説明

冷却保存と配分を行うための装置およびそれに適した液体冷却一体ユニット

【課題】試料物質を冷却保存し配分するための装置、特にクロマトグラフィー用の試料ディスペンサーを提供すること。
【解決手段】本発明装置は、一つまたは複数の試料を入れるための容器(7)、液体冷却媒体(29)が貫流する少なくとも一つの中空スペース(13)を備えた容器(7)の少なくとも一つのセクション、液体冷却媒体(29)を供給するための供給接続部に繋がる単数または複数の前記中空スペース(13)、そして液体冷却媒体(29)を排出するための戻り接続部を備えている。装置は又、液体冷却ユニット(21)、単数または複数の中空スペース(13)の供給接続部に接続するユニットの供給接続部、単数または複数の中空スペース(13)の戻り接続部に繋がるユニットの戻り部、単数または複数の中空スペース(13)を通って液体冷却媒体(29)を送るためのポンプ(23)、液体冷却媒体(29)を冷却するためのペルティエ冷却ユニット(27)を備えている。加えて本発明は、このタイプの装置用の液体冷却一体ユニット(21)に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を冷却保存と配分するための装置、殊にクロマトグラフィー用の試料ディスペンサーに関するものである。試料を長期間に亘って一定温度で保持し、そして温度に左右される試料物質の特性を、取り出す時期とは関係なく一定に保持するために、装置は特定温度で保持される一つ又は複数の試料用収容容器を有している。一定温度で冷却することにより、個々の試料物質を同じ温度で分析でき、それにより結果を比較可能なものにする。本発明は又、試料を冷却保存し配分するための、この種の装置に適した液体冷却一体ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
とくに高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)では自動化されたディスペンサーが多く使用されており、そのディスペンサーには、同じ又は異なった試料物質を含んでいる可能性のある大量の分析試料が入っていることがある。このディスペンサーは必要な時に個々の試料を自動的に次の処理へ送る。試料は適切な収容容器内に配置されるが、その収容容器は一つには試料容器および場合により前記試料用の保持固定具であり、他方ではいわゆる試料プレートであることもある。個々の試料はサンプリング針により試料容器から取り出される。サンプリング針と容器はお互いに相対して可動なように構成されているので、それぞれの試料を個々にそして狙って取り出すことができる。希望する試料に到達できるようにするために、一般的にサンプリング針は複数の経路で移動可能になっている。別の解決手段では、可動する殊に回転またはスライドする試料プレートを使用している。これにより試料プレートの移動が少なくとも一つの移動軸により実現されるので、サンプリング針の移動のために必要なメカニズムが簡素化される。これは又、サンプリング針までの流体系統の長さを短くできるという利点もある。
【0003】
状況により分析に非常に長時間を要することがあるので、そして更に試料ディスペンサーの試料容量がますます増加するので、測定のためにディスペンサーに保存されねばならない個々の試料の滞留時間も長くなる。前述の理由のために、そして又多くの試料物質は室温でその成分が変わるかも知れないという事実により、試料を冷却するすることが必要になる。
【0004】
このために試料プレートを、ペルティエ冷却モジュールにより、すなわち熱電冷却装置により一定温度で保持することが公知である。このタイプのディスペンサーは十分な温度安定性を必要とする他に、比較可能な結果を得るために、試料の収容容器全体に亘って均一な温度分布を備えていなければならない。
【0005】
直接ペルティエ冷却を有する公知の試料ディスペンサーにおいては、試料プレートが、同じく試料プレートの一部である場合もある熱伝導金属要素を介して、ペルティエ冷却モジュールの低温側と結合している。ペルティエ冷却モジュールの高温側にはヒートシンクがついている。ヒートシンクの排熱熱は、別のファンにより送られる空気流中に排出される。
【0006】
十分な効率を達成するために、ペルティエ冷却モジュールと試料プレート間、およびペルティエ冷却モジュールと大気間の熱伝導抵抗は、出来るだけ小さいことが必要である。この必要性から最も有利な配置としてペルティエ冷却モジュールを、冷却する試料プレートの直接真下に置くことになる。よって、ヒートシンクをペルティエモジュールの下側に取り付けねばならない。回転試料プレートの場合には、ペルティエモジュールはヒートシンクと一緒に回転する。
【0007】
この構造では、冷却システム全体を試料プレートの下方に装備せねばならないという欠点が伴い、それにより必然的に装置全体の必要高さが大きくなる。別の欠点は、ペルティエ冷却モジュールの高温側での排熱を、試料プレートの直ぐ近くで行わねばならないということである。これにより、試料プレートないし収容容器全体および入れている試料に対する、ペルティエ冷却モジュールの高温側から排出された熱による温度上昇の影響を避けるために、複雑な断熱が必要となる。
【0008】
また試料の収容容器を直接熱電冷却するほかに、エア冷却の使用が知られている。冷却ユニット内でエアを希望する温度にする。ファンが十分に強力なエア流をつくり出し、そのエア流が試料プレートまたは収容容器を通過して冷却する。この冷却ユニットは、いろいろな構成で実現でき、例えば熱電または気化に基づいたものとすることもある。
【0009】
空気の熱容量が低いことにより、十分な熱移動を達成するためには大量のエア流が必要である。これにより大きな断面の導管が必要であり、必要なスペースおよび据え付け場所が増大する。冷却媒体として空気の熱容量が小さいことにより、加えて均一な温度分布を確保することが難しくなる。
【0010】
最後に挙げる公知の方法は、外部冷却システムを使って試料ディスペンサーの収容容器を冷却する方法である。例えば、外部液体冷却システムを低温保持装置の形式で試料ディスペンサーと結合することが知られている。希望する温度に冷却した冷却媒体を低温保持装置が供給する。試料プレート下方にあるエリアを冷却液体が貫流することにより、冷却液体と同じ温度にする。
【0011】
この解決手段の欠点は特に、追加の外部ユニットにより大きなスペースを必要とすることである。また適切に運転するために、冷却システムをまず接続して、充填しそして排気せねばならない。
【0012】
公知のそのような試料ディスペンサーは、固定した試料プレートを有しているので、試料を取り出すために複雑な針駆動を備えている必要性があり、よって接続系統が長くなる。
【0013】
別の欠点は、冷却液体の温度を外部ユニットで制御することである。これにより収容容器の温度が、他のファクターすなわち周囲温度や空気の動き、および冷却液体系統の長さによって決まる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
よって本発明の課題は、試料物質を冷却保存と配分するための装置、特にクロマトグラフィー用の試料ディスペンサーを提供することであり、そのとき公知システムにおける前述の欠点を解消し、そして最小のユニットの高さを可能にするものである。さらに本発明の課題は、そのような装置用の液体冷却一体ユニットを提供することである。
【課題を解決する手段】
【0015】
本発明は、特許請求項1および7の特徴を使って、この課題を解決する。
【0016】
本発明は、液体冷却ユニットにペルティエモジュールを使用する場合には、試料を冷却保存と配分するための装置、例えばクロマトグラフィー用試料ディスペンサーで液体冷却を使用することが容易に可能であり、それにより小さいサイズ殊に低い高さで設計できるという考えに基づいている。液体冷却媒体を使って熱を収容容器から液体冷却ユニットの所まで熱を移動するときに、そのような冷却モジュールは、対応して小さく、そして試料物質を冷却保存と配分するための装置内で、任意の場所に設けることができる。
【0017】
液体冷却ユニット特にそれに備えられたペルティエ冷却モジュールを、収容容器から間隔を有して設けることにより、ペルティエ冷却モジュールの高温側から排出される熱エネルギーを、収容容器を加熱することなく排出できるという利点が得られる。
【0018】
本発明の実施例によれば、収容容器の少なくとも一部に設けられており液体冷却媒体が貫流する少なくとも一つの中空スペースは、導管の形式で構成されている。
【0019】
導管を適切に循環することにより、または流入部と戻り部間で同じ断面および同じ流れ抵抗を有する複数の導管を使用することにより、収容容器殊に試料プレートの均一な温度を達成することができる。
【0020】
例えば少なくとも一つの導管を、その第一セクションがその流入接続部から戻りポイント又は戻りエリアまで延伸し、そして第二セクションが戻りポイント又は戻りエリアからその戻り接続部に延伸するように構成することができ、そのとき第一セクションは基本的に、その全長に亘って第二セクションと平行に延伸している。これにより、(少なくとも)一つの導管における第一セクションの一部と第二セクションの一部が配置された二重導管の各長手部分において、単位長さ当たりで均一な熱放散であると仮定すると、基本的に同じ量の熱を吸収できることが保証される。
【0021】
そのとき、第一および第二セクションを有する(少なくとも)一つの導管を、ダブル渦巻きまたは二重屈曲構造を形成するものとすることができる。
【0022】
本発明の別の実施例によれば、温度センサーを設けていることがあり、それが収容容器の実際温度を、好ましくは試料物質近くの位置で検知する。温度センサーの信号を受信する制御ユニットを加えることにより、ポンプの出力および/またはペルティエ冷却モジュールの出力をコントロールして、検知した実際温度を事前に設定した規定温度の許容値内に保持することができる。
【0023】
試料を冷却保存および配分するためのそのような装置に適した液体冷却一体ユニットは、吸入部から排出部へ液体冷却媒体を送るためのポンプを備えており、そのポンプは、中に吸入部と排出部を設けている、又はそれに吸入部または排出部と接続しているポンプハウジングを有している。
【0024】
ポンプハウジング壁は、少なくとも一つの冷却エリアで低い熱伝導抵抗となるように構成されている。この冷却エリアにおいては、少なくとも一つのペルティエ冷却モジュールが良好な熱伝導状態でポンプハウジングに接続されており、ポンプハウジングを貫流する冷却媒体から熱エネルギーをヒートシンクへ移す効果がある。そこでヒートシンクは直接、ペルティエ冷却モジュールの高温側に接続されている。ポンプハウジングの外壁とこれに対向するヒートシンクの壁の間で(少なくとも)一つのペルティエ冷却モジュールを配置している範囲外で、ポンプハウジングとヒートシンクの間に断熱材を設けている。これにより、ペルティエ冷却モジュールの高温側からその低温側、よってポンプハウジングへの逆作用を防ぎ、それにより全体としての効率が向上する。
【0025】
ヒートシンクを、表面を増加した構造のラジエーターとして構成することがある。
【0026】
ヒートシンク、ポンプハウジング、ペルティエ冷却モジュール、断熱材からなるユニット内に配置された電動モーターを、ポンプ駆動として好ましくはヒートシンク容積内に備えていることがある。これにより、構造的に非常に小さい液体冷却ユニットとなる。
【0027】
この配置ではポンプ駆動が、熱ロスをヒートシンクに直接放出することができるので、これはペルティエ冷却モジュールの高温側から熱エネルギーを放散させるためだけでなく、ポンプ駆動の熱ロスの放散のためにも役立つ。これにより又、液体冷却ユニットの極端にコンパクトな構造が可能になる。
【0028】
電動モーターを、永久磁石ローターの付いた電気的に整流するモーターとして実施すると特に目的に適っている。この場合にはローターに電気エネルギーを供給する必要がないので、密封されたポンプハウジング内にこれを直接配置できる。ローターを駆動するために必要な回転磁界は、対応するステーターコイルを設けるだけでなく、永久磁石を取り付けている外側ローターを備えることにより実現することができる。
【0029】
密封したポンプハウジング内部に永久磁石を設けることにより、駆動シャフトをポンプハウジングの外に延伸する必要がないという利点が得られる。別の利点は、永久磁石ローターは熱ロスを放出しないということである。ラジエーターは、同じく液体冷却ユニットに一体構成されたファンにより冷却することができる。
【0030】
勿論、ポンプ駆動用電動モーターのシャフトをポンプハウジングの外に延伸して、ファンの回転翼と接続していることもある。この場合には、ポンプハウジングを通ってポンプ駆動シャフトを密封貫通させることが必要であるが、別のファンモーターを必要としない。
【0031】
別の実施例によれば、勿論別の電動モーター駆動が付いたファンを使用していることもある。この電動モーターは、外側ローターを駆動するために同時に永久磁石と結合され、これを回転駆動することができる。外側ローターの永久磁石により発生した回転磁界により、(貫通突出シャフトのない)密封して収容されたローターを駆動することができる。
【0032】
本発明の好ましい実施例によれば、ポンプ自体をポンプ回転翼がついた遠心ポンプとして構成している。
【0033】
ポンプハウジング内にありポンプハウジング冷却エリアに接する容積に含まれる冷却媒体を、効果的にポンプ回転翼が混合するように、ポンプ回転翼および(少なくとも)一つのペルティエ冷却モジュールをポンプ内または接して配置していることがある。
【0034】
これにより、そうでなければ冷却媒体を撹拌するために必要であるがポンプハウジング内部で流体抵抗を増加するであろう混合要素を廃止することができる。
【0035】
その他の実施例は従属請求項から分かる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下において、図面で表した実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0037】
図1は、例えば小さい試料容器5に入れている場合のある試料3を、冷却保存し配分する装置1の概略を示している。勿論、試料容器5をケージ(図示せず)に保持していることもある。
【0038】
代わりに凹みのある試料受け部に、物質を直接入れていることもある。以下の記述においては、実際の試料物質3を入れる手段を収容容器7と呼ぶことにする。図示している実施例では、収容容器7は試料容器5とカップ形状の試料プレート9を備えており、底部および外壁のところで断熱材11により断熱されている。断熱材11は十分上手く熱を遮断する材料でできており、十分な厚みを有している。
【0039】
少なくとも試料プレート9の底部には、液体冷却媒体を循環するために、例えば導管13の形状(図3a、図3b)で中空スペースが設けられている。液体冷却媒体は、試料プレート9の同軸スタッド17にある適切な回転貫通部15(図3a)を通って、試料プレート9に至る。同軸スタッド17と回転貫通部15には流入口と戻り口が設けられており、それぞれが対応する導管13の端部に繋がっている。流入口と戻り口のそれぞれは接続配管19を介して、液体冷却一体ユニット21の流入口と戻り口に接続している。液体冷却一体ユニット21は、接続配管19およびそれに接続する導管13を通じて液体冷却媒体を送るためのポンプ23を備えている。
【0040】
試料を取り出す各試料容器5を配分位置に移動するために、試料プレート9の同軸スタッド17の内側にある回転貫通部15により、試料プレート9をその軸を中心に回転駆動するように構成することができる。そのとき試料プレートの角度位置とは関係なく回転貫通部15は、導管13と回転貫通部15の流入口と戻り口およびそれと接続する接続配管19すべてとの接続を確実に保持するようになっている。
【0041】
液体冷却一体ユニット21と試料プレート9または収容容器7を空間的に分離して、液体冷却媒体を介して収容容器7から液体冷却ユニット21へ熱を送ることにより、装置1の共通なハウジング(図示せず)内で液体冷却ユニット21をフレキシブルに配置できるという利点が得られる。ペルティエ冷却モジュールを介して直接底部から冷却する公知の試料プレート9と比較すると、このような装置においては低い装置高さとなるという利点が得られる。
【0042】
さらに、液体冷却一体ユニット21が収容容器7とは空間的に分離していることにより、液体冷却ユニット21が逆に収容容器7に対する熱放散するという逆作用が少ないという利点が得られる。如何なる場合でも、それが例え液体冷却ユニット21が収容容器7に直接隣接している時でも、断熱材を用いることによりそのような逆作用を避けることができる。多くの場合は、液体冷却ユニット21を収容容器7から十分に間隔を持たせて配置できるので、そのような断熱材を必要としない。例えば液体冷却ユニット21の高温側を、装置1のハウジングの背面または異なった外側壁に配置することができる。
【0043】
図2は、液体冷却一体ユニット21における実施例の概略断面図である。液体冷却ユニット21は、遠心ポンプとして構成されたポンプ23を備えている。ポンプハウジング25は、ポンプハウジング25をペルティエ冷却モジュール27の低温側に接続している少なくとも一つのエリアが、熱伝導の良い材料でできているので、ポンプハウジング25内にある液体冷却媒体29からペルティエ冷却モジュール27の低温側へ熱が移ることに関して熱伝導抵抗が十分に小さい。
【0044】
遠心ポンプは、ポンプハウジング25に吸入口31および排出口33を有している。吸入口31と排出口33を、収容容器7の流入口と戻り口または接続配管90(訳注:19のミスとも思われるが原文のまま)を介して回転貫通部15に接続できる(図1)。
【0045】
ポンプハウジング25の内側に、遠心ポンプ23の回転翼35が設けられている。回転翼はシャフト37により、ポンプハウジング25の内部で回転できるように保持されている。ポンプハウジング25が、シャフトおよびそのために必要なベアリングを閉じ込めていると好ましく、それによりポンプハウジング25からシャフト37をシールしながら突出させる必要がない。よって、手間がかかり且つシールしながら回転体を貫通させる必要がない。
【0046】
回転翼35は、ペルティエ冷却モジュール27の低温側方向に熱が通るハウジング壁範囲に、直接隣接しているポンプハウジング25内側容積内にある。これによりハウジング壁のこの領域付近で渦巻き流が発生し、それがペルティエ冷却モジュールにより既に冷却された冷却媒体、および流入する比較的暖かい冷却媒体を上手く混合する。これが著しくペルティエ冷却モジュールからの熱伝達、それによりシステム全体の効率を改善する。
【0047】
ポンプハウジング内でのベアリングの摩耗を最少で維持するために、シャフト37をセラミック材料でつくっていると好ましい。よって同時に、金属材料と較べて低い熱伝導性により、熱エネルギーがポンプの内側領域に持ち込まれ、そしてこの熱が液体冷却媒体29に移ることを防ぐ。
【0048】
図2で示すように、ポンプハウジング25はまた、余分な冷却媒体29を入れる一体型貯蔵容器39を付けて設計することもある。上部エリアに貯蔵容器39を加えることにより、前記容器に貯えられた冷却媒体を供給開口部41を介して、循環する冷却媒体に自動的に加えられる。
【0049】
貯蔵容器39には注入部43を介して注入できる。一部だけ冷却媒体を貯蔵容器39に注入することにより、エアで満たされた貯蔵容器39の残りの体積は同時に、運転状態により決まる冷却液体の熱膨張のためのバランスタンクとして働く。冷却媒体の全体温度が高いと、必要とする冷却媒体量が増加するので貯蔵容器39内の液体レベルが上がり、液体の上方にあるエアが圧縮される。
【0050】
ペルティエ冷却モジュール27の高温側は、直接ラジエーター45に繋がっている。このラジエーターは、放出熱エネルギーを大気へ伝達する表面積を増やすために、一般的な冷却リブ47を有していることがある。
【0051】
ラジエーター45からの熱放出を改善するために、ファン49を排気側に設けていることがある。ファン翼51を回転駆動するために、ファン49が独立した電動モーターを備えていると好ましい。
【0052】
電動モーター駆動53によりポンプの駆動を行うが、その電動モーターは、シャフト37上にありポンプハウジング25内部で電動モーター駆動53のローターを形成する永久磁石55、およびモーターが動くために必要な変動電磁界をつくるステーターコイル47(訳注:番号47は“冷却リブ”であり57の間違いと思われるが原文のまま)で出来ている。そのとき図2に示すように、電動モーター駆動53がラジエーター45の容積内に収容されていると好ましい。これにより一方で非常にコンパクトな構造という利点があり、他方では電磁駆動53、殊にステーターコイル57により発生する熱エネルギーを同じく、ラジエーター45を介して直接放出できる。
【0053】
しかし勿論、遠心ポンプ23のために別タイプの電気駆動も想定できる。例えばステーターコイル57の代わりに、シャフト37と同軸で回転支承されている外側ローターを設けることも出来る。この外側ローターは永久磁石を備えており、その回転が永久磁石55のついたポンプ内側ローターを駆動するために必要な変動磁界をつくる。この外側ローターを例えばファン49の電動モーター駆動と結合して、それにより駆動することもある。
【0054】
本発明の別の実施例(図示せず)によれば、ポンプシャフト37をラジエータ45の背面から延伸して、ファン翼51と結合していることがある。このようにすれば、ファン49のために独立した電気駆動を必要としない。
【0055】
ラジエーター45とポンプハウジングの間に、断熱材59のあることがある。図2で示すようにポンプハウジングはまた、ポンプハウジングがペルティエ冷却モジュール27の低温側に接続するエリアを除いて、断熱材59を使って完全に囲まれている。勿論、断熱材59を断熱ハウジング61の外壁により取り囲み、それにより外部の環境要因から断熱材59を保護している。よって断熱ハウジング61から出ているのは、吸入口31、排出口33、および場合により注入部43である。
【0056】
よって図2で示した液体冷却一体ユニットは、極度にコンパクトな構造を有しており、試料物質の冷却保存および配分するための、サイズの小さい機器が可能になる。
【0057】
図3aは、図1の試料プレート9における底部の水平断面の概略断面図を示している。図3aの水平断面および図3bの断面外観から明らかに分かることは、試料プレート9がその底部で液体冷却媒体用の導管を有しており、その導管は基本的に二重渦巻きの形状を有していることである。冷却媒体は回転導通部15から出て来て、流入部から矢印Xの方向に導管13に達し、そして基本的に螺旋状に導管13の戻りポイントまたはエリア63に流れる。
【0058】
戻りエリア63に達した後に冷却媒体は、流入部と戻りエリア63の間の導管13の第一セクションに基本的に平行に、回転貫通部15の戻り部に逆流する(図3aの矢印Y方向)。導管13の第一セクションおよび戻りエリア63と戻り部の間にある導管13の第二セクションは平行に走っていることにより、試料容器19(訳注:番号9と思われるが原文のまま)の底部上方で非常に均等な温度分布が達成される。
【0059】
図3a、図3bで示すように導管13は、例えば導管要素69を試料プレート9の底部にある下部壁65と上部壁67の間に設けることにより具体化でき、そのとき導管13は、導管要素69の内側壁と下部または上部壁65,67の組み合わせ効果により形成される。ダブル渦巻き構造をフラットな要素、例えば薄板材料または同等品にプレスして、導管要素69をつくることができる。
【0060】
もちろんダブル渦巻き構造の代わりに、第一導管セクションが流入部から戻りポイントに至り、そして第二導管セクションが戻りポイントから戻り部に、基本的にお互いに平行に走ることを保証する別の構造であってもよい。
【0061】
収容容器7の温度を厳しい許容差内で一定に保持するために、容器特に試料プレート9の底部に又は内側に温度センサー71を設けることがあり、その温度信号をコントロールユニット73に送ることができる。それにより、収容容器7の温度を一定の規定値に制御するために、コントロールユニット73が液体冷却ユニット21、殊にポンプ23の出力とペルティエ冷却モジュール27の出力を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】試料物質用の収容容器および本発明に記載の液体冷却一体ユニットを有するクロマトグラフィー用試料ディスペンサー主要構成部品の概略図。
【図2】図1における液体冷却一体ユニットの概略断面図。
【図3a】冷却媒体用導管の螺旋形状構成を有する図1における収容容器の、上部概略外観図。
【図3b】冷却媒体用導管の螺旋形状構成を有する図1における収容容器の、A−A線に沿った断面図。
【符号の説明】
【0063】
3 試料物質
5 試料容器
7 収容容器
9 試料プレート
11 断熱材
13 導管、中空スペース
15 回転貫通部
17 同軸スタッド
19 接続配管
21 液体冷却一体ユニット
23 ポンプ
25 ポンプハウジング
27 ペルティエ冷却モジュール
29 液体冷却媒体
31 吸入口
33 排出口
35 回転翼
37 シャフト
39 貯蔵容器
41 供給開口部
43 注入部
45 ヒートシンク、ラジエーター
47 冷却リブ
49 ファン
51 ファン翼
53 電動モーター駆動
55 永久磁石
57 ステーターコイル
59 断熱材
61 断熱ハウジング
63 戻りポイントまたはエリア
65 下部壁
67 上部壁
69 導管要素
71 温度センサー
73 コントロールユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を冷却保存し配分するための装置であって、殊にクロマトグラフィー用の試料ディスペンサーにおいて、
a)一つ又は複数の試料物質(3)を入れる収容容器(7)を有しており、収容容器(7)の少なくとも一部は、液体冷却媒体(29)が貫流する少なくとも一つの中空スペース(13)を有しており、
b)(少なくとも)一つの中空スペース(13)は、冷却媒体(29)を供給するための流入部、および冷却媒体(29)を排出するための戻り部に接続されており、
c)液体冷却ユニット(21)が付いており、その流出部は(少なくとも)一つの中空スペース(13)の流入部に接続しており、その戻り部は(少なくとも)一つの中空スペース(13)の戻り部に接続しており、そのユニットは冷却媒体(29)を冷却するために、(少なくとも)一つの中空スペース(13)およびペルティエ冷却モジュール(27)を通って冷却媒体(29)を送るためのポンプ(23)を有している装置。
【請求項2】
(少なくとも)一つの中空スペース(13)が、冷却媒体(29)が貫流する導管(13)として構成されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
(少なくとも)一つの導管(13)は、前記導管の第一セクションが流入部から戻りポイント(63)または戻りエリアに延伸し、前記導管の第二セクションが戻りポイント(63)または戻りエリアからその戻り部に延伸し、そのとき第一セクションの全長が基本的に第二セクションと平行に延伸していることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
(少なくとも)一つの導管(13)の第一セクションと第二セクションが、ダブル渦巻きまたは二重の屈曲形状の構造を形成していることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
好ましくは試料物質(3)に隣接する位置に、収容容器(7)の実際温度を検知する温度センサー(71)を備えていること、そしてコントローラー(73)を備えており、そのコントローラーが温度センサー(71)の信号を受信して、検知された実際温度が設定された規定温度に等しい設定限度内であるように、ポンプの出力および/またはペルティエ冷却モジュール(27)の出力を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項6】
試料を冷却保存し配分するための装置、殊にクロマトグラフィー用試料ディスペンサーのための液体冷却一体ユニットにおいて
a)液体冷却媒体(29)を吸入部(31)から排出部(33)に送るためのものであってポンプハウジング(25)を有するポンプ(23)が付いており、そのハウジングに吸入部(31)と排出部(33)が設けられている、又はそれと吸入部(31)と排出部(33)が接続している、
b)ポンプハウジング(25)の壁が、少なくとも一つの冷却エリアにおいて低い熱伝導抵抗を有しており、
c)ポンプハウジング(25)を貫流する冷却媒体(29)からヒートシンク(45)に熱エネルギーを移すために、低温側がポンプハウジング(25)の冷却エリアに直接取り付けられた少なくとも一つのペルティエ冷却モジュール(27)を有しており、
d)ヒートシンク(45)が、ペルティエ冷却モジュール(27)の高温側に直接取り付けられており、
e)ポンプハウジング(25)とヒートシンク(45)の間で、(少なくとも)一つのペルティエ冷却モジュール(27)を配置しているエリアの外側に、断熱材(59,61)を設けている液体冷却一体ユニット。
【請求項7】
ヒートシンクをラジエーター(45)の形式で構成していることを特徴とする請求項6に記載の液体冷却ユニット。
【請求項8】
ポンプ駆動が電動モーター(53)として構成されており、そしてヒートシンク(45)、ポンプハウジング(25)、ペルティエ冷却モジュール(27)、断熱材(59,61)から成るユニットの内側で、好ましくはヒートシンク(45)の容積内に配置されていることを特徴とする請求項6または7に記載の液体冷却ユニット。
【請求項9】
ポンプ駆動(53)が、その熱的なパワーロスを直接ヒートシンク(45)に放出することを特徴とする請求項8に記載の液体冷却ユニット。
【請求項10】
電動モーター(53)が永久磁石ローターを有しており、そのとき永久磁石ローターが好ましくは、密封されたポンプハウジング(25)の内側に配置されていることを特徴とする請求項8または9に記載の液体冷却ユニット。
【請求項11】
ヒートシンク(45)はファン(49)により冷却されており、そのときファンが好ましくは液体冷却ユニット(21)に一体化して構成されていることを特徴とする請求項7から10のいずれか一つに記載の液体冷却ユニット。
【請求項12】
電動モーター(53)のシャフト(37)が、ポンプだけでなくファンの回転翼とも接続されていることを特徴とする請求項11に記載の液体冷却ユニット。
【請求項13】
ファン(49)が別の電動モーター駆動を有していることを特徴とする請求項11に記載の液体冷却ユニット。
【請求項14】
ファン(49)の電動モーター駆動が、回転駆動される永久磁石ユニットと結合しており、そのユニットが、密封されたポンプハウジング(25)内に配置されたローターを駆動するための回転磁界を生み出すことを特徴とする請求項10から13のいずれか一つに記載の液体冷却ユニット。
【請求項15】
ポンプが遠心ポンプとして構成されていることを特徴とする請求項1から14のいずれか一つに記載の液体冷却ユニット。
【請求項16】
回転翼(35)が、ポンプハウジング内でポンプハウジング(25)の冷却エリアに隣接する容積内にある冷却媒体(29)を効果的に混合するように、遠心ポンプ(23)の回転翼(35)および(少なくとも)一つのペルティエ冷却モジュールが配置されていることを特徴とする請求項15に記載の液体冷却ユニット。
【請求項17】
冷却媒体(29)の貯蔵容器(39)を備えており、それがポンプハウジング(25)に接続または一体化されていることを特徴とする請求項1から16のいずれか一つに記載の液体冷却ユニット。
【請求項18】
ポンプハウジング(25)で出来ている液体冷却ユニット(21)の全低温部、そして貯蔵容器を使用できる場合には貯蔵容器(39)が、一種の断熱材料(59)により基本的に完全に取り巻かれていることを特徴とする請求項1から17のいずれか一つに記載の液体冷却ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate


【公表番号】特表2008−508532(P2008−508532A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524167(P2007−524167)
【出願日】平成17年7月18日(2005.7.18)
【国際出願番号】PCT/DE2005/001264
【国際公開番号】WO2006/012836
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(506203811)ディオネクス ゾフトロン ゲーエムベーハー (7)
【氏名又は名称原語表記】DIONEX SOFTRON GMBH
【住所又は居所原語表記】Dornier−strasse 4,82110 Germening(DE)
【Fターム(参考)】