説明

冷却塔

【課題】本発明は、集水槽への各種ごみや異物の混入を低減させることによって、ストレーナ清掃作業頻度の減少を可能とする冷却塔を提供することを目的とする。
【解決手段】冷却水10が、冷却塔上部から充填材4に散水され、外気に接触しながら充填材4を流下して下部水槽8に滴下し、さらに前記下部水槽8から前記下部水槽8の下に連設配置された集水槽9に流れ、前記集水槽9に接続する冷却水出口9bに流れ、循環する冷却塔において、前記集水槽9の流入口9aの周囲を囲むように下部水槽8に堰を設け、前記下部水槽8の底部8bに堆積した異物11の集水槽9への流入を防止することを特徴とする冷却塔の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機、冷温水機、各種工程の熱交換器などで使用する冷却水を循環して供給する冷却塔に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍機、冷温水機、各種工程の熱交換器などにおいて、水の冷却を目的として冷却塔が汎用されている。冷却塔は、被冷却対象を冷却し、温度の上昇した冷却水を外気と接触させることにより、冷却水の一部を蒸発させて蒸発潜熱を放出させることによって、冷却水の温度を低下させる装置である。
【0003】
冷却しようとする冷却水と接触させる外気は、一般的に送風機によって強制的に取り込まれるが、その取り込み方式には、冷却水と外気を互いに向流になるように流す向流式と、両者を直交流になるように流す直交流式とがある。
【0004】
どちらの方式にも一長一短があり、設置場所や冷却塔容量などの諸条件を勘案して最適なものが選定される。循環水量が300m/h以下の小規模冷却水系では、通常の場合丸形の向流式冷却塔が用いられる。他方、工業用や商業用に用いられる冷却塔では循環水量が300m/h 以上である場合が多く、角形の直交流式冷却塔(図3)を屋外に設置して用いるのが一般的である。
【0005】
図3に示す冷却塔16では、冷凍機14で冷媒の冷却に使用され温度の上昇した冷却水10は、以下のように冷却される。冷凍機14で使用され温度の上昇した冷却水10は、配管経路15を通り、散水槽2に戻った後散布水装置3によって充填材4上部に散布され、充填材4を伝って流下する。
【0006】
一方、モータ7aなどで駆動する送風機7によって取り込まれた外気は、入口ルーバ5から水平に充填材4に流入し、充填材4を伝って流下する冷却水10と接触する。外気と接触することにより冷却水10の一部が蒸発し、その蒸発潜熱によって残りの冷却水10が冷却される。
【0007】
蒸発しないで冷却された冷却水10は、充填材4を伝って流下し下部水槽8に滴下し、集水槽9から循環ポンプ13によって冷凍機14に送られて冷却水として使用され、一連の配管経路を循環する。冷却水10と接触した外気は、エリミネータ6によって除水されて送風機7によって上方から排出される。
【0008】
冷却塔16は、このように外気を塔内に取り込み、冷却水10を冷却するため、外気とともにほこりや各種ごみ、落ち葉などの異物11が塔内の下部水槽8に混入する。
【0009】
また、運転の停止時には、塔内の充填材に付着していたスケールその他の異物11が乾燥して充填材4から剥がれ落ちて下部水槽8に混入する。
【0010】
特に、近年は、補給水の節水を目的として、冷却水10に対して高濃縮管理をする傾向が強く、冷却塔16の充填材4に付着するスケールの量も多くなってきている。それにともない、剥離して下部水槽8に混入するスケールの量も多くなってきている。
【0011】
これら下部水槽8に混入した各種ごみや異物11は、水の流れに押されて下部水槽8から集水槽9を通り配管経路15に浸入し、循環ポンプ13や冷凍機14等の機器に損傷を与えるので、集水槽9の冷却水出口9bにはストレーナ9cを設けてこれらの配管経路15内への浸入を阻止している。なお、冷却水出口9bにストレーナ9cを設けず、循環ポンプ13手前の配管中にストレーナを設けることもある。
【0012】
この場合、時間の経過とともにストレーナ9cには各種ごみや異物11が付着・堆積し、配管抵抗が大きくなったり、場合によれば、ストレーナ9cの閉塞や破損の原因ともなるので、異物11がストレーナにある程度付着・堆積すると、これらの除去・洗浄が必要となる。
【0013】
しかしながら、ストレーナ9cに付着・堆積した各種ごみや異物11を除去・洗浄する場合には、冷却塔16の運転を停止して冷却塔16内の水を抜く必要があり、ストレーナ9cの洗浄中は装置や機器の運転を停止しなければならず問題であった。
【0014】
このような状況から、改善策の一つとして、特許文献1に記載の冷却塔用ストレーナが提案されている。冷却塔用ストレーナは、前記ストレーナ本体が、下部水槽に伏せた状態として配置されると共に冷却水出口に側部を接続されて内部を連通させる略箱状体で形成され、一又は複数の側部と下部水槽底面との間に隙間を有すると共に、上面部のうち取水口との接続部近傍を除いた部分を取水口上端位置より低くされてなり、前記フィルタが、円筒面の一部をなす曲面状の略板状濾材で形成され、下部水槽底面との間に隙間を有し、且つ前記取水口より外側に位置する状態で、曲面凸側を下向きとして配設されることを特徴とする。
【0015】
形状を適切化して、濾過部分に溜った不純物やスケール等の異物を確認しやすく、清掃等のメンテナンス作業性を大幅に向上させられるというものである。それによって、ストレーナ清掃に起因する冷却塔の停止時間を短縮することができるとされる。
【特許文献1】特開2005−324090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、ストレーナの形状や構造を改善し、ストレーナ清掃時のメンテナンス作業性を大幅に向上させ、ストレーナ清掃に起因する冷却塔の停止時間を短縮しても、水の流れに押されて集水槽に流れ込んでくる各種ごみや異物の量には変わりがないので、ストレーナの清掃作業自体は頻繁に実施せざるを得ず、抜本的な改善策とはなっていなかった。
【0017】
そこで、集水槽への各種ごみや異物の混入を低減させることによって、ストレーナ清掃作業頻度の減少を可能とする冷却塔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記課題を解決するために、冷却水10が、冷却塔上部から充填材4に散水され、外気に接触しながら充填材4を流下して下部水槽8に滴下し、さらに前記下部水槽8から前記下部水槽8の下に連設配置された集水槽9に流れ、前記集水槽9に接続する冷却水出口9bに流れ、循環する冷却塔において、前記集水槽9の流入口9aの周囲を囲むように下部水槽8に堰を設け、前記下部水槽8の底部8bに堆積した異物11の集水槽9への流入を防止することを特徴とする冷却塔の構成とし、
前記堰の上端が、前記下部水槽8の水面10aより低い位置にあることを特徴とする前記冷却塔の構成とし、
前記堰が、断面略L字形であることを特徴とする前記冷却塔の構成とした。
【発明の効果】
【0019】
本発明は以上の構成であるから以下の効果がある。先ず、下部水槽8に混入した各種ごみや異物11が、集水槽9に流れ込まないので、ストレーナ9cで補足する混入物の量が極端に減少し、清掃回数が飛躍的に減少し、ストレーナ9cの清掃に起因する冷却塔の運転停止間隔が飛躍的に長くなる。
【0020】
例えば、稼動中の冷却塔において、従来1週間に1回程度実施していたストレーナ9cの清掃作業が、本発明を適用することで、3ヶ月に1回程度の実施で十分になり、飛躍的に清掃回数を減少させることができた。
【0021】
一方、本来なら集水槽9に流れ込んでいく各種のごみや異物11が、集水槽9の流入口9aの周囲に設けた堰によって堰き止められるので、堰周辺に集積することとなる。しかし、下部水槽8の堰周辺に集積した各種のごみや異物11は、堰を設けている下部水槽8部の水深が浅いので、冷却塔の運転を停止させたり、下部水槽8や集水槽9及び配管経路15内の水を抜くことなく、熊手などの通常の清掃用具で容易に除去することができる。
【0022】
次に、本発明の実施が、下部水槽8から集水槽9に至る流入口9aの周辺に堰を設けるという簡便な手段により実現できるため、発明の実施に大きな費用を必要とせず、また、既存の設備に対しても大掛かりな改造等付加的な対策をすることなく適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
集水槽への各種ごみや異物の混入を低減させることによって、ストレーナ清掃作業頻度の減少を可能とする冷却塔を提供する目的を、冷却水10が、冷却塔上部から充填材4に散水され、外気に接触しながら充填材4を流下して下部水槽8に滴下し、さらに前記下部水槽8から前記下部水槽8の下に連設配置された集水槽9に流れ、前記集水槽9に接続する冷却水出口9bに流れ、循環する冷却塔において、前記集水槽9の流入口9aの周囲を囲むように上端が前記下部水槽8の水面10aより低い位置にある断面略L字形の堰を設け、前記下部水槽8の底部8bに堆積した異物11の集水槽9への流入を防止することを特徴とする冷却塔の構成とすることで実現した。
【0024】
堰12は、冷却塔の下部水槽8にある集水槽9の流入口9aの周囲を囲むように設置し、下部水槽8の底部8bに堆積した異物11が、集水槽9へ流入することを防ぐことができれば、特にその形状、素材及び設置方法は限定されない。
【0025】
例えば、L形鋼、平鋼、角形鋼管等の金属、樹脂材を、単体で流入口の周囲を囲むように設置してもよいし、前記各種金属、樹脂材をあらかじめ額縁状に一体物として製作したものを設置してもよい。堰として使用する材料を、前記したように鋼材を用いれば、下部水槽8の底部8bにそのまま設置しても、自重が大きいので冷却水に押されて堰が移動するということはない。ただし、ボルト、溶接、嵌合などを用いれば、下部水槽8の底部8bへの堰の固定は確実となる。これら堰に穴が穿設されていない材料を用いる場合は、冷却水10が下部水槽8の上端8aより溢れ出ないよう、堰12の上端は下部水槽8の水面10aより低い位置になければならない。
【0026】
また、堰がスケールなどの異物11を通過させない細かな穴がパンチされた素材、網などの構造であれば、下部水槽8の水面10a、さらには上端8aより高い堰であってもよい。ただし、目詰まり、水面10aを漂う異物により、穴、網目が塞がれた場合、下部水槽8から冷却水10が溢れる恐れがあるため、堰12の高さは、下部水槽8の水面10a、即ち通常水位より低い位置させることが望ましい。
【0027】
以下、添付図面に基づいて、本発明である冷却塔について詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
図1は本発明である冷却塔の断面概略図である。図2は図1のA−A断面概略図である。
【0029】
本願発明である冷却塔1は、一般に使用されている冷却塔の下部水槽8の下に連設された集水槽9に、下部水槽8の底部に堆積したスケール、ゴミなどの異物11が流入しないよう、集水槽9へ続く流入口9aの周囲に堰12を設けてなる。
【0030】
従って、堰12は、集水槽9の流入口9aを囲み、それぞれが接し、隙間無く下部水槽8の底部8bから下部水槽8の水面10aより低い位置まで起立していればよい。
【0031】
堰12は、ここでは断面略L字形で、その上端は下部水槽8の水面10aより低い位置に位置する。これにより、下部水槽8の底部8bに堆積したスケール、ゴミなどの異物11は下部水槽8に留まり、下部水槽8の冷却水10は堰12上部を超え集水槽9に流入する。
【0032】
堰12がL形鋼であれば、ボルトなどを用いずともその自重により、下部水槽8の底部8bに固定することができる。
【0033】
このようにしてなる本発明である冷却塔1は、冷却水10が、塔上部から充填材4に散水され、外気に接触しながら充填材4を流下して下部水槽8に滴下し、さらに前記下部水槽8から前記下部水槽8の下に連設配置された集水槽9に流れ、前記集水槽9に接続するストレーナ9cを設けた冷却水出口9bに流れ、循環ポンプ13などで冷凍機14などに送られ、機器を冷却し、配管経路15を介して再び冷却塔に戻り、循環する。
【0034】
下部水槽8に混入した異物11は、流入口9aの周囲を囲み堰12が設置されているため、集水槽9に流入する頻度が極めて低下し、ストレーナ9cの清掃期間が格段に延長されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明である冷却塔の断面概略図である。
【図2】図1のA−A断面概略図である。
【図3】一般的な冷却塔の断面概略図である。
【符号の説明】
【0036】
1 冷却塔
2 散水槽
3 散布水装置
4 充填材
5 入口ルーバ
6 エリミネータ
7 送風機
7a モータ
8 下部水槽
8a 上端
8b 底部
9 集水槽
9a 流入口
9b 冷却水出口
9c ストレーナ
10 冷却水
10a 水面
11 異物
12 堰
13 循環ポンプ
14 冷凍機
15 配管経路
16 冷却塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水が、冷却塔上部から充填材に散水され、外気に接触しながら充填材を流下して下部水槽に滴下し、さらに前記下部水槽から前記下部水槽の下に連設配置された集水槽に流れ、前記集水槽に接続する冷却水出口に流れ、循環する冷却塔において、
前記集水槽の流入口の周囲を囲むよう下部水槽に堰を設け、前記下部水槽の底部に堆積した異物の集水槽への流入を防止することを特徴とする冷却塔。
【請求項2】
前記堰の上端が、前記下部水槽の水面より低い位置にあることを特徴とする請求項1に記載の冷却塔。
【請求項3】
前記堰が、断面略L字形であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の冷却塔。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−168401(P2009−168401A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9417(P2008−9417)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000101042)アクアス株式会社 (66)