説明

冷却ファン駆動制御装置

【課題】油圧駆動型の冷却ファンを駆動する装置において、低温時の冷却ファンの作動状態を正確に把握することができるようにする。
【解決手段】この装置は、作業用車両の冷却ユニットを冷却する油圧駆動型のファンの回転数を制御するための装置であって、作動油の温度を検出するHST油温センサ12と、エンジン始動時のブースト温度を検出するブースト温度センサ13と、HST油温センサ12及びブースト温度センサ13の検出結果に基づいて冷却ファン4の回転数を制御する回転数制御手段と、HST油温センサ12及びブースト温度センサ13の検出結果に基づいてHST油温センサ12が10℃以下の場合に回転数制御手段で用いられる冷却ファン4の最低回転数をブースト温度に応じて決定する最低回転数決定手段と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却ファン駆動制御装置、特に、作業用車両の冷却ユニットを冷却する油圧駆動型のファンの回転数を制御するための冷却ファン駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルやホイルローダ等の作業用車両においては、エンジン冷却水や作動油を冷却するために、冷却ファンが設けられている。この冷却ファンとしては、エンジンによりベルト駆動されるタイプや、油圧モータによって駆動されるタイプのものが提供されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、冷却水温度、作動油温度及びエンジン回転数に応じて冷却ファンの回転数を連続的に制御するようにした油圧駆動冷却ファンが示されている。この文献に示された装置では、油圧モータの回転数を制御可能な可変容量型のポンプを設けるとともに、冷却水及び作動油の温度とエンジン回転数とを検出し、これらの検出結果に応じて可変容量型油圧ポンプの吐出容量指令値を演算して出力し、可変容量型油圧ポンプにより冷却ファンの回転数を連続的に制御するようにしている。
【特許文献1】特開2001−182535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油圧駆動型の冷却ファンの場合、冷却ファンが接続された油圧モータは油圧ポンプによって駆動される。周知の通り、作動油は低温時には粘度が高くなるので、特に固定容量型の油圧ポンプでは、低温時に低回転で冷却ファンを回転させようとしても、冷却ファンが回転しない場合がある。このような場合には、低温時における作動油の高粘度化によって冷却ファンが回転しないのか、あるいは冷却ファンの駆動装置に故障が発生しているのか判断できない。
【0005】
本発明の課題は、油圧駆動型の冷却ファンを駆動する装置において、低温時の冷却ファンの作動状態を正確に把握することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る冷却ファン駆動制御装置は、作業用車両の冷却ユニットを冷却する油圧駆動型のファンの回転数を制御するための装置であって、作動油の温度を検出する油温センサと、外気温度を検出する外気温度検出手段と、少なくとも油温センサ及び外気温度検出手段の検出結果に基づいて冷却ファンの回転数を制御する回転数制御手段と、油温センサ及び外気温度検出手段の検出結果に基づいて油温センサが所定温度以下の場合に回転数制御手段で用いられる冷却ファンの最低回転数を外気温度に応じて決定する最低回転数決定手段と、を備えている。
【0007】
この装置は、油圧駆動型の冷却ファンによって冷却ユニットが冷却される車両に用いられる。冷却ファンの回転数は、少なくとも作動油の温度及び外気温度の検出結果に応じて制御される。この冷却ファンの回転数制御においては最低回転数が設定されているが、本発明では、この最低回転数を、油温センサ及び外気温度検出手段の検出結果に基づいて、油温センサが所定温度以下の場合に外気温度に応じて決定するようにしている。
【0008】
ここでは、冬場などの低温時において作動油の粘度が高くなる場合には、冷却ファンの目標最低回転数を外気温に応じて制御している。例えば、作動油の温度が10℃以下の場合には、低温時ではない通常の環境の場合に比較して、冷却ファンの最低回転数を高く設定している。したがって、冷却ファンに駆動指令が出されているにもかかわらず、低温時における作動油の高粘度化によって冷却ファンが回転しないという問題を避けることができる。つまり、外気や油温が低温の場合で作動油の粘度が高くなった場合にも、冷却ファンを常に回転させることができる。
【0009】
第2の発明に係る冷却ファン駆動制御装置は、第1の発明の装置において、最低回転数決定手段は、外気温度が予め設定された第1温度より低い場合に最低回転数の決定処理を実行する。
【0010】
ここでは、作動油の温度に加えて外気温も考慮し、外気温が第1温度よりも低い場合に最低回転数を決定する処理を実行する。この場合は、環境に応じてより適切な処理を実行することができる。
【0011】
第3の発明に係る冷却ファンの駆動制御装置は、第1又は第2の発明の装置において、最低回転数決定手段は、外気温度が第1温度のときに冷却ファンの最低回転数を第1回転数に決定し、外気温度が第1温度より低い第2温度の場合は冷却ファンの最低回転数を第1回転数より高い第2回転数に決定する。
【0012】
この場合は、前記同様に、外気温に応じてより適切な最低回転数を決定することができ、より確実に冷却ファンを常に回転させることができる。
【0013】
第4の発明に係る冷却ファン駆動制御装置は、第3の発明の装置において、最低回転数決定手段は、外気温度が第1温度より低く第2温度より高い場合は外気温度に応じて冷却ファンの最低回転数を第1回転数と第2回転数との間の回転数に制御する。
【0014】
この場合は、冷却ファンの最低回転数を外気温度に応じてきめ細かく決定することができる。
【0015】
第5の発明に係る冷却ファン駆動制御装置は、第1から第4のいずれかの発明の装置において、冷却ファンはさらにエンジン冷却水を冷却するラジエータを冷却するものであり、エンジン冷却水の温度を検出する冷却水温度センサをさらに備え、回転数制御手段は冷却水温度センサの検出結果をも考慮して冷却ファンの回転数を制御する。
【0016】
第6の発明に係る冷却ファン駆動制御装置は、第1から第5のいずれかの発明の装置において、外気温度検出手段はエンジン始動時のエンジン吸気温度を検出するブースト温度センサである。
【0017】
ここでは、外気温の検出を、従来より車両に設けられているブースト温度センサを用いて行っているので、特別な外気温センサを設ける必要がない。
【0018】
第7の発明に係る冷却ファン駆動制御装置は、第1から第6のいずれかの発明の装置において、冷却ファンを駆動するための油圧ポンプは固定容量型のポンプである。
【0019】
冷却ファンを駆動するための油圧ポンプとしては、可変容量型ポンプと固定容量型ポンプとが存在する。可変容量型ポンプでは、低温時においても油圧モータに対して油圧を供給することが容易であるので、低温時において、回転指令が出されているにもかかわらず冷却ファンの回転が停止してしまうことは少ない。一方、固定容量型ポンプの場合は、本発明の課題が顕著であるので、本発明を固定容量型ポンプに適用して有効となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、冬場などの低温時においても、作動油の高粘度化による冷却ファンの回転停止状態を避けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[構成]
本発明の一実施形態による冷却ファン駆動制御装置を搭載した作業車両(例えばホイルローダ)のブロック図を図1に示す。
【0022】
本実施形態のホイルローダは、主として、エンジン1と、HST(ハイドロ・スタティック・トランスミッション)2と、冷却ユニット3と、冷却ファン4と、冷却ファン4を駆動するためのファン駆動部5と、エンジンコントローラ6と、冷却ファンコントローラ7とを備えている。
【0023】
エンジン1には、冷却水の温度(E/G水温)を検出する冷却水温度センサ10と、エンジン回転数を検出する回転数センサ11とが設けられ、これらの検出結果はエンジンコントローラ6に入力されている。また、HST2にはHST作動油を検出するためのHST油温センサ12が設けられ、以上のセンサ10,11及び12の検出結果に加えて、エンジン吸気温度を検出するブースト温度センサ13の検出結果が、冷却ファンコントローラ7に入力されている。
【0024】
冷却ユニット3には、エンジン冷却水を冷却するためのラジエータと、HST等の作動油を冷却するためのオイルクーラーと、運転室に設けられた空調機のための空調用コンデンサとが設けられている。
【0025】
ファン駆動部5は、冷却ファン4の駆動油圧源である油圧ポンプ15と、油圧モータ16と、油圧モータ16の回転方向及び回転数を制御するためのファン制御用油圧回路17とを有している。油圧モータ16は固定容量型の油圧モータである。この油圧モータ16の出力軸に、軸流ファンである冷却ファン4が取り付けられている。油圧モータ16は、油圧ポンプ15から吐出された圧油が流入ポートから流入されることによって回転作動されて冷却ファン4を回転させる。そして、油圧モータ16の流出ポートから流出された圧油はタンク23に戻される。
【0026】
ファン制御用油圧回路17は、冷却ファン4の回転方向を切り換えるための方向制御弁20と、方向制御弁20を介して油圧モータ16に供給する圧油の流量を制御する流量制御弁21と、EPC弁22とを有している。方向制御弁20は、図示しない別の油圧回路からの圧油によって弁位置が切り換えられ、図1に示す弁位置の場合は、油圧モータ16が正方向に回転し、別の位置の場合は油圧モータ16に対する圧油の流入方向が切り換えられて、油圧モータ16が逆方向に回転する。EPC弁22は冷却ファンコントローラ7から入力されたEPC電流に応じて弁位置が切り換えられる。このEPC弁22の弁位置によって流量制御弁21が制御されて、結果的に油圧モータ16の回転数が制御されるようになっている。
【0027】
[ファン回転制御特性]
図2にファンの回転制御特性を示している。ここで、以下で説明する「回転数」は制御上の目標回転数であって、実回転数ではない。
【0028】
同図(a)は冷却水温度に基づくファン回転制御特性T1を示している。ここでは、冷却水温度が70℃までは一定の最小回転数で、70℃から85℃までは800rpmで、85℃から90℃までは温度に応じて800rpmから1700rpmの間の適切な回転数で、さらに90℃以上の場合は最高回転数である1700rpmで回転させるような制御を行う。なお、冷却水温度が上昇する場合は、70℃で冷却ファン4の制御上の目標回転数を切り換えているが、冷却水温度が高温側から低温側に下降する場合は、70℃ではなく65℃になった時点で目標回転数を切り換えるようにしている。
【0029】
また、同図(a)では、最小回転数を250rpmとしているが、後述するように、HST油温が10℃以下、あるいはエンジン始動時のブースト温度が20℃以下の場合は、低温時回転制御を実行して最小回転数が決定される。
【0030】
同図(b)はHST油温に基づくファン回転制御特性T2を示している。ここでは、HST油温が10℃までは一定の最小回転数で、75℃から95℃まではHST油温に応じて800rpmから1700rpmの間の適切な回転数で、さらに95℃以上の場合は最高回転数である1700rpmで回転させるような制御を行う。このとき、HST油温が10℃から75℃の間では、同図(a)に示す冷却水温度によるファン回転制御特性T1によって制御を行う。また、ブースト温度が0℃以下でHST油温が10℃未満の場合は、後述するように、低温時回転制御を実行して最小回転数が決定される。
【0031】
同図(c)はブースト温度に基づくファン回転制御特性T3を示している。ここでは、ブースト温度が60℃以下の場合は、同図(a)に示す冷却水温度によるファン回転制御特性T1によって制御を行い、ブースト温度が60℃から70℃までは温度に応じて800rpmから1700rpmの間の適切な回転数で制御を行う。そして、このブースト温度よるファン回転制御は、冷却水温度が70℃を一度でも越えた時点で終了する。
【0032】
なお、各特性T1〜T3によって制御を実行する際に2以上の目標回転数が得られた場合は、そのうちの最も高い回転数を目標回転数としている。
【0033】
[低温時回転制御]
エンジン始動時の外気温としてのブースト温度が低い場合は、図2(d)に示された特性T4による低温時回転制御にしたがって冷却ファン(4)の最小回転数を決定している。すなわち、エンジン始動時のブースト温度が0℃以下の場合は、冷却ファン4の最小回転数を250rpmとし、0℃から20℃の場合は250rpmから800rpmの間の温度に応じた適切な回転数とし、20℃以上の場合は800rpmとしている。
【0034】
なお、ブースト温度が0℃以下で冷却ファン4の最小回転数を250rpmとするのは、HST油温が10℃以上の場合であり、HST油温が10℃未満の場合は、図2(e)に示された特性T5にしたがって冷却ファン4の最小回転数を決定している。すなわち、HST油温が10℃未満でエンジン始動時のブースト温度が0℃から−20℃の場合は、250rpmから970rpmの間の温度に応じた適切な回転数とし、−20℃以下の場合は970rpmとする制御を行う。また、HST油温が10℃未満でエンジン始動時のブースト温度が0℃から20℃の場合は、250rpmから800rpmの間の温度に応じた適切な回転数とする。
【0035】
[ファン回転制御]
次に、図3〜図7に示すフローチャートにしたがって、冷却ファンコントローラ7が実行する冷却ファン4の回転制御について説明する。この場合の冷却ファン4の回転制御は、前述の特性T1〜T5にしたがって実行される。なお、以下の説明における「回転数」は、前記同様に、すべて制御上の「目標回転数」であって、実際の冷却ファン4の回転数とは異なる。
【0036】
(1)最小回転数の決定
外気温(エンジン始動時のブースト温度)及びHST油温による冷却ファン4の最小回転数の決定処理は、基本的に図3に示すフローチャートにしたがって実行される。
【0037】
まず、ステップS1では、キーオン、すなわち車両のイグニッションキーがオンされて、エンジンが始動されたか否かを判断する。エンジンが始動された場合は、ステップS1からステップS2に移行し、冷却ファンコントローラ7に入力されている外気温としてのキーオン時のブースト温度(Bt0)を記憶する。ここで、外気温としてブースト温度センサ13の測定結果を用いるときは、キーオン時のブースト温度(Bt0)を用いるが、これは、エンジンが暖まると、外気温が一定でもブースト温度が高くなってしまい、正確な制御ができなくなるためである。なお、ここでは、ブースト温度センサ13は従来から車両に設けられているセンサであるために、このブースト温度センサを外気温センサとして用いているが、ブースト温度センサとは別に外気温センサを設けても良い。この場合は、ステップS1,S2省略して、その時々の外気温(Bt)を用いて制御を行うようにしても良い。
【0038】
次に、ステップS3において、HST油温が10℃以上であるか否かを判断する。HST油温が10℃以上である場合は、ステップS3からステップS4に移行する。ステップS4では、図2(d)に示す特性T4に基づいて冷却ファン4の最小回転数を決定する。これにより、冷却ファン4の最小回転数は、ブースト温度に応じて、250rpm、250rpmから800rpmの間の回転数、あるいは800rpmに決定される。
【0039】
また、冬場などのように外気温が低くHST油温が10℃未満の場合は、作動油の粘度が高いので、目標回転数が低すぎると冷却ファン4が回転しない場合がある。そこで、HST油温が10℃未満の場合はステップS3からステップS5に移行する。ステップS5では図2(e)に示す特性T5に基づいて冷却ファン4の最小回転数を決定する。これにより、冷却ファン4の最小回転数は、ブースト温度に応じて、970rpm、970rpmから250rpmの間の回転数、250rpmから800rpmの間の回転数、あるいは800rpmに決定される。なお、前述のように、250rpm〜970rpmという回転数は制御上の目標回転数であり、ステップS3で「No」と判断されるような冬場で油温が低い場合は、冷却ファン4の実際の回転数は100rpm程度になることが実験で判明している。
【0040】
(2)ブースト温度でのファン回転制御
ブースト温度によるファン回転制御処理は図4に示すフローチャートにしたがって実行される。
【0041】
ステップS10では、キーオンが実行されたか否かを判断する。キーオンが実行されるのを待って、ステップS10からステップS11に移行する。ブースト温度によるファン回転制御は、前述のように、冷却水温が一度でも70℃を越えた時点で終了するので、ステップS11では、冷却水温が一度でも70℃を越えたか否かを判断する。冷却水温が一度でも70℃を越えた場合は、ステップS11からステップS12に移行する。ステップS2では、ファン回転数を制御するための信号(ファン回転指令信号)は特に出力しない。一方、冷却水温が一度でも70℃を越えた場合は、ステップS11からステップS13に移行する。ステップS13では、キーオン時のブースト温度Bt0が60℃以上であるか否かを判断する。このブースト温度Bt0が60℃未満の場合は、ステップS12に移行して前記同様にファン回転指令信号は特に出力しない。一方、ブースト温度Bt0が60℃以上の場合はステップS13からステップS14に移行し、ここで、図2(c)に示される特性T3に基づいて冷却ファン4の回転数が制御されるように、ファン回転指令信号Rs3を出力する。
【0042】
(3)HST油温でのファン回転制御
前述のように、冬場などのように外気温が低くHST油温が10℃未満の場合は、作動油の粘度が高いので、目標回転数が低すぎると冷却ファン4が回転しない場合がある。そこで、図5に示すフローチャートにしたがって、HST油温に基づくファン回転制御を行っている。
【0043】
このHST油温に基づくファン回転制御は、基本的に図2(b)に示した特性T2にしたがって実行される。すなわち、まず、ステップS20では、特性T2における最小回転数(250rpm)を前述のステップS4あるいはステップS5で決定された最小回転数(特性T4,T5に基づく最小回転数)に書き換える。次に、ステップS21では、HST油温が10℃を越え75℃以下であるか否かを判断する。HST油温がこの温度範囲である場合は、ステップS21からステップS22に移行し、ファン回転指令信号は特に出力しない。一方、HST油温が10℃以下あるいは75℃を越えている場合は、ステップS21からステップS23に移行する。ステップS23では、図2(b)に示される特性T2に基づいて冷却ファン4の回転数が制御されるように、ファン回転指令信号Rs2を出力する。
【0044】
(4)冷却水温でのファン回転制御
冷却水温に基づくファン回転制御は、基本的に図2(a)に示した特性T1にしたがって実行される。この場合のフローチャートを図6に示している。すなわち、まず、ステップS30では、特性T1における最小回転数(250rpm)を前述のステップS4あるいはステップS5で決定された最小回転数(特性T4,T5に基づく最小回転数)に書き換える。そして次に、ステップS31において、図2(a)に示される特性T1に基づいて冷却ファン4の回転数が制御されるように、ファン回転指令信号Rs1を出力する。
【0045】
(5)ファン回転制御
以上のような制御処理が同時並列的に実行され、これらの処理によって得られたファン回転指令信号Rs1,Rs2,Rs3に基づいて、図7に示すフローチャートにしたがって冷却ファン4の回転制御が実行される。すなわち、ステップS40では、得られたファン回転指令信号Rs1,Rs2,Rs3のうち、ファン回転数が最も高くなる信号を選択する。そして、ステップS41では、ステップS40で選択された信号により冷却ファン4の回転数を制御する。具体的には、冷却ファン4の回転数がファン回転指令信号が指示する回転数になるように、EPC電流をEPC弁22に対して出力する。
【0046】
[本実施形態の特徴]
以上のような本実施形態では、冬場などにおいて、外気温が低く、かつHST油温が10℃以下の場合は、冷却ファン4の目標最小回転数を比較的高めにセットし、作動油粘度の増大による冷却ファン4の停止を防止している。このため、低温の状況下においても、冷却ファン4が正常に作動していることを確認することができる。
【0047】
また、夏場などのように外気温(ブースト温度)が高い場合は、冷却ファン4の最小回転数を比較的高い800rpmにセットしている。このため、運転室のクーラーを素早く効かすことができる。逆に冬場などのように外気温が0℃以下のような場合は、冷却ファン4の最小回転数を250rpmにセットしている。このため、エンジンの冷却を必要最低限にして暖気時間を短縮することができ、運転室のヒーターを素早く効かすことができる。さらに、外気温が0℃から20℃の場合は、温度に応じて適切な最小回転数を求めてこれをセットしているので、よりきめ細かい制御を行うことができる。
【0048】
このように、外気温に応じて冷却ファン4の最小回転数を変更しているので、クーラー性能とヒーター性能とを両立させることができる。
【0049】
さらに、外気温の検出手段としてブースト温度センサを用いているので、外気温検出のための特別なセンサを設ける必要がなく、コストを抑えることができる。
【0050】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0051】
(a)前述のように、外気温を検出するためにエンジン制御用として従来から設けられているブースト温度センサを用いたが、外気温を検出するための専用の温度センサを用いても良い。この場合は、図3のステップS1及び2を省略することができる。また、図4のステップS13は、エンジン始動時の温度Bt0ではなく、その時々の外気温Btを用いても良い。
【0052】
(b)外気温に応じたファン回転制御特性として、図2のT1〜T5を一例として説明したが、回転制御特性はこの図2に示された特性に限定されるものではない。
【0053】
(c)前記実施形態では、冷却ユニットを、エンジン冷却水用のラジエータと作動油冷却用のオイルクーラーと空調用コンデンサとによって構成した例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0054】
(d)作動油の温度を検出するセンサをHSTに設けたが、本発明の制御に用いる作動油の温度として、ファン駆動部5における油温を検出するようにしても良い。
【0055】
(e)前記実施形態では、本発明をホイルローダに適用した例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の例えば油圧ショベルやブルドーザ等の車両に対しても同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態による冷却ファン駆動制御装置を搭載したホイルローダの概略ブロック図。
【図2】冷却ファンの回転制御特性を示す図。
【図3】冷却ファンの最小回転数の決定の制御処理を示すフローチャート。
【図4】ブースト温度でのファン回転制御処理を示すフローチャート。
【図5】HST油温でのファン回転制御処理を示すフローチャート。
【図6】冷却水温でのファン回転制御処理を示すフローチャート。
【図7】冷却ファンの回転制御を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0057】
1 エンジン
2 HST
3 冷却ユニット
4 冷却ファン
5 ファン駆動部
7 冷却ファンコントロールユニット
10 冷却水温度センサ
11 エンジン回転数センサ
12 HST油温センサ
13 ブースト温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業用車両の冷却ユニットを冷却する油圧駆動型のファンの回転数を制御するための冷却ファン駆動制御装置であって、
作動油の温度を検出する油温センサと、
外気温度を検出する外気温度検出手段と、
少なくとも前記油温センサ及び前記外気温度検出手段の検出結果に基づいて前記冷却ファンの回転数を制御する回転数制御手段と、
前記油温センサ及び前記外気温度検出手段の検出結果に基づいて、前記油温センサが所定温度以下の場合に前記回転数制御手段で用いられる前記冷却ファンの最低回転数を前記外気温度に応じて決定する最低回転数決定手段と、
を備えた冷却ファン駆動制御装置。
【請求項2】
前記最低回転数決定手段は、
前記外気温度が予め設定された第1温度より低い場合に前記最低回転数の決定処理を実行する、
請求項1に記載の冷却ファンの駆動制御装置。
【請求項3】
前記最低回転数決定手段は、
前記外気温度が前記第1温度のときに前記冷却ファンの最低回転数を第1回転数に決定し、
前記外気温度が前記第1温度より低い第2温度の場合は前記冷却ファンの最低回転数を前記第1回転数より高い第2回転数に決定する、
請求項1又は2に記載の冷却ファン駆動制御装置。
【請求項4】
前記最低回転数決定手段は、外気温度が前記第1温度より低く前記第2温度より高い場合は前記外気温度に応じて前記冷却ファンの最低回転数を前記第1回転数と前記第2回転数との間の回転数に制御する、
請求項3に記載の冷却ファン駆動制御装置。
【請求項5】
前記冷却ファンはさらにエンジン冷却水を冷却するラジエータを冷却するものであり、
前記エンジン冷却水の温度を検出する冷却水温度センサをさらに備え、
前記回転数制御手段は前記冷却水温度センサの検出結果をも考慮して前記冷却ファンの回転数を制御する、
請求項1から4のいずれかに記載の冷却ファン駆動制御装置。
【請求項6】
前記外気温度検出手段はエンジン始動時のエンジン吸気温度を検出するブースト温度センサである、請求項1から5のいずれかに記載の冷却ファン駆動制御装置。
【請求項7】
前記冷却ファンを駆動するための油圧ポンプは固定容量型のポンプである、請求項1から6のいずれかに記載の冷却ファン駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−128039(P2008−128039A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311631(P2006−311631)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】