説明

冷却制御装置、プログラム、および太陽電池システム

【課題】太陽電池の冷却制御をより適切に行うための冷却制御装置、プログラム、および太陽電池システムを提供する。
【解決手段】太陽電池による発電量の測定値を取得する測定部と、前記太陽電池の発電量の期待値と、前記測定部により得られた測定値との関係に応じて、前記太陽電池の冷却機構による冷却の強さを制御する冷却制御部と、を備える冷却制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却制御装置、プログラム、および太陽電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近日、環境保護型の発電装置として、太陽光エネルギーを電気エネルギーに直接変換することが可能な太陽電池が普及しつつある。この太陽電池は、一般に、シリコン、CuInGaSe、CdTeおよびGaAsなどの半導体材料で構成される。このため、太陽電池は、内部温度の上昇に伴い出力電圧が低下する、すなわち、発電効率が悪化するという、半導体としての特性を有する。例えば、太陽電池パネルは、夏の最も気温が高くなる13時〜15時の発電効率が悪化する。しかし、この夏の13時〜15時の時間帯は、各企業や家庭による電力需要のピーク時間帯であるので、この時間帯では最大効率で発電が行われることが望まれる。
【0003】
上記の発電効率の悪化は、太陽電池を冷却することによって改善可能であるが、現在普及している太陽電池システムにおいては、積極的な冷却を行うための機構は存在しない。このため、太陽電池の冷却は、例えば、自然の降雨や風、あるいは水を人的に散水することによって行われる。
【0004】
このような観点から、特許文献1には、太陽電池を自動冷却する機構を有する太陽光発電装置が開示されている。具体的には、この太陽光発電装置は、水供給手段によって太陽電池の表面に散水し、散水された水の気化熱を利用して太陽電池の冷却を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3751013号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような太陽電池システムにおいては、太陽電池の冷却制御がより適切に行われることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、太陽電池による発電量の測定値を取得する測定部と、前記太陽電池の発電量の期待値と、前記測定部により得られた測定値との関係に応じて、前記太陽電池の冷却機構による冷却の強さを制御する冷却制御部と、を備える冷却制御装置が提供される。
【0008】
また、本開示によれば、コンピュータを、太陽電池による発電量の測定値を取得する測定部と、前記太陽電池の発電量の期待値と、前記測定部により得られた測定値との関係に応じて、前記太陽電池の冷却機構による冷却の強さを制御する冷却制御部、として機能させるためのプログラムが提供される。
【0009】
また、本開示によれば、太陽電池と、前記太陽電池による発電量の測定値を取得する測定部と、前記太陽電池の冷却機構と、前記太陽電池の発電量の期待値と、前記測定部により得られた測定値との関係に応じて、前記太陽電池の前記冷却機構による冷却の強さを制御する冷却制御部と、を備える太陽電池システムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本開示によれば、太陽電池の冷却制御をより適切に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本開示の実施形態による太陽電池システムの構成を示した説明図である。
【図2】第1の実施形態による冷却制御装置の構成を示した機能ブロック図である。
【図3】第1の実施形態による冷却制御装置の動作を示したフローチャートである。
【図4】第2の実施形態による冷却制御装置の構成を示した機能ブロック図である。
【図5】測定データベースの具体例を示した説明図である。
【図6】第2の実施形態による冷却制御装置の動作を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。
【0014】
また、以下に示す項目順序に従って本開示を説明する。
1.太陽電池システムの基本構成
2.第1の実施形態
2−1.第1の実施形態による冷却制御装置の構成
2−2.第1の実施形態による冷却制御装置の動作
3.第2の実施形態
3−1.第2の実施形態による冷却制御装置の構成
3−2.第2の実施形態による冷却制御装置の動作
4.むすび
【0015】
<<1.太陽電池システムの基本構成>>
本開示による技術は、本明細書で説明するように、多様な形態で実施され得る。また、本開示の実施形態による冷却制御装置(20)は、
A.太陽電池(10)による発電量を測定する測定部(210)と、
B.前記太陽電池の発電量の期待値と、前記測定部により得られた測定値との関係に応じて、前記太陽電池の冷却機構(散水機構30)による冷却の強さを制御する冷却制御部(230、234)と、
を備える。
【0016】
以下では、まず、このような冷却制御装置を備える太陽電池システムの基本構成について図1を参照して説明する。
【0017】
図1は、本開示の実施形態による太陽電池システムの構成を示した説明図である。図1に示したように、本開示の実施形態による太陽電池システムは、太陽電池10と、冷却制御装置20と、センサ装置24と、散水機構30と、を備える。
【0018】
太陽電池10は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに直接変換する機能を有する。太陽電池10は、通常、図1に示したように建物の屋根や屋上に設置される。また、太陽電池10は、一般に、シリコン、CuInGaSe、CdTeおよびGaAsなどの半導体材料で構成される。このため、太陽電池10は、内部温度の上昇に伴い出力電圧が低下する、すなわち、発電効率が悪化するという、半導体としての特性を有する。ある研究によれば、内部温度上昇による発電効率の悪化は、12〜2月で10%、3〜5月および9〜11月で15%、6〜8月で20%と推定されている。
【0019】
本開示による技術は、このような内部温度上昇による発電効率の悪化に鑑みて創作されたものであり、本開示によれば、上記の内部温度の上昇に伴う太陽電池10の発電効率の悪化を改善することが可能となる。
【0020】
散水機構30は、太陽電池10を冷却するための冷却機構の一例であり、冷却制御装置20による制御に従い、太陽電池10を冷却する機能を有する。具体的には、散水機構30は、内部に水が流れる、あるいは貯えられる給水管からなる。この給水管は、複数箇所に散水孔が形成されており、給水管の内部の水が散水孔から太陽電池10の表面に流出し、太陽電池10の表面が湿潤する。このため、太陽電池10は、水温及び水の気化熱により冷却される。
【0021】
なお、本明細書においては冷却機構の一例として散水機構30を説明するが、冷却機構は散水機構30に限定されない。例えば、冷却機構は、ヒートパイプ冷却機構、またはペルチェ冷却素子のような冷却媒体を用いる機構であってもよい。
【0022】
センサ装置24は、1または2以上のセンサモジュールからなり、外的環境の検出結果を冷却制御装置20に供給する。例えば、センサ装置24は、気温を検出する気温センサ、湿度を検出する湿度センサ、天候を検出する天候センサ、光量を検出する光センサ、または太陽電池10の内部温度を検出する温度センサなどを含んでもよい。
【0023】
冷却制御装置20は、散水機構30による散水、すなわち、散水機構30による太陽電池10の冷却を制御する。例えば、冷却制御装置20は、散水機構30を構成する給水管へ供給する水量や時間間隔、給水管に形成された散水孔の開閉を制御することにより、散水機構30からの散水量を制御することができる。
【0024】
また、本開示の第1の実施形態による冷却制御装置20−1は、センサ装置24から供給される外的環境の検出結果に基づいて散水機構30を用いた太陽電池10の冷却制御を適切に行うことが可能となる。さらに、本開示の第2の実施形態による冷却制御装置20−2は、過去の統計値に基づいて散水機構30を用いた太陽電池10の冷却制御を適切に行うことが可能となる。以下、このような本開示の各実施形態について順次詳細に説明する。
【0025】
<<2.第1の実施形態>>
<2−1.第1の実施形態による冷却制御装置の構成>
図2は、第1の実施形態による冷却制御装置20−1の構成を示した機能ブロック図である。図2に示したように、本実施形態による冷却制御装置20−1は、測定部210と、期待値算出部220と、冷却制御部230と、を備える。
【0026】
(測定部)
測定部210は、太陽電池10による実際の発電量を測定する。なお、測定部210は、太陽電池10の全体による発電量を測定してもよいし、太陽電池10を構成する一部の太陽電池セルによる発電量を測定してもよい。また、太陽電池10の発電量が外部装置によって測定される場合、測定部210は、太陽電池10の発電量を外部装置からの通知によって取得してもよい。
【0027】
(期待値算出部)
期待値算出部220は、太陽電池10による発電量の期待値を算出する。例えば、期待値算出部220は、センサ装置24から供給される現在の光量、太陽電池10の面積、太陽電池10の素子特性などに応じて、発電量の期待値(内部温度の上昇に伴う効率悪化を考慮しない値)を算出してもよい。なお、センサ装置24内の光センサを太陽電池10と同一平面に配置した場合、光センサへの入射角と太陽電池10への入射角は等しいので、光センサにより検出された光量に基づいて発電量の期待値を算出する際に入射角は考慮しなくてもよい。一方、センサ装置24内の光センサを太陽電池10と異なる平面に配置した場合、光センサへの入射角と太陽電池10への入射角は異なるので、光センサにより検出された光量から入射角の相違を考慮して発電量の期待値を算出してもよい。さらに、太陽電池10の公称最大出力を発電量の期待値として扱ってもよく、この場合、冷却制御装置20−1は期待値算出部220を備えなくてもよい。
【0028】
(冷却制御部)
冷却制御部230は、期待値算出部220によって算出された太陽電池10の発電量の期待値と、測定部210によって得られた実際の発電量の測定値との関係に応じ、散水機構30による冷却の強さを制御する。具体的には、発電量の期待値を測定値が下回っている場合、太陽電池10の内部温度の上昇により太陽電池10の発電効率が悪化している可能性があるので、冷却制御部230は、期待値と測定値との差分が大きいほど散水機構30による冷却を強くする。なお、冷却制御部230は、単位時間当たりの散水機構30による散水量、または、散水機構30による散水時間(すなわち、冷却時間)を制御することにより、冷却を強めることや、冷却を弱めることが可能である。また、冷却制御部230が制御する散水機構30による冷却の強さは、段階的であってもよいし、連続的であってもよい。
【0029】
また、散水機構30による冷却の開始後、1時間など所定の時間内に散水機構30による冷却の強さから予測される改善が測定値に現れなかった場合、太陽電池10の故障のように、太陽電池10の内部温度の上昇でない他の要因により発電効率が悪化していると考えられる。このような場合、散水機構30による冷却を維持する意義は薄いので、冷却制御部230は、散水機構30による冷却を弱める、または中止してもよい。
【0030】
また、天候が雨である場合には、既に太陽電池10の表面が湿潤しているので、散水機構30による散水の効果はほとんどないと考えられる。このため、冷却制御部230は、天候が雨である場合、散水機構30に太陽電池10の冷却を行わせなくてもよい。なお、光量および発電量の測定値が低い場合には天候が雨であると考えられるので、冷却制御部230は、天候が雨であるか否かの判断を光量または発電量の測定値に基づいて行ってもよい。例えば、センサ装置24から供給される現在の光量が所定値を下回る場合、または発電量の測定値が所定値(例えば、公称最大電力の20%)を下回る場合は、天候が雨であると考えられるので、冷却制御部230は、散水機構30に太陽電池10の冷却を行わせなくてもよい。
【0031】
なお、本実施形態の比較例として、夏の昼間や気温が高い時に散水量を多くする制御も考えられる。しかし、夏の昼間や気温が高い時であっても、直前に雨が降っていた場合には、太陽電池10の内部温度は低いので、不要に散水が行われてしまう。これに対し、本実施形態による制御は実際の発電量の測定値に基づいて行われるので、太陽電池10の冷却(散水)をより適切に制御することが可能である。
【0032】
<2−2.第1の実施形態による冷却制御装置の動作>
以上、第1の実施形態による冷却制御装置20−1の構成を説明した。続いて、図3を参照し、第1の実施形態による冷却制御装置20−1の動作を説明する。
【0033】
図3は、第1の実施形態による冷却制御装置20−1の動作を示したフローチャートである。図3に示したように、まず、冷却制御装置20−1の期待値算出部220が、例えばセンサ装置24から供給される現在の光量に基づいて太陽電池10の発電量の期待値を算出する(S304)。一方、測定部210が、太陽電池10による実際の発電量を測定する(S308)。
【0034】
そして、冷却制御部230は、測定部210による発電量の測定値が所定値以上であるか否かを判断し(S312)、測定値が所定値未満である場合、すなわち、天候が雨であると判断される場合、散水機構30に太陽電池10の冷却を行わせない(S316)。
【0035】
一方、測定値が所定値以上である場合(S312)、冷却制御部230は、S304で算出された期待値に対する測定値の割合である発電効率の高さを評価する(S320)。例えば、冷却制御部230は、第1の閾値および第2の閾値に基づき、発電効率の高さを以下のように評価してもよい。
【0036】
(発電効率の評価例)
・発電効率<第1の閾値 :発電効率=低
・第1の閾値≦発電効率<第2の閾値:発電効率=中
・第2の閾値≦発電効率 :発電効率=高
(ただし、第1の閾値<第2の閾値)
【0037】
そして、冷却制御部230は、発電効率が低い場合には散水機構30に太陽電池10を強冷却させ(S324)、発電効率が高い場合には散水機構30に太陽電池10を弱冷却させ(S328)、発電効率が中である場合には散水機構30に太陽電池10を標準冷却させる(S332)。
【0038】
その後、所定時間内に散水機構30による冷却の強さから予測される改善が測定値に現れた場合(S336)、冷却制御部230は、散水機構30に太陽電池10を継続させる(S340)。一方、所定時間内に散水機構30による冷却の強さから予測される改善が測定値に現れなかった場合、太陽電池10の内部温度の上昇でない他の要因により発電効率が悪化していると考えられるので、冷却制御部230は、散水機構30による冷却を弱める、または中止する(S344)。
【0039】
<<3.第2の実施形態>>
以上、本開示の第1の実施形態を説明した。続いて、本開示の第2の実施形態を説明する。本開示の第2の実施形態は、例えば第1の実施形態で説明した測定値と測定時の外的環境との関係を蓄積して得られる測定データベースと、現在の外的環境とに基づいて冷却制御を行うことが可能である。
【0040】
<3−1.第2の実施形態による冷却制御装置の構成>
図4は、第2の実施形態による冷却制御装置20−2の構成を示した機能ブロック図である。図4に示したように、本実施形態による冷却制御装置20−2は、測定部210と、期待値算出部220と、冷却制御部234と、記憶部240と、データ解析部250と、を備える。測定部210および期待値算出部220については第1の実施形態で説明した通りであるので、ここでの詳細な説明を省略する。
【0041】
(記憶部)
記憶部240は、測定部210による実際の発電量の測定値と、測定時の外的環境とが関連付けられた測定データベースを記憶する。ここで、図5を参照し、測定データベースの具体例を説明する。
【0042】
図5は、測定データベースの具体例を示した説明図である。図5に示した測定データベースの具体例においては、発電量の測定値および発電効率に、日付、時刻、光量、外気温および天候などの外的環境が関連付けられている。なお、測定データベースには、これらに加えて、あるいはこれらの一部に代えて、季節、太陽電池10の内部温度、日の出/日の入り時刻などの他の外的環境が含まれてもよい。図5に示した例では、夏の晴れ日である8月16日の11時頃から発電効率が悪化していることが分かる。
【0043】
なお、図5においては、毎日の1時間間隔の測定データが測定データベースに蓄積される例を示しているが、蓄積される測定データはかかる例に限定されない。例えば、測定データの測定間隔は5分、30分や2時間等の他の間隔であってもよい。また、測定データベースには毎日の一週間分の測定データが蓄積されていてもよいし、1か月分や1年分の測定データが蓄積されていてもよい。さらに、測定データは毎日でなく、隔日や、1週間毎、あるいは不等間隔の特定日であってもよい。また、この測定データベースは、冷却制御装置20−2による実測により得られたものであってもよいし、製造/設置時に初期設定されてもよい。また、記憶部240は、後述するようにデータ解析部250によって作成される制御ルールを記憶する。
【0044】
また、このような測定データベースを記憶する記憶部は、不揮発性メモリ、磁気ディスク、光ディスク、およびMO(Magneto Optical)ディスクなどの記憶媒体であってもよい。不揮発性メモリとしては、例えば、フラッシュメモリ、SDカード、マイクロSDカード、USBメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)があげられる。また、磁気ディスクとしては、ハードディスクおよび円盤型磁性体ディスクなどがあげられる。また、光ディスクとしては、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)およびBD(Blu−Ray Disc(登録商標))などがあげられる。
【0045】
(データ解析部)
データ解析部250は、測定データベースの内容を解析し、1または2以上の外的環境と冷却制御の内容との関係を規定する制御ルールを作成する。例えば、データ解析部250は、測定データベースを解析することにより、以下に示すような制御ルールを作成してもよい。
【0046】
・季節に基づく制御ルール例
夏:強冷却
春秋:弱冷却
冬:冷却なし
・天候に基づく制御ルール例
晴れ:強冷却
曇り:弱冷却
雨:冷却なし
・時間帯に基づく制御ルール例
ピーク時間帯(例えば、13時〜15時):強冷却
日中のピーク時間帯外:弱冷却
夜間のピーク時間帯外:冷却なし
・外気温に基づく制御ルール例
30度以上:強冷却 20度以上30度未満:標準冷却
10度以上20度未満:弱冷却 10度未満:冷却なし
・組合せによる制御ルール例(季節=夏の場合)
晴れ+ピーク時間帯 :強冷却
晴れ+日中のピーク時間帯外:標準冷却
晴れ+夜間のピーク時間帯外:冷却なし
曇り+ピーク時間帯 :標準冷却
曇り+日中のピーク時間帯外:弱冷却
曇り+夜間のピーク時間帯外:冷却なし
雨+ピーク時間帯 :冷却なし
雨+日中のピーク時間帯外 :冷却なし
雨+夜間のピーク時間帯外 :冷却なし
【0047】
また、データ解析部250は、測定データベースにおいて測定値(発電効率)が悪化する前兆となる外的環境を解析する。例えば、データ解析部250は、図5に示した測定データベースから8月16日の12時以降に発電効率が悪化したことを検出し、発電効率が悪化する前兆となる外的環境として、例えば「夏の晴れ日の11時」という外的環境を特定する。これは、当該外的環境の発生後には発電効率が悪化するという予測に用いられる。
【0048】
(冷却制御部)
冷却制御部234は、散水機構30による太陽電池10の冷却を制御する。具体的には、本実施形態による冷却制御部234は、第1の実施形態で説明した発電量の測定値と期待値を利用する第1の冷却制御モード、または、記憶部240に蓄積された測定データベースを利用する第2の冷却制御モードで動作することができる。第1の冷却制御モードについては第1の実施形態で説明した通りであるので、ここでの詳細な説明を省略する。
【0049】
冷却制御部234は、記憶部240に測定データベースが蓄積され、データ解析部250により上述した制御ルールが作成された後に第2の冷却制御モードで動作することが可能となる。第2の冷却制御モードで動作する冷却制御部234は、現在の外的環境に合致する外的環境を示す制御ルールを検索し、当該制御ルールが規定する内容の冷却制御を行う。
【0050】
例えば、現在の外的環境が夏の晴れ日の14時である場合、現在の外的環境は、「組合せによる制御ルール例」で示した「晴れ+ピーク時間帯」の制御ルールに合致するので、冷却制御部234は、散水機構30に太陽電池10を強冷却させてもよい。
【0051】
また、冷却制御部234は、現在の外的環境が、データ解析部250により特定された発電効率が悪化する前兆となる外的環境と合致または類似する場合、発電効率の悪化に先立って散水機構30に太陽電池10を強冷却させてもよい。かかる構成により、発電効率の悪化を未然に防止することが可能となる。
【0052】
<3−2.第2の実施形態による冷却制御装置の動作>
以上、第2の実施形態による冷却制御装置20−2の構成を説明した。続いて、図6を参照し、第2の実施形態による冷却制御装置20−2の動作を説明する。
【0053】
図6は、第2の実施形態による冷却制御装置20−2の動作を示したフローチャートである。図6に示したように、まず、冷却制御装置20−2の冷却制御部234が、センサ装置24から供給される検出結果などに基づき、現在の外的環境を把握する(S410)

【0054】
そして、冷却制御部234は、現在の外的環境が、データ解析部250により特定された発電効率が悪化する前兆となる外的環境と合致または類似する場合(S420)、発電効率の悪化に先立って散水機構30に太陽電池10を強冷却させる(S430)。
【0055】
一方、発電効率が悪化する前兆となる外的環境と現在の外的環境が合致または類似しない場合、冷却制御部234は、現在の外的環境と合致または類似する外的環境に関する制御ルールを検索する(S440)。
【0056】
そして、現在の外的環境と合致または類似する外的環境に関する制御ルールがある場合、冷却制御部234は、当該制御ルールに従って散水機構30による太陽電池10の冷却を制御する(S450)。一方、現在の外的環境と合致または類似する外的環境に関する制御ルールが無い場合、冷却制御部234は、第1の実施形態において説明したように、発電量の期待値と測定値に応じた冷却制御を行う(S460)。
【0057】
<<4.むすび>>
以上説明したように、本開示の各実施形態によれば、太陽電池10の冷却を適切に制御することにより、太陽電池10の内部温度の上昇に伴う発電効率の悪化を抑制することができる。また、夏の暑い時間帯における発電効率が高まるので、ピーク時間帯における商用電力の使用量を削減できるという副次的な効果も得られる。
【0058】
なお、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0059】
例えば、本明細書の冷却制御装置20の処理における各ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、冷却制御装置20の処理における各ステップは、フローチャートとして記載した順序と異なる順序で処理されても、並列的に処理されてもよい。
【0060】
また、冷却制御装置20に内蔵されるCPU、ROMおよびRAMなどのハードウェアを、上述した冷却制御装置20の各構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供される。
【0061】
また、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
【0062】
(1)
太陽電池による発電量の測定値を取得する測定部と、
前記太陽電池の発電量の期待値と、前記測定部により得られた測定値との関係に応じて、前記太陽電池の冷却機構による冷却の強さを制御する冷却制御部と、
を備える、冷却制御装置。
【0063】
(2)
前記冷却制御装置は、
光センサによって検出される光量に基づいて前記太陽電池の発電量の前記期待値を算出する期待値算出部をさらに備える、前記(1)に記載の冷却制御装置。
【0064】
(3)
前記冷却制御部は、前記期待値と前記測定値との差分が大きいほど前記冷却機構による冷却を強くする、前記(1)または(2)に記載の冷却制御装置。
【0065】
(4)
前記冷却制御部は、前記測定値が所定値を下回る場合、前記冷却機構に冷却を行わせない、前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の冷却制御装置。
【0066】
(5)
前記冷却制御部は、前記冷却機構による冷却の強さから予測される改善が前記測定値に現れなかった場合、前記冷却機構による冷却を弱める、または中止する、前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の冷却制御装置。
【0067】
(6)
前記冷却制御装置は、
前記測定値と、測定時の外的環境とが関連付けられた測定データベースを記憶する記憶部をさらに備える、前記(1)に記載の冷却制御装置。
【0068】
(7)
前記冷却制御部は、現在の外的環境と、前記測定データベースに基づいて前記太陽電池の冷却機構による冷却の強さを制御する制御モードをさらに有する、前記(6)に記載の冷却制御装置。
【0069】
(8)
前記測定データベースにおいて前記測定値が悪化する前兆となる外的環境を解析するデータ解析部をさらに備え、
前記冷却制御部は、現在の外的環境が前記データ解析部により解析された外的環境に類似または合致する場合に前記冷却機構による冷却を強くする、前記(7)に記載の冷却制御装置。
【0070】
(9)
前記外的環境は、時間、季節、天候、外気温、または前記太陽電池の内部温度の少なくともいずれかを含む、前記(7)または(8)に記載の冷却制御装置。
【0071】
(10)
前記冷却機構は、水の散水機構、ヒートパイプ冷却機構、または冷却媒体を用いる機構の少なくともいずれかである、前記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の冷却制御装置。
【0072】
(11)
コンピュータを、
太陽電池による発電量の測定値を取得する測定部と、
前記太陽電池の発電量の期待値と、前記測定部により得られた測定値との関係に応じて、前記太陽電池の冷却機構による冷却の強さを制御する冷却制御部、
として機能させるための、プログラム。
【0073】
(12)
太陽電池と、
前記太陽電池による発電量の測定値を取得する測定部と、
前記太陽電池の冷却機構と、
前記太陽電池の発電量の期待値と、前記測定部により得られた測定値との関係に応じて、前記太陽電池の前記冷却機構による冷却の強さを制御する冷却制御部と、
を備える、太陽電池システム。
【符号の説明】
【0074】
10 太陽電池
20 冷却制御装置
24 センサ装置
30 散水機構
210 測定部
220 期待値算出部
230 冷却制御部
234 冷却制御部
240 記憶部
250 データ解析部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池による発電量の測定値を取得する測定部と、
前記太陽電池の発電量の期待値と、前記測定部により得られた測定値との関係に応じて、前記太陽電池の冷却機構による冷却の強さを制御する冷却制御部と、
を備える、冷却制御装置。
【請求項2】
前記冷却制御装置は、
光センサによって検出される光量に基づいて前記太陽電池の発電量の前記期待値を算出する期待値算出部をさらに備える、請求項1に記載の冷却制御装置。
【請求項3】
前記冷却制御部は、前記期待値と前記測定値との差分が大きいほど前記冷却機構による冷却を強くする、請求項1に記載の冷却制御装置。
【請求項4】
前記冷却制御部は、前記測定値が所定値を下回る場合、前記冷却機構に冷却を行わせない、請求項1に記載の冷却制御装置。
【請求項5】
前記冷却制御部は、前記冷却機構による冷却の強さから予測される改善が前記測定値に現れなかった場合、前記冷却機構による冷却を弱める、または中止する、請求項1に記載の冷却制御装置。
【請求項6】
前記冷却制御装置は、
前記測定値と、測定時の外的環境とが関連付けられた測定データベースを記憶する記憶部をさらに備える、請求項1に記載の冷却制御装置。
【請求項7】
前記冷却制御部は、現在の外的環境と、前記測定データベースに基づいて前記太陽電池の冷却機構による冷却の強さを制御する制御モードをさらに有する、請求項6に記載の冷却制御装置。
【請求項8】
前記測定データベースにおいて前記測定値が悪化する前兆となる外的環境を解析するデータ解析部をさらに備え、
前記冷却制御部は、現在の外的環境が前記データ解析部により解析された外的環境に類似または合致する場合に前記冷却機構による冷却を強くする、請求項7に記載の冷却制御装置。
【請求項9】
前記外的環境は、時間、季節、天候、外気温、または前記太陽電池の内部温度の少なくともいずれかを含む、請求項7に記載の冷却制御装置。
【請求項10】
前記冷却機構は、水の散水機構、ヒートパイプ冷却機構、または冷却媒体を用いる機構の少なくともいずれかである、請求項1に記載の冷却制御装置。
【請求項11】
コンピュータを、
太陽電池による発電量の測定値を取得する測定部と、
前記太陽電池の発電量の期待値と、前記測定部により得られた測定値との関係に応じて、前記太陽電池の冷却機構による冷却の強さを制御する冷却制御部、
として機能させるための、プログラム。
【請求項12】
太陽電池と、
前記太陽電池による発電量の測定値を取得する測定部と、
前記太陽電池の冷却機構と、
前記太陽電池の発電量の期待値と、前記測定部により得られた測定値との関係に応じて、前記太陽電池の前記冷却機構による冷却の強さを制御する冷却制御部と、
を備える、太陽電池システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−105900(P2013−105900A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248856(P2011−248856)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】