説明

冷却器

【課題】内部に冷媒が流れる流路が形成された冷媒ケースと蓋部とを摩擦攪拌接合により接合するものにおいて、摩擦攪拌接合に伴って発生する異物が流路内に流入するのを抑制する。
【解決手段】水路カバー40の周縁部分が嵌合される水路ケース30の段差部34に、全周に亘ってリブ34aを形成し、このリブ34aの先端に水路カバー40の周縁部分を押し当てた状態で摩擦攪拌接合により水路ケース30と水路カバー40とを接合する。これにより、摩擦攪拌接合に伴って異物が発生しても、リブ34aによって水路内に異物が侵入するのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に冷媒が流れるケースと蓋部とが摩擦攪拌接合により接合されてなる冷却器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の冷却器としては、内部に冷却孔が形成されたヒートシンク板と蓋との接合を摩擦攪拌接合により金属的に接合することにより行なうものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。摩擦攪拌接合は、硬い材質の回転ツールをヒートシンク板と蓋との接合部分に挿入し、このツールを回転させながら移動させることにより、ツールとヒートシンク板との間で発生する摩擦熱と塑性流動を利用して接合する方法であり、これにより、熱ひずみが小さく精度の高いヒートシンク板を製作することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−313357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ヒートシンク板と蓋との接合は、ヒートシンク板に蓋を被せた状態で行なわれるが、ヒートシンク板や蓋自体の加工精度によっては両者の間で接触隙間が生じる。このため、摩擦攪拌接合に伴ってバリなどの異物が発生すると、異物が接触隙間を通って内部の冷却孔(冷却流路)に流入する場合が生じ、この場合、冷却水の流れが悪くなって熱交換が妨げられ、冷却性能が悪化してしまう。
【0005】
本発明の冷却器は、内部に冷媒が流れる流路が形成された冷媒ケースと蓋部とを摩擦攪拌接合により接合するものにおいて、摩擦攪拌接合に伴って発生する異物が流路内に流入するのを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の冷却器は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の冷却器は、
内部に冷媒が流れる流路が形成された冷媒ケースと、前記流路を密閉する蓋部とを摩擦攪拌接合により接合してなる冷却器であって、
前記冷媒ケースと前記蓋部の一方に、該冷媒ケースと該蓋部との接合部に沿って且つ該接合部よりも内部側で互いに当接する凸部が形成されてなる
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の冷却器では、冷媒ケースと蓋部の一方に、冷媒ケースと蓋部との接合部に沿って且つ接合部よりも内部側で互いに当接する凸部を形成する。これにより、接合部と流路との間を凸部で遮断することができるから、摩擦攪拌接合に伴って接合部にバリ等の異物が生じても、異物が流路内に流入するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例としての冷却器20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】水路ケース30の内部の外観を示す外観図である。
【図3】水路カバー40の水路ケース30側の面の外観を示す外観図である。
【図4】水路ケース30と水路カバー40との接合時の様子を示す説明図である。
【図5】水路ケース30と水路カバー40との接合後の様子を示す説明図である。
【図6】変形例の水路カバー40Bを示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0011】
図1は、本発明の一実施例としての冷却器20の構成の概略を示す構成図である。実施例の冷却器20は、パワー素子12やトランス(コイル)14などの発熱部品が実装されたベースプレート10に取り付けられてこれら発熱部品を冷却するものとして構成されており、図示するように、内部に冷却水が流れる水路を形成する水路ケース30と、水路ケース30に接合されて水路を密閉する水路カバー40と、を備える。なお、パワー素子12としては、例えば、モータを駆動するインバータのスイッチング素子を挙げることができ、トランス14としては、例えば、バッテリの電圧を昇圧してインバータに供給する昇圧コンバータを挙げることができる。
【0012】
図2は、水路ケース30の内部の外観を示す外観図である。水路ケース30は、例えば熱伝導性の高いアルミダイカスト製のケースとして形成されており、図2に示すように、底部32と、底部32の外周を取り囲むように形成され水路カバー40の周縁部分が嵌合される段差部34と、底部32の略中央にケースの長手方向に沿って形成されたリブ36と、底部32の隅部に形成され冷却水を導入する導入孔38と、リブ36を挟んで導入孔38に隣接して形成され冷却水を排出する排出孔39と、を有する。段差部34には、全周に亘ってリブ34aが形成されており、水路カバー40が嵌合されたときに、リブ34aの先端が水路カバー40の裏面42の周縁部分に当接するようになっている。このリブ34aを設ける理由については後述する。導入孔38および排出孔39は、図示しないラジエータが接続されており、ラジエータによって冷却された冷却水が導入孔38を介して導入され水路ケース30内を流れて発熱部品と熱交換しながら排出孔39を介して排出されるようになっている。
【0013】
図3は、水路カバー40の水路ケース30側の面(裏面42)の外観を示す外観図である。水路カバー40は、例えば熱伝導性の高いアルミダイカスト製のカバーとして形成されており、裏面42の周縁部分が水路ケース30の段差部34に嵌合されて水路ケース30の内部を密閉するものである。この水路カバー40の表面(裏面42と反対側の面)には、グリス24によりベースプレート10が接着されており(図1参照)、水路カバー40の裏面42には、図3に示すように、水路ケース30に嵌合されたときに水路ケース30のリブ36を囲むようにU字型に突出した2本のリブ44,46が形成されている。本実施例では、水路ケース30のリブ36と水路カバー40のリブ44,46とにより区画される空間により冷却水が流れるU字状の水路を形成する。
【0014】
水路ケース30と水路カバー40との接合は、水路ケース30の段差部34に水路カバー40の裏面42の周縁部分を嵌合させ、嵌合部分を摩擦攪拌接合により接合することにより行なわれる。図4に水路ケース30と水路カバー40との接合時の様子を示し、図5に水路ケース30と水路カバー40との接合後の様子を示す。ここで、摩擦攪拌接合は、図示するように、水路ケース30と水路カバー40の材質(アルミニウム)よりも固い材質により形成され先端に突起を有する回転ツール50を、水路ケース30と水路カバー40との嵌合部分に挿入し、回転ツール50を回転させながら嵌合部分に沿って移動させることにより、回転ツール50と嵌合部分との間で摩擦熱を発生させ、接合部22周辺を塑性流動させることにより水路ケース30と水路カバー40とを接合するものである。
【0015】
摩擦攪拌接合では、回転ツール50により水路ケース30と水路カバー40の嵌合部分を塑性流動させるため、バリ等が発生し易い。水路カバー40は水路ケース30の段差部34に嵌合されることから、両者の加工精度が良く段差部34に水路カバー40が面接触されれば、摩擦攪拌接合によって発生したバリ等の異物が水路ケース30内に侵入することはないが、ダイカストによる成形では加工誤差が生じるため、接触隙間が生じる場合がある。このため、摩擦攪拌接合に伴って発生した異物が接触隙間を介して水路ケース30に侵入する場合があり、この場合、異物によって冷却水の流れが妨げられ、効率よく熱交換ができなくなることがある。本実施例では、段差部34に全周に亘ってリブ34aを形成し、このリブ34aの先端に水路カバー40の裏面42の周縁部分を押し当てた状態で摩擦攪拌接合を行なうから、摩擦攪拌接合に伴って異物が発生しても、リブ34aによって異物の侵入を防止することができる。したがって、異物の侵入に伴う上述した不具合は生じない。
【0016】
以上説明した実施例の冷却器20によれば、水路カバー40の周縁部分が嵌合される水路ケース30の段差部34に全周に亘ってリブ34aを形成し、このリブ34aの先端に水路カバー40の周縁部分を押し当てた状態で摩擦攪拌接合により接合するから、摩擦攪拌接合に伴って異物が発生しても、リブ34aによって水路内に異物が侵入するのを防止することができる。
【0017】
実施例の冷却器20では、水路ケース30の段差部34に全周に亘ってリブ34aを形成するものとしたが、必ずしも全周に亘って形成する必要はなく、異物の侵入のおそれが少ない部位など一部を省略するものとしてもよい。
【0018】
実施例の冷却器20では、水路ケース30の段差部34にリブ34aを形成するものとしたが、図6の変形例の冷却器に示すように、水路カバー40の裏面42の周縁部分にリブ42aを形成するものとしてもよい。
【0019】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、水路ケース30が「冷媒ケース」に相当し、水路カバー40が「蓋部」に相当し、リブ34a,42aが「凸部」に相当する。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0020】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、冷却器の製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0022】
10 ベースプレート、12 パワー素子、14 トランス、20 冷却器、22 接合部、24 グリス、30 水路ケース、32 底部、34 段差部、34a リブ、36 リブ、38 導入孔、39 排出孔、40 水路カバー、42 裏面、42a リブ、44,46 リブ、50 回転ツール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に冷媒が流れる流路が形成された冷媒ケースと、前記流路を密閉する蓋部とを摩擦攪拌接合により接合してなる冷却器であって、
前記冷媒ケースと前記蓋部の一方に、該冷媒ケースと該蓋部との接合部に沿って且つ該接合部よりも内部側で互いに当接する凸部が形成されてなる
ことを特徴とする冷却器。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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