガスCL(G)、液化した液体状の冷媒CLを冷媒液CL(L)とする。
【0011】
2次側1bは、冷媒液CL(L)が気化するときの気化熱で冷却対象を冷却する系であり、本実施形態においては、データセンタ80に配置される複数のサーバ(図示せず)が排気する高温排気AHを冷却対象とする。
データセンタ80には、複数のサーバが排気する高温排気AHを冷却するため、複数の冷却装置(図1には2つの冷却装置20a、20bを図示)が備わる。
以下、2つの冷却装置20a、20bが備わる構成を例として説明するが、3つ以上の冷却装置が備わる場合は、全ての冷却装置が同等の構成および機能を有するものとする。
なお、冷却システム1がデータセンタ80に備わる構成は一例に過ぎず、本実施形態に係る冷却システム1は、空気等の冷却対象を冷却する箇所に適宜組み込み可能である。
【0012】
1次側1aに備わる凝縮器10で凝縮した冷媒液CL(L)は冷媒ポンプ17によって送り出され、冷媒液管Cplを流通して冷却装置20aに備わる蒸発器21aおよび冷却装置20bに備わる蒸発器21bに供給される。蒸発器21a、21bには供給された冷媒液CL(L)が流通する細管が配管され、その細管の周囲をデータセンタ80の高温排気AHが流れるときに冷媒液CL(L)と熱交換するように構成される。蒸発器21a、21bでは冷媒液CL(L)が冷媒ガスCL(G)に気化するときの気化熱によって高温排気AHが冷却され低温空気ALとなる。
なお、冷却装置20a、20bには、高温排気AHを効率よく蒸発器21a、21bに流通させるための送風機22a、22bが備わっていてもよい。
【0013】
また、冷却装置20a、20bには、高温排気AHが蒸発器21a、21bで冷却された低温空気ALの温度を計測する蒸発器出口空気温度センサ25a、25b(冷却後温度計測装置)と、蒸発器21a、21bに供給される冷媒液CL(L)の流量を調節する冷媒流量制御バルブ26a、26bと、冷媒流量制御バルブ26a、26bを制御する冷媒流量制御装置23a、23bと、が備わっている。そして、本実施形態においては、冷媒流量制御バルブ26a、26bと冷媒流量制御装置23a、23bで冷媒供給量調節装置を構成する。
以上のように冷却システム1の2次側1bは構成される。
【0014】
1次側1aは、冷熱源12で冷却された冷水と、2次側1bで気化した冷媒ガスCL(G)と、が凝縮器10で熱交換して冷媒ガスCL(G)が凝縮するように構成される。
【0015】
冷熱源12で冷却された冷水は、冷水ポンプ13によって、凝縮器10を通るように配管される冷水管Wpを流通し、2次側1bから冷媒ガス管Cpgを流通して送り込まれる相対的に高温の冷媒ガスCL(G)と凝縮器10で熱交換して温度が上昇した後に冷熱源12に戻って冷却される。
なお、冷水管Wpには、凝縮器10内の配管と並列に配管されるバイパス管Wpaが備わり、三方弁14によって、凝縮器10内を流通する冷水とバイパス管Wpaを流通する冷水の流量比が調節されるように構成される。
三方弁14は、バイパス管Wpaを流通する冷水の流通量と、凝縮器10内の配管を流通する冷水の流通量と、の流量比を調節可能な流量調節弁であって、冷媒温度制御装置15で制御される構成が好ましい。
三方弁14は、バイパス管Wpaを流通する冷水の流通量と、凝縮器10内の配管を流通する冷水の流通量と、の流量比を調節することによって凝縮器10に供給される冷水の流量を調節することができる。そして、本実施形態においては、三方弁14と冷媒温度制御装置15とで冷水流量調節装置を構成する。
また、冷熱源12は限定するものではなく、冷水を冷却可能な冷凍機等であればよい。
【0016】
2次側1bで気化した冷媒ガスCL(G)は、冷媒ガス管Cpgを流通して1次側1aに送り込まれ、凝縮器10で冷水と熱交換して冷却されて凝縮し液体状の冷媒液CL(L)となる。凝縮器10で凝縮した冷媒液CL(L)は、冷媒液タンク16に貯留された後、冷媒ポンプ17で加圧され冷媒液管Cplを流通して2次側1bに送り込まれる。冷媒ポンプ17は、回転周波数(回転速度)を容易に変更可能な構成であることが好ましく、例えば、インバータ制御される構成であることが好ましい。この構成によって、冷媒液管Cplを流通する冷媒液CL(L)の流量を容易に調節できる。
【0017】
なお、凝縮器10で凝縮した冷媒液CL(L)の温度は、凝縮器10と冷媒液タンク16の間に備わる冷媒温度計測装置(凝縮器冷媒液温度センサ11)で計測され、その計測値が冷媒温度制御装置15に入力される。
冷媒温度制御装置15は凝縮器冷媒液温度センサ11の計測値(冷媒液CL(L)の温度)が予め設定される目標温度(冷媒液目標温度)となるように凝縮器10に供給される冷水の流量を調節する。
具体的に冷媒温度制御装置15は、凝縮器冷媒液温度センサ11の計測値が冷媒液目標温度より低い場合は凝縮器10に供給される冷水の流量が減少するように三方弁14を制御し、凝縮器冷媒液温度センサ11の計測値が冷媒液目標温度より高い場合は凝縮器10に供給される冷水の流量が増えるように三方弁14を制御して、凝縮器10に供給される冷水の流量を調節する。
【0018】
このように構成される1次側1aと2次側1bを含んでなる本実施形態の冷却システム1は、定格運転によって所定温度(高温側温度)の高温排気AHから予め設定される目標温度(冷却目標温度)の低温空気ALを得られるように構成される。例えば、冷水ポンプ13、冷媒ポンプ17が定格運転するときに、高温側温度40℃の高温排気AHを冷却目標温度25℃まで下げて低温空気ALを得るように構成される。
なお、この場合、冷媒液CL(L)の蒸発温度は、低温空気ALの冷却目標温度25℃より低い温度(例えば、23℃)であることが好ましい。
また、凝縮器10で凝縮される冷媒液CL(L)は、前記した蒸発温度となる圧力を生じるように適宜設定される冷媒液目標温度に維持されることが好ましい。
【0019】
データセンタ80における高温排気AHは、前記のとおりサーバ(図示せず)の排気であって、周囲温度やサーバの運転状態によって高温排気AHの温度は変化する。そして、40℃の高温排気AHを25℃まで下げるように定格運転される冷却システム1では、高温排気AHの温度が変化すると低温空気ALの温度が冷却目標温度(例えば、25℃)にならない場合がある。
例えば、高温排気AHの温度が所定の高温側温度より低くなると、蒸発器21a、21bにおける冷媒液CL(L)の蒸発温度が変わらない場合は高温排気AHが過剰に冷却され、低温空気ALの温度が冷却目標温度よりも低くなる。
【0020】
そこで、2次側1bの冷媒流量制御装置23a、23bは、蒸発器出口空気温度センサ25a、25bが計測する低温空気ALの温度が冷却目標温度となるように冷媒流量制御バルブ26a、26bを制御して、蒸発器21a、21bに供給される冷媒液CL(L)の流入量を調節する。
【0021】
蒸発器21a、21bでは冷媒液CL(L)が気化するときの気化熱で高温排気AHを冷却して低温空気ALを得る。したがって、例えば、低温空気ALの温度が冷却目標温度より高い場合は、蒸発器21a、21bにおける冷媒液CL(L)の気化熱が増えること(つまり、蒸発量が増えること)が好ましい。
蒸発器21a、21bでは冷媒液CL(L)の圧力が低いほど蒸発温度が低下して蒸発量が増える。蒸発器21a、21bにおける冷媒液CL(L)の圧力は、2次側1bに冷媒液CL(L)が送り込まれるときの圧力(例えば、冷媒ポンプ17の吐出圧力)であるが、冷媒流量制御バルブ26a、26bで蒸発器21a、21bに供給される冷媒液CL(L)の流入量を減らすことによって蒸発器21a、21bにおける冷媒液CL(L)の圧力を下げることができる。
【0022】
そこで、冷媒流量制御装置23a、23bは、蒸発器出口空気温度センサ25a、25bの計測値が冷却目標温度(例えば25℃)より高い場合は、冷媒流量制御バルブ26a、26bを制御して蒸発器21a、21bに供給される冷媒液CL(L)の流入量を減らし、蒸発器21a、21bにおける冷媒液CL(L)の圧力を下げる。一方、蒸発器出口空気温度センサ25a、25bの計測値が冷却目標温度より低い場合、冷媒流量制御装置23a、23bは、冷媒流量制御バルブ26a、26bを制御して蒸発器21a、21bに供給される冷媒液CL(L)の流入量を増やし、蒸発器21a、21bにおける冷媒液CL(L)の圧力を上げる。
【0023】
例えば、蒸発器出口空気温度センサ25a、25bの計測値と冷却目標温度の温度差をそれぞれ冷媒流量制御装置23a、23bにフィードバックし、冷媒流量制御装置23a、23bはフィードバックされた温度差が「0」になるようにそれぞれの冷媒流量制御バルブ26a、26bの開度を調節する構成とすればよい。例えば、蒸発器出口空気温度センサ25a、25bの計測値が冷却目標温度より高い場合、冷媒流量制御装置23a、23bは冷媒流量制御バルブ26a、26bを制御して蒸発器21a、21bに供給される冷媒液CL(L)の流量を減少(冷媒液CL(L)の圧力を減圧)させる。一方、蒸発器出口空気温度センサ25a、25bの計測値が冷却目標温度より低い場合、冷媒流量制御装置23a、23bは冷媒流量制御バルブ26a、26bを制御して蒸発器21a、21bに供給される冷媒液CL(L)の流量を増大(冷媒液CL(L)の圧力を増圧)させる。
【0024】
または、蒸発器出口空気温度センサ25a、25bの計測値と冷却目標温度の温度差に対応する好適な冷媒流量制御バルブ26a、26bの開度調節量が予め実験計測等で求められ、その結果がマップ形式のデータとして図示しない記憶部に記憶される構成であってもよい。この構成の場合、冷媒流量制御装置23a、23bは、蒸発器出口空気温度センサ25a、25bの計測値と冷却目標温度の温度差に基づいて当該マップ形式のデータを参照し、冷媒流量制御バルブ26a、26bの開度調節量を設定できる。そして、冷媒流量制御装置23a、23bが、設定した開度調節量に基づいて冷媒流量制御バルブ26a、26bを制御する構成とすればよい。
【0025】
以上のように、本実施形態に係る冷却システム1は、1次側1aで凝縮される冷媒液CL(L)の温度が所定の冷媒液目標温度となるように、凝縮器10に供給される冷水の流量を調節する。さらに、低温空気ALの温度が蒸発器21a、21bごとに所定の冷却目標温度となるように、2次側1bの蒸発器21a、21bにおける冷媒液CL(L)の圧力を調節する。具体的に冷媒流量制御装置23a、23bは、低温空気ALの温度が蒸発器21a、21bごとに冷却目標温度となるように冷媒流量制御バルブ26a、26bを制御して、蒸発器21a、21bに供給される冷媒液CL(L)の流量を調節する。
【0026】
この構成によると、高温排気AHの温度が所定の高温側温度より下がって2次側1bにおける冷却負荷が下がり冷却システム1が部分負荷運転の状態になっても、冷媒ポンプ17を定格運転した状態で、蒸発器21a、21bで冷却される低温空気ALの温度を所定の冷却目標温度に維持できる。また、蒸発器21a、21bに供給される冷媒液CL(L)の流入量が減少して冷媒液CL(L)の圧力が減圧することを防止でき、高温排気AHが過剰に冷却されることを防止できる。
また、蒸発器出口空気温度センサ25a、25bが計測する低温空気ALの温度変化のみに基づいた冷媒流量制御バルブ26a、26bの開度調節のみで、低温空気ALの温度を所定の冷却目標温度に維持できるため制御ロジックを単純化することができ、冷却システム1のシステム構築を簡素化できる。
【0027】
なお、図1に示す冷却システム1は、凝縮器10で凝縮された冷媒液CL(L)を冷媒ポンプ17で加圧して2次側1bに送り込む構成としたが、1次側1aと2次側1bの高低差および液体状の冷媒液CL(L)とガス状の冷媒ガスCL(G)の密度の差によって冷媒LCが自然に循環するように構成される冷媒自然循環式(フリークーリング)の冷却システムに本実施形態を適用することも可能である。
【0028】
冷媒自然循環式の場合、密度の小さい冷媒ガスCL(G)が冷媒ガス管Cpg内を上昇して1次側1aに送り込まれるとともに密度の大きい冷媒液CL(L)が冷媒液管Cplを下降(自然落下)して2次側1bに送り込まれるように、1次側1aを2次側1bよりも上方に配置することが必要となる。このように構成すると、凝縮器10で凝縮された冷媒液CL(L)は、1次側1aと2次側1bの高低差で冷媒液管Cpl内を自然落下して加圧され2次側1bに送り込まれる。その後、冷媒流量制御バルブ26a、26bによって、蒸発器21a、21bに供給される冷媒液CL(L)の流量、つまり、蒸発器21a、21bにおける冷媒液CL(L)の圧力が調節されるように構成されることが好ましい。このような構成とすることによって、冷媒自然循環式の冷却システムに本実施形態を適用できる。
【0029】
また、図2に示すように、データセンタ80に露点温度計測装置(露点温度計90)を備えてデータセンタ80内の露点温度、つまり、蒸発器21a、21bが配置される周囲環境の露点温度を計測し、その計測値を冷媒温度制御装置15に入力する構成としてもよい。さらに、冷媒温度制御装置15は、冷媒液目標温度がデータセンタ80内の露点温度より低い場合に、凝縮器冷媒液温度センサ11が計測する冷媒液CL(L)の温度がデータセンタ80の露点温度より高くなるように三方弁14を調節すれば、2次側1bに送り込まれる冷媒液CL(L)の温度をデータセンタ80内の空気の露点温度より高くできる。したがって、冷却装置20a、20bでの結露を防止でき、結露で発生した水滴によって、データセンタ80に収納されるサーバ(図示せず)に不具合が発生することを防止できる。
【0030】
具体的に、凝縮器10で凝縮された冷媒液CL(L)が冷媒液目標温度に維持されている場合に、データセンタ80の露点温度が冷媒液目標温度より低いとき、冷媒温度制御装置15は三方弁14を制御して凝縮器10に供給される冷水の流量比を下げ、凝縮器10で凝縮する冷媒液CL(L)の温度を上昇させる。このような構成によって、蒸発器21a、21b(図1参照)に供給される冷媒液CL(L)の温度をデータセンタ80の露点温度より高くすることができ、蒸発器21a、21bでの結露を防止できる。
【0031】
また、冷媒ポンプ17の吸い込み側と吐出側における冷媒液CL(L)の圧力差に応じて冷媒ポンプ17の回転周波数(回転速度)が調節される構成であってもよい。
例えば、図3の(a)に示すように、冷媒ポンプ17の吸い込み側17iの圧力と吐出側17oの圧力との圧力差ΔPpを検出する圧力差計測装置(差圧計17a)が備わり、さらに、冷媒ポンプ17の回転速度を調節する冷媒ポンプ制御装置17bが備わる構成とする。
そして、冷媒ポンプ制御装置17bは、差圧計17aの計測値(圧力差ΔPp)が所定の差圧設定値(例えば、0.1MPa)となるように冷媒ポンプ17の回転周波数を調節する。
【0032】
例えば、図3の(a)に示すように、冷却システム1に、冷熱源12で冷却された冷水を一時的に貯留するバッファタンク12aが備わる構成の場合、冷熱源12が故障するなどして冷水を冷却できない状態であっても、2次側1bで気化した冷媒ガスCL(G)をバッファタンク12aに貯留される冷水で冷却できる。しかしながら、冷熱源12で冷却されない冷水は温度が上昇し、冷水の温度上昇にともなって1次側1aで凝縮される冷媒液CL(L)の温度も上昇する。つまり、冷水の温度が高くなると三方弁14による流量の調節範囲では冷媒液CL(L)の温度を冷媒液目標温度に維持できず、冷媒液CL(L)の温度が冷媒液目標温度より高くなる場合がある。このように、冷媒液CL(L)の温度が高くなると、それにともなって冷媒液管Cpl内の圧力が高くなる。
【0033】
この場合、冷媒ポンプ17の吐出側17oの圧力が一定であると、冷媒液管Cpl内の圧力が高くなった分だけ冷媒ポンプ17の押し出し力が弱まることになり、例えば、2次側1bが1次側1aよりも上方に配置される場合には、1次側1aで凝縮した冷媒液CL(L)を安定して2次側1bに送り込めない状態となる。ひいては、2次側1bで高温排気AH(図1参照)を好適に冷却できない状態となる。
これに対し、冷媒ポンプ17の吸い込み側17iと吐出側17oの圧力差ΔPpが一定であると、冷媒液管Cpl内の圧力が変動しても冷媒ポンプ17の押し出し力は変わらず、2次側1bに冷媒液CL(L)を安定して送り込むことができる。したがって、2次側1bで高温排気AHを好適に冷却できる。
【0034】
このように、冷媒ポンプ17の吸い込み側17iと吐出側17oの圧力差ΔPpが所定の差圧設定値になるように冷媒ポンプ17の回転周波数を制御することによって、冷水の温度上昇にともなって冷媒液CL(L)の温度が高くなる場合であっても、2次側1bで高温排気AH(図1参照)を好適に冷却できる。
なお、冷媒ポンプ17の吸い込み側17iと吐出側17oの圧力差ΔPpとして維持する差圧設定値は、実験計測等によって、蒸発器21a、21b(図1参照)において好適に高温排気AHを冷却できる値が予め設定されていることが好ましい。
【0035】
また、このように、冷媒ポンプ17の吸い込み側17iと吐出側17oの圧力差ΔPpが所定の差圧設定値になるように冷媒ポンプ17の回転周波数が制御される場合、商用電源の失陥時にデータセンタ80(図1参照)のサーバ(図示せず)を駆動するUPS(無停電電源装置)がバックアップ電源として備わる構成であれば、冷却システム1の電源となる商用電源が失陥した場合にも2次側1bで高温排気AH(図1参照)を好適に冷却できる。例えば、UPSを電源として冷水ポンプ13、冷媒ポンプ17、冷媒温度制御装置15、三方弁14、冷媒流量制御バルブ26a、26b(図1参照)および冷媒流量制御装置23a、23b(図1参照)が駆動可能な構成であれば、バッファタンク12aに貯留する冷水で冷媒ガスCL(G)を凝縮することによって電力消費量の大きな冷熱源12を駆動することなく高温排気AHを冷却できる。
この場合も冷熱源12が駆動しないため冷媒液CL(L)の温度は上昇するが、冷媒ポンプ17によって、2次側1bに冷媒液CL(L)を安定して送り込むことができる。したがって、2次側1bで高温排気AHを好適に冷却できる。
【0036】
また、図3の(b)に示すように、冷媒ポンプ17の吸い込み側17iより凝縮器10側に凝縮器冷媒液温度センサ11を備えることによって、凝縮器10で凝縮された冷媒液CL(L)の温度を吸い込み側17iで計測可能になる。そこで、凝縮器冷媒液温度センサ11の計測値を冷媒ポンプ制御装置17bに入力する構成とする。さらに、冷媒ポンプ17の吐出側17oの圧力を計測する圧力計(出側圧力計17c)を備え、その計測値を冷媒ポンプ制御装置17bに入力する構成とする。この構成によると、凝縮器冷媒液温度センサ11と出側圧力計17cとで圧力差計測装置が構成される。
【0037】
冷媒ポンプ制御装置17bは凝縮器冷媒液温度センサ11から入力される計測値に基づいて冷媒液CL(L)の温度を演算し、さらに、その温度に相当する圧力を演算(推定)する。冷媒液CL(L)の温度と圧力の間には、例えばモリエル線図で示される相関関係があり、冷媒ポンプ制御装置17bは冷媒液CL(L)の温度に基づいて容易に吸い込み側17iにおける冷媒液CL(L)の圧力を演算(推定)できる。
【0038】
そして、冷媒ポンプ制御装置17bは、冷媒液CL(L)の温度に基づいて演算(推定)した圧力を吸い込み側17iの圧力とし、さらに、演算(推定)した吸い込み側17iの圧力に、所定の差圧設定値を加算した圧力を吐出側17oの圧力とする。
冷媒ポンプ制御装置17bは、演算した吐出側17oの圧力(吸い込み側17iの圧力に差圧設定値を加算した圧力)と、出側圧力計17cの計測値の偏差が「0」となるように冷媒ポンプ17の回転周波数を調節することによって冷媒ポンプ17の吸い込み側17iと吐出側17oの圧力差ΔPpを所定の差圧設定値に維持できる。
【0039】
なお、冷却システム1をこのように構成すると、凝縮器冷媒液温度センサ11の計測値が一定の場合、すなわち、冷媒液CL(L)の温度が一定の場合、冷媒ポンプ制御装置17bは出側圧力計17cの計測値が一定になるように冷媒ポンプ17の回転周波数を調節すれば、吸い込み側17iと吐出側17oの圧力差ΔPpを所定の差圧設定値に維持できる。
【0040】
また、冷媒ポンプ17(図3の(b)参照)の吐出側17oの圧力を計測する出側圧力計17c(図3の(b)参照)と、吸い込み側17iの圧力を計測する圧力計(入側圧力計(図示せず))と、からなる圧力差計測装置が備わる構成であってもよい。このように冷却システム1が構成される場合、冷媒ポンプ制御装置17bは、出側圧力計17cの計測値と入側圧力計の計測値の差から冷媒ポンプ17の吸い込み側17iと吐出側17oの圧力差ΔPpを演算できる。そして、冷媒ポンプ制御装置17bは、演算した圧力差ΔPpが所定の差圧設定値になるように冷媒ポンプ17の回転周波数を調節できる。
【0041】
以上のように、本実施形態に係る冷却システム1(図1参照)は、1次側1a(図1参照)で凝縮される冷媒液CL(L)の温度を所定の冷媒液目標温度に維持するとともに、2次側1bの蒸発器21a、21b(図1参照)で冷却される低温空気ALの温度が所定の冷却目標温度を維持するように、蒸発器21a、21bに供給される冷媒液CL(L)の流量(蒸発器21a、21bにおける冷媒液CL(L)の圧力)を調節する。この構成によって、冷却システム1が部分負荷運転の状態になったときにも冷媒ポンプ17(図1参照)の回転周波数を制御することなく、2次側1b(図1参照)における低温空気AL(図1参照)の温度を、要求される冷却目標温度に維持できる。
【0042】
また、2次側1b(図2参照)に、冷却装置20a、20b(図1参照)が配置されるデータセンタ80(図2参照)の露点温度を検出する露点温度計90(図2参照)が備わる場合、1次側1a(図2参照)で生成される冷媒液CL(L)の温度をデータセンタ80の露点温度より高くすることによって、冷却装置20a、20b(蒸発器21a、21b(図1参照))における結露の発生を防止できる。
【0043】
また、本実施形態に係る冷却システム1(図3の(a)参照)は、冷媒ポンプ17(図3の(a)参照)の吸い込み側17iと吐出側17oの圧力差ΔPpが一定になるように(圧力差ΔPpが所定の差圧設定値となるように)冷媒ポンプ17の回転周波数を調節できる。したがって、例えば冷熱源12(図3の(a)参照)の不具合などによって冷媒液CL(L)の温度が高くなった場合であっても、冷媒ポンプ17による押し出し力を好適に維持することができ、蒸発器21a、21bにおいて高温排気AH(図1参照)を好適に冷却できる。
【符号の説明】
【0044】
1 冷却システム
1a 1次側
1b 2次側
10 凝縮器
11 凝縮器冷媒液温度センサ(冷媒温度計測装置、圧力差計測装置)
14 三方弁(冷水流量調節装置)
15 冷媒温度制御装置(冷水流量調節装置)
17 冷媒ポンプ
17a 差圧計(圧力差計測装置)
17b 冷媒ポンプ制御装置
17c 出側圧力計(圧力差計測装置)
17i 吸い込み側
17o 吐出側
21a、21b 蒸発器
23a、23b 冷媒流量制御装置(冷媒供給量調節装置)
25a、25b 蒸発器出口空気温度センサ(冷却後温度計測装置)
26a、26b 冷媒流量制御バルブ(冷媒供給量調節装置)
90 露点温度計(露点温度計測装置)
AH 高温排気(冷却対象)
CL 冷媒
Cpg 冷媒ガス管
Cpl 冷媒液管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象との熱交換によって冷媒を気化するとともに当該冷却対象を冷却する1つ以上の蒸発器と、
前記蒸発器に供給される前記冷媒の流量を前記蒸発器ごとに調節する冷媒供給量調節装置と、
前記冷媒との熱交換で冷却された前記冷却対象の温度を前記蒸発器ごとに計測する冷却後温度計測装置と、
前記蒸発器で気化した前記冷媒を冷水との熱交換で冷却して凝縮する凝縮器と、
前記凝縮器で凝縮した前記冷媒の温度を計測する冷媒温度計測装置と、
前記凝縮器に供給される前記冷水の流量を調節する冷水流量調節装置と、を備え、
前記凝縮器で凝縮した前記冷媒を加圧して全ての前記蒸発器に供給する冷却システムであって、
前記冷水流量調節装置は、
凝縮した前記冷媒の温度が所定の冷媒液目標温度となるように前記凝縮器に供給される前記冷水の流量を調節し、
前記冷媒供給量調節装置は、
冷却された前記冷却対象の前記蒸発器ごとの温度が所定の冷却目標温度となるように、前記蒸発器のそれぞれに供給される前記冷媒の流量を当該蒸発器ごとに調節すること、を特徴とする冷却システム。
【請求項2】
前記蒸発器が配置される周囲環境の露点温度を計測する露点温度計測装置がさらに備わり、
前記冷媒液目標温度が、前記露点温度計測装置が計測する前記露点温度より低い場合、
前記冷水流量調節装置は、凝縮した前記冷媒の温度が前記露点温度以上となるように前記凝縮器に供給される前記冷水の流量を調節することを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記凝縮器で凝縮した前記冷媒を加圧して前記蒸発器に供給する冷媒ポンプと、
前記冷媒ポンプの吸い込み側と吐出側の圧力差を計測する圧力差計測装置と、
前記圧力差計測装置の計測値に基づいて演算する前記圧力差が所定の差圧設定値となるように前記冷媒ポンプの回転周波数を調節する冷媒ポンプ制御装置と、を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷却システム。
【請求項4】
前記圧力差計測装置は、前記冷媒ポンプの吐出側における前記冷媒の圧力を計測する出側圧力計と、前記冷媒ポンプの吸い込み側に備わる前記冷媒温度計測装置と、を含んで構成され、
前記冷媒ポンプ制御装置は、前記冷媒温度計測装置の計測値に基づいて演算する前記冷媒ポンプの吸い込み側における前記冷媒の圧力と、前記出側圧力計の計測値に基づいて演算する前記冷媒ポンプの吐出側における前記冷媒の圧力と、の差を前記圧力差とすることを特徴とする請求項3に記載の冷却システム。
【請求項5】
前記凝縮器を含んでなる1次側が、前記蒸発器を含んでなる2次側より上方に配置され、前記1次側で凝縮した前記冷媒を前記2次側に送り込む冷媒液管内で、前記凝縮器で凝縮した前記冷媒を自然落下させて加圧して、凝縮した前記冷媒を前記蒸発器に供給する構成の冷媒自然循環式であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷却システム。
【請求項6】
冷却対象との熱交換によって冷媒を気化するとともに当該冷却対象を冷却する1つ以上の蒸発器と、
前記蒸発器に供給される前記冷媒の流量を前記蒸発器ごとに調節する冷媒供給量調節装置と、
前記冷媒との熱交換で冷却された前記冷却対象の温度を前記蒸発器ごとに計測する冷却後温度計測装置と、
前記蒸発器で気化した前記冷媒を冷水との熱交換で冷却して凝縮する凝縮器と、
前記凝縮器で凝縮した前記冷媒の温度を計測する冷媒温度計測装置と、
前記凝縮器に供給される前記冷水の流量を調節する冷水流量調節装置と、を備え、
前記凝縮器で凝縮した前記冷媒を加圧して全ての前記蒸発器に供給する冷却システムを制御する制御方法であって、
凝縮した前記冷媒の温度が所定の冷媒液目標温度となるように、前記冷水流量調節装置で前記凝縮器に供給される前記冷水の流量を調節し、
冷却された前記冷却対象の温度が前記蒸発器ごとに所定の冷却目標温度となるように、前記冷媒供給量調節装置で前記冷媒の流量を当該蒸発器ごとに調節すること、を特徴とする制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−88031(P2013−88031A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229159(P2011−229159)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)