説明

冷却トラップ装置及び冷却トラップ装置の運転方法

【課題】長時間の連続運転が可能な冷却トラップ装置及び運転方法を提供する。
【解決手段】第1トラップ槽11aの蒸気流入弁、排気弁、高圧冷媒弁及び圧縮機吸入弁を開いてガス流入弁及び液体導入導出弁を閉じ、第1トラップ槽で溶媒蒸気を冷却して捕集する蒸気捕集工程を行っているときに、第2トラップ槽11bでは、蒸気流入弁、排気弁、高圧冷媒弁及びガス流入弁を閉じて液体導入導出弁を開き、加熱槽から吸引した除霜用液体で第2トラップ槽内の霜を加熱溶解させて液化する加熱溶解段階と、ガス流入弁を開いて第2トラップ槽内にガスを導入して液体を加熱槽に戻す液体排出段階と、液体導入導出弁及びガス流入弁を閉じて排気弁及び予冷弁を開き、第1トラップ槽の蒸発器から導出したガス状冷媒を第2トラップ槽の蒸発器を通す予冷段階とを含む再生工程を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却トラップ装置及び運転方法に関し、詳しくは、真空常温乾燥や減圧濃縮で排気される溶媒蒸気を、冷凍機の冷媒によって低温に冷却されたトラップ槽内に導入して凝縮又は凍結させて捕集するための冷却トラップ装置及び該冷却トラップ装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空常温乾燥や減圧濃縮で排出される蒸気を冷却して液化又は固化させて捕集するための冷却トラップ装置が知られている。冷却トラップ装置は、トラップ槽に設けた冷却流路に冷凍サイクルからの低温冷媒を流通させることによってトラップ槽を低温に冷却し、低温のトラップ槽内で溶媒蒸気を冷却することによって液化又は固化させて捕集するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−23479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乾燥操作や濃縮操作で、通常の操作よりも大量の溶媒蒸気が長時間にわたって発生するような場合、トラップ槽内に大量の固形物(霜)が付着したり、トラップ槽内に大量の液体が溜まったりすることがあり、冷却トラップ装置の処理能力が低下することがあった。
【0005】
この場合、大容量の冷却トラップ装置を使用するか、複数台の冷却トラップ装置を切り替えて使用する必要があり、いずれの場合も溶媒蒸気の捕集操作が一時的に中断することになり、また、操作に要するコストが上昇する要因となっていた。また、理化学実験用の冷却トラップ装置では、有機溶媒蒸気を捕集することがあるため、トラップ槽内の固形物や液体を除去する際には、外部への有機溶媒の漏出を防止する必要がある。
【0006】
そこで本発明は、真空常温乾燥や減圧濃縮を行う際に大量の溶媒蒸気が発生するような場合でも、長時間の連続運転が可能な冷却トラップ装置及び該冷却トラップ装置の運転方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の冷却トラップ装置は、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を備えた冷凍サイクルの前記蒸発器を流れる低温冷媒によって冷却されるトラップ槽内に溶媒蒸気を導入し、該溶媒蒸気をトラップ槽内で冷却することにより液化又は固化させて捕集する冷却トラップ装置において、複数のトラップ槽と、前記圧縮機で圧縮した高温高圧冷媒によって除霜用液体を加熱する加熱槽とを備え、前記複数のトラップ槽は、前記溶媒蒸気をトラップ槽内に流入させる溶媒蒸気流入経路及び該溶媒蒸気流入経路に設けられた蒸気流入弁と、トラップ槽内を真空排気する排気経路及び該排気経路に設けられた排気弁と、トラップ槽の底部と前記加熱槽とを接続する液体導入導出経路及び該液体導入導出経路に設けられた液体導入導出弁と、トラップ槽内にガスを流入させるためのガス流入経路及び該ガス流入経路に設けられたガス流入弁とをそれぞれ備え、前記冷凍サイクルは、前記圧縮機で圧縮した高温高圧冷媒によって前記加熱槽内の除霜用液体を加熱する加熱器を備えた高温冷媒経路と、該高温冷媒経路を経た高温高圧冷媒を凝縮させる前記凝縮器と、該凝縮器で凝縮した高圧冷媒を各トラップ槽にそれぞれ設けられた複数の前記蒸発器に導入するための複数の高圧冷媒経路及び該高圧冷媒経路にそれぞれ設けられた高圧冷媒弁と、各高圧冷媒弁を経た高圧冷媒をそれぞれ膨張させる膨張弁と、各膨張弁で膨張した低温冷媒を各蒸発器に導入する低温冷媒導入経路と、各蒸発器で蒸発したガス状冷媒を各蒸発器からそれぞれ導出するガス状冷媒導出経路と、一つの蒸発器からガス状冷媒導出経路に導出されたガス状冷媒を他の蒸発器に導入する予冷用冷媒経路と、前記ガス状冷媒導出経路に導出されたガス状冷媒を圧縮機吸入弁を介して前記圧縮機に循環吸入させる圧縮機吸入経路と、前記予冷用冷媒経路から蒸発器に導入されて該蒸発器を導出した予冷用冷媒を予冷弁を介して前記圧縮機に循環吸入させる予冷冷媒循環経路とを備えていることを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明の冷却トラップ装置は、前記加熱槽は、該加熱槽内の液体の液面があらかじめ設定された高さ超えたときに、加熱槽内の液体をオーバーフローさせて加熱槽から排出するオーバーフロー経路を備えていることを特徴とし、前記高温冷媒経路は、前記加熱器と並列に、該加熱器を迂回するバイパス経路及び該バイパス経路に設けられたバイパス弁と備えていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の冷却トラップ装置の運転方法における第1の構成は、複数のトラップ槽の中の一つのトラップ槽において、該一つのトラップ槽の蒸気流入弁、排気弁、高圧冷媒弁及び圧縮機吸入弁をそれぞれ開いてガス流入弁及び液体導入導出弁を閉じた状態とし、該一つのトラップ槽の蒸発器に低温冷媒を導入して該一つのトラップ槽を冷却することにより、該一つのトラップ槽内に溶媒蒸気流入経路から流入した溶媒蒸気を冷却固化させて捕集する蒸気捕集工程を行っているときに、他のトラップ槽では、該他のトラップ槽の蒸気流入弁、排気弁、高圧冷媒弁及びガス流入弁を閉じた状態で液体導入導出弁を開き、高温高圧冷媒で加熱した除霜用液体を加熱槽内から吸引して該他のトラップ槽の冷却面に付着している霜を除霜用液体により加熱溶解させて液化する加熱溶解段階と、ガス流入弁を開いて該他のトラップ槽内にガスを導入し、霜が溶解して液化した液体を含む除霜用液体を加熱槽に戻す液体排出段階と、液体導入導出弁及びガス流入弁を閉じて排気弁及び予冷弁を開き、蒸気捕集工程を行っている一つのトラップ槽の蒸発器から導出したガス状冷媒を他のトラップ槽の蒸発器に導入し、該他のトラップ槽の蒸発器を経たガス状冷媒を圧縮機に吸入させる予冷段階とを含む再生工程を行い、複数のトラップ槽において前記蒸気捕集工程と再生工程とを切り替えて実施することを特徴としている。
【0010】
さらに、本発明の冷却トラップ装置の運転方法における第2の構成は、複数のトラップ槽の中の一つのトラップ槽において、該一つのトラップ槽の蒸気流入弁、排気弁、高圧冷媒弁及び圧縮機吸入弁をそれぞれ開いてガス流入弁及び液体導入導出弁を閉じた状態とし、該一つのトラップ槽の蒸発器に低温冷媒を導入して該一つのトラップ槽を冷却することにより、該一つのトラップ槽内に溶媒蒸気流入経路から流入した溶媒蒸気を冷却液化させて捕集する蒸気捕集工程を行っているときに、他のトラップ槽では、該他のトラップ槽の蒸気流入弁、排気弁及び高圧冷媒弁を閉じた状態でガス流入弁及び液体導入導出弁を開き、該他のトラップ槽内にガスを導入して該他のトラップ槽内に捕集した液体を加熱槽に排出する液体排出段階と、液体導入導出弁及びガス流入弁を閉じて排気弁及び予冷弁を開き、蒸気捕集工程を行っている一つのトラップ槽の蒸発器から導出したガス状冷媒を他のトラップ槽の蒸発器に導入し、該他のトラップ槽の蒸発器を経たガス状冷媒を圧縮機に吸入させる予冷段階とを含む再生工程を行い、複数のトラップ槽において前記蒸気捕集工程と前記再生工程とを切り替えて実施することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数のトラップ槽を蒸気捕集工程と再生工程とに切り替えて運転することができるので、トラップする溶媒蒸気の量が多い場合でも、長時間にわたって連続して溶媒蒸気を捕集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の冷却トラップ装置の一形態例を示す要部の系統図である。
【図2】二つのトラップ槽を備えた冷却トラップ装置における冷凍サイクルの一形態例を示す系統図である。
【図3】一方のトラップ槽で捕集工程、他方のトラップ槽で除霜工程又は捕集液排出工程を開始したときの冷媒の流れを示す説明図である。
【図4】同じく他方のトラップ槽で予冷段階を行っているときの冷媒の流れを示す説明図である。
【図5】同じく一方のトラップ槽を除霜工程又は捕集液排出工程に切り替えて他方のトラップ槽を捕集工程に切り替えたときの冷媒の流れを示す説明図である。
【図6】同じく一方のトラップ槽で予冷段階を行っているときの冷媒の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本形態例に示す冷却トラップ装置は、2個のトラップ槽11a,11bと、該トラップ槽11a,11bを冷却するための冷凍サイクル12と、該冷凍サイクル12の経路内に設けられた加熱槽13とを備えている。
【0014】
各トラップ槽11a,11bには、各トラップ槽11a,11b内に乾燥装置や濃縮装置で発生した溶媒蒸気を流入させる溶媒蒸気流入経路14a,14bと、各トラップ槽11a,11b内を真空排気する排気経路15a,15bと、各トラップ槽11a,11bの底部と前記加熱槽13とを接続する液体導入導出経路16a,16bと、各トラップ槽11a,11b内にガスを流入させるためのガス流入経路17a,17bとがそれぞれ設けられている。
【0015】
また、前記溶媒蒸気流入経路14a,14bには蒸気流入弁14Va,14Vbが、排気経路15a,15bには排気弁15Va,15Vbが、液体導入導出経路16a,16bには液体導入導出弁16Va,16Vbが、ガス流入経路17a,17bにはガス流入弁17Va,17Vbがそれぞれ設けられている。
【0016】
前記冷凍サイクル12は、冷媒を圧縮してガス状の高温高圧冷媒とする圧縮機21と、該圧縮機21から高温冷媒経路31に吐出された高温高圧冷媒を冷却して凝縮させる凝縮器22と、該凝縮器22で凝縮して高圧冷媒弁32Va,32Vbを介して2本の高圧冷媒経路32a,32bに導出した液状の高圧冷媒を膨張させる膨張弁23a,23bと、該膨張弁23a,23bで膨張して低温冷媒導入経路33a,33bに導出された低圧で液状の低圧冷媒を蒸発させる蒸発器24a,24bと、該蒸発器24a,24bで蒸発してガス状冷媒導出経路34a,34bに導出したガス状冷媒を合流させてから圧縮機吸入弁35Vを介して前記圧縮機21の吸引側に循環させる圧縮機吸入経路35と、蒸発器24a,24bのいずれか一方から前記ガス状冷媒導出経路34a,34bのいずれか一方に導出したガス状冷媒を予冷用冷媒としていずれか他方の蒸発器24a,24bに導入し、該蒸発器24a,24bから予冷用冷媒導出経路36a,36bに導出した予冷用冷媒を、予冷弁36Va,36Vbを介して前記圧縮機21の吸引側に循環させる予冷冷媒循環経路37a,37bとを備えている。
【0017】
前記加熱槽13は、除霜用液体を含む液体を貯留するための槽であって、加熱槽13には、高温冷媒経路31を流れる高温高圧冷媒を加熱源として加熱槽13内の液体を加熱するための加熱器31aと、加熱槽13内の液体を槽底部から排出するためのドレン弁18と、該加熱槽13内の液体の液面があらかじめ設定された高さ超えたときに、加熱槽13内の液体をオーバーフローさせて加熱槽13から排出するオーバーフロー経路19とが設けられている。
【0018】
本形態例に示すトラップ槽11a,11bは、槽胴部外周に蒸発器24a,24bの一部を巻回しており、槽内面全体を冷却面としている。また、本形態例に示す冷凍サイクル12では、前記加熱器31aと並列に、該加熱器31aを迂回するバイパス経路38を設けており、加熱槽13内の液体を加熱する必要がないときには、バイパス経路38に設けたバイパス弁38Vを開くことにより、高温高圧冷媒が加熱器31aを通らずに凝縮器22に流れるようにしている。
【0019】
以下、本形態例に示した冷却トラップ装置を用いて、溶媒蒸気をトラップ槽11a,11b内で冷却固化させて捕集する第1の運転方法にて長時間連続運転する際の運転手順を説明する。溶媒蒸気を固化させて捕集する場合、加熱槽13内には、あらかじめ設定された量の除霜用液体が投入されている。また、加熱槽13におけるドレン弁18は、閉状態に保たれており、オーバーフロー経路19にオーバーフロー弁19Vが設けられている場合、オーバーフロー弁19Vは開状態に保たれて加熱槽13内は大気圧状態となっている。
【0020】
一方のトラップ槽(以下、第1トラップ槽)11aが再生工程から蒸気捕集工程に切り替えられ、他方のトラップ槽(以下、第2トラップ槽)11bが蒸気捕集工程から再生工程に切り替えられた状態のとき、第1トラップ槽11aにおいては、該第1トラップ槽11aに関連する蒸気流入弁14Va、排気弁15Va、高圧冷媒弁32Va及び圧縮機吸入弁35Vをそれぞれ開いた状態とし、ガス流入弁17Va及び液体導入導出弁16Vaをそれぞれ閉じた状態とする。
【0021】
これにより、図3に実線で示すように、冷凍サイクル12を循環する冷媒は、圧縮機21で圧縮され、凝縮器22で凝縮し、膨張弁23aで膨張した液状の低圧冷媒が低温冷媒導入経路33aを通って第1トラップ槽11aの蒸発器24aに導入され、該蒸発器24a内で蒸発した低温冷媒によって第1トラップ槽11aの冷却面が冷却され、蒸発器24aからガス状冷媒導出経路34aに導出された低温冷媒は、圧縮機吸入弁35Vを介して圧縮機吸入経路35を通り、圧縮機21の吸入側に循環する。
【0022】
また、真空ポンプ(図示せず)に接続した排気経路15aを介して第1トラップ槽11a内が減圧されることにより、乾燥装置や濃縮装置で発生した溶媒蒸気が吸引されて溶媒蒸気流入経路14aから第1トラップ槽11a内に流入し、第1トラップ槽11aの内部で冷却されることにより、冷却面に霜状に固化して第1トラップ槽11a内に捕集される。このとき、加熱槽13では、加熱器31aを流れる高温高圧冷媒によって加熱槽13内の除霜用液体が加熱されている。
【0023】
一方、第2トラップ槽11bでは、再生工程における第1段階の加熱溶解段階が始まり、該第2トラップ槽11bに関連する蒸気流入弁14Vb、排気弁15Vb、高圧冷媒弁32Vb及びガス流入弁17Vbを閉じた状態とし、第2トラップ槽11b内への溶媒蒸気の流入を遮断するとともに、蒸発器24bへの低圧冷媒の導入を遮断する。この状態で液体導入導出弁16Vbを開くと、再生工程に入る前の蒸気捕集工程で真空ポンプにより減圧されて減圧状態となっている第2トラップ槽11b内に、液体導入導出経路16bを通して加熱槽13からあらかじめ設定された温度に加熱された除霜用液体が吸い上げられる。これにより、第2トラップ槽11b内が加熱された除霜用液体で満たされた状態になり、第2トラップ槽11bの冷却面に霜状に固化して捕集された溶媒固化物が除霜用液体で加熱溶解されて液体となり、除霜用液体中に混合した状態となる。
【0024】
あらかじめ設定された時間の加熱溶解段階を終えた後、再生工程における第2段階の液体排出段階に入り、液体導入導出弁16Vbを開状態に保ったままガス流入弁17Vbを開く。これにより、ガス流入経路17bを通って第2トラップ槽11b内にガス、例えば大気が流入し、第2トラップ槽11b内の霜が溶解して液化した液体を含む除霜用液体が自重で液体導入導出経路16bから加熱槽13に向かって流下する。
【0025】
液体排出段階で除霜用液体を排出した第2トラップ槽11bは、再生工程における第3段階の予冷段階に入り、液体導入導出弁16Vb及びガス流入弁17Vbを閉じるとともに、排気弁15Vbを開き、第2トラップ槽11b内の真空排気が始まる。また、圧縮機吸入弁35Vを閉じるとともに予冷弁36Vbを開く。
【0026】
これにより、図4の実線で示すように、低温冷媒導入経路33aから第1トラップ槽11aの蒸発器24aに導入され、第1トラップ槽11aを冷却してガス状冷媒導出経路34aに導出された低温冷媒は、圧縮機吸入弁35Vが閉じていることから第2トラップ槽11bのガス状冷媒導出経路34bを逆流し、第2トラップ槽11bの蒸発器24bの出口側に導入されて蒸発器24bを通過することにより第2トラップ槽11bを冷却し、蒸発器24bの入口側から低温冷媒導入経路33bに導出される。低温冷媒導入経路33bに導出された低温冷媒は、予冷用冷媒導出経路36bから予冷弁36Vbを通り、さらに、予冷冷媒循環経路37bから圧縮機吸入経路35を通って圧縮機21の吸入側に循環する。したがって、第2トラップ槽11bは、第1トラップ槽11aの蒸発器24aから導出した低温冷媒によってあらかじめ設定された予冷温度に予冷される。
【0027】
あらかじめ設定された予冷時間を経過して第2トラップ槽11bの温度が十分に低下した後、第1トラップ槽11aが蒸気捕集工程から再生工程に切り替えられ、第2トラップ槽11bが再生工程から蒸気捕集工程に切り替えられる。すなわち、第2トラップ槽11bに関連する蒸気流入弁14Vb、排気弁15Vb、高圧冷媒弁32Vb及び圧縮機吸入弁35Vをそれぞれ開いた状態とし、ガス流入弁17Vb及び液体導入導出弁16Vbをそれぞれ閉じた状態とする。
【0028】
これにより、図5の実線で示すように、冷凍サイクル12において、圧縮機21で圧縮された冷媒は、加熱器31aを含む高温冷媒経路31,凝縮器22,高圧冷媒弁32Vb,高圧冷媒経路32b,膨張弁23b,低温冷媒導入経路33b,第2トラップ槽11bの蒸発器24b,ガス状冷媒導出経路34b,圧縮機吸入弁35V,圧縮機吸入経路35をへて圧縮機21に循環する。これにより、排気経路15bを介して減圧された第2トラップ槽11b内に溶媒蒸気が吸引されて冷却され、冷却面に霜状に固化して第2トラップ槽11b内に捕集される。
【0029】
また、再生工程に切り替えられた第1トラップ槽11aでは、蒸気流入弁14Va、排気弁15Va、高圧冷媒弁32Va及びガス流入弁17Vaを閉じるとともに、液体導入導出弁16Vaを開いて第1トラップ槽11a内に加熱槽13から除霜用液体を吸い上げ、第1トラップ槽11aに捕集した溶媒固化物を加熱溶解する加熱溶解段階を行い、さらに、ガス流入弁17Vaを開いて第1トラップ槽11a内の液体を液体導入導出経路16aから加熱槽13に排出する液体排出段階を行う。
【0030】
次に、第1トラップ槽11aの予冷段階に入り、液体導入導出弁16Va,ガス流入弁17Va及び圧縮機吸入弁35Vを閉じるとともに、排気弁15Va及び予冷弁36Vaを開き、第1トラップ槽11a内を真空排気を開始し、図6の実線で示すように、第2トラップ槽11bの蒸発器24bからガス状冷媒導出経路34bに導出された低温冷媒を、ガス状冷媒導出経路34aから第1トラップ槽11aの蒸発器24aに逆流させ、第2トラップ槽11bの蒸発器24bから導出した低温冷媒によって第1トラップ槽11aを予冷する。
【0031】
第1トラップ槽11aの再生工程が終了したら、第1トラップ槽11aを蒸気捕集工程に切り替え、第2トラップ槽11bを再生工程に切り替える。このように、第1トラップ槽11a及び第2トラップ槽11bにおけるそれぞれの蒸気捕集工程と再生工程とを交互に切り替えて実施することにより、蒸気捕集工程で捕集した溶媒蒸気を再生工程で除去することができるので、長時間にわたって大量の蒸気を連続して捕集することができる。
【0032】
また、加熱器31aを流れる高温高圧冷媒で加熱した除霜用液体によって霜(固化した溶媒蒸気)を直接加熱して溶解するので、高温高圧冷媒を冷却器に導入して除霜を行うホットガス方式に比べて短時間で確実に霜を除去することができ、蒸気捕集工程と再生工程との切換時間を短くすることができる。したがって、短時間で蒸気捕集工程と再生工程とに切り替えることができるので、小容量のトラップ槽を使用することが可能となり、装置全体の小型化や低コスト化を図ることができる。
【0033】
さらに、加熱槽13にオーバーフロー経路19を設けておくことにより、霜が加熱溶解した液体によって加熱槽13内の除霜用液体の量が多くなっても、液体排出段階で液体の余剰分をオーバーフロー経路19から外部の回収容器などに排出することができるので、加熱槽13内に一定量の除霜用液体を保持することができ、加熱器31aを流れる高温高圧冷媒による除霜用液体の加熱を一定時間で確実に行うことができる。
【0034】
また、溶媒蒸気をトラップ槽11a,11b内で冷却液化させて捕集する第2の運転方法では、除霜用液体による固化物の加熱溶解が不要となることから、再生工程における第1段階の加熱溶解段階を省略し、再生工程に切り替えたときに第2段階の液体排出段階から開始すればよい。
【0035】
すなわち、一方のトラップ槽、例えば第1トラップ槽11aで溶媒蒸気を液化させて捕集する前記同様の蒸気捕集工程を行っている際に、第2トラップ槽11bでは、蒸気流入弁14Vb、排気弁15Vb及び高圧冷媒弁32Vbを閉じ、第2トラップ槽11b内への溶媒蒸気の流入及び第2トラップ槽11bの冷却を停止した状態でガス流入弁17Vbを開き、前述の第1の運転方法における液体排出段階と同じ状態とすることにより、第2トラップ槽11b内に捕集した液体を自重で液体導入導出経路16bから加熱槽13に排出する。液体を排出した第2トラップ槽11bは、前述の第1の運転方法における再生工程と同様に、液体排出段階の次の予冷段階を行い、第2トラップ槽11b内の真空排気と、第1トラップ槽11aの蒸発器24aから導出した低温冷媒により予冷とを行う。
【0036】
このように、溶媒蒸気を冷却液化させて捕集する場合も、加熱溶解段階を省略した再生工程と蒸気捕集工程とを第1トラップ槽11a及び第2トラップ槽11bにおいて交互に切り替えることにより、長時間にわたって大量の蒸気を連続して捕集することができる。
【0037】
また、加熱槽13で液体を加熱する必要がないので、バイパス弁38Vを開いて高温高圧冷媒を加熱器31aに通さずにバイパス経路38に迂回させることにより、再生工程で加熱槽13内に流下した液体を加熱することがなくなり、加熱槽13から溶媒蒸気が発生することを防止できる。また、加熱槽13のドレン弁18を開いておき、液体排出段階で加熱槽13に流下した液体を、加熱槽13に溜めることなく別の回収容器などに回収することができ、加熱槽13内を常に空の状態にしておくことができる。
【0038】
なお、溶媒蒸気が水蒸気の場合、除霜用液体は水でよく、液体排出段階でトラップ槽に流入させるガスは大気でよいが、捕集する溶媒蒸気が水に不溶性の物質の場合は、該物質を溶解可能な液体を除霜用液体として使用し、捕集する溶媒蒸気が有害な有機溶媒蒸気の場合は、除霜用液体及びトラップ槽に流入させるガスを適切に選択するとともに、オーバーフロー経路やガス流入経路から有機溶媒蒸気が装置外に漏れ出さないような密閉構造を採用することが好ましい。
【0039】
また、冷凍サイクルの構成は冷凍能力に合わせて適宜最適な構成を採用することができ、例えば、本形態例に示す冷凍サイクル12では、蒸発器24a,24bのいずれか一方から導出したガス状の低温冷媒を蒸発器24a,24bのいずれか他方に導入する予冷用冷媒導入経路としてガス状冷媒導出経路34a,34bを利用しているが、専用の予冷用冷媒導入経路を設けてもよく、弁も適宜な位置に配置することが可能である。さらに、トラップ槽を3槽以上設けて切り替え使用することでき、例えば、3槽の場合、第1のトラップ槽が蒸気捕集工程を行っている際に、第2のトラップ槽が加熱溶解段階(固化捕集時のみ)及び液体排出段階を行い、第3のトラップ槽が予冷段階を行うように設定することができる。
【符号の説明】
【0040】
11a,11b…トラップ槽、12…冷凍サイクル、13…加熱槽、14a,14b…溶媒蒸気流入経路、14Va,14Vb…蒸気流入弁、15a,15b…排気経路、15Va,15Vb…排気弁、16a,16b…液体導入導出経路、16Va,16Vb…液体導入導出弁、17a,17b…ガス流入経路、17Va,17Vb…ガス流入弁、18…ドレン弁、19…オーバーフロー経路、21…圧縮機、22…凝縮器、23a,23b…膨張弁、24a,24b…蒸発器、31…高温冷媒経路、31a…加熱器、32a,32b…高圧冷媒経路、32Va,32Vb…高圧冷媒弁、33a,33b…低温冷媒導入経路、34a,34b…ガス状冷媒導出経路、35…圧縮機吸入経路、35V…圧縮機吸入弁、36a,36b…予冷用冷媒導出経路、36Va,36Vb…予冷弁、37a,37b…予冷冷媒循環経路、38…バイパス経路、38V…バイパス弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を備えた冷凍サイクルの前記蒸発器を流れる低温冷媒によって冷却されるトラップ槽内に溶媒蒸気を導入し、該溶媒蒸気をトラップ槽内で冷却することにより液化又は固化させて捕集する冷却トラップ装置において、複数のトラップ槽と、前記圧縮機で圧縮した高温高圧冷媒によって除霜用液体を加熱する加熱槽とを備え、前記複数のトラップ槽は、前記溶媒蒸気をトラップ槽内に流入させる溶媒蒸気流入経路及び該溶媒蒸気流入経路に設けられた蒸気流入弁と、トラップ槽内を真空排気する排気経路及び該排気経路に設けられた排気弁と、トラップ槽の底部と前記加熱槽とを接続する液体導入導出経路及び該液体導入導出経路に設けられた液体導入導出弁と、トラップ槽内にガスを流入させるためのガス流入経路及び該ガス流入経路に設けられたガス流入弁とをそれぞれ備え、前記冷凍サイクルは、前記圧縮機で圧縮した高温高圧冷媒によって前記加熱槽内の除霜用液体を加熱する加熱器を備えた高温冷媒経路と、該高温冷媒経路を経た高温高圧冷媒を凝縮させる前記凝縮器と、該凝縮器で凝縮した高圧冷媒を各トラップ槽にそれぞれ設けられた複数の前記蒸発器に導入するための複数の高圧冷媒経路及び該高圧冷媒経路にそれぞれ設けられた高圧冷媒弁と、各高圧冷媒弁を経た高圧冷媒をそれぞれ膨張させる膨張弁と、各膨張弁で膨張した低温冷媒を各蒸発器に導入する低温冷媒導入経路と、各蒸発器で蒸発したガス状冷媒を各蒸発器からそれぞれ導出するガス状冷媒導出経路と、一つの蒸発器からガス状冷媒導出経路に導出されたガス状冷媒を他の蒸発器に導入する予冷用冷媒経路と、前記ガス状冷媒導出経路に導出されたガス状冷媒を圧縮機吸入弁を介して前記圧縮機に循環吸入させる圧縮機吸入経路と、前記予冷用冷媒経路から蒸発器に導入されて該蒸発器を導出した予冷用冷媒を予冷弁を介して前記圧縮機に循環吸入させる予冷冷媒循環経路とを備えていることを特徴とする冷却トラップ装置。
【請求項2】
前記加熱槽は、該加熱槽内の液体の液面があらかじめ設定された高さ超えたときに、加熱槽内の液体をオーバーフローさせて加熱槽から排出するオーバーフロー経路を備えていることを特徴とする請求項1記載の冷却トラップ装置。
【請求項3】
前記高温冷媒経路は、前記加熱器と並列に、該加熱器を迂回するバイパス経路及び該バイパス経路に設けられたバイパス弁と備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の冷却トラップ装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の冷却トラップ装置の運転方法であって、複数のトラップ槽の中の一つのトラップ槽において、該一つのトラップ槽の蒸気流入弁、排気弁、高圧冷媒弁及び圧縮機吸入弁をそれぞれ開いてガス流入弁及び液体導入導出弁を閉じた状態とし、該一つのトラップ槽の蒸発器に低温冷媒を導入して該一つのトラップ槽を冷却することにより、該一つのトラップ槽内に溶媒蒸気流入経路から流入した溶媒蒸気を冷却固化させて捕集する蒸気捕集工程を行っているときに、他のトラップ槽では、該他のトラップ槽の蒸気流入弁、排気弁、高圧冷媒弁及びガス流入弁を閉じた状態で液体導入導出弁を開き、高温高圧冷媒で加熱した除霜用液体を加熱槽内から吸引して該他のトラップ槽の冷却面に付着している霜を除霜用液体により加熱溶解させて液化する加熱溶解段階と、ガス流入弁を開いて該他のトラップ槽内にガスを導入し、霜が溶解して液化した液体を含む除霜用液体を加熱槽に戻す液体排出段階と、液体導入導出弁及びガス流入弁を閉じて排気弁及び予冷弁を開き、蒸気捕集工程を行っている一つのトラップ槽の蒸発器から導出したガス状冷媒を他のトラップ槽の蒸発器に導入し、該他のトラップ槽の蒸発器を経たガス状冷媒を圧縮機に吸入させる予冷段階とを含む再生工程を行い、複数のトラップ槽において前記蒸気捕集工程と再生工程とを切り替えて実施することを特徴とする冷却トラップ装置の運転方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の冷却トラップ装置の運転方法であって、複数のトラップ槽の中の一つのトラップ槽において、該一つのトラップ槽の蒸気流入弁、排気弁、高圧冷媒弁及び圧縮機吸入弁をそれぞれ開いてガス流入弁及び液体導入導出弁を閉じた状態とし、該一つのトラップ槽の蒸発器に低温冷媒を導入して該一つのトラップ槽を冷却することにより、該一つのトラップ槽内に溶媒蒸気流入経路から流入した溶媒蒸気を冷却液化させて捕集する蒸気捕集工程を行っているときに、他のトラップ槽では、該他のトラップ槽の蒸気流入弁、排気弁及び高圧冷媒弁を閉じた状態でガス流入弁及び液体導入導出弁を開き、該他のトラップ槽内にガスを導入して該他のトラップ槽内に捕集した液体を加熱槽に排出する液体排出段階と、液体導入導出弁及びガス流入弁を閉じて排気弁及び予冷弁を開き、蒸気捕集工程を行っている一つのトラップ槽の蒸発器から導出したガス状冷媒を他のトラップ槽の蒸発器に導入し、該他のトラップ槽の蒸発器を経たガス状冷媒を圧縮機に吸入させる予冷段階とを含む再生工程を行い、複数のトラップ槽において前記蒸気捕集工程と前記再生工程とを切り替えて実施することを特徴とする冷却トラップ装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−223691(P2012−223691A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92616(P2011−92616)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(591245543)東京理化器械株式会社 (36)
【Fターム(参考)】