説明

冷却具

【課題】ペットボトルなどに収容される飲料物などの被冷却物を冷却することができる冷却具を提供する。
【解決手段】冷却具1は、冷却部10と、底部20と、開閉部30とを備えている。冷却部10は、ペットボトルBの側面における全周囲を被覆している。また、冷却部10は吸収材11を備えており、吸収材11に吸収されている水が、気化するために必要な熱をペットボトルB内の飲料物から奪うため、ペットボトルB内の飲料物が冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットボトルなどに収容される飲料物などを冷却する冷却具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、飲料物は一般的にペットボトルなどに収容された状態でスーパーやコンビニエンスストアなどで販売されている。従って、消費者はペットボトルなどに収容された状態で飲料物を購入する。
【0003】
これら飲料物は、購入される直前までスーパーやコンビニエンスストアに設けられた冷蔵庫で保存されているため、消費者は冷えた状態の飲料物を飲むことができる。しかしながら、飲料物は、ペットボトルが購入したままの裸の状態である場合、外気の影響を直接的に受けてすぐに常温になってしまう。
【0004】
上記のような問題に鑑みて、従来から飲料物の温度を保つための保冷具が知られている。この保冷具について、例えば、下記特許文献1が開示している。特許文献1の保冷具は、飲料物を収容したペットボトルを断熱シートで包むことにより、断熱シート内の温度を維持して、飲料物の温度の変化を低減させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−26258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の保冷具は、予めペットボトル内の飲料物を冷やしておかなければならない。また、この保冷具を使用した場合、ペットボトルが裸の状態である場合と比べると温度の上昇は緩やかになるが、ペットボトル内の飲料物の温度は上昇してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑み、ペットボトルなどに収容される飲料物などの被冷却物を冷却することができる冷却具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る冷却具は、上記の目的を達成するために、吸水性を有する繊維素材からなる吸水材を備えており、被冷却物の側面を被覆する態様で設けられ、吸収材に吸収された水が気化するときに被冷却物の熱を奪うことによって被冷却物を冷却することを特徴とする。これによれば、吸収材に吸収された水が周りの被冷却物から熱を奪って気化するため、熱を奪われた被冷却物は冷却される。
【0009】
また、吸収材の外側に層状に設けられ、速乾性を有する繊維素材からなるカバー部材を備えるのが好ましい。これによれば、カバー部材が吸収材の水を吸収してすぐに気化させることにより、吸収材に吸収された水の気化を補助して、水の気化効率を向上させる。さらに、カバー部材はすぐに乾くため、手で持ったときの濡れ感がほとんどない。
【0010】
また、カバー部材は、複数の孔が形成されているのが好ましい。これによれば、吸収材の水を複数の孔を通じて大気に直接気化させることができる。
【0011】
また、吸収材の内側に層状に設けられ、熱伝導性の高い繊維素材が編み込まれたインナー部材を備えるのが好ましい。これによれば、被冷却物の熱が吸収材に伝導しやすくなり、被冷却物を効率的に冷却することができる。
【0012】
また、熱伝導性の高い繊維素材は、被冷却物側に突出する態様で編み込まれているのが好ましい。これによれば、熱伝導性の高い繊維素材のみを被冷却物と積極的に接触させることができる。また、熱伝導性の高い繊維素材の使用量を必要最小限に抑えることができるため、コストダウンも図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、吸収材が被冷却物の側面を被覆する態様で設けられ、吸収材に吸収された水が気化するときに被冷却物の熱を奪うことによって被冷却物を冷却することができる。従って、水を吸収材に吸収させることのみで、いつでも、簡単に、冷却された被冷却物を飲んだりすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態に係る冷却具の使用状態を示す概略斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】図3の一点鎖線で示した要部IVの拡大図である。
【図5】第2の実施形態に係る冷却具の図2に対応する線断面図である。
【図6】第2の実施形態に係る冷却具のインナー部材の表面を示す拡大斜視図である。
【図7】冷却効果評価試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
次に、本発明に係る冷却具の実施形態について図面を参照しつつ説明する。この実施形態に係る冷却具1は、内容量が500mlのペットボトルBに収容される飲料物を冷却するために用いられるものである。冷却具1は、図1に示すように、冷却部10と、底部20と、開閉部30とを備え、有底の円筒形状で形成されており、ペットボトルBの上部のみを露出させてペットボトルBを被覆する態様で使用される。
【0016】
前記冷却部10は、ペットボトルBの側面における全周囲を被覆しており、冷却具1の側面部を形成している。冷却部10は、図2および図3に示すように、3枚の繊維部材が層状に重ねられ、内側(ペットボトルB側)からインナー部材13、吸収材11およびカバー部材12から構成される。
【0017】
前記吸収材11は、吸水性を有する繊維部材である。吸収材11の構造としては、例えば、細い繊維素材が絡み合った立体メッシュ構造があげられる。吸水材11を構成する繊維素材としては、例えば、綿やベルオアシス(登録商標)などがあげられる。このベルオアシスは直径が約3μmの繊維からなり、高吸水性かつ高吸湿性を有し、自重の約4倍の質量の水を吸水する素材である。その他、吸水材11の素材としてはセラミックスもあげられる。
【0018】
この吸水材11は、水道水などの水に浸されると繊維部材内部に水を吸収して、いわゆる気化熱を利用してペットボトルB内の飲料物を冷却する。すなわち、水は気化するときに周りから熱を奪う性質を有しているため、それと同様、吸水材11に吸水された水が気化するときに周りにあるペットボトルB内の飲料物から熱を奪い、奪われた熱の分だけペットボトルB内の飲料物が冷却される。
【0019】
また、吸収材11は、繊維素材からなることより軽量であるため、携帯性が高い。また、吸収材11は柔軟性もあるため、任意のペットボトルBの形状にも対応可能である。なお、吸水材11に水を多く吸収させればさせる程、水の気化する作用を長時間継続させることができる。
【0020】
前記カバー部材12は、吸収材11の外側に層状に設けられた速乾性を有する繊維部材である。このカバー部材12の構造としては、速乾性を有するものであれば特に限定されるものではない。また、カバー部材12の素材としては、ポリエステルやナイロンなどがあげられる。
【0021】
このカバー部材12は、内側の吸収材11に接しており、吸収材11に吸収されている水の気化を補助するようになっている。すなわち、吸水材11に吸収されている水はカバー部材12に移るかのように浸透するが、カバー部材12が速乾性を有することから、カバー部材12に浸透した水が速やかに気化することとなる。このため、カバー部材12は吸水材11とは異なり、水をほとんど保持することがないため、表面の濡れ感を軽減することができ、冷却具1の使用者は違和感なく把持することができる。
【0022】
また、カバー部材12は、全面に亘って複数の貫通孔121が形成されている。これにより、吸水材11に吸水されている水は、カバー部材12の貫通孔121を通じて大気に直接気化することができる。
【0023】
インナー部材13は、図2および図3に示すように、吸収材11の内側に層状に設けられており、カバー部材12とともに吸収材11を挟み込んで吸収材11を支持する。このインナー部材13は、カバー部材12と同一の構成を有しており、速乾性を有する繊維で構成されるとともに、複数の貫通孔131が形成されている。このようなインナー部材13においては、自らを介してペットボトルBの温度を吸収材11に伝達させるとともに、複数の貫通孔131が吸収材11に吸収されている水にペットボトルB内の飲料物の熱を奪いやすくさせている。
【0024】
上記したような構成を有する冷却部10において、図4に示すように、吸収材11に吸収されている水は気化するために、インナー部材13や貫通孔131を介して、ペットボトルB内の飲料物の熱を奪う。このことにより、ペットボトルB内の飲料物は、気化によって奪われた熱の分だけ冷却される。
【0025】
前記底部20は、図2に示すように、冷却部10の下端部に接続され、ペットボトルBの底面を被覆し、冷却具1の底面部を形成している。底部20は、カバー部材12などと同様の構成を有している。従って、底部20も速乾性が高く、底部20においても水の気化が補助され、濡れ感はほとんどない。
【0026】
前記開閉部30は、図1に示すように、冷却部10の上端部に設けられ、折返部31と、紐部材32と、紐留具33とを備えており、ペットボトルBを出し入れするために冷却具1の上端部の開閉を可能にさせる。折返部31は、図2に示すように、冷却部10の上端が内側に折り返されて周方向に中空部311が形成されるように縫い留められて形成されている。また、折返部31は、いずれかの位置において、中空部311に通ずる図示略の挿通孔を備えている。
【0027】
紐部材32は、図1に示すように、折返部31の挿通孔から挿入されて中空部311を通されて、両端が挿通孔から突出するように設けられている。挿通孔から突出している紐部材32の両端部はまとめるように結ばれて、紐部材32が環形状に形成される。この紐部材32においては、突出している紐部材32を引っ張り出すことにより、中空部311内に存在する分の紐部材32の長さが短くなって中空部311の形成する周が狭まるため、冷却具1の上端部が閉じられる。閉じられた冷却具1の上端部は、手で広げてやることにより、中空部311内に存在する分の紐部材32の長さが長くなって中空部311の形成する周が広がるため、冷却具1の上端部が開口される。
【0028】
紐留具33は、紐部材32における挿通孔と紐部材32の結び目との間に設けられ、紐部材32上の位置を移動または固定できるように構成されている。この紐留具33により、挿通孔から引っ張り出された紐部材32が再度挿通孔に入らないようにすることができる。従って、紐部材32が引っ張り出されたことにより閉じられた冷却具1の上端部の状態を維持することができる。
【0029】
次に、冷却具1の使用方法および作用について説明する。まず、開閉部30の紐留具33を紐部材32の端部側に移動させて、手で開閉部30を開口させる。
【0030】
開口した開閉部30からペットボトルBを入れ、折返部31の中空部311内にある紐部材32を引っ張り出して紐留具33を挿通孔の近傍で固定させて、図1に示すように、ペットボトルBの上部のみを露出させてペットボトルBを被覆する態様で冷却具1を装着する。
【0031】
ペットボトルBに冷却具1を装着させた状態で、冷却部10の吸収材11に水を吸収させる。
【0032】
吸収材11が水を吸収している状態において、吸収材11に吸収された水がペットボトルB内の飲料物の熱を奪うことにより気化する。また、カバー部材12および底部20においても、吸収材11から浸透した水をすぐに気化させる。気化するために水に熱を奪われたことによって、ペットボトルB内の飲料物は冷却されることとなる。
【0033】
以上より、冷却具1の吸収材11に水を吸収させることのみにより、吸収材11に吸収された水が気化するために必要な熱をペットボトルB内の飲料物から奪うため、ペットボトルB内の飲料物が冷却される。従って、水を吸収材11に吸収させることのみで、ペットボトルB内の飲料物を、いつでも、簡単に冷却することができる。また、冷却具1の表面もすぐに乾くため、手で持っても濡れず、使用者にとっても快適に使用することができる。
【0034】
なお、この実施形態において、冷却部10は、ペットボトルBの側面における全周囲を被覆する態様で設けられている場合について説明したが、部分的に被覆するように設けられてもよい。
【0035】
また、冷却部10におけるカバー部材12とインナー部材13とは同一の構成を有する場合について説明したが、インナー部材はその他の構成を有していてもよい。
【0036】
また、底部20はカバー部材12と同様である場合について説明したが、その他の構成であってもよい。
【0037】
また、冷却具1の装着後、吸収材11に水を吸収させる場合について説明したが、装着前であってもよい。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、冷却具の他の実施形態について説明する。以下の説明において、第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0039】
この実施形態に係る冷却具2は、図5に示すように、第1の実施形態における冷却具1と対比すると冷却部におけるインナー部材の構成が相違する。ここにおける冷却部50は、図6に示すように、インナー部材53のベースとなるベース部531と、ベース部531におけるペットボトルB側の表面に突出する態様で編み込まれている熱伝導性の高い熱伝導繊維532とを備える。
【0040】
上記したインナー部材53によれば、熱伝導繊維532がペットボトルB側の表面に突出する態様で編み込まれていることより、熱伝導繊維532のみをペットボトルBに積極的に接触させることができる。これにより、ペットボトルB内の飲料物の熱を吸収材11にさらに伝導させやすくなり、吸収材11に吸収されている水がさらに熱を奪いやすくなるため、ペットボトルB内の飲料物をより効率的に冷却させることができる。
【0041】
なお、この実施形態において、熱伝導繊維532が突出する態様でベース部531の表面に編み込まれている場合について説明したが、熱伝導繊維532により層状を形成する一枚の布部材を構成して、ペットボトルBの表面と略面接触させるようにしてもよい。
【0042】
なお、第1,第2の実施形態において、冷却具1,2は、ペットボトルB内の飲料物を冷却する際に適した形状である場合について説明したが、その他の被冷却物を冷却するに適した他の大きさや形状であってもよい。
【0043】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【0044】
(冷却効果評価試験)
次に、上記の実施形態で説明した冷却具1,2の使用における冷却効果の評価試験について説明する。発明者は、上記で説明した冷却具1,2の冷却効果の評価試験として次のような試験を行った。まず、500mlを収容する同一形状のペットボトルBを4本用意する。この4本のペットボトルBに500mlの水を各々収容し、収容した水をいずれも同一の温度(30℃)にする。また、各ペットボトルBに温度センサをそれぞれ取り付け、ペットボトルB内の水の温度をそれぞれ計測し得るようにする。各ペットボトルBに関し、第1のペットボトルBには第1実施形態の冷却具1が装着され、第2のペットボトルBには第2実施形態の冷却具2が装着され、第3のペットボトルBには他社製品(従来技術であげた特許文献1の保冷具)が装着され、第4のペットボトルBには何も装着しない裸の状態にする。これら4つのペットボトルBを、同時に同一の環境条件に置いて、各ペットボトルB内の水の温度を計測する。ここにおける環境条件とは、気温30℃、湿度50%である。
【0045】
上記の状態にした4つのペットボトルBにおける「時間の経過」と「時間経過に伴う水の温度」とを記録した結果、下記の表1のようになった。
【表1】

【0046】
表1が示す試験結果をグラフ化すると図7のようになる。図7において、折れ線L1は冷却具1が装着された第1のペットボトルBの水温の推移を示し、折れ線L2は冷却具2が装着された第2のペットボトルBの水温の推移を示し、折れ線L3は他社製品が装着された第3のペットボトルBの水温の推移を示し、折れ線L4は裸の状態の第4のペットボトルBの水温の推移を示している。
【0047】
図7のグラフが示すように、冷却具1,2が装着された第1,第2のペットボトル内の水温は、いずれも約2.5時間で6℃以上も降下している。また、各々は降下した水温のままで保たれていることがわかる。一方、他社製品が装着された第3のペットボトルBや裸の状態の第4のペットボトルB内の水温は、試験開始から略一定あるいは上昇している。なお、第3,第4のペットボトルBの水温の推移に関しては、試験開始から約1.0時間まで水温が多少降下しているが、試験を行った際の誤差であると考えられる。
【0048】
以上の結果によれば、冷却具1,2が装着された第1,第2のペットボトルBには、他社製品が装着されたペットボトルBや裸の状態のペットボトルBと比較すると、冷却効果が作用していることがわかる。
【0049】
また、冷却具1と冷却具2とを比較すると、熱伝導繊維532が編み込まれたインナー部材53を有する冷却具2の方が、冷却効果が高いこともわかる。
【0050】
従って、冷却具1,2によりペットボトルB内の飲料物を冷却させることができ、さらに熱伝導繊維により冷却効果をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0051】
1,2…冷却具
10,50…冷却部
11…吸収材
12…カバー部材
121,131…貫通孔
13,53…インナー部材
20…底部
30…開閉部
31…折返部
311…中空部
531…ベース部
532…熱伝導繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性を有する繊維素材からなる吸水材を備え、
被冷却物の側面を被覆する態様で設けられ、前記吸収材に吸収された水が気化するときに被冷却物の熱を奪うことによって被冷却物を冷却することを特徴とする冷却具。
【請求項2】
前記吸収材の外側に層状に設けられ、速乾性を有する繊維素材からなるカバー部材を備える請求項1に記載の冷却具。
【請求項3】
前記カバー部材は、複数の孔が形成されている請求項2に記載の冷却具。
【請求項4】
前記吸収材の内側に層状に設けられ、熱伝導性の高い繊維素材が編み込まれたインナー部材を備える請求項1から請求項3のいずれかに記載の冷却具。
【請求項5】
前記熱伝導性の高い繊維素材は、被冷却物側に突出する態様で編み込まれている請求項4に記載の冷却具。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−116553(P2012−116553A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270091(P2010−270091)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(510320070)
【Fターム(参考)】