説明

冷却システム

【課題】短期間で設置でき作業員の被曝量を低減可能な外付けの冷却システムを提供する。
【解決手段】原子力発電所の熱交換器の冷媒を冷却する冷却システムであって、前記冷媒を冷却可能とされ第1の台車(台車14)に搭載された冷却塔18と、前記冷媒を送液可能とされ第2の台車(台車14)に搭載された循環ポンプ46と、を有し、前記台車は、車両により前記原子力発電所の敷地に牽引され、前記敷地において、前記冷却塔18と前記循環ポンプ46との間、前記冷却塔18と前記熱交換器との間、前記循環ポンプ46と前記熱交換器との間をそれぞれ配管で接続することにより、前記冷媒を前記熱交換器と前記冷却塔18との間で循環可能とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却システムに関し、特に短期間で設置でき作業員の被曝量を低減可能な外付けの冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所は、耐用年数を過ぎた場合や社会情勢あるいは事故等による事情で解体・撤去が行なわれる。原子力発電所の解体・撤去の手順は通常以下のようになる。まず、稼動している原子炉を停止させ、原子炉内の燃料や使用済み燃料プール内の使用済み燃料を冷却したのち再処理工場や貯蔵施設に搬送する。そして原子力発電所内に配置された配管や容器内に付着した放射性物質を除染(系統除染)する。そして、この状態で、原子力発電所を5年〜10年ほど適切な管理のもとで安全に貯蔵する。その後、建屋内部の配管や容器などの解体作業を行うとともに建屋内部の放射性物質の除去作業を行い、最後に建屋の解体工事を行なう。
【0003】
ここで、原子炉内の燃料は一次冷却水により冷却され、その一次冷却水は熱交換器(水蒸気発生器)を介して二次冷却水により冷却される。このとき、二次冷却水は、タービン建屋を循環する経路ではなく、前述の熱交換器に接続され、二次冷却水を冷却するための冷却手段(例えば冷却塔)を有する他の循環経路を用いて冷却される(特許文献1参照)。また、使用済み燃料は使用済み燃料プール内の冷却水により冷却されその冷却水は熱交換器を用いて冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−107001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、事故により冷却水(冷媒)を循環させるポンプが破損した場合には早急にポンプの修理を行なう必要がある。しかし、ポンプが設置された位置における放射能レベルが高い場合は、作業員の被曝量が大きくなりポンプの修理が困難となるといった問題があった。
そこで本発明は、上記問題点に着目し、短期間で設置でき作業員の被曝量を低減可能な外付けの冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る冷却システムは、第1には、原子力発電所の熱交換器の冷媒を冷却する冷却システムであって、前記冷媒を冷却可能とされ第1の台車に搭載された冷却塔と、前記冷媒を送液可能とされ第2の台車に搭載された循環ポンプと、を有し、前記台車は、車両により前記原子力発電所の敷地に牽引され、前記敷地において、前記冷却塔と前記循環ポンプとの間、前記冷却塔と前記熱交換器との間、前記循環ポンプと前記熱交換器との間をそれぞれ配管で接続することにより、前記冷媒を前記熱交換器と前記冷却塔との間で循環可能とすることを特徴とする。
上記構成により、冷却塔及び循環ポンプを原子力発電所の敷地に迅速に配置するとともに冷媒の循環経路を迅速に形成することができ、作業員の被曝量を軽減することができる。
【0007】
第2には、前記冷却塔は、前記第1の台車に複数搭載され、前記第1の台車には、前記冷却塔がそれぞれ並列に接続され前記熱交換器及び前記循環ポンプにそれぞれ接続可能な一対のマニホールド配管が配置されたことを特徴とする。
上記構成により、台車を配置したのちに接続すべき配管の本数を削減することができるので、配管の設置時間を短縮し、作業員の被曝量を軽減することができる。
【0008】
第3には、前記第1の台車が複数配置され、互いに異なる前記第1の台車に配置された前記マニホールド配管同士が直列に接続可能であることを特徴とする。
上記構成により、熱交換器が必要とする冷却能力に対応して冷却塔の稼動台数を調整することができる。
【0009】
第4には、原子力発電所の熱交換器の冷媒を冷却可能とされ、車両により牽引可能な4つの台車に個別に形成された第1モジュール、第2モジュール、第3モジュール、第4モジュールを有する冷却システムであって、前記第1モジュール、前記第2モジュールは、前記冷媒を冷却可能な冷却コイルと、前記冷媒を前記冷却コイルに導入する導入配管と前記冷媒を冷却コイルに排出する排出配管と、前記冷却コイルの冷媒となる補給水を補給する補給配管と、を有する複数の冷却塔と、前記導入配管を並列に接続する第1のマニホールド配管と、前記排出配管を並列に接続する第2のマニホールド配管と、を備え、前記第3モジュールは、前記冷媒を送液可能な循環ポンプを備え、前記第4モジュールは、前記補給水を供給する補給ポンプと、前記補給水を蓄えるとともに前記補給水を前記補給ポンプに供給する補給水受水槽と、を備え、前記第1モジュール乃至第4モジュールは、前記原子力発電所の敷地まで牽引され、前記第1モジュールの前記第1のマニホールド配管と前記第2モジュールの第1のマニホールド配管との間、前記第1モジュールの前記第2のマニホールド配管と前記第2モジュールの第2のマニホールド配管との間、前記第2モジュールの第1のマニホールド配管と前記循環ポンプの前記冷媒の導入側との間、前記第2のモジュールの第1のマニホールド配管と、前記熱交換器との間、前記第2のモジュールの第2のマニホールド配管と前記循環ポンプの前記冷媒の導入側との間、前記循環ポンプの前記冷媒の送液側と前記熱交換器との間、前記補給ポンプと前記補給配管との間、をそれぞれ配管で接続することにより、前記冷媒を前記熱交換器と前記冷却塔との間で循環可能とするとともに前記冷却塔に前記補給水を供給可能とすることを特徴とする冷却システム。
上記構成により、冷却塔の個数に係らず、各モジュールの配置後の配管の接続本数は一定となるため、配管の設置時間を短縮し、作業員の被曝量を軽減することができる。
【0010】
第5には、前記台車の荷台を前記敷地に立設した複数の支柱により支持したことを特徴とする。
上記構成により、各モジュールの水平を維持することができ、各モジュールに搭載された構成要素を安定的に動作させることができる。
【0011】
第6には、前記敷地には敷鉄板が配置され前記支柱は前記敷鉄板上に固定されたことを特徴とする。
上記構成により、冷却システムを耐震構造にすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る冷却システムによれば、冷却塔及び循環ポンプの配置を迅速に行なうことができるとともに、熱交換器と冷却塔との間の循環経路に接続すべき配管の本数を削減して作業時間を削減し作業員の被曝量を抑制することができる。さらに冷却塔等を敷地に安定的に配置して、地震等の災害に対しても安定的に稼動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の冷却モジュールの模式図である。
【図2】本実施形態の冷却モジュールの配管計装線図である。
【図3】本実施形態の冷却モジュールを構成する冷却塔の模式図である。
【図4】本実施形態の冷却モジュールの設置工程(配置時)を示す図である。
【図5】本実施形態の冷却モジュールの設置工程(支柱取り付け時)を示す図である。
【図6】図5の側面図である。
【図7】本実施形態の冷却モジュールの設置工程(支柱取り付け後)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0015】
図1に、本実施形態の冷却モジュールの模式図を示す。本実施形態の冷却モジュール10は、原子力発電所の敷地に配置される。そして、冷却モジュール10は、原子炉格納容器内の一次冷却水を冷却する熱交換器(不図示)または、使用済み燃料プール用の熱交換器(不図示)に接続し、これらの熱交換器の冷媒を冷却しつつ循環させる。よって前者の熱交換器(不図示)に冷却モジュール10を接続すると、冷却モジュール10においては一次冷却水の冷媒となる二次冷却水が循環することになる。なお、原子炉格納容器内の熱交換器(不図示)は、発電時に用いるタービンとの間で循環する経路とは別の経路を有しており、本実施形態の冷却モジュールはこの経路に接続するものとする。さらに本実施形態の冷却モジュール10を配置する敷地には配電盤(不図示)が配置され、後述の構成要素(循環ポンプ46、補給ポンプ66、冷却塔18)を駆動させる電力が供給されるものとする。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の冷却モジュール10は、第1モジュール12、第2モジュール34、第3モジュール44、第4モジュール64から構成される。各モジュールは、車両100(トレーラー、図4乃至図7)に着脱自在とされ、かつ牽引可能な台車14に後述の各構成要素を搭載したものである。そして第1モジュール12、第2モジュール34は、冷却塔18を配置したモジュールであり、第3モジュール44は冷却水(熱交換器の冷媒)を送液する循環ポンプ46等を配置したモジュールであり、第4モジュール64は冷却塔18等に補給水を供給する補給ポンプ66等を配置したモジュールである。
【0017】
図1に示すように、第1モジュール12は、複数(3台)の冷却塔18を有するものである。第1モジュール12において、台車14(第1の台車)上には、台車14より幅が広く設計されたフレーム16が固定されている。そして図1に示すように、フレーム16は台車14の幅方向の両側にはみ出るように台車14上に固定される。フレーム16は、冷却塔18等の構成要素が搭載される荷台であり、これらの構成要素の荷重に対しても剛性を維持できる程度の強度を有する材料を用いて形成され、かつ構成要素の搭載位置に対応してフレーム16の構成部材の組み合わせ位置を調整して形成されている。また後述のようにフレーム16は、支柱98(商品名:強力サポート)により支持され、これにより台車14はフレーム16を介して支柱98に支持される。
【0018】
そしてフレーム16上には冷却塔18が複数(3台)固定されている。冷却塔18は、熱交換器(不図示)を循環する冷却水(二次冷却水)を冷却するものであり、このため冷却水を導入する導入配管20と冷却水を排出する排出配管22を有する。また冷却塔18は、冷却水の冷却に必要な補給水を導入する補給配管24を有する。さらに冷却塔18は使用済みの補給水をドレンとして排出するためのドレン配管26と、ドレンを蓄えるドレン受け28を有する。
【0019】
またフレーム16上には、マニホールド配管30A、30Bが配置されている。マニホールド配管30A(第1のマニホールド配管)は、熱交換器(不図示)から排出された高温の冷却水が流れる配管であり、マニホールド配管30B(第2のマニホールド配管)は冷却塔18で冷却された低温の冷却水が流れる配管である。このため、マニホールド配管30Aには冷却塔18の導入配管20がそれぞれ接続され、マニホールド配管30Bには冷却塔18の排出配管22がそれぞれ接続される。よって冷却塔18の導入配管20はマニホールド配管30Aを介して互いに並列となるように配置され、冷却塔18の排出配管22はマニホールド配管30Bを介して互いに並列となるように配置される。また、マニホールド配管30A、30Bの終端の一方は開放されて取り付け配管32が接続され、マニホールド配管30A、30Bの終端の他方は閉じられている。これによりマニホールド配管30Aに導入された高温の冷却水は導入配管20で分岐し、冷却塔18で冷却された低温の冷却水は排出配管22を経由してマニホールド配管30Bに集められマニホールド配管30Bから放出される。
【0020】
なお、補給配管24は第4モジュール64側に接続された取り付け配管76に接続される。また、図1において導入配管20、排出配管22、補給配管24、ドレン配管26は、平面視でフレーム16からはみ出るように描かれているが、実際には平面視でフレーム16に収まるように配置することができる。
【0021】
図1に示すように、第2モジュール34は、第1モジュール12と同様であって、台車14(第1の台車)上に冷却塔18が2台配置されたものである。よって、第2モジュール34におけるフレーム16、冷却塔18、導入配管20、排出配管22、マニホールド配管36A、36B、補給配管38、ドレン配管26、ドレン受け28等の構成は、第1モジュール12のものと基本的に同様である。しかし、マニホールド配管36A(第1のマニホールド配管)は2つの導入配管20に接続され、マニホールド配管36B(第2のマニホールド配管)は2つの排出配管22に接続されている。そしてマニホールド配管36A、36Bの両終端は開放され、一方の終端が第1モジュール12(マニホールド配管30A、30B)と接続する取り付け配管32と接続され、他方の終端が第3モジュール44(分岐配管48、中継配管56)と接続する取り付け配管40と接続されている。
【0022】
これにより第1モジュール12の冷却塔18(冷却塔群)と、第2モジュール34の冷却塔18(冷却塔群)は熱交換器(不図示)を通過する循環経路(冷却水ライン、図2)において互いに並列となるように配置されることになる。本実施形態において、冷却塔群を搭載したモジュールは、第1モジュール12と、第2モジュール34のみであるが、これらと同様の構成を有するモジュールをさらに用意し、マニホールド配管同士を直列に接続することにより、冷却塔群をさらに並列に接続することができ、熱交換器(不図示)が必要とする冷却能力に対応して冷却塔18の稼動台数を調整することができる。なお、補給配管38は、第1モジュール12の補給配管24と取り付け配管42を介して直列に接続される。
【0023】
図1に示すように、第3モジュール44は、台車14(第2の台車)上に固定されたフレーム16上に循環ポンプ46とサージタンク60を搭載したものである。循環ポンプ46は、熱交換器(不図示)の冷媒、すなわち冷却水を送液するものである。循環ポンプ46は2台配置され、熱交換器(不図示)を通過する冷却水の循環経路(冷却水ライン、図2)において互いに並列となるように配置されている。ただし、同時に使用することはなく、通常はいずれか一方を使用し、一方が故障した場合に他方に切り替える。このため、第3モジュール44においては分岐配管48が配置され、分岐配管48の上流側は第2モジュール34側に接続された取り付け配管40に接続され、分岐配管48の下流側(分岐側)はそれぞれ循環ポンプ46の冷却水の導入側に接続されている。また分岐配管48の下流側にはバルブ50がそれぞれ配置され分岐配管48の下流の流路の開閉をそれぞれ行なうことができる。
【0024】
また循環ポンプ46の排出側にも分岐配管52が配置され、分岐配管52の上流側(分岐側)が循環ポンプ46の排出側にそれぞれ接続され、分岐配管52の下流側は熱交換器(不図示)側に接続する取り付け配管58に接続される。さらに分岐配管52の上流側(分岐側)にもバルブ54が配置され分岐配管52の上流の流路の開閉を行なうことができる。よって循環ポンプ46のオン・オフ及びバルブ50、54の開閉を適宜行なうことにより循環ポンプ46のいずれか一方を稼動させて冷却水を熱交換器(不図示)側に送液できるようにしている。
【0025】
なお、フレーム16上には中継配管56が配置され、第2モジュール34に接続された取り付け配管40と、熱交換器(不図示)側に接続された取り付け配管58とを連結するが、取り付け配管40と中継配管56とを省略して、熱交換器(不図示)側に接続する取り付け配管58を第2モジュール34(マニホールド配管36A)に接続してもよい。
【0026】
また第3モジュール44のフレーム16上にはサージタンク60が配置されている。サージタンク60は、第4モジュール64側(補給ポンプ66)に接続する取り付け配管62に接続され、さらに分岐配管48の上流側(循環ポンプ46の冷却水の導入側)に接続される。
【0027】
第4モジュール64は、台車14に固定されたフレーム16上に補給ポンプ66と補給水受水槽78を搭載している。補給水受水槽78は、例えば敷地内の消火栓(不図示)から供給された水を補給水として蓄えるものであり、供給配管68を介して補給ポンプ66に接続されている。なお、図1において補給水受水槽78は複数描かれているが1つでも良い。補給ポンプ66は、冷却塔18及びサージタンク60に補給水を供給するものであり、補給水の補給経路において互いに並列となるように2台配置されている。しかし、循環ポンプ46と同様の理由で同時に使用することはない。よって、補給ポンプ66の補給水の導入側にそれぞれ接続された供給配管68にはバルブ70が配置されている。また、補給ポンプ66の補給水の排出側と冷却塔18側及びサージタンク60側に接続された分岐配管72が配置され、分岐配管72の上流側(分岐側)にはバルブ74が配置されている。そして分岐配管72は取り付け配管76を介して補給配管24に接続され、また取り付け配管62を介してサージタンク60に接続される。よって補給ポンプ66のオン・オフ及びバルブ70、74の開閉を適宜行なうことにより補給ポンプ66のいずれか一方を稼動させて補給水を供給できるようにしている。
【0028】
取り付け配管32、40、42、58、62、76(図1中の着色された配管)は、第1モジュール12乃至第4モジュール64を敷地に配置したのちに取り付ける配管である。各取り付け配管は、各モジュールの設計上の配置位置に対応して形状を設計してもよいし、フレキシブルな素材を用いて形成してもよい。本実施形態においては、各モジュールの設置後の配管の取り付けは、モジュール同士を接続する取り付け配管32、40、42、62、76と、第3モジュール44と熱交換器(不図示)側とを接続する取り付け配管58のみとなる。さらに、本実施形態において、たとえば第2モジュール34には冷却塔がさらに追加可能であるが、この冷却塔は既に取り付け冷却塔18と同様にマニホールド配管36A,36Bに接続することになるので、各モジュールの敷地への配置後の取り付け配管の接続個数に変化はない。したがって、冷却モジュール10の設置時間を短縮し、作業員の被曝量を低減することができる。
【0029】
図2に、本実施形態の冷却モジュールの配管計装線図を示し、図3に、本実施形態の冷却モジュールを構成する冷却塔の模式図を示す。前述のように、本実施形態の冷却モジュール10において、第1モジュール12が3台の冷却塔18を有し、第2モジュール34が2台の冷却塔18を有し、第3モジュール44が循環ポンプ46とサージタンク60を有し、第4モジュール64が補給ポンプ66と補給水受水槽78を有している。そして各モジュール間を取り付け配管32、40、42、62、76により接続し、第3モジュール44と熱交換器(不図示)側を取り付け配管58により接続している。
【0030】
そして、本実施形態の冷却モジュール10は、冷却水を熱交換器(不図示)と冷却塔との間で循環させる冷却水ラインと、補給水を冷却水及びサージタンク60に供給する補給水ラインと、を有し、冷却塔18での使用済みの補給水を、ドレン配管26を経由してドレン受け28に蓄えるようになっている。
【0031】
冷却水ラインにおいて、マニホールド配管30A、取り付け配管32、マニホールド配管36Aにより第1のバスライン80が形成され、熱交換器(不図示)側と取り付け配管58を介して接続されている。さらに、第1のバスライン80には冷却塔18の導入配管20が複数接続されている。
【0032】
また冷却水ラインにおいて、マニホールド配管30B、取り付け配管32、マニホールド配管36Bにより第2のバスライン82が形成され、冷却塔18の排出配管22が第2のバスライン82に複数接続されている。そして第2のバスライン82は取り付け配管40を介して循環ポンプ46に接続され、循環ポンプ46は取り付け配管58を介して熱交換器(不図示)側に接続されている。
【0033】
これにより循環ポンプ46は、冷却水を熱交換器(不図示)に供給するとともに循環ポンプ46の供給圧力を利用して熱交換器(不図示)を流通した高温の冷却水を第1のバスライン80に供給する。そして冷却塔18には高温の冷却水が導入配管20を介して導入され、冷却後の低温の冷却水が排出配管22を介して第2のバスライン82に排出され、第2のバスライン82に排出された低温の冷却水は、取り付け配管40を介して循環ポンプ46に導入され、循環ポンプ46がこの低温の冷却水を熱交換器(不図示)側に送液する。これにより冷却水は、熱交換器(不図示)で熱を吸収して高温となり冷却塔18で熱を放出して低温となることを繰り返しつつ循環する。
【0034】
補給水ラインにおいて、補給配管24、取り付け配管42、補給配管38により補給水を供給する第3のバスライン84が形成されている。そして、補給ポンプ66に接続された分岐配管72は取り付け配管76を介して第3のバスライン84に接続されている。そして第3のバスライン84には冷却塔18に接続する補給配管24a、38aが複数接続されている。さらに分岐配管72は取り付け配管62を介してサージタンク60に接続されている。
【0035】
よって補給ポンプ66は、補給水受水槽78に蓄えられた補給水を、取り付け配管76を経由して第3のバスライン84に供給し、補給配管24a、38aを介して冷却塔18には補給水が補給される。同様に補給ポンプ66は、取り付け配管62を経由してサージタンク60に補給水を供給する。サージタンク60は、循環ポンプ46の立ち上げに伴う冷却水ラインの急激な圧力変化を抑制するため、補給水を冷却水ライン(循環ポンプ46の冷却水の導入側)に供給する。このため、サージタンク60内の補給水が不足した場合にはバルブ61を開いて補給ポンプ66を介して補給水をサージタンク60に補給するものとする。
【0036】
図3に本実施形態の冷却モジュールを構成する冷却塔の模式図を示す。冷却塔18は、冷媒となる補給水の気化熱を利用して冷却水を冷却するものである。冷却塔18は、冷却水を導通して冷却水と補給水との熱交換を行なう冷却コイル86と、補給水を受水する受水タンク88と、受水タンク88の補給水を冷却コイル86に供給する供給ポンプ90と、冷却コイル86に通気して補給水の蒸発を促すファン92と、冷却コイル86からこぼれた使用済みの補給水をドレンとして蓄えるドレンタンク(不図示)と、を有する。補給配管24a、38aは受水タンク88内に配置されたボールタップ94を介して受水タンク88に接続される。ボールタップ94は、先端が上下方向に変位するように回動可能なアーム94aと、アーム94aの先端に取り付けられたフロート94bと、アーム94aの根元に取り付けられ補給水が流通する配管の流路の開閉を行なう弁(不図示)とを有する。アーム94aの先端が下がっているときは、弁(不図示)は流路を開放して補給水が受水タンク88に導入されるが、補給水の水位が上昇しフロート94bが浮力により持ち上がることによりアーム94aが回動し、弁(不図示)が流路を閉じて補給水の導入を停止する。よって補給ポンプ66が稼動する限り受水タンク88には補給水が一定の水位で満たされることになる。
【0037】
冷却塔18において、受水タンク88中の補給水が供給ポンプ90により供給口90aを通じて冷却コイル86に供給され、ファン92が冷却コイル86に通気して補給水の蒸発を促し、蒸発の際の気化熱により冷却水を冷却する。しかし、冷却コイル86に供給された補給水が全て蒸発することはなく、一部は冷却コイル86からこぼれてドレンタンク(不図示)に蓄えられる。ドレンタンク(不図示)は、ドレンタンク(不図示)の底、及びドレン(使用済みの補給水)が一定の水位となる位置に排出口を有し、ドレンが一定の水位になった場合にドレンをドレン配管26経由でドレン受け28(図2)に排出し、またはドレンタンク(不図示)に溜まった全ドレンをドレン配管26経由でドレン受け28(図2)に排出することができる。
【0038】
図4に、本実施形態の冷却モジュールの設置工程(配置時)を示し、図5に本実施形態の冷却モジュールの設置工程(支柱取り付け時)を示し、図6に図5の側面図を示し、図7に本実施形態の冷却モジュールの設置工程(支柱取り付け後)を示す。
【0039】
本実施形態の冷却モジュールの設置工程について説明する。この設置工程においては、各モジュール以外に各モジュールの設置箇所に配置する敷鉄板96と各モジュールを支持する支柱98を用いる。なお図4乃至図7においては、第1モジュール12のみ記載しているが他のモジュールにおいても設置工程は同様となる。
【0040】
まず冷却モジュール10の設置位置となる敷地を必要に応じて整地し、敷鉄板96を敷設する。敷鉄板96は、矩形の鉄板をアレイ状に配置し互いに隣り合う鉄板同士を溶接して一枚の板となるように形成する。またこれと並行して冷却モジュール10で用いる電力を供給する配電盤(不図示)を冷却モジュール10の設置位置に隣接して配置する。次に図4に示すように各モジュールを車両100(トレーラー)により設置位置に牽引する。このとき第1モジュール12乃至第4モジュール64は、例えば図1に示すような配置となるように車両100を駐車する。
【0041】
そして、図5、図6に示すように、敷鉄板96とフレーム16との間に支柱98を立設し、支柱98の上端をフレーム16の下面に溶接等で固定し、支柱98の下端を敷鉄板96に溶接等で固定する。ここで、支柱98(商品名:強力サポート)は、支柱98の下端を形成する下部支柱98aと、下部支柱98aに挿通され支柱98の上端を形成する上部支柱98bと、のテレスコープ構造を有している。そして、上部支柱98bを下部支柱98aに対して上下方向にスライドして下部支柱98aに固定可能となっており、支柱98全体の長さを調整することができる。支柱98はフレーム16に対して複数接続されるが、接続の際にはフレーム16が水平となるように、且つ各モジュールの荷重を台車14の車輪14aと支柱98に分散させるように調整する。
【0042】
最後に図7に示すように、車両100(トレーラー)を台車14から分離し、取り付け配管32、40、42、58、62、76を図1に示す配置に従って接続し、敷地内の消火栓から補給水受水槽78に補給水を供給し、循環ポンプ46、補給ポンプ66、冷却塔18用の電源ケーブルを配電盤(不図示)に接続することにより冷却モジュール10が組み立てられる。
【0043】
本実施形態では、複数の支柱98によりフレーム16(台車14)の水平を維持することができるので、各モジュールに搭載された構成要素を安定的に動作させることができる。冷却モジュール10を配置する位置全体に一枚の敷鉄板96を敷設し、その敷鉄板96の上に各モジュールを配置して支柱98を介して敷鉄板96に固定される形となる。したがって各モジュールは耐震構造となって地震が発生しても振動を小さくすることができるので安定的に動作させることができる。本実施形態では原子炉格納容器内の一次冷却水を冷却する熱交換器の冷媒(二次冷却水)または、使用済み燃料プール用の熱交換器の冷媒を冷却することを前提として述べてきたが、取り付け配管を分岐させてこれら2つの熱交換器側に同時に接続してもよい。さらに、本実施形態では、冷却塔18を搭載するモジュールと、循環ポンプ46を搭載するモジュールとが別体であるとの前提で説明したが、冷却塔18と循環ポンプ46を同じ台車14(フレーム16)上に配置して一体のモジュールを構築しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0044】
原子力発電所の敷地内において、冷却塔及び循環ポンプの配置を迅速に行なうことができるとともに、熱交換器の循環経路に接続すべき配管の本数を削減して作業時間を削減し作業員の被曝量を抑制することができ、さらに冷却塔等を敷地に安定的に配置して、地震等の災害に対しても安定的に稼動させることが可能な冷却システムとして利用できる。
【符号の説明】
【0045】
10………冷却モジュール、12………第1モジュール、14………台車、14a………車輪、16………フレーム、18………冷却塔、20………導入配管、22………排出配管、24………補給配管、26………ドレン配管、28………ドレン受け、30A、30B………マニホールド配管、32………取り付け配管、34………第2モジュール、36A、36B………マニホールド配管、38………補給配管、40………取り付け配管、42………取り付け配管、44………第3モジュール、46………循環ポンプ、48………分岐配管、50………バルブ、52………分岐配管、54………バルブ、56………中継配管、58………取り付け配管、60………サージタンク、61………バルブ、62………取り付け配管、64………第4モジュール、66………補給ポンプ、68………供給配管、70………バルブ、72………分岐配管、74………バルブ、76………取り付け配管、78………補給水受水槽、80………第1のバスライン、82………第2のバスライン、84………第3のバスライン、86………冷却コイル、88………受水タンク、90………供給ポンプ、90a………供給口、92………ファン、94………ボールタップ、94a………アーム、94b………フロート、96………敷鉄板、98………支柱、98a………下部支柱、98b………上部支柱、100………車両。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電所の熱交換器の冷媒を冷却する冷却システムであって、
前記冷媒を冷却可能とされ第1の台車に搭載された冷却塔と、
前記冷媒を送液可能とされ第2の台車に搭載された循環ポンプと、を有し、
前記台車は、
車両により前記原子力発電所の敷地に牽引され、
前記敷地において、前記冷却塔と前記循環ポンプとの間、前記冷却塔と前記熱交換器との間、前記循環ポンプと前記熱交換器との間をそれぞれ配管で接続することにより、前記冷媒を前記熱交換器と前記冷却塔との間で循環可能とすることを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
前記冷却塔は、
前記第1の台車に複数搭載され、
前記第1の台車には、
前記冷却塔がそれぞれ並列に接続され前記熱交換器及び前記循環ポンプにそれぞれ接続可能な一対のマニホールド配管が配置されたことを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記第1の台車が複数配置され、
互いに異なる前記第1の台車に配置された前記マニホールド配管同士が直列に接続可能であることを特徴とする請求項2に記載の冷却システム。
【請求項4】
原子力発電所の熱交換器の冷媒を冷却可能とされ、車両により牽引可能な4つの台車に個別に形成された第1モジュール、第2モジュール、第3モジュール、第4モジュールを有する冷却システムであって、
前記第1モジュール、前記第2モジュールは、
前記冷媒を冷却可能な冷却コイルと、前記冷媒を前記冷却コイルに導入する導入配管と前記冷媒を冷却コイルに排出する排出配管と、前記冷却コイルの冷媒となる補給水を補給する補給配管と、を有する複数の冷却塔と、
前記導入配管を並列に接続する第1のマニホールド配管と、
前記排出配管を並列に接続する第2のマニホールド配管と、を備え、
前記第3モジュールは、
前記冷媒を送液可能な循環ポンプを備え、
前記第4モジュールは、
前記補給水を供給する補給ポンプと、前記補給水を蓄えるとともに前記補給水を前記補給ポンプに供給する補給水受水槽と、を備え、
前記第1モジュール乃至第4モジュールは、前記原子力発電所の敷地まで牽引され、
前記第1モジュールの前記第1のマニホールド配管と前記第2モジュールの第1のマニホールド配管との間、
前記第1モジュールの前記第2のマニホールド配管と前記第2モジュールの第2のマニホールド配管との間、
前記第2モジュールの第1のマニホールド配管と前記循環ポンプの前記冷媒の導入側との間、
前記第2のモジュールの第1のマニホールド配管と、前記熱交換器との間、
前記第2のモジュールの第2のマニホールド配管と前記循環ポンプの前記冷媒の導入側との間、
前記循環ポンプの前記冷媒の送液側と前記熱交換器との間、
前記補給ポンプと前記補給配管との間、
をそれぞれ配管で接続することにより、前記冷媒を前記熱交換器と前記冷却塔との間で循環可能とするとともに前記冷却塔に前記補給水を供給可能とすることを特徴とする冷却システム。
【請求項5】
前記台車の荷台を前記敷地に立設した複数の支柱により支持したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の冷却システム
【請求項6】
前記敷地には敷鉄板が配置され前記支柱は前記敷鉄板上に固定されたことを特徴とする請求項5に記載の冷却システム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−29320(P2013−29320A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163550(P2011−163550)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)